(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】自動車用クロスメンバ構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
B62D21/00 A
(21)【出願番号】P 2017243584
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】仲本 忍
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正志
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-169361(JP,A)
【文献】特開2004-168206(JP,A)
【文献】特開2009-234355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の支持部材を支持するクロスメンバ構造であって、
クロスメンバ構造は、車輪の支持部材に連結される第1連結部を支持する第1取付部と、
車輪の支持部材に連結される第2連結部を支持する第2取付部と、
第1取付部と第2取付部とを支持する支持部とを含むクロスメンバ構造であり、
第1取付部は支持部の上部に対して固定されており、
第2取付部は支持部の下部に対して固定されており、
第1取付部と第2取付部とは、金属板材で構成され、別々に成形された部材であり、
第1取付部は、車体の下方に延びる第1接続部を備えており、
第1取付部
の第1接続部と、第2取付部
に固定され、第1取付部と第2取付部との間に延在し
、金属板材で構成された第2接続部とを、支持部の横
で接合することによって、第1取付部と第2取付部とは一体の部材とされており、
第2接
続部は、第1取付部と第2取付部とは、別々に成形された部材である自動車用クロスメンバ構造。
【請求項2】
第2取付部は、車幅方向に延びる部分を備えており、車幅方向に延びる部分が支持部の下部に当接する請求項1に記載の自動車用クロスメンバ構造。
【請求項3】
第1取付部は、車幅方向に延びる部分を備えており、車幅方向に延びる部分が支持部の上部に当接する請求項1又は2に記載の自動車用クロスメンバ構造。
【請求項4】
第2取付部は、車幅方向に延びる形状であり、リインフォースメントメンバを内蔵する形状である請求項1ないし3のいずれかに記載の自動車用クロスメンバ構造。
【請求項5】
第1取付部及び第2取付部の支持部は、車長方向に延びる棒状の部材である請求項1ないし4のいずれかに記載の自動車用クロスメンバ構造。
【請求項6】
車幅方向に延び車体の背面側に位置する第1クロスメンバと、車幅方向に延び車体の正面側に位置する第2クロスメンバと、第2クロスメンバと第1クロスメンバとを接続するように車長方向に延びるサイドクロスメンバとを含む、自動車用クロスメンバ構造であって、
第1取付部と第2取付部とを支持する支持部は、サイドクロスメンバである請求項1ないし5のいずれかに記載の自動車用クロスメンバ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用クロスメンバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフレームは、自動車の車長方向に延びるサイドメンバと、自動車の車幅方向に延びるクロスメンバとから構成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、符号4で示される2本のサイドメンバと、符号5及び符号6で示される2本のクロスメンバとから構成されるフレームが開示されている。このフレームは、車体のいずれの部分に用いられるかが記載されていないが、フロントエンドクロスメンバとの記載から、車体の前部分に配置されるものと思われる。
【0004】
さらに、特許文献2には、自動車のリアサブフレームの構造が開示されている。このリアサブフレームは、車幅方向に延びる前クロスメンバと後クロスメンバと、車長方向に延びる2本のサイドメンバとから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-74819号公報
【文献】特開2015-155255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フレームを構成するクロスメンバやサイドメンバ等の部材は車輪の支持部材を支持するために利用されることがある。特許文献1には、特段そのような記載はされていないが、特許文献2では、符号22で示されるクロスメンバの端部に対して符号14で示されるアッパリンクの一端部と符合10で示されるロアリンクの一端部とが接続される。そして、アッパリンクの他端部とロアリンクの他端部とは、車輪の支持部材に連結されている。
【0007】
特許文献2の構造では、符号20で示されるサイドメンバの上に上述のロアリンク及びアッパリンクの取付部を有するクロスメンバが固定される。この構造では、車輪から入力される荷重によって、サイドメンバとクロスメンバとを接合する部分に大きな負荷がかかる。クロスメンバはサイドメンバの上にのみ接触する構成であるため、特に車輪が上方に変位する荷重に対して、脆弱になりやすい。
【0008】
本発明は、車輪の支持部材から入力される荷重を支持部の上部と下部とに分散させて支えることができるクロスメンバ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
車輪の支持部材を支持するクロスメンバ構造であって、クロスメンバ構造は、車輪の支持部材に連結される第1連結部を支持する第1取付部と、車輪の支持部材に連結される第2連結部を支持する第2取付部と、第1取付部と第2取付部とを支持する支持部とを含むクロスメンバ構造であり、第1取付部は支持部の上部に対して固定されており、第2取付部は支持部の下部に対して固定されており、第1取付部と第2取付部とは支持部の横で連続した一体の部材である自動車用クロスメンバ構造(以下、単にクロスメンバ構造と呼ぶ。)によって、上記の課題を解決する。
【0010】
上記のクロスメンバ構造において、車輪の支持部材から荷重が入力されると、第1取付部と第2取付部とは支持部の横で連続した一体の部材とされているため、第2連結部及び第1連結部を経て入力された荷重は、第1取付部及び支持部の接続部分と第2取付部及び支持部の接続部分との両方に分散して支えられる。これによって、第1取付部と支持部との接続部分及び第2取付部と支持部との接続部分のうちのいずれか一方にのみ負荷が集中することを防ぐことができる。
【0011】
上記のクロスメンバ構造において、第2取付部は、車幅方向に延びる部分を備えており、車幅方向に延びる部分が支持部の下部に当接するようにすることが好ましい。これによって、第2取付部が支持部に接触する面積を増大させて、単位面積当たりに作用する荷重を小さくすることが可能になる。また、車幅方向に延びる部分に第2連結部を支持することが可能になる。
【0012】
上記のクロスメンバ構造において、第1取付部は、車幅方向に延びる部分を備えており、車幅方向に延びる部分が支持部の上部に当接するようにすることが好ましい。これによって、第1取付部が支持部に接触する面積を増大させて、単位面積当たりに作用する荷重を小さくすることが可能になる。また、車幅方向に延びる部分に第1連結部を支持することが可能になる。
【0013】
上記のクロスメンバ構造において、第1取付部と第2取付部とは、別々に成形された部材であり、第1取付部と第2取付部とを互いに接合することによって、一体の部材とされたものとすることが好ましい。第1取付部と第2取付部とを別々の部材とすることによって、第1取付部又は第2取付部を複雑な形状としても、板材のプレス成型や曲げ成型によって成形することが可能になる。
【0014】
上記のクロスメンバ構造において、第1取付部及び第2取付部の支持部は、車長方向に延びる棒状の部材とすることが好ましい。棒状の部材とすることによって、例えばサイドメンバ、又はクロスメンバなどのフレームの構成部材を支持部として利用することが可能にある。これによって、軽量化を図ると共に省スペース化を図ることができる。
【0015】
上記のクロスメンバ構造は、車幅方向に延び車体の背面側に位置する第1クロスメンバと、車幅方向に延び車体の正面側に位置する第2クロスメンバと、第2クロスメンバと第1クロスメンバとを接続するように車長方向に延びるサイドクロスメンバとを含み、第1取付部と第2取付部とを支持する支持部は、サイドクロスメンバとすることが好ましい。このクロスメンバ構造は、例えば、1対のサイドメンバの間に固定して使用される。これによって、サイドメンバを補強することが可能になる。このクロスメンバ構造は、第1クロスメンバ、第2クロスメンバ、及びサイドクロスメンバを含んでおり車長方向にある程度の長さがある構造物となるため、重量物や燃料タンクなどの構造物を固定する場所を提供することが可能になる。また、サイドクロスメンバは車長方向に延びる部材であるので、第1取付部と第2取付部とを支持する支持部として好適に利用することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車輪の支持部材から入力される荷重を支持部の上部と下部とに分散させて支えることができるクロスメンバ構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係るクロスメンバ構造をサイドクロスメンバを取り付けた状態を示す平面図である。
【
図2】
図1のクロスメンバ構造のみを示す平面図である。
【
図8】
図2のクロスメンバ構造に車輪の支持部材を取り付けた状態を示す背面図である。
【
図9】支持部に固定された第1取付部及び第2取付部を示す斜視図である。
【
図10】支持部に固定された第1取付部及び第2取付部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形形態について説明する。以下に挙げる実施形態は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
図1ないし
図10に自動車用クロスメンバ構造(以下、単にクロスメンバ構造という。)の一実施形態を示す。このクロスメンバ構造1は、車幅方向に延び車体の背面側に位置する第1クロスメンバ11と、車幅方向に延び車体の正面側に位置する第2クロスメンバ12と、第2クロスメンバ12と第1クロスメンバ11とを接続するように車長方向に延びる形状を有する一対のサイドクロスメンバ13とを有する。
【0020】
上記のクロスメンバ構造1は、
図1に示したように、2本のサイドメンバ9の後部に固定されるものであり、リアクロスメンバと呼ばれる。第2クロスメンバ12は、車幅方向に延びる部材であり、両端部の上面が、それぞれのサイドメンバ9の下面に固定される。サイドクロスメンバ13は、平面視又は底面視において、湾曲部131を備えており、他端部が車両の外側に向けて曲がった形状である。サイドクロスメンバ13の一端部は上記の第2クロスメンバ12の左右の端部と中央部との間に固定されており、サイドクロスメンバ13の他端部は、それぞれサイドメンバ9の下面に固定される。左右のサイドメンバ9の湾曲部131と一端部との間には第1クロスメンバ11の両端部が固定される。
【0021】
上記のクロスメンバ構造では、湾曲部131を有するサイドクロスメンバ13によって、一対のサイドメンバ9の内側に一対のサイドクロスメンバ13が車長方向に延びる構成となる。サイドメンバ9とサイドクロスメンバ13との間には空間が形成される。この空間を利用して、後述する第1取付部132、第2取付部141、第1連結部31、又は第2連結部33を取り付けることができる。
【0022】
第2クロスメンバ12、及びサイドクロスメンバ13は、いずれも断面が円形の中空管から構成される。これによって、軽量化が図られている。両部材の形状は特に限定されないが、例えば断面が多角形状の中空管から構成してもよい。
【0023】
第1クロスメンバ11は、
図6及び
図7に示したように、ビーム111と、ビーム111を補強するリインフォースメントメンバ112とを含む。ビーム111は、
図6及び
図7に示したように、車体の前面側に位置する第1ビーム11aと、車体の背面側に位置する第2ビーム11bとを含む。第1ビーム11aは、車体の正面側に配される第1壁111aと、第1壁111aの上端部から車体の背面側に向けて延びる第3壁111cとを含む。第1壁111aと第3壁111cとは連続する形状である。第2ビーム11bは、車体の背面側に配される第2壁111bと、第2壁111bの上端部から車体の正面側に向けて延びる第3壁111dとを含む。第2壁111bと第3壁111dとは連続する形状である。
【0024】
ビーム111は、第3壁111cと第3壁111dとが連続する一体の部材としてもよい。
図6のように、ビームを分割することによって、ビーム111が複雑な形状であっても、曲げ加工やプレス成型によって、その複雑な形状に成形することができる。
【0025】
ビームは、第1壁111aと、第2壁111bと、第3壁111c、111dとを備えており、一方の面である底面が解放された形状であって複雑な形状であるため、平板状のビームに比べて、捩じり運動や曲げ運動に対して強度が向上している。ビームの形状はこれに限定されず、クロスメンバ構造に求められる剛性を発揮できる構造であればよい。
図6及び
図7に示したように、ビーム111の強度をさらに向上させるために、ビーム111に対してリインフォースメントメンバ112が接合されている。
【0026】
リインフォースメントメンバ112は、車両の正面側に配される第1壁112aと、車両の背面側に配される第2壁112bと、第1壁112aの上端部と第2壁112bの上端部と連続する第3壁112cとを含み、一方である下面が解放された形状となっている。リインフォースメントメンバの形状はこれに限定されず、クロスメンバ構造に求められる剛性を発揮できる構造であればよい。
【0027】
図7に示したように、ビーム111にリインフォースメントメンバ112を内蔵させた状態で、ビーム111の第1壁111aとリインフォースメントメンバ112の第1壁112aの端部を溶接によって固定し、ビーム111の第2壁111bとリインフォースメントメンバ112の第2壁112bの端部を溶接によって固定する。ビーム111は、一方である下面が解放された形状になっているため、
図7において黒塗りで示したように、ビーム111とリインフォースメントメンバ112とを解放された面から溶接することができる。
図7に示したように、第1ビーム11aの第3壁111cと第2ビーム11bの第3壁111dとは重なった状態となっており、
図7において黒塗りで示したように、一方の上面に対して他方の端部を溶接によって固定する。
【0028】
本実施形態のクロスメンバ構造1は、
図8に示したように、例えばハブナックルなどの車輪の支持部材3にその一端部が連結される第1連結部31と、第1連結部31の他端部を支持する第1取付部132と、車輪の支持部材3にその一端部が連結される第2連結部33と、第2連結部33の他端部を支持する第2取付部141と、第1取付部132と第2取付部141とを支持する支持部15を含む。
図9及び
図10に太線で示したように、本実施形態のクロスメンバ構造1では、第1取付部132は支持部15の上部に対して溶接によって固定されており、第2取付部141は支持部15の下部に対して溶接によって固定されている。そして、第1取付部132と第2取付部141とは、支持部15の横で連続した一体の部材となっている。
【0029】
図9及び
図10において矢印Aで示したように、車体の上方に向けて荷重(以下、突き上げ荷重という。)が入力されると、第1連結部31に引っ張られて第1取付部132は斜め上方に引っ張られる。同様に第2連結部33に引っ張られて第2取付部141も斜め上方に引っ張られる。
図9及び
図10に示しように、第1取付部132と第2取付部141は、支持部15の横で連続した一体の部材となっているため、突き上げ荷重は、支持部15の上部における接合部分Cだけではなく、支持部15の下部における接合部分Dによっても分散して支持される。これによって、突き上げ荷重が作用した際に支持部15の上部の接合部分Cに負荷が集中することに起因する接合部分Cやその周辺の第1取付部132や支持部15が破損することを防ぐことが可能になる。
【0030】
図9及び
図10において矢印Bで示したように、車体の下方に向けて荷重(以下、戻り荷重という。)が入力されると、第1連結部31に引っ張られて第1取付部132は斜め下方に引っ張られる。同様に第2連結部33に引っ張られて第2取付部141も斜め下方に引っ張られる。
図9及び
図10に示したように、第1取付部132と第2取付部141は、支持部15の横で連続した一体の部材となっているため、戻り荷重は支持部15の下部における接合部分Dだけではなく、支持部15の上部における接合部分Cによっても分散して支持される。これによって、戻り荷重が作用した際に支持部15の下部の接合部分Dに負荷が集中することによる接合部分Dやその周辺の第2取付部141や支持部15が破損することを防ぐことが可能になる。突き上げ荷重又は戻り荷重は、例えば、車輪が凹凸の上を通過する際に生じる。突き上げ荷重は、車両の速度が大きくなるほど大きくなる。戻り荷重には、コイルスプリングなどのサスペンション装置を構成する部品である緩衝部材の力も付加される。
【0031】
本実施形態のクロスメンバ構造1では、第1取付部132は、車幅方向に延びる部分を有する。具体的には、第1取付部132は、
図9及び
図10に示したように、車体の正面側に配される第1壁132aと、車体の背面側に配される第2壁132bと、車体の中央側の側面に配されており第1壁132aと第2壁132bの端部と連続する第3壁132cとを有しており、車体の上方と外側の側面とが解放された形状である。第1壁132a及び第2壁132bには貫通孔82a、82bがそれぞれ設けられており、
図8に示したように、第1連結部31の他端部が上下に軸動可能な状態で支持されている。第1壁132a及び第2壁132bは、車幅方向に延びる形状であり、支持部15の上部に対してその下縁部が当接する構造となっている。
【0032】
上記の構造では、第1壁132a及び第2壁132bが支持部15の上部に当接するため、戻り荷重が車輪の支持部材3から入力された際に、第1壁132a及び第2壁132bの下端部が支持部15の上部に当接することによって、入力された荷重が支持される。これによって、第1取付部132及び第2取付部141の接合部分C、D、特に下方に引っ張られる接続部分Dが入力された負荷によって破損することが防止される。
図10及び
図11の例では、接合部分は溶接されているので溶接個所の破断が防止される。接合部分を螺子、ボルト、又は螺子受などの固定具とした場合は、固定具と固定具を取り付ける部材の破損が防止される。
【0033】
本実施形態のクロスメンバ構造1では、第2取付部141は、車幅方向に延びる部分であって、支持部15の下部に当接する部分を有する。具体的には、第2取付部141は、
図9及び
図10に示したように、第1クロスメンバ11を構成するビーム111の端部を利用している。これによって、省スペース化と軽量化を図っている。第2取付部141は、車体の正面側に配されるビームの第1壁111aと、車体の背面側に配されるビームの第2壁111bとを有しており、一方の面である底面が解放された形状となっている。ビーム111の第1壁111a及びビームの第2壁111bには、貫通孔81a、81bがそれぞれ設けられている。貫通孔81a、81bには、
図8に示したように第2連結部33の他端部が上下に軸動可能な状態で軸支されている。ビーム111の第1壁111a及び第2壁111bは、車幅方向に延びる形状であり、支持部15の下部に当接する構造となっている。
【0034】
ビーム111の第1壁111a及び第2壁111bが支持部15の下部に当接するため、突き上げ荷重が車輪の支持部材から入力された際に、第1壁111a及び第2壁111bの上縁部が支持部15の下部に当接することによって、入力された荷重が支持される。これによって、第1取付部132及び第2取付部141の接合部分C、D、特に上方に引っ張られる接続部分Cが入力された負荷によって破損することが防止される。
図10及び
図11の例では、接合部分は溶接されているので溶接個所の破断が防止される。接合部分を螺子、ボルト、又は螺子受などの固定具とした場合は、固定具と固定具を取り付ける部材の破損が防止される。
【0035】
本実施形態のクロスメンバ構造1では、
図9及び
図10に示したように、第1取付部132と第2取付部141とは、別々に成形された部材としている。これによって、第1取付部132、第2取付部141、又はビーム111といった各部材を複雑な形状にしても、金属板材のプレス成型又は曲げ成型によって、第1取付部132、第2取付部141、又はビーム111といった各部材を成形することが可能になっている。
【0036】
本実施形態のクロスメンバ構造1では、第1取付部132に車体の下方に延びる第1接続部132dが設けられる。また、第2取付部141に車体の上方に延びる第2接続部111fが設けられる。第1接続部132d及び第2接続部111fを支持部15の横で溶接によって接合する。これによって、別々に成形された第1取付部132と第2取付部141とを支持部の側面で連続した一体の部材としている。
【0037】
第1接続部132dは、第1取付部132の第2壁132bと連続する形状であり、下縁部は支持部の外形に沿う形状であり、車長方向に沿って溶接用の平坦部を備える形状である。
図10に示したように、第1接続部132dの下縁部は、支持部15の外形に沿う形状とされている。また、第1取付部132の下縁部も支持部15の外形に沿う形状とされている。これによって、第1取付部132及び第1接続部132dが支持部15に接触する面積を増大させて、単位面積当たりに作用する荷重を小さくすると共に溶接する面積を増大させている。
【0038】
第2接続部111
fは、ビーム111の第1壁111aと連続し車体の上方に延びる形状であり、支持部15の下部から側面に沿う形状である。
図9の例では、第2接続部111
fは、平板から構成した湾曲部を有する腕状の部材であり、ビーム111の第1壁111aに対して溶接によって固定されている。
図9及び
図10に示したように、第2接続部111
fの内縁部は、支持部15の外形に沿う形状とされている。また、第2取付部141の上縁部も支持部の外形に沿う形状とされている。これによって、第2取付部141及び第2接続部111
fが支持部15に接触する面積を増大させて、単位面積当たりに作用する荷重を小さくすると共に溶接する面積を増大させている。
【0039】
図9及び
図10において太線で示したように、第1接続部132dの平坦部に第2接続部111
fの内縁部を当接させた状態で両者を溶接によって固定することで、第1接続部132dと第2接続部111
fとは、連続した一体の部材とされている。
【0040】
第1接続部及び第2接続部のうちいずれか一方は省略して第1取付部と第2取付部を接合する接続部を一つ設ける構成にしてもよい。また、第1取付部と第2取付部と接続部とを一体に成形してもよい。いずれの場合においても、接続部は、支持部15の外形に沿って当接する部分を備える形状とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態のクロスメンバ構造1では、第1取付部132及び第2取付部141を支持する支持部15は、車長方向に延びる棒状の部材であるサイドクロスメンバ13を利用している。その他、棒状の部材として、例えば、第1クロスメンバ11、第2クロスメンバ、又はサイドメンバ9を利用してもよい。第1クロスメンバ11、又は第2クロスメンバ12などの車幅方向に延びる部材を支持部として利用する場合は、第1取付部132と第2取付部141は、支持部15の正面又は背面で連続する。正面及び背面も支持部の横に含まれるものとする。その他、支持部としては、例えば、側面と底面と上面とを有する箱状のクロスメンバなどを利用してもよい。
【0042】
上記のクロスメンバ構造では、車輪の支持部材3は、
図8に示したように、第1連結部31、第2連結部33に加えて、第3連結部32によっても支えられる。第3連結部32の一端部は車輪の支持部材3に上下に軸動可能な状態で軸支される。第3連結部32の他端部は第2クロスメンバ12の下面に設けられた第3取付部121に上下に軸動可能な状態で軸支される。第3取付部121は、車体の正面側に配される第1壁121a、車体の背面側に配される第2壁121bと、第1壁121aと第2壁121bとの下端部と連続する第3壁121cと有し、車体の両側面は解放された形状である。第3取付部121の第1壁121aと第2壁121bとには、貫通孔83a、83bがそれぞれもうけられており、第3連結部32の他端部が軸支される。
【0043】
上記のクロスメンバ構造1では、第1連結部31、第2連結部33、及び第3連結部32は、それぞれリンクロッドから構成される。そして、第1連結部31、第2連結部33、及び第3連結部32は、リンク機構を構成しており、入力される荷重に応じて、車輪の支持部材を上下に変位させることができる。第1連結部及び第2連結部は、リンクロッドに限定されず、例えば、ロアアームやアッパアーム等に替えてもよい。
【0044】
上記のクロスメンバ構造1は、リアクロスメンバである例を挙げて説明したが、フロントクロスメンバとして利用することも可能である。また、上記のクロスメンバ構造1では、ビームの端部を第2取付部として利用したが、ビームとは別の第2取付部を設けてもよい。第1取付部と第2取付部の形状は、上記の例に限定されず、第1連結部及び第2連結部をそれぞれ軸支できるものであればよい。
【符号の説明】
【0045】
1 クロスメンバ構造
3 車輪の支持部材
31 第1連結部
132 第1取付部
33 第2連結部
141 第2取付部
11 第1クロスメンバ
12 第2クロスメンバ
13 サイドクロスメンバ