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特許70768453,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン系化合物の結晶形およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン系化合物の結晶形およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20220523BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C07D495/04 105Z
A61K31/519
A61P31/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020542935
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019073700
(87)【国際公開番号】W WO2019154192
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】201810130625.8
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521493167
【氏名又は名称】フェーノ・セラピューティクス・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Phaeno Therapeutics Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】熊 剣
(72)【発明者】
【氏名】王 晶晶
(72)【発明者】
【氏名】胡 伯羽
(72)【発明者】
【氏名】譚 海忠
(72)【発明者】
【氏名】陳 新海
(72)【発明者】
【氏名】黎 健
(72)【発明者】
【氏名】陳 曙輝
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/028556(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/096778(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/113552(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/109360(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/127968(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/127971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンが、17.69±0.2°、20.00±0.2°、20.63±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
【化1】
化合物1の結晶体A。
【請求項2】
X線粉末回折パターンが、9.15±0.2°、11.06±0.2°、11.95±0.2°、17.69±0.2°、19.03±0.2°、19.46±0.2°、20.00±0.2°、20.63±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項1に記載の化合物1の結晶体A。
【請求項3】
下記の表1に示すXRPDパターンを有する、請求項2に記載の化合物1の結晶体A。
【表1】
【請求項4】
示差走査熱量測定曲線が、214.47±2℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物1の結晶体A。
【請求項5】
熱重量分析曲線が、120.00±2℃で0.1206%の重量損失を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物1の結晶体A。
【請求項6】
【化2】
化合物1をアルコール系溶媒と水の混合溶媒に添加し、加熱して溶解させた後、冷却して結晶化することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物1の結晶体Aの調製方法。
【請求項7】
前記のアルコール系溶媒が、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される、
請求項に記載の化合物1の結晶体Aの調製方法。
【請求項8】
アルコール系溶媒と水の混合溶媒が、エタノールと水の混合溶媒である、
請求項またはに記載の化合物1の結晶体Aの調製方法。
【請求項9】
前記のアルコール系溶媒と水の混合溶媒において、アルコール系溶媒と水との体積比が1:0.2~1.5である、
請求項のいずれか一項に記載の化合物1の結晶体Aの調製方法。
【請求項10】
抗HCMVウイルス薬の調製における、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物1の結晶体Aの使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2018年02月08日に出願された、出願番号がCN201810130625.8である特許出願の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、3,4-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン系化合物結晶形およびその調製方法に関し、さらに、HCMVウイルス関連疾患を治療するための医薬品の調製における前記の結晶形の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、8種類のヒトヘルペスウイルスの1つであり、世界的な分布および高い臨床所見を有する。診断と治療の進歩にもかかわらず、ヒトサイトメガロウイルス感染は、妊娠中および臓器または骨髄移植、癌、エイズなどの免疫力低下に関連する臨床条件下で、依然として重大な合併症を引き起こす。現在、承認されている抗ウイルス薬には、ガンシクロビル(GCV)、そのプロドラッグであるバルガンシクロビル(VGCV)、ホスカルネットナトリウム(FOS)、およびシドフォビル(CDV)が含まれ、これらはウイルスのDNAポリメラーゼを標的とする阻害剤である。これらの医薬品は効果的であるが、重篤な毒性の副作用、低い経口バイオアベイラビリティ(VGCVを除く)、および薬剤耐性のために制限されている。ガンシクロビルは、サイトメガロウイルスに対する治療効果が限られているだけでなく、毒性もある。ホスカルネットナトリウム及びシドフォビルは、2つの最も一般的な代替品であるが、どちらも腎毒性を示す。これらの薬剤の標的であるウイルスDNAポリメラーゼの変異は、薬剤耐性を引き起こす可能性がある。したがって、臨床現場では、まだ満たされていない臨床ニーズがあり、より安全な新規抗ヒトサイトメガロウイルス薬が切望されている。。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、化合物1の結晶形Aを提供する。そのX線粉末回折パターンは、17.69±0.2°、20.00±0.2°、20.63±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【化1】
【0005】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。そのX線粉末回折パターンは、9.15±0.2°、11.06±0.2°、11.95±0.2°、17.69±0.2°、19.03±0.2°、19.46±0.2°、20.00±0.2°、20.63±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0006】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。そのXRPDパターンを図1に示す。
【0007】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。そのXRPDパターンの解析データを表1に示す。
【表1】
【0008】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。その示差走査熱量測定曲線は、214.47±2℃に吸熱ピークの開始点を有する。
【0009】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。そのDSCパターンを図2に示す。
【0010】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。その熱重量分析(TGA)曲線は、120.00±2℃で0.1206%の重量損失を有する。
【0011】
本発明の一部の実施形態において、前記の化合物1の結晶形Aを提供する。そのTGAパターンを図3に示す。
【0012】
また、本発明は、化合物1をアルコール系溶媒と水の混合溶媒に添加し、加熱して溶解させた後、冷却して結晶化することを含む、結晶形Aの調製方法を提供する。
【0013】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Aの調製方法を提供し、ここで、前記のアルコール系溶媒が、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される。
【0014】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Aの調製方法を提供し、ここで、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が、エタノールと水の混合溶媒である。
【0015】
本発明の一部の実施形態において、前記の結晶形Aの調製方法を提供し、ここで、前記のアルコール系溶媒と水の混合溶媒において、アルコール系溶媒と水との体積比が1:0.2~1.5である。
【0016】
さらに、本発明は、抗HCMVウイルス薬の調製における、化合物1の結晶形Aの使用を提供する。
【発明の効果】
【0017】
化合物1の結晶形Aは、安定した特性、低い吸湿性、および良好なドラッガビリティを有する。
【0018】
化合物1は、インビトロでのヒトサイトメガロウイルスの複製に対して良好な阻害活性を示す。
【0019】
化合物1は、3つの種(species)の血漿において合理的な血漿タンパク結合率を有するため、上記の3つの種の血漿において、試験化合物は、遊離型薬物の濃度の比率が適度であり、良好なドラッガビリティを有することを示唆している。
【0020】
化合物1は、インビボで優れた有効性を示す。インビボでの薬力学的研究において、マウスの体重は安定し、臨床所見に異常は見られなかったので、この化合物は投与量でマウスに明らかな副作用がないことを示した。
【0021】
化合物1は、主に、同種造血幹細胞移植、腎移植、肺移植および膵臓移植を受けた患者におけるヒトサイトメガロウイルス感染を予防するために使用される。既存の臨床薬と比較して、毒性や副作用が低く、経口バイオアベイラビリティが高く、薬剤耐性のリスクが低いである。
【0022】
定義と説明
特に断らない限り、本明細書で使用される以下の用語および語句は、以下の意味を有する。特定の用語や語句は、特定の定義がなければ、不明瞭または不明確であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が記載されている場合、対応する商品またはその有効成分を指すものである。
【0023】
本発明の中間化合物は、以下に列挙される特定の実施形態、それらを他の化学合成方法と組み合わせることにより形成される実施形態、および当業者に周知の同等の代替方法を含む、当業者に周知の様々な合成方法によって調製することができる。好ましい実施形態は、本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書に開示される特定の実施形態における化学反応は、本発明の化学変化および必要とされる試薬や材料に適する適切な溶媒中で行う。本発明の化合物を得るために、当業者が、既存の実施形態に基づいて合成工程または反応スキームを変更または選択する必要がある場合がある。
【0025】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0026】
本発明で使用されるすべての溶媒は市販されるものであり、さらに精製することなく使用される。
【0027】
本発明は以下の略語を使用する。DMFはジメチルホルムアミドを表し;MsOHはメタンスルホン酸を表し;EtOHはエタノールを表し;NaOHは水酸化ナトリウムを表し;Mはmol/Lを表し;NBSはN-ブロモスクシンイミドを表す
【0028】
化合物は手動またはChemDraw(登録商標)ソフトウェアによって命名され、市販の化合物は供給業者のカタログ名を使用する。
【0029】
本発明における粉末X線回折(X-ray powder diffractometer,XRPD)方法
機器モデル:Bruker D8 advance X線回折計
試験方法:約10~20mgのサンプルをXRPD分析に使用した。
詳細なXRPDパラメータは以下の通りである。
ライトチューブ:Cu、kα、(λ=1.54056Å)
ライトチューブ電圧:40kV、ライトチューブ電流:40mA
発散スリット:0.60mm
検出器スリット:10.50mm
散乱防止スリット:7.10mm
走査範囲:4~40deg
ステップサイズ:0.02deg
ステップ長さ:0.12秒
サンプルディスクの回転速度:15rpm
【0030】
本発明における示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimeter,DSC)法
機器モデル:TA Q2000示差走査熱量計
試験方法:サンプル(~1mg)を採取し、DSCアルミニウムポットに入れて試験を行った。50mL/minのNの条件下、10℃/minの昇温速度で30℃から280℃にサンプルを加熱した。
【0031】
本発明における熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer,TGA)法
機器モデル:TA Q5000IR熱重量分析器
試験方法:サンプル(2~5mg)を採取し、TGAプラチナポットに入れて試験を行った。25mL/minのNの条件下、10℃/minの昇温速度で室温から300℃にサンプルを加熱した。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、化合物1の結晶形AのCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
図2図2は、化合物1の結晶形AのDSC曲線である。
図3図3は、化合物1の結晶形AのTGA曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
化合物
以下、本発明の内容をよりよく理解するために、特定の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらの特定の実施形態は、本発明の内容を限定するものではない。
【0035】
参考例1:化合物BB-1の調製
【化2】
【0036】
工程1:化合物BB-1-3の合成
室温で、化合物BB-1-1(2.00g,1.00eq)および化合物BB-1-2(1.51g,1.05eq)のトルエン溶液(40.00mL)に、トリ-tert-ブチルホスフィン(1Mトルエン溶液,0.01eq)、Pd(dba)(91.48mg,0.01eq)およびカリウムtert-ブトキシド(1.68g,1.50eq)を加え、窒素ガス保護下、100℃で反応液を12時間攪拌した。化合物をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc=3/1)で精製して、BB-1-3(2.30g)を得た。
【0037】
工程2:化合物BB-1の合成
BB-1-3(1.80g,1.00eq)のジクロロメタン(30.00mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(4.62g,6.91eq)を加え、15℃で反応液を12時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、BB-1粗生成物(4.5g,TFA)を得た。MS(ESI)m/z:208.0[M+1]。
【0038】
実施例1:化合物1の調製
【化3】
【0039】
工程1:化合物1-2の合成
15℃で、化合物1-1(10.00g,1.00eq)およびジフェニルホスホリルアジド(25.77g,1.20eq)のトルエン(150.00mL)溶液に、トリエチルアミン(23.69g,3.00eq)を加えた。窒素ガス保護下、15℃で反応液を1.5時間反応させた後、80℃に加熱して7時間反応した。2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)アニリン(15.66g,1.05eq)を反応液に加え、さらに12時間反応した。減圧下で反応液を濃縮し、得られたものをHCl(1M,300mL)に入れ、酢酸エチル(200mL)で2回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮し、得られたものをPE:EtOAc(2:1)で洗浄し、1-2(10.00g,24.41mmol,収率31.28%)を得た。H NMR(400 MHz,DMSO-d6) 9.72(s,1H),8.58(s,1H),8.47(s,1H),7.47-7.48(m,1H),7.33-7.35(m,2H),7.20(d,J=8.4Hz,2H),7.02(d,J=5.2Hz,1H),3.92(s,3H)。
【0040】
工程2:化合物1-3の合成
0℃で、化合物1-2(10.00g,1.00eq)のジクロロメタン(150.00mL)溶液に化合物NBS(5.63g,1.00eq)を加えた。混合物を0℃で2時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、濾過ケーキを乾燥させた後、1-3(6.80g,収率46.80%)を得た。MS(ESI)m/z:397.0[M+1]。
【0041】
工程3:化合物1-4の合成
室温で、化合物1-3(6.80g,1.00eq)および(E)-メチル 3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)アクリレート(7.30g,2.00eq)のテトラヒドロフラン(80.00 mL)と水と(10.00mL)の溶液に、化合物Pd(dppf)Cl(1.26g,0.10eq)および炭酸カリウム(7.14g,3.00eq)を加えた。窒素ガス保護下、55℃で混合物を12時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、カラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc=5/1)で精製して、-4(2.60g,4.68mmol,収率27.17%)を得た。MS(ESI)m/z:401.1[M+1]。
【0042】
工程4:化合物1-5の合成
室温で、化合物1-4(2.65g,1.00eq)のテトラヒドロフラン(15.00mL)溶液に、水酸化リチウム(1M,6.62mL,1.00eq)の水溶液を加えた。40℃で混合物を12時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、1-5粗生成物(2.80g)を得た。
【0043】
工程5:化合物1-6の合成
0℃で、化合物1-5(6.80g,1.00eq)のメタノール(60.00mL)溶液に、塩化チオニル(2.40g,3.00eq)を加えた。窒素ガス保護下、70℃で混合物を3時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、カラムクロマトグラフィー(PE/EtOAc=3/1至3/2)で精製して、化合物1-6(800.00mg,1.58mmol,収率23.54%)を得た。H NMR:(400mHz,CDCl) 7.59(d,J=7.2Hz,1H),7.16(d,J=5.2Hz,1H),7.05(d,J=8.8Hz,1H),6.57(d,J=5.2Hz,1H),5.40-5.43(m,1H),3.89(s,3H),3.57(s,3H),2.75-2.81(m,2H)。
【0044】
工程6:化合物1-7の合成
室温で、化合物1-6(350mg,1.00eq)を塩化ホスホリル(17.13g)に溶解させ、窒素ガス保護下、110℃で12時間攪拌した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(564.90mg,5.00eq)をこの反応液に添加し、さらに窒素ガス保護下、110℃で3時間攪拌した。減圧下で反応液を濃縮した後、水(100mL)に注ぎ、炭酸水素ナトリウムで中性に調整し、酢酸エチル(80mL)で3回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して、減圧下で濃縮し、化合物1-7の粗生成物(300.00mg)を得た。MS(ESI)m/z: 419.1[M+1]。
【0045】
工程7:化合物1-8の合成
室温で、化合物1-7(150.00mg,1.00eq)およびBB-1(172.61mg,1.50eq,TFA)のアセトニトリル(5.00mL)溶液に、炭酸カリウム(495mg,10.00eq)を加えた。80℃で混合物を12時間攪拌した。濾過して、濾液を減圧下で濃縮し、化合物1-8の粗生成物(250.00mg)。MS(ESI)m/z: 590.2[M+1]。
【0046】
工程8:化合物1-9の合成
室温で、化合物1-8(600.00mg,1.00eq)のメタノール(3.00mL)、テトラヒドロフラン(3.00mL)および水(1.00mL)の溶液に、水酸化ナトリウム(122.40mg,3.00eq)を加えた。15℃で混合物を3時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレーターで蒸発乾固し、HPLCで精製して化合物1-9(450.00mg,収率76.65%)。MS(ESI)m/z: 576.1[M+1]。
【0047】
工程9:化合物1および2の合成
化合物1-9(450.00mg,1.00eq)をSFC分取法([カラムタイプ(IC(250mm×30mm,10μm),移動相(A:二酸化炭素,B:0.1アンモニアを含むメタノール,勾配:B 40%-40%)])で化合物1(130.00mg,収率28.46 %,保持時間:1番目のピーク)および化合物2(150.00mg,収率32.40 %,保持時間:2番目のピーク)を得た。
化合物1 H NMR(400MHz,d-MeOH) δ 7.75(br.s.,1H),7.55(d,J=8.0Hz,1H),7.12-7.38(m,2H),6.98(d,J=5.0Hz,1H),6.51(br.s.,1H),6.10(br.s.,1H),5.05(br.s.,1H),4.10(br.s.,1H),3.84(s,6H),3.63-3.72(m,2H),3.14-3.29(m,1H),2.78-3.11(m,3H),2.52-2.72(m,1H),0.50(br.s.,3H),mS(ESI)m/z: 576.1 [M+1].
化合物2 H NMR(400MHz,d-MeOH) δ 7.76(d,J=5.8Hz,1H),7.62(d,J=8.5Hz,1H),7.14-7.41(m,2H),6.98(d,J=5.3Hz,1H),6.43(d,J=5.3Hz,1H),6.01(br.s.,1H),5.15(br.s.,1H),3.96(br.s.,1H),3.63-3.87(m,6H),3.54(br.s.,1H),2.82-3.12(m,2H),2.63(dd,J=7.3,14.6Hz,1H),1.00-1.12(m,3H).mS(ESI)m/z: 576.1 [M+1].
【0048】
実施例2:結晶形Aの調製
化合物1(50mg)を混合溶媒(エタノール:水=1:1,1mL)に加え、25℃、700rpmで36時間攪拌し、得られた懸濁液を遠心分離して、35℃で固体を12時間真空乾燥し、結晶形Aを得た。
【0049】
実験例1
ヒトサイトメガロウイルスに対する蛍光減衰実験
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に対する化合物の抗ウイルス活性は、化合物の中央有効濃度(EC50)値を測定することにより評価された。本実験で使用されるHCMVは、遺伝子組換えによってレポーター遺伝子として強化型緑色蛍光タンパク質(EGFP)が挿入されたため、細胞内でのウイルスの複製でGFPの発現レベルを反映する。HCMVでのGFPの発現に対する化合物の阻害活性は、ハイコンテントセル分析プラットフォーム(high-content cell analysis platform)Acumen eX3を使用して、さまざまな濃度の化合物ウェルの蛍光強度を測定することで評価した。
【0050】
HCMVに対する蛍光減衰実験
MRC5細胞を、ウェルあたり20,000細胞の密度で黒色96ウェル細胞培養プレートに接種し、次に、37℃、5%COインキュベーターで一晩インキュベートした。US3-6-EGFP-HCMV-AD169ウイルスを、一定のMOI(0.003~0.1)で細胞培養ウェルに追加し、37℃、5%COインキュベーターで3時間インキュベートした。ウイルスを吸着した後、ピペットでウイルスを含む培地を取り、異なる濃度の化合物(4倍希釈、6つの試験濃度)を含む細胞培養培地200μlを添加した。培地中のDMSOの最終濃度は1%であった。ウイルス対照ウェル(化合物なしでDMSOを添加した)および阻害対照ウェル(高濃度の対照化合物を添加した)を設置した。細胞プレートを37℃、5%COインキュベーターで10日間インキュベートし、4日目と7日目に液体を交換した。10日間の培養後、ハイコンテントセル分析プラットフォームAcumen eX3(TTP LabTech)を利用して蛍光強度を検出した。生データから化合物の抗ウイルス活性を算出した。
【化4】
【0051】
阻害率をそれぞれGraphPad Prismソフトウェアに入力し、データを処理して、化合物に対応する用量反応曲線および試験化合物のEC50値を得た。
結果を表2に示す。
【表2】
【0052】
結論:化合物1は、インビトロでのヒトサイトメガロウイルスの複製に対して優れた阻害活性を示す。
【0053】
実験例2
化合物の血漿タンパク結合率の測定
平衡透析法によって、CD-1マウス、SDラットおよびヒトの血漿中の試験化合物のタンパク質結合率を評価した。化合物1を上記の3種の血漿にそれぞれ希釈して、最終濃度2μMのサンプルを調製した。次に、サンプルを96ウェル平衡透析装置に加え、37℃下、リン酸緩衝液で4時間透析した。実験において、ワルファリンを対照化合物として使用した。血漿および緩衝液中の試験化合物およびワルファリンの濃度は、LC-MS/MS法によって測定された。
結果を表3に示す。
【表3】
【0054】
結論:化合物1は、3つの種の血漿において合理的な血漿タンパク結合率を有し、これは、上記の3つの種の血漿において、試験化合物は、遊離型薬物の濃度の比率が適度であり、良好なドラッガビリティを有することを示唆している。
【0055】
実験例3
マウスにおけるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)移植モデル
HCMVを含むゼラチンスポンジをマウスに移植した。9日間の連続投与後、ゼラチンスポンジを回収してプラークを検出した。このモデルにおいて、化合物の抗HCMV効果は、ゼラチンスポンジ中のHCMVの量を検出することによって評価された。
【0056】
実験で使用した動物は、5週齢でオスのNOD SCIDマウス(Shanghai SLAC Laboratory Animal社から購入)であった。各グループに5匹の動物とした。マウスをゼラチンスポンジ移植に供した日を0日目とした。事前にヒト包皮線維芽細胞(HFF、MOI=0.03)をHCMVウイルス(菌株:GFP-AD169)に感染させた後、HCMVに感染されたHFF細胞を1cmのゼラチンスポンジに加え、使用するまでインキュベートした。動物は、75mg/kg(10ml/kg)の用量でペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射によって麻酔された。動物が深麻酔状態に入った後、処理されたゼラチンスポンジをマウスの背部に皮下移植した。1日目から9日目まで、8mg/kg(10ml/kg)の化合物1を1日1回経口投与した。9日目に投与した4時間後、ゼラチンスポンジを取り出し、消化した後、プラークを検出した。実験のデータは、化合物1によるHCMVウイルス負荷量の減少を示し、インビボでの優れた薬効を示した。インビボでの薬力学的研究の実験において、マウスの体重は安定し、臨床所見に異常は見られずので、この一連の化合物は投与量でマウスに明らかな副作用がないことを示した。
[請求項1]
X線粉末回折パターンが、17.69±0.2°、20.00±0.2°、20.63±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
[化1]
化合物1の結晶形A。
[請求項2]
X線粉末回折パターンが、9.15±0.2°、11.06±0.2°、11.95±0.2°、17.69±0.2°、19.03±0.2°、19.46±0.2°、20.00±0.2°、20.63±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、
請求項1に記載の化合物1の結晶形A。
[請求項3]
図1に示すXRPDパターンを有する、
請求項2に記載の化合物1の結晶形A。
[請求項4]
示差走査熱量測定曲線が、214.47℃±2℃に吸熱ピークの開始点を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物1の結晶形A。
[請求項5]
図2に示すDSCパターンを有する、
請求項4に記載の化合物1の結晶形A。
[請求項6]
熱重量分析曲線が、120.00±2℃で0.1206%の重量損失を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物1の結晶形A。
[請求項7]
図3に示すTGAパターンを有する、
請求項6に記載の化合物1の結晶形A。
[請求項8]
化合物1をアルコール系溶媒と水の混合溶媒に添加し、加熱して溶解させた後、冷却して結晶化することを含む、結晶形Aの調製方法。
[請求項9]
前記のアルコール系溶媒が、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される、
請求項8に記載の結晶形Aの調製方法。
[請求項10]
アルコール系溶媒と水の混合溶媒が、エタノールと水の混合溶媒である、
請求項8に記載の結晶形Aの調製方法。
[請求項11]
前記のアルコール系溶媒と水の混合溶媒において、アルコール系溶媒と水との体積比が1:0.2~1.5である、
請求項8に記載の結晶形Aの調製方法。
[請求項12]
抗HCMVウイルス薬の調製における、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物1の結晶形Aの使用。
図1
図2
図3