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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】揮散容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/00 20060101AFI20220523BHJP
   B65D 41/04 20060101ALI20220523BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D41/04
B65D51/22 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019525264
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2018020153
(87)【国際公開番号】W WO2018230307
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2017117878
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157887
【氏名又は名称】KISCO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391003392
【氏名又は名称】大幸薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】田中 和人
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴久
(72)【発明者】
【氏名】大石 哲史
(72)【発明者】
【氏名】田口 和彦
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206730(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150637(JP,U)
【文献】登録実用新案第3100971(JP,U)
【文献】国際公開第2015/107030(WO,A1)
【文献】特開2016-041608(JP,A)
【文献】特表2013-526459(JP,A)
【文献】実開平04-088946(JP,U)
【文献】特開2010-280394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記インナーキャップと前記アウターキャップの相対的回転により、前記インナーキャップの揮散口と前記アウターキャップの揮散口の開口度合いの調整が可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載の揮散容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は揮散容器に関するものであり、より詳細には、使用時の安全、衛生等のために、一旦締め付けた後キャップを取り外すことができなくなる構造の揮散容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
揮散容器は、芳香剤、殺菌剤、殺虫剤等を収納し、時間をかけてそれらを揮散させるためのものであるが、前記揮散容器に収納する内容物が人体にとって有害である場合が少なくない。そのような内容物を対象とする揮散容器の場合、年少者や高齢者が誤って蓋を外し、薬液等がこぼれ出して人体に危害が及ぶおそれがあることは否めない。
【0003】
例えば、二酸化塩素分子を利用して室内のウイルス・細菌を除去し、カビの成育を抑制し、また、生ごみ等の悪臭を消臭する室内置き型タイプの揮散装置が市販されている。この揮散装置は、ボトル内に液状薬剤が充填されて密封された状態で市販されており、使用に際して密封蓋を外し、同梱されている顆粒剤を投入して液状薬剤と化学反応させ、発生した二酸化塩素ガスを室内に揮散させるもので、顆粒剤投入後に同梱の揮散口を有する揮散キャップに付け替えるタイプのものである。
【0004】
上記で使用される揮散容器の場合、顆粒剤と液状薬剤とを化学反応させて二酸化塩素ガスを発生させた後に被着する付け替え揮散キャップには、取り外し抑制対策が施されていない。そのような揮散容器の場合、誤って揮散キャップが外され、薬液等がこぼれ出して人体に危害が及ぶおそれがある。
【0005】
従来、このような場合を考慮して、蓋を外れにくくするための工夫が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、これらの構成の場合、蓋が外れにくいといっても、それは子供の力でも取り外せるレベルのものであるに過ぎないので、これらの構成を以て、上記危害の発生を有効に防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-173186号公報
【文献】特開平11-262518号公報
【文献】特許第5389533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従来の揮散容器の場合は、揮散キャップの取り外し抑制対策が十分に施されていないため、誤って揮散キャップが外されて薬液等がこぼれ出し、人体に危害が及んだり、幼児が内容物を口にするといった危険があった。
【0008】
そこで本発明は、揮散キャップが使用時に一旦締め付けられると、その後取り外すことが確実にできなくなるため、誤って揮散キャップが外されて中身が流出し、人体に危害が及ぶおそれがない揮散容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、螺設したボトルネックにねじ付けられるインナーキャップと前記インナーキャップに被装されるアウターキャップとから成る揮散キャップを備えた揮散容器であって、
前記インナーキャップと前記アウターキャップにはそれぞれ連通し合う揮散口が開設され、前記インナーキャップの内周面下部に、前記アウターキャップを介して前記インナーキャップを緊締することによって前記ボトルネックの最下部に設けられる抜け止めフランジを乗り越え、その後前記抜け止めフランジによって係止される一連の又は不連続の突条が形成され、
前記インナーキャップの外周面下部に、前記アウターキャップの内周面下部に形成される環溝内に摺動可能に嵌合する一連の又は不連続の突環が形成され、
また、前記インナーキャップの外周面上部に段差を有する斜面の環状段部が形成されると共に、前記アウターキャップの内周面に、前記環状段部の斜面に沿って摺動する凸部が形成され、前記アウターキャップは、前記凸部が前記環状段部の段差によってロックされることにより、前記インナーキャップに対して一回転方向においてのみ作用して前記インナーキャップを回動させることを特徴とする揮散容器である。
【0010】
一実施形態においては、前記段差は、前記環状段部に90度間隔で4箇所に又は180度間隔で2箇所に設けられ、前記凸部は、前記アウターキャップの内周面に90度間隔で4箇所に又は180度間隔で2箇所に設けられる。また、一実施形態においては、前記インナーキャップの外周面下部に形成される突環は、前記アウターキャップの内周面下部に形成される環溝内に遊びをもって嵌合される。
【0011】
一実施形態においては、前記インナーキャップと前記アウターキャップの相対的回転により、前記インナーキャップの揮散口と前記アウターキャップの揮散口の開口度合いの調整が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る揮散容器は上記構成であるため、揮散キャップが使用時に一旦締め付けられると、インナーキャップの突条がボトルネックの抜け止めフランジを乗り越えて抜け止めフランジによって係止されるため、その後揮散キャップを取り外すことが確実にできなくなる。そのため、誤って揮散キャップが外されて中身が流出し、人体に危害が及んだりするおそれがないという効果があり、揮散容器として好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る揮散容器の構成を示す分解斜視図である。
図2】本発明に係る揮散容器の要部の構成を示す縦断面図である。
図3】本発明に係る揮散容器のインナーキャップを示す正面図である。
図4】本発明に係る揮散容器のアウターキャップを示す正面図及び底面図である。
図5】本発明に係る揮散容器のボトルネックとインナーキャップとアウターキャップの結合状態を示す縦断面図である。
図6】本発明に係る揮散容器のインナーキャップとアウターキャップの揮散口の種々の形状例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る揮散容器につき、添付図面に依拠して説明する。図1は、本発明に係る揮散容器の一実施形態の分解斜視図で、そこに記載されるように本揮散容器は、ボトル1と、ボトル1のボトルネック2にねじ付けられる揮散キャップとから成るものである。揮散キャップは、インナーキャップ11と、インナーキャップ11に係合被装されるアウターキャップ21とで構成される二重キャップである。通例、インナーキャップ11とアウターキャップ21はポリプロピレンなどの樹脂製であるが、キャップを握持した際の変形を抑止するために、剛性に優れるグレードのものが好ましい。また、好ましくは、インナーキャップ11とアウターキャップ21間の摩擦を減らし、両キャップ間の滑りをよくするために、表面塗布型又は練込み型の帯電防止剤が用いられる。
【0015】
ボトル1のボトルネック2には、インナーキャップ11をねじ付けるためのネジ山3が形成され、また、ネジ山3の下側に環状の抜け止めフランジ4が形成される。
【0016】
インナーキャップ11の上面はドーム形状等にされ、そこに適宜サイズの揮散口12が多数穿設される。揮散口12は、後述するアウターキャップ21の揮散口22に対応するものであり、揮散口12,22の開口度合いは、インナーキャップ11とアウターキャップ21の相対的回動操作によって調整可能である。揮散口12,22の形状及び配置は任意で、図1に示されるような長孔を放射状に配置するものに限らず、図6に例示されるような、多種多様な形状及び配置が可能である。
【0017】
インナーキャップ11の上面周縁には、複数個所に段差14を設けた環状段部13が形成される。段差14は、例えば、インナーキャップ11の上面周縁に90度間隔で4箇所に配設され、あるいは、180度間隔で2箇所に配設されるが、その他の間隔にしてもよいことは言うまでもない。各段差14間は斜面にされるが(図2,3参照)、反時計回りに回転させた際の摩擦抵抗を極力減らすために、なるべく緩やかな斜面とすることが好ましい。また、インナーキャップ11の外周面下部に、一連の又は不連続の環状の突環15が形成され、更にその内周面に、ボトルネック2のネジ山3に対応するネジ山16が形成されると共に、その下側に、一連の又は不連続の突条17が形成される。図2に示される例では、突条17は4つに分断されている。
【0018】
アウターキャップ21の上面はインナーキャップ11の上面に対応するドーム形状等にされ、上記のように揮散口22が多数形成される。アウターキャップ21の内周面の上部に、90度間隔で4箇所、あるいは、180度間隔で2箇所、環状段部13の斜面に沿って摺動する凸部23が形成される(図2,3参照)。例えば、凸部23は、揮散口22形成位置に一つ置きに配設される(図2,3参照)。また、アウターキャップ21の内周面下部に、インナーキャップ11の突環15が嵌入する環溝24が形成され、その下側に、環溝24を画成する環状受け部25が形成される(図2,3参照)。突環15は、環溝24内にある程度の遊びをもって嵌合される。また、環状受け部25の内径は、突環15の外径よりも若干小さくなるように設計される。
【0019】
本発明に係る揮散容器は、例えば、液状薬剤が充填されて密封シールが貼られ、後に廃棄される仮蓋が被着されたボトル1と、インナーキャップ11とアウターキャップ21から成る揮散キャップと、使用時にボトル1内に投入される顆粒剤とが同梱されて販売に供される。そして、使用時に仮蓋を外して密封シールを剥がし、ボトル1内に顆粒剤を投入して液状薬剤と化学反応を起こさせる。その後、インナーキャップ11とアウターキャップ21の揮散キャップをねじ付け、化学反応により発生するガスを揮散口12,22を通して揮散させる。
【0020】
インナーキャップ11とアウターキャップ21から成る揮散キャップのねじ付けに際しては、先ず、アウターキャップ21をインナーキャップ11に被せ、押し込むことで、突環15を強制的に環溝24内に滑り込ませる。この操作は、アウターキャップ21がある程度の弾性を有していることで可能となる。かくして、突環15が環溝24内に収まり、そこにおいて係止されるため、アウターキャップ21はインナーキャップ11から外せなくなる。
【0021】
このようにアウターキャップ21をインナーキャップ11に被着した状態において、アウターキャップ21の内周面に配設さている凸部23がインナーキャップ11の環状段部13の斜面に当接する。そして、突環15は環溝24内に密に収まっている訳ではなく、若干の遊びがあるので、アウターキャップ21はインナーキャップ11に対して回動可能である。
【0022】
但し、アウターキャップ21の凸部23が環状段部13の下り斜面に沿って摺動するように回動させる場合(通例、時計回り)は、段差14に当たったところでそれ以上の回動が阻止される。一方、逆方向に回動させた場合(通例、反時計回り)は、凸部23が環状段部13の上り斜面に沿って摺動するため、段差14を越えることができる。即ち、アウターキャップ21のその方向への回動(空回り)は可能である。
【0023】
上記のようにしてアウターキャップ21をインナーキャップ11に被着した状態で、インナーキャップ11をボトル1のボトルネック2にねじ付けていくが、そのねじ付けは、アウターキャップ21を回すことによって達成される。即ち、アウターキャップ21を、通例時計回り方向であるねじ付け方向に回動させると、凸部23が段差14に当たることで、その回動力がそのままインナーキャップ11に伝達される。かくしてアウターキャップ21をねじ付け方向に回動させると、インナーキャップ11が一体に回動し、先ず、突条17がボトルネック2のネジ山3に螺合して螺進し、次いでネジ山16がネジ山3に螺合して螺進する。
【0024】
やがて突条17が抜け止めフランジ4に当接するに至って抵抗が生ずるが、そのまま強く回動させると、突条17が抜け止めフランジ4を乗り越える。この突条17の抜け止めフランジ4の乗り越えは、単なる押し込みではなく、螺進力によるため、比較的小さな力で簡単に行うことができる。このようにして突条17が抜け止めフランジ4を乗り越えると、その後突条17は抜け止めフランジ4に確固と係止されて、抜き取り不可となる。
【0025】
このように本発明に係る揮散容器の場合、使用に際して内外二重の揮散キャップに付け替え、一端締め付けると、以後揮散キャップを取り外すことができなくなるので、不用意に揮散キャップが外されて中身が流出するような事態の発生が回避され、当該揮散容器を長期間安全且つ衛生的に使用し続けることができるものであり、その産業上の利用可能性は大である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6