(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】パルススプレー装置のケーブルダメージ診断装置及び診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20220523BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20220523BHJP
B05C 11/00 20060101ALN20220523BHJP
【FI】
G01R31/58
B05B12/00 A
B05C11/00
(21)【出願番号】P 2018120007
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】393011038
【氏名又は名称】リョーエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌司
(72)【発明者】
【氏名】杉坂 正美
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078860(JP,A)
【文献】特開2007-046954(JP,A)
【文献】特開2004-081914(JP,A)
【文献】実開昭56-041270(JP,U)
【文献】特開2007-007673(JP,A)
【文献】国際公開第2011/083841(WO,A1)
【文献】特開2002-144276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/00、
31/24-31/25、
19/00-19/32
B05C 7/00-21/00、
B05B 12/00-12/14、
13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルススプレー装置に設けられたバルブにパルス状に電気を送るケーブルのダメージを診断するケーブルダメージ診断装置であって、
バルブ動作用の電流がケーブルに流れたか否かを検出可能な検出部と、
バルブ動作用の電流を
パルス状に流す指令信号の
発信回数履歴の情報と、検出部
で確認された電流が流れた回数と、を比較する比較部と、
を備えたケーブルダメージ診断装置。
【請求項2】
比較部は、指令信号がオンになってから所定時間経過後のポイントでの検出部の検出結果と指令信号を比較する請求項1に記載のケーブルダメージ診断装置。
【請求項3】
比較部は、指令信号がオンになってからオフになるまでの一パルスの間の、複数ポイントで、検出部の検出結果と指令信号を比較する請求項1又は2に記載のケーブルダメージ診断装置。
【請求項4】
ケーブルに適切に電流が流れていないと判断される割合が所定値以上となった場合に警報を発生させる警報発生部を備えた請求項1乃至
3の何れかに記載のケーブルダメージ診断装置。
【請求項5】
パルススプレー装置に設けられたバルブにパルス状に電気を送るケーブルのダメージを診断するケーブルダメージ診断方法であって、
バルブ動作用の電流がケーブルに流れた
ことが確認された回数と、バルブ動作用の電流を
パルス状に流す指令信号の
発信回数履歴の情報と、を比較するケーブルダメージ診断方法。
【請求項6】
指令信号がオンになってから所定時間経過後のポイントで検出結果と指令信号を比較する請求項
5に記載のケーブルダメージ診断方法。
【請求項7】
指令信号がオンになってからオフになるまでの一パルスの間に、複数ポイントで、検出部の検出結果と指令信号を比較する請求項
5又は
6に記載のケーブルダメージ診断方法。
【請求項8】
ケーブルに適切に電流が流れていないと判断される割合が所定値以上となった場合に警報を発生させる請求項
5乃至
7の何れかに記載のケーブルダメージ診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルススプレー装置のケーブルダメージ診断装置及び診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカストなどに離型剤を薄くまんべんなく塗布することがなされている。近年ではパルス状にスプレーして離型剤を塗布しているが、この際、バルブのコイルを10mSec~100mSecの間隔で入り切りさせて離型剤を塗布している。こういったパルスの動作は、ケーブルで電気を供給して行われるが、バルブは、金型の間のような狭いスペースで移動させねばならないことが多いため、その移動にロボットが用いられることが多い。ところで、ロボットが動作する間にケーブルが完全断線に至り、生産ラインを急停止せざるを得ない状況となることが、よく生じている。このようなケーブルの完全断線は急に起こるわけではなく、ケーブルに対して屈曲やねじりなどの負荷が繰り返し与えられるなかで、ケーブルの部分的な劣化が徐々に積み重なり、生産ラインを急停止せざるを得ない完全断線に至る。このため、初期のダメージ段階でケーブルの異常を検知できれば、ダメージを受けたケーブルを生産の合間を見て交換することで、突発的な完全停止を回避できる。
【0003】
ケーブルのダメージの程度を判断するための方法としては、装置から取り外したケーブルに対して検査用の電圧をかけ、抵抗値を確認することが挙げられる。しかしながら、この方法では、ケーブルを装置などから取り外すことが必須であるため、装置稼働中にケーブルの劣化を判断することはできない。一方、特許文献1には、検査用のパルス信号を注入する注入線などをケーブルに接続することで、装置に接続されたままでもケーブルの断線を検査できるようにする技術が開示されている。しかし、この技術では複雑な構造となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
ところで、本発明者が観察するところによると、完全断線がなされる前の段階で、電流が流れない状態になった後に再び流れるようになるという現象が繰り返される。これは、切断して離れた部分が、ケーブルが動くことなどにより、再び接触するといった状態になることが繰り返されるからであると考えられる。本発明者は、このような現象が生じたことを検出することで、ケーブルを交換するタイミングを知ることができないかと考えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件の発明者は、このような点について鋭意検討する中で、本発明に想到した。本発明の課題は、断線検査専用の信号を注入する注入線をケーブルに接続せずに、かつ、ケーブルを通常接続されている装置から取り外すことなく、ケーブルの劣化を発見できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、パルススプレー装置に設けられたバルブにパルス状に電気を送るケーブルのダメージを診断するケーブルダメージ診断装置であって、バルブ動作用の電流がケーブルに流れたか否かを検出可能な検出部と、バルブ動作用の電流を流す指令信号の情報と、検出部の検出結果と、を比較する比較部と、を備えたケーブルダメージ診断装置とする。
【0008】
また、比較部は、指令信号がオンになってから所定時間経過後のポイントでの検出部の検出結果と指令信号を比較する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、比較部は、指令信号がオンになってからオフになるまでの一パルスの間の、複数ポイントで、検出部の検出結果と指令信号を比較する構成とすることが好ましい。
【0010】
また、比較部は、検出部で確認された電流が流れた回数と、指令信号の発信回数履歴を比較する構成とすることが好ましい。
【0011】
また、ケーブルに適切に電流が流れていないと判断される割合が所定値以上となった場合に警報を発生させる警報発生部を備えた構成とすることが好ましい。
【0012】
また、パルススプレー装置に設けられたバルブにパルス状に電気を送るケーブルのダメージを診断するケーブルダメージ診断方法であって、バルブ動作用の電流がケーブルに流れたか否かの検出結果と、バルブ動作用の電流を流す指令信号の情報と、を比較するケーブルダメージ診断方法とする。
【0013】
また、指令信号がオンになってから所定時間経過後のポイントで検出結果と指令信号を比較するようにすることが好ましい。
【0014】
また、指令信号がオンになってからオフになるまでの一パルスの間に、複数ポイントで、検出部の検出結果と指令信号を比較するようにすることが好ましい。
【0015】
また、検出部で確認された電流が流れた回数と、指令信号の発信回数履歴を比較するようにすることが好ましい。
【0016】
また、ケーブルに適切に電流が流れていないと判断される割合が所定値以上となった場合に警報を発生させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、断線検査専用の信号を注入する注入線をケーブルに接続せずに、かつ、ケーブルを通常接続されている装置から取り外すことなく、ケーブルの劣化を発見できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態におけるパルススプレー装置のバルブとロボットとケーブルと制御盤の関係を表す図である。
【
図2】コイルに通電されて吐出状態となったバルブの内部構造を表す図である。
【
図3】コイルに電気が流れず、吐出停止状態となったバルブの内部構造を表す図である。
【
図4】液ノズルの1サイクルの間に通電の指令信号がパルス状に1000回行われ、これに応じた通電が1000回確認された例を表す図である。ただし、噴射パターンは途中で変更されている。
【
図5】実施形態におけるバルブとケーブルと断線検知リレー(検出部)との関係を表す図である。
【
図6】指令信号にパルス10回分の動作不良が生じたことを表す図である。
【
図7】指令信号にパルス22回分の動作不良が生じたことを表す図である。
【
図8】
図5に示す(1)のケーブルが断線した際の動作不良を表す図である。
【
図9】
図5に示す(2)のケーブルが断線した際の動作不良を表す図である。
【
図10】指令信号がオンからオフになり再びオンになるまでの指令電圧、バルブに流れる電流の有無を表す電圧、判定のポイントの関係の一例を表す図である。
【
図11】一パルスの間に8ポイントで検出部の検出結果と指令信号を比較した結果、正常動作が5回確認され、後半の3回は正常動作が確認されなかった例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に発明を実施するための形態を示す。実施形態のケーブルダメージ診断装置は、パルススプレー装置5に設けられたバルブ55にパルス状に電気を送るケーブル53のダメージを診断するものである。また、このケーブルダメージ診断装置は、バルブ55の動作用の電流がケーブル53に流れたか否かを検出可能な検出部61と、バルブ55の動作用の電流を流す指令信号の情報と、検出部61の検出結果と、を比較する比較部と、を備えている。このため、断線検査専用の信号を注入する注入線をケーブル53に接続せずに、かつ、ケーブル53を通常接続されている装置から取り外すことなく、ケーブル53の劣化を発見できる。
【0020】
また、実施形態のケーブルダメージ診断方法は、パルススプレー装置5に設けられたバルブ55にパルス状に電気を送るケーブル53のダメージを診断するものであり、バルブ55の動作用の電流がケーブル53に流れたか否かの検出結果と、バルブ55の動作用の電流を流す指令信号の情報と、を比較する。このため、断線検査専用の信号を注入する注入線をケーブル53に接続せずに、かつ、ケーブル53を通常接続されている装置から取り外すことなく、ケーブル53の劣化を発見できる。
【0021】
ここで、パルススプレー装置5について説明する。パルススプレー装置5は、気体や液体などを短い間隔で間欠的にスプレーをすることができる装置である。
図1に示すように、実施形態のパルススプレー装置5は、噴射部分として機能するバルブ55を備えたスプレーユニット54を備えており、このスプレーユニット54には、電気を供給するケーブル53が接続されている。スプレーユニット54は多関節ロボット52に取り付けられており、制御盤51からの信号により適切な箇所に適切な経路で移動させることができる。なお、スプレーユニット54を移動させると、ケーブル53に屈曲やねじりなどの負荷がかかり、ケーブル53がダメージを受けることになる。
【0022】
実施形態のスプレーユニット54には、
図2に示すことから理解されるようなバルブ55が備えられている。このバルブ55には、移動可能な鉄心駒57が備えられている。鉄心駒57の周りには、コイル56が備えられており、このコイル56への通電により鉄心駒57を移動させることができる。
図2に示すように、鉄心駒57がバルブ55の吹き出し口59から離れた位置にあると、バルブ55は吐出することができる一方、
図3に示すように、鉄心駒57がバルブ55の吹き出し口59側に移動し、噴出物の移動経路を塞ぐと、バルブ55から噴出物が吐出されることを停止させることができる。実施形態のバルブ55はバネ58を備えており、通常、バネ58により付勢された鉄心駒57は噴出物の移動経路を塞ぐように位置することになるが、コイル56に通電して鉄心駒57を移動させれば、バルブ55は吐出を行うことができる。
【0023】
バルブ55からの吐出をパルス状に行うため、実施形態ではコイル56への通電をパルス状に行う。通常、10mSecから100mSecという間隔で通電状態と遮断状態を切り替え続けることで、パルス状の噴射を実行させる。このため、コイル56に接続されたケーブル53においても、同様な間隔で、通電状態と遮断状態の切り替えが繰り返されることになる。
【0024】
ここで、バルブ55のパルス状の連続動作について、
図4、
図5、
図6、
図7を例に挙げながら説明する。実施形態では、先ず、バルブ55のスプレー塗布を開始するために、開始の信号を出す。すると液体を噴射するバルブ55である液バルブ55の起動信号が入る。液バルブ55の起動信号については
図4では、「液バルブ起動」と付された部分の線で示す。概略、上に山の矩形状となっている。液バルブ55の起動信号が入った後、スプレーがなされるが、数百回パルス状に吐出されると、一サイクルが終了となり液バルブ55の起動信号は切られる。起動信号が切られると、グラフでは山が下がって0に戻る。
【0025】
液バルブ55の起動信号が入ると、「指令信号」がパルス状に発信される。
図4ではこの指令信号は2段目に「PSP出力」として表されている。実施形態の指令信号はあらかじめパターンが決まっており、10mSecから100mSecの間で、それぞれ何秒間スプレーするかプログラムしている。なお、
図4に示す例では、2つのパルスモードを前半と後半で切り替えて使用するような指令信号が示してある。具体的には、前半では、短い間隔で短時間の吐出が繰り返すように指令信号がなされているが、後半では前半よりも長い時間の吐出をするとともに、吐出間の時間も前半よりも長めにするように「指令信号」がなされている。
【0026】
このような「指令信号」に応じて、コイル56への通電がパルス状に高速で繰り返され、駒57が高速で前後に移動する。なお、コイル56に電流が流れたという事は、検出部61である「断線検知リレー」で確認している。
図5に示すことから理解されるように、実施形態では、バルブ55から戻ってくる電気について検出できるように断線検知リレーを配置している。
【0027】
図4では、「断線検知リレー」が検知したという事を、「リードスイッチ」がオンしたということで示しており、3段目に示している。この動作は、かなり高速な入り切りの繰り返しによってなされているため、実際の検知結果では、「パルス指令信号」より少し遅れて「断線検知リレー」の信号を検知している。これは、
図4においても表されており、2段目に表された指令信号の山に対して、3段目に表された断線検知リレーの山は、少しタイミングが遅れるように凸凹ができている。なお、この遅れは一瞬であり、より具体的には、2乃至3mSecの遅れが例示される。
【0028】
比較部は、検出部61で確認された電流が流れた回数と、「指令信号」の発信回数履歴を比較することでケーブル53のダメージを診断することができる。この発信回数履歴は、過去の一定期間にオンとする指令信号が発せられたことを検知した履歴であっても良いし、過去の一定期間にオンとする指令信号が発せられる予定であったことを記録した履歴であっても良い。例えば、
図4に表されるような、オンとする「指令信号」の発信回数履歴が、「断線検知リレー」の検知の回数に合っていれば、問題なく動作していることがわかる。なお、ケーブル53の完全性が必須でない場合もあるため、ケーブル53の健全性の判断に対し、上記回数同士が完全に一致していることが常時必要なわけではない。また、「指令信号」の間隔や長さが「断線検知リレー」により検出した検出結果の間隔や長さに合っていれば、問題ないと判断するようにしてもよい。
【0029】
一般的に、ケーブル53の断線の初期状態では、瞬間的な断線が発生するので、パルススプレー塗布の開始と終了だけ見ていてもケーブル53に不具合が生じつつあるか否かが分からないが、上記したような比較をすることで、瞬間的なパルスの無反応や、パルスの山が飛んでいる状態を把握することができ、断線の初期状態の異常に気付きやすくなる。なお、検出結果のパルスの間隔が比較的長いときは、その「指令信号」のパルス間隔の長さと比べるのが好ましい。パルスが途中で止まっているか、または、パルスを開始すべきところが、開始されていないかという見方をすることで、瞬間的な断線に気づきやすくなる。
【0030】
ここで、動作不良の一例を説明する。
図6、
図7はパルス動作が繰り返される状態を示していて、その中で一瞬断線してパルスが飛んでいる状態を示している。具体的には、
図6では20mSec間隔で繰り返されるパルス動作で、その間10回分のパルスが瞬間的に断線で動いていない状態を示している。
図7では20mSec間隔で繰り返されるパルス動作で、その間22回分のパルスが瞬間的に断線で動いていない状態を示している。
図6及び
図7においては、山が繰り返されるのが正常であるのだが、途中で山が水平になっているところがある。この部分はパルス動作が正常になされていないことを表している。
【0031】
ここで、「指令信号の情報」について、説明する。「指令信号の情報」は、「指令信号」が出たことを計測した情報であっても良いが、「指令信号」を出すために用いられたプログラムなどの情報であっても良い。このような情報を「指令信号の情報」として扱えば、あらためて「指令信号」を検知する必要は無い。この場合、例えば、指令信号を発生させるパルスコントローラから、「指令信号の情報」を取り出せばよい。勿論、この場合、「指令信号」を検知するためにシステムを取り付けることは不要になる。なお、パルスコントローラから、指令信号に関する、タイミング、長さ、間隔に関するいずれの情報も知ることができる。また、「指令信号」を計測するために、バルブ55から制御回路に向けて流れる電気についてバルブ55の直近で計測するよう、指令信号検出部を配置すれば、指令信号が正確に出されているか否かを確認することができる。
【0032】
ここで、指令信号が適切に発生していない例について説明する。
図6及び
図7に薄く示した定期的に発生しているパルスは、本来、発生するはずの「指令信号」である。これに対して濃く示して一部不具合の生じているパルスは、「指令信号」の計測結果を示している。
【0033】
ところで、
図5に示す例ではケーブル53が2本あるが、この何れが切れるかで「指令信号」の出され方に変化が出る。
図5に示す2本のケーブル53のうち、(1)のケーブル53がロボット52の稼働によりダメージを受けると、
図8に示すように、「指令信号」は、しばらく電圧が維持されている状況になる。一方、この間における「断線検知リレー」の検知結果は、
図8の破線に示すように、変化を検知しない状態となる。また、
図5に示す2本のケーブル53のうち、(2)のケーブル53がロボット52の稼働によりダメージを受けると、
図9に示すように、「指令信号」は、しばらく電圧が検知されない状況になる。一方、この間における「断線検知リレー」の検知結果は、
図9の破線に示すように、変化を検知しない状態となる。
【0034】
なお、
図8、
図9に示す例では、「指令信号」の各パルスが20mSec(0.02秒)間隔で連続して発生している途中に、しばらく不具合が生じている状態を示す。より具体的には、0.18秒から0.38秒までの約0.2秒間、パルス動作が断線によって飛んでしまった状態が示されている。この間は本来なら20mSec間隔のパルスが動くはずなので、10回分のパルスが飛んでしまっている。これは先に説明したように、バルブ55を動作させるコイル56を機能させるケーブル53が曲げの繰り返しによって断線したことにより生じている。初期のダメージのため、「指令信号」に不具合が生じたのは、ほんの0.2秒間だけであり、ケーブル53が動くうちに「指令信号」が適切に送られる状態に復旧した。
【0035】
次に、一パルス分の間に、どのように情報を検出するのかについて、説明する。
図10は、複数回繰り替えされるパルスうちの一パルス分が理解できるように、拡大したものである。なお、「指令信号」は、バルブ55がオフの時は、通常、2.5ボルトの位置にある。バルブ55をオンするように指令信号が送られるときは、指令用の電圧が0ボルトに変化する。
図10に示す例では、A点の位置からB点の位置(0ボルト)に向けて電圧が変化する。
【0036】
バルブ55をオンからオフにするときは、電圧が2.5ボルト(通常電圧)よりも大きな値となるように切り替えられる。
図10に示す例では、C点の位置から電圧が上がってD点に変化している。その後、しばらく時間をかけて電圧を通常のオフの値となるように変化させる。
図10に示す例では、このようにしてE点のレベルに下がっていく。なお、実施形態においては、バルブ55をオンからオフに切り替えた当初に電圧が通常電圧よりも大きくなるようにしている。これは、駒57を素早く移動させるためである。
【0037】
次に、他の動きについて説明する。バルブ55が動いたことなどは、コイル56などに電流が流れたことを検知して発生する「断線検知リレー」で確認している。この検知結果は、
図10では太線で示している。バルブ55がオフの状態のときに発生する電圧は、センサーにより検知しているが、
図10に示す例では、グラフの都合上、5ボルトでカットしている。したがって、
図10では、バルブ55がオフの状態であることを「断線検知リレー」で検知した時は、5ボルトを示すように表されている。
【0038】
ところで、「指令信号」がオンの状態となったと同時に、「断線検知リレー」がオンを検知できるわけではない。
図10に示す例では、「指令信号」がA点で出されると、少し遅れてG点で電圧が変化し始めてH点まで下がる。
図10ではB点とH点では2.5mSecの遅れ時間が発生している。なお、コイル56が実際にオン状態になるときはH点であり、検知電圧が0ボルトになる。その後、「指令信号」の内容がC点でオフに切り替わる。この時はコイル56もすぐに反応してI点のポイントでオフに向かって変化し始め、J点に向かって電圧が上がり、コイル56がオフになる。
【0039】
次に、コイル56が「指令信号」に対して実際に動いたかを確認する方法について説明する。「指令信号」の電圧が0ボルトであるときに、コイル56に電流が流れたことを検知する検知電圧(
図10にて太線が示す値)も0ボルトであれば、指令通り動作していることになる。つまり、「指令信号」に応じて電流が流れていることになる。一方、「指令信号」の電圧が0ボルトであるときに、コイル56に電流が流れたことを検知する検知電圧が5ボルトである場合は、「指令信号」に応じた動きをしていないと判断できる。
【0040】
次に、
図10において、「指令信号」を表す電圧と動作確認結果を表す検知電圧との確認方法について述べる。「指令信号」をオフの状態からオンの状態に切り替えてから数mSec後のポイントで、検出部61の検出結果と「指令信号」を比較する。このため、比較部は、指令信号がオンになってから所定時間経過後のポイントでの検出部61の検出結果と「指令信号」を比較するように構成する。
図10に示す例では、Q点のポイントにおいて比較を行う。このタイミングでトリガーのようなチェックを行って、「指令信号」と、動作内容が対応していれば適切に作動しているとする。そうでない場合は、適切に作動していない状態である。例えば、「指令信号」が0ボルトを指示しているのに、検知電圧が5ボルト以上を示す時は、適切に作動していないと判断できる。
【0041】
図10に示す例では、「指令信号」をオフの状態からオンの状態に切り替えてから7mSec後のポイントで、検出部61の検出結果と「指令信号」を比較する。このポイントであれば、「指令信号」の切り替えのタイミングから、検出部61が検知可能な時間までの遅れの発生の影響はないため、適切な結果を得ることができる。
【0042】
ところで、
図10に示す例では、一パルスが短いため、この一パルスの間に、複数ポイントで検出部61の検出結果と指令信号を比較する必要は無いが、一パルスが比較的長い場合は、一パルスの間に、複数ポイントで、検出部61の検出結果と「指令信号」を比較するようにすることが好ましい。したがって、比較部は、「指令信号」がオンになってからオフになるまでの一パルスの間の、複数ポイントで、検出部61の検出結果と「指令信号」を比較するように構成することが好ましい。このようにすれば、一パルスの中でも断線の有無を複数回確認することができるため、ケーブル53にダメージが生じているか否かを把握しやすくなる。この場合、この二回目以降の確認は、定期的にすることが好ましい。例えば、10mSecごとに確認ポイントを設けることが好ましい。
【0043】
パルスの間隔が比較的長い場合の例について説明する。
図11に示す例では、「指令信号」がオンの状態からオフの状態に切り替わるまでの時間が80mSecである。初めの確認ポイントを「指令信号」をオフの状態からオンの状態に切り替えてから7mSec後とし、その後、10mSecごとに確認ポイントを設けている。この場合、チェックするタイミングは、「指令信号」をオフの状態からオンの状態に切り替えてから7mSec後、17mSec後、27mSec後、・・・と、全部で8回のタイミングがある。8回すべてが指令と動作が対応していると、正確に動いている割合は、8分の8となり、この一パルスの間で断線の現象が確認されなかったことがわかる。
【0044】
図11に示す例では、「指令信号」をオフの状態からオンの状態に切り替えてから57mSec後、67mSec後、77mSec後に指令信号に対応した動作が確認されない状態である。この場合、8回の確認タイミングに対して、適切に応答していたことが確認できたのは5回だけということになる。この場合、上位のPLC制御盤51側に5/8(8分の5)といった信号をあげるようにするのが好ましい。このような統計作業は一パルスごとに行う必要は無い。例えば、1サイクルごとに行っても良い。この場合、1サイクル中における全てのポイント数を分母とし、そのうち正常稼働が検出された数を分子とした値を信号で送るようにすればよい。
【0045】
また、ケーブル53に適切に電流が流れていないと判断される割合が所定値以上となった場合に警報を発生させる警報発生部を備えた構成とすることが好ましい。警報を発生するようにすれば、ケーブル53にダメージが発生していることを見過ごしにくくなる。この警報発生部は上位PLC制御盤51に送られた数値から、ケーブル53に適切に電流が流れていないと判断される割合が所定値以上となった場合に警報を発生させるようにすることが好ましい。
【0046】
以上、一つの実施形態を例に挙げて本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。たとえば、バルブ動作用の電流がケーブルに流れたか否かを検出可能な検出部の検出結果と、バルブ動作用の電流を流す指令信号の情報と、を比較することで、不具合の内容を推定できるように演算させても良い。
【符号の説明】
【0047】
5 パルススプレー装置
51 制御盤
52 ロボット
53 ケーブル
54 スプレーユニット
55 バルブ
56 コイル
57 駒
58 バネ
59 吹き出し口
61 検出部