(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ソーラーセルグループ及びソーラー発電システム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20220523BHJP
【FI】
H02S50/00
(21)【出願番号】P 2017138875
(22)【出願日】2017-07-18
【審査請求日】2020-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514107679
【氏名又は名称】MERS FORS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093506
【氏名又は名称】小野寺 洋二
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 宏之
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513186(JP,A)
【文献】特開2013-033365(JP,A)
【文献】特開2014-106852(JP,A)
【文献】特開2016-019404(JP,A)
【文献】特開2016-187240(JP,A)
【文献】特表2010-512139(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121402(WO,A1)
【文献】特表2013-541930(JP,A)
【文献】特表2012-504803(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089959(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204304465(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーラーモジュールを構成するソーラーセルグループであって、
前記ソーラーセルグループは
モジュール内並列接続線で接続された複数個で前記ソーラーモジュールを構成し、
前記ソーラーセルグループは、自身の置かれたフィールドでの設置条件や立地環境、光照射状況に適応して最適発電条件を学習するAI機能を備えたマイクロチップと、
前記ソーラーセルグループを構成するソーラーセルの出力電圧を所定の定電圧に昇圧するオプティマイザーと、
前記ソーラーモジュールとの接続と遮断を行うスイッチを備え、
前記マイクロチップは、GPSアンテナからの計測値に基づいてソーラーセルグループの位置を測定する位置データ取得手段と、直達日射量センサーからの日射量データと暦データテーブルの参照データに基づいて日の出時間と日の入り時間を算出する日の出・日の入り時間取得手段と、暦データテーブルの参照データと緯度テーブルの参照データ及び傾斜センサーの計測データに基づいて太陽光の入射角度を算出する太陽光入射角度取得手段と、方位センサーの計測値と傾斜センサーの計測値に基づいて地平に対するソーラーセルグループの設置方位と設置角度を算出する設置方位・設置角度取得手段と、前記位置データ取得手段と、前記日の出・日の入り時間取得手段と、太陽光入射角度取得手段と、前記設置方位・設置角度取得手段で取得された各データに基づいて、遮蔽物による影の時間、日射量の傾向、気象状況の傾向を演算し、推論し、学習して、ソーラーセルグループの出力値が最適化可能か否かを判断するAI機能を具備し
、
前記マイクロチップが出力する判断データは、前記オプティマイザーに入力され、
前記オプティマイザーは前記マイクロチップの判断データを最適化可能な限界値と比較し、前記限界値に満たない場合は前記スイッチに対して当該ソーラーセルグループと前記モジュール内並列接続線との接続を遮断する遮断指令を与えることを特徴とするソーラーセルグループ。
【請求項2】
前記ソーラーセルグループを構成する前記ソーラーセルは前記オプティマイザーに直列接続されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラーセルグループ。
【請求項3】
前記ソーラーセルグループは、前記ソーラーモジュール内の各ソーラーセルグループとはモジュール内並列接続線に対して互いに並列に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のソーラーセルグループ。
【請求項4】
前記ソーラーセルグループは、4枚のソーラーセルで構成されたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のソーラーセルグループ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のソーラーセルグループの
複数個の出力を
モジュール内並列接続線で接続して構成したソーラーモジュールを複数個接続したソーラー発電システムであって、
前記複数のソーラーモジュールはパワーコンディショナーを介してソーラーモジュール間接続線に並列に接続され、
前記ソーラーモジュール間接続線に集められた電力は変電設備を経て系統線に供給されることを特徴とするソーラー発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーセルグループおよびソーラー発電システムに係り、特に、設置環境に適応して最適発電条件を学習する機能を備えたソーラーセルグループ及びこれを用いたソーラー発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素化の重要な手段として太陽光をエネルギー源とする太陽光発電(以下、ソーラー発電とも称する)が有力となっている。太陽は、少なくとも人類の存在期間中は尽きることのない究極のエネルギー源と考えられている。
太陽光は光に代表される多種の電磁波や様々なエネルギー粒子を含んでおり、そのうちの光を利用するソーラー発電が現在の主流となっている
【0003】
近年は、1000kWを超える大規模な太陽光発電プラント(所謂、メガソーラー)の建設も盛んになっている。以下では、太陽光発電をPV(Photo-Voltaic)、それに用いる単位太陽光パネル(素子)をPVセル(あるいは、単にセル)、複数のセル(例えば4枚)を纏めたものをソーラーセルグループ、ソーラーセルグループを数10枚接続したものをソーラーモジュール、ソーラーモジュールを例えば10枚或いは11枚を枠に固定したものをストリング、多数のストリングをフィールド(発電サイト)の架台に設置したものをソーラーアレイ(あるいは単にアレイ)とも称する。
【0004】
PVセルの出力は、照射される光量により変化する。特に、日の出、日の入り時など、照射光量が少ない低光量のときには出力は小さく、内部インピーダンスが高くなっている。内部インピーダンスが高い状態で負荷を接続すると電圧が下がって電源としての正常な動作ができず、不安定な電源となる。PVパネルが低光量の状態にあっても安定に動作する制御が必要となる。このような制御を最適化(オプティマイズ)、最適化手段(回路)をオプティマイザーと称する。
【0005】
この種の従来技術を開示したものとしては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4などを挙げることができる。特許文献1、特許文献2、特許文献3は最適化手段に関連する先行技術を開示し、特許文献4はソーラーパネルと照射光量の関係を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-101581号公報
【文献】特開2011-170836号公報
【文献】特開2013-541930号公報
【文献】特開平09-018046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照射光量の変動に対処するため、従来は、ソーラーモジュール単位あるいはストリング単位で発電量を監視し、設定した発電レベルを下回った場合には出力スイッチオフにして系統から切り離すようにしている。
また、フィールドの光量が十分であっても、ソーラーセルに木の葉っぱやゴミ、鳥の糞などが落ちて部分的に発電量が低下したとき、そのソーラーセルに負荷が集中して損傷するのを回避するため、当該ソーラーセルが所属するソーラーモジュールを切り離している。
【0008】
基本的に、ソーラーセルの出力は当該ソーラーセルに照射される光量により変化する。特に、日の出、日の入り時等の低光量のときは発電出力が小さく、内部インピーダンスが高くなっている。内部インピーダンスが高い状況で負荷を接続すると電圧が下がって電力源として正常な動作ができないため、この状況でも安定に動作する制御(最適化制御)が必要となる。
【0009】
一枚のソーラーモジュールでも、日の出、日の入り、ゴミ付着、木立の影、雲の配置等によって、それを構成するセルごとに照射される光量は異なる場合がある。複数のソーラーセルで構成されたソーラーモジュールの一部のソーラーセルの発電電力が低下した場合に、当該ソーラーセルが所属するソーラーモジュール全部を切り離すのでは、ソーラーセルの稼働利率からみて、好ましいものではない。
【0010】
本発明の目的は、ソーラーモジュールを構成するソーラーセルが非常に低出力状態になっても、それが所属するソーラーモジュールを切り離すのではなく、当該ソーラーセル又はソーラーセルグループが自ら自身の状態を判断して、最小単位のソーラーセル又はソーラーセルグループのみをソーラーモジュールから切り離すことで、稼働効率の良いソーラーセル及びソーラー発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、ソーラーモジュールを構成する多数のソーラーセルを1又は複数のソーラーセルからなる幾つかのソーラーセルグループ(セルグループ)に分け、当該セルグループ自らが自身の置かれたフィールド(発電サイト)の立地や周囲の環境、光照射状況を判断する機能(インテリジェンス機能:AI機能、ロボット機能)を具備し、前記セルグループを構成するソーラーセルが前記環境の変化によって低出力状態になっても、それが所属するソーラーモジュールを切り離すのではなく、当該ソーラーセル又はソーラーセルグループが自ら自身の状態を判断し、当該ソーラーセル自身の発電電力が所定の値を下回った際には、当該ソーラーセルが所属するセルグループのみをソーラーモジュールから切り離すようにして、ソーラーモジュール全体としての安定かつ高効率な発電を続行可能とした。
【0012】
本発明に係るソーラーセルグループ及びソーラー発電システムの代表的な構成を以下に記述する。なお、理解を容易にするため、各構成部分に、実施例中の符号等を付記して構成を明確にしたが、本発明は当該符号等で示される構成に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0013】
(1)ソーラーモジュール7を構成するソーラーセルグループ2であって、
前記ソーラーセルグループ2は複数で前記ソーラーモジュール7を構成し、
前記ソーラーセルグループは、自身の置かれたフィールドでの設置条件や立地環境、光照射状況に適応して最適発電条件を学習すると共に、前記ソーラーセルグループの出力値が最適化可能か否かを判断するAI機能を備えたマイクロチップ3と、
前記ソーラーセルグループ2を構成するソーラーセルの出力電圧を所定の定電圧に昇圧するオプティマイザー4と、
前記ソーラーモジュール7との接続と遮断を行うスイッチ5を備え、
前記マイクロチップ3の判断データは、前記オプティマイザー4に入力され、
前記オプティマイザー4は前記マイクロチップ3の判断データを最適化可能な限界値と比較し、前記限界値に満たない場合は前記スイッチ5に対して当該ソーラーセルグループ2と前記モジュール内並列接続線6との接続を遮断する遮断指令を与えることを特徴とする。
【0014】
(2)上記(1)に記載の前記ソーラーセルグループ2を構成する前記ソーラーセル1は前記オプティマイザー4に直列接続されていることを特徴とする。
【0015】
(3)上記(1)又は(2)に記載の前記ソーラーセルグループ2は、前記ソーラーモジュール7内の各ソーラーセルグループ2とはモジュール内並列接続線6に対して互いに並列に接続されていることを特徴とする。
【0016】
(4)上記(1)乃至(3)の何れかに記載の前記マイクロチップ3は、
GPSアンテナ21からの計測値に基づいてソーラーセルグループ2の位置を測定する位置データ取得手段27と、
直達日射量センサー22からの日射量データと暦データテーブル23の参照データに基づいて日の出時間と日の入り時間を算出する日の出・日の入り時間取得手段28と、
暦データテーブル23の参照データと緯度テーブル24の参照データ及び傾斜センサー26の計測データに基づいて太陽光の入射角度を算出する太陽光入射角度取得手段29と、
方位センサー25の計測値と傾斜センサー26の計測値に基づいて地平に対するソーラーセルグループ2の設置方位と設置角度を算出する設置方位・設置角度取得手段30と、
前記位置データ取得手段27と、前記日の出・日の入り時間取得手段28と、太陽光入射角度取得手段29と、前記設置方位・設置角度取得手段30で取得された各データに基づいて、遮蔽物による影の時間、日射量の傾向、気象状況の傾向を演算し、推論し、学習して、ソーラーセルグループの出力値が最適化可能か否かを判断するAI機能を具備していることを特徴とする。
【0017】
(5)上記(4)に記載の前記マイクロチップ3の判断データは前記オプティマイザー4に入力することを特徴とする。
【0018】
(6)上記(5)に記載の前記オプティマイザー4は前記マイクロチップ3の判断データを最適化可能な限界値と比較し、前記限界値に満たない場合は前記スイッチ5に対して当該ソーラーセルグループ2と前記モジュール内並列接続線6との接続を遮断する遮断指令を与えることを特徴とする。
【0019】
(7)上記(1)に記載の前記マイクロチップ3と前記オプティマイザー4と、管理サーバー16との間のデータ通信は前記モジュール内並列接続線6を通して行われる、所謂PLC通信(電力線搬送通信:パワー・ライン・コミュニケーション)であることを特徴とする。
【0020】
(8)上記(1)乃至(7)に記載の前記ソーラーセルグループ2は、4枚のソーラーセル2で構成されたことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のソーラーセルグループ。
【0021】
(9)上記(1)乃至(8)の何れかに記載のソーラーセルグループ2の多数個の出力を並列に接続して構成したソーラーモジュール7を複数個接続したソーラー発電システムであって、
前記複数のソーラーモジュール7はパワーコンディショナー14を介してソーラーモジュール間接続線8に並列に接続され、
前記ソーラーモジュール間接続線8に集められた電力は変電設備を経て系統線に供給されることを特徴とする。
【0022】
(10)上記(9)に記載の前記パワーコンディショナー14と管理サーバー16のコンピュータ15との間のデータ通信はソーラーモジュール間接続線8を通して行われる、所謂PLC通信であることを特徴とする。
【0023】
本発明は上記の構成、及び後述する実施例で説明される発明の構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、日の出、日の入り、ソーラーセル面へのゴミ付着、木立の影、雲の配置等によって、ソーラーセルごとに照射される直達日射光量は異なる。ソーラーセルが非常に低出力状態になっても、それが所属するモジュールを切り離すのではなく、当該セル又はセルグループ自らが自身の発電状態を判断して、最小単位のセル又はセルグループのみをモジュールから切り離すことで、稼働効率の良いソーラーセル及びソーラー発電システムを提供することができる。
【0025】
本発明によれば、ソーラー発電システムやそれを構成する個々のソーラーモジュール、あるいは個別のソーラーセルの発電稼働状況をPLCで監視でき、ダメージを受けたセルやモジュールをリアルタイムで特定でき、メンテナンスを含めた管理業務の簡素化、管理要員の効率化など、大規模ソーラー発電サイトにとっては特にトータルの運営コスト削減に資する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係るソーラーセルグループの1実施例を説明する模式図である。
【
図2】本発明に係るソーラーセルグループの1実施例で構成したソーラーモジュールの説明図である。
【
図3】本発明に係るソーラーセルグループの1実施例のソーラーモジュールで構成したソーラーアレイの一例を説明する模式図である。
【
図4】ソーラーアレイとその設置態様に対する直達日照量の変化と遮蔽物の影響を説明する模式図である。
【
図5】本発明に係るソーラーセルグループの1実施例のソーラーモジュール構成における接続構成と遮蔽物の影響の説明図である。
【
図6】本発明に係るソーラーセルグループの1実施例を構成するマイクロチップに有するAI機能を説明するブロック図である。
【
図7】本発明に係るソーラーモジュールの1実施例で構成したソーラー発電システムにおける発電効率の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明に係るソーラーセルグループの1実施例を説明する模式図である。本実施例では、4枚のソーラーセル1をオプティマイザー4に並列接続し、スイッチ5を介してモジュール間並列接続線6に接続してある。オプティマイザー4にはマイクロチップ3が接続されている。マイクロチップ3は後述するAI機能が組み込まれている。AI機能は、セルグループ自らが自身の置かれたフィールド(発電サイト)の立地や周囲の環境、光照射状況などの発電環境を判断し、学習して最適発電条件を設定する機能(インテリジェンス機能:AI機能、ロボット機能などと呼ばれている人工知能)である。
【0028】
マイクロチップ3はソーラーセルグループ2毎に設けられて、ソーラーモジュール毎に設けられたGPSから得られるフィールド(発電サイト)での設置場所データと共に、当該ソーラーセルグループを構成するソーラーグループのソーラーセルごとの最適発電環境データを生成する。このデータはオプティマイザー4に入力され、最適化可能な限界値以上であれば36-41Vの一定電圧に昇圧されてスイッチ5からモジュール内並列接続線6に出力される。
【0029】
このように、ソーラーセルグループ2毎に昇圧回路(オプティマイザー4)を備えてソーラーセルの最適電圧(ここでは、36-41V)に昇圧し、これを一定に保つことで、太陽の照度に対する出力の追従が高速化、かつ精緻化され、不安定な天候においても最適で最大の出力を得ることが可能となる。そして、ソーラーモジュール毎に800V(例)に昇圧して系統接続ステーション(管理サイト)に送電することで、上記と同様の最適で最大の出力を得ることが可能となる。
【0030】
図2は、本発明に係るソーラーセルグループの1実施例で構成したソーラーモジュールの説明図である。ソーラーモジュール7はソーラーセルグループ2を3×6=18グループ(ソーラーセル数=72枚)で配列してなる。ソーラーセルグループ2は、
図1で説明したように、自身の置かれたフィールドでの設置条件や立地環境、光照射状況に適応して最適発電条件を学習するするAI機能を備えたマイクロチップ3と、前記ソーラーセルグループ2を構成するソーラーセル1の出力電圧を所定の定電圧に昇圧するオプティマイザー4と、前記ソーラーモジュール7との接続と遮断を行うスイッチ5を備えている。
【0031】
ソーラーセルグループ2を構成する前記ソーラーセル
1は前記オプティマイザー4に直列接続される。4枚のソーラーセル1で1個のソーラーグループ2を構成している。
図2では、No.1~6、7~12、13~18の3行6列(ソーラーセルは72枚)で1枚のソーラーモジュール7を構成してある。
【0032】
各ソーラーセルグループ2は、ソーラーモジュール7内の各ソーラーセルグループ2とはモジュール内並列接続線6に対して互いに並列に接続されている。モジュール内並列接続線6は並列に接続されてパワーコンディショナー14に接続され、例えば800Vに昇圧される。この実施例では、パワーコンディショナー14にGPS21が接
続されているが、このGPSは位置データをPLCでソーラーセルグループのマイクロチップ3に転送すればよいので、
図2に示した場所に設けることに拘らない。
【0033】
図3は、本発明に係るソーラーセルグループの1実施例のソーラーモジュールで構成したソーラーアレイの一例を説明する模式図である。ソーラーモジュール7を例えば10枚まとめて枠で固定してストリング9とし、フィールドに運んで架台に設置する。例えば、一つの架台に2列に何枚かのストリング9を配列して設置し、これを単位ソーラーアレイ10として発電サイトを構築する。
【0034】
多数のソーラーアレイ10を配列し、それらのソーラーモジュール間接続線を並列接続してパワーコンディショナー14に接続する。パワーコンディショナーは、図示しない系統腺に接続する。また、PLCを経由した各種のデータはPC(パソコン)15と管理サーバー16を経由してリモートPC(パソコン)17に転送されて、モニター18で観察される。
【0035】
モニター18では、発電サイトを構成するソーラーアレイ10、そのソーラーアレイ10を構成するソーラーストリング9、ソーラーモジュール7、ソーラーモジュール7を構成する不具合が発生したソーラーセルグループ2(
図3のソーラーモニター)を特定できる。
【0036】
図4は、ソーラーアレイとその設置態様に対する直達日照量の変化と遮蔽物の影響を説明する模式図である。発電サイトのフィールド35に設けた架台36の上にソーラーレイ10が
設置されている。このソーラーアレイ10は地表平面に対して設置方位S、緯度方向の設置角度Dで
設置されている。フィールド35は必ずしも平面でなく、一般的には凹凸やうねりのある不整地であるのが普通であるため、ソーラーアレイ10、そのストリング9およびその個々のソーラーモジュール7、さらにはソーラーセルグループ2、ソーラーセル1毎に太陽に対する面に相違がある。設置場所の位置のデータ(場所データ)LはGPSで容易に確定可能である。
【0037】
しかし、太陽11は日の出の時間から日の入りの時間までに、それぞれのソーラーセル1、ソーラーセルグループ2では太陽に対する受光面への入射角φに相違が存在する。受光面への入射角φに相違があると、オプティマイザー4での最適演算のためのパラメータをソーラーセルグループ2又はソーラーセル1毎に個別に設定する必要がある。また、遮蔽物12やゴミなどによる日射光量の影響もある。
【0038】
図5は、本発明に係るソーラーセルグループの1実施例のソーラーモジュール構成における接続構成と遮蔽物の影響の説明図である。
図5に示したのは、モジュール内並列接続線6に並列接続されたソモジュールを構成する3個のソーラーセルグループ2a,2b,2cを示す。各ソーラーセルグループは切り換えスイッチ5a,5b,5c介してモジュール内並列接続線6に並列接続されている。
【0039】
図示した3個のソーラーセルグループ2のうちの真ん中に位置したソーラーセルグループ2bの受構面の一部に木の葉っぱや鳥の糞などの塵埃(ゴミ)13が付着して、当該ソーラーセルグループ2bの発電出力が所定チェア以下になったために
図1で説明したマイクロチップ3のAIが非稼働状態になったと判断し、切り換えスイッチ5bにオフ指令を発してソーラーセルグループ2bをモジュール内並列接続線6から切り離した状態を示す。
【0040】
ソーラーセルグループ2b以外のソーラーセルグループ2a,2cを含めた当該ソーラーモジュールを構成するソーラーセルグループはそのまま発電状態を継続する。したがって、ソーラーセルグループ2bに過剰な不可がかかることなく、当該ソーラーモジュールは発電を続ける。他のソーラーセルグループ、他のソーラーモジュールについても同様である。
【0041】
ソーラーセルグループ2bに不具合が生じたことは、モジュール内並列接続線6、ソーラーモジュール間接続線8を介したPLC通信で図3に示したパソコン15や、管理サーバー16およびリモートコンピュータ17に転送され、そのモニター(リモートモニター)18で確認することができ、即座にメンテナンスの手配が可能である。
【0042】
図6は、本発明に係るソーラーセルグループの1実施例を構成するマイクロチップに有するAI機能を説明するブロック図である。これはあくまで、一例であり、AI機能の実現手段としては様々な変形が可能である。
図6において、
図1で説明したマイクロチップ3はGPSアンテナ21が受信した電波に基づいてソーラーモジュールの位置データを演算して取得するGPSによる位置データ取得手段27、直達日照量センサー(所謂、明るさセンサー)22と暦(カレンダー)テーブル23の参照により日ノ出・日の入り時間を演算して判断する日ノ出・日の入り時間取得手段28を有する。
【0043】
また、緯度テーブル24に格納さているフィールドの緯度データと暦(カレンダー)テーブル23、および傾斜センサー26の検出データに基づいて太陽光の入射角度を演算して取得する太陽光入射角度取得手段29と、方位センサー(方位磁石)25のデータと傾斜センサー26の検出データに基づいてソーラーモジュールの設置方位・設置角度を演算して取得する設置方位・設置角度取得手段30を有している。
【0044】
マイクロチップ3は、AI機能実行手段31を有している。このAI機能実行手段31は、位置データ取得手段27、日ノ出・日の入り時間取得手段28、太陽光入射角度取得手段29、および設置方位・設置角度取得手段30からの演算結果から、遮蔽物による影の時間、日射量の傾向、気象状況の傾向などのソーラーモジュールを取り巻く環境データを推論し、判断し、学習する。この学習結果でソーラーセルグループやソーラーモジュールの管理、メンテナンスの実行などを行うデータを生成する。
【0045】
また、マイクロチップ3の出力はオプティマイザー4に接続され、スイッチ5の制御信号として使用される。時計34は発電サイトの標準時計データをマイクロチップ3に供給する。
【0046】
マイクロチップ3には、AI機能実行手段31の動作を監視するモニター32と、およびAI機能の判断が人間本来の知性からみて現実的でない、あるいは現実的でない疑いがある場合に、それを矯正する矯正手段33が設けられている。これにより、AIは常に人間の監視下に置かれることで、学習ステップが短縮でき、学習の効率を向上させることができる。
【0047】
図7は、本発明に係るソーラーモジュールの1実施例で構成したソーラー発電システムにおける発電効率の説明図である。
図1の説明にも記載したように、ソーラーセルグループ2毎に昇圧回路(オプティマイザー4)を備えてソーラーセルの最適電圧(ここでは、36-41V)に昇圧し、これを一定に保つことで、太陽の照度に対する出力の追従が高速化、かつ精緻化され、不安定な天候においても最適で最大の出力を得ることが可能となる。そして、ソーラーモジュール毎に800V(例)に昇圧して系統接続ステーション(管理サイト)に送電することで、上記と同様の最適で最大の出力を得ることが可能となる。
【0048】
図2に示したパワーコンディショナー14は、朝夕や曇りの日など、ソーラーモジュールの太陽光起発電出力(PV:photovoltaic power)が低いときでも、本実施例によれば、
図7の太線で示したように、出力特性曲線の立ち上がり・立下り部分での発電出力をきめ細かく制御することが可能となり、低出力時での損失が少なくなる。典型例として、例えば日の出が6:00、日の入りが18:00とした場合、従来方式の発電出力の取り出し可能な時間は、図中に階段状になり、一日の発電可能時間も白抜き文字で示した5.5時間(5.5hrs)である。これに対し、本実施例のAI機能を具備させたソーラーセルグループ(AI機能を具備したソーラー制御グループで構成したソーラーモジュール(便宜上Intelligence Solar Module:インテリジェンスソーラーモジュールと称する)を用いたものでは12時間(12hrs)となる。
【0049】
このように、本実施例のソーラーセルグループで構成したソーラーモジュールによれば、太陽の照度に瞬時に追従してPV出力の取り出しが可能となり、不安定な天候においても、最適で最大の出力を得ることができる。そして、
図7に示した本実施例(太線表示)の発電出力特性を従来(階細線表示)の発電出力特性を比較して明らかなように、発電ロスが少なく、安定した出力を得ることができる。
【0050】
なお、上記の実施例では、4個(4枚)のソーラーセルで一つのソーラーセルグループを構成したものとして説明したが、これに限らず、1枚のソーラーセルで一つのソーラーセルグループを構成することもでき、あるいは5枚以上のソーラーセルを一つのソーラーセルグループとしてもよい。
【0051】
また、ソーラーモジュールを構成するソーラーセルグループの数、ソーラーストリングを構成するソーラーモジュールの数も実施例と異なるものとすることができる。
【0052】
上記したソーラーセルグループ2の多数個の出力を並列に接続して構成したソーラーモジュール7を複数個接続したソーラー発電システムを構築する。複数のソーラーモジュール7はパワーコンディショナー14を介してソーラーモジュール間接続線8に並列に接続され、ソーラーモジュール間接続線8に集められた電力は変電設備を経て系統腺に供給される。
【0053】
上記の実施例にも記載したが、パワーコンディショナー14と管理サーバー16のコンピュータ15およびリモートコンピュータ17との間のデータ通信はソーラーモジュール間接続線8を通して行われ、発電サイトと系統線管理ステーションとの間も、所謂PLC通信を用いる。そのため、発電サイトの構成部材(ソーラーセル、ソーラーセルグループ、ソーラーモジュール等)間およびそれらの相互間通信を含めて、管理データや制御信号の通信のために特別の通信線を設ける必要がない。
【0054】
以上説明したように、上記実施例で説明される本発明によれば、日の出、日の入り、ソーラーセル面へのゴミ付着、木立の影、雲の配置等によって、ソーラーセルごとに照射される直達日射光量が異なることによりソーラーセルが非常に低出力状態になっても、最小単位のセル又はセルグループのみをモジュールから切り離すことで、稼働効率の良いソーラーセル及びソーラー発電システムを提供することができる。
【0055】
このように、本発明によれば、ソーラー発電システムやそれを構成する個々のソーラーモジュール、あるいは個別のソーラーセルの発電稼働状況をPLCで監視でき、ダメージを受けたセルやモジュールをリアルタイムで特定でき、メンテナンスを含めた管理業務の簡素化、管理要員の効率化など、大規模ソーラー発電サイトにとっては特にトータルの運営コストを大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・ソーラーセル
2・・・ソーラーセルグループ
3・・・マイクロチップ
4・・・オプティマイザー
5・・・スイッチ
6・・・モジュール内並列接続線
7・・・ソーラーモジュール
8・・・ソーラーモジュール間接続線
9・・・ストリング
10・・・ソーラーアレイ
11・・・太陽
12・・・遮蔽物
13・・・ゴミ(塵埃)
14・・・パワーコンディショナー
15・・・PC(パソコン)
16・・・管理サーバー
17・・・リモートPC
18・・・リモートモニター
21・・・GPSアンテナ
22・・・直達日射量センサー
23・・・暦データテーブル
24・・・緯度テーブル
25・・・方位センサー
26・・・傾斜センサー
31・・・AI
32・・・モニター
33・・・矯正入力手段
34・・・時計
35・・・発電サイトのフィールド
36・・・架台