(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】マーキング装置
(51)【国際特許分類】
B41K 1/04 20060101AFI20220523BHJP
B41K 1/50 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B41K1/04 E
B41K1/50 J
(21)【出願番号】P 2018111568
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】影山 伴廣
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-114770(JP,A)
【文献】特開平10-250207(JP,A)
【文献】特開2002-263976(JP,A)
【文献】特開昭48-011115(JP,A)
【文献】特開2018-016060(JP,A)
【文献】特開2013-248855(JP,A)
【文献】実開平05-039823(JP,U)
【文献】特表2002-537127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/00-5/08
B23B 31/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体にソケットを介してスタンパー部材を装着するマーキング装置であって、
前記ソケットはチャック機構を有しており、
一方、前記スタンパー部材は、前記ソケットに嵌合可能なプラグ部を有する外筒体と、該外筒体の内側を上下摺動可能に設けられた内筒体と、前記内筒体または前記外筒体のいずれか一方に装着された印判とから構成されており、
前記内筒体とソケットの間には、捺印時において前記内筒体に対して弾力を付与するとともに、前記チャック機構のチャック解除時において前記スタンパー部材がソケットから飛び出すように弾力を付与する弾性部材が装着されていることを特徴とするマーキング装置。
【請求項2】
前記内筒体は、インキを吸蔵するインキパッドと、前記インキパッドに印面を臨ませて印判を支承するスライダーから構成されており、前記外筒体は、前記印判を枢支し前記弾性部材を介して前記スライダーを摺動可能に収納し、前記弾性部材の反発力に抗して前記スライダーを押圧する事により前記スライダー内で前記印判を反転させてマーキングを行えるようにした請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
前記内筒体は、印判とインキ吸蔵体で構成されている請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項4】
チャック機構は、筒状のソケット本体部と外周を軸方向に摺動する筒状の
摺動部と、
前記ソケット本体部の円周方向に放射状に穿孔された孔部と、
この孔部内に配置され前記筒状の
摺動部に押されて中心に向けて突出可能なピン部材から構成され、
前記
摺動部でピン部材を中心に向けて押し込み、
ピン部材の先端部をプラグ部に設けた溝に係合させることによりスタンパー部材を固定する構造となっている請求項1~3のいずれかに記載のマーキング装置。
【請求項5】
プラグ部の溝内には凸部が形成されていて、この凸部が隣接するピン部材の間に挟まれて固定されることによりスタンパー部材の廻り止めをする構造となっている請求項1~3のいずれかに記載のマーキング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンパー部材の取り外し操作を簡単かつスピーディーに行うことができるマーキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤの側面などにマーキングを行うスタンプ式のマーキング装置が広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このようなマーキング装置においては、長期間使用しているとインキがなくなるため補充する必要があり、また、印判にゴミ等が溜まると除去処理する必要がある。そして、いずれの場合もマーキング装置からスタンパー部材を取り外したうえでメンテナンスする必要があった。ところが、スタンパー部材を取り外す作業は煩雑であり、また時間もかかって面倒であるという問題があった。
【0003】
一方、特許文献2に示されるように、マーキング装置に対して番号自動送り捺印器を二重式のソケットからなる継手を利用して取り付ける構造とすることにより、番号自動送り捺印器をワンタッチ式で着脱可能とした捺印機が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献2に示される継手の場合は、番号自動送り捺印器をタッチ式で着脱するというものの、継手から番号自動送り捺印器を取り外す際には、フック板を下方に引っ張って係合を解除したうえでソケットをスライド移動する必要があり、依然として操作が複雑であるという問題が残っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-16060号公報
【文献】特開昭48-11115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、スタンパー部材の取り外し操作を簡単かつスピーディーに行うことができ、これによりインキの補充や印判上のゴミの除去等のメンテナンス作業を短時間で効率よく行うことができるマーキング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明のマーキング装置は、装置本体にソケットを介してスタンパー部材を装着するマーキング装置であって、
前記ソケットはチャック機構を有しており、
一方、前記スタンパー部材は、前記ソケットに嵌合可能なプラグ部を有する外筒体と、該外筒体の内側を上下摺動可能に設けられた内筒体と、前記内筒体または前記外筒体のいずれか一方に装着された印判とから構成されており、
前記内筒体とソケットの間には、捺印時において前記内筒体に対して弾力を付与するとともに、前記チャック機構のチャック解除時において前記スタンパー部材がソケットから飛び出すように弾力を付与する弾性部材が装着されていることを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、前記内筒体は、インキを吸蔵するインキパッドと、前記インキパッドに印面を臨ませて印判を支承するスライダーから構成されており、前記外筒体は、前記印判を枢支し前記弾性部材を介して前記スライダーを摺動可能に収納し、前記弾性部材の反発力に抗して前記スライダーを押圧する事により前記スライダー内で前記印判を反転させてマーキングを行えるように構成されており、これを請求項2に係る発明とする。
【0009】
好ましい実施形態によれば、前記内筒体は、印判とインキ吸蔵体で構成されており、これを請求項3に係る発明とする。
【0010】
好ましい実施形態によれば、前記チャック機構は、筒状のソケット本体部と外周を軸方向に摺動する筒状の摺動部と、
前記ソケット本体部の円周方向に放射状に穿孔された孔部と、
この孔部内に配置され前記摺動部の内周面に押されて中心に向けて突出可能なピン部材から構成され、
前記摺動部でピン部材を中心に向けて押し込み、ピン部材の先端部をプラグ部に設けた溝に係合させることによりスタンパー部材を固定する構造が好ましく、これを請求項4に係る発明とする。
【0011】
また、その他の好ましい実施形態によれば、プラグ部の溝内には凸部が形成されていて、この凸部が隣接するピン部材の間に挟まれて固定されることによりスタンパー部材の廻り止めをする構造となっているものが好ましく、これを請求項5に係る発明とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、装置本体にソケットを介してスタンパー部材を装着するマーキング装置であって、前記ソケットはチャック機構を有しており、一方、前記スタンパー部材は、前記ソケットに嵌合可能なプラグ部を有する外筒体と、該外筒体の内側を上下摺動可能に設けられた内筒体と、前記内筒体または前記外筒体のいずれか一方に装着された印判とから構成されており、前記内筒体とソケットの間には、捺印時において前記内筒体に対して弾力を付与するとともに、前記チャック機構のチャック解除時において前記スタンパー部材がソケットから飛び出すように弾力を付与する弾性部材が装着されているものとしたので、チャック機構のチャック解除と同時にスタンパー部材が自動的にソケットから飛び出すこととなり、インキタンクや印判を迅速に取り外すことができるため、インキ補充等のメンテナンス作業を短時間で効率よく行えることとなる。
【0013】
また、請求項2に係る発明では、前記内筒体は、インキを吸蔵するインキパッドと、前記インキパッドに印面を臨ませて印判を支承するスライダーから構成されており、前記外筒体は、前記印判を枢支し前記弾性部材を介して前記スライダーを摺動可能に収納し、前記弾性部材の反発力に抗して前記スライダーを押圧する事により前記スライダー内で前記印判を反転させてマーキングを行えるように構成されているので、反転式の印判に適用することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明では、前記内筒体は、印判とインキ吸蔵体で構成されているので、非反転式の印判に適用することができる。
【0015】
また、請求項4に係る発明では、チャック機構は、筒状のソケット本体部と外周を軸方向に摺動する筒状の摺動部と、前記ソケット本体部の円周方向に放射状に穿孔された孔部と、この孔部内に配置され前記摺動部の内周面に押されて中心に向けて突出可能なピン部材から構成され、前記摺動部でピン部材を中心に向けて押し込み、ピン部材の先端部をプラグ部に設けた溝に係合させることによりスタンパー部材を固定する構造としたので、簡単な構造で正確かつ確実にスタンパー部材を固定することができ、また、摺動部のスライド移動のみでチャック状態とチャック状解除状態を選択し保持することができる。
【0016】
また、請求項5に係る発明では、プラグ部の溝内には凸部が形成されていて、この凸部が隣接するピン部材の間に挟まれて固定されることによりスタンパー部材の廻り止めをする構造となっているものとしたので、チャック時には凸部が隣接するピン部材の間に挟まれた状態となり回動が防止されるため、確実にスタンパー部材の廻り止めが行われることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のチャック時における実施の形態を示す正面図である。
【
図3】本発明のチャック解除時の形態を示す断面図である。
【
図7】スタンパー部材を取付治具と分離した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明のチャック時における実施の形態を示す正面図であり、
図2はその断面図である。また、
図3は本発明のチャック解除時の形態を示す断面図である。
【0019】
本発明のマーキング装置は、装置本体30の先端に取付治具1を設け、この取付治具1にソケット2を介してスタンパー部材3を装着した構造となっている。なお、前記取付治具1とソケット2とは、取付治具1の下部に形成した雄ネジ4a(
図7を参照)とソケット2の上部に形成した雌ネジ4bとを螺合することで連結されている。
【0020】
図4にソケット2の斜視図を示す。このソケット2は、チャック機構を有している。
チャック機構としては、一般的なボール式のチャック機構を用いることができる。図示のチャック機構では、筒状のソケット本体部2aと、その外周を覆って軸方向に摺動可能な筒状の摺動部2bと、前記ソケット本体部2aの円周方向に放射状に穿孔された孔部2cと、この孔部2c内に配置され前記摺動部2bの内壁面に押されて中心に向けて突出可能なピン部材2dから構成されている。そして、前記摺動部2bでピン部材2dを中心に向けて押し込み、その先端部をプラグ部に設けた溝(
図5を参照)に係合させることによりスタンパー部材3を固定する構造となっている。なお、前記ソケット本体部2aと摺動部2bの間にはコイルスプリング(図示せず)が配置されており、常に摺動部2bを下方に向けて弾発した状態となっている。
このチャック機構によって、簡単な構造で正確かつ確実にスタンパー部材3を固定することができ、また、摺動部2bのスライド移動のみでチャック状態とチャック状解除状態を選択し保持することができることとなる。
【0021】
前記スタンパー部材3は、前記ソケット2に嵌合可能なプラグ部6を有する外筒体22と、該外筒体22の内側を上下摺動可能に設けられた内筒体21と、から構成されている。
図示のもの(
図1~
図8を参照)では、前記内筒体21はインキを貯留するインキタンク7と、前記インクタンク7のインキを吸蔵するインキパッド11と、前記インキパッド11に印面を臨ませて印判5を支承するスライダーから構成されている。また、外筒体22は、印判5が枢支されており、前記外筒体22の外周壁にはプラグ部6と、印判5を保護するカバー部9から構成されており、前記内筒体21が外筒体22を軸方向に自在に摺動できる構造となっている。
【0022】
前記スライダー10の周壁に設けたガイド溝10a内に印判5の支軸が挿入されていて、捺印時にスライダー10が外筒体22のカバー部9内へ収納されるように移動すると、ガイド溝10aに案内されて印判5が反転し印面を露出する、いわゆる印判反転式の構造となっている。
【0023】
また、前記内筒体21とソケット2の間には、コイルバネのような弾性部材8が装着されている。その為、マーキング装置は、不使用時においては、弾性部材8の弾性反発力の作用により、外筒体22からスライダー10が突出し、全体が伸長した状態にある。この初期状態では、印判5がインキパッド11に当接している。次に、マーキングを開始する際には、外筒体22を弾性部材8の反発力に抗して押し下げると、外筒体22の中にスライダー10が入り込むように全体が縮退する。このとき、外筒体22に枢支される印判5がスライダー10の縦長のガイド溝10aに案内されて、スライダー10の中を下方に移動する。更には、前記弾性部材8は、前記チャック機構のチャック解除時においては、前記スタンパー部材3がソケット2から飛び出すように弾力を付与するものであり、インキの補充や印判上のゴミの除去等のメンテナンス作業を効率よく行うことを可能にする。
【0024】
前記プラグ部6の外周には溝6aが形成されていて、前述したソケット2のチャック機構によりワンタッチ式で把持され固定されるように構成されている。
【0025】
また、前記プラグ部6の溝6a内には凸部6bが形成されており、この凸部6bが隣接するピン部材2d、2dの間に挟まれて固定されることによってスタンパー部材3の廻り止めを保証する構造となっている。なお、図示のものでは、凸部6bを2個形成した場合を示しているが、個数については任意に選択することできる。
【0026】
以上は、印判反転式の構造について説明したが、
図9に示されるように、内筒体21は、印判5とインキ吸蔵体12、該インキ吸蔵体12の後端に設けたインキを貯留するインキタンク7で構成されている非反転式の構造であってもよい。この場合は、スライダーがないため印判5は常に先端側に向いた状態となっている。この印判が非反転式の構造の場合、前記内筒体21とソケット2の間に弾性部材8が装着されているので、捺印時においては印判5に対して弾力を付与するとともに、前記チャック機構のチャック解除時においては前記スタンパー部材3がソケット2から飛び出すように弾力を付与することとなる。
【0027】
以上のように構成したマーキング装置においては、
図1および
図2に示されるように、スタンパー部材3はプラグ部6がソケット2のチャック機構でチャックされて固定状態となっており、マーキング装置の稼働に伴い被捺印物にマーキング処理が行われる。
一方、長期間使用してインキがなくなった場合や、印判にゴミ等が溜まって捺印面が不鮮明になった場合は、マーキング装置からスタンパー部材3を取り外したうえでメンテナンスを行う必要がある。この場合、
図3に示されるように、ソケット2のチャック機構を解除するには摺動部2bのスライド移動のみでチャック解除することができ、更には解除と同時にスタンパー部材3が弾性部材8に弾発されてソケット2から離脱する方向へ飛び出すため、インキ補充等のメンテナンス作業を短時間で効率よく行うことができる。また、メンテナンスを終えたスタンパー部材3は、プラグ部6をソケット2にチャックさせれば簡単に連結することができる。
【0028】
また、プラグ部6の溝6a内に凸部6bを形成した場合は、チャック時において前記凸部6bが隣接するピン部材2d、2dの間に挟まれた状態となり回動が防止されるため、確実にスタンパー部材3の廻り止めを行うことが可能となるという利点もある。
【符号の説明】
【0029】
1 取付治具
2 ソケット
2a ソケット本体部
2b 摺動部
2c 孔部
2d ピン部材
3 スタンパー部材
4a 雄ネジ
4b 雌ネジ
5 印判
6 プラグ部
6a 溝
6b 凸部
7 インキタンク
8 弾性部材
9 カバー部
10 スライダー
10a ガイド溝
11 インキパッド
12 インキ吸蔵体
21 内筒体
22 外筒体
30 装置本体