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特許7076818テルペンの連続アルコキシル化及び誘導化のための方法
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  • 特許-テルペンの連続アルコキシル化及び誘導化のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】テルペンの連続アルコキシル化及び誘導化のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/06 20060101AFI20220523BHJP
   C07C 43/18 20060101ALI20220523BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20220523BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220523BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20220523BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220523BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220523BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220523BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220523BHJP
【FI】
C07C41/06 CSP
C07C43/18 C
C07C43/18 A
C11B9/00 G
C11D3/50
A61K8/33
A61Q13/00 101
A61Q19/10
A23L27/00 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019512971
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017050808
(87)【国際公開番号】W WO2018049252
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】62/384,939
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517257629
【氏名又は名称】ピー2・サイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】P2 Science, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨンホア・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】タニア・サラム
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・フォリー
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第86105408(CN,A)
【文献】特開2005-082510(JP,A)
【文献】Selective etherification of β-citronellene catalyzed by zeolite beta,Green Chemistry,2015年,(2015), 17, p2840-2845
【文献】Methoxylation of dihydromyrcene in an intensified fixed bed reactor,Chemical Engineering Research and Design,2017年,(2017), 122, p254-262
【文献】Alkoxylation of limonene and alpha-pinene over beta zeolite as heterogeneous catalyst,Applied Catalysis A,1997年,(1997), 149, p311-329
【文献】NMR-Untersuchungen an Naturstoffen; Durch Substituenten Induzierte Verschiebungen im 13C-NMR-Spektrum des Elemols,Zeitschrift fur Chemie,1982年,(1982), 22, 7. p261-262
【文献】Composition of Volatile Oil of Primula Obconica in Central China,Natural Produt Letters,2002年,(2002), 16, 4, p249-253
【文献】Alcoxylation of camphene catalyzed by cation exchange resins,Chemical Engineering Research and Design,2016年,(2016), 114, p60-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/
C07C 43/
C11B 9/
C11D 3/
C11D 1/
A61K 8/
A61Q 13/
A61Q 19/
A23L 27/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のアルコキシル化テルペンを製造する方法であって、当該方法は、アルコキシル化生成物を含めた生成物を得るために、充填層反応器中で、テルペンと組み合わせたアルコールを含む溶液を酸性樹脂触媒上に連続的に通す工程を含み、前記テルペンがジヒドロミルセンであり、前記アルコールがメタノールであり、反応によりメトキシ-シトロネレンを形成するか、または、前記テルペンがバレンセンであり、前記アルコールがメタノールであり、反応によりメトキシ-バレンセンを形成する、方法。
【請求項2】
前記溶液を、80℃を含めた50℃~120℃の高温で通す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性樹脂触媒がアンバーリスト型陽イオン交換樹脂である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液の平均滞留時間が0分~30分である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記テルペンがジヒドロミルセンであり、前記アルコールがメタノールであり、反応によりメトキシ-シトロネレンを形成する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記テルペンがバレンセンであり、前記アルコールがメタノールであり、反応によりメトキシ-バレンセンを形成する、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸性樹脂触媒が、スルホン酸基もしくはカルボン酸基に共有結合した、マクロレティキュラー樹脂もしくはセルラー樹脂、またはスルホン酸基もしくはカルボン酸基に共有結合したシリカである、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸性樹脂触媒が、前記溶液が流れるチューブまたはパイプに充填されている、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
生成物が蒸留によって精製され再循環される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
以下の構造によって表される式(II)の化合物。
【化1】
【請求項11】
当該化合物が、合成中間体として、または香味料および香料中の成分として利用される、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項10に記載の式(II)の化合物を含む香料組成物。
【請求項13】
請求項10に記載の式(II)の化合物を含む香水組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の式(II)の化合物を含む石鹸組成物。
【請求項15】
請求項10に記載の式(II)の化合物を含む香味料または風味料組成物。
【請求項16】
以下の構造によって表される式(III)の化合物を含む香料組成物。
【化2】
【請求項17】
以下の構造によって表される式(III)の化合物を含む香水組成物。
【化3】
【請求項18】
以下の構造によって表される式(III)の化合物を含む石鹸組成物。
【化4】
【請求項19】
以下の構造によって表される式(III)の化合物を含む香味料または風味料組成物。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年9月8日に出願された米国仮出願第62/384,939号の利益と優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、テルペンをアルコキシル化する方法に関する。本発明は、アルコキシル化されたテルペン化合物にも関する。本発明は、概略、ジヒドロミルセノールを製造するための新規な方法に関する。より詳細には、本発明は、短時間内に、高変換率で、アルコキシテルペンを一段階で連続的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テルペンの誘導体は、再生可能な出発原料から製造される、香味料、香料、接着剤、フェロモン、および化粧品において広く使用されている。テルペンの変換および誘導化の既存の方法には、ピナンのジヒドロミルセンへの熱変換、ジヒドロミルセンのジヒドロミルセノールへの変換、およびピネンのリモネンへの変換が含まれる。この研究分野には多くの取り組みが集中されているが、プロセスが強化された方法を使用してテルペン出発物質の連続反応を改善するために行われた研究は限られていた。
【0004】
ジヒドロミルセンからジヒドロミルセノールを製造する際の現在の方法として、構造化された反応器中で酸性樹脂を使用すること(中国特許CN104926610号、中国特許CN102964215号参照)、ジェット反応器を使用すること(Ind.Eng.Chem.Res.2010,49,3170-3175、中国特許CN101684064号参照)、樹脂充填反応蒸留カラムを使用すること(中国特許CN102617288号参照)、が挙げられる。これらの方法はすべて、酸性条件下で水を使用するヒドロキシル化化学に専ら焦点を当てている。水と出発原料は混和性がないので、相間移動は、溶媒の使用もしくは追加によって、または激しく混合することによって克服しなければならないことが要求される。これらの方法はヒドロキシル化化学に興味が向けられているが、アルコキシ-テルペンは特定の化学産業において重要な中間体および成分であるため、アルコキシル化を行うための誘導化化学を開発する要求がなおある。
【0005】
例えば、メトキシ-シトロネレンは、成分として、ならびに広汎に使用されている香味料および香料であるメトキシ-メロナールの製造のための中間体として、どちらにも使用されている。従前、この変換は、バッチ条件下でしか報告されておらず、収率が大きく変動し、反応時間が数時間から数日に及ぶことがある。米国特許第3,121,124号明細書は、同様の化学を用いたこの種の第三級オレフィンの一般的なエーテル化を開示しているが、テルペンの選択性および反応要求については特に説明していない。
【0006】
これに関連して、アルコキシ-テルペンをさらに商業的に実現可能な方法で製造する要求がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、代表的なアルコキシル化テルペンを示している。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、テルペン化合物をアルコキシル化およびヒドロキシル化する方法に関する。本発明は、非常に短時間内に、高い変換率で連続的に一段階で種々のテルペン化合物をアルコキシル化およびヒドロキシル化するために、種々の樹脂および反応触媒を利用し、これによりこの化学をより一層商業的に実現可能とする、方法に関する。さらに、多様な用途に使用することができる新規な分子が本明細書で開示される。
【0009】
本発明は、さらに、本明細書に記載の方法(例えば、方法1.0以下)によって得られるアルコキシル化テルペン化合物に関する。本発明は、本明細書に記載の式IIおよび式IIIの化合物に関する。
【0010】
本発明は、式IIおよび式IIIの化合物に関する使用にも関する。
【0011】
本発明は、本明細書に記載の方法(例えば、方法2.0以下)によって得られるヒドロキシル化化合物の方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
様々なアルコキシル化テルペンを連続的な様式で得る試みにおいては、アンバーリスト(登録商標)のような陽イオン性固定化樹脂が、充填構造化反応器中の反応触媒として探求された。これに関して、非常に短い滞留時間、例えば10分以内での変換率は、数時間かかり得る匹敵するバッチ反応条件で観察された変換率と少なくとも同じくらい高いか、またはそれを超えた。
【0013】
多種多様な条件を使用することができるが、好ましい実施形態においては、メタノールをメトキシ化のための溶媒として使用し、滞留時間を20分未満にし、かつ、基質に応じて、温度を50~120℃に維持した場合に、理想的な変換を得ることができる。この手法を用いることにより、多種多様な新規および既存の分子を容易に製造することができる。図1にそのいくつかを示す。
【0014】
さらにわずかに修正した手法を使用することができ、そこでは、ヒドロキシル化化合物を優先的に形成するために、水を含むアルコール溶液を使用することができる。例えば、イソプロピルアルコールのような立体障害性アルコール中の水を、ヒドロキシレートを製造するための溶媒系として使用することができる。そして、未反応のテルペン出発物質は、蒸留によって容易に再循環することができ、所望の生成物への最終的な変換を確実にすることができる。
【0015】
ここで使用された特定の手法は、異なる反応器構造およびカチオン触媒の選択にわたってより広く適用することができるが、長さ6フィート、外径1/4インチ(内径0.21インチ)の316ステンレス鋼管に詰められたアンバーリスト(登録商標)の使用を含んでいた。次に、管を直径約10インチのコイルにコイル状に巻いた後、それを所望の温度の油浴に入れた。次いで、テルペンおよびアルコール(メタノール、イソプロパノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどから選択される)の溶液を1~10ml/分の間でコイルに通過させた。温度は50~120℃の範囲であり、与えられたアルコール溶媒の沸点よりわずかに高い温度で最良の結果がしばしば観察された。溶解度に応じて、テルペン濃度を溶媒中で10%~50%の範囲にした。他の実施形態では、異なる濃度を使用することができる。
【0016】
この連続的な手法の1つの非常に驚くべき特徴は、非常に大きい選択性が観察されたことである。予想されるかもしれない、第三級オレフィンがジヒドロミルセンに見られる第一級オレフィンよりもはるかに容易にアルコキシル化されただけでなく、同じ分子上の第三級オレフィン間でかなりの選択性が観察された。例えば、バレンセンを反応させる場合、アルコキシル化は、環系の(または外部の)第三級オレフィンペンダント上で非常に好まれた。実際、環系内のオレフィン上でアルコキシル化はほとんど観察されなかった。さらに、エレメンに関しては、見かけ上同等の2つのペンダント三級オレフィンにおいて、わずかに立体障害の少ないものに対して非常に強い選択性があった。
【0017】
また、驚くべき且つ興味深いことは、カリオフィレンをメタノールと一緒に使用した場合、転位が起こり、図1に示すメチルエーテルが生じたことである。
【0018】
アルコールの効果に関しては、メタノールを用いた場合に、最良の変換が観察され、イソプロパノールを用いた場合に、アルコキシル化はほとんど観察されなかった。 中鎖アルキルアルコール(エタノール、ブタノール、プロパノール)は、アルコキシレートへの変換が、メタノールよりも劣るが、イソプロパノールよりも優るようである。
【0019】
この手法のスケールアップは容易に達成することができる。例えば、長さ6フィート、外径1インチの316ステンレス鋼管に触媒を充填し、容量と触媒負荷量に基づいて対応する流速と滞留時間で操作した。温度および滞留時間が注意深く制御されるという条件において、ほぼ任意の規模で、この手法に対して任意の数の連続充填層構造配置を企図することができる。
【0020】
いかなる理論にも縛られることはないが、一態様では、それらの連続的な操作モードによって、記載された方法(例えば、方法1.0、以下、方法2.0以下)で使用される反応器(例えば、充填層反応器)は、効率的であり、合理的に高いスループット率を示すが、中間体の蓄積を許容しない。
【0021】
とりわけ、上記のテルペン-アルコキシレートは、残存する「保護されていない」オレフィンを誘導化するための中間体として使用することができる。また、アルキル-エーテルは適切な酸性条件下で容易にオレフィンに戻すこともできる。
【0022】
テルペン-アルコキシレートおよびヒドロキシレートは、香味剤および香料、ならびに化粧品として使用することもできる。
【0023】
実際、一態様において、本発明は方法1.0を包含しており、ここで、方法1.0は、1つ以上のアルコキシル化テルペンを製造する方法であって、当該方法は、生成物(例えば、アルコキシル化生成物)を得るために、反応器(例えば、充填層反応器)中で、テルペンと組み合わせたアルコールを含む溶液を酸性樹脂触媒上に連続的に通す工程を含む。
【0024】
ある態様において、本発明は以下のものを包含する。
1.1 方法1.0の方法であって、前記溶液を50℃~120℃の高温で通す。
1.2 方法1.1の方法であって、前記溶液を80℃~90℃の高温(例えば、約80℃)で通す。
1.3 方法1.0、1.1または1.2の方法であって、前記酸性樹脂触媒がアンバーリスト型陽イオン交換樹脂である。
1.4 方法1.0~1.3の方法であって、前記酸性樹脂触媒がゼオライトである。
1.5 前述の方法のいずれかの方法であって、前記生成物が、前記テルペンの第三級オレフィンと前記アルコールとのアルコキシ付加物である。
1.6 前述の方法のいずれかの方法であって、前記溶液の平均滞留時間が0分~30分である。
1.7 前述の方法のいずれかの方法であって、前記アルコールがメタノールであり、前記生成物がメトキシ化されている。
1.8 方法1.0~1.6のいずれかの方法であって、前記アルコールがエタノールであり、前記生成物がエトキシ化されている。
1.9 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンが、モノテルペン、セスキテルペン、ジヒドロミルセン、バレンセン、エレメン、およびカリオフィレンを含む群から選択される。
1.10 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンが、リナロール、カレン、ロンギホレン、イソロンギホレン、リモネン、メンテン、セドレン、ジヒドロミルセノール、イソプレゴール、イソプレゴン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン、ツジェン、シトロネル酸、シトロネル酸エステル、およびピネンからなる群から選択される。
1.11 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンがジヒドロミルセンであり、前記アルコールがメタノールであり、それによってメトキシ-シトロネレンを形成する。
1.12 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンがバレンセンであり、前記アルコールがメタノールであり、反応がメトキシ-バレンセンを形成する。
1.13 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒が、シリサイクルプロパンスルホン酸、モンモリロナイト、またはアンバーリスト(登録商標)(例えば、マクロレティキュラーもしくはセルラー樹脂、またはスルホン酸基もしくはカルボン酸基に共有結合したシリカ)から選択される。
1.14 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒がアンバーリスト(登録商標)である。
1.15 前述の方法のいずれかの方法であって、メタノールが前記アルコールである。
1.16 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒が、前記溶液が流れるチューブまたはパイプに充填されている。
1.17 前述の方法のいずれかの方法であって、前記生成物が蒸留により精製される。
1.18 前述の方法のいずれかの方法であって、図1に記載のテルペン出発物質を利用し、前記生成物が図1に記載のアルコキシル化テルペンである。
1.19 前述の方法のいずれかの方法であって、反応器が充填層反応器である。
【0025】
本発明は、方法1.0以下のいずれかから得られるかまたは得ることができる任意の化合物も企図する。方法1.0以下のいずれかから得られる化合物は、香料組成物、香水、石鹸、ろうそく組成物、化粧料組成物、および香味料または風味料として使用でき、そして、単独の成分としてまたは成分の組み合わせの一部として使用することができる。
【0026】
さらなる態様において、本発明はまた、方法1.0以下のいずれかの結果である特定の化合物を企図する。一態様において、本発明は、以下の構造によって表される式IIの化合物である化合物2.0に関する。
【化1】
【0027】
2.1 化合物2.0であって、合成中間体として、または香味料および風味料中の成分として利用される化合物。
2.2 式(II)の化合物を含む香料組成物。
2.3 式(II)の化合物を含む香水組成物。
2.4 式(II)の化合物を含む石鹸組成物。
2.5 式(II)の化合物を含む香味料または風味料組成物。
【0028】
一態様において、本発明は、以下の構造によって表される式IIIの化合物である化合物3.0に関する。
【化2】
【0029】
3.1 化合物3.0であって、合成中間体として、または香味料および風味料中の成分として利用される化合物。
3.2 式(III)の化合物を含む香料組成物。
3.3 式(III)の化合物を含む香水組成物。
3.4 式(III)の化合物を含む石鹸組成物。
3.5 式(III)の化合物を含む香味料または風味料組成物。
3.6 前述の化合物のいずれかの化合物であって、式(III)の化合物を製造するために使用される出発原料が、例えば以下の構造によって表されるβ-エレメンを含む。
【化3】
【0030】
さらなる態様において、本発明は方法2.0を包含しており、それは、生成物(例えば、ヒドロキシ化生成物)を得るために、反応器(例えば、充填層反応器)中でテルペンと組と組み合わせたアルコールおよび水を含む溶液を酸性樹脂触媒上に連続的に通す工程を含む、ヒドロキシル化テルペンを製造する方法である。
【0031】
ある態様において、本発明は以下のものを包含する。
2.1 方法2.0の方法であって、前記テルペンがジヒドロミルセンであり、前記生成物がジヒドロミルセノールである。
2.2 方法2.0または2.1の方法であって、前記アルコールがイソプロパノールまたは2-ブタノールである。
2.3 方法2.0、2.1、または2.2の方法であって、前記溶液を50℃~120℃の高温で通す。
2.4 方法2.3の方法であって、前記溶液を80℃~90℃の高温(例えば、約80℃)で通す。
2.5 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒がアンバーリスト型陽イオン交換樹脂である。
2.6 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒がゼオライトである。
2.7 前述の方法のいずれかの方法であって、前記溶液の平均滞留時間が0分~30分である。
2.8 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンが、モノテルペン、セスキテルペン、ジヒドロミルセン、バレンセン、エレメン、およびカリオフィレンを含む群から選択される。
2.9 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンが、リナロール、カレン、ロンギホレン、イソロンギホレン、リモネン、メンテン、セドレン、ジヒドロミルセノール、イソプレゴール、イソプレゴン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン、ツジェン、シトロネル酸、シトロネル酸エステル、およびピネンからなる群から選択される。
2.10 前述の方法のいずれかの方法であって、前記テルペンはジヒドロミルセンであり、前記アルコールはイソプロパノールであり、得られる生成物はジヒドロミルセノールである。
2.11 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒が、シリサイクルプロパンスルホン酸、モンモリロナイト、またはアンバーリスト(登録商標)(例えば、マクロレティキュラーもしくはセルラー樹脂、またはスルホン酸基もしくはカルボン酸基に共有結合したシリカ)から選択される。
2.12 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒がアンバーリスト(登録商標)である。
2.13 前述の方法のいずれかの方法であって、前記酸性樹脂触媒が、前記溶液が流れるチューブまたはパイプに充填されている。
2.14 前述の方法のいずれかの方法であって、前記生成物が蒸留により精製される。
2.15 前述の方法のいずれかの方法であって、前記アルコールがイソプロパノールまたは2-ブタノールである。
【0032】
本発明は、方法2.0以下のいずれかから得られるかまたは得ることができる任意の化合物も企図する。方法2.0以下のいずれかから得られる化合物は、香料組成物、香水、石鹸、ろうそく組成物、化粧料組成物、および香味料または風味料として使用でき、そして、単独の成分としてまたは成分の組み合わせの一部として使用することができる。
【0033】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の付随する説明に記載されている。他に断らない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、本明細書が優先する。
【0034】
他に断らない限り、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないと理解されるベきである。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲では、多くの用語を引用し、これらは以下に記載する定義を有するものと規定されるべきである。本明細書で使用される全ての百分率は、他に断らない限り、体積比である。
【0035】
本明細書において、化合物の構造式は、場合によっては便宜上特定の異性体を表すが、本発明は、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などのすべての異性体を含む。さらに、本明細書に記載の式で表される化合物には結晶多形が存在してもよく、いかなる結晶形、結晶形混合物、またはそれらの無水物もしくは水和物が本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0036】
本明細書で使用される全ての比率は、他に断らない限り、モル濃度比である。
【0037】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば、「1つの反応物」への言及は、単一の反応物だけでなく2つ以上の異なる反応物の組み合わせまたは混合物も含み、「1つの置換基」への言及は単一の置換基と同様に2つ以上の置換基を含む、といったようになる。
【0038】
本明細書で使用される、「例えば」、「例として」、「のような」または「含む」という語句は、より一般的な主題をさらに明確にする例を紹介することを意味する。これらの例示は、本願開示を理解するための助けとして提供されているに過ぎず、いかなる形で限定することを意味するものではない。さらに、本明細書で使用されるとき、「してもよい」、「任意の」、「任意に」または「任意にしてもよい」という用語は、後述の状況が生じても生じなくてもよいことを意味しており、その記載は、その状況が生じる場合と生じない場合とを含む。例えば、「任意に存在する」という語句は、対象が存在してもしなくてもよいことを意味しており、したがって、当該記載は、対象が存在する場合と対象が存在しない場合とを含む。
【0039】
本明細書で使用される、「式を有する」、「構造を有する」または「包含する」という語句は、限定を意図するものではなく、「含む」という用語が一般的に使用されるのと同じ方法で使用される。
【0040】
本出願のいくつかの式において、1つ以上のキラル中心は、キラル炭素の隣に配置されたアスタリスクによって識別される。その他の式では、キラル中心は識別されていないが、それでもなおキラル異性体はこれらの式に含まれる。
【0041】
本発明のいくつかの化合物は、本発明の範囲内に包含されることも意図されている互変異性型で存在することができる。
【0042】
「互変異性体」とは、その構造が原子の配置において著しく異なるが、容易かつ迅速な平衡状態で存在する化合物を指す。本発明の化合物は、異なる互変異性体として表すことができることと理解されるべきである。化合物が互変異性型を有するとき、全ての互変異性型が本発明の範囲内であると意図され、そして、化合物の命名がいかなる互変異性型も排除しないこともまた理解されるべきである。さらに、1つの互変異性体が記載されていても、本発明はその化合物の全ての互変異性体を含む。
【0043】
本明細書中で使用される、「塩」の用語は、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、および酒石酸塩を含む酸付加塩、およびNa、K、Liのようなアルカリ金属陽イオン、Mg2+もしくはCa2+のようなアルカリ土類金属塩、または有機アミン塩、または有機ホスホニウム塩、を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチルなどといった、必ずしもではないが典型的には、1~約12個の炭素原子を含む、一価または二価の分岐または非分岐の飽和炭化水素基を指す。
【0045】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、t-ブチレン、オクチレンなどといった、必ずしもではないが典型的には、2~約12個の炭素原子、および1~10個の炭素-炭素二重結合を含む、一価または二価の分岐または非分岐の不飽和炭化水素基を指す。
【0046】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、エチン、プロピン、ブチン、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどといった、必ずしもではないが典型的には、2~約12個の炭素原子、および1~8個の炭素-炭素三重結合を含む、一価または二価の分岐または非分岐の不飽和炭化水素基を指す。
【0047】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」などにおける「置換」とは、アルキル、アルケニル、アルキニル、または他の部分において、炭素原子に結合する少なくとも1つの水素原子が、1個以上の水素以外の置換基、例えば官能基で置換されていることを意味する。
【0048】
少なくとも一態様では、本明細書に記載の方法(例えば、方法1.0以下、方法2.0以下)は、充填層反応器を利用する。そして、本明細書に記載の化合物、例えば、式(II)、式(III)、または方法1.0以下または方法2.0以下のいずれかにより得られる任意の化合物は、「充填層反応器」を利用することによって得ることができる。これらの反応器は管状であり、いくつかの態様では、固体触媒粒子で充填されており、ガス反応を触媒するために使用することができる。充填層反応器を使用することの少なくとも1つの利点は、他の触媒反応器よりも触媒の重量当たりの変換率が高いことであり得る。変換率は、反応器の容積よりもむしろ固体触媒の量に基づいている。
【0049】
本明細書で使用される、「香料組成物」の用語は、例えば、式IIおよび式IIIの化合物、ならびに方法1.0以下または方法2.0以下のいずれかから得られるまたは得ることができる化合物を含み、所望に応じて補助物質を含み、適切な溶媒に溶解されるか、または製品に所望の香りを与えるために使用される粉末状基剤と混合された、香料成分の混合物を意味する。
【0050】
香料組成物の製造のために本開示の化合物と組み合わせて使用され得る香料および成分ならびに香料成分の混合物は、限定されるものではないが、抽出物、畜産物および精油を含む天然物、アブソルート香料、樹脂状物質、樹脂、コンクリート香料、そして、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、酸類、エステル類、アセタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、フラン類、ケタール類、ニトリル類、酸類、および、飽和および不飽和化合物ならびに脂肪族炭素環式および複素環式化合物を含む炭化水素類を含むがこれらに限定されない合成の香料材料、ならびに畜産物、を含む。
【0051】
香料組成物の製造のために本開示の化合物(例えば、式II、式IIIの化合物、または方法1以下のいずれかによって得られる化合物、または方法2以下のいずれかによって得られる化合物)と組み合わせて用いることができる香料および成分ならびに香料成分の混合物は、限定されるものではないが、抽出物、畜産物および精油を含む天然物、アブソルート香料、樹脂状物質、樹脂、コンクリート香料、そして、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、酸類、エステル類、アセタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、フラン類、ケタール類、ニトリル類、酸類、および、飽和および不飽和化合物ならびに脂肪族炭素環式および複素環式化合物を含む炭化水素類を含むがこれらに限定されない合成の香料材料、ならびに畜産物、を含む。
【0052】
本発明はまた、式IIまたはIIIの化合物、および/または方法1.0以下のいずれかによって得られる化合物、または方法2.0以下のいずれかによって得られる化合物を、以下の香料組成物、香水、石鹸、および香味料または風味料から選択される組成物中で使用する方法を企図する。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明の方法の生成物は、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られるいずれかの化合物、または方法2.0以下によって得られるいずれかの化合物を、約80%より多く含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法の生成物(例えば、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られるいずれかの化合物、または方法2.0以下によって得られるいずれかの化合物)は、約85%より多く、約90%より多く、約92%より多く、約95%より多く、約97%より多く、約98%より多く、約98.5%より多く、または約99%より多く、含有してもよい。本明細書で述べられる本発明の態様によれば、生成物(例えば、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られるいずれかの化合物、または方法2.0以下によって得られるいずれかの化合物)は、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約3%未満、約2%未満、約1.5%未満、または約1%未満の不純物を含有してもよい。
【0054】
これらの実施形態によれば、生成物(例えば、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られるいずれかの化合物、または方法2.0以下によって得られるいずれかの化合物)は、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約8%未満、約3%未満、約2%未満、約1.5%未満、または約1%未満の不純物を含んでもよい。
【0055】
本明細書で使用される、「香水組成物」は、所望により補助物質を含み、適切な溶媒に溶解され、または製品に所望の香りを与えるために使用される粉末基剤と混合される香料材料の混合物を意味する。一態様では、本明細書に記載の「香水組成物」は、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られるいずれかの化合物、または方法2.0以下によって得られるいずれかの化合物を含むことができる。さらなる態様においては、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られるいずれかの化合物、または方法2.0以下によって得られるいずれかの化合物は、香水、石鹸、洗剤、消臭剤、室内用スプレー、匂い玉、ろうそく、クリームなどの化粧品、軟膏、トイレ用水、プレおよびアフターシェーブローション、タルカムパウダー、ヘアケア剤、ボディデオドラント、制汗剤、を含むがこれに限定されない香水組成物を含む製品の前述した例の一部として、使用することができる。香水組成物の製造のために本開示の化合物と組み合わせて使用することができる香料材料および香料材料の混合物は、限定されるものではないが、精油、アブソルート香料、樹脂状物質、樹脂、コンクリート香料を含めた天然物、および、飽和および不飽和化合物ならびに脂肪族炭素環式および複素環式化合物を含めた、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、酸類、エステル類、アセタール類、ケタール類、およびニトリル類を含むがこれらに限定されない合成の香料材料、を含む。
【0056】
本開示(例えば、式II、式IIIの化合物、および方法1以下のいずれかによって得られる化合物、または方法2以下のいずれかによって得られる化合物)と組み合わせて使用され得る香料材料の例として、これらに限定されるものではないが、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、リナロール、酢酸リナリル、テトラヒドロリナロール、シトロネロール、酢酸シトロネリル、ジヒドロミルセノール、酢酸ジヒドロミルセニル、テトラヒドロミルセノール、テルピネオール、酢酸テルピニル、ノポール、酢酸ノピル、2-フェニルエタノール、酢酸2-フェニルエチル、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、スチラリルアセタート、安息香酸ベンジル、サリチル酸アミル、ジメチルベンジルカルビノール、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、イソノニルアセテート、ベチベリルアセテート、ベチベロール、アルファ-ヘキシルシンナム-アルデヒド、2-メチル-3-(p-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、2-メチル-3-(p-イソプロピルフェニル)-プロパナール、3-(p-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、トリシクロデセニルアセテート、トリシクロデセニルプロピオネート、4-(4-ヒドロキシ-4-)メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、4-アセトキシ-3-ペンチル-テトラヒドロピラン、3-カルボキシメチル-2-ペンチルシクロペンタン、2-n-ヘプチルシクロペンタノン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテノン、n-デカナール、n-ドデカナール、9-デセン-1-01、フェノキシエチルイソブチレート、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、セドリルアセテート、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、セドリルメチルエーテル、イソロンギホラノン、オーベピニトリル、オーベピン、ヘリオトリピン、クマリン、オイゲノール、バニリン、ジフェニルオキシド、ヒドロキシシトロネラール、イオノン、メチルイオノン、イソメチルイオノン、イロン、シス-3-ヘキセノール、および、インダン香料、テトラリン香料、イソクロマン香料、大環状ケトン類、マクロラクトン香料、エチレンブラシレート、芳香族ニトロ香料といったエステル類、が挙げられる。
【0057】
本発明による化合物を含有する香水組成物に使用することができる補助物質および溶媒には、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびフタル酸ジエチルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
香料または香水または化粧料組成物、または香水を入れられる製品に使用される本開示の化合物の量は、製品の性質、香味料、香料、香水、石鹸、または化粧料組成物中の他の香料材料の性質および量、および所望する香りの効果に応じて、変わり得る。例えば、式(II)、(III)の化合物、または方法1.0以下によって得られる化合物、または方法2.0以下によって得られる化合物は、所定の香味料、香料、香水、石鹸、または化粧料組成物中に、組成物の0.005重量%~25重量%、組成物の0.05重量%~10重量%、または特に、組成物の0.1重量%~5重量%となり得る。
【実施例
【0059】
一般的な反応装置
シリス(Syrris)のシリンジポンプを使用し、アルコールおよびテルペンの溶液を予め設定された流速で樹脂充填反応器にポンプで注入した。アルコールとテルペンが不混和性である場合には、磁気撹拌プレートと撹拌子を使用してポンプで汲み上げている混合物を激しく撹拌した。316ステンレス鋼管で構成された反応器は、アンーリスト(登録商標)15(H)樹脂が充填されており、油浴中で所望の温度に加熱された。滞留時間は、球仮定のランダム最密充填(RCP)から計算された体積と管の容積とを使用して計算された。

【0060】
スタビルワックス(Stabilwax)(登録商標)の30メートル(内径0.25mm)のカラムを備えたアジレント(Agilent)6890N GCを用いて反応をモニターした。変換は出発物質の消失に基づいて算出し、所望の生成組成物はピークの積分に基づいて調べた。生成物の保持時間は分析標準品に基づいた。全ての分子の同定には、H NMRおよび13C NMRを使用した。
【0061】
実施例1:メトキシ-シトロネレンの製造
105g(0.76mol)のジヒドロミルセンを135gのメタノール(4.22mol)に溶解した。次いで、この透明な溶液をポンプにより1.25ml/分の流速で80~84℃の温度で充填反応器に通した。反応容器をメタノールでチェイスし、反応操作終了時のバルクは、33.1%の出発原料(ジヒドロミルセン)および53.9%のメトキシ-シトロネレンであることを示した。この物質を蒸留による精製のために取り置いた。
【0062】
実施例2:メトキシ-バレンセンの製造
150g(0.734mol)のバレンセン(純度81.65%)を110g(3.44mol)のメタノールに溶解した。この混合物をポンプにより2.5ml/分の流速で80℃に加熱した反応器に通した。反応混合物の試料は、9.14%のバレンセン出発物質および45.4%のメトキシ-バレンセン生成物の存在を示した。反応容器をメタノールでチェイスし、反応混合物を濃縮し、そして蒸留により精製した。GCによる純度82.9%の材料の53.3gの主要画分を含む多くの画分を集めた。カラムクロマトグラフィーによりさらに純粋な物質を得た。
【0063】
NMRデータは以下の通りである:(3R,4aS,5R)-3-(2-メトキシプロパン-2-イル)-4a,5-ジメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロナフタレン (別名メトキシ-バレンセン)
【0064】
H NMR(CDCl,500MHz),δ0.87(d,3H,-CH),0.93(s,3H,-CH),0.98-1.02(m,1H,-CH-),1.03-1.12(m,2H,-CH-),1.06(s,3H,-CH),1.09(s,3H,-CH),1.40-1.42(m,2H,-CH-),1.73-2.10(m,6H,-CH-,-CH-),2.23-2.30(m,1H,-CH-),3.36(s,3H,-OCH),5.31(t,J=2.5Hz,1H,-CH=C)。
【0065】
実施例3:エトキシ-バレンセンの製造
12g(0.059mol)のバレンセン(純度81.65%)を68gのエタノールに溶解した。この混合物をポンプにより2.5ml/分の流速で100℃に加熱した反応器に通した。反応混合物の試料は、かなりの量の出発物質および~9.25%のエトキシ-ヌートカトン生成物であることを示した。同様の条件を使用して、メトキシ-エレメンおよびメトキシ-カリオフィレンを製造した。
【0066】
メトキシ-エレメンのNMRデータは以下の通りである:(1R,2S,4R)-4-(2-メトキシプロパン-2-イル)-1-メチル-1,2-ジ(プロプ-1-エン-2-イル)シクロヘキサン (別名メトキシ-エレメン)
【0067】
H-NMR(CDCl,500MHz):δ0.98(d,3H,-CH),1.12(s,6H,-CH),1.24-1.31(m,1H,-CH-),1.42-1.45(m,3H,-CH-),1.49-1.61(m,3H,-CH-,-CH-),1.71(s,3H,-CH),1.95(dd,J=12.5Hz,J=3.0Hz),1H,-CH-),3.17(s,3H,-OCH),4.58(t,J=1.5Hz,1H,-CH=),4.81(t,J=1.5Hz,1H,-CH=),4.87(s,1H,-CH=),4.90(dd,J=8.0Hz,J=1.5Hz,1H,CH=),5.81(dd,J=17.5Hz,J=1.0Hz,1H,CH=)
【0068】
実施例4:ジヒドロミルセノールの製造
ジヒドロミルセン(20g)、水(20g)、およびイソプロパノール(65g)の均一な混合物を、アンバーリスト15を充填した加熱カラム(外径3/8インチ、壁厚0.028インチ、長さ6フィート)に、100℃で1.5mL/分の速度でポンプに通す。GCにより、蒸留後にカラムに再循環して戻すことが可能な68.6%のジヒドロミルセン残留物と共に、13.8%のジヒドロミルセノールが形成されたことが示された。
図1