(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/89 20060101AFI20220523BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220523BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220523BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20220523BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20220523BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20220523BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20220523BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220523BHJP
【FI】
B01J23/89 M
B01J37/02 301P
B01J37/08
H01M4/90 M
H01M4/86 B
H01M4/92
H01M4/88 K
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2019522354
(86)(22)【出願日】2017-10-11
(86)【国際出願番号】 US2017056103
(87)【国際公開番号】W WO2018080793
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-09
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】スタインバッハ, アンドリュー ジェイ. エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヘスター, エイミー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル フリート, デニス エフ.
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-533795(JP,A)
【文献】特表2007-507328(JP,A)
【文献】特表平08-509094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
H01M 4/90
H01M 4/86
H01M 4/92
H01M 4/88
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Pt
xNi
yAu
z[式中、xは27.3~29.9の範囲、yは63.0~70.0の範囲、zは0.1~9.6の範囲である]を有する触媒材料によって少なくとも部分的に被覆された外表面を有するマイクロ構造化ウィスカーを含む、ナノ構造化要素を含む
酸素還元触媒。
【請求項2】
xが29.4~29.9の範囲、yが68.6~70.0の範囲、zが0.1~2.0の範囲である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒材料が、白金及びニッケルを含む層と、前記白金及びニッケルを含む層上の金を含む層と、を備える、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
各層が、独立して、最大25nmの平面等価厚を有する、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒材料が、白金及びニッケルを含む層と、金を含む層との交互層を備える、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
各層が、独立して、最大25nmの平面等価厚を有する、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒材料が、白金を含む層と、前記白金を含む層上のニッケルを含む層と、前記ニッケルを含む層上の金を含む層と、を備える、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒材料が、ニッケルを含む層と、前記ニッケルを含む層上の白金を含む層と、前記白金を含む層上の金を含む層と、を備える、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
露出した金表面層を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
白金の金に対する重量比が、3:1~250:1の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒を含む、燃料電池膜電極接合体。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒をアニーリングすること、を含む、方法。
【請求項13】
白金及びニッケルを含むターゲットから白金及びニッケルを堆積させることと、金を含むターゲットから金を堆積させることと、を含む、請求項1~
4、9及び10のいずれか一項に記載の触媒の、製造方法。
【請求項14】
白金を含むターゲットから白金を堆積させることと、ニッケルを含むターゲットからニッケルを堆積させることと、金を含むターゲットから金を堆積させることと、を含む、請求項1
、2及び5~10のいずれか一項に記載の触媒の、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2016年10月26日に出願された米国特許仮出願第62/413173号の優先権を主張するものであり、その開示の全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[背景技術]
燃料電池により、燃料の電気化学的酸化及び酸化剤の還元を介して電気が生成する。燃料電池は、概して、電解質の種類並びに燃料及び酸化反応物質の種類によって分類される。燃料電池の1種は、ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)であり、電解質はポリマーイオン伝導体であり、反応物質は、水素燃料及び酸化剤としての酸素である。酸素は、周囲空気から得られることが多い。
【0003】
PEMFCは、典型的には、水素酸化反応(HOR)及び酸素還元反応(ORR)の反応速度を改善し、PEMFC性能を改善するために電極触媒の使用を必要とする。PEMFC電極触媒は、比較的高価な貴金属である白金を含むことが多い。PEMFC中の白金含有量を最小限に抑え、単位触媒表面積当たりの触媒活性(比活性)を増加させ、触媒質量当たりの触媒表面積(比表面積又は比面積)を増加させることが、典型的には、望ましい。HOR及びORRは触媒表面上で起こるため、比表面積及び/又は比活性を増加させることにより、デバイスの合計(貴金属)触媒担持量を低減し、コストを最小限に抑えることができる。しかしながら、十分な触媒活性及びPEMFCデバイス性能を得るためには、十分な白金含有量が必要である。したがって、単位触媒質量当たりの触媒活性(質量活性)を増加させることが望まれている。質量活性を増加させるための、すなわち所望の絶対的性能を達成するために必要とされる触媒の量によりコストを低減する、2つの一般的なアプローチが存在する。
【0004】
比面積を最大化するために、PEMFC電極触媒は、多くの場合、担体材料上でナノメートルスケールの薄膜又は粒子の形態である。ナノ粒子PEMFC電極触媒用の例示的担体材料はカーボンブラックであり、薄膜電極触媒用の例示的担体材料はウィスカーである。
【0005】
比活性を増加させるために、PEMFC Pt ORR電極触媒は、多くの場合、コバルト又はニッケルなどの特定の遷移金属も含む。理論に束縛されるものではないが、Pt格子への特定の遷移金属の組み込みは、触媒表面におけるPt原子の収縮を引き起こすと考えられ、これは、分子酸素結合及び解離エネルギー、並びに反応中間体及び/又は傍観種の結合エネルギーの改変によって、速度論的な意味での反応速度を増加させる。
【0006】
PEMFC電極触媒は、他の貴金属を組み込んでもよい。例えば、HOR PEMFC Pt電極触媒は、既知のPt触媒毒である一酸化炭素に対する耐性を改善するためにルテニウムと合金化することができる。HOR及びORR PEMFC電極触媒はまた、酸素発生反応(OER)の改善された活性を促進するためにイリジウムを組み込んでもよい。改善されたOER活性は、燃料の非存在下、及びPEMFCシステム起動及びシャットダウン中の不注意な動作下でのPEMFCの耐久性を向上させることができる。しかしながら、イリジウムをPEMFC ORR電極触媒に組み込むと、質量活性が低下し、触媒コストが高くなる場合がある。イリジウムは、ORRに対して白金よりも相対的に低い比活性を有し、場合により質量活性が低下する。イリジウムもまた、貴金属であることから、イリジウムを組み込むことでコストが増加し得る。PEMFC Pt電極触媒はまた、金を組み込んでもよい。金は、酸性電解質中のHOR及びORRに対して比較的不活性であることが知られている。金を取り込むと、金が優先的に電極触媒表面に分離して活性触媒部位をブロックする傾向があるため、HOR及びORRが実質的に失活し得る。
【0007】
PEMFC電極触媒は、異なる構造的形態及び組成的形態を有してもよい。構造的形態及び組成的形態は、多くの場合、電極触媒の堆積方法及びアニーリング方法における変法などの、電極触媒製造中の特定の加工方法によって調整される。PEMFC電極触媒は、組成的に均質で、組成的に層状であることができ、又は電極触媒全体にわたって組成勾配を含んでもよい。電極触媒内の組成プロファイルの調整は、電極触媒の活性及び耐久性を改善し得る。PEMFC電極触媒粒子又はナノメートルスケールの膜は、実質的に平滑な表面を有してもよく、又は原子スケール若しくはナノメートルスケールの粗さを有してもよい。PEMFC電極触媒は、構造的に均質であってもよく、又はナノメートルスケールの細孔及び固体触媒リガメントから構成されるナノ多孔質であってもよい。
【0008】
構造的に均質な電極触媒と比較して、ナノ多孔質PEMFC電極触媒は、より高い比面積を有し、それによってコストを低減することができる。ナノ多孔質触媒は、多数の相互連結したナノスケール触媒リガメントから構成され、ナノ多孔質材料の表面積は、ナノスケールリガメントの直径及び体積数密度に依存する。ナノスケールリガメント直径が減少し、体積数密度が増加するにつれて、表面積が増加すると予想される。
【0009】
ナノ多孔質PEMFC電極触媒を形成する1つの方法は、30原子%のPt及び70原子%のNiを有するPtNi合金などの遷移金属が豊富なPt合金前駆体の脱合金化による。脱合金化の際、遷移金属が溶解され、表面Ptが、表面遷移金属の露出及びナノ細孔を分離するナノスケールリガメントの形成を可能にするのに十分な移動度を有する条件に、前駆体はさらされる。ナノ細孔を形成するための脱合金化は、酸への暴露、又は電気化学的酸化及び還元サイクルの繰り返しへの暴露などの自由腐食アプローチを介して引き起こすことができる。電極触媒ナノ細孔形成は、PEMFC内で電気化学的動作中に自然に発生してもよく、又はPEMFC動作前にex-situ処理を介して発生させてもよい。
【0010】
PEMFCデバイスにおいて、電極触媒は、構造的及び組成的変化を引き起こす様々な分解機構により、時間の経過とともに性能を失う場合がある。このような性能損失により、このようなシステムの実用的な実用上の寿命は短くなる場合がある。電極触媒分解は、例えば、単位表面積当たりの電極触媒活性の損失及び電極触媒表面積の損失に起因して生じる場合がある。電極触媒比活性は、例えば、電極触媒合金化元素の溶解に起因して失われる場合がある。非多孔質ナノ粒子及びナノスケール薄膜は、例えば、Pt溶解、粒子焼結、及び表面粗さの損失に起因して、表面積を失う場合がある。ナノ多孔質電極触媒は、例えば、ナノスケールリガメント直径の増大及びナノスケールリガメント密度の低下に起因して、表面積を更に失う場合がある。
【0011】
上述の問題点のうちの1つ以上に対処するものを含む、更なる電極触媒及びこのような触媒を含有するシステムが望まれている。
【0012】
[発明の概要]
一態様では、本開示は、式PtxNiyAuz[式中、xは27.3~29.9の範囲、yは63.0~70.0の範囲、zは0.1~9.6の範囲である(いくつかの実施形態では、xは29.4~29.9の範囲、yは68.9~70.0の範囲、zは0.1~2.0の範囲であり、又は更には、xは29.7~29.9の範囲、yは69.4~70.0の範囲、zは0.1~0.9の範囲である)]を有する触媒材料によって少なくとも部分的に被覆された外表面を有するマイクロ構造化ウィスカーを含む、ナノ構造化要素を含む触媒を提供する。いくつかの実施形態では、触媒材料は、酸素還元触媒材料として機能する。
【0013】
いくつかの実施形態では、白金及びニッケルを含む少なくともいくつかの層は、少なくとも1つの層からニッケルを除去するため、脱合金化されている。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒は、アニーリングされている。
【0015】
驚くべきことに、出願人らは、金をPtNi触媒に添加することにより、電極触媒加速劣化後の質量活性、比面積、及び/又は性能の保持を実質的に改善することができることを見出した。金により、耐久性は改善されることが観察され、これは、触媒のバルク内に又は触媒表面に組み込まれるかどうか、アニーリングの前又は後に触媒内に組み込まれるかどうか、及びナノ多孔質が脱合金化を介して形成される前又は後に触媒内に又は触媒表面に組み込まれるかどうかによらなかった。
【0016】
本明細書に記載される触媒は、例えば、燃料電池膜電極接合体において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書で記載される例示的触媒の側面図である。
【
図3A】実施例1~5及び比較例Aの触媒の、白金含有量に対して正規化された、電極触媒質量活性のプロットである。
【
図3B】実施例1~5及び比較例Aの触媒の、白金族金属含有量の合計に対して正規化された、電極触媒活性のプロットである。
【
図3C】実施例1~5及び比較例Aの触媒の、白金含有量に対して正規化された、電極触媒表面積のプロットである。
【
図3D】実施例1~5及び比較例Aの触媒の、白金族金属含有量の合計に対して正規化された、電極触媒表面積のプロットである。
【
図3E】実施例1~5及び比較例Aの触媒の燃料電池性能のプロットである。
【0018】
[発明を実施するための形態]
図1を参照すると、基材108上の本明細書に記載される例示的な触媒100は、ナノ構造化要素102を有し、マイクロ構造化ウィスカー104が、式Pt
xNi
yAu
z[式中、xは27.3~29.9の範囲、yは63.0~70.0の範囲、zは0.1~9.6の範囲である(いくつかの実施形態では、xは29.4~29.9の範囲、yは68.9~70.0の範囲、zは0.1~2.0の範囲であり、又は更には、xは29.7~29.9の範囲、yは69.4~70.0の範囲、zは0.1~0.9の範囲である)]を有する触媒材料106によって少なくとも部分的に被覆された外表面105を有する。
【0019】
好適なウィスカーは、当該技術分野において知られている手法により得ることができ、それには、米国特許第4,812,352号(Debe)、同第5,039,561号(Debe)、同第5,338,430号(Parsonageら)、同第6,136,412号(Spiewakら)、及び同第7,419,741号(Vernstromら)に記載のものが挙げられ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。一般に、ナノ構造化ウィスカーは、例えば、有機材料又は無機材料の層を基材(例えば、マイクロ構造化触媒移動ポリマーシート)上に(例えば、昇華により)真空蒸着し、次いで、ペリレンレッドを堆積させる場合、熱アニーリングによりペリレンレッド顔料をナノ構造化ウィスカーに変換することにより得ることができる。典型的には、真空蒸着工程は、約10~3Torr、又は0.1パスカル以下の全圧で実行される。例示的なマイクロ構造は、有機顔料C.I.ピグメントレッド149(すなわち、N,N’-ジ(3,5-キシリル)ペリレン-3,4:9,10-ビス(ジカルボキシイミド))の熱昇華及び真空アニーリングによって製造される。有機ナノ構造化層の製造方法は、例えば、Materials Science and Engineering,A158(1992),pp.1-6;J.Vac.Sci.Technol.A,5,(4),July/August 1987,pp.1914-16;J.Vac.Sci.Technol.A,6,(3),May/August 1988,pp.1907-11;Thin Solid Films,186,1990,pp.327-47;J.Mat.Sci.,25,1990,pp.5257-68;Rapidly Quenched Metals,Proc.of the Fifth Int.Conf.on Rapidly Quenched Metals,Wurzburg,Germany(Sep.3-7,1984),S.Steeb et al.,eds.,Elsevier Science Publishers B.V.,New York,(1985),pp.1117-24;Photo.Sci.and Eng.,24,(4),July/August 1980,pp.211-16;並びに米国特許第4,340,276号(Maffittら)及び同第4,568,598号(Bilkadiら)で報告され、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。カーボンナノチューブアレイを使用する触媒層の特性は、論文「High Dispersion and Electrocatalytic Properties of Platinum on Well-Aligned Carbon Nanotube Arrays」Carbon,42(2004),pp.191-197で報告されている。草のような(grassy)又は逆立った(bristled)ケイ素を使用する触媒層の特性は、例えば、米国特許公開第2004/0048466(A1)号(Goreら)で報告されている。
【0020】
真空蒸着は、任意の好適な装置で行うことができる(例えば、米国特許第5,338,430号(Parsonageら)、同第5,879,827号(Debeら)、同第5,879,828号(Debeら)、同第6,040,077号(Debeら)及び同第6,319,293号(Debeら)並びに米国特許公開第2002/0004453(A1)号(Haugenら)を参照のこと。それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。1つの例示的な装置が、米国特許第5,338,430号(Parsonageら)の
図4Aに概略的に図示され、付随するテキストで説明されている。それによると、基材をドラム上に取り付け、次いで、有機前駆体(例えば、ペリレンレッド顔料)を堆積させるために昇華源又は蒸発源上で回転させた後、ウィスカーを形成するために有機前駆体をアニーリングしている。
【0021】
典型的には、堆積したペリレンレッド顔料の見掛け上の厚さは、約50nm~500nmの範囲である。典型的には、ウィスカーは、20nm~60nmの範囲の平均断面寸法及び0.3マイクロメートル~3マイクロメートルの範囲の平均長さを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、ウィスカーはバッキングに取り付けられる。例示的なバッキングは、ポリイミド、ナイロン、金属箔、又は、最大300℃までの熱アニーリング温度に耐えることができる他の材料を含む。いくつかの実施形態では、バッキングは、25マイクロメートル~125マイクロメートルの範囲の平均厚を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、バッキングは、その表面のうちの少なくとも1つの上にマイクロ構造を有する。いくつかの実施形態では、マイクロ構造は、実質的に均一な形状を有する、ウィスカーの平均サイズの少なくとも3倍(いくつかの実施形態では、少なくとも4倍、5倍、10倍、又はそれ以上)のサイズを有する特徴部から構成される。マイクロ構造の形状は、例えば、V字形状の溝部及び頂部(例えば、米国特許第6,136,412号(Spiewakら)を参照のこと。その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)又は錐(例えば、米国特許第7,901,829号(Debeら)を参照のこと。その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)であり得る。いくつかの実施形態では、マイクロ構造特徴部のうちの一部分は、31個のV字溝頂部ごとに、そのいずれかの側の頂部よりも、25%、又は50%、又は更には100%高いなどの、周期的な様式で、マイクロ構造頂部の平均又は大部分よりも上方に延びる。いくつかの実施形態では、マイクロ構造化頂部の大部分の上に延びるこの特徴部の割合は、最大10%(いくつかの実施形態では、最大3%、2%、又は更には最大1%)であり得る。時折他より高いマイクロ構造の特徴部の使用は、ロール・ツー・ロールコーティング作業においてコーティングされた基材がローラーの表面の上を移動するとき、均一により小さいマイクロ構造頂部の保護に役立ち得る。より小さいマイクロ構造の頂部ではなく、まばらに存在する、より高い特徴部が、ローラの表面に接触するため、その基材がコーティングプロセスによって移動する際に、ナノ構造化材料又はウィスカー材料がこすり取られるか、又は他の方法で阻害される可能性が、遥かに小さくなる。いくつかの実施形態では、これらのマイクロ構造特徴部は、膜電極接合体を製造する際に触媒が移動する膜の厚さの半分よりも、実質的に小さい。これは、触媒移動プロセス中に、他より高いマイクロ構造の特徴部が、膜の反対側で電極と重なり合い得る膜を貫通しないようにするためである。いくつかの実施形態では、最も高いマイクロ構造特徴部は、膜の厚さの1/3又は1/4未満である。最も薄いイオン交換膜(例えば、厚さ約10マイクロメートル~15マイクロメートル)に関しては、約3マイクロメートル~4.5マイクロメートル以下の高さのマイクロ構造化特徴部を備える基材を有することが、望ましい場合がある。V字形状若しくは他のマイクロ構造化特徴部の側面の傾斜、又は隣接する特徴部間の夾角は、いくつかの実施形態では、積層移動プロセスの際の触媒移動を容易にするために、90°程度とし、基材バッキングの平面状幾何学表面に対して、そのマイクロ構造化層の2の平方根(1.414)の表面積によってもたらされる、その電極の表面積の増加を得ることが、望ましい場合がある。
【0024】
いくつかの実施形態では、触媒材料は、白金及びニッケルを含む層と、白金及びニッケルを含む層上の金を含む層と、を備える。
【0025】
いくつかの実施形態では、白金及びニッケルを含む層は、0.4nm~70nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.4nm~1nm、0.4nm~5nm、1nm~25nm、又は更には1nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層は、0.01nm~20nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~10nm、0.01nm~5nm、0.02nm~2.5nm、又は更には0.02nm~1nmの範囲)の平面等価厚(すなわち、実質的に平坦な平面基材上に堆積される場合の厚さ)を有する。いくつかの実施形態では、白金及びニッケルを含む層(複数可)は、総体として、最大600nm(いくつかの実施形態では、最大575nm、550nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、75nm、50nm、25nm、10nm、5nm、2.5nm、1nm、又は更には最大2つの単層(例えば、0.4nm)、いくつかの実施形態では、0.4nm~600nm、0.4nm~500nm、1nm~500nm、5nm~500nm、10nm~500nm、10nm~400nm、又は更には40nm~300nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層は、最大50nm(いくつかの実施形態では、最大45nm、40nm、35nm、30nm、25nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、1nm、単層(例えば、0.2nm)、又は更には単層未満(例えば、0.01nm)、いくつかの実施形態では、0.01nm~50nm、1nm~50nm、5nm~40nm、又は更には5nm~35nmの範囲)の平面等価厚を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、触媒材料は、白金及びニッケルを含む層と、金を含む層との交互層(すなわち、白金及びニッケルを含む層、金を含む層、白金及びニッケルを含む層、金を含む層など)を備える。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250組、又は更には少なくとも275組の交互層。
【0027】
個々の堆積された触媒層の厚さは、例えば、層の面積触媒担持量及び触媒密度に依存し得る。例えば、平面基材上に堆積された1cm2平面積当たり10マイクログラムのPt及び21.45g/cm3の密度を有するPtの単一層の厚さは4.7nmとして計算され、同じ面積担持量を有するNi層の厚さは11.2nmである。
【0028】
いくつかの実施形態では、触媒材料は、白金を含む層と、白金を含む層上のニッケルを含む層と、ニッケルを含む層上の金を含む層と、を備える。いくつかの実施形態では、触媒材料は、ニッケルを含む層と、ニッケルを含む層上の白金を含む層と、白金を含む層上の金を含む層と、を備える。いくつかの実施形態では、触媒材料は、白金、ニッケル、及び金の逐次的な個々の繰り返し層を備える。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250組、又は更には少なくとも275組の繰り返し層。
【0029】
いくつかの実施形態では、触媒材料は、露出した金表面層を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、各層は、独立して、最大100nm(いくつかの実施形態では、最大50nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、1nm、単層(例えば、0.2nm)、又は更には最大でも単層未満(例えば0.01nm)、いくつかの実施形態では、0.01nm~100nm、0.01nm~50nm、0.1nm~15nm、0.1nm~10nm、又は更には1nm~5nmの範囲)の平面等価厚を有する。
【0031】
一般的に、触媒は、当該技術分野において公知の技法で堆積させることができる。例示的な堆積技術としては、スパッタリング(反応性スパッタリングを含む)、原子層堆積、分子有機化学蒸着、分子線エピタキシ、熱物理蒸着、エレクトロスプレーイオン化による真空蒸着、及びパルスレーザ堆積からなる群から、独立して選択されるものが挙げられる。更なる一般的詳細は、例えば、米国特許第5,879,827号(Debeら)、同第6,040,077号(Debeら)、及び同第7,419,741号(Vernstromら)に見出すことができ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。熱物理蒸着法は、好適な高温を(例えば、抵抗加熱、電子ビーム銃、又はレーザを介して)使用して、ターゲット(原料材料)を融解するか、又は蒸気状態に昇華させ、そのターゲットを次に真空空間に通し、次いで、この蒸気化形態を基材表面上に凝縮させる。熱物理蒸着装置は、当該技術分野で公知であり、例えば、金属蒸発器又は有機分子蒸発器として、それぞれ、「METAL EVAPORATOR」(ME-SERIES)又は「Organic Molecular Evaporator(DE-SERIES)」という商品名でCreaPhys GmbH(Dresden,Germany)から入手可能なものが挙げられ、有機材料蒸発器の別の例は、「ORGANIC MATERIALS EVAPORATIOR(ORMA-SERIES)」という商品名でMantis Deposition LTD(Oxfordshire,UK)から入手可能である。複数の交互層を備える触媒材料は、例えば、複数のターゲットからスパッタリングすることができる(例えば、Ptを第1ターゲットからスパッタリングし、Niを第2ターゲットからスパッタリングし、Auを第3ターゲットからスパッタリングするか、又は、2種以上の元素(例えば、Pt及びNi)を含むターゲット(複数可)から、スパッタリングすることもできる)。触媒コーティングが、単一のターゲットで行われる場合には、コーティング層を、ガス分配層、ガス分散層、触媒移動層、又は膜上に、単一の工程で適用し、それにより、その触媒コーティングの凝縮熱によって、下層の触媒を加熱するか、又は場合に応じて、Pt、Ni、若しくはIrの原子を担持し、並びに基材表面は、原子が良好に混合され、熱力学的に安定な合金ドメインを形成する、満足な表面移動度がもたらされるのに十分なものとすることが、望ましい場合がある。あるいは、例えば、この原子移動度を促進するために、基材にもまた、熱くするか又は加熱することができる。いくつかの実施形態では、スパッタリングは、アルゴンを含む雰囲気中で少なくとも部分的に実施される。有機金属形態の触媒は、例えば、質量選別されたイオンのソフトランディング又は反応性ランディングによって堆積させることができる。質量選別されたイオンのソフトランディングは、有機配位子による触媒活性金属錯体を、その気相から、不活性表面上に移動させるために使用される。この方法を使用して、画定された活性部位を有する材料を調製することができるため、周囲条件下か、又は従来の真空条件下のいずれかで、高度に制御された方式で、表面の分子設計を達成することができる。更なる詳細については、例えば、Johnson et al.,Anal.Chem.,2010,82,pp.5718-5727及びJohnson et al.,Chemistry:A European Journal,2010,16 pp.14433-14438(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0032】
いくつかの実施形態では、白金の金に対する重量比は、3:1~250:1の範囲(いくつかの実施形態では、5:1~15:1、3:1~30:1、30:1~250:1、又は更には15:1~250:1の範囲)である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒の、製造方法は、白金及びニッケルを含むターゲット(例えば、Pt3Ni7ターゲット)から白金及びニッケルを堆積させることと、金を含むターゲットから金を堆積させることと、を含む。いくつかの実施形態において、白金及びニッケルを含む層は、0.4nm~580nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.4nm~72nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層は、0.01nm~32nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~16nm、又は更には0.01nm~2nmの範囲)の平面等価厚を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒の、製造方法は、白金を含むターゲットから白金を堆積させることと、ニッケルを含むターゲットからニッケルを堆積させることと、金を含むターゲットから金を堆積させることと、を含む。いくつかの実施形態では、白金を含む層と、ニッケルを含む隣接する層と、金を含む隣接する層は、総体として、0.5nm~50nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.5nm~30nmの範囲)の平面等価厚を有する。いくつかの実施形態では、白金を含む層は、0.2nm~30nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.2nm~20nm、又は更には0.2nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、ニッケルを含む層は、0.2nm~50nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.2nm~25nm、又は更には0.2nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層は、0.01nm~20nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~10nm、0.01nm~5nm、0.02nm~5nm、0.02nm~1nm、又は更には0.1nm~1nmの範囲)の平面等価厚を有する。いくつかの実施形態では、白金の金に対する重量比は、3:1~250:1の範囲(いくつかの実施形態では、5:1~15:1、3:1~30:1、30:1~250:1、又は更には15:1~250:1の範囲)である。
【0035】
いくつかの実施形態では、白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層(白金及びニッケルを含む層(複数可)、又は白金、ニッケル、及び金を含む層を含む)が、ナノ多孔質(例えば、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔)である。いくつかの実施形態では、白金及びニッケルを含む、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250個、又は更には少なくとも275個の層は、ナノ多孔質である。
【0036】
ナノ多孔質は、触媒材料を脱合金化し、ニッケルの一部分を除去することによって得ることができる。一般的に、脱合金化は、当該技術分野において公知の技術によって達成することができ、それには、「自由腐食」アプローチ(例えば、酸中の浸漬)を介して、又は電気化学的処理(例えば、酸性媒体中の電位サイクル)を介してのものが挙げられる。ナノ多孔質の形成は、典型的には、少なくとも2つの構成成分を含む合金中で、脱合金媒体中で十分に異なる溶解速度を有し、より貴な構成成分が十分な表面移動度を有する場合に生じる。更なる詳細については、例えばErlebacher et al.,Nature,2001,410,pp.450-453、並びに米国特許第6,805,972(B2)号(Erlebacherら);同第8,673,773(B2)号(Oppermanら);及び同第8,895,206(B2)号(Erlebacherら)(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0037】
いくつかの実施形態では、触媒材料をアニーリングする。いくつかの実施形態では、触媒を、脱合金化前にアニーリングする。一般的に、アニーリングは、当該技術分野において公知の技術によって行うことができ、それには例えばオーブン又は炉を介して、レーザーを用いて、及び赤外線技術を用いて、触媒材料を加熱することが挙げられる。アニーリングは、例えば、不活性又は反応性ガス環境で行うことができる。理論に束縛されるものではないが、アンニーリングは、触媒の活性及び耐久性に影響を及ぼし得る原子スケールの構造変化を引き起こす場合があると考えられる。更に、ナノスケール粒子及び膜のアニーリングは、原子構成物質(複数可)中で移動を引き起こし、これにより、粒子又は薄膜グレインの成長を引き起こし得ると考えられる。多元素混合物、合金、又は層状化粒子及び膜の場合、アニーリングは、例えば、構成成分の元素特性及びアニーリング環境に応じて、粒子又は膜内の構成成分の表面への分離、ランダムな不規則合金の形成、及び規則的な金属間化合物の形成を引き起こし得ると考えられる。アニーリングに関する更なる詳細については、例えば、van der Vliet et al.,Nature Materials,2012,11,pp.1051-1058;Wang et al.,Nature Materials,2013,12,pp.81-87、及び米国特許第8,748,330(B2)号(Debeら)(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒の、製造方法は、
白金及びニッケルを含むターゲットから白金及びニッケルを堆積させて、白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を提供すること(いくつかの実施形態では、ターゲットから繰り返し堆積させて複数の層を提供すること)と、
白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を脱合金化して、少なくとも1つの層からニッケルを除去することと、
金を含むターゲットから金を含む層を堆積させることと、
を含む。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。いくつかの実施形態では、ターゲットは、Pt3Ni7ターゲットである。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒の、製造方法は、
白金を含むターゲットから白金を堆積させて、白金を含む少なくとも1つの層を提供することと、
ニッケルを含むターゲットからニッケルを堆積させて、ニッケルを含む少なくとも1つの層を提供することと、
白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を脱合金化して、少なくとも1つ層からニッケルを除去することと、
金を含むターゲットから金を含む層を堆積させることと、
を含む。いくつかの実施形態では、層を堆積させて、それぞれ白金又はニッケルを含む交互層を提供する。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される触媒の、製造方法は、
白金及びニッケルを含むターゲットから白金及びニッケルを堆積させて、白金及びニッケルを含む第1層を提供することと、
金を含むターゲットから金を含む層を堆積させることと、
上記2つの工程を順番に、少なくとも1回繰り返す(いくつかの実施形態では、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250回、又は更には少なくとも275回繰り返す)ことと、
白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を脱合金化して、層からニッケルを除去することと、を含む。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。いくつかの実施形態では、ターゲットは、Pt3Ni7ターゲットである。
【0041】
本明細書に記載される触媒は、例えば、燃料電池膜電極接合体(MEA)において有用である。「膜電極接合体」とは、膜、アノード、及びカソード電極層、並びにガス拡散層を備える、燃料電池材料の層状挟持部を指す。典型的には、カソード触媒層は、本明細書に記載される触媒を含むが、いくつかの実施形態では、アノード触媒層は、独立して、本明細書に記載される触媒を含む。
【0042】
MEAは、順番に、
第1主表面及び対向する第2主表面を有する、第1のガス分配層と、
第1主表面及び対向する第2主表面を有する、アノード触媒が第1の触媒を含む、アノード触媒層と、
電解質膜と、
第1主表面及び対向する第2主表面を有し、カソード触媒が第2の触媒を含む、カソード触媒層と、
第1主表面及び対向する第2主表面を有する、第2のガス分配層と、
を備える。
【0043】
電解質膜は、アノード触媒層とカソード触媒層との間の反応中間体イオンを伝導する。電解質膜は、好ましくは、化学的及び電気化学的酸化安定性を含む、電気化学的環境における高い耐久性を有する。電解質膜は、好ましくは、反応中間体イオンの輸送に対してイオンの移動難度は小さいが、他のイオン、電子、及び反応種に対しては比較的不透過性のバリアである。いくつかの実施形態では、電解質膜は、カチオンを伝導するプロトン交換膜(PEM)である。PEM燃料電池では、電解質膜は、好ましくは、プロトンを伝導する。PEMは、典型的には、構造主鎖及びペンダントカチオン交換基から構成される部分フッ素化ポリマー又はペルフルオロポリマーである。PEMは、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から商品名「NAFION」で、Solvay(Brussels,Belgium)から商品名「AQUIVION」で、3M Company(St.Paul,MN)から商品名「3M PFSA MEMBRANE」で、及びAGC(東京)から商品名「FLEMION」で入手可能である。
【0044】
ガス分配層は、一般に、電極にガスを均等に送給し、いくつかの実施形態では、電気を伝導する。ガス分配層によりまた、燃料電池の場合には、蒸気か又は液体の形態のいずれかでの、水の除去がなされる。ガス分配層は、典型的には多孔質であり、電極と流動場との間の反応物質及び生成物の輸送が可能になる。ガス分配層の原料としては、多孔質層を形成するようにランダム配向された炭素繊維、並びに不織紙又は織布が挙げられる。不織カーボン紙は、例えば、三菱ケミカル(東京)から商品名「GRAFIL U-105」で、東レ(東京)から商品名「TORAY」で、AvCarb Material Solutions(Lowell,MA)から商品名「AVCARB」で、SGL Group,the Carbon Company(Wiesbaden,Germany)から商品名「SIGRACET」で、Freudenberg FCCT SE & Co.KG,Fuel Cell Component Technologies(Weinheim,Germany)から商品名「Freudenberg」で、及びEngineered Fibers Technology(EFT)(Shelton,CT)から商品名「Spectracarb GDL」で入手可能である。炭素織布物又は織物は、例えば、ELo Chem Inc.(Woburn,MA)から商品名「EC-CC1-060」及び「EC-AC-CLOTH」で、NuVant Systems Inc.(Crown Point,IN)から商品名「ELTLAT LT」及び「ELAT」で、BASF Fuel Cell GmbH(North America)から商品名「E-TEK ELAT LT」で、並びにZoltek Corp.(St.Louis,MO)から商品名「ZOLTEK CARBON CLCLE」で入手可能である。不織布紙又は織布を処理して、その疎水性を改変することができる(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液による処理と、その後の乾燥及びアニーリング)。ガス分散層は、サブマイクロメートルの電子伝導性粒子(例えば、炭素)、及びバインダ(例えば、PTFE)の多孔質層を含むことが多い。理論に束縛されるものではないが、ガス分散層は、電極とガス分配層との間の反応物質及び生成物の水輸送を促進すると考えられる。
【0045】
アノード触媒又はカソード触媒のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載される触媒材料を有するウィスカーを有する。「他の触媒層」は、当該技術分野において公知の従来の触媒であり得、当該技術分野において公知の技術(例えば、米国特許第5,759,944号(Buchananら)、同第5,068,161号(Keckら)、及び同第4,447,506号(Luczakら))(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)によって得られる。
【0046】
いくつかの実施形態では、カソード触媒層及び/又はアノード触媒層は、本明細書に記載される触媒材料を有するウィスカーを含む。
【0047】
燃料電池は、水素燃料と空気からの酸素とを組み合わせて、電気、熱、及び水を発生する電気化学デバイスである。燃料電池では、燃焼を利用せず、したがって、燃料電池は、有害な流出物を、あるとしても僅かしか発生しない。燃料電池は、水素燃料及び酸素を電気に直接変換し、かつ、例えば内燃力発電機よりはるかに高い効率で動作させることができる。
【0048】
図2を参照すると、例示的燃料電池200は、アノード203に隣接する第1のガス分配層201を備える。アノード203に隣接しているのは、電解質膜204である。カソード205は、電解質膜204に隣接して位置し、第2のガス分配層207はカソード205に隣接して位置する。動作時には、水素燃料が、燃料電池200のアノード部分内に導入され、第1のガス分配層201を経て、アノード203を通過する。アノード203で、水素燃料は、水素イオン(H
+)と電子(e
-)とに分離される。
【0049】
電解質膜204により、水素イオン、すなわちプロトンのみが、電解質膜204を経て、燃料電池200のカソード部分に到達することが可能になる。電子は、電解質膜204を通過できないが、代わりに、電流の形態で外部電気回路を流れる。この電流は、電気モータなどの電気負荷217に、電力供給するか、又は、充電式バッテリなどのエネルギー貯蔵デバイスに向けることもできる。
【0050】
第2のガス分配層207を介して、燃料電池200のカソード側に、酸素が流れ込む。酸素が、カソード205を通過する際に、酸素、プロトン、及び電子が結合することにより、水及び熱が生成する。
【0051】
例示的実施形態
1A.式PtxNiyAuz[式中、xは27.3~29.9の範囲、yは63.0~70.0の範囲、zは0.1~9.6の範囲である(いくつかの実施形態では、xは29.4~29.9の範囲、yは68.9~70.0の範囲、zは0.1~2.0の範囲であり、又は更には、xは29.7~29.9の範囲、yは69.4~70.0の範囲、zは0.1~0.9の範囲である)]を有する触媒材料によって少なくとも部分的に被覆された外表面を有するマイクロ構造化ウィスカーを含む、ナノ構造化要素を含む触媒。
【0052】
2A.触媒材料が、白金及びニッケルを含む層と、白金及びニッケルを含む層上の金を含む層と、を備える、例示的実施形態1Aに記載の触媒。
【0053】
3A.白金及びニッケルを含む層(複数可)が、総体として、最大600nm(いくつかの実施形態では、最大575nm、550nm、500nm、400nm、300nm、200nm、100nm、75nm、50nm、25nm、10nm、5nm、2.5nm、1nm、又は更には最大2つの単層(例えば、0.4nm)、いくつかの実施形態では、0.4nm~600nm、0.4nm~500nm、1nm~500nm、5nm~500nm、10nm~500nm、10nm~400nm、又は更には40nm~300nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層は、最大50nm(いくつかの実施形態では、最大45nm、40nm、35nm、30nm、25nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、1nm、単層(例えば、0.2nm)、又は更には単層未満(例えば、0.01nm)、いくつかの実施形態では、0.01nm~50nm、1nm~50nm、5nm~40nm、又は更には5nm~35nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態2Aに記載の触媒。
【0054】
4A.各層が、独立して、最大100nm(いくつかの実施形態では、最大50nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、1nm、単層(例えば、0.2nm)、又は更には最大でも単層未満(例えば0.01nm)、いくつかの実施形態では、0.01nm~100nm、0.01nm~50nm、0.1nm~15nm、0.1nm~10nm、又は更には1nm~5nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態3Aに記載の触媒。
【0055】
5A.触媒材料が、白金及びニッケルを含む層と、金を含む層との交互層(すなわち、白金及びニッケルを含む層、金を含む層、白金及びニッケルを含む層、そして金を含む層など)を備える、例示的実施形態1Aに記載の触媒。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250組、又は更には少なくとも275組の交互層。
【0056】
6A.各層が、独立して、最大100nm(いくつかの実施形態では、最大50nm、20nm、15nm、10nm、5nm、4nm、3nm、2nm、1nm、単層(例えば、0.2nm)、又は更には最大でも単層未満(例えば0.01nm)、いくつかの実施形態では、0.01nm~100nm、0.01nm~50nm、0.1nm~15nm、0.1nm~10nm、又は更には1nm~5nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態5Aに記載の触媒。
【0057】
7A.触媒材料が、白金を含む層と、白金を含む層上のニッケルを含む層と、ニッケルを含む層上の金を含む層と、を備える、例示的実施形態1Aに記載の触媒。
【0058】
8A.触媒材料が、ニッケルを含む層と、ニッケルを含む層上の白金を含む層と、白金を含む層上の金を含む層と、を備える、例示的実施形態1Aに記載の触媒。
【0059】
9A.白金及びニッケルの両方を含む少なくとも1つの層がナノ多孔質である、例示的実施形態1A~8Aのいずれか1つに記載の触媒。いくつかの実施形態では、白金及びニッケルを含む少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250個、又は更には少なくとも275個の層が、ナノ多孔質(例えば、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔)である。
【0060】
10A.露出した金表面層を有する、例示的実施形態1A~9Aのいずれか1つに記載の触媒。
【0061】
11A.触媒材料が、白金、ニッケル、及び金の逐次的な個々の繰り返し層を備える、例示的実施形態1Aに記載の触媒。いくつかの実施形態では、少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250組、又は更には少なくとも275組の繰り返し層。
【0062】
12A.白金、ニッケル、及び金を含む少なくとも1つの層がナノ多孔質である、例示的実施形態11Aに記載の触媒。いくつかの実施形態では、白金、ニッケル、及び金を含む少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250個、又は更には少なくとも275個の層が、ナノ多孔質(例えば、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔)である。
【0063】
13A.白金の金に対する重量比が、3:1~250:1の範囲(いくつかの実施形態では、5:1~15:1、3:1~30:1、30:1~250:1、又は更には15:1~250:1の範囲)である、例示的実施形態1A~12Aのいずれか1つに記載の触媒。
【0064】
14A.例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒を含む、燃料電池膜電極接合体。
【0065】
1B.白金及びニッケルを含む少なくともいくつかの層を脱合金化して、少なくとも1つの層からニッケルを除去して、例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒を提供すること、を含む、触媒を脱合金化する方法。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0066】
1C.例示的実施形態1Bに記載の触媒を脱合金化前にアニーリングすること、を含む、方法。
【0067】
1D.例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒をアニーリングすること、を含む、方法。
【0068】
1E.白金及びニッケルを含むターゲットから白金及びニッケルを堆積させることと、金を含むターゲットから金を堆積させることと、を更に含む、例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒の製造方法。
【0069】
2E.ターゲットが、Pt3Ni7ターゲットである、例示的実施形態1Eに記載の製造方法。
【0070】
3E.白金及びニッケルを含む層が、0.4nm~580nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.4nm~72nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層が、0.01nm~32nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~16nmの範囲、又は更には0.01nm~2nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態1E又は2Eに記載の製造方法。
【0071】
4E.白金及びニッケルを含む少なくともいくつかの層を脱合金化して、少なくとも1つの層からニッケルを除去すること、を更に含む、例示的実施形態1E~3Eのいずれか1つに記載の製造方法。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0072】
5E.触媒をアニーリングすること、を更に含む、例示的実施形態1E~3Eのいずれか1つに記載の製造方法。
【0073】
6E.アニーリングされた触媒の少なくとも一部分を脱合金化すること、を更に含む、例示的実施形態5Eに記載の製造方法。
【0074】
1F.白金を含むターゲットから白金を堆積させることと、ニッケルを含むターゲットからニッケルを堆積させることと、金を含むターゲットから金を堆積させることと、を含む、例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒の、製造方法。
【0075】
2F.白金を含む層と、ニッケルを含む隣接する層と、金を含む隣接する層とが、総体として、0.5nm~50nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.5nm~30nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態1Fに記載の製造方法。
【0076】
3F.白金を含む層が、0.2nm~30nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.2nm~20nm、又は更には0.2nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、ニッケルを含む層が、0.2nm~50nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.2nm~25nm、又は更には0.2nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層が、0.01nm~20nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~10nm、0.01nm~5nm、0.02nm~5nm、0.02nm~1nm、又は更には0.1nm~1nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態1Fに記載の製造方法。
【0077】
4F.白金の金に対する重量比が、3:1~250:1の範囲(いくつかの実施形態では、5:1~15:1、3:1~30:1、30:1~250:1、又は更には15:1~250:1の範囲)である、例示的実施形態1F~3Fのいずれか1つに記載の製造方法。
【0078】
5F.触媒をアニーリングすること、を更に含む、例示的実施形態1F~4Fのいずれか1つに記載の製造方法。
【0079】
6F.白金及びニッケルを含む少なくともいくつかの層を脱合金化して、少なくとも1つの層からニッケルを除去すること、を更に含む、例示的実施形態1F~5Fのいずれか1つに記載の製造方法。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0080】
1G.白金及びニッケルを含むターゲットから白金及びニッケルを堆積させて、白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を準備すること(いくつかの実施形態では、ターゲットから繰り返し堆積させて複数の層を準備すること)と、
白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を脱合金化して、少なくとも1つ層からニッケルを除去することと、
金を含むターゲットから金を含む層を堆積させることと、
を含む、例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒の、製造方法。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0081】
2G.白金及びニッケルを含む層をアニーリングすること、を更に含む、例示的実施形態1Gに記載の製造方法。
【0082】
3G.ターゲットが、Pt3Ni7ターゲットである、例示的実施形態1G又は2Gに記載の製造方法。
【0083】
4G.白金及びニッケルを含む層が、0.4nm~70nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.4nm~1nm、0.4nm~5nm、1nm~25nm、又は更には1nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層が、0.01nm~20nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~10nm、0.01nm~5nm、0.02nm~2.5nm、又は更には0.02nm~1nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態1G~3Gのいずれか1つに記載の製造方法。
【0084】
1H.白金を含むターゲットから白金を堆積させて、白金を含む少なくとも1つの層を準備することと、
ニッケルを含むターゲットからニッケルを堆積させて、ニッケルを含む少なくとも1つの層を提供することと、
白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を脱合金化して少なくとも1つの層からニッケルを除去することと、
金を含むターゲットから金を含む層を堆積させることと、を含む、例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒の、製造方法。いくつかの実施形態では、層を堆積させて、それぞれ白金又はニッケルを含む交互層を提供する。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0085】
2H.脱合金化前に、白白金及びニッケルのうちの少なくとも1つを含む層をアニーリングすること、を更に含む、例示的実施形態1Hに記載の製造方法。
【0086】
3H.白金及びニッケルを含む層が、0.4nm~70nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.4nm~1nm、0.4nm~5nm、1nm~25nm、又は更には1nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層が、0.01nm~20nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~10nm、0.01nm~5nm、0.02nm~2.5nm、又は更には0.02nm~1nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態1H又は2Hに記載の製造方法。
【0087】
1I.
白金及びニッケルを含むターゲットから白金及びニッケルを堆積させて、白金及びニッケルを含む第1層を準備することと、
金を含むターゲットから金を含む層を堆積させることと、
上記2つの工程を順番に、少なくとも1回繰り返す(いくつかの実施形態では、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250回、又は更には少なくとも275回繰り返す)ことと、
白金及びニッケルを含む少なくとも1つの層を脱合金化して、層からニッケルを除去することと、
を含む、例示的実施形態1A~13Aのいずれか1つに記載の触媒の、製造方法。いくつかの実施形態では、ニッケルが除去された、1nm~10nmの範囲(いくつかの実施形態では、2nm~8nm、又は更には3nm~7nmの範囲)の直径を有する細孔が存在する。
【0088】
2I.ターゲットが、Pt3Ni7ターゲットである、例示的実施形態1Iに記載の製造方法。
【0089】
3I.脱合金化前に層をアニーリングすること、を更に含む、例示的実施形態1I又は2Iに記載の製造方法。
【0090】
4I.白金及びニッケルを含む層が、0.4nm~70nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.4nm~1nm、0.4nm~5nm、1nm~25nm、又は更には1nm~10nmの範囲)の平面等価厚を有し、金を含む層が、0.01nm~20nmの範囲(いくつかの実施形態では、0.01nm~10nm、0.01nm~5nm、0.02nm~2.5nm、又は更には0.02nm~1nmの範囲)の平面等価厚を有する、例示的実施形態1I~3Iのいずれか1つに記載の製造方法。
【0091】
本発明の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に説明されるが、これら実施例において述べられる特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。全ての部分及びパーセントは、特に指示のない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0092】
実施例1~4
触媒担体として使用されるナノ構造化ウィスカーを、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,338,430号(Parsonageら)、同第4,812,352号(Debe)、及び同第5,039,561号(Debe)に記載されている方法に従い、米国特許第6,136,412号(Spiewakら)(これもまた、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているマイクロ構造化触媒移動基材(すなわち、MCTS)を基材として使用して、製造した。ペリレンレッド顔料(すなわち、N,N’-ジ(3,5-キシリル)ペリレン-3,4:9,10-ビス(ジカルボキシイミド))(C.I.ピグメントレッド149、「PR149」としても知られており、Clariant(Charlotte,NC)から入手)を、200nmの見掛け上の厚さを有するMCTS上へと熱昇華コーティングし、その後アニーリングした。堆積及びアニーリングの後、大きいアスペクト比、制御可能な約0.5~2マイクロメートルの長さ、約0.03~0.05マイクロメートルの幅、及び1平方マイクロメートルあたり約30のウィスカーの面積数密度を有して、高度に配向した結晶構造が形成され、下にある基材に対して実質的に垂直に配向していた。
【0093】
ナノ構造化ウィスカーの層上にDC-マグネトロンスパッタリングプロセスを用いて順次触媒膜をスパッタコーティングすることによって、ナノ構造化薄膜(NSTF)触媒層を調製した。4つのクライオポンプ(Austin Scientific,Oxford Instruments(Austin,TX)から入手)、ターボポンプを備え、約5mTorr(0.66Pa)の典型的なArスパッタガス圧、2インチ×10インチ(5cm×25.4cm)の矩形スパッタターゲット(Sophisticated Alloys,Inc.(Butler,PA)から入手)を使用した、真空スパッタ蒸着システム(Mill Lane Engineering Co.(Lowell,MA)からModel Custom Researchとして入手)を用いた。スパッタリングガスとしての超高純度Arを用いることによって、コーティングを堆積させた。Pt及びNiを、最初に、単一合金Pt3Ni7ターゲット(Sophisticated Alloys(Butler,PA)から入手した30原子%のPt及び70原子%のNi)から同時に堆積させた。50層のPt3Ni7を、各々約2.8nmの平面等価厚で堆積させ、約0.10mgPt/cm2のPt面積担持量を得た。単一合金ターゲットから堆積したPt3Ni7触媒は、「単一ターゲット」(ST)と呼ばれる。次いでその後に、Au(Materion(Mayfield Heights,OH)から入手)を、基材上の4片のPt3Ni7コーティングNSTF触媒の表面上に堆積させ、電極触媒中ので、1、2、5、及び10原子%となるように計算された各々異なるAu面積担持量(それぞれ実施例1、2、3、及び4)とした。実施例1、2、3、及び4のAu層の平面等価厚は、それぞれ2.1nm、4.1nm、9.8nm、及び20.2nmであった。実施例1、2、3、及び4のPt対Auの重量比は、それぞれ29.4:1、14.7:1、5.8:1、及び2.8:1であった。
【0094】
X線蛍光分光法(XRF)を使用して、電極触媒の代表的領域をバルク組成について分析した。ロジウム(Rh)X線源を装備した波長分散性X線蛍光分光計(リガク(東京))から商品名「PRIUS II」で入手)、真空雰囲気、及び20mm直径の測定領域を用いて、代表的な触媒試料をMCTS上で評価した。各試料を3回分析して、担持量に比例する、測定されたPt、Ni、及びAuシグナル強度の平均及び標準偏差を得た。それらの測定されたXRF強度を、既知の面積担持量を有するPt、Ni、及びAuを含有する標準的なNSTF電極触媒で得られたXRF強度と比較することによって、実施例1~4の電極触媒のPt、Ni、及びAu面積担持量を決定した。XRFで決定したPt、Ni、及びAuの面積担持量から、触媒の組成及びPt対Auの重量比を計算した。白金族金属(PGM)の合計含有量を、Pt及びAuの面積担持量を加えることによって決定した。担持量及び組成情報を以下の表1に示す。
【表1】
【0095】
次いで、MCTS上のPtxNiyAuz触媒及びNSTF PtCoMnコーティングされたアノード触媒ウィスカー(0.05mgPt/cm2、Pt69Co28Mn3)を、ラミネータ(商品名「HL-101」でChemInstruments,Inc.(West Chester Township,OH)から入手)を使用して、24マイクロメートル厚のプロトン交換膜(商品名「3M PFSA 825 EW」(未処理)で3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)のいずれかの側に移動させて、触媒コーティング膜(CCM)を形成した。3層積層体を、270°F(132℃)、150psi(1.03MPa)ニップのホットニップロールを備えたラミネータに手差しし、0.5fpm(0.25cm/秒)相当で回転させた。積層直後に、MCTS層を再剥離し、触媒コーティングされたウィスカーをPEMのいずれかの側に埋め込んだままにした。同一のガス拡散層(商品名「3M 2979 GAS DIFFUSION LAYERS」の商品名で3M Companyから入手可能)を用いて、ガス拡散層の10%圧縮を与えるように選択されたガスケットを備えた4蛇行流場(quad-serpentine flow fields)を有する50cm2の作用面積試験電池(商品名「50 CM2 CELL HARDWARE」でFuel Cell Technologies Inc.(Albuquerque,NM)から入手)のアノード及びカソード上にCCMを取り付けた。本発明の触媒を燃料電池カソードとして評価した。
【0096】
組み立て後、試験電池を試験ステーション(Fuel Cell Technologies,Inc.から商品名「SINGLE FUEL CELL TEST STATION」で入手)に接続した。次いで、MEAを調整プロトコル下で約40時間動作させて、見かけの定常状態性能を達成した。プロトコルは、それぞれ、動作フェーズとシャットダウンフェーズとの、各約40分と45分の期間の繰り返しサイクルからなっていた。動作フェーズにおいて、75℃の電池温度、70℃の露点、101/101kPaA H2/空気で、それぞれ800及び1800sccmのH2及び空気の一定流量でMEAを動作させた。40分間の動作フェーズの際、電池電圧は、0.85V~0.25Vの5分間の長い分極サイクルと、0.40Vで5分間の長い電位ホールドとの間で交互にした。45分間のシャットダウンフェーズの際、電池電位を開回路電圧に設定し、電池へのH2及び空気流を停止し、電池温度を室温まで冷却する一方、液体の水をそれぞれ0.26g/分及び0.40g/分でアノード及びカソード電池入口に注入した。理論に束縛されるものではないが、多数の電位サイクルを含む燃料電池の調整プロトコルは、電極触媒内でのナノ細孔の形成を引き起こし得ると考えられる。
【0097】
MEAを調整した後、電極触媒について、以下のように記載される、関連するH2/空気試験条件下で、触媒活性、表面積、及び動作性能を含む、関連する寿命初期(BOL)特性を特性評価した。
【0098】
カソード酸素還元反応(ORR)絶対活性を、飽和150kPaA H
2/O
2、80℃の電池温度で、1200秒間、900mV対100%H
2参照/対電極で測定した。1050秒の保持時間及び電気的ショートの後に測定された電流密度と、O
2の代わりにN
2が作用電極に供給されて測定された2mV/秒サイクリックボルタモグラムから算出された水素クロスオーバー電流密度とを加算することによって、ORR絶対活性(A/cm
2又はmA/cm
2)を得た。電極触媒質量活性は、補正されたORR絶対活性(A/cm
2
planar)をカソードPt又はPGM面積担持量(mg/cm
2)で除算して質量活性(A/mg
Pt又はA/mg
PGM)を得ることによって、単位貴金属含有量当たりの触媒活性の尺度として計算される。電極触媒質量活性を、以下の表2、並びに
図3A及び
図3Bに示す。
【表2】
【0099】
飽和した101キロパスカル絶対圧(kPaA)H
2/N
2及び70℃の電池温度下で、サイクリックボルタンメトリー(100mV/秒、0.65V~0.85V、平均100スキャン)を介して、カソード触媒表面増強因子(SEF、m
2
Pt/m
2
planar又は同様にcm
2
Pt/cm
2
planar)を測定した。酸化波及び還元波について積分水素アンダーポテンシャル析出(H
UPD)電荷(μC/cm
2
planar)の平均を取り、220μC/cm
2Ptで除算することによってSEFを算出した。SEF(m
2
Pt/m
2
planar)をPt又は白金族金属(PGM)の合計面積担持量(g
Pt/m
2
planar又はg
PGM/m
2
planar)で除算することにより、電極触媒の比表面積(m
2
Pt/g
pt又はm
2
Pt/g
PGM)を、触媒分散の尺度として計算した。電極触媒の比面積を、上記の表2、並びに
図3C及び
図3Dに示す。
【0100】
80℃の電池温度、68℃の露点、150/150kPaA H
2/空気で測定したH
2/空気分極曲線を介して、空気に対する2.0のH
2及び2.5の一定の化学量論比を用いて、電極触媒の動作性能を評価した。電流密度を最初に20mA/cm
2に設定し、次いで電池電圧を0.40V超で維持しながら段階的に増加させた後、電流密度を20mA/cm
2まで段階的に低下させた。各々の電流密度で電池を2分間保持した。特定の電流密度20mA/cm
2の電池電圧を「H
2/空気性能」として報告し、上記の表2、及び
図3Eで報告する。
【0101】
実施例2の触媒を、加速負荷試験(AST)下で更に評価し、これにより電極触媒金属の安定性を評価した。この試験において、電池を、80℃の電池温度、200/200sccm H
2/N
2、101kPaA、100%の入口相対湿度(RH)で動作させ、カソード電極電位は、50mV/秒の走査速度で水素対/参照電極に対して0.6V~1.0Vでサイクルさせた。理論に束縛されるものではないが、多数の電位サイクルを含むASTプロトコルは、電極触媒内でのナノ細孔の形成を引き起こし得ると考えられる。10,000又は15,000回のASTサイクル後、初期調整プロトコルを使用してMEAを約16時間再調整した後、カソード表面積、ORR活性、及びH
2/空気分極曲線を再び測定して、性能損失の速度及び程度を決定した。AST、再調整、及び特性評価のこのプロセスを繰り返すことにより、電池を合計30,000回のASTサイクルに暴露した。30,000回のASTサイクル後の比面積、質量活性、及びH
2/空気性能の変化を、以下の表3に列挙する。
【表3】
【0102】
実施例5
Pt3Ni7の堆積中にAu金属が合金に組み込まれたことを除いては、実施例1~4について記載したように、実施例5を調製して評価した。
【0103】
第1の「ST」Pt3Ni7層を、約1nmの平面等価厚で堆積させ、その上にAu層を堆積させた。Au平面等価厚は、約0.08nmであった。約0.10mgPt/cm2のPt面積担持量が達成されるまで、この堆積プロセスを135回繰り返した。
【0104】
担持量及び組成情報を上記表1に示す。初期調整後の触媒質量活性、比面積、及びH
2/空気性能を、上記の表2で報告し、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、及び
図3Eに示す。30,000回のASTサイクル試験後の比面積、質量活性、及びH
2/空気性能の変化を、上記表3に列挙する。
【0105】
比較例A
Auが触媒に組み込まれていないことを除いては、実施例1について記載したように、比較例Aを調製し、評価した。
【0106】
担持量及び組成情報を上記表1に示す。初期調整後の触媒比面積、質量活性、及びH
2/空気性能を、上記の表2で報告し、
図3A、
図3B、
図3C、
図3D、及び
図3Eに示す。30,000回のASTサイクル試験後の比面積、質量活性、及びH
2/空気性能の変化を、上記表3に列挙する。
【0107】
比較例B
電極触媒堆積中、Pt3Ni7担持量及び層の平面等価厚を異なるものにしたことを除いては、比較例Aについて記載したように、比較例Bを調製して評価し、AST耐久性試験下では評価しなかった3層のPt3Ni7を、各々約52nmの平面等価厚で堆積させ、約0.125mgPt/cm2のPt面積担持量を得た。
【0108】
【0109】
初期調整後の触媒比面積、質量活性、及びH
2/空気性能を、下記表5で報告する。
【表5】
【0110】
実施例6~10
Pt3Ni7の堆積後にAuを表面上に堆積させ、Auを電子ビームコーターで堆積させ、Au担持量を電子ビームコーター内で決定したことを除いては、比較例Bに記載したように実施例6~10を調製し、評価した。
【0111】
実施例6については、電子ビームコーター装置(CHA Industries(Fremont,CA)からModel MK-50として入手)を使用して、Auの層を上記で調製したNSTF触媒上にコーティングした。基材としてNSTF触媒をマウントした1つの遊星回転子を、Au源をその昇華点まで加熱する270度の電子ビームを用いて真空下のシステム内で回転させた。Auが昇華した際に、石英結晶モニター(CHA Industries(Fremont,CA)から商品名「INFICON」Model 6000で入手)を用いてAuの堆積量及び堆積速度をリアルタイムで監視した。NSTF触媒上で0.5マイクログラム/cm2のAu堆積担持量が達成されると、電子ビームの電力を停止し、堆積を終了した。次いで、システムを大気開放し、基材を取り出した。実施例7、8、9、及び10は、実施例6について記載したように調製したが、Au担持量はそれぞれ、1.0、1.4、1.9、及び3.9マイクログラム/cm2であった。
【0112】
実施例6、7、8、9、及び10についてのAu含有量はそれぞれ、0.1、0.2、0.3、0.5、及び0.9原子%であった。実施例6、7、8、9、及び10のAu層の平面等価厚は、それぞれ、0.26nm、0.52nm、0.75nm、1.0nm、及び2.0nmであった。実施例6、7、8、9、及び10のPt対Auの重量比は、それぞれ、250:1、125:1、86.8:1、64.4:1、及び32.4:1であった。
【0113】
担持量及び組成情報を上記表4に示す。初期調整後の触媒比面積、質量活性、及びH2/空気性能を、上記表5で報告する。
【0114】
本発明の範囲及び趣旨から外れることなく、本開示の予測可能な修正及び変更が当業者にとって自明であろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。