IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】リチウム二次電池及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20220523BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220523BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220523BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20220523BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220523BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220523BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20220523BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220523BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0565
H01M10/058
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/449
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529741
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2019003818
(87)【国際公開番号】W WO2019198961
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0041812
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・キョン・シン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ホ・アン
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウォン・イ
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530533(JP,A)
【文献】国際公開第2010/074202(WO,A1)
【文献】特開2009-070605(JP,A)
【文献】特開2001-357883(JP,A)
【文献】特表2018-509493(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0136958(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0042326(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0069386(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0565
H01M 10/058
H01M 50/403
H01M 50/414
H01M 50/443
H01M 50/446
H01M 50/449
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極;
負極;
有機バインダー及び無機物粒子を含むコーティング層を含む分離膜;及び
重量平均分子量が100から1000000のオリゴマーが重合されて形成されるゲルポリマー電解質;を含み、
前記有機バインダーは、ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレン基、炭素数1から5のアルキレンオキシド基、ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレンオキシド基、イミド基及びセルロースよりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む単位を含み、
前記単位からなる主鎖にエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換され、
前記有機バインダーとゲルポリマー電解質がエポキシ開環反応を介して結合されているリチウム二次電池。
【請求項2】
前記有機バインダーは、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記オリゴマーは、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記エポキシ基と開環反応が可能な官能基は、水酸基(OH)、カルボン酸基(COOH)、アミン基、イソシアネート基、メルカプタン基及びイミド基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の官能基である、請求項2又は3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記オリゴマーは、アルキレンオキシド基を含む単位及びアミン基を含む単位よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の単位を含み、
前記単位からなる主鎖にエポキシ基及びエポキシと開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換される、請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
正極、負極及びエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む有機バインダー及び無機物粒子を含むコーティング層を含む分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入する段階;及び
前記電池ケースに前記エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む重量平均分子量が100から1000000のオリゴマーを含むゲルポリマー電解質用組成物を電池ケース内に注液した後、熱重合させる段階;を含み、
前記有機バインダーは、ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレン基、炭素数1から5のアルキレンオキシド基、ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレンオキシド基、イミド基及びセルロースよりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む単位を含み、
前記単位からなる主鎖にエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換されるリチウム二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記オリゴマーが熱重合されるとき、前記有機バインダーの官能基とオリゴマーの官能基がエポキシ開環反応する、請求項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記ゲルポリマー電解質用組成物は、開始剤を含まない、請求項6又は7に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記ゲルポリマー電解質用組成物は、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含むオリゴマー、リチウム塩、非水性有機溶媒からなる、請求項6から8の何れか一項に記載のリチウム二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年4月10日付韓国特許出願第2018-0041812号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池及びこの製造方法に関し、より詳細には、ゲルポリマー電解質を含むリチウム二次電池及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源としての二次電池に対する需要が急激に増加しており、このような二次電池の中でも高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く用いられている。
【0004】
また、最近は、環境問題に対する関心が大きくなるに伴い、大気汚染の主な原因の1つであるガソリン車両、ディーゼル車両など化石燃料を使用する車両を代替可能な電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などに対する研究が多く進められている。
【0005】
このような電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などは、動力源としてニッケル水素金属(Ni-MH)二次電池、又は高いエネルギー密度、高い放電電圧及び出力安定性のリチウム二次電池を用いているところ、リチウム二次電池を電気自動車に用いる場合には、高いエネルギー密度と短時間に大きな出力を発揮できる特性とともに、過酷な条件下で10年以上用いられなければならないので、既存の小型リチウム二次電池より遥かに優れたエネルギー密度、安全性及び長期寿命特性が必然的に求められている。
【0006】
一般に、リチウム二次電池は、負極(anode)と正極(cathode)、これらの間に介在される分離膜(separator)及びリチウムイオンの伝達媒質である電解質を用いて製造されるところ、従来の二次電池では、液体状態の電解質、特に非水系有機溶媒に塩を溶解したイオン伝導性有機液体電解質が主に用いられてきた。
【0007】
しかし、液体状態の電解質を用いる場合、電極物質が劣化して有機溶媒が揮発される可能性が大きいだけでなく、周辺の温度及び電池自体の温度上昇による燃焼などのように安全性に問題が生じる。特に、リチウム二次電池は、充放電を進めるとき、カーボネート有機溶媒の分解及び/又は有機溶媒と電極との副反応により電池内部にガスが発生し、電池の厚さを膨張させるという問題点がある。したがって、電池の性能と安全性の低下が必ずもたらされることになる。
【0008】
一般に、電池の安全性は、液体電解質<ゲルポリマー電解質<固体高分子電解質の順で向上されるが、これに反して電池の性能は減少するものと知られている。現在、固体高分子電解質は、電池性能が劣るため、未だに商業化されていないものと知られている。
【0009】
一方、リチウム二次電池に用いられる分離膜は、電気化学反応に参加しない非活性素材であるが、電池を作動させるためにリチウムイオンが移動する経路を提供し、正極と負極の物理的接触を分離する素材として、電池の性能及び安定性に大きな影響を及ぼす核心素材中の1つである。
【0010】
リチウム二次電池の場合、充放電が繰り返される間に発生する運動エネルギーにより容易に熱が出てしまうが、分離膜はこの熱に脆弱である。特に、ポリエチレン(PE)を用いる分離膜の場合、約130℃近くで溶融(溶けること)し始めて気孔が閉鎖される「短絡(shut down)」の現象が発生することがあり、150℃以上では完全に溶融して内部短絡を防ぐことができず、熱暴走現象が伴うと崩壊(メルトダウン(melt down)又は機械的一体性(mechanical integrity)の破壊)することもあり得る。
【0011】
このような問題を克服するため、最近では、分離膜の表面に無機物粒子と高分子バインダーをコーティングするディップ(Dip)コーティング方式を用いるなど耐久性を強化するための研究が続けられている。
【0012】
一方、前記のような問題点以外にも、ゲルポリマー電解質と無機物粒子を含むコーティング層が形成された分離膜をともに用いる場合、前記コーティング層と電解質の間の接着力が低いため、二次電池の安定性と性能が低下するという問題点がある。
【0013】
したがって、耐久性に優れながらもゲルポリマー電解質との密着性に優れた分離膜を用いて、電池の安全性と容量特性を改善することができる二次電池の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0131513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、ゲルポリマー電解質と分離膜の間の密着力を上昇させ、電池の容量特性及び安全性を改善することができるリチウム二次電池を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一側面において、本発明は、正極;負極;有機バインダー及び無機物粒子を含むコーティング層を含む分離膜;及びオリゴマーが重合されて形成されるゲルポリマー電解質;を含み、前記有機バインダーとゲルポリマー電解質がエポキシ開環反応を介して結合されているリチウム二次電池を提供する。
【0017】
前記有機バインダーは、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0018】
前記オリゴマーは、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0019】
前記エポキシ基と開環反応が可能な官能基は、水酸基(OH)、カルボン酸基(COOH)、アミン基、イソシアネート基、メルカプタン基及びイミド基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の官能基であってよい。
【0020】
前記有機バインダーは、ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレン基、炭素数1から5のアルキレンオキシド基、ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレンオキシド基、イミド基及びセルロースよりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む単位を含み、前記単位からなる主鎖にエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換されてよい。
【0021】
前記オリゴマーは、アルキレンオキシド基を含む単位及びアミン基を含む単位よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の単位を含み、前記単位からなる主鎖にエポキシ基及びエポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換されてよい。
【0022】
他の側面において、本発明は、正極、負極及びエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む有機バインダー及び無機物粒子を含むコーティング層を含む分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入する段階;及び前記電池ケースに前記エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含むオリゴマーを含むゲルポリマー電解質用組成物を電池ケース内に注液した後、熱重合させる段階を含むリチウム二次電池の製造方法を提供する。
【0023】
また他の側面において、前記ゲルポリマー電解質用組成物は開始剤を含まない。
【0024】
一方、前記ゲルポリマー電解質用組成物は、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含むオリゴマー、リチウム塩、非水性有機溶媒からなり得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるリチウム二次電池は、ゲルポリマー電解質と分離膜コーティング層内の有機バインダーがエポキシ開環反応によって結合されるので、ゲルポリマー電解質と分離膜の間の密着力に優れている。
【0026】
ゲルポリマー電解質と分離膜の間の密着力が向上すれば、電解質と分離膜の間の界面抵抗の上昇を抑制させることができるので、容量特性が改善され、機械的安全性及び高温安全性も向上し得る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0028】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0029】
本明細書で用いられる用語は、単に例示的な実施例を説明するために用いられるものであって、本発明を限定しようとする意図のものではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0030】
本明細書において、「含む」、「備える」、又は「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、又はこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、又はこれらの組み合わせなどの存在又は付加可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されるべきである。
【0031】
一方、本発明で特別な言及がない限り「*」は同一であるか、異なる原子又は化学式の末端部間の連結された部分を意味する。
【0032】
本発明において、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)で測定した標準ポリエチレンに対する換算数値を意味し得るものであり、特に他に規定しない限り、分子量は重量平均分子量を意味し得る。例えば、本発明では、GPC条件でAgilent社1200シリーズを用いて測定し、このとき用いられたカラムはAgilent社製のPL mixed Bカラムを用いることができ、溶媒はTHFを用いることができる。
【0033】
<リチウム二次電池>
本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極、有機バインダー及び無機物粒子を含むコーティング層を含む分離膜及びオリゴマーが重合されて形成されるゲルポリマー電解質を含む。このとき、前記有機バインダーとゲルポリマー電解質がエポキシ開環反応を介して結合される。
【0034】
先ず、分離膜に対して説明する。
【0035】
前記分離膜は、基材及び前記基材の表面上に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は有機バインダー及び無機物粒子を含む。
【0036】
前記基材は、多孔性基材を用いることができ、通常、多孔性基材は、電気化学素子の分離膜素材として使用可能なものであれば、特に制限なく使用が可能である。このような多孔性基材としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンのような高分子樹脂のうち少なくとも何れか1つで形成された不織布又は多孔性高分子フィルム又はこのうち2以上の積層物などがあるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0037】
前記コーティング層は、分離膜とゲルポリマー電解質との密着力を向上させ、無機物粒子を基材にコーティングさせて電池の耐久性を強化するためのものであって、前記基材の表面に形成され、有機バインダー及び無機物粒子を含む。
【0038】
このとき、前記コーティング層の厚さは、0.1μmから20μmであってよく、好ましくは0.5μmから20μm、より好ましくは1.0μmから20μmであってよい。前記コーティング層の厚さが前記範囲内に形成される場合、分離膜の耐久性及び電解質との密着性をある程度の水準以上に維持することができ、電池内の抵抗が上昇することを防止し、リチウムイオンの移動を円滑に維持し得る。
【0039】
従来には、分離膜の耐久性の向上及び伝導性の向上のために基材の表面に無機物粒子、及び前記無機物粒子が脱離されることを防止するためにバインダーを用いていた。しかし、既存のバインダーは、ゲルポリマー電解質と結合反応が行える官能基がなく、電解質と分離膜の間の密着力が低いので、電極と電解質の間の界面抵抗が低く、電池外部に衝撃が加えられると電池内部の短絡が誘導されるなどの安全性の問題があった。
【0040】
前記のような問題点を解消するために、本発明では、エポキシ開環反応を介してゲルポリマー電解質と結合され得る有機バインダーを用いてコーティング層を形成した。
【0041】
前記エポキシ開環反応が起こるために、有機バインダーは、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含み、前記オリゴマーもエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む。但し、有機バインダーとオリゴマーに全てエポキシ基だけ存在する場合、又はエポキシ基と開環反応が可能な官能基のみを含んでいる場合にはエポキシ開環反応がなされないので、有機バインダーにエポキシ基だけ存在する場合、前記オリゴマーはエポキシ基と開環反応が可能な官能基を含んでいなければならない。逆に、前記有機バインダーにエポキシ基と開環反応が可能な官能基だけ存在する場合、前記オリゴマーはエポキシ基を含んでいなければならない。
【0042】
エポキシ開環反応を経て分離膜とゲルポリマー電解質が結合されれば、ゲルポリマー電解質が分離膜界面に均一に接着されるので、界面抵抗が減少し、リチウムイオンの伝達特性が向上されるので、電池の容量特性が改善し得る。
【0043】
また、前記分離膜とゲルポリマー電解質の間の密着力が向上すれば、二次電池の機械的強度が向上され、外部衝撃を受ける場合にも電池短絡現象を防止し、熱暴走現象又は発火現象を抑制することができるので、電池の安全性が改善し得る。
【0044】
前記エポキシ基と開環反応が可能な官能基は、水酸基(OH)、カルボン酸基(COOH)、アミン基、イソシアネート基、メルカプタン基及びイミド基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の官能基であってよい。
【0045】
より具体的には、アミン基は、-NRで表されてよく、前記R及びRはそれぞれ独立して水素(H)、炭素数1から10の置換又は非置換された直鎖型アルキル基及び炭素数1から10の置換又は非置換された環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上であってよい。
【0046】
より具体的には、イミド基は、-R-CO-N(R)-CO-Rで表されてよく、前記RからRはそれぞれ独立して水素(H)、炭素数1から10の置換又は非置換された直鎖型アルキル基及び炭素数1から10の置換又は非置換された環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1つ以上であってよい。
【0047】
一方、前記有機バインダーは、当該技術分野でよく知られている一般的な有機バインダー、例えば、PVdF(ポリフッ化ビニリデン(Poly(Vinylidene Fluoride)))、PVdF-co-HFP(ポリフッ化ビニリデン(Poly(Vinylidene Fluoride))とヘキサフルオロプロピレン(Hexa Fluoro Propylene)の共重合体)などにエポキシ基及び/又はエポキシ基と開環反応可能な官能基が置換されたバインダーが用いられ得る。より具体的には、前記有機バインダーは、前記官能基以外に、ハロゲン元素(F、Cl、Br、I)が少なくとも1つ以上置換された炭素数1から5のアルキレン基、炭素数1から5のアルキレンオキシド基、イミド基、セルロースよりなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む単位をさらに含んでよい。
【0048】
このとき、前記単位からなる主鎖にエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換されてよい。具体的には、前記主鎖に位置する水素(H)がエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせで置換されてよく、前記置換された程度はモル%で計算されてよい。但し、付着される官能基の個数や位置が特定されるものではない。
【0049】
例えば、前記ハロゲン元素が少なくとも1つ以上置換されたアルキレン基を含む単位は、下記化学式X-1又はX-2で表される単位の中から選択される少なくとも1つ以上で表されてよい。
【0050】
【化1】
【0051】
前記化学式X-1で、前記m1は1から10,000の整数、好ましくは、1から7,500の整数、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0052】
【化2】
【0053】
前記化学式X-2で、前記m2及びm3はそれぞれ独立して1から10,000の整数、好ましくは、1から7,500の整数、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0054】
例えば、アルキレンオキシド基を含む単位は、下記化学式X-3のとおり表されてよい。
【0055】
【化3】
【0056】
前記化学式X-3で、前記m4は1から10,000の整数、好ましくは、1から7,500の整数、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0057】
例えば、前記ハロゲン元素が置換されたアルキレンオキシド基を含む単位は、下記化学式X-4のとおり表されてよい。
【0058】
【化4】
【0059】
前記化学式X-4で、前記m5は1から10,000の整数、好ましくは、1から7,500の整数、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0060】
例えば、前記イミド基を含む単位は、下記化学式X-5のとおり表されてよい。
【0061】
【化5】
【0062】
前記化学式X-5で、前記m6は1から10,000の整数、好ましくは、1から7,500の整数、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0063】
例えば、前記セルロースを含む単位は、下記化学式X-6のとおり表されてよい。
【0064】
【化6】
【0065】
前記化学式X-6で、前記m7は1から10,000の整数、好ましくは、1から7,500の整数、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0066】
前記有機バインダーは、前記コーティング層100重量部に対して1重量部から80重量部、好ましくは5重量部から60重量部、より好ましくは5重量部から40重量部で含まれてよい。前記有機バインダーが前記範囲内に含まれる場合、コーティング層に含まれている無機物粒子の脱離を防止することができ、ゲルポリマー電解質を構成するオリゴマーとの接着力もある程度の水準以上に維持することができる。
【0067】
前記無機物粒子は、粒子間の空間(interstitial volume)を形成してマイクロ単位の気孔を形成する役割を担うと同時に、物理的形態を維持することができる一種のスペーサ(spacer)の役割を兼ねるようになる。また、前記無機物粒子は、リチウムイオンを伝達及び移動させることができるので、リチウムイオン伝導度を向上させることができる。このとき、無機物粒子の大きさ及び無機物粒子の含量を調節することにより、マイクロ単位の気孔を形成することができ、且つ気孔の大きさ及び気孔度を調節することができる。
【0068】
前記無機物粒子は、当業界で通常用いられる無機物粒子を含んでよい。例えば、前記無機物粒子は、Si、Al、Ti、Zr、Sn、Ce、Mg、Ca、Zn、Y、Pb、Ba、Hf、及びSrよりなる群から選択された少なくとも1つ以上の元素を含んでよく、好ましくは、Si、Al、Ti及びZrよりなる群から選択された少なくとも1つ以上の元素を含んでよい。
【0069】
より具体的には、前記無機物粒子は、SiO、Al、TiO、ZrO、SnO、CeO、MgO、CaO、ZnO、Y、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb(1-a1)Laa1Zr(1-b1)Tib1(0≦a1≦1、0≦b1≦1、PLZT)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、BaTiO、HfO(hafnia)、SrTiOなどがあり、前記羅列された無機物は、一般に200℃以上の高温になっても物理的特性が変わらない特性を有している。より好ましくは、前記無機物粒子はSiO、Al、TiO及びZrOよりなる群から選択された少なくとも1つ以上の無機物を含んでよい。
【0070】
前記無機物粒子は、前記コーティング層100重量部に対して20重量部から99重量部、好ましくは40重量部から95重量部、より好ましくは60重量部から95重量部で含まれてよい。前記無機物粒子が前記範囲内に含まれる場合、コーティング層から前記無機物粒子が脱離されることを防止することができながらも、二次電池用分離膜の耐久性が向上され得る。
【0071】
次に、ゲルポリマー電解質に対して説明する。
【0072】
前記ゲルポリマー電解質は、前記正極と負極及び分離膜の間に配置されてよく、オリゴマーが重合されて形成されてよい。
【0073】
より具体的には、前記オリゴマーは、エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む。前記オリゴマーを用いる場合、オリゴマー間のエポキシ開環反応を介して熱重合されるのはもちろん、前記分離膜コーティング層に含まれた有機バインダーともエポキシ開環反応を介して結合され得る。
【0074】
一方、既存のラジカル重合反応を介して重合反応をするオリゴマーの場合、重合開始剤を必須に用いてこそ重合反応を介して結合され得た。しかし、ラジカル重合開始剤として用いられるアゾ系(azo)、ペルオキシド系(peroxide)化合物などの場合、硬化反応の途中、電池内部にガスを発生させて電池の安全性を低下させるという問題点があった。
【0075】
一方、本発明のゲルポリマー電解質に用いられるオリゴマーは、エポキシ開環反応を介して重合されるオリゴマーであって、既存のオリゴマーを重合するときに用いられる重合開始剤などを用いなくとも重合反応を行うことができる。したがって、重合反応を介して硬化される間にも電池内部にガスが発生しないので、電池の膨張現象(swelling)及びこれから誘導される電極短絡現象などを予め防止し、電池の安全性を改善させ得る。
【0076】
具体的には、前記オリゴマーは、アルキレンオキシド基を含む単位及びアミン基を含む単位よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の単位を含み、前記単位からなる主鎖にエポキシ基及びエポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせが置換されるものであってよい。
【0077】
例えば、前記オリゴマーは、下記化学式2及び化学式3で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物を含んでよい。
【0078】
【化7】
【0079】
前記n1は2から10,000の整数であり、好ましくは2から7,500の整数、より好ましくは2から5,000の整数であってよい。
【0080】
【化8】
【0081】
前記化学式3で、前記RからR11は炭素数1から5の置換又は非置換されたアルキレン基であり、前記R12からR16はそれぞれ独立して水素(H)、炭素数1から10の置換又は非置換されたアルキル基、-NR1718及び-R19NR2021よりなる群から選択される少なくとも1つ以上のものであり、R19は炭素数1から5の置換又は非置換されたアルキレン基であり、R17、R18、R20、R21はそれぞれ独立して水素(H)、炭素数1から5の置換又は非置換されたアルキル基及び-R22NHであって、前記R22は炭素数1から5の置換又は非置換されたアルキレン基であり、前記n2は1から10,000、好ましくは1から7,500、より好ましくは1から5,000の整数である。
【0082】
一方、前記オリゴマーが化学式2で表される化合物及び化学式3で表される化合物を全て含む場合、前記化学式2で表される化合物及び化学式3で表される化合物は(30~100):(0~70)の重量比、好ましくは(40~95):(5~60)の重量比で混合されてよい。前記オリゴマーを前記重量比で混合して用いると、オリゴマーで形成されるポリマーの機械的物性が向上されるので、ゲルポリマー電解質の漏液を防止することができ、分離膜との密着力が改善され得る。
【0083】
より具体的には、前記化学式3で表される化合物は、下記化学式3-1から化学式3-3で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1つ以上の化合物を含むものであってよい。
【0084】
【化9】
【0085】
前記化学式3-1で、前記n2は1から10,000の整数である。
【0086】
【化10】
【0087】
前記化学式3-2で、前記n2は1から10,000の整数である。
【0088】
【化11】
【0089】
前記化学式3-3で、前記n2は1から10,000の整数である。
【0090】
前記n2は好ましくは1から10,000の整数、より好ましくは、1から7,500の整数であってよい。
【0091】
前記化学式2又は化学式3で表されるオリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、約100から1,000,000であってよい。好ましくは100から900,000、より好ましくは300から800,000のものであってよい。前記オリゴマーが前記範囲の重量平均分子量を有すると、硬化され形成されるゲルポリマー電解質が安定的に形成されるので、電池内の機械的性能が改善され、電池の外部衝撃によって発生し得る発熱及び発火現象を抑制することができ、発熱及び発火によって起こり得る爆発現象も制御することができる。また、電解質の漏液現象と揮発現象を抑制することができるので、リチウム二次電池の高温安全性も大きく向上され得る。
【0092】
一方、前記ゲルポリマー電解質用組成物は、前記オリゴマー以外にリチウム塩、非水性有機溶媒を含んでよい。
【0093】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものが制限なく用いられてよい。例えば、前記カチオンとしてLiを含み、アニオンとしてF、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、AlO 、AlCl 、PF 、SbF 、AsF 、BF 、BC 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOよりなる群から選択される少なくとも何れか1つを含んでよい。前記リチウム塩は、1種又は必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。前記リチウム塩は、ゲルポリマー電解質用組成物の0.8Mから2M、具体的に0.8Mから1.5Mの濃度で含んでよい。但し、必ずしも前記濃度範囲に限定されず、ゲルポリマー電解質用組成物のうち他の成分により2M以上の高濃度で含んでもよい。
【0094】
前記非水性有機溶媒は、リチウム二次電池用電解質に通常用いられるものを制限なく用いることができる。例えば、エーテル化合物、エステル化合物、アミド化合物、線状カーボネート化合物、又は環状カーボネート化合物などをそれぞれ単独に又は2種以上混合して用いることができる。その中で代表的には環状カーボネート化合物、線状カーボネート化合物、又はこれらの混合物を含んでよい。
【0095】
前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネート及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)よりなる群から選択される何れか1つ又はこれらのうち2種以上の混合物がある。また、前記線状カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネートよりなる群から選択される何れか1つ又はこれらのうち2種以上の混合物などが代表的に用いられてもよいが、これらに限定されるのではない。
【0096】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち、高粘度の有機溶媒として誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をよく解離させるものとして知られているエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートのような環状カーボネートが用いられてよく、このような環状カーボネートに加え、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適当な割合で混合して用いると、高い電気伝導率を有する電解質を製造することができる。
【0097】
また、前記非水性有機溶媒のうち、エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル及びエチルプロピルエーテルよりなる群から選択される何れか1つ又はこれらのうち2種以上の混合物を用いることができるが、これらに限定されるのではない。
【0098】
そして、前記非水性有機溶媒のうち、エステル化合物としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネートのような線状エステル;及びγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンのような環状エステルよりなる群から選択される何れか1つ又はこれらのうち2種以上の混合物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
次に、正極に対して説明する。
【0100】
具体的には、正極は、正極集電体の上に、正極活物質、バインダー、導電材及び溶媒などを含む正極活物質スラリーをコーティングして製造してもよい。
【0101】
前記正極集電体は、一般に3μmから500μmの厚さを有し、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理をしたものなどが用いられてよい。
【0102】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的にはコバルト、マンガン、ニッケル又はアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム複合金属酸化物を含んでよい。より具体的には、前記リチウム複合金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-Y1MnY1(ここで、0<Y1<1)、LiMn2-z1Niz1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y2CoY2(ここで、0<Y2<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y3MnY3(ここで、0<Y3<1)、LiMn2-z2Coz2(ここで、0<Z2<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(Nip1Coq1Mnr1)O(ここで、0<p1<1、0<q1<1、0<r1<1、p1+q1+r1=1)又はLi(Nip2Coq2Mnr2)O(ここで、0<p2<2、0<q2<2、0<r2<2、p2+q2+r2=2)など)、又はリチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip3Coq3Mnr3S1)O(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg及びMoよりなる群から選択され、p3、q3、r3及びs1はそれぞれ独立した元素の原子分率であって、0<p3<1、0<q3<1、0<r3<1、0<s1<1、p3+q3+r3+s1=1である)など)などを挙げることができ、これらのうち何れか1つ又は2つ以上の化合物が含まれてよい。
【0103】
この中でも、電池の容量特性及び安定性を高めることができるという点で、前記リチウム複合金属酸化物は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、又はLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど)、又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05など)などであってよく、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類及び含量比の制御による改善効果の顕著さを考慮すると、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O又はLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなどであってよく、これらのうち何れか1つ又は2つ以上の混合物が用いられてよい。
【0104】
前記正極活物質は、正極活物質スラリー中の溶媒を除いた固形分の全重量を基準として60重量%から98重量%、好ましくは70重量%から98重量%、より好ましくは80重量%から98重量%で含まれてよい。
【0105】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合を助ける成分である。具体的には、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。通常、前記バインダーは、正極活物質スラリー中の溶媒を除いた固形分の全重量を基準として1重量%から20重量%、好ましくは1重量%から15重量%、より好ましくは1重量%から10重量%で含まれてよい。
【0106】
前記導電材は、正極活物質の導電性をさらに向上させるための成分である。前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてもよい。市販されている導電材の具体的な例としては、アセチレンブラック系の製品など(シェブロンケミカルカンパニー(Chevron Chemical Company)、デンカブラック(Denka Singapore Private Limited)又はガルフオイルカンパニー(Gulf Oil Company))、ケッチェンブラック(Ketjenblack)、EC系の製品(アルマックカンパニー(Armak Company))、ブルカン(Vulcan)XC-72(キャボットカンパニー(Cabot Company))及びスーパー(Super)P(Timcal社)などがある。前記導電材は、正極活物質スラリー中の溶媒を除いた固形分の全重量を基準として1重量から20重量%、好ましくは1重量から15重量%、より好ましくは1重量から10重量%で含まれてもよい。
【0107】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone))などの有機溶媒を含んでもよく、前記正極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材などを含む際に好適な粘度となる量で用いられてよい。例えば、正極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を含む固形分の濃度が5重量%から70重量%、好ましくは10重量%から60重量%、より好ましくは15重量%から50重量%となるように含まれてよい。
【0108】
次に、負極に対して説明する。
【0109】
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質、バインダー、導電材及び溶媒などを含む負極活物質スラリーをコーティングして製造することができる。
【0110】
前記負極集電体は、一般に3μmから500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてよい。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成することで負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられてよい。
【0111】
前記負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、Si、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni又はFeである金属類(Me);前記金属類(Me)から構成される合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeOx);及び前記金属類(Me)と炭素との複合体よりなる群から選択された1種又は2種以上の負極活物質を挙げることができる。
【0112】
前記負極活物質は、負極活物質スラリー中の溶媒を除いた固形分の全重量を基準として60重量%から98重量%、好ましくは70重量%から98重量%、より好ましくは80重量%から98重量%で含まれてよい。
【0113】
前記バインダー、導電材及び溶媒に対する内容は前述した内容と同一なので、具体的な説明を省略する。
【0114】
本発明の他の実施形態によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、高容量、高いレート特性及びサイクル特性を有する前記リチウム二次電池を含むので、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車及び電力貯蔵用システムよりなる群から選択される中大型デバイスの電源に用いられてよい。
【0115】
<リチウム二次電池の製造方法>
次に、本発明によるリチウム二次電池の製造方法に対して説明する。前記リチウム二次電池の製造方法は、(1)正極、負極及び分離膜からなる電極組立体を電池ケースに挿入する段階;及び(2)前記電池ケースにオリゴマーを含むゲルポリマー電解質用組成物を電池ケース内に注液した後、熱重合させる段階を含む。一方、前記熱重合段階で有機バインダーの官能基とオリゴマーの官能基がエポキシ開環反応をして、前記有機バインダーと前記オリゴマーが結合される。以下、各段階に対して説明する。
【0116】
(1)電極組立体の挿入段階
先ず、正極、負極及びエポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含む有機バインダー及び無機物粒子を含むコーティング層を含む分離膜を準備する。その後、前記正極、負極及び前記正極と負極の間に分離膜を介在させて電極組立体を準備する。このとき準備した電極組立体を電池ケースに挿入させる。前記電池ケースは、当該技術分野で用いられる多様な電池ケースが制限なしに用いられてよく、例えば、円筒状、角形、パウチ(pouch)型又はコイン(coin)型の電池ケースなどが用いられてよい。
【0117】
前記準備される正極、負極及び分離膜構成に対する内容は、前記に記載されている内容と同一なので、具体的な記載を省略する。
【0118】
(2)ゲルポリマー電解質用組成物の注液後の熱重合段階
次に、前記電極組立体が挿入された電池ケースに、前記エポキシ基、エポキシ基と開環反応が可能な官能基又はこれらの組み合わせを含むオリゴマーを含むゲルポリマー電解質用組成物を電池ケース内に注液した後、加熱させて熱重合させる。
【0119】
既存のゲルポリマー電解質の場合、オリゴマーが含まれた組成物を硬化させてゲルポリマー電解質を形成するためには重合開始剤を用いていた。しかし、熱/光重合開始剤として用いられるペルオキシド系化合物などの場合、反応される途中、副産物としてガスを発生させるため電池の膨張現象(swelling)などが発生し、電池の高温安全性を阻害するという問題点があった。
【0120】
しかし、本発明のようにエポキシ開環反応を用いた熱重合反応でゲルポリマー電解質を形成する場合、熱/光重合開始剤がなくても、熱を加えるとき、エポキシ開環反応が進められ、オリゴマーを重合させてゲルポリマー電解質を形成させることができる。一方、前記オリゴマーが熱重合される過程において、有機バインダーの官能基も前記オリゴマーの官能基とエポキシ開環反応を起こすことができるため、有機バインダーと前記オリゴマーが結合され得る。
【0121】
したがって、重合開始剤を用いなくともゲルポリマー電解質用組成物を硬化させるので、ゲルポリマー電解質を形成する同時に分離膜に含まれたコーティング層上の有機バインダーもともに結合され、分離膜とゲルポリマー電解質の間の密着力が向上され得る。
【0122】
以下、具体的な実施例を介して本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本記載の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然である。
【0123】
[実施例]
1.実施例1
(1)基材の製造
ポリエチレン100g、気孔形成剤としてポリビニルアルコール20gを混合して混合物を形成した。前記混合物を極性溶媒であるジメチルホルムアミドに約1:10重量部の割合で溶解させて高分子溶液を形成した。前記高分子溶液をガラス板の上にキャスティングした後、約100℃のオーブン内に入れ、約30分間乾燥して高分子フィルムを収得した。その後、前記高分子フィルムを水に浸漬することによりポリビニルアルコール(PVA)を抽出することで多孔性基材を製造した。
【0124】
(2)コーティング層組成物の製造
無機物粒子としてアルミニウムオキシド(Al)を27g、有機バインダーとして、エポキシ基が0.5モル%置換されたポリビニリデンフルオライド(以下、PVdF、重量平均分子量:50,000)3gを72.1mlのN-メチルピロール溶液に入れることでコーティング層組成物を製造した。
【0125】
(3)二次電池用分離膜の製造
前記コーティング層組成物を前記多孔性基材上にコーティングし、約30秒間乾燥して二次電池用分離膜を製造した。
【0126】
2.実施例2
前記実施例1で、有機バインダーとしてエチレンイミド基(-CHCHNH)が0.5モル%置換されたPVdF(重量平均分子量:100,000)を用いたことを除き、同一の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0127】
[比較例]
1.比較例1
前記実施例1で、コーティング層が形成されていない多孔性基材を二次電池用分離膜として準備した。
【0128】
2.比較例2
前記実施例1で、有機バインダーとしてエポキシ基が置換されていないPVdF(重量平均分子量:50,000)を用いたことを除き、同一の方法で二次電池用分離膜を製造した。
【0129】
[製造例]リチウム二次電池の製造
正極活物質として(Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O)94重量%、導電材としてカーボンブラック(carbon black)3重量%、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)3重量%を溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加し、正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーを厚さが20μm程度の正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布し、乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0130】
負極活物質として炭素粉末、バインダーとしてPVdF、導電材としてカーボンブラック(carbon black)をそれぞれ96重量%、3重量%及び1重量%として溶媒であるNMPに添加し、負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを厚さが10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜に塗布し、乾燥して負極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0131】
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(体積比)に1M LiPFが溶解された有機溶媒94.99gに、化学式2で表される化合物(重量平均分子量(Mw)=500)及び化学式3-3で表される化合物(重量平均分子量(Mw)=10,000)を重量比7:3で混合した混合物を5g添加して撹拌させた後、完全に溶解させてゲルポリマー電解質組成物を製造した。
【0132】
前記正極/分離膜/負極を順に積層した後、(分離膜は、実施例1、2及び比較例1、2により製造された分離膜を用いる)リチウム二次電池用ケース内に収納させ、前記リチウム二次電池用ケースにゲルポリマー電解質用組成物を注入した後、2日間常温で貯蔵した。その後、60℃で24時間加熱し(熱重合反応工程)実施例1、2及び比較例1、2によるリチウム二次電池をそれぞれ製造した。
【0133】
[実験例]
1.実験例1:初期容量測定の実験
実施例1及び2で製造されたリチウム二次電池と比較例1及び2で製造されたリチウム二次電池のそれぞれに対し、100mAの電流(0.1C rate)でフォーメーション(formation)を進めた後、4.2V、333mA(0.3C、0.05Cカットオフ)CC/CV充電と3V、333mA(0.3C)CC放電を3回繰り返した後、測定された3番目の放電容量を初期容量として選定した。その結果を表1に示した。
【0134】
【表1】
【0135】
表1を検討してみると、実施例1及び2のリチウム二次電池の場合、ゲルポリマー電解質が安定的に形成され、分離膜との接着力が高いため、界面特性が改善されて初期容量がより大きなことを確認することができる。一方、比較例1及び2のリチウム二次電池の場合、相対的にゲルポリマー電解質と分離膜の間の接着力が低いため、界面抵抗が上昇してリチウム二次電池の初期容量が低く測定されることを確認することができる。
【0136】
2.実験例2:釘刺し試験(Nail penetration test)
2.5mmの直径を有する金属材質の釘を完全に充電された実施例1及び2と比較例1及び2で製造されたリチウム二次電池に600mm/分の速度で落下させた後、リチウム二次電池の表面にサーモカップル(thermos-couple)を付着して発熱温度を測定し、発火可否を評価した。前記実験結果を表2に示した。
【0137】
【表2】
【0138】
リチウム二次電池の外部的衝撃(金属釘による衝撃)によって、リチウム二次電池の内部に短絡が発生し、これから電池の発熱が発生するところ、このとき、発熱温度が高いほど発火可能性が高いため、安全性が脆弱なものと判断した。また、このような発熱が発火につながる場合、リチウム二次電池の安全性が低いものと評価した。前記表2によれば、本発明の実施例1、2のリチウム二次電池は発熱温度がいずれも55℃以下と低く、発火現象も発生しないことを確認することができる。これと異なり、比較例1、2のリチウム二次電池は、発熱温度がいずれも100℃以上で、実施例の場合より遥かに高く、発火現象も発生することを確認することができる。これは、実施例の場合、比較例より分離膜とゲルポリマー電解質の間の接着力が改善され、リチウム二次電池の機械的耐久性が向上され、外部衝撃による内部短絡の現象が抑制されたためであるとみられる。
【0139】
3.実験例3:高温安全性の評価(ホットボックステスト(hot box test))
実施例1及び2、比較例1及び2のリチウム二次電池をSOC(StateOf Charge)100%に完全に充電させた後、150℃で4時間放置し、発火するか否か、及び発火した場合、その発火が始まる時間を確認する実験を実施した。その結果を下記表3に示した。
【0140】
【表3】
【0141】
前記表3で、Xは150℃で保管中に発火が起こらない場合を示し、Oは150℃で保管中に発火が起こった場合を示す。前記表3によれば、実施例1、2のリチウム二次電池は、完全充電の状態で高温貯蔵の時にも発熱反応が抑制され、熱暴走現象及び発火現象も発生しないことを確認することができる。一方、比較例1、2のリチウム二次電池の場合、ゲルポリマー電解質と分離膜との接着力が弱く界面安全性が低いため、150℃で保管する途中、発熱反応が抑制できず、熱暴走現象及び発火現象が連鎖して発生することを確認することができる。