(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】マウス・ピースを製造するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20220523BHJP
A63B 71/08 20060101ALI20220523BHJP
B29C 64/00 20170101ALI20220523BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20220523BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20220523BHJP
G06F 30/12 20200101ALI20220523BHJP
G06T 17/10 20060101ALI20220523BHJP
G06T 17/30 20060101ALI20220523BHJP
A61C 7/08 20060101ALN20220523BHJP
A61F 5/56 20060101ALN20220523BHJP
A61M 16/06 20060101ALN20220523BHJP
【FI】
G06F30/10
A63B71/08 Z
B29C64/00
B29C64/386
B33Y50/00
G06F30/12
G06T17/10
G06T17/30
A61C7/08
A61F5/56
A61M16/06 D
(21)【出願番号】P 2020508000
(86)(22)【出願日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2018072255
(87)【国際公開番号】W WO2019034742
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521354330
【氏名又は名称】ガバジャ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ジェームズ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】プルナ,ミハイ
(72)【発明者】
【氏名】ハノン,ケヴィン クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バーン,ジョナサン デーヴィッド
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/117496(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/083211(WO,A1)
【文献】特開2010-142491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0182316(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0105009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
A63B 71/08
B29C 64/00
B29C 64/386
B33Y 50/00
G06F 30/12
G06T 17/10
G06T 17/30
A61C 7/08
A61F 5/56
A61M 16/06
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウス・ピース
(8)を符号化
する3Dプリンタ可読ファイルを3D印刷することによって前記マウス・ピース
(8)を製造する方法であって、
前記方法は、
3次元(3D)スキャナ手段を使用して、ユーザの歯および歯肉線
(26)を表す物理的データを含むスキャン・ファイル
(4)を入手するステップ
(101)と、
前記スキャン・ファイル
(4)内の物理的データから外れ値データ
(5)を除去するステップ
(102)と、
前記物理的データから、前記ユーザの歯および歯肉線の曲率の代表的幾何形状データを生成するステップと、
前記物理的データおよび前記代表的幾何形状データから、前記マウス・ピース
(8)を表す仮想ベース・モデル
(7)を生成するステップであって、前記仮想ベース・モデル
(7)は、カスタマイズ可能な寸法を有す
るステップと、
前記仮想ベース・モデル
(7)によって表され
るマウス・ピース
(8)から選択された部位
(9)を除去するステップと、
前記仮想ベース・モデル
(7)から、3D印刷手段での印刷のために前記マウス・ピース
(8)を符号化
する3Dプリンタ可読ファイルを生成するステップ
(103)と
、
を含み、
前記方法は、
前記スキャン・ファイル(4)内で表される前記ユーザの歯肉線
(24)の含まれる高さを増減するように動作可能な調整可能なスライダ
(22)を含むグラフィカル・ユーザ・インターフェース
(20)を操作するステップ
と、
前記スキャン・ファイル(4)内で前記歯および歯肉線(26)の部位を選択的に除去するための切断線
(32)を位置決めするために調整可能な値スライダ
(30)または値シフタ
として動作可能なグラフィカル・ユーザ・インターフェース(28)を操作するステップであって、
そこで、前
記値スライダ
(30)または値シフタは、ユーザによって操作され
る時に、前記マウス・ピース
(8)を生成する時に除外される前記部位のグラフィカル表現を示
すステップと、
を特徴とし、
そこで、前記
グラフィカル・ユーザ・インターフェース(28)は、前記仮想ベース・モデル
(7)内
で前記マウス・ピース
(8)から小帯部、口蓋部、上歯肉線部および/または下歯肉線部、ならびに鋭い縁のうちの1つ
以上の部分を選択的に除去するため
に動作可能であり、
そこで、前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース
(28)は、前記仮想ベース・モデル
(7)からの除去の前およ
び後に前記歯および歯肉線
(26)の部位のグラフィカル表現を提供
し、
前記調整可能な値スライダ
(30)または値シフタは
、前記仮想ベース・モデル
(7)内
で前記マウス・ピース
(8)の滑らかさ、壁の厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法を調整するためにさらに操作される
、方法。
【請求項2】
前記代表的幾何形状データは、滑らかさの所定のレベルに従って自動的に生成され
るか、またはオペレータによって選択された滑らかさのレベルに従って生成される、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記仮想ベース・モデル内に周辺デバイス・アタッチメント・データを組み込むさらなるステップを含み、前記周辺デバイス・アタッチメント・データは、3D印刷され
る時に前記マウス・ピースに周辺デバイス
(12)を取り付けるためのレシーバまたは接続手段
(14)を表す、請求項1または請求項2に記載
の方法。
【請求項4】
前記仮想ベース・モデル内
(7)で前記マウス・ピースのすべての縁の位置を追跡し、前記縁を軟化させるステップを含む、請求項1
乃至3のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項5】
前記マウス・ピース
(8)を提供するために3Dプリンタ上で前記3Dプリンタ可読ファイルを印刷するステップを含む、請求項1
乃至4のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項6】
前記マウス・ピース
(8)の3D印刷
の最中また
は後に内部デバイスを組み込むステップを含む、請求項1
乃至5のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項7】
内部デバイスを表すデータを生成し、
前記内部デバイスが前記マウス・ピース
を3D印刷
することの最中また
は後にその中に配置される隙間を前記仮想ベース・モデル内に作成するステップを含む、請求項1
乃至6のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項8】
前記スキャン・ファイル
(4)は、前記ユーザの歯および歯肉線
(26)の1つ
以上の写真を使用して生成される、請求項1
乃至7のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項9】
幾何形状データ、位置決めデータ、滑らかにする厚さ、スケール、所望の寸法、および前記マウス・ピース
の追加されまたは除去される部分を表すデータに従って各マウス・ピース
(8)を生成するためのルールのセットを記憶することによって、グラフィカル・ユーザ・インターフェースからエクスポートされたモデル固有セッティング・ファイルに従ってグループ内で複数の仮想ベース・モデル
(7)をバッチ処理するステップを含む、請求項1
乃至8のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項10】
前記スキャン・ファイル
(4)内の歯および歯肉線が、X、Y、Z座標系
(42)に対し
て一貫して位置決めされ、正しい方向を指しているように、前記X、Y、Z座標系
(42)上の原点または基準点に従って前記スキャン・ファイル
(4)内に示され
た歯および歯肉線を自動的に整列させ、位置決めするステップを含む、請求項1
乃至9のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項11】
前記方法は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを使用して、前記スキャン・ファイル
(4)の歯および歯肉線を手動で整列させるステップ
を含み、そこで、前記スキャン・ファイル
(4)内
の歯および歯肉線
(36)上の3つ以上の点
(40)は、選択され、前記スキャン・ファイル
(4)内
の歯および歯肉線を所望の方向に正しく方位付けるために3つ以上のプリセット点と整列するように構成され
る、請求項1
乃至10のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項12】
印刷されたマウス・ピース
(8)上の相互接続された片を回避するために、隣接する
かまたは欠けている歯
(46)または区域の間のギャップ
(44)を充填する形状を生成するのに幾何形状データを使用するステップを含む、請求項1
乃至11のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項13】
前記仮想ベース・モデル
(7)内に切欠を作成することまたは前記仮想ベース・モデル
(7)にカラー・マッピングされたテクスチャを適用することの
どちらかによって、前記マウス・ピースの表面
上に記号、レタリング、数字、画像、またはロゴ
(62)を追加するステップを含む、請求項1
乃至12のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項14】
ユーザの歯に着用された歯列矯正ブレースの存在を伴う
かまたは伴わない印刷されたマウス・ピース
(8)のフィッティングまたは除去を容易にするために、前記仮想ベース・モデル
(7)内
のマウス・ピースの外側表面内に1つ
以上のリリーフ・カット
(66)および/または隙間
(67)を作成するステップを含む、請求項1
乃至13のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項15】
マウス・ピース
(8)を符号化
する3Dプリンタ可読ファイルを3D印刷することによって前記マウス・ピース
(8)を製造する
ためのシステム
(200)であって、
前記システムは、
3次元(3D)スキャナ手段を使用して、ユーザの歯および歯肉線
(26)を表す物理的データを含むスキャン・ファイル
(4)を入手するための手段
(210)と、
前記スキャン・ファイル
(4)内の物理的データから外れ値データを除去するための手段
(220)と、
前記物理的データから、前記ユーザの歯および歯肉線
(26)の曲率の代表的幾何形状データを生成するための手段
(230)と、
前記物理的データおよび前記代表的幾何形状データから、マウス・ピースを表す仮想ベース・モデルを生成するための手段
(240)であって、前記仮想ベース・モデルは、カスタマイズ可能な寸法を有す
る手段
(240)と、
前記仮想ベース・モデルによって表され
るマウス・ピースから選択された部位を除去するための手段
(250)と、
前記仮想ベース・モデルから、前記マウス・ピースを符号化
する3Dプリンタ可読ファイルを生成するための手段
、および前記3Dプリンタ可読ファイルを印刷するための3D印刷手段と
、
を含
む、システムであり、
前記システムは、
前記スキャン・ファイル(4)内で表されるユーザの歯肉線の含まれる高さを増減するように動作可能な調整可能なスライダ
(22)を含むグラフィカル・ユーザ・インターフェース手段
(20)と、
前記スキャン・ファイル(4)内で前記歯および歯肉線(26)の部位を選択的に除去するための切断線
(32)を位置決めするために調整可能な値スライダ
(30)または値シフタ
を含むグラフィカル・ユーザ・インターフェース手段(28)であって、
そこで、前
記値スライダ
(30)または値シフタは、ユーザによって操作され
る時に、前記マウス・ピース
(8)を生成する時に除外される
ことになる前記部位のグラフィカル表現を示
す、グラフィカル・ユーザ・インターフェース手段(28)と、
をさらに含み、
そこで、前記
グラフィカル・ユーザ・インターフェース手段(28)は、前記仮想ベース・モデル
(7)内
で前記マウス・ピースから小帯部、口蓋部、上歯肉線部および/または下歯肉線部、ならびに鋭い縁のうちの1つ
以上の部分を選択的に除去するため
に動作可能であり、そこで、前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース手段
(28)は、前記仮想ベース・モデル
(7)からの除去の前およ
び後に前記歯および歯肉線
(26)の部位のグラフィカル表現を提供
し、
前記調整可能な値スライダ
(30)または値シフタは
、前記仮想ベース・モデル
(7)内
で前記マウス・ピース
(8)の滑らかさ、壁の厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法を調整するためにさらに
構成される
ことを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護ガム・シールド、マウス・ガード、またはユーザの口内に着用される保護デバイスなどのマウス・ピースを製造するシステムおよび方法を提供する。
【0002】
保護ガム・シールドまたはマウス・ガードとも称するマウス・ピースは、しばしばインパクト・スポーツ(impact sports)に関連する、弓、歯、唇、歯肉線への衝撃傷害の可能性を下げるために個人的保護を提供する、口の内部にフィットするデバイスである。他の用途は、補正アライメント、歯ぎしりの治療、外科的手技中の動きの軽減または補償をも提供する保護マウス・ピース、睡眠時無呼吸および顎関節機能不全を監視するためのアスリート・パフォーマンス・マーカー(athlete performance marker)(体温、心拍数、震盪、ラクトース・レベル、水和物など)を監視する口腔内デバイスをも含む。
【0003】
既製のマウス・ガード、ボイル・アンド・バイト(boil and bite)、真空成形、加圧積層、印象、手動3次元(3D)モデリング、および3D印刷された押込み金型を含む、マウス・ピースおよびガム・シールドを作る複数の方法がある。
【0004】
在庫のまたは既製のマウス・ピースおよびガム・シールドを用いて、デバイスは、様々なサイズであるがユーザの口にフィットさせるための調整をほぼ伴わずに、事前に形成された形状で製造される。唯一の可能な調整は、ナイフまたははさみを用いる些細なトリミングである。この手法は、歯に対する保護をほとんど提供せず、歯肉線への保護を全く提供しないデバイスをもたらす。このデバイスは、体に合わないので、ユーザが着用するには極端に不快でもある。
【0005】
「ボイル・アンド・バイト」法は、個人の歯および歯肉線によりよくフィットするように適合された、様々なサイズの事前に形成された形状で製造される熱可塑性材料を含む。この方法は、水中で煮沸することによるなど、事前に形成され成形された熱可塑性プラスチックを過熱し、鋳造することと、その後、着用者の口に配置する前に事前に形成された形状に一時的に冷却させることを含む。そのようなデバイスは、保持力を高め、伝統的な「ボイル・アンド・バイト」マウス・タイプを超える改善されたフィットを与える、フィッティング・ゾーン内のフィンを組み込むことができる。そのようなデバイスは、通常、一般にEVAと称するエチレンビニル・アセテートから作られる。より新しい技術の一部は、熱湯によるやけどを回避する、140F未満のより低い鋳造温度を可能にする、代替のより強いサーモポリマ(thermo-polymer)を提供する。「ボイル・アンド・バイト」デバイスは、アマチュアおよびセミプロのスポーツ選手によって使用される最も人気のあるガム・シールド・タイプであり、既製のガム・シールドより多くの保護を提供するが、それでも、特注のマウス・ピースまたはガム・シールドと比較して、相対的に低い保護、快適さ、およびフィットを提供する。
【0006】
特注のマウス・ピースおよびガム・シールドは、ユーザの歯の印象をとることと、その後、その印象が専門の製造業者によって、最もよくフィットするマウス・プロテクタを製作するのに使用されることとを必要とする。印象は、歯科用パテを使用する特別に設計された印象キットを使用することによって、または歯科アルギン酸材料で印象をとる歯科医から、入手することができる。結果の印象は、ラボに送られ、このラボが、印象からデバイスを作る。マウス・ピースおよびガム・シールドは、その後、真空形成、加圧積層、または3Dスキャン技法を使用して作られ得る。
【0007】
特注のマウス・ピースおよびガム・シールドは、真空成形機を使用して製造され、単一層デバイスを作る。フィットは、加圧積層ほどによくはないが、ボイル・アンド・バイトよりよい保護を提供する。特注のマウス・ピースおよびガム・シールドは、遅く、高コストで、労力集中型のプロセスである。加圧積層特注ガム・シールドは、優れたフィット、快適性、および最大の保護を提供する多重層のデバイスを作る。やはり、これは、遅く、高コストで、労力集中型のプロセスである。
【0008】
歯科アルギン酸を使用して押し込み金型を作成するのではなく、3Dスキャナを使用して、ユーザのデンタル・プロファイル(dental profile)を取り込むこともできる。人のデンタル・プロファイルはその後、ハイ・エンド3D印刷デバイスを介して作られる。その後、このデンタル・プロファイルを使用して、加圧積層法または真空成形法を介してカスタム・マウス・ピースまたはカスタム・ガム・シールドを作ることができる。このスキャン・データを使用して、コンピュータ支援設計ソフトウェアを使用してデバイスを手動で設計することもできるが、これは極端に時間集中型であり、3D印刷法を介して使用できる入手可能な3Dプラスチック・フィラメントは、市場にはない。
【0009】
本発明は、上記の問題を軽減し、または有用な代替案を公衆または産業に提供する、3D印刷を使用してマウス・ピースまたは保護ガム・シールドを製造するシステムおよび方法を提供する。
【0010】
したがって、マウス・ピースを符号化した3Dプリンタ可読ファイルを3D印刷することによってマウス・ピースを製造する方法であって、
3次元(3D)スキャナ手段を使用して、ユーザの歯および歯肉線を表す物理的データを含むスキャン・ファイルを入手するステップと、
スキャン・ファイル内の物理的データから外れ値データを除去するステップと、
物理的データから、ユーザの歯および歯肉線の曲率の代表的幾何形状データを生成するステップと、
物理的データおよび代表的幾何形状データから、マウス・ピースを表す仮想ベース・モデルを生成するステップであって、仮想ベース・モデルは、カスタマイズ可能な寸法を有する、生成するステップと、
仮想ベース・モデルによって表されるマウス・ピースから選択された部位を除去するステップと、
仮想ベース・モデルから、3D印刷手段での印刷のためにマウス・ピースを符号化した3Dプリンタ可読ファイルを生成するステップと
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明は、必要に応じてマウス・ピースをカスタマイズする能力をオペレータに提供するユーザ・インターフェース手段を伴って適合されたコンピュータ実施された開発環境で、上歯および/または下歯のマウス・ピースまたはガム・シールドを製造する方法を提供する。3Dスキャンされたデンタル・データを入力として使用して、自動化されたコンピュータ・ソフトウェア対応プロセスが、カスタマイズ可能なデジタルの3次元(3D)モデルを生成し、インターフェースの特定の区域を選択的に除去して、スポーツ応用例および医療応用例のある範囲で、個人に調整されたデバイスを作成する。その後、ソフトウェア・プロセスは、3Dプリンタを使用するデジタル製造の準備ができたファイルを出力する。
【0012】
代替案では、スキャン・ファイルは、ユーザの歯および歯肉線の1つまたは複数の写真を使用して生成される。
【0013】
仮想ベース・モデル内で歯および歯肉線の部位を選択的に除去するステップは、ユーザによって操作された時に、マウス・ピースを生成する時に除外される部位のグラフィカル表現を示すスライダまたは値シフタとして提供されるユーザ・インターフェースによって実行され得る。
【0014】
好ましくは、この方法は、ユーザ・インターフェース内に、仮想ベース・モデル内で表されるマウス・ピースを表示するステップであって、ユーザ・インターフェースは、マウス・ピースの滑らかさ、厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法の視覚的表示を示し、それらを調整するように適合された調整可能な値スライダまたは値シフタを有する、表示するステップを含む。
【0015】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内の外れ値データの概要を示すためにグラフィカル・ユーザ・インターフェースによって提供されるスライダを操作するステップを含む。
【0016】
好ましくは、代表的幾何形状データは、滑らかさ、厚さスケール位置決め、および所望の寸法の所定のレベルに従って自動的に生成される。
【0017】
代替案では、代表的幾何形状データは、セッティング・ファイル内の値によって指定されるものとしてまたはグラフィカル・ユーザ・インターフェースを介して提供される入力として、滑らかさ、厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法の、オペレータによって選択されるレベルに従って生成される。
【0018】
好ましくは、代表的幾何データは、スプライン・データ、点群データ、ならびに/またはユーザの歯および歯肉線の曲率を表す他の幾何データを含む。
【0019】
好ましくは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースは、小帯部、口蓋部、1つまたは複数の歯部、ならびにマウス・ピースが上歯および/または下歯の一方または両方のどちらに関するのかに応じて上歯肉線部および/または下歯肉線部を含む1つまたは複数の部位を有する。
【0020】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースから、小帯部、口蓋部、後方歯部、上歯肉線部および/または下歯肉線部、ならびに鋭い縁のうちの1つまたは複数を選択的に除去するステップを含む。
【0021】
好ましくは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースから部位を選択的に除去するステップは、ユーザ・インターフェース手段上での除去のためにオペレータが手動で部位を選択することによって実行される。
【0022】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの所望の厚さ、スケール位置決め、および所望の寸法を達成するために仮想ベース・モデルを処理するためのルールまたはセッティングの収集されたセットをエクスポートするステップを含む。
【0023】
好ましくは、この方法は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースからエクスポートされたモデル固有セッティング・ファイルに従ってグループ内で複数の仮想ベース・モデルをバッチ処理するステップを含む。このステップは、幾何形状データ、位置決めデータ、滑らかにする厚さ、スケール、所望の寸法、および追加されまたは除去される部分からなる各マウス・ピースを生成するためのルールのセットを記憶する。
【0024】
好ましくは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースから1つまたは複数の歯部位を除去するステップは、自動的に実行される。
【0025】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの壁の厚さを変更するステップを含む。そのような特徴は、選択されるスポーツ応用例または医療応用例に応じて、様々なレベルの全体保護とショック吸収とを提供する。
【0026】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの鋭い縁を軟化させるステップを含む。
【0027】
好ましくは、この方法は、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線が、X、Y、Z座標系に対して相対的に一貫して位置決めされ、正しい方向を指しているように、X、Y、Z座標系の原点または基準点に従ってスキャン・ファイル内に示された歯および歯肉線を自動的に整列させ、位置決めするステップを含む。
【0028】
代替案では、この方法は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを使用して、スキャン・ファイルの歯および歯肉線を手動で整列させるステップを含む。このステップは、歯が一貫した方向を指すように、スキャン・ファイルを正しく方位付けるために3つ以上のプリセット点と整列させるために、ユーザが、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線上の3つ以上の点を選択することからなる。
【0029】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデルから口蓋部の上内壁のセクションを除去するステップを含む。
【0030】
好ましくは、この方法は、歯肉線への炎症を引き起こす可能性がある、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべてのオーバーハングする部分または所望の部分を自動的に除去するステップを含む。
【0031】
好ましくは、仮想ベース・モデルから除去される口蓋部の上内壁の寸法は、スキャン・ファイル内のユーザの歯および歯肉線の物理的データに従って計算される。
【0032】
好ましくは、この方法は、完成されたマウス・ピース上の相互接続された片を回避するために、隣接するまたは欠けている歯または区域の間のギャップを充填する形状を生成するのに幾何形状データを使用するステップを含む。
【0033】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべての縁の位置を追跡し、縁を軟化させるステップを含む。
【0034】
好ましくは、この方法は、マウス・ピースを提供するために3Dプリンタまたは同様の積層造形機械上で3Dプリンタ可読ファイルを印刷するステップを含む。
【0035】
代替案では、この方法は、除去製造のためにCNC可読ファイルをエクスポートするステップを含む。
【0036】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内に周辺デバイス・アタッチメント・データを組み込むさらなるステップを含み、周辺デバイス・アタッチメント・データは、3D印刷された時にマウス・ピースに周辺デバイスを取り付けるためのレシーバまたは接続手段を表す。周辺デバイス・アタッチメント・データは、印刷されたマウス・ピースに、マウス・ピースへの周辺デバイスの取付けを容易にするのに必要なレシーバまたは接続手段を提供する。
【0037】
好ましくは、周辺デバイスは、機械的な、干渉の、粘着の、または他の適切な取付け手段を使用してレシーバまたは接続手段に取り付けられる。
【0038】
好ましくは、この方法は、その中に電子デバイスまたは他のデバイスなどの1つまたはデバイスを収容するための仮想ベース・モデル内の内部隙間を作成するステップを含む。そのようなデバイスは、3D印刷中および/または3D印刷後に作成された隙間内に位置決めされ得る。
【0039】
好ましくは、この方法は、電子デバイスまたは他のデバイス・タイプなどの内部構成要素をマウス・ピース内に組み込むさらなるステップを含む。デバイスの寸法を表すデータは、除去され、デバイスが3D印刷中または3D印刷後に配置される仮想ベース・モデル内の隙間を作成する。
【0040】
好ましくは、この方法は、仮想ベース・モデル内に切欠を作成することまたは仮想ベース・モデルにカラー・マッピングされたテクスチャを適用することのいずれかによって、マウス・ピースの表面に記号、レタリング、数字、画像、またはロゴを追加するステップを含む。
【0041】
好ましくは、この方法は、3Dカラー印刷のために仮想ベース・モデルに色付きのロゴ、色、または画像を適用するステップを含む。
【0042】
この特徴は、3D印刷されるマウス・ピース上にブランディング情報、製品詳細情報、プレイヤ情報、または他の情報を設けることを可能にする。
【0043】
好ましくは、この方法は、ユーザの歯に着用されたユーザの歯に着用された歯列矯正器の存在を伴うまたは伴わないフィッティングまたは除去を容易にするために、仮想ベース・モデルの外側表面にリリーフ・カットを作成するステップを含む。このステップは、より簡単な除去を容易にし、歯列矯正器に対する炎症または損傷を防ぐために、材料を除去することと、歯列矯正器の周辺の周囲に隙間を作成することと、マウス・ピースの外側表面にリリーフ・カットを配置することとによって歯列矯正器が存在することを考慮に入れている。
【0044】
したがって、マウス・ピースは、オプションで、歯列矯正歯ブレースまたはユーザの着用する他の再調整デバイスの上への着用の必要に応じて寸法を定められ、構成されることも可能である。
【0045】
本発明は、上で列挙したステップに従って製造されるマウス・ピースにも関する。
【0046】
本発明は、マウス・ピースを符号化した3Dプリンタ可読ファイルを3D印刷することによってマウス・ピースを製造するシステムであって、
3次元(3D)スキャナ手段を使用して、ユーザの歯および歯肉線を表す物理的データを含むスキャン・ファイルを入手するための手段と、
スキャン・ファイル内の物理的データから外れ値データを除去するための手段と、
物理的データから、ユーザの歯および歯肉線の曲率の代表的幾何形状データを生成するための手段と、
物理的データおよび代表的幾何形状データから、マウス・ピースを表す仮想ベース・モデルを生成するための手段であって、仮想ベース・モデルは、カスタマイズ可能な寸法を有する、生成するための手段と、
仮想ベース・モデルによって表されるマウス・ピースから選択された部位を除去するための手段と、
仮想ベース・モデルから、3D印刷手段上での印刷のためにマウス・ピースを符号化した3Dプリンタ可読ファイルを生成するための手段と
を含むシステムをも提供する。
【0047】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内に周辺デバイス・アタッチメント・データを組み込むための手段を含み、周辺デバイス・アタッチメント・データは、3D印刷された時にマウス・ピースに周辺デバイスを取り付けるためのレシーバまたは接続手段を表す。
【0048】
仮想ベース・モデル内のマウス・ピースは、小帯部、口蓋部、後方歯部、ならびに上歯肉線部および/または下歯肉線部を含む1つまたは複数の部位を有し、システムは、小帯部、口蓋部、後方歯部、上歯肉線部および/または下歯肉線部、ならびに鋭い縁のうちの1つもしくは複数または一部を仮想ベース・モデル内のマウス・ピースから選択的に除去するための手段を含む。
【0049】
好ましくは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースからの部位の選択的な除去は、自動的にまたはユーザ・インターフェース手段を介する除去のためにオペレータが手動で部位を選択することによって実行される。
【0050】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの壁の厚さを変更するための手段、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの鋭い縁を軟化させるための手段、および/または仮想ベース・モデルから口蓋部の上内壁のセクションを除去するための手段を含む。
【0051】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデルから除去される口蓋部の上内壁の寸法を、スキャン・ファイル内のユーザの歯および歯肉線の物理的データに従って計算するための手段を含む。
【0052】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべての縁の位置を追跡し、縁を軟化させるための手段を含む。
【0053】
好ましくは、このシステムは、マウス・ピースを提供するために3Dプリンタ上で3Dプリンタ可読ファイルを印刷するために含む。
【0054】
好ましくは、このシステムは、マウス・ピースの3D印刷中または3D印刷後に内部デバイスを組み込むための手段を含む。
【0055】
好ましくは、このシステムは、内部デバイスを表すデータを生成し、内部デバイスが3D印刷前、3D印刷後、または3D印刷中にその中に配置され得る隙間を仮想ベース・モデル内に作成するための手段を含む。
【0056】
好ましくは、このシステムは、スキャン・ファイルをユーザの歯および歯肉線の1つまたは写真を使用して生成するための手段を含む。
【0057】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内の歯および歯肉線から部位を選択的に除去するためのユーザ・インターフェース手段を含み、ユーザ・インターフェース手段は、ユーザによって操作された時に、マウス・ピースを生成する時に除外される歯および歯肉線の部位のグラフィカル表現を示すスライダまたは値シフタとして提供される。
【0058】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内で表されるマウス・ピースを表示するためのユーザ・インターフェース手段を含み、ユーザ・インターフェースは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの滑らかさ、厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法の視覚的表示を示し、それらを調整するように適合された調整可能な値スライダまたは値シフタを有する。
【0059】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの所望の厚さ、スケール位置決め、および所望の寸法を達成するために仮想ベース・モデルを処理するためのルールまたはセッティングの収集されたセットをエクスポートするための手段を含む。
【0060】
好ましくは、このシステムは、幾何形状データ、位置決めデータ、滑らかにする厚さ、スケール、所望の寸法、およびマウス・ピースのうちで追加されまたは除去される部分を表すデータに従って各マウス・ピースを生成するためのルールのセットを記憶することによって、グラフィカル・ユーザ・インターフェースからエクスポートされたモデル固有セッティング・ファイルに従ってグループ内で複数の仮想ベース・モデルをバッチ処理するための手段を含む。
【0061】
好ましくは、このシステムは、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線が、X、Y、Z座標系に対して相対的に一貫して位置決めされ、正しい方向を指しているように、X、Y、Z座標系の原点または基準点に従ってスキャン・ファイル内に示された歯および歯肉線を自動的に整列させ、位置決めするための手段を含む。
【0062】
好ましくは、このシステムは、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを使用して、スキャン・ファイルの歯および歯肉線を手動で整列させるための手段であって、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線上の3つ以上の点は、選択され、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線を所望の方向に正しく方位付けるために3つ以上のプリセット点と整列するように構成される、整列させるための手段を含む。
【0063】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべてのオーバーハングする部分または所望の部分を自動的に除去するための手段を含む。
【0064】
好ましくは、このシステムは、印刷されたマウス・ピース上の相互接続された片を回避するために、隣接するまたは欠けている歯または区域の間のギャップを充填する形状を生成するのに幾何形状データを使用するための手段を含む。
【0065】
好ましくは、このシステムは、その中に電子デバイスまたは他のデバイスなどの1つまたはデバイスを収容するための仮想ベース・モデル内の内部隙間を作成するための手段を含む。
【0066】
好ましくは、このシステムは、デバイスが3D印刷プロセス中または3D印刷プロセス後にその中に配置される、仮想ベース・モデル内の内部隙間を作成するのにデバイスの寸法を表すデータを使用するための手段を含む。
【0067】
好ましくは、このシステムは、仮想ベース・モデル内に切欠を作成することまたは仮想ベース・モデルにカラー・マッピングされたテクスチャを適用することのいずれかによって、マウス・ピースの表面に記号、レタリング、数字、画像、またはロゴを追加するための手段を含む。
【0068】
好ましくは、このシステムは、ユーザの歯に着用された歯列矯正ブレースの存在を伴うまたは伴わないフィッティングまたは除去を容易にするために、仮想ベース・モデル内の外側表面内にリリーフ・カットを作成するための手段を含む。
【0069】
本発明は、1つまたは複数のプロセッサによって実行された時に、1つまたは複数のプロセッサにこの方法によるステップを実行させる命令を含む非一時的機械可読媒体をも提供する。
【0070】
本発明は、添付図面を参照して、例としてのみ与えられる本発明のいくつかの実施形態の以下の説明からより明瞭に理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本発明によるマウス・ピースを製造する方法で用いられるステップを示す流れ図である。
【
図2-9】
図1の流れ図のステップをさらに示す図である。
【
図10】周辺デバイスの取付けのためのレシーバまたは接続手段を有する製造された3D印刷されたマウス・ピースを示す図である。
【
図11】ユーザの歯および歯肉線のスキャン・ファイル内で表されるユーザの歯肉線の含まれる高さを増減させるように動作可能な調整可能なスライダを含むグラフィカル・ユーザ・インターフェースを示す図である。
【
図12】ユーザの歯および歯肉線のスキャン・ファイル内で表されるユーザの歯およびユーザの歯肉線のセクションを除去するための切断線を位置決めするために調整可能なスライダとして動作可能なグラフィカル・ユーザ・インターフェースを示す図である。
【
図13】スキャン・ファイル内の歯および歯肉線を整列させ、表示するように適合されたグラフィカル・ユーザ・インターフェースを示す図である。
【
図14】隣接する歯または欠けている歯の間のギャップを充填するステップの出力を示す図である。
【
図15】マウス・ピース内のデバイスを収容するために仮想ベース・モデル内に隙間を作成するステップの出力を示す図である。
【
図16】仮想ベース・モデル内のマウス・ピースにカラー・テクスチャを適用するステップの出力を示す図である。
【
図17】仮想ベース・モデル内のマウス・ピースにロゴ、文字、および/または数字を適用するステップの出力を示す図である。
【
図18】歯列矯正リリーフと、仮想ベース・モデル内でユーザが歯ブレースを着用する時の使用のために作成される隙間とを示す、上からの断面図である。
【
図19】本発明に従って構成されるシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
したがって、図面を参照して、マウス・ピースを符号化する3Dプリンタ可読ファイルを3D印刷することによってマウス・ピースを製造する方法を示す。
【0073】
図1および
図2に示されているように、この方法は、3次元スキャナ手段2を使用して、ユーザの歯および歯肉線1を表す物理的データを入手し、そのようなデータからスキャン・ファイルを生成する初期ステップ100を含む。当技術で既知の3Dスキャニング技術は、および、処理のためにスキャン・ファイル内の3Dデータの形で人の物理的属性を取り込むのに使用される。スキャン・ファイルは、ステップ101で、処理手段3など、スキャン・ファイル内に含まれる3Dデータを処理するように動作可能なソフトウェアを実行するコンピューティング・デバイスに送信される。代替案では、スキャン・ファイルは、ユーザの歯および歯肉線の1つまたは写真を適切なスキャナ手段によって処理することによって生成される。図示されているように、
図3では、3Dスキャン・ファイルが、アップロードされた時に、処理手段3によってユーザの歯および歯肉線1の画像4として表示される。
【0074】
スキャン・ファイルの処理を、ステップ102で実行する。
図4Aおよび
図4Bに示されているように、そのような処理は、スキャン・ファイルからの外れ値データ5の選択的な除去、無視、またはフィルタリングを含む。そのような外れ値データ5は、処理された時に無効な機械形状、劣悪なフィット、不快、または劣悪な美的仕上げをもたらすはずの、歯肉線、頬、舌、スキャンの異常を含む。
【0075】
スキャン4を基準として使用して、ソフトウェアは、そのような外れ値データ5を除去して、スキャン・ファイル4内の物理的データからのユーザの歯および歯肉線の曲率を表す滑らかなスプラインまたは点群などの代表的な幾何形状データを作成する。このプロセスは、複数の軸にわたって複数の断面に対して、すなわち、モデルをセクションにスライスすることと、それぞれの断面を測定することとによって実行され、X軸、Y軸、およびZ軸にわたって繰り返される。
【0076】
外れ値データを除去し、代表的な幾何形状データを生成するそのようなプロセスは、自動的に、またはセッティング・ファイル内の値としてもしくはグラフィカル・ユーザ・インターフェースを介して供給される入力として指定される、詳細およびスムーズさの所望のレベルと、厚さと、スケールと、位置決めと、所望の寸法とに従ってグラフィカル・ユーザ・インターフェースを介するユーザ入力から収集された手動で定義されたセッティングによって、実行され得る。
【0077】
オプションで、
図5に示されているように、後方歯部6を、処理されるデータから除去することができる。というのは、ほとんどの用途で、後方歯が、保護される必要がなく、後方歯を除去しないことが、追加の質量を追加し、使用中の会話に影響し、不快を引き起こす可能性があるからである。後方歯データ6の除去は、スキャン4のうちのどれほどが除去されるべきなのかおよび後方歯6を除去するカットがどの角度で行われるべきなのかとの概要を示す事前定義のセッティングに従って自動的に実行され得る。
【0078】
図6に示されているように、マウス・ピース8を表す仮想ベース・モデル7が、物理的データとスプライン代表的幾何形状データとから生成される。仮想ベース・モデル7は、小帯部、口蓋部、後方歯部、および上歯肉線部を含む、1つまたは複数の定義された部位を有する。仮想ベース・モデル7は密接に最終的なマウス・ピースを表し、状況に応じて、異なる保護レベルとなるようカスタマイズすることができる。したがって、選択された部位を、必要または望みに応じて仮想ベース・モデル7によって表されるマウス・ピース8から除去することができ、そのようなステップを、除去に関してオペレータが部位を手動で選択することによって実行することができる。仮想ベース・モデル7内のマウス・ピース8の壁の厚さは、ユーザに従って、必要に応じて調整することができる。
【0079】
図7に示されているように、口蓋または舌との干渉を防ぐために、上内壁のセクション9が、仮想ベース・モデル7によって示されるマウス・ピース8から除去される。仮想ベース・モデル7から除去されるカットアウト部位9の寸法(長さ、幅、および高さなど)は、スキャン・ファイル内のユーザの歯および歯肉線の物理的データに従って計算され、または、オペレータによって手動で定義され得る。
図8に示されているように、さらなる部位10が、マウス・ピースと小帯腺(frenum gland)との間の炎症を除去するために、仮想ベース・モデル7によって示されるマウス・ピース8から除去される。
【0080】
図9によれば、仮想ベース・モデル7内のマウス・ピース8の鋭い縁11は、歯肉線とマウス・ピースとの間の炎症を防ぐために軟化される。そのような軟化は、本発明のソフトウェアに組み込まれた、隅肉、面取り、点操作、または平滑化アルゴリズムによって実行され得る。支援するために、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべての縁の位置が追跡される。
【0081】
オプションで、仮想ベース・モデルに周辺デバイス・アタッチメント・データを取り込む、さらなるステップが実行され、これによって、周辺デバイス・アタッチメント・データは、3D印刷された時にマウス・ピースに周辺デバイスを取り付けるレシーバまたは接続手段を表す。
【0082】
図10に示されているように、周辺デバイス・アタッチメント・データは、マウス・ピース8が3D印刷された時にマウス・ピース8に周辺デバイス12を取り付けるための、マウス・ピース8の前のジョイント14として図示されたレシーバまたは接続手段を表す。デバイス12を、機械的手段、干渉手段、または粘着手段を使用してジョイント14に取り付け、またはクリップでとめることができる。ジョイント14を、マウス・ピース8の任意の所望の位置に設けることができ、マウス・ピースの前での接続への言及を、限定的と考えてはならないことを理解されたい。
【0083】
そのような周辺デバイス12は、マウス・ピース8が地面に落ちるのを防ぐためにテザーを介してマウス・ピース8をヘルメットに取り付けるのに使用されるヘルメット・アタッチメント、またはアクティブである間にユーザの手を解放するためにマウス・ピース8にカメラを取り付けまたはマウントするのに使用されるカメラ・アタッチメントとすることができる。周辺デバイス12を、着用者の口からマウス・ピース8をつかみ、除去するのを容易にするためのアタッチメントとして提供することもでき、周辺デバイス12自体を、歯ぎしり、睡眠時無呼吸、および他の歯科矯正のまたは外科的な手技および治療など、状態を治療するのに使用される上下のマウス・ピースなどの追加のマウス・ピースへの接続を容易にするためのアタッチメントとすることができる。
【0084】
代替案では、アタッチメント・データは、マウス・ピース8の着用者に対して実行される神経画像、MRI、全身スキャン、またはX線の手順で使用される周辺デバイス12を取り付けるためのレシーバまたは接続手段14を表すことができる。アパーチャ13として提供されるさらなる接続手段を、デバイス12自体に設け、必要な手順を容易にするためのさらなる外部デバイスを取り付け、保持し、または把持するのに使用することもできる。
【0085】
最後に、ステップ103で、結果の仮想ベース・モデル7から、マウス・ピース8を符号化した3Dプリンタ可読ファイルを生成し、3D印刷手段に送信し、印刷する。
【0086】
図11は、ユーザの歯および歯肉線26のスキャン・ファイル内で表されるユーザの歯肉線24の含まれる高さを増減させるように動作可能な調整可能なスライダ22を含むグラフィカル・ユーザ・インターフェース20を示す。
【0087】
図12は、スキャン・ファイル内で表されるユーザの歯および歯肉線26のセクション((R)右セクションおよびL(左)セクションとして図示)を除去するための切断線32を位置決めするために調整可能なスライダ30として動作可能なグラフィカル・ユーザ・インターフェース28を示す。スキャン・ファイル内の歯および歯肉線26からの部位の選択的な除去は、ユーザによって操作された時に、マウス・ピースを生成する時に除外される部位のグラフィカル表現を示す、スライダ30または値シフタとして提供されたユーザ・インターフェース28によって実行され得る。
【0088】
グラフィカル・インターフェース20、28を、仮想ベース・モデル内で表されたマウス・ピースを表示する際の使用のためにも適用することができ、そのようなユーザ・インターフェース20、28は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの滑らかさ、厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法を調整するように適合された調整可能な値スライダまたは値シフタを設けられる。
【0089】
図13は、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線を整列させ、表示するように適合されたグラフィカル・ユーザ・インターフェース34を示す。そのようなインターフェース34は、X、Y、Z座標系42の原点または基準点に従って、スキャン・ファイル内に示された歯および歯肉線を自動的に整列させ、位置決めするように動作可能とすることができ、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線は、X、Y、Z座標系に対して相対的に一貫して位置決めされ、正しい方向を指しているようになっている。
図13に示されているのは、整列の前の歯および歯肉線36と、X、Y、Z座標系に対して相対的に正しい方向に整列された歯および歯肉線38とである。このステップは、歯が一貫した方向を指しているようにするために、歯および歯肉線36を正しく方位付けるために3つ以上のプリセット点と整列させるためにスキャン・ファイル内の歯および歯肉線36上の3つ以上の点40をユーザが選択することからなる。
【0090】
図14は、隣接する歯または欠けている歯46の間のギャップ44を充填する、ユーザ・インターフェースによって実行されるステップの出力を示す。幾何形状データを使用することによって、ユーザ・インターフェースは、完成した3D印刷されたマウス・ピースの相互接続された片を回避するために、隣接する歯または欠けている歯46の間のギャップ44を選択的に充填する形状を生成するように動作可能である。図示されているように、当初に、スキャン・ファイル表現内の歯および歯肉線48は、隣接する歯46の間に相対的に大きいギャップ44を有し、歯および歯肉線50内のギャップ44を充填した後には、大幅に減らされる。グラフィカル・ユーザ・インターフェースは、仮想ベース・モデル内の外れ値データの概要を示しまたは示すようにさらに動作可能とすることができる。
【0091】
図15は、電子デバイスまたは他のデバイスなどのデバイス56を収容するために仮想ベース・モデルのマウス・ピース52内に1つまたは複数の隙間54を作成するステップの出力を示す。そのような1つまたは複数のデバイス56は、マウス・ピースの3D印刷中および/または3D印刷後に作成される隙間52内に位置決めされ得る。
【0092】
図16は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピース60にカラー・テクスチャ58を適用するステップの出力を示す。
図17は、仮想ベース・モデル内のマウス・ピース64にロゴ、文字、および/または数字62を適用するステップの出力を示す。したがって、記号、レタリング、数字、画像、またはロゴを、仮想ベース・モデル内に切欠を作成することまたは仮想ベース・モデルによって表示されるマウス・ピースにカラー・マッピングされたテクスチャを適用することのいずれかによって、マウス・ピースの表面に対する処理中に適用することができる。
【0093】
図18および
図18aは、ユーザが仮想ベース・モデル内の歯ブレースを着用する時に関して仮想ベース・モデル内で表示されるマウス・ピース68内の歯列矯正器リリーフ67およびチャネルまたは隙間66の作成を示す。リリーフ・カット67を仮想ベース・モデルのマウス・ピース68の外側表面に作成することによって、ユーザの歯に着用される歯列矯正器の存在を伴うまたはこれを伴わないフィッティングまたは除去が容易にされる。マウス・ピース68の周囲の回りで材料を除去し、チャネルまたは隙間66を作成することと、マウス・ピースの外側表面内にリリーフ・カット66を配置することとによって、歯列矯正器の存在のための余裕が提供され、より簡単な除去と、炎症または歯列矯正器に対する損傷を防ぐのとを容易にする。
【0094】
さらに、歯肉線への炎症を引き起こす可能性がある、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべてのオーバーハングする部分または所望の部分が、自動的に除去される。
【0095】
図19は、本発明に従って構成されるシステムを示すブロック図である。図示されているのは、マウス・ピースを符号化した3Dプリンタ可読ファイルを3D印刷することによってマウス・ピースを製造するシステム200である。このシステムは、1つまたは複数のコンピュータ/プロセッサ上で実行するソフトウェアによって実施され、3次元(3D)スキャナ手段を使用して、ユーザの歯および歯肉線を表す物理的データを含むスキャン・ファイルを入手するための手段210と、スキャン・ファイル内の物理的データから外れ値データを除去するための手段220と、物理的データから、ユーザの歯および歯肉線の曲率の代表的幾何形状データを生成するための手段230と、物理的データおよび代表的幾何形状データから、マウス・ピースを表す仮想ベース・モデルを生成するための手段240であって、仮想ベース・モデルは、カスタマイズ可能な寸法を有する、生成するための手段240と、仮想ベース・モデルによって表されるマウス・ピースから選択された部位を除去するための手段250と、3D印刷手段上での印刷のために、仮想ベース・モデルから、マウス・ピースを符号化した3Dプリンタ可読ファイルを生成するための手段260とを含む。
【0096】
このシステムは、仮想ベース・モデル内に周辺デバイス・アタッチメント・データを組み込むための手段270であって、周辺デバイス・アタッチメント・データは、3D印刷された時にマウス・ピースに周辺デバイスを取り付けるためのレシーバまたは接続手段を表す、組み込むための手段270と、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの壁の厚さを変更するため、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの鋭い縁を軟化させるため、および/または仮想ベース・モデルから口蓋部の上内壁のセクションを除去するための手段280とを含む。
【0097】
やはり図示されているのが、仮想ベース・モデルから除去される口蓋部の上内壁の寸法を、スキャン・ファイル内のユーザの歯および歯肉線の物理的データに従って計算するための手段290と、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべての縁の位置を追跡し、縁を軟化させるための手段300と、マウス・ピースを提供するために3Dプリンタ上で3Dプリンタ可読ファイルを印刷するための手段と、内部デバイスを表すデータを生成し、内部デバイスが3D印刷前、3D印刷後、または3D印刷中にその中に配置され得る隙間を仮想ベース・モデル内に作成するための手段310と、スキャン・ファイルをユーザの歯および歯肉線の1つまたは写真を使用して生成するための手段とである。
【0098】
このシステムは、仮想ベース・モデル内の歯および歯肉線から部位を選択的に除去するためのユーザ・インターフェース手段320をさらに含み、ユーザ・インターフェース手段は、ユーザによって操作された時に、マウス・ピースを生成する時に除外される歯および歯肉線の部位のグラフィカル表現を示すスライダまたは値シフタとして提供される。ユーザ・インターフェース手段320は、仮想ベース・モデル内で表されるマウス・ピースを表示するように適合され、ユーザ・インターフェースは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの滑らかさ、厚さ、スケール、位置決め、および所望の寸法の視覚的表示を示し、それらを調整するように適合された調整可能な値スライダまたは値シフタを有する。
【0099】
やはり図示されているのは、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースの所望の厚さ、スケール位置決め、および所望の寸法を達成するために仮想ベース・モデルを処理するためのルールまたはセッティングの収集されたセットをエクスポートするための手段330と、幾何形状データ、位置決めデータ、滑らかにする厚さ、スケール、所望の寸法、およびマウス・ピースのうちで追加されまたは除去される部分を表すデータに従って各マウス・ピースを生成するためのルールのセットを記憶することによって、グラフィカル・ユーザ・インターフェースからエクスポートされたモデル固有セッティング・ファイルに従ってグループ内で複数の仮想ベース・モデルをバッチ処理するための手段340と、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線が、X、Y、Z座標系に対して相対的に一貫して位置決めされ、正しい方向を指しているように、X、Y、Z座標系の原点または基準点に従ってスキャン・ファイル内に示された歯および歯肉線を自動的に整列させ、位置決めするための手段350と、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを使用して、スキャン・ファイルの歯および歯肉線を手動で整列させるための手段360であって、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線上の3つ以上の点は、選択され、スキャン・ファイル内の歯および歯肉線を所望の方向に正しく方位付けるために3つ以上のプリセット点と整列するように構成される、整列させるための手段360と、仮想ベース・モデル内のマウス・ピースのすべてのオーバーハングする部分または所望の部分を自動的に除去するための手段370と、印刷されたマウス・ピース上の相互接続された片を回避するために、隣接するまたは欠けている歯または区域の間のギャップを充填する形状を生成するのに幾何形状データを使用するための手段380と、デバイスが3D印刷プロセス中または3D印刷プロセス後にその中に配置される、仮想ベース・モデル内の内部隙間を作成するのにデバイスの寸法を表すデータを使用するための手段390とである。
【0100】
このシステムは、仮想ベース・モデル内に切欠を作成することまたは仮想ベース・モデルにカラー・マッピングされたテクスチャを適用することのいずれかによって、マウス・ピースの表面に記号、レタリング、数字、画像、またはロゴを追加するための手段400と、ユーザの歯に着用された歯列矯正ブレースの存在を伴うまたは伴わないフィッティングまたは除去を容易にするために、仮想ベース・モデルの外側表面内にリリーフ・カットを作成するための手段410とをさらに含む。
【0101】
本発明が、例としてのみ与えられる本明細書で説明される特定の詳細に限定されないことと、様々な修正形態および代替形態が、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱せずに可能であることとを理解されたい。