(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】自由形状可逆的埋め込みを通した3Dバイオプリンティング医療装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/02 20060101AFI20220523BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220523BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220523BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20220523BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20220523BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220523BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20220523BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220523BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220523BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20220523BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20220523BHJP
A61F 2/04 20130101ALI20220523BHJP
【FI】
A61F2/02
B33Y10/00
B33Y30/00
A61L27/24
A61L27/20
A61L27/36 130
A61L27/22
A61L27/52
A61L27/54
A61L27/50
A61F2/24
A61F2/04
(21)【出願番号】P 2020555871
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 US2019026787
(87)【国際公開番号】W WO2019199971
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591236068
【氏名又は名称】カーネギー-メロン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CARNEGIE-MELLON UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェインバーグ,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,アンドリュー
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0167312(US,A1)
【文献】国際公開第2014/109391(WO,A1)
【文献】特開2011-218078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/02- 2/80
B33Y 10/00-99/00
A61L 27/00-27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生物学的構造のための代替構造を製作する方法であって、
前記患者の前記生物学的構造の画像データから生成したコンピュータモデルに基づいて前記代替構造の形態で構造材料を支持材料内の中へと堆積することであって、
前記支持材料が、閾値剪断応力レベルより低い適用された応力レベルにて固定され、かつ前記閾値剪断応力レベル以上の適用された剪断応力レベルにて流れ、
前記支持材料が、前記構造材料の堆積の間、前記構造材料を物理的に支持するように構成され、
前記構造材料が、堆積後に固体または半固体の状態に遷移する流体を含み、
前記構造材料が、造影剤を含む、堆積することと;
前記支持材料を取り除くことと、
前記代替構造の前記構造材料の架橋を誘導することと、
前記造影剤による前記代替構造を撮像することと、
前記代替構造の前記画像を前記コンピュータモデルと比較することと、を含んでおり、
前記代替構造を撮像することが、CT、MRI、OCT、レーザースキャンおよび超音波からなる群より選択される撮像技法を介して前記代替構造の前記画像を取り込むことを含む、方法。
【請求項2】
前記患者からの前記生物学的構造の前記画像データを得ることと、
前記生物学的構造の前記画像データから前記生物学的構造の前記コンピュータモデルを生成することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的構造の前記画像データを得ることが、CTスキャンで患者をスキャンすることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的構造の前記画像データを得ることが、MRIスキャンで患者をスキャンすることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的構造の前記画像データを得ることが、OCTスキャンで患者をスキャンすることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的構造の前記画像データを得ることが、レーザースキャンで患者をスキャンすることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記生物学的構造の前記画像データを得ることが、超音波スキャンで患者をスキャンすることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記代替構造が、心臓弁および気管からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記構造材料が、コラーゲン、アルギナート、脱細胞化細胞外マトリクス材料、フィブリノーゲン、マトリゲルおよびヒアルロン酸からなる群より選択される材料を含むハイドロゲルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記支持材料が、ゼラチン微小粒子スラリーを含むハイドロゲルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
増殖剤を前記代替構造に適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記増殖剤が、神経形成誘導剤、血管形成誘導剤、筋形成誘導剤、骨形成誘導剤および軟骨形成誘導剤からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記代替構造を処理することが、前記代替構造の選択された部分を処理して前記代替構造内に異なる硬さを作製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記支持材料が、熱可逆性材料を含み、かつ
前記支持材料を取り除くことが、前記支持材料が固体または半固体状態から液体状態へと遷移する閾値温度まで前記支持材料を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記構造材料を前記支持材料の中へと堆積することが、前記代替構造が異方性特性を示すようにするために、前記堆積される構造材料の条痕の長軸方向軸が所定の方向と整列されるように前記構造材料を堆積することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記構造材料を前記支持材料の中へと堆積することが、前記代替構造が異方性特性を示すように前記構造材料を非平面方向に堆積することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記患者から前記生物学的構造の前記画像データを得ることと、
前記生物学的構造の繊維の方向を決定することと、をさらに含み、
前記構造材料を前記支持材料の中へと堆積することが、前記生物学的構造の前記繊維の前記方向に整列される方向に前記構造材料を堆積することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記生物学的構造が、心臓を含み、かつ前記繊維が、筋繊維を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記代替構造の前記構造材料の架橋を誘導することが、前記構造材料の架橋がその部分において誘導されるように前記架橋剤で前記代替構造の一部分を選択的に処理することを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法§119(e)の下で、2018年4月10日に出願された3D BIOPRINTING A HYDROGEL-BASED MEDICAL DEVICE THROUGH FREEFORM REVERSIBLE EMBEDDING OF SUSPENDED HYDROGELSと題する米国仮特許出願第62/761,897号に対する優先権を主張し、これによってこれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的システムの付加製造(AM)は、軟らかい構造、生物義装具および組織修復のための足場のエンジニアリングに革命をもたらす可能性を有する。金属、プラスチックおよびセラミックの3次元(3D)プリンティングは、医療装置を含む多くの分野を根本的に変えてきたが、複雑かつ軟らかい生物学的構造のプリンティングに対するこれらの同じ技術の適用は限定されてきた。主な課題は、(i)100キロパスカル(kPa)未満の弾性係数を有する軟らかい材料の堆積、(ii)軟らかい材料がプリントされるときに崩壊しないように軟らかい構造を支持すること、(iii)使用される任意の支持材料を取り除くこと、および(iv)この全プロセスの間、pH、イオン、温度および無菌状態が厳密な寛容性の範囲内に制御された水性環境を使用して、細胞を生きている状態で保持することである。これらの課題に対処することを試みる高価なバイオプリンタが製造されてきたが、いまだ市販の等級の熱可塑性プリンタを使用して達成される結果に匹敵する軟らかいハイドロゲルを使用する結果に達していない。
【0003】
いくつかのハイドロゲルは、これらが定常状態の負荷の下では流れ、または変形する傾向があるために層状に堆積することが不可能である。しかし、ハイドロゲルは、これらの構造がヒト組織などの複雑な生物学的システムの機能の基礎をなすので、高度なバイオファブリケーション技法のための望ましい材料である。3D組織プリンティング(すなわち、組織のAM)は、関連した解剖学的構造を伴う生体分子および細胞の巨視的な生きている複合物の製作を目指しており、これは、栄養素輸送、分子シグナリングおよびその他の組織特異的生理学的高次機能を生じさせる。組織は、自立する融合した堆積または光重合技法を使用して製作することが困難であるチューブ、膜およびタンパク質繊維の相互に浸透するネットワークを有するので、AMを用いて組織の複雑な構造を再現するには、真の自由形状製作が必要とされる。従来のAM技法は、軟らかい組織の自由形状製作およびラピッドプロトタイピングのために必要な空間的制御のレベルを有しない場合がある。
【0004】
3D組織プリンティングにおける最近の進歩は、ハイドロゲル材料のAMが直面する高度に特定の問題に対する解決策を示しており、またこれは特定の適用に限定されることが多い。たとえば、熱溶解積層法(FDM)は、軟骨組織、並びに遊走性脈管構造の無血管複製物をプリントするために使用されており、これは血管化された組織をキャストするために使用することができる。固形自由形状製作において使用される粉末に類似して、プリントされた支持体を必要とせずに複雑な空間パターンで軟らかい材料の製作を可能にするための動的支持材料が開発されている。これらの半固体材料は、細胞およびゲルの融合を支持することができる場合があるが、後者の事例は限定され、また真の自由形状製作を構成しない。実際、従来のAM技法は、真の組織の複雑性を再現するためには十分ではない場合があるため、インビトロで巨視的生物学的構造を製作するための最も成功する方法は、キャスティングによるものであり、AMではない。
【0005】
多くのゲルは、その構造がヒト組織などの複雑な生物学的システムの機能の基礎をなすために、バイオファブリケーションのための理想的な材料である。組織の形状は、AM/3Dプリンティングのような技法を用いずに再構築することが困難である場合があるが、ゲルを3Dプリンティングするための方法は、限られている。多くのゲルは、液体として開始し、そしてこれらが垂れること、またはにじみ出ることを妨げるための支持体を用いずに3Dプリントすることはできない。従来の3Dプリンティング技法は、ゲルおよび組織の幾何学的に制限されない3Dプリンティングのために必要な制御の水準を有しない場合がある。FDMを用いてゲルをプリントする試みでは、軟骨様組織、並びに単純な血管のネットワークを有するゲルを生じたが、それでも結果は、限定されている。実際、従来の3Dプリンティング技法は、十分に能力を有しない場合があるため、組織をキャスティングすることは、それでもなお3Dプリントするより容易で、かつ効率的である。
【0006】
さらに、細胞外マトリックス(ECM)材料および関連する材料から代替生物学的構造、組織足場および神経ガイダンス導管などの医療装置を製作することは、いくつかの利益を提供することになる。たとえば、このような医療装置は、天然に存在する生物学的構造に相応した機械的、電気的および/または構造的な特性を有することになる。別の例として、このような医療装置は、改善された生物統合を有することになり、それ故に医療装置と患者との間の生物学的適合性の欠如に起因して術後の合併症を患うことがより少なくなるであろう。またさらに、医療装置は、患者、または組織、または医療装置によって代替された、もしくはセグメント化された構造から直接採取した脱細胞化組織から製作することが可能である。このように、こうした医療装置は、それぞれの個々の患者に対して特異的にカスタマイズすることが可能である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一般的な一態様において、代替生物学的構造、神経ガイダンス導管および組織足場などの、付加的にプリントされた、生体適合性の、機能的な、患者にカスタマイズされた、医療装置を提供するように設計される。
【0008】
別の一般的な態様において、本発明は、種々の実施形態において、患者の生物学的構造の画像データから生成したコンピュータモデルに基づいた代替構造の形態で支持材料に構造材料を堆積すること、支持材料を取り除くこと、および代替構造の構造材料の架橋を誘導することによって患者の生物学的構造のための代替構造などの医療装置を製作するためのシステムおよび方法を目的とする。支持材料は、加えられる閾値剪断応力レベルより少ない応力レベルにおいて固定され、かつ加えられる閾値剪断応力レベル以上の剪断応力レベルにおいて流れるように構成される。さらに、支持材料は、構造材料の体積の間に物理的に構造材料を支持するように構成される。構造材料は、堆積後に固体または半固体状態に遷移する流体を含む。
【0009】
別の一般的な態様において、本発明は、上述のプロセスに従って製作された患者にカスタマイズされた医療装置を目的とする。
【0010】
本発明の実施形態は、軟らかい材料から高品質、高解像度で、個別化された、患者に特異的な医療装置を作製することによって器官および組織提供者への依存を減少させる可能性を開くことができる。本発明のこれらのおよびその他の利益は、以下の記述から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
種々の態様の特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に記載されている。しかし、種々の態様は、組織および操作の方法の両方に関し、さらなる目的およびその利点と共に、以下のとおりの添付の図面を併せて考慮し、以下の記述を参照することによって最も良好に理解されるであろう。
【0012】
【
図1】
図1A~1Dは、本開示の少なくとも一つの態様による懸濁されたハイドロゲルの自由形状可的埋め込み(FRESH)プロセスを介して製造された構造を図示する。
【0013】
【
図2】
図2は、本開示の少なくとも一つの態様による、FRESHプロセスを利用して製作されたアルギナート構造の圧縮試験データのグラフである。
【0014】
【
図3】
図3は、本開示の少なくとも一つの態様による、FRESHプロセスを利用して製作された種々の構造に対する圧縮試験データのグラフ的な比較である。
【0015】
【
図4】
図4は、本開示の少なくとも一つの態様による、カスタマイズされた生物学的構造を製作するためのプロセスの流れ図である。
【0016】
【
図5】
図5は、本開示の少なくとも一つの態様による、
図4のプロセスによって製作された心臓弁の画像である。
【0017】
【
図6】
図6Aおよび6Bは、本開示の少なくとも一つの態様による、脈動流に応答して閉じ、また開くアルギナート心臓弁の画像である。
【0018】
図6Cおよび6Dは、本開示の少なくとも一つの態様による、脈動流に応答して閉じ、また開くコラーゲン心臓弁の画像である。
【0019】
【
図7】
図7は、本開示の少なくとも一つの態様による、コラーゲン弁を横切るドップラー流速測定のグラフである。
【0020】
【
図8】
図8Aは、本開示の少なくとも一つの態様による、心臓弁の図示である。
【0021】
図8Bは、本開示の少なくとも一つの態様による、スライシングソフトウェアによって処理した後の
図8Aの図示である。
【0022】
図8Cは、本開示の少なくとも一つの態様による、50%の充填密度での
図8Bの図示の断面図である。
【0023】
図8Dは、本開示の少なくとも一つの態様による、10%の充填密度での
図8Bの図示の断面図である。
【0024】
【
図9A】
図9Aは、本開示の少なくとも一つの態様による、コラーゲン心臓弁の一部分およびそのより高倍率の画像である。
【0025】
【
図9B】
図9Bは、本開示の少なくとも一つの態様による、コラーゲン心臓弁の2つの尖頭およびそのより高倍率の画像である。
【0026】
【
図10】
図10は、本開示の少なくとも一つの態様による、製作された構造物を計測するためのプロセスの流れ図である。
【0027】
【
図11】
図11Aは、本開示の少なくとも一つの態様による、付加製造された心臓弁のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンである。
【0028】
図11Bは、本開示の少なくとも一つの態様による、
図11AにおけるCTスキャンの断面図である。
【0029】
図11Cは、本開示の少なくとも一つの態様による、
図11Aおよび11Bにおいて示した心臓弁の3Dモデルである。
【0030】
図11Dは、本開示の少なくとも一つの態様による、
図11Cにおいて示した3Dモデルおよび
図11Aにおいて示した画像のオーバレイである。
【0031】
図11Eは、本開示の少なくとも一つの態様による、
図11Dにおいて示したオーバレイの表面偏差解析である。
【0032】
【
図12】
図12は、本開示の少なくとも一つの態様による、AMシステムのブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
一定の態様を、本明細書において開示した装置および方法の構造、機能、製造および使用の原理の全体的理解を提供するためにここで記述する。これらの態様の一つ以上の実施例を添付の図面において図示する。当業者であれば、本明細書において具体的に記述され、かつ添付の図面において図示した装置および方法は、非限定的な例示の態様であること、並びに種々の態様の範囲は、請求項によってのみ定義されることを理解するであろう。一態様に関連して図示した、または記述した特徴は、その他の態様の特徴と組み合わせてもよい。このような修飾およびバリエーションは、請求項の範囲内に含まれることが意図される。さらにまた、特に明記しない限り、本明細書において使用される用語および表現は、読者の便宜のために例示的な態様を記述する目的のために選ばれており、およびその範囲を限定するためではない。
【0034】
<FRESHプロセス>
FRESHは、物体を製作するための自由形状可逆的埋め込み(FRE)技法の例である。FRE技法は、これによって構造材料が支持材料の中へと堆積され、かつ埋め込まれることによるAMプロセスであり(いくつかの例において「支持体浴」と称される)、これは製造プロセスの間、埋め込まれた構造材料の意図された幾何学的形状を物理的に支持し、かつ維持する。本明細書において記述した技法は、主にFRESHプロセスに関して考察され、これは単に例証の目的のためであり、そして当然のことながら、この技法は任意のFREプロセスに一般に適用可能である。
図1Aを参照すると、FREプロセスの一実装形態において、構造材料104は、エクストルーダーアセンブリを介して堆積することができ、これは、構造材料104を収容するシリンジ100と、これを通して構造材料104を押し出す針102とを含むことができる。一態様において、エクストルーダーアセンブリは、シリンジ100を支持するガントリーと、ガントリー、シリンジ100、および/または支持材料106が載っているプラットフォームを平行移動および/または回転するように構成されたモーターアセンブリまたはその他の移動アセンブリと、3D物体108を形成するために、
図1A-1Cに示したように、針102が支持材料106を通して平行移動されるときに構造材料104をシリンジ100からニードルチップ103を通して支持材料106内に押し出すためにプランジャーを押圧するように構成されたアクチュエータ(たとえば、モーター)をさらに含むことができる。構造材料104の積層が完了した後、次いで
図1Dに示すように、支持材料106が取り除かれて、3D物体108を解放する。その他のAM技法と同様に、エクストルーダーアセンブリによって製作された3D物体108は、コンピュータモデルに基づいている。コンピュータモデルは、(たとえば、SkeinforgeまたはKISSlicerソフトウェアによって)一連の層にスライスされ、次いでコンピュータモデルによって定義される3D物体108を構造材料104から形成するためのエクストルーダーアセンブリの移動を制御するために、一組の命令(たとえば、Gコード命令)を生成するために利用される。
【0035】
一態様において、3D物体108は、代替のヒトの身体部分または生物学的構造とすることができ、また構造材料104は、ハイドロゲル、バイオインクおよび/またはその他の生体材料を含むことができる。FRESHプロセスにおいて、構造材料104は、ハイドロゲルを含む。ハイドロゲルは、天然重合体(たとえば、コラーゲン)、多糖(たとえば、アルギナートまたはヒアルロン酸)、糖タンパク質(たとえば、フィブリノーゲン)、脱細胞化ECM材料およびECMに基づいた材料(たとえば、マトリゲル、これは、ラミニン、ニドゲン、コラーゲンおよびEngelbreth-Holm-Swarmマウス肉腫細胞によって分泌されるヘパラン硫酸プロテオグリカンなどの構造タンパク質の混合物である)などのECM材料から形成することができる。一態様において、ハイドロゲル構造材料104は、脱細胞化ECM材料またはFREで製作された物体108で代替または強化される患者の生物学的構造から採取した組織から形成することができる。このようにして、物体108の特性は、問題の生物学的構造の特性に正確にあつらえることができる。一態様において、支持材料106は、ビンガムプラスチックまたはビンガムプラスチック様の材料を含むことができる。このような材料は、低剪断応力では剛体として挙動するが、より高い剪断応力では粘性液体として流れる。したがって、支持材料106は、針102を通って平行移動されるときに針102に対して機械抵抗をほとんど提供しないが、しかし堆積された構造材料104を定位置に物理的に支持し、かつ保持する。したがって、支持材料106は、意図された3D幾何学的形状で支持材料106の外にプリントされた場合に圧壊することになる、軟らかい材料(たとえば、構造材料104)を維持することができる。一例として、支持材料106は、Hinton et al. (2015), Three-dimensional printing of complex biological structures by freeform reversible embedding of suspended hydrogels, Science Advances 1, e1500758.に記載されているように、ビンガムプラスチックレオロジを有するように処理されたゼラチン微小粒子のスラリーを含むことができる。一態様において、支持材料106は、アルギナートに対する二価カチオン(たとえば、Ca2+)に対する曝露またはコラーゲンに対するpH中和などの構造材料104のゲル化機構と一致するようにあつらえることができる。一態様において、支持材料106は、熱可塑性材料を含むことができる。したがって、3D物体108を、3D物体108が製作される操作温度(たとえば、22℃)から、支持材料106を非破壊で融解して物体108から離すようにする閾値温度(たとえば、37℃)まで支持材料106を加熱することによって支持材料106から解放することができる。
【0036】
種々の態様において、物体108は、種々の架橋技法を通して処理して物体108の全体またはその部分の硬さを選択的に増加することができる。いくつかの態様において、物体108の構造材料104内に架橋を誘導する工程は、省略することができる。一態様において、支持材料106は、構造材料104が支持材料106の中へと堆積されるときに、構造材料104を処理するための架橋剤を含むことができる。たとえば、支持材料106内に埋め込まれる時に構造材料104内に架橋を誘導するために、支持材料106は二価のカチオン(たとえば、0.16% CaCl2)を含むことができる。別の態様において、構造材料104は、物体108が支持材料106から開放された後に種々の異なる架橋技法を介して処理することができる。たとえば、開放された物体108は、架橋剤を用いて、または光誘導性架橋技法(たとえば、無修飾タンパク質の光誘導性架橋)を介して処理して支持材料106の架橋を誘導することができる。
【0037】
さらに、架橋の量またはタイプは、物体を製作するために利用される構造材料104のタイプに基づいて選択することができる。たとえば、コラーゲンは、アルギナートより低い機械的強度を有する場合がある。コラーゲンの機械的強度を増加してアルギナートのものに一致させるために、コラーゲン構造材料を、たとえば1×リン酸緩衝食塩水(PBS)と共に0.05%(v/v)および0.5%(v/v)における種々の濃度のグルタルアルデヒド内に7日間固着して1%(w/v)CaCl
2内で固着した標準的なアルギナートで製作した物体と共に対照としての役割を果たすことができる。試験中に、異なる構造材料104から、および異なる量の架橋を用いて製作された物体の機械的特性は、構造材料104から製作された圧縮円柱を利用して検証された。10mm×5mm(D×h)の寸法を有する圧縮円柱は、150μmの直径を有するノズルを使用して23mg/mlの酸性化されたコラーゲンまたは4%(w/v)のアルギン酸のいずれかからFRESHプロセスを使用して製作された。圧縮円柱(それぞれのタイプのn=6)は、60μm層高さを使用して、アルギナートおよびコラーゲンについて、それぞれ35%、50%または中実に近い75%もしくは90%の充填率にてプリントされた。それぞれの円柱の直径は、機械的試験の前に測定した。圧縮試験は、lnstron 5943引張および圧縮試験機でおよそ60%歪みまで1mm/分の歪み速度にて行った。それぞれの試料の弾性係数は、応力-ひずみ曲線の線形弾性領域202(
図2)の勾配から算出した。
図2において図示したグラフ200によって示される特定のデータセットについて、線形弾性領域202を15~35%歪みに拡張することを決定した。これらの試料の圧縮係数は、Tukey事後比較を用いて分散分析(ANOVA)によって比較した(
図3)。
【0038】
試験中、コラーゲンの圧縮率を類似の充填率のアルギナートの圧縮率と一致させることを目的として、コラーゲン試料をそれぞれの充填率のアルギナート試料と比較した。低充填率では、コラーゲンから製作した試験試料はアルギナートから製作した試験試料よりも弱いことを実験的に示した。中間充填率では、0.5%(v/v)のグルタルアルデヒドで固着したコラーゲンから製作した試験試料は、アルギナートから製作した試験試料に統計学的に類似した。高充填率では、0.05%(v/v)グルタルアルデヒドで固着したコラーゲンから製作した試験試料は、アルギナートから製作した試験試料に統計学的に類似したが、一方で0.5%(v/v)グルタルアルデヒド固着は、アルギナートから製作した試験試料よりも固いコラーゲンから製作した試験試料をもたらした。
【0039】
要約すると、FRESHプロセス(およびその他のFREプロセス)は、(i)製作される構造のコンピュータモデルに従って構造材料を支持材料の中へと堆積する工程であって、支持材料が、意図した3D形状にある構造材料を物理的に支持し、かつ維持するように構成される工程と、(ii)支持材料を取り除く工程と、(iii)任意選択的に、支持材料が取り除かれる前またはその後のいずれかに、製作した物体の構造材料を架橋する工程と、を一般に含む。FRESHプロセスに関するさらなる詳細は、2016年1月29日に出願されたADDITIVE MANUFACTURING OF EMBEDDED MATERIALSの表題の米国特許第10,150,258号において見いだすことができ、これはその全体が本明細書によって参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
<FRESHプロセスを利用する構造のカスタマイズされた製作>
FRESHプロセス(およびその他の実装形態、その他のFREプロセスにおいて)は、合成生物学的構造、人工移植片などを含む医療装置の異なるタイプのアレイを製作するために利用することができる。一実装形態において、FRESHプロセスは、心臓弁、気管、骨格筋、心筋、目組織(たとえば、角膜、強膜、前眼房または後眼房)、骨、軟骨、脂肪組織、神経性組織、並びに整形外科、頭蓋顔面、筋骨格、心臓血管、および美容および再建的形成手術用途のための広範囲のその他の構造などの、患者の解剖学的構造のためにカスタマイズされている機能的な、生体適合性の、ハイドロゲルに基づいた、合成生物学的構造を製作するために利用することができる。その他の実装形態において、FRESHプロセスは、神経ガイダンス導管などの生体適合性、非生物学的構造を製作、するために利用することができる。この記述は、ハイドロゲルからFRESHプロセスを介して物体を製作することに焦点を当てる一方、ハイドロゲルFRESHで製作された物体は、また生細胞および/またはその他の材料(たとえば、非ハイドロゲル材料)をさらに組み込むより複雑な医療装置内の構成要素とすることもできる。これらを製作するためのプロセスおよびその他の例示物体を以下でより詳細に考察する。
【0041】
図4は、カスタマイズされた合成生物学的構造を製作するためのプロセス400の流れ図である。工程400の以下の記述において、また
図12に対する参照がなされるべきであり、これはAMシステム1200のブロック線図である。プロセス400は、コンピュータシステム1202のメモリ1206内に記憶されたコンピュータ実行可能な命令として全体で、または部分で、実施することができ、これは、コンピュータシステム1202のプロセッサ1204によって実行されたときに、コンピュータシステム1202に列挙された工程を行わせる。コンピュータ命令は、メモリ1206に記憶された一つ以上のソフトウェアモジュールとして実行することができ、これらは本明細書において記述したプロセスまたはその他の機能の一つ以上の別々の工程をプロセッサ1204に実施させるように各々がプログラムされている。
図12に図示した実装形態において、コンピュータシステム1202は、コンピュータモデルを、コンピュータモデルによって定義された物体を製作するようにエクストルーダーアセンブリ1220の移動を制御するためのコンピュータ命令(たとえば、Gコード)へと変換するようにプログラムされた変換モジュール1208と;製作される物体のコンピュータモデルを受信し、記憶し、作製し、かつ/または修正するようにプログラムされたモデリングモジュール1210と;物体を製作するために変換モジュール1208によって生成された命令に従ってエクストルーダーアセンブリ1220の移動を制御するようにプログラムされたロボット制御モジュール1212と、を含む。一態様において、変換モジュール1208は、コンピュータモデルを、物体を製作するためにエクストルーダーアセンブリ1220によって連続的に堆積される一組の平面スライスまたは層に変換するようにプログラムされたスライシングソフトウェアを含むことができる。別の態様において、変換モジュール1208は、コンピュータモデルを、平面層ではなく3Dフィラメントを生成するためにエクストルーダーアセンブリ1220を制御するための一組の非平面経路または軌道に変換するようにプログラムすることができる。種々のその他のモジュールを上述したモジュールに加えて、またはその代わりに実施することができる。別の実装形態において、本明細書において記述したプロセスは、ネットワーク内で通信可能に共に接続されている複数のコンピュータシステム、記述された工程の一つ以上を実行するように構成されたクラウドコンピューティングシステムに通信可能に接続されたコンピュータシステムおよびその他にわたって実行することができる。
【0042】
第1の工程402にて、コンピュータシステム1202は、生物学的構造(たとえば、心臓弁、気管または大腿骨)または人工移植片(たとえば、神経ガイダンス導管)などの製作される医療装置のコンピュータモデルを受信する。コンピュータモデルは、STLファイルまたは別のCADファイル形式タイプなどの多様な異なるフォーマットで表すことができる。一態様において、コンピュータモデルは、患者の解剖学的構造に対して代替される、または別の方法であつらえることができる患者の生物学的構造の画像から構築することができる(たとえば、ストックまたはデフォルトコンピュータモデルを修飾して患者に合わせることによって)。患者の生物学的構造の画像は、3D CTスキャン、3D磁気共鳴画像法(MRI)およびその他のこのような撮像技法を介して得ることができる。患者から直接由来する生物学的構造のコンピュータモデルを利用することによって、本明細書において記述したプロセス400は、それぞれの個々の患者に対して特異的にあつらえられた生物学的構造を製作するために利用することができ、製作された構造物の形状と患者の解剖学的構造との間の不一致によって生じる代替構造の欠陥率を減少させる。
【0043】
第2の工程404にて、コンピュータシステム1202は、コンピュータモデルを、上で記述したエクストルーダーアセンブリまたは別のAMシステムを制御してモデル化された構造を製作するための命令へと変換する。種々の態様において、これは、コンピュータモデルを所与の厚さの多数の層にスライスすること、そして次いでスライスされた層をロボット制御命令へと変換すること(たとえば、変換モジュール1208によって)を含むことができる。
【0044】
第3の工程406にて、コンピュータシステム1202は、上記でFRESHプロセスの見出しの下に記述したFRESHプロセスなどのFREプロセスを介して構造物を製作する。FRESHで製作された物体は、代替または増強される、患者に属する正確な生物学的構造を表すコンピュータモデルに基づくことができるので、プロセス400は、カスタマイズされた、患者用にあつらえた生物学的構造を製作することができる。
【0045】
その他の実装形態において、プロセス400は、第1の工程402にて、神経ガイダンス導管などの生物学的構造ではない医療装置のコンピュータモデルを受信することができる。プロセス400を利用して製作することができる生物学的および非生物学的構造の種々の例は、下に記述される。
【0046】
一例として、プロセス400は、
図5に描かれた三尖心臓弁500などの心臓弁を製作するために利用することができる。三尖心臓弁500は、
図4に図示したプロセス400を利用して、
図8Aに図示したコンピュータモデル800などの天然の三尖心臓弁のコンピュータモデル(または患者自身の三尖心臓弁に合うように修正された三尖心臓弁のコンピュータモデル)から製作することができる。一実装形態において、三尖心臓弁500は、構造材料としてのアルギナート、および0.10%(w/v)のCaCl
2で洗浄されるゼラチン支持材料を利用して製作することができる。別の実装形態において、三尖心臓弁500は、構造材料としてのコラーゲンを、pH 7.4に緩衝した50mM HEPESを含むゼラチン支持材料とともに利用して製作することができる。いずれの実装形態においても、構造材料は、提供されたコンピュータモデル800(上記の通りの)により三尖心臓弁500の形態で支持材料内に堆積され、37℃まで1時間加熱され、液化した支持材料から取り除かれ、そして次いで架橋溶液へ移すこと(またはその他の架橋技法を利用して処理すること)ができる。試験中、アルギナートから製作された三尖心臓弁500は、CaCl
2溶液中で1~7日間1%(w/v)の間さらに架橋された。逆に、コラーゲンから製作された三尖心臓弁500は、さらに40℃および60回転/分で一晩回転インキュベーター内で1×PBS溶液中にこれらを置くことによって、全ての残りのゼラチンの洗浄をした。その後、製作した三尖心臓弁500を1×PBS溶液、0.5%(v/v)のグルタルアルデヒド溶液の中へと移して24時間架橋した。次いで、コラーゲン弁を25mM HEPESで7.4 pHに緩衝した75%(v/v)エタノール、0.5%(v/v)グルタルアルデヒド中に6日間置いて架橋を続け、かつ感染を防いた。
【0047】
製作されたアルギナートおよびコラーゲン三尖心臓弁500の機能性は、脈動ポンプを使用するフローループ内にこれらを置くことによって評価した。
図6Aおよび6Bは、脈動流下でのアルギナート三尖心臓の弁開および閉の画像である。
図6Cおよび6Dは、脈動流下でのコラーゲン三尖心臓弁の開および閉の画像である。これは、脈動ポンプの出口上の機械的なボール弁を、製作した三尖心臓弁で代替することによって達成した。さらに、超音波ドップラー流れセンサを弁の近位に置いて弁の逆流を評価し、またペンローズドレーンを弁の遠位に置いてシステムに対するコンプライアンスを提供した。またさらに、40%(v/v)グリセロール溶液を血液類似体として使用した。心臓の右側におけるより低い弁内外圧力を模倣するために、脈動ポンプを30CCの行程容積、33%の収縮時間で30BPMに設定して、機械的ボール弁を使用するときにおよそ25/15mmHgの圧力を得た。上記のように、出口弁を、次いで製作した三尖心臓弁500と代替して、そして次いでこれらの同じ設定を使用して不具合が生じるまでポンピングした。ドップラー速速測定を通して、本明細書において記述したプロセスを利用して製作した三尖心臓弁500は、不具合と考えられるもの(40%の逆流)よりも十分に低い逆流で一方向の流れを生じることができることが確認された。たとえば、
図7は、コラーゲン弁を横切るドップラーフロー速度測定のグラフ700であり、縦軸は、流量を単位mL/分で表し、また横軸は、流体が製作した三尖心臓弁500を通してポンピングされた回数を表す。製作した三尖心臓弁500の不具合を生じる前の平均逆流は、およそ13%であった。分かるように、FRESHプロセスは、機能的であるとみなされる十分な一方向の流れを生じる三尖心臓弁500を製造することができる。
【0048】
別の例として、プロセス400は、気管を製作するために利用することができる。気管は、その長さに沿った一連のC型の軟骨質セグメントを含む管状構造からなり、これは管状構造の残りの部分より硬い。したがって、製作された代替気管の構造は、天然の気管の生体力学特性を模倣するために異なる硬さの対応する領域を同様に含まなければならない。一実装形態において、代替気管の構造は、異なる管状構成要素、および硬いC型構成要素のそれぞれを別々に製作すること、および次いで別々に製作された気管構成要素を共に連結して完全な代替気管の構造を形成することによって製作することができる。個々の気管構成要素は、たとえば代替される気管(またはその部分)のコンピュータモデルをセグメント化すること、または代替される気管を構成する構成要素のそれぞれのコンピュータモデルを生成することによって得ることができる。気管の構成要素は、適切な構造材料および架橋の量を利用して製作してそれぞれの個々の気管の構成要素について所望の機械的特性を達成することができる。別の実装形態において、代替気管の構造は、代替される気管(またはその部分)のコンピュータモデルから単一の構造として製作することができる。次いで、代替気管の構造の種々の領域を、「構造の機械的特性を制御するための製作技法」の見出しの元で以下で考察した技法などの種々の架橋技法を利用して選択的に架橋して、代替気管構造の異なる領域について所望の機械的特性を達成することができる。
【0049】
別の例として、プロセス400は、神経ガイダンス導管などの生物学的構造でない医療装置を製作するために利用することができる。神経ガイダンス導管は、神経再生を容易にするように軸索再成長を導くための人工構造である。一実装形態において、神経ガイダンス導管は、上で考察した様式でコンピュータモデルからプリントすることができる。
【0050】
一つの態様において、種々の増殖剤をFRESHで製作された物体に適用して物体の細胞成長または生物統合を刺激することができる。増殖剤は、神経形成誘導剤、血管形成誘導剤、筋形成誘導剤、骨形成誘導剤、軟骨形成誘導剤およびその他の増殖剤を含むことができる。一例として、種々の増殖剤およびその他の処理を神経ガイダンス導管に適用し、これを通して軸索の成長を促進することができる。さらに、増殖剤は、FRESHで製作された物体に均一でなく適用することができる。たとえば、軸索増殖剤は、導管の対向する端に位置付けられたニューロンの軸索が導管を通して成長することを促進し、かつ神経連絡を再生するために互いに接続するために、増殖剤のより高い濃度が導管の中間点にて、またはその近くに存在するように、神経ガイダンス導管の長さに沿って勾配をつけて適用することができる。
【0051】
上の例は、本明細書において記述した種々の概念を例示することが単に意図される。生物学的構造および非生物学的構造を含む広範囲のその他の医療装置を、FRESHプロセスおよび本明細書において記述した技法に従って製作することができる。
【0052】
<構造の機械的特性を制御するための製作技法>
上記のAM技法を利用して製作される物体の機械的特性は、FRESHプロセスの種々の操作パラメーターを制御すること、および/または種々のさらなる製作または製作後技法を製作された物体に適用することによって調整することができる。特に、物体の構造は、いくつかの異なるサイズスケールで制御することができる。最も大きいサイズスケール(たとえば、数百μm以上)では、層の高さおよび充填割合などのAM設定により、物体の巨視的多孔度および密度を制御することができる。さらに、エクストルーダーノズルのサイズを制御することにより、物体内の特徴部の達成可能な最小サイズ(たとえば、mm以下)を決定することができる。またさらに、物体を製作した後に支持材料微小粒子を排出することにより、
図9Aで分かるように、高度に多孔性の構造を製作することができる。μmより短い長さのスケールでは、物体の構造を支持材料と構造材料との間の化学を操作することによって微細に制御して、構造材料の重合体が自己組織化する様式を制御することができる。化学、ハードウェアおよびソフトウェア選択を操作することにより、FRESHプロセスは、物体内で巨視的サイズに設定された特徴に対してミクロン以下を超えて制御することができる。したがって、FRESHプロセスを介して製作されるそれぞれの物体は、その機械的特性をその用途に合わせてあつらえることによって具体的な用途のためにカスタマイズすることができる。
【0053】
たとえば、物体の機械的特性は、エクストルーダーアセンブリ1220(
図12)を制御して物体の製作の間により複雑な移動パターンを作り出すことによってカスタマイズすることができる。大多数の従来のAMは、2D、平面移動を使用して、すなわち物体を、Zまたは垂直の方向の選択された厚さで、XYまたは水平面へと多数のスライスに切断して行われる。次いで、エクストルーダーノズルを、XY平面を通して二次元で移動して、付加様式で互いの上部に積み重ねられる条痕で構造材料を堆積して物体を形成する。しかし、AMシステム1200(
図12)は、このような2D移動パターンに厳密に限定される必要はない。その他の実装形態において、エクストルーダーアセンブリ1220は、非2D様式で移動するように制御することができる。言い換えれば、エクストルーダーアセンブリ1220は、材料を堆積するときに三次元的に、すなわちX、YおよびZ方向に同時にエクストルーダーノズルを移動するように制御することができる。さらに、エクストルーダーアセンブリ1220(エクストルーダーノズルおよび/または物体がその上で製作されているプラットフォームを含む)は、回動可能とすることができる。このような態様において、物体を製作するためにエクストルーダーアセンブリ1220を制御するための命令は、デカルト座標および回転座標の両方に従って定義することができ、これは複雑な幾何学的形状または非常に特異的な機械的特性を有する物体の製造を可能にすることができる。構造材料の積層中の3D移動は、たとえば、AMシステム1200がある一定の運動でらせん形のばねを構築することを可能にする。しかし、さらにより複雑な幾何学的形状は、6自由度で(すなわち、任意のデカルトまたは回転方向で)同時制御移動ができるロボットアームアセンブリを用いて達成可能である。したがって、
図4に図示したプロセス400は、第3の工程406にて、構造材料の堆積の間にエクストルーダーアセンブリ1220の回転の向きまたは3D移動を制御することを含むことができる。
【0054】
別の例として、物体の機械的特性は、製作される構造の充填密度またはパターンを制御することによってカスタマイズすることができる。充填は、そうでなければ空の空間になる付加製造された物体内のものを占めるために利用される定義された多孔度を有する反復的な幾何学的パターンである。スライシングソフトウェアによって処理された後(
図8B)の、心臓弁(
図8A)のコンピュータモデル800の断面図である、
図8Cおよび8Dに図示したように、充填802は、心臓弁構造800の外壁804と内壁806との間に位置する。充填密度は、たとえば0~100%の割合として表すことができ、0%は、完全な中空空間を表し、および100%は、中実の物体を表す。どのようにして充填密度を制御して心臓弁構造800の中実度の変動の程度を調整することができるかを図示するために、
図8Cは、50%の充填密度を有する心臓弁構造800のコンピュータモデルを図示し、また
図8Dは、充填密度が10%であることを除いて同じ心臓弁構造800のコンピュータモデルを図示する。充填密度は、構造の重量、強度およびその他の機械的特性に影響を与えることができる。さらにまた、充填は、格子、線、蜂の巣構造およびその他などの種々の異なるパターンで製作することができる。多様な充填パターンが、異なるように成形された構造に対してより適する可能であり、また/または構造の機械的特性を変えることができる(たとえば、均一でない強度特徴を提供する)。またさらに、構造(またはその構成要素)は、構造の全体を通して均一でない充填密度および/またはパターンを有するように製作することができる。したがって、製作された構造の異なる部分または構成要素は、異なる機械的特性を有することができる。したがって、
図4に図示したプロセス400は、第3の工程406にて、FRESHで製作された物体の充填802の密度またはパターンを制御することを含むことができる。
【0055】
別の例として、物体の機械的特性は、構造材料が堆積される方向またはパターンを制御することによってカスタマイズすることができる。物体の製作中、構造材料は、一連の連続した平面または任意の3D条痕としてエクストルーダーアセンブリ1220によって堆積し、これを共に融合して最終的に物体を形成することができる。
図9Aにおいて分かるように、条痕の長軸方向軸は、層または条痕が付加される方向に直交する。条痕902は、異方性であり、これらの長軸方向軸に沿ってこれらの横軸異なる機械的特性(たとえば、引張り強さ)を示し、これが結果として物体の機械的特性に影響を及ぼす。したがって、条痕902が堆積して物体を形成する方向を制御することにより、物体の機械的特性を制御することを可能にする。さらに、上記のように、条痕が堆積する方向は、任意の3D空間にあることができ、そして平面移動に限定されない。たとえば、特定の方向においてより高い引張り強さを示すことが物体に対して望まれる場合、エクストルーダーアセンブリ1220は、条痕の長軸方向軸がその所望の方向と整列するように構造材料を堆積するように制御することが可能である。さらに、材料を堆積することが望まれる方向は、生物学的構造の撮像を介して決定することができる。一実装形態において、非平面様式においてエクストルーダーアセンブリ1220の移動を制御するための記述された技法は、対応する生物学的構造の機械的特性を模倣する物体を製作するために利用することができる。たとえば、心臓の壁内の筋繊維の3D配向は、心臓の機械的および機能的特性に影響を及ぼす。したがって、心臓を、撮像技法(たとえば、拡散テンソルイメージング)を利用して撮像して心臓の壁における筋繊維の3D配向を決定することができる。一旦心臓の全体の構造および筋肉繊維の配向が決定され、およびこの情報を含むコンピュータモデルが生成されると、コンピュータモデルは、エクストルーダーアセンブリ1220を制御するためのコンピュータ命令に(たとえば、変換モジュール1208、によって)変換してFRESHでプリントしたハイドロゲルおよび/または細胞から、撮像した筋繊維と同様の複雑な3D様式で配置された繊維または条痕で、撮像された心臓を製作することができる。たとえば、
図9Bは、コラーゲンから製作された心臓弁の2つの尖頭900を示す一連のさらに高倍率の画像を示し、ここでは堆積された条痕902が見える。したがって、構造材料の条痕902が配置される方向は、これらの筋繊維の特性を模倣するために天然の心臓弁の筋繊維が配置される方向に対応することができる。したがって、
図4に図示したプロセス400は、第3の工程406にて、条痕(または条痕の部分)がFRESHで製作される物体に対して望まれる特定の方向で整列されて特定の特性(たとえば、増加した引張り強さ)を示すようにエクストルーダーアセンブリ1220を制御することを含むことができる。さらに、生物学的構造を撮像すること、および生物学的構造の構造特性に基づいて堆積した構造材料の方向および/または配向(たとえば、筋肉繊維方向)を制御することにより、正常な組織/器官機能を再現するために、撮像された生物学的構造の同じ異方性の機械的、電気的および/または構造的特性を有する医療装置および/または組織を作製することができる。
【0056】
別の例として、物体の機械的特性は、製作された物体および/または製作された物体が光、イオン性、酵素学的またはpH/熱駆動機構を利用して架橋される位置に適用される架橋の量を制御することによってカスタマイズすることができる。上記でFRESHプロセスの見出しの下で検討したように、架橋を利用して堆積された構造材料の硬さを増加することができる。化学的に誘導される架橋機構、および類似の架橋機構のための実装形態において、架橋化学物質(複数可)に曝露される物体の領域を制御することができる。たとえば、気管代替構造を製作するときに、架橋化学物質(複数可)を気管の環に対応する物体の領域に選択的に適用することができ、それ故にこれらの領域を物体の残りの領域よりも選択的に硬くさせることができる。光誘導性架橋のための実装形態において、構造材料の架橋を回避すること、または最小限にすることが望まれる領域を選択的に覆うことによってUV光に曝露される物体の領域を制御することができる。たとえば、気管代替構造を製作するときに、気管の環に対応する物体の領域をUV光に曝露して(そして残りの領域をUV光から覆うことができる)これらの位置にて選択的に構造材料の架橋を誘導することができる。したがって、
図4に図示したプロセス400は、第3の工程406にて、FRESHで製作される物体の部分を選択的に架橋することを含むことができる。
【0057】
<計測>
付加製造された生物学的構造またはその他の医療装置を含む、任意の製造された製品に付随する一つの問題は、製造された製品が必要とされる寸法および機械的制約に適合することを保証することである。本明細書において記述した付加製造された医療装置は、コンピュータモデルとして開始して、これが機械移動制御命令に変換されて物理的な物体を製作するので、製作された物体の3D画像をソースコンピュータモデルと比較することによって製作された物体の品質を計測すること、または評価することができる。したがって、製作された物体の3D寸法をコンピュータモデルと比較して物体がどれくらい正確に製作されたかを評価することができる。正確に物体の寸法を取り込むことが、撮像技術(たとえば、CT、MRI、光干渉断層撮影法(OCT)、レーザースキャンまたは超音波)および非撮像技術(たとえば、プローブ測定)の両方を含む種々の技法を通して可能である。一旦得られたら、次いで製作された物体の3D画像または再構築物をソースコンピュータモデルと比較して製作された物体の寸法精度を決定することができる。これらの計測技法のいくつかは、機械部分(たとえば、金属タービンブレード)を計測する状況において利用されてきたが、しかし、本明細書において記述されるように、これらは、付加プリントされた軟らかいハイドロゲル構造を計測する状況において利用されてこなかった。
【0058】
図10は、FRESHプロセスを介して製作された代替生物学的構造などの製作された構造を計測するためのプロセス1000の一実装形態の流れ図である。第1の工程1002にて、造影剤が代替生物学的構造を製造する前に構造材料に添加される。造影剤は、製作された物体を撮像するために利用される撮像技法に基づいて選択することができる。たとえば、CT(コントラストCT)、透過X線撮影またはその他のこのような撮像技法を利用して製作される物体を撮像する場合、造影剤は、放射線造影剤(たとえば、硫酸バリウム)を含むことができる。別の例として、MRIを利用して製作された物体を撮像する場合、造影剤は、MRI造影剤(たとえば、ガドリニウム(III)に基づいた造影剤)を含むことができる。その他の撮像技術のためには、種々のその他の造影剤を利用することができる。
【0059】
第2の工程1004にて、上記のように、物体(たとえば、代替生物学的構造または神経ガイダンス導管などの非生物学的構造)が、FRESHプロセスを利用して製作される。第3の工程1006にて、製作された物体の3D再構築物は、CT、MRI、OCTまたはその他の撮像技法を介して得られる。代替構造が製作された構造材料内に存在する造影剤は、製作された物体が明確に撮像される能力を改善する。たとえば、
図11Aおよび11Bは、FRESHプロセスを利用して製作された三尖心臓弁のCTスキャンを介して取り込まれた3D再構築物を図示する。
【0060】
第4の工程1008にて、物体の3D再構築物は、物体がそれから製作されたソースコンピュータモデルと比較される。一つの態様において、3D再構築物およびコンピュータモデルは、これらを重ね合わせること、そして次いで表面偏差解析を行って代替構造がオーバープリントされたか、またはアンダープリントされたか、およびどこでかを決定することによって比較することができる。たとえば、
図11Cは、
図11Aおよび11Bに示した物体が、それから製作されたコンピュータモデルを図示する。さらに、
図11Dは、3D再構築物およびコンピュータモデルのオーバレイを図示し、また
図11Eは、
図11Dに示したオーバレイの表面偏差解析を図示する。
図11Eにおいて分かるように、偏差解析は、より明るい色調によって示されるオーバープリントした領域1102(すなわち、物体表面がコンピュータモデルによって輪郭を描いた寸法境界を超える領域)およびより暗い色調によって示されアンダープリントした領域1104(すなわち、物体表面がコンピュータモデルによって輪郭を描いた寸法境界の下にある領域)の両方を示すことができる。
【0061】
このプロセス1000は、個々の患者に対してカスタマイズされる代替生物学的構造などのFRESHで製作された物体が実際にその患者について確立された機械的および解剖学的許容範囲内にあることを保証するために利用することができる。製作された物体が確立された許容範囲外である場合、物体は、製作後処理(たとえば、薄く削る、または再成形)を受けてあらゆる問題を修正することができる、あるいは、欠陥のある物体を廃棄することができ、また新たな物体を製作することができる。これは、患者と解剖学的に完全には一致しない、またはいずれかの構造的もしくは機械的異常を有するFRESHで製作された物体を患者に外科的に適合することにより生じる可能性があるあらゆる問題を防ぐことができる。
【0062】
<外科的技法>
代替生物学的構造を患者に外科的に適合するためのプロセスを、代替される、または増強される特定の生物学的構造に基づいて侵襲性および複雑さに関して大きく変えることができる。たとえば、心臓弁を修復する、または代替する心臓切開外科手術は、極めて侵襲性の術式である。心臓切開外科手術よりも侵襲的ではないが、名目上最小限に侵襲性の心臓弁修復または代替術式でさえ、なおも相対的に侵襲性であり、および患者の胸腔内に挿入される複数の外科器具による複数の切開および操作を必要とする。したがって、FRESHプロセスを利用して製作される生物学的代替構造を送達するための最小限の侵襲性の外科的技法が望ましい。一実装形態において、代替心臓弁などの代替生物学的構造は、それが軸方向の硬さが小さいか、または別の方法で血管経路を介して移動可能であるサイズに折り畳むこと、または圧縮することができるように製作することができる。したがって、圧縮された代替生物学的構造は、バルーンカテーテルに固定して、そして次いで血管経路を介して体内の適切な位置に送達することができる。一旦適切な位置にて、バルーンを膨張させて代替生物学的構造をその操作形状に展開すること、または脱圧縮することができる。たとえば、代替心臓弁を、FRESH法を利用して製作し、代替心臓弁によって代替される、または補われる患者の心臓弁の位置に送達し、そして次いでバルーンの膨張を通して展開することができる。
【実施例】
【0063】
本明細書において記述した主題の種々の態様は、以下の態様、実装形態および/または実施例において詳述してあり、これらは種々の配設で共に交換可能に組み合わせることができる。
【0064】
一般的な一態様における、患者の生物学的構造のための代替構造を製作する方法。本方法は:(i)患者の生物学的構造の画像データから生成されるコンピュータモデルに基づいて代替構造の形態で支持材料内に構造材料を堆積することであって;支持材料は、閾値剪断応力レベルより低い適用された応力レベルにて固定され、かつ閾値剪断応力レベル以上の適用された剪断応力レベルにて流れ;支持材料は、構造材料の積層の間に物理的に構造材料を支持するように構成され;構造材料は、積層後に固体または半固体の状態に遷移する流体を含むことと、(ii)支持材料を取り除くことと、(iii)代替構造の構造材料の架橋を誘導することと、を含む。
【0065】
一態様において、本方法は:患者から生物学的構造の画像データを得ることと、生物学的構造の画像データから生物学的構造のコンピュータモデルを生成することをさらに含む。
【0066】
一態様において、生物学的構造の画像データを得ることは、CTスキャンで患者をスキャンすることを含む。
【0067】
一態様において、生物学的構造の画像データを得ることは、MRIスキャンで患者をスキャンすることを含む。
【0068】
一つの態様において、生物学的構造の画像データを得ることは、OCTスキャンで患者をスキャンすることを含む。
【0069】
一態様において、生物学的構造の画像データを得ることは、レーザースキャンで患者をスキャンすることを含む。
【0070】
一態様において、生物学的構造の画像データを得ることは、超音波スキャンで患者をスキャンすることを含む。
【0071】
一態様において、代替構造は、心臓弁および気管からなる群より選択される。
【0072】
一態様において、構造材料は、コラーゲン、アルギナート、脱細胞化細胞外マトリクス材料、フィブリノーゲン、マトリゲルおよびヒアルロン酸からなる群より選択される材料を含むハイドロゲルを含む。
【0073】
一態様において、支持材料は、ゼラチン微小粒子スラリーを含むハイドロゲルを含む。
【0074】
一態様において、本方法は、増殖剤を代替構造に適用することをさらに含む。
【0075】
一態様において、増殖剤は、神経形成誘導剤、血管形成誘導剤、筋形成誘導剤、骨形成誘導剤および軟骨形成誘導剤からなる群より選択される。
【0076】
一態様において、代替構造を処理することは、代替構造の選択された部分を処理して代替構造における異なる硬さを作製することを含む。
【0077】
一態様において、構造材料は、造影剤を含み、方法は:造影剤によって代替構造を撮像すること;およびコンピュータモデルと代替構造の画像を比較することをさらに含む。
【0078】
一態様において、代替構造を撮像することは、撮像技法を介して代替構造の画像を取り込むことを含み、撮像技法は、CT、MRI、OCT、レーザースキャンおよび超音波からなる群より選択される。
【0079】
一態様において、本方法は、生物学的構造の画像データが取り込まれた患者において代替構造を外科的に適合することをさらに含む。
【0080】
一態様において、支持材料は、熱可塑性材料を含み、また支持材料を取り除くことは、支持材料が固体または半固体の状態から液体の状態へと遷移する閾値温度まで支持材料を加熱することを含む。
【0081】
一態様において、構造材料を支持材料の中へと堆積することは、堆積される構造材料の条痕の長軸方向軸が所定の方向と整列されて代替構造が異方性特性を示すように構造材料を堆積することを含む。
【0082】
一態様において、構造材料を支持材料の中へと堆積することは、代替構造が異方性特性を示すようにするために非平面方向に構造材料を堆積することを含む。
【0083】
一態様において、本方法は、患者から生物学的構造の画像データを得ることと、生物学的構造の繊維の方向を決定することをさらに含み、構造材料を支持材料の中へと堆積することは、生物学的構造の繊維の方向に整列される方向に構造材料を堆積することを含む。
【0084】
一態様において、生物学的構造は、心臓を含み、および繊維は、筋繊維を含む。
【0085】
一態様において、代替構造の構造材料の架橋を誘導することは、構造材料の架橋がその部分において誘導されるように架橋剤で代替構造の部分を選択的に処理することを含む。
【0086】
別の一般的な態様において、患者のための身体部分の形態で患者にカスタマイズされた、埋め込まれた、および付加プリントされたハイドロゲル材料が、ハイドロゲル材料が、架橋された重合体を含む、ハイドロゲル材料、上述の方法のいずれかに従って製作された。
【0087】
本明細書において示された実施例は、本発明の潜在的および具体的な実装形態を例証することが意図される。実施例は、主に当業者に対する本発明の例証の目的のために意図されることを理解することができる。実施例のいかなる特定の態様(複数可)も、本発明の範囲を限定することを必ずしも意図しない。さらに、本発明の図面および記述は、本発明の明確な理解のために、一方で明確にするために、その他の要素を除去して関連する要素を例証するために単純化されていることが理解される。種々の実施形態を本明細書において記述してきたが、これらの実施形態に対する種々の修正、変更および適応により、当業者が利点の少なくともいくつかを達成し得ることが明らかである。したがって、開示された実施形態は、本明細書において記載した実施形態の範囲を逸脱することなく全てのこのような修正、変更および適応を含むことが意図される。