(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】可撓性ナノ粒子光学コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20220523BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220523BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220523BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/62
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019535818
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2017058442
(87)【国際公開番号】W WO2018122749
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-24
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ハートマン-トムソン,クレア
(72)【発明者】
【氏名】アニム-アド,ジョナサン エー.
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,ジャスティン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター,サミュエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハント,ブライアン ブイ.
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-307579(JP,A)
【文献】特表2008-527413(JP,A)
【文献】特開2001-305305(JP,A)
【文献】特表2014-516094(JP,A)
【文献】特開2012-082387(JP,A)
【文献】特開2012-140534(JP,A)
【文献】特開2002-006104(JP,A)
【文献】特開2003-292826(JP,A)
【文献】特表2011-527027(JP,A)
【文献】特表2010-519599(JP,A)
【文献】特開2014-120323(JP,A)
【文献】特開2010-198735(JP,A)
【文献】特表2009-540390(JP,A)
【文献】国際公開第2007/146509(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101467075(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-2021/10
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性のコーティング可能な組成物であって、
高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、前記表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、
硬化性反応混合物であって、前記硬化性反応混合物は、
屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、
屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、
少なくとも1種の開始剤と、
を含む、硬化性反応混合物と、
を含
み、
前記第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのポリアルキレンオキシド連結基を有する、又は脂肪族ウレタンアクリレートである、硬化性のコーティング可能な組成物。
【請求項2】
前記硬化性のコーティング可能な組成物を基材上にコーティング及び硬化させて、光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、5%以下のヘイズ、及び少なくとも1.78の屈折率を有するコーティングを作製することができ、前記コーティングは10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができる、請求項1に記載の硬化性のコーティング可能な組成物。
【請求項3】
1.6以上の高屈折率である前記第1の(メタ)アクリレートモノマーは、式Iの化合物:
【化1】
[式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、tは1~4の整数であり、R2は水素又はメチルである。]
を含む、請求項1に記載の硬化性のコーティング可能な組成物。
【請求項4】
前記第2の(メタ)アクリレートモノマーが、式IIの化合物:
H
2C=CR2-(CO)-O-(L-O)
n-A-(O-L)
n-O-(CO)-R2C=CH
2 式II
[式中、R2は水素又はメチルであり、
(CO)はカルボニル基C=Oであり、
Aは芳香族又は縮合芳香族基を含む二価の基であり、
基(O-L)
nは、繰り返しの-O-L-単位を含むポリオキシアルキレン基を表し、
式中、Lは二価のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。]
を含む、請求項1に記載の硬化性のコーティング可能な組成物。
【請求項5】
第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材と、
前記第1の基材の前記第2の主表面の少なくとも一部に隣接した硬化済み又は硬化性光学コーティング層であって、前記硬化済み又は硬化性光学コーティング層が、コーティングされ、かつ任意選択的に硬化された、硬化性のコーティング可能な組成物から作製され、前記硬化性のコーティング可能な組成物が、
高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、前記表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、
硬化性反応混合物であって、前記硬化性反応混合物は、
屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、
屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、
少なくとも1種の開始剤と、
を含む、硬化性反応混合物と、
を含む、硬化済み又は硬化性光学コーティング層と、
を含
み、
前記第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのポリアルキレンオキシド連結基を有する、又は脂肪族ウレタンアクリレートである、物品。
【請求項6】
多層光学物品を含むデバイスであって、前記デバイスが、デバイス表面であって、前記デバイス表面に多層光学物品が取り付けられたデバイス表面を含み、前記多層光学物品が、
前記デバイス表面と接触する接着剤層と、
前記接着剤層に接触している硬化済み光学コーティング層であって、前記硬化済み光学コーティング層が、コーティング済みかつ硬化済みの硬化性のコーティング可能な組成物から作製され、前記硬化性のコーティング可能な組成物が、
高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、前記表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、
硬化性反応混合物であって、前記硬化性反応混合物は、
屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、
屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、
少なくとも1種の開始剤と、
を含む、硬化性反応混合物と、を含み、
前記硬化済み光学コーティング層は光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、及び5%以下のヘイズを有し、少なくとも1.78の屈折率を有し、10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができ
、前記第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのポリアルキレンオキシド連結基を有する、又は脂肪族ウレタンアクリレートである、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可撓性であり高屈折率を有する光学コーティングを作製するのに有用な硬化性コーティング組成物、並びに、このようなコーティング組成物を含む物品及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
次第に度を増して、光学デバイスはより複雑になっており、より多くの機能層を伴う。光が光学デバイスの層を通って進むにつれて、光は多種多様な方法で層によって変化することができる。例えば、光は反射、屈折、又は吸収することができる。多くの場合、非光学的理由のために光学デバイスに含まれる層は、光学特性に悪影響を及ぼす。例えば、光学的に透明ではない支持層が含まれる場合、非光学的支持層による光の吸収は、デバイス全体の光透過に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
多層光学デバイスによる一般的な障害の1つは、異なる屈折率の層が互いに隣接する場合、それらの境界面で光の屈折が生じ得ることである。いくつかのデバイスでは、この光の屈折は望ましいが、他のデバイスでは、屈折は望ましくない。2つの層の間の境界面における光のこの屈折を排除することを最小限に抑えるために、境界面を形成する2つの層の間の屈折率の差を最小化する試みがなされてきた。しかしながら、より広い範囲の材料が光学デバイス内で使用されるため、屈折率をマッチングさせることはますます困難になりつつあり得る。光学デバイスにおいて頻繁に使用される有機ポリマーフィルム及びコーティングは、限定された範囲の屈折率を有する。高屈折率の材料が光学デバイスにおいてますます使用されているため、好適な屈折率を有しながらも、有機ポリマーの望ましい特徴、例えば加工の容易さ、可撓性等の特徴を保持する有機ポリマー組成物を作製することが、ますます困難になってきている。
【発明の概要】
【0004】
硬化性のコーティング可能な組成物、これらの硬化性のコーティング可能な組成物で作製された物品、硬化性のコーティング可能な組成物を組み込むデバイス、及び光学物品を作製する方法が本明細書で開示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、硬化性のコーティング可能な組成物は、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子を含み、表面処理された無機ナノ粒子は、シラン表面処理剤と硬化性反応混合物とを含む表面処理剤で処理されている。硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む。
【0006】
第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材と、第1の基材の第2の主表面の少なくとも一部に隣接した硬化済み又は硬化性光学コーティング層と、を含む物品であって、硬化済み又は硬化性光学コーティング層は、コーティング済み、かつ任意選択的に硬化済みの、硬化性のコーティング可能な組成物から作製される物品、もまた開示される。硬化性のコーティング可能な組成物は、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子を含み、表面処理された無機ナノ粒子は、シラン表面処理剤と硬化性反応混合物とを含む表面処理剤で処理されている。硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む。
【0007】
多層光学物品を含むデバイスも開示される。いくつかの実施形態では、デバイスは、デバイス表面であって、デバイス表面に多層光学物品が取り付けられたデバイス表面を含み、多層光学物品が、デバイス表面と接触する接着剤層と、接着剤層に接触している硬化済み光学コーティング層であって、硬化済み光学コーティング層が、コーティング済みかつ硬化済みの硬化性のコーティング可能な組成物から作製される。硬化性のコーティング可能な組成物は、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子を含み、表面処理された無機ナノ粒子は、シラン表面処理剤と硬化性反応混合物とを含む表面処理剤で処理されている。硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む。硬化済み光学コーティング層は光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率及び5%以下のヘイズを有し、少なくとも1.78の屈折率を有し、かつ10ミリメートルのマンドレル可撓性試験に合格することができる。
【0008】
また、光学物品の作製方法も開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材を準備することと、硬化性のコーティング可能な組成物を準備することと、第1の基材の第2の主表面の少なくとも一部の上に硬化性のコーティング可能な組成物をコーティングして、第1の基材の第2の主表面に隣接した光学コーティング層を形成することと、光学コーティング層を硬化することと、を含む。硬化性のコーティング可能な組成物は、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子を含み、表面処理された無機ナノ粒子は、シラン表面処理剤と硬化性反応混合物とを含む表面処理剤で処理されている。硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本出願は、添付の図面とともに、本開示の様々な実施形態についての以下の詳細な説明を考慮することにより、更に完全に理解され得る。
【0010】
以下の例示された実施形態の説明においては、本開示を実施することが可能な様々な実施形態を実例として示す添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく実施形態を利用することが可能であり、構造上の変更が行われ得る点は理解されるべきである。これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、特定の図中のある構成要素を示す数字の使用は、同じ数字を付した別の図中の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
広範な光学層が、多種多様な用途及びデバイスに必要とされている。これらの光学層は、フィルム及びコーティングを含むことができ、多くの場合、フィルムとコーティングとの組み合わせを含む。光学層を利用する用途及びデバイスの例は、OLEDデバイスである。OLEDデバイスとは、有機発光ダイオードデバイスである。
【0012】
多くの光学用途では、それらの構造物において多層光学物品を利用する。これらの多層物品は、光学フィルム及び光学コーティング層を含むことができる。コーティング層は、広範な光学用途において特に有用である。これらのコーティング層は、典型的には、硬化性コーティング組成物を基材上にコーティングし、コーティング組成物を硬化させることによって作製される。例えば光学素子を保護するための光学的に透明なハードコート、光学フィルムを一緒に接着する光学的に透明な接着剤、及び、広範な特殊コーティング層など、光学用途で使用するための広範囲のコーティング組成物が作製されてきた。
【0013】
光学用途で使用するのに望ましい特殊コーティング層の中に、高屈折率を有するコーティング層がある。本明細書で使用する場合、用語「高屈折率」は、少なくとも1.7の屈折率を有する材料を指す。特に、高屈折率を有するコーティング層が望ましい。
【0014】
コーティング層において高屈折率を達成することは、些細な問題ではない。典型的には、コーティング層は有機ポリマーから作製され、有機ポリマー、及びこれらを作製するために使用するモノマーは、高屈折率コーティング層で使用するにはあまりにも低い屈折率を有する。典型的には、有機ポリマーは1.3~1.6の範囲の屈折率を有する。高屈折率を有する特殊なポリマーが開発されてきたが、そのようなポリマーは高価になりがちであり、有機ポリマーのみを含む高屈折率コーティング層を作製することは概ね実現不可能である。概ね、高屈折率を有する無機ナノ粒子を有機ポリマーに添加して、コーティング層全体の屈折率を上げる。多くの場合、高屈折率を達成するためには、多量の無機ナノ粒子が必要とされる。
【0015】
有機ポリマーマトリックス中に分散した高屈折率ナノ粒子を含むコーティング層が、様々な光学用途で使用されてきた。例えば、米国特許出願第2014/0370307号(Haoら)では、高屈折率ナノ粒子を使用して光結合層を形成する。
【0016】
しかしながら、高屈折率コーティング層の使用が増加するにつれて、これらのコーティング層に対する要件はより厳しくなっている。これらのコーティング層にとって重要性が増加している1つの特徴は、可撓性である。このコンテクスト中で使用される場合、「可撓性」とは、破断又は亀裂無しに屈曲できることを指す。高屈折率コーティング層は多量の硬質無機ナノ粒子を含有するため、脆性であり、可撓性を欠く傾向にある。
【0017】
本開示では、高屈折率、高可視光透過率、及び低ヘイズの望ましい光学特性を有するだけでなく、可撓性でもあるコーティング層を形成可能なコーティング組成物が開示される。以下、及び実施例のセクションで詳述されるように、コーティング層の可撓性は、マンドレル屈曲試験により測定することができる。したがって、本開示のコーティング組成物は、硬化性のコーティング組成物であり、これは、コーティング組成物をコーティング及び硬化して、コーティング層を形成可能である、ということを意味する。このように形成されたコーティング層は、連続的又は不連続的であり得る。
【0018】
したがって、本開示の硬化性のコーティング可能な組成物は広範な特性を有し、これらの特性の多くは互いに相反し、特性のバランスをとることを必要とする。例えば、硬化性のコーティング可能な組成物はコーティング可能であり、これはコーティングされることができることを意味する。これは、硬化性有機モノマーの量に対して含まれ得る無機ナノ粒子の量のバランスをとることを必要とする。コーティング可能な組成物を得るためには、十分に多くの量の硬化性有機モノマーを有することが望ましい。このバランスは、高屈折率を有する必要があるため、更に複雑になる。無機ナノ粒子は屈折率を高め、有機ポリマーはコーティング層の屈折率を下げるため、高屈折率を達成するためには、できる限り多量の無機ナノ粒子を有することが必要とされる。
【0019】
所望の特性のバランスを達成するために、本開示の硬化性のコーティング可能な組成物は、2つの異なる(メタ)アクリレート系モノマーの混合物を使用する。(メタ)アクリレート系モノマーの混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、硬化済み組成物の可撓性を高めるのに役立つ、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、を含む。これらのモノマーのそれぞれは、以下にて更に詳細に記載される。
【0020】
それ故、本開示のコーティング組成物は予想外に、所望の光学性能(少なくとも90%の可視光透過率、5%未満のヘイズ、及び1.7より大きい高屈折率)、並びに可撓性(マンドレル屈曲試験により試験される)という、硬化時の特性と組み合わさって、たいてい逆の範囲の、コーティング可能であるという特性をもたらす。
【0021】
本開示の硬化性のコーティング可能な組成物から作製した光学コーティングから作製した物品、本開示の硬化性のコーティング可能な組成物から作製した光学コーティングを含む多層物品を含むデバイス、及び、本開示の硬化性のコーティング可能な組成物から作製した光学コーティングを含む光学物品の作製方法もまた、本明細書では開示される。これらの物品及び方法は全て、以下でより詳細に記載される。
【0022】
別途断りがない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる加工寸法(feature size)、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解するものとする。したがって、特に反対の指示のない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。端点による数値範囲の記載には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)及びその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示していない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。例えば、「層」は、1つ又は2つ以上の層を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、用語「又は」は、内容が別途明示していない限り、「及び/又は」を含む意味で通常用いられる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「埋め戻し材料」又は「埋め戻し層」は、不規則な又は構造化された表面に充填して、追加の層状要素を構築するための基部として使用され得、熱的に安定である、新しい表面を作製するための材料の層を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「ナノ構造」は、最長寸法が約1ナノメートル~約1000マイクロメートルの範囲である特徴を指し、微細構造を含む。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「構造化された表面」は、表面にわたって規則的なパターン又はランダムであり得るナノ構造を含む表面を指す。本明細書で使用する場合、「微細構造化された材料」は、1つ以上の微視的特徴を有する少なくとも1つの表面を含む材料を指す。
【0027】
本明細書で使用する場合、「微細構造化された」表面とは、表面が、特徴部の少なくとも2つの寸法が微視的である特徴の構造を有することを意味する。本明細書で使用する場合、用語「微視的」とは、視野の平面から見たときに形状を判定するのに裸眼に視覚補助が必要であるほど十分に小さい寸法の特徴を指す。1つの基準は、Modern Optical Engineering by W.J.Smith,McGraw-Hill,1966,pages 104-105に見られ、それによると視力は、「認識され得る最小の文字の角度サイズの観点から定義され測定される」。正常視力は、識別できる最小の文字が、網膜上の弧の5分の高低角に対応する場合であると考えられる。250mm(10インチ)の典型的な作業距離では、これは、この対象に対して0.36mm(0.0145インチ)の横方向の寸法を生じる。
【0028】
用語「設定すること」、「硬化すること」、及び「反応すること」は、すでに反応性ではないポリマー組成物を形成するための、反応性組成物中の反応性基の反応又は重合を説明するために、互換的に使用される。設定すること、硬化すること、又は反応することは、架橋を伴っても、伴わなくてもよい。
【0029】
用語「室温」及び「周囲温度」は互換的に用いられ、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0030】
用語「Tg」及び「ガラス転移温度」は、互換的に使用される。測定する場合、Tg値は、別段の指定がない限り、10℃/分の走査速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。典型的には、当業者に理解されるように、コポリマーのTg値は実測されるのではなく、ホモポリマーにかかるモノマー供給業者から提供されるモノマーのTg値を使用して、周知のFox式を使用して計算される。
【0031】
用語「炭化水素基」は、本明細書で使用するとき、主に又は排他的に炭素原子及び水素原子を含有する任意の一価の基を指す。アルキル及びアリール基が、炭化水素基の例である。
【0032】
用語「炭化水素系層」は、主に炭素及び水素を含む層を指し、また、ケイ素、酸素、窒素、硫黄などの原子、(メタ)アクリレート基、シリコーン基などのヘテロ原子又はヘテロ原子基を含有してもよい。
【0033】
2つの層を指すとき、本明細書で使用する場合、用語「隣接する」は、2つの層が互いに近接しており、それらの間に介在する開放空間がないことを意味する。これらは、互いに直接接触していてもよい(例えば、一緒に積層されてもよい)、又は介在層が存在してもよい。
【0034】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられる。
【0035】
用語「アリール」は、芳香族及び炭素環である一価の基を指す。アリールは、芳香環に接続又は縮合した、1~5個の環を有し得る。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであり得る。アリール基の例としては、限定されるものではないが、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられる。
【0036】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよい。アルキレンは、多くの場合、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキレンは、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一の炭素原子上であってもよく(すなわち、アルキリデン)、あるいは異なる炭素原子上であってもよい。
【0037】
用語「ヘテロアルキレン」は、チオ、オキシ、又は-NR-(式中、Rはアルキルである)によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖状であるか、分枝状であるか、環状であるか、アルキル基によって置換されているか、又はこれらの組み合わせであってもよい。一部のヘテロアルキレンは、ヘテロ原子が酸素であるポリオキシアルキレン、例えば、-CH2CH2(OCH2CH2)nOCH2CH2-である。
【0038】
用語「アリーレン」は、炭素環及び芳香族である、二価の基を指す。この基は、結合しているか、縮合しているか、又はこれらの組み合わせである、1~5個の環を有する。これらの他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態において、アリーレン基は、最大で5個の環、最大で4個の環、最大で3個の環、最大で2個の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであってもよい。
【0039】
用語「ヘテロアリーレン」は、炭素環であり、芳香族であり、かつ硫黄、酸素、窒素、又はハロゲン(フッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素など)などのヘテロ原子を含有する二価の基を指す。
【0040】
用語「アラルキレン」は、式、-Ra-Ara-[式中、Raはアルキレンであり、Araはアリーレンである(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)。]の二価の基を指す。
【0041】
用語「(メタ)アクリレート」は、アルコールのモノマー性及びオリゴマー性アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを指す。アクリレート及びメタクリレートモノマー又はオリゴマーは、本明細書で「(メタ)アクリレート」と総称される。「(メタ)アクリレート官能性」又は「(メタ)アクリレート系」と呼ばれる材料は、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含有する材料である。
【0042】
用語「フリーラジカル重合性」及び「エチレン性不飽和」は区別なく用いられ、フリーラジカル重合機構を介して重合できる炭素-炭素二重結合を含有する反応性基を指す。
【0043】
別段の指定がない限り、「光学的に透過性」とは、可視光スペクトル(約400~約700nm)の少なくとも一部にわたって高い光透過率を有する物品、フィルム又は接着剤を指す。典型的には、光学的に透過性の物品は、少なくとも90%の可視光透過率を有する。用語「透過性フィルム」は、フィルムが基材上に配置された場合に、(基材上に配置された、又は基材に隣接した)画像が、透過性フィルムの厚さを通して目視可能である厚さを有するフィルムを指す。多くの実施形態では、透過性フィルムにより、画像の透明度を実質的に失なうことなく、フィルムの厚さを通して画像を確認することが可能になる。いくつかの実施形態において、透過性フィルムはマット又は光沢仕上げを有する。
【0044】
別途の指定がない限り、「光学的に透明」とは、可視光スペクトル(約400~約700nm)の少なくとも一部にわたって、少なくとも88%の高い光透過率を有し、典型的には約5%未満、又は更に約2%未満の低ヘイズを呈する、接着剤又は物品を指す。いくつかの実施形態では、光学的に透明な物品は、50マイクロメートルの厚さで1%未満、又は更には50マイクロメートルの厚さで0.5%のヘイズを呈する。いくつかの実施形態では、光学的に透明な物品は、95%、97%、98%、又は更に99%以上など、少なくとも90%の可視光透過率を有する。光学的に透明な物品又はコーティングは、概ね、CIE Labスケールでは色が中性であり、a値又はb値は0.5未満である。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「剥離面」は、接着剤、特に感圧接着剤に対して低い接着強度をもたらす表面を指す。剥離面の例としては、剥離ライナーの表面が挙げられる。
【0046】
本明細書で使用する場合、用語「剥離ライナー」は、少なくとも1つの剥離面を含有する物品を指す。接着剤層に接着されると、剥離ライナーはごくわずかしか接着せず、容易に取り外される。剥離ライナーは、単一層(基層のみを有する)であってもよく、又は多層構造(基層に加えて1つ以上のコーティング又は追加の層を有する)であってもよい。剥離ライナーはまた、微細構造などの構造又はパターンを含んでもよい。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「接着剤」は、2つの被着体を一緒に接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の例は、熱活性化接着剤、及び感圧接着剤である。
【0048】
熱活性化接着剤は、室温で非粘着性であるが、高温で粘着性になり、基材に結合できるようになる。これら接着剤は通常、室温より高いTg又は融点(Tm)を有する。温度がTg又はTmより高くなったとき、貯蔵弾性率は通常低下し、接着剤は粘着性になる。
【0049】
感圧接着剤組成物は、室温において以下の特性:(1)アグレッシブで持続的な粘着性、(2)指圧以下の接着性、(3)被着体を十分に保持できること、並びに(4)被着体からきれいに剥がせるのに十分な凝集力、を保有することが、当業者には周知である。PSAとして良好に機能することが分かっている材料は、必要な粘弾性特性を呈して、粘着力、剥離接着力、及び剪断保持力の望ましいバランスをもたらすように設計及び配合したポリマーである。特性の適正なバランスを得ることは、単純なプロセスではない。
【0050】
本明細書では、硬化性のコーティング可能な組成物、これらの硬化性のコーティング可能な組成物から作製した物品、これらの硬化性のコーティング可能な組成物から作製した物品を含むデバイス、並びに、物品及びデバイスの作製方法が開示される。
【0051】
本明細書では、高屈折率(典型的には2.0以上)を有する表面処理された無機ナノ粒子と、硬化性反応混合物とを含む、硬化性のコーティング可能な組成物であるコーティング組成物が開示される。表面処理された無機ナノ粒子の表面処理剤は、シラン表面処理剤を含む。硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む。
【0052】
硬化性のコーティング可能な組成物は、上述した特性をバランスよく有する。組成物はコーティング可能であり、これは、従来のコーティング技術によってコーティングされることが可能であり、したがって、これらのコーティング技術と共に使用するのに好適な粘度を有することを意味する。組成物はまた硬化性であり、これは、硬化されて、表面処理された無機ナノ粒子のバインダーマトリックスの役割を果たすポリマーマトリックスを形成することができる、硬化性反応混合物を含有することを意味する。以下により詳細に記載されるように、硬化性反応混合物は、硬化時に高屈折率及び所望の可撓性という、所望の特性を提供するような方法で配合される。
【0053】
本開示の硬化性のコーティング可能な組成物は、高屈折率を有する無機ナノ粒子を含む。このコンテクストにおいて、高屈折率とは、2.0以上の屈折率を指す。これらの無機ナノ粒子は表面処理されたナノ粒子であり、これは、無機ナノ粒子に表面処理剤が適用されて、無機ナノ粒子の表面を少なくとも部分的に改質することを意味する。表面処理は概ね、無機ナノ粒子の表面に吸着されるか、ないしは別の方法で付着される。特に好適な無機ナノ粒子の例は、金属酸化物ナノ粒子である。
【0054】
表面改質された(例えば、コロイド状)ナノ粒子は、重合構造中に、それらが含まれるコーティング可能な硬化性組成物の屈折率を高めるのに有効な量で存在し得る。いくつかの実施形態では、表面改質された無機ナノ粒子の総量は、コーティング可能な硬化性組成物中に、少なくとも64重量%の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、表面改質された無機ナノ粒子の総量は、コーティング可能な硬化性組成物中に、少なくとも70重量%の量で存在し得る。コーティング可能な硬化性組成物中のこのような高濃度の無機ナノ粒子により、コーティングが困難であるだけでなく、硬化時にも、硬化済み組成物が所望の用途に必要な可撓性を有すると予想されない組成物を作製することが期待され得る。したがって、本開示のコーティング可能な硬化性組成物の特性は驚くべきものであり、かつ予想外のものである。
【0055】
このような粒子のサイズは、顕著な可視光散乱を回避するように選択される。光学特性又は材料特性を最適化し、かつ全組成物のコストを削減するため、無機酸化物粒子種の混合物を利用するのが望ましい場合もある。表面改質されたコロイド状ナノ粒子は、1nm、5nm、又は10nmより大きい(例えば、会合していない)一次粒径又は会合粒径を有する酸化物粒子であり得る。一次粒径又は会合粒径は概ね、100nm未満、75nm未満、又は50nm未満である。通常、一次粒径又は会合粒径は、40nm未満、30nm未満、又は20nm未満である。ナノ粒子は非会合であることが好ましい。それらの測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)に基づいて行うことができる。上述したように、ナノ粒子は、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、これらの混合物、又はこれらの混合酸化物などの金属酸化物を含むことができる。
【0056】
ジルコニア粒子及びチタニアナノ粒子は、5~50nm、又は5~15nm、又は8nm~12nmの粒径を有し得る。本開示の組成物及び物品で使用するためのジルコニアは、商品名「NALCO OOSSOO8」でNalco Chemical Co.から、及び商品名「Buhler zirconia Z-WOゾル」でBuhler AG Uzwil,Switzerlandから入手可能である。チタニアナノ粒子(二酸化チタンのナノ粒子)が特に好適である。10nmのチタニアナノ粒子は、日本の昭和電工株式会社から「NTB-1」として市販されている。
【0057】
ナノ粒子は、有機マトリックス材料との相溶性を改善し、コーティング可能な硬化性組成物中のナノ粒子の非会合性、非凝集性、又はそれらの組み合わせを維持するために表面処理される。表面処理されたナノ粒子を生成するために使用される表面処理は、シラン表面処理剤である。
【0058】
シラン表面処理剤は周知であり、容易に入手可能である。多種多様なシラン表面処理剤が好適である。いくつかの実施形態では、2つ以上のシラン表面処理剤を使用することができる。シラン表面処理剤は、一般構造:RaRbRcSi-X[式中、各Ra、Rb、Rcは独立して、アルキル又はアルコキシ基である(ただし、Ra、Rb、及びRcのうち少なくとも1つは、1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である)。]を有するものである。市販されている多くのシラン処理剤は、同じアルコキシ基、典型的にはメトキシ又はエトキシとしてRa、Rb、及びRcを有する。X期は典型的には、ポリエーテル基(アルキル末端ヘテロアルキレン基)、又はエチレン性不飽和基を含有する基のいずれかである。ポリエーテル基の例としては、ポリエチレンオキシド(-(O-CH2-CH2)r-T)基、及びポリプロピレンオキシド(-(O-CH2-CHMe)r-T)基[式中、rは1以上の整数であり、Tは末端基、典型的には水素原子又はアルキル基である。]が挙げられる。エチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリレート基が挙げられる。多くの場合、X基は、-L-O(CO)-RdC=CH2の型[式中、Lは、典型的には1~10個の炭素原子を有するアルキレン連結基であり、(CO)はカルボニル基であり、Rdは(アクリレート基に関しては)水素原子、又は(メタクリレート基に関しては)メチル基である。]のものである。
【0059】
上記のように、シラン処理剤の組み合わせが使用されることが望ましい場合がある。好適なシラン表面処理剤の中には、Momentive Performance Materials Inc.,Waterford,NY製の、市販されている表面処理剤SILQUEST A-174NT((メタ)アクリレートシラン)、及びSILQUEST A-1230(ポリエーテル官能性シラン)がある。
【0060】
硬化性のコーティング可能な組成物はまた、硬化性反応混合物を含む。この反応混合物は、フリーラジカル重合性反応混合物であり、少なくとも3つの要素:(本開示では、1.60以上の屈折率を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む)高屈折率を有する第1の(メタ)アクリレートモノマー;(本開示では、1.60未満の屈折率を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む)低屈折率を有する第2の(メタ)アクリレートモノマー;及び開始剤を含む。これらの要素はそれぞれ、単一材料を含んでよい、又は、2つ以上の材料のブレンドであってよい。例えば、開始剤は、開始剤の混合物であってもよいが、より典型的には単一の開始剤であるか、又は第1のモノマーは、第1のモノマーの全てが1.60以上の屈折率を有する限り、(メタ)アクリレートモノマーの混合物であってもよい。
【0061】
硬化性反応混合物は、上記表面処理されたナノ粒子のバインダーとして機能し、また、硬化済み組成物の所望の可撓性も提供する。上述のように、硬化性反応混合物の構成成分は、高屈折率及び所望の可撓性を有するという矛盾した目標のバランスをとるように選択される。これらの目標は、高屈折率を有するモノマーがより剛性である傾向があり、良好な可撓性を与えるモノマーは、低屈折率を有する傾向があるため、矛盾している。これらの特性のバランスがとれることは、本開示の予想外の結果の一部である。
【0062】
更に、上述したとおり、硬化済みの硬化性反応混合物の、高屈折率と所望の可撓性とのバランスは、高担持量の表面処理された無機ナノ粒子も、硬化性のコーティング可能な組成物中に存在するという事実により、更に複雑になる。硬化性のコーティング可能な組成物は、典型的には、少なくとも64重量%の表面処理された無機ナノ粒子を含み、これは、硬化性のコーティング可能な組成物が、典型的には、36重量%以下の硬化性反応混合物を含むことを意味する。
【0063】
硬化性反応混合物に使用するのに好適なモノマーは、以下により詳細に記載される。便宜上、存在する硬化性材料の量は、硬化性反応混合物に関連してのみ記載される。硬化性反応混合物中に存在する硬化性材料の量は、2つの方法のうちの1つで提示される。場合によっては、硬化性反応混合物の100%に対する硬化性材料の重量%が使用され、他の例、例えば実施例のセクションでは、モノマーの比率が記載される。例えば、50重量%のモノマーAと50重量%のモノマーBとを含む硬化性反応混合物は、50%のモノマーA及び50重量%のモノマーBを含むものとして記載されてもよく、又は、モノマーA:モノマーBが1:1の比として記載されてもよい。
【0064】
様々なモノマーが、高屈折率を有する第1の(メタ)アクリレートモノマーとして使用するのに好適である。所望の高屈折率及び所望の可撓性を有する硬化性反応混合物を得るために、典型的には、硬化性反応混合物は、1.60以上の屈折率を有する少なくとも1つの単官能性芳香族(メタ)アクリレートを含む。単一の単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーを使用してよく、又は、単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーの混合物を使用してもよい。概ね、少なくとも1つの単官能性芳香族(メタ)アクリレートは、式Iの化合物(以下に示す):
【化1】
[式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、tは1~4の整数であり、R2は水素又はメチルである。]を含む。
【0065】
多種多様な芳香族置換基が、1つ以上のR1基に好適である。典型的には、少なくとも1つの芳香族置換基R1は、CH2-Arの型の置換若しくは非置換芳香族基、又は-X-Arの型のへテロ原子結合芳香族基[式中、XはS又はOである]であって、各Arは独立して、置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である。
【0066】
したがって、1つ以上のR1基は、
【化2】
のような様々な芳香族置換基を含み得る。
【0067】
芳香族置換基R1は通常、少なくとも1つの二価(例えば、アルキレン又はエーテル)連結基により、ベンジル基の芳香環に結合している。したがって、R1の芳香環は、典型的には、ナフチルの場合と同様に、芳香族ベンジル環に縮合しない。いくつかの実施形態では、芳香族置換基R1は、2つ以上の二価(例えば、アルキレン又はエーテル)連結基によって芳香族ベンジル環に結合している。各*は、式Iの芳香環への結合点を示し、Arは、置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル基若しくは置換フェニル基である。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態では、tは1である。式Iの代表的な構造としては、
【化3】
【化4】
が挙げられる。
【0069】
tが1であり、R1基が
*-S-Arであるいくつかの実施形態において、化合物は、式IAの一般的構造:
【化5】
[式中、R2はH又はCH
3であり、XはO、S、又は単結合であり、QはO又はSであり、nは0~10の範囲であり(例えば、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり)、Lは、任意選択的にヒドロキシル基で置換されている、1~5個の炭素原子を有するアルキレン基である。]
を有することができる。式IAの、特に好適なモノマーの1つは、R2が水素であり、nが1であり、Lが-CH
2-基であり、Xが単結合であり、Qが硫黄であるものである。
【0070】
他の実施形態では、tは1よりも大きい。一実施形態では、tは3である。1つの代表的な構造は、
【化6】
である。
【0071】
Sigma-Aldrich製の様々な芳香族アルコールは、このような材料を(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体と反応させることにより(メタ)アクリレートに転換可能な出発材料として入手可能である。特に好適な単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーとしては、MIRAMER M1192又はMIRAMER M1192Hとして、Miwon Specialty Chemicals,Exton,PAから市販されているビフェニルメチルアクリレート[式中、R1はフェニル基である。]、及び、式IAのモノマー[式中、R2は水素であり、nは1であり、Lは-CH2-基であり、Xは単結合であり、Qは硫黄である。]が挙げられる。
【0072】
硬化性のコーティング可能な組成物にて用いられる単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーの量は、変化することができる。典型的には、単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、硬化性反応混合物の25重量%以上の量で存在する。これは、硬化性反応混合物の25重量%以上が単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーであることを意味する。「単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマー」とは、2つ以上の単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーが使用される場合に存在する、全ての単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーを指す。いくつかの実施形態では、単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーは、50重量%、又は更に75重量%以上の単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーを含む。概ね、これらの単官能性芳香族(メタ)アクリレートモノマーは非ハロゲン化(例えば、非臭素化)されている。
【0073】
硬化性反応混合物はまた、低屈折率を有する少なくとも1つの第2の(メタ)アクリレートモノマーを含む。低屈折率を有する単一の(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる、又は、低屈折率を有する異なる(メタ)アクリレートモノマーの混合物を使用することができる。上述のように、低屈折率とは、モノマーが1.60未満の屈折率を有することを意味する。
【0074】
特に、好適な低屈折率を有する(メタ)アクリレートモノマーの種類は、少なくとも1つのポリアルキレンオキシド連結基及び脂肪族ウレタンアクリレートを有するものである。上述のように、低屈折率を有する(メタ)アクリレートモノマーが助けとなり、硬化済みポリマーバインダーマトリックスに可撓性が付与されるが、硬化済みポリマーバインダーマトリックスの屈折率の低下を伴う。
【0075】
少なくとも1つのポリアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、一般式IIのジ(メタ)アクリレート:
H2C=CR2-(CO)-O-(L-O)n-A-(O-L)n-O-(CO)-R2C=CH2
式II
[式中、R2は水素又はメチルであり、(CO)はカルボニル基C=Oであり、Aは芳香族又は縮合芳香族基を含む二価の基であり、基(O-L)nは、繰り返しの-O-L-単位を含むポリオキシアルキレン基を表し、式中、Lは二価のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。]
が挙げられる。縮合芳香族基の例としては、ナフチル基、アントラシル基、テルフェニル基、及びフルオレニル基が挙げられる。オキシアルキレン基の例としては、ポリエチレンオキシド基(式中、基Lはエチレン基である)、ポリプロピレンオキシド基(式中、基Lはプロピレン基である)等が挙げられる。
【0076】
特に好適な式IIのモノマーの例は、式中、Aがフルオレニル基であり、(O-L)がポリエチレンオキシド基であり、nが10又は20であり、R2がHであるものである。
【0077】
市販されている式IIのモノマーとしては、Miwon Specialty Chemical Co,Ltd.,Korea製の、フルオレニル系ジ(メタ)アクリレートモノマーMIRAMER HR 6100及びMIRAMER HR6200が挙げられる。
【0078】
硬化性反応混合物は、(メタ)アクリレートモノマーが脂肪族ウレタンジアクリレートモノマーである第2の(メタ)アクリレートモノマーもまた含んでよい。好適な脂肪族ウレタンジアクリレートモノマーの例としては、IGM Resins,St.Charles,ILから市販されているPHOTOMER 6210が挙げられる。
【0079】
硬化性のコーティング可能な組成物は、少なくとも1つの開始剤もまた含む。概ね、開始剤は光開始剤であり、これは、開始剤が光、典型的には紫外(UV)光により活性化されることを意味する。光開始剤は、(メタ)アクリレート重合の当業者によってよく理解されている。好適なフリーラジカル光開始剤の例としては、BASF,Charlotte,NCから市販されている、IRGACURE 4265、IRGACURE 184、IRGACURE 651、IRGACURE 1173、IRGACURE 819、IRGACURE TPO、IRGACURE TPO-Lが挙げられる。
【0080】
概ね、光開始剤は、全反応性構成成分100重量部に対して、0.01~1重量部、より典型的には0.1~0.5重量部の量で使用される。
【0081】
硬化性のコーティング可能な組成物は、更なる反応性又は非反応性構成成分を含有することができるが、このような構成成分は、追加された構成成分が、形成した(メタ)アクリレート系マトリックスの最終特性に不利益とならない限り、必要ではない。
【0082】
いくつかの実施形態では、硬化性のコーティング可能な組成物は、少なくとも1種の溶媒を更に含む。溶媒を使用することは、硬化性のコーティング可能な組成物の粘度を低下させるのに役立つことができる。好適な溶媒の例としては、アルコール、エーテル、エステル、炭化水素等が挙げられる。典型的には、硬化性のコーティング可能な組成物を基材上にコーティングするとき、該組成物を乾燥させて溶媒を除去し、硬化性反応混合物を硬化する。
【0083】
上述したように、本開示の硬化性のコーティング可能な組成物は、コーティングを作製するために基材上にコーティング及び硬化させることができる。硬化性のコーティング可能な組成物を作製するために使用される構成成分は、特性のバランス、特に光学的特性と物理的特性のバランスを提供するために使用される。本開示のコーティング済みで硬化済みのコーティングにおいて重要視すべき事項である光学特性の中には、光透過性及び屈折率がある。重要視すべき事項である物理的特性の中には、可撓性があり、これは、このコンテクストにおいては概ね、非剛性、又は破断を伴わずに屈曲できることを指す。多くの実施形態において、硬化済みコーティングは光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、及び5%以下のヘイズを有し、少なくとも1.78の屈折率を有する。更に、硬化済みコーティングは、10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができる。マンドレル可撓性試験の詳細は、実施例のセクションに提示される。
【0084】
また本明細書では、物品、特に、第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材と、第1の基材の第2の主表面の少なくとも一部に隣接した硬化済み又は硬化性光学コーティング層と、を含む多層物品であって、硬化済み又は硬化性光学コーティング層は第1の主表面及び第2の主表面を有し、第1の主表面は第1の基材の第2の主表面に隣接し、硬化済み又は硬化性光学コーティング層は、コーティング及び/又は硬化されている硬化性のコーティング可能な組成物から作製される、物品も開示される。硬化済み又は硬化性光学コーティング層は、上記の硬化性のコーティング可能な組成物を含む。いくつかの実施形態では、硬化性のコーティング可能な組成物をコーティング及び硬化させることが望ましい場合があり、他の実施形態では、硬化性のコーティング可能な組成物をコーティングし、硬化性コーティングの露出表面に1つ以上の追加の層を適用し、後で層を硬化させることが望ましい場合がある。
【0085】
光学コーティング層は、任意の好適な厚さを有してよい。概ね、光学コーティング層は、比較的薄い層を含む。典型的には、光学コーティング層は、1~5マイクロメートル、又は更に2~3マイクロメートルの厚さを有する。上述したように、硬化済み光学コーティング層は、1.78以上の屈折率を有する。
【0086】
広範囲の基材が、第1の基材として使用するのに好適である。好適な第1の基材としては、幅広く多数の可撓性及び非可撓性基材が挙げられる。例えば、第1の基材は、ガラス、又は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)若しくはPC(ポリカーボネート)等のポリマー材料の比較的厚い層であり得る。あるいは、第1の基材は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のフィルム等の、可撓性ポリマーフィルムであり得る。特に好適な可撓性基材は、剥離ライナー等の剥離基材である。というのは、本明細書に記載される物品を、デバイス内の要素として使用することができるため、第1の基材が剥離ライナーである場合、物品をデバイスに容易に組み込むことができるように取り外し可能であるからである。剥離基材及び剥離ライナーは、低接着性の表面を有する物品として当該技術分野において周知である。
【0087】
多種多様の剥離基材が好適である。典型的には、剥離基材は剥離ライナー又は他のフィルムであり、これらから接着剤層を容易に取り外しすることができる。例示的な剥離ライナーとしては、紙(例えば、クラフト紙)、又はポリマー材料(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレンビニルアセテート、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルといったもの、及びこれらの組み合わせ)から作製したものが挙げられる。少なくとも一部の剥離ライナーは、シリコーン含有材料又はフルオロカーボン含有材料などの剥離剤の層によりコーティングされている。例示的な剥離ライナーとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にシリコーン剥離コーティングを有する、「T-30」及び「T-10」の商品名でCPフィルム(Martinsville,Va.)から市販されているライナーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
硬化済み又は硬化性光学コーティング層は、第1の基材の第2の主表面に直接接触してよい、又は、第1の基材の第2の主表面と、硬化済み層又は硬化性層との間に、1つ以上の介在層が存在してよい。いくつかの実施形態では、接着剤層は第1の基材の第2の主表面と、硬化済み層又は硬化性層との間に位置する。典型的には、この接着剤層は、硬化済み層又は硬化性層をデバイスの表面に接着するのに好適な、光学的に透明な接着剤層である。このような接着剤層は、感圧接着剤又は熱活性化接着剤であり得る。
【0089】
特に好適な接着剤の種類の1つは、光学的に透明な感圧接着剤である。いくつかの実施形態では、光学的に透明な接着剤は、95%以上、又は更に99%以上の透過率(%)を有する。また、いくつかの実施形態では、光学的に透明な接着剤は、3%以下、又は更に1%以下のヘイズ値を有する。いくつかの実施形態では、光学的に透明な接着剤は、99%以上の透明度値を有する。いくつかの実施形態において、接着剤は光学的に透明な感圧接着剤である。感圧接着剤成分は単一の感圧接着剤であり得るか、又は、感圧接着剤は2つ以上の感圧接着剤の組み合わせであり得る。
【0090】
本開示において有用な光学的に透明な感圧接着剤としては、例えば、後述のとおり、ポリ尿素感圧接着剤ポリマー、ブロックコポリマー感圧接着剤ポリマー、シリコーン感圧接着剤ポリマー、又は(メタ)アクリレート系感圧接着剤ポリマーをベースにしたものが挙げられる。当業者にはよく理解されるように、全ての感圧接着剤が光学的に透明であるとは限らないが、どちらかといえば光学的に透明な感圧接着剤は概ね、精選した一部の感圧接着剤である。
【0091】
本開示において有用なポリ尿素感圧接着剤としては、例えば、米国特許出願第2011/0123800号(Shermanら)に開示されているものが挙げられる。これらのポリ尿素感圧接着剤は概ね、シリコーン繰り返し単位を非含有であり、典型的には、ポリアルキレンオキシド繰り返し単位を含む。
【0092】
ブロックコポリマー感圧接着剤は概ね、A-B又はA-B-A型のエラストマーを含み、ここで、Aは熱可塑性ポリスチレンブロックを表し、Bはポリイソプレン、ポリブタジエン、又はポリ(エチレン/ブチレン)のゴムブロック、及び樹脂を表す。ブロックコポリマー感圧接着剤において有用な様々なブロックコポリマーの例としては、直鎖、放射状、星状及びテーパースチレン-イソプレンブロックコポリマー、例えばShell Chemical Co.から入手可能な「KRATON D1107P」、及びEniChem Elastomers Americas,Inc.から入手可能な「EUROPRENE SOL TE 9110」;直鎖スチレン-(エチレン-ブチレン)ブロックコポリマー、例えばShell Chemical Co.から入手可能な「KRATON G1657」;直鎖スチレン-(エチレン-プロピレン)ブロックコポリマー、例えばShell Chemical Co.から入手可能な「KRATON G1750X」;並びに、直鎖、放射状、及び星状スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、例えばShell Chemical Co.から入手可能な「KRATON D1118X」、及びEniChem Elastomers Americas,Inc.から入手可能な「EUROPRENE SOL TE 6205」が挙げられる。ポリスチレンブロックは、ブロックコポリマー感圧接着剤が二相構造を有する原因となる、偏球、円筒、又は平板形状のドメインを形成する傾向にある。ゴム相と会合する樹脂は、概ね、感圧接着剤中に粘着性を生み出す。ゴム相会合樹脂の例としては、脂肪族オレフィン由来樹脂、例えばGoodyearから入手可能な「ESCOREZ 1300」シリーズ、及び「WINGTACK」シリーズ;ロジンエステル、例えば、共にHercules,Inc.から入手可能な「FORAL」シリーズ、及び「STAYBELITE」Ester 10;水素添加炭化水素、例えばExxonから入手可能な「ESCOREZ 5000」シリーズ;ポリテルペン、例えば「PICCOLYTE A」シリーズ;並びに、石油又はテルペンチン源に由来するテルペンフェノール樹脂、例えばHercules,Inc.から入手可能な「PICCOFYN A100」が挙げられる。熱可塑性相と会合する樹脂は、感圧接着剤を硬化する傾向にある。熱可塑性相会合樹脂としては、多環芳香族、例えばHercules,Inc.から入手可能な、「PICCO 6000」シリーズの芳香族炭化水素樹脂;クマロン-インデン樹脂、例えばNevilleから入手可能な「CUMAR」シリーズ;並びに、コールタール又は石油に由来し、約85℃より高い軟化点を有する、他の高溶解度パラメータ樹脂、例えば、Amocoから入手可能な「AMOCO 18」シリーズのα-メチルスチレン樹脂、Hercules,Inc.から入手可能な「PICCOVAR 130」アルキル芳香族ポリインデン樹脂、及びHerculesから入手可能な「PICCOTEX」シリーズのα-メチルスチレン/ビニルトルエン樹脂が挙げられる。ゴム相可塑化炭化水素油、例えばLyondell Petrochemical Co.から入手可能な「TUFFLO 6056」、Chevron製のポリブテン-8、Witcoから入手可能な「KAYDOL」、及びShell Chemical Co.から入手可能な「SHELLFLEX 371」;顔料;酸化防止剤、例えば、共にCiba-Geigy Corp.から入手可能な「IRGANOX 1010」及び「IRGANOX 1076」、Uniroyal Chemical Co.から入手可能な「BUTAZATE」、American Cyanamidから入手可能な「CYANOX LDTP」、並びにMonsanto Co.から入手可能な「BUTASAN」;オゾン劣化防止剤、例えばDuPontから入手可能な「NBC」(ニッケルジブチルジチオカルバメート);液状ゴム、例えば「VISTANEX LMMH」ポリイソブチレンゴム;並びに、紫外線阻害剤、例えばCiba-Geigy Corp.から入手可能な「IRGANOX 1010」及び「TINUVIN P」などの、他の材料を特殊な目的のために添加することができる。
【0093】
シリコーン感圧接着剤は典型的には、2つの主要構成成分:ポリマー又はゴム、及び粘着付与樹脂を含む。ポリマーは典型的には、ポリマー鎖の末端に残存シラノール官能性(SiOH)を含有する高分子量ポリジメチルシロキサン若しくはポリジメチルジフェニルシロキサン、又は、ポリジオルガノシロキサンソフトセグメント及び尿素若しくはオキサミド末端ハードセグメントを含むブロックコポリマーである。粘着付与樹脂は、概ね、トリメチルシロキシ基で末端をキャップされた三次元ケイ酸塩構造体(OSiMe3)であり、かつまた、幾分かの残存シラノール官能性を含有するものである。粘着付与樹脂の例としては、General Electric Co.,Silicone Resins Division,Waterford,N.Y.製のSR 545、及び、America,Inc.,Torrance,Califの信越シリコーン製のMQD-32-2が挙げられる。典型的なシリコーン感圧接着剤の製造は、米国特許第2,736,721号(Dexter)で説明されている。シリコーン尿素ブロックコポリマー感圧接着剤の製造は、米国特許第5,214,119号(Leirら)で説明されている。顔料、可塑剤、及びフィラーを含む他の材料を特別な目的で添加することができる。フィラーは、典型的には、シリコーン感圧接着剤100部当たり0部~10部の量で使用される。使用可能なフィラーの例としては、酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、顔料、金属粉末、及び炭酸カルシウムが挙げられる。特に好適な種類の1つであるシロキサン含有感圧接着剤は、オキサミド末端ハードセグメントを有するもの、例えば、米国特許第7,981,995号(Hays)及び同第7,371,464号(Sherman)で説明されているものである。
【0094】
(メタ)アクリレート感圧接着剤は概ね、約0℃以下のガラス転移温度を有し、100~80重量%のC3-C12アルキルエステル成分、例えばイソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びn-ブチルアクリレート等、並びに、0~20重量%の極性成分、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エチレン-ビニルアセテート単位、N-ビニルピロリドン、及びスチレンマクロマー等を含み得る。概ね、アクリル感圧接着剤は、0~20重量%のアクリル酸、及び100~80重量%のイソオクチルアクリレートを含む。アクリル感圧接着剤は、自己粘着性であってよい、又は粘着付与されていてよい。アクリル用の有用な粘着付与剤は、ロジンエステル、例えばHercules,Inc.から入手可能な「FORAL85」、芳香族樹脂、例えば「PICCOTEX LC-55WK」、脂肪族樹脂、例えばHercules,Inc.から入手可能な「PICCOTAC 95」、並びに、テルペン樹脂、例えばArizona Chemical Co.製の、「PICCOLYTE A-115」及び「ZONAREZ B-100」として入手可能なα-ピネン及びβ-ピネンである。水素添加ブチルゴム、顔料、及び硬化剤を含む他の材料を特別な目的のために添加し、接着剤を部分的に加硫することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、第1の基材と硬化済み又は硬化性光学コーティング層とを含む物品を、硬化性のコーティング可能な組成物を、第1の基材の第2の主表面上にコーティングし、任意選択的に光学コーティング層を乾燥及び/又は硬化させることにより直接作製することができる。他の実施形態では、光学コーティング層が硬化された後、このプロセスは、光学コーティング層の露出した第1の主表面に接着積層体を適用することによって更に延長される。接着積層体は、典型的には、剥離基材に積層された接着剤層を含み、この積層体の露出した接着剤表面は、硬化済み光学コーティング層の露出した第1の主表面に接触される。このプロセスにより、種類:剥離基材/接着剤/硬化済み光学コーティング層/第1の基材の積層構造が生成される。第1の基材をこの積層構造から取り外し、光学コーティング層の第1の主表面を露出させて、種類:硬化済み光学コーティング層/接着剤/剥離基材の積層構造を生成することができる。剥離基材を取り外して接着剤層を露出させることにより、デバイスに組み込むのに好適な物品が生成される、又は、1つの層又は複数の層を、硬化済み光学コーティング層の露出した第1の主表面に加えることにより、積層構造を改質することができる。多くの実施形態において、低屈折率層は、硬化済み光学コーティング層の露出表面上に形成される。この低屈折率層は、以下により詳細に記載される。他の実施形態では、第1の基材と、第1の基材上に配置された硬化済み又は硬化性光学コーティング層とを含む物品はまた、1つの層又は複数の多層を、硬化済み又は硬化性光学コーティング層の露出した第2の主表面に加えることにより更に改変することができる。
【0096】
本開示の物品はまた、低屈折率層を含むことができる。この低屈折率層は、上記の硬化済み層又は硬化性層に隣接し、かつ接触している。低屈折率層は第1の主表面と第2の主表面とを有し、低屈折率層の第1の主表面は、硬化済み光学コーティング層の第2の主表面と、低屈折率層の第1の主表面との間に境界面が形成されるように、硬化済み又は硬化性光学コーティング層の第2の主表面と接触している。典型的には、低屈折率層は1.55未満の屈折率を有する。
【0097】
物品が硬化済み光学コーティング層を含む実施形態では、低屈折率層は、硬化後に光学コーティング層の硬化表面に接触する。物品が硬化性光学コーティング層を含む実施形態では、低屈折率層は、硬化前に光学コーティング層の表面に接触する。
【0098】
いくつかの実施形態では、硬化済み又は硬化性光学コーティング層と低屈折率層との間の境界面は、構造化境界面であってよい。これは、境界面が滑らかかつ平坦な境界面ではないことを意味する。滑らかかつ平坦ではないということは、境界面が意図的なパターンを有することを指し、任意の表面に対して自然な通常の表面粗さを指すものではない。この境界面は、微細構造化されたパターン、又はより典型的にはナノ構造化されたパターンであってもよい。
【0099】
硬化済み又は硬化性光学コーティング層と低屈折率層との間の構造化境界面は、構造化ツールを硬化済み又は硬化性光学コーティング層の露出面に接触させることにより生成することができる。構造化パターンを露出面に付与するためのこのような構造化ツールは、当該技術分野において周知である。好適な構造化ツールの例としては、例えば構造化剥離ライナー、すなわち、構造化パターンがその表面上に存在する剥離ライナーなどの構造化フィルムツールが挙げられる。
【0100】
広範囲の構造化フィルムツール、例えば、構造化パターンが表面上に存在する剥離ライナー(しばしば微細構造化された剥離ライナーと呼ばれる)が好適である。典型的には、微細構造化された剥離ライナーは、エンボス加工によって作製される。これは、剥離ライナーが、圧力及び/又は熱の適用で構造化ツールと接触してエンボス加工された表面を形成する、エンボス加工可能な表面を有することを意味する。このエンボス加工された表面は、構造化された表面である。エンボス加工された表面上の構造は、ツール表面上の構造の反転であり、すなわち、ツール表面上の突出部は、エンボス加工された表面上の凹付きの部分を形成し、ツール表面上の凹付きの部分は、エンボス加工された表面の突出部を形成する。ナノ構造化された剥離ライナーは、同じ方法で作製することができる。
【0101】
広範囲の低屈折率層が、本開示の物品に使用するのに好適である。特に好適なのは、米国特許第8,012,567号(Gaidesら)に説明されているコリメートフィルム物品を作製するために使用される重合性樹脂である。
【0102】
重合性樹脂は、二官能性(メタ)アクリレートモノマー、二官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、及びこれらの混合物から選択される、第1の及び第2の重合性成分の組み合わせを含むのが好ましい。本明細書で使用するとき、「モノマー」又は「オリゴマー」は、ポリマーに転換できる任意の物質である。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物を指す。
【0103】
重合性組成物は、(メタ)アクリレート化ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリレート化エポキシオリゴマー、(メタ)アクリレート化ポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリレート化フェノールオリゴマー、(メタ)アクリレート化アクリルオリゴマー、及びこれらの混合物を含んでよい。
【0104】
一実施形態では、重合性樹脂の構成成分は、重合性樹脂が低粘度となるように選択される。低粘度重合性樹脂を提供することにより、製造速度を増加させることができる。本明細書で使用する場合、粘度は、実施例に記載の試験方法による、レオメーター法により測定した。重合性樹脂組成物の粘度は典型的には、25℃で50,000cps未満である。好ましくは、粘度は25℃で25,000cps未満であり、より好ましくは、25℃で15,000cps(例えば、25℃で12,000cps未満、11,000cps未満、又は10,000cps未満)である。重合性樹脂組成物は、高温で更により低い粘度を有する。例えば、重合性樹脂は、60℃で5000cps未満、4000cps未満、3000cps未満、2000cps未満、及び更に1000cps未満の粘度を有することができる。典型的には、粘度は60℃で少なくとも100cpsである。
【0105】
一実施形態では、微細構造化された(例えば、光コリメート)フィルムは、少なくとも2種の異なる(例えば、二官能性)重合性構成成分を含む重合性樹脂の反応生成物である。構成成分は、好ましくは(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、又は少なくとも1つのモノマーと少なくとも1つのオリゴマーとの混合物である。第1の構成成分及び第2の構成成分は典型的にはそれぞれ、少なくとも約20重量%の量(例えば、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、及び50重量%、及び記載したこのような値の間の任意の量)で重合性組成物中に存在する。これらの構成成分のうちのいずれか1つの量は、概ね、約70重量%を超えない。
【0106】
典型的には、第2の重合性成分に対する第1の重合性成分の比は、4:1~1:4の範囲である。いくつかの実施形態では、比は、3:1~1:3の範囲であり得るか、又は2:1~1:2の範囲であり得る。更に、これらの2つの構成成分の組み合わせは、典型的には、重合性樹脂組成物全体の約50重量%~約90重量%の範囲である。第1の重合性成分は、典型的には、60℃で少なくとも約5000cpsの粘度を有する。第2の重合性成分は、典型的には、第1の重合性成分より小さい粘度を有する。例えば、第2の重合性成分は、第1の重合性成分の25%、30%、35%、40%、45%以下、又は50%以下の粘度を有することができる。
【0107】
低粘度重合性組成物は、好ましくは実質的に溶媒を含まない。「実質的に溶媒を含まない」とは、1重量%未満~0.5重量%の(例えば、有機)溶媒を有する重合性組成物を指す。溶媒の濃度は、ガスクロマトグラフィーなどの既知の方法によって測定することができる。0.5重量%未満の溶媒濃度が好ましい。
【0108】
重合性モノマー及びオリゴマーの種類及び量はまた、特定の弾性率基準を得るためにも選択されるのが好ましい。一実施形態では、二官能性(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーが用いられ、オリゴマーのモノマーのホモポリマーは、ASTM D5026-01により測定すると、80°F(26.7℃)で1×108Pa未満の引張弾性率を有する。このようなモノマー又はオリゴマーは、80°F以上で少なくとも1×108Paの引張弾性率を有する、異なる二官能性(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーと組み合わされる。弾性率の差は、典型的には、80°Fで少なくとも5×107Paである。いくつかの実施形態では、高弾性率成分は、80°Fで、少なくとも2×108Pa、4×108Pa、6×108Pa、8×108Pa、又は少なくとも1×109Paの弾性率を有することができる。高弾性率成分は典型的には、80°Fで8×109Pa以下の引張弾性率を有する。
【0109】
硬化済み(例えば、透過性)フィルムの弾性率は、実施例で更に説明する方法によるナノインデンテーションにより特性決定することができる。
【0110】
あまりにも高い弾性率を有する重合性組成物は、製造中にツールから剥離しない傾向にあるが、あまりにも低い弾性率を有する組成物は、鋳型ツールからの剥離時に凝集的に破損する傾向にある。
【0111】
様々な種類及び量の重合性モノマー及びオリゴマーを使用して、記載した透過率、粘度、及び弾性率基準のいずれか1つ又は組み合わせを満たす組成物を提供することができる。
【0112】
一実施形態では、少なくとも約20重量%の(例えば、脂肪族)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;及び、少なくとも約20重量%のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーを含む重合性樹脂組成物が記載される。
【0113】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、少なくとも約20重量%の量(例えば、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、及び50重量%、及びこれらの間の任意の量)で重合性組成物中に存在することができる。典型的には、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの量は、約70重量%を超えない。
【0114】
同様に、ビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーは、重合性組成物中に少なくとも約20重量%の量(例えば、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、及び50重量%、及びこれらの間の任意の量)で存在することができる。典型的には、ビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーのモノマーの量は、約70重量%を超えない。
【0115】
典型的には、ビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーに対するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの比は、4:1~1:4の範囲である。いくつかの実施形態では、この比は3:1~1:2、又は1~1.4である。
【0116】
1つの例示的な(例えば、脂肪族)ウレタンジアクリレートは、商品名「Photomer 6010」で、Cognisから市販されている(60℃で5,900mPa.sの粘度、45%の伸長率、及び-7℃のTgを有すると報告されている)。また好適であり得る、低粘度を有する他のウレタンジアクリレートとしては、例えば、「Photomer 6217」及び「Photomer 6230」(共に、60℃で3,500mPa.sの粘度、それぞれ27%及び69%の伸長率、並びにそれぞれ、35℃及び2℃のTgを有すると報告されている);「Photomer 6891」(60℃で8,000mPa.sの粘度、60%の伸長率、及び28℃のTgを有すると報告されている);並びに、「Photomer 6893-20R」(60℃で2,500mPa.sの粘度、42%の伸長率、及び41℃のTgを有すると報告されている)が挙げられる。より高い(即ち、Photomer 6010のTgを上回る)を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いることで、60℃未満のTg(即ち、SR602のTg)でホモポリマーを有する第2の重合性モノマーとブレンドすることができると推測されている。他のウレタンジアクリレートが、Sartomer及びUCBから市販されている。
【0117】
1つの例示的なビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーが、商品名「SR602」でSartomerから市販されている(20℃で610cpsの粘度、及び2℃のTgを有すると報告されている)。
【0118】
別の実施形態では、少なくとも約40重量%のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーを含む重合性樹脂組成物が記載される。SR602等の、第1のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーを、商品名「SR601」でSartomerから市販されている(20℃で1080cpsの粘度、及び60℃のTgを有することが報告されている)もの等の第2のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーと化合する。第1のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーのホモポリマーは、第2のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーのホモポリマーのTgとは異なるTgを有する。第1のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーは、25℃未満(例えば20℃、15℃、10℃、又は更に0℃未満)のTgを有するが、第2のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーは25℃より高い(例えば30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、又は更に55℃)のTgを有する。第1の及び第2のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーのホモポリマーのTgの差は、典型的には少なくとも20℃、30℃、40℃、又は更に50℃である。
【0119】
第1の及び第2のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーは、ビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーの総量が典型的には、約90重量%を超えないならば、それぞれ、典型的には、重合性組成物中に、少なくとも約20重量%の量(例えば25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、及び50重量%、及びこれらの間の任意の量)で存在する。
【0120】
第2のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーに対する第1のビスフェノール-Aエトキシ化ジアクリレートモノマーの比は、3:1~1:3の範囲で変動し得る。いくつかの実施形態では、この比率は、約2~1である。
【0121】
重合性組成物で用いられ得る他の二官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0122】
重合性樹脂は任意選択的に、更に好ましくは、3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種の架橋剤を更に含む。架橋剤が存在する場合、架橋剤は、重合性組成物中に少なくとも約2重量%の量で存在するのが好ましい。典型的には、架橋剤の量は、約25重量%以下である。架橋剤は、約5重量%~約15重量%の範囲の任意の量で存在し得る。
【0123】
好適な架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、及びジ-トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。架橋剤の任意の1つ又は組み合わせが用いられてもよい。メタクリレート基はアクリレート基よりも反応性が低い傾向があるため、架橋剤は、メタクリレート官能性を非含有であるのが好ましい。
【0124】
様々な架橋剤が市販されている。例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートが、それぞれ、商品名「SR444」及び「SR399LV」でSartomer Company,Exton,PAから市販されている。PETAは、商品名「Viscoat #300」で大阪有機化学工業株式会社(大阪、日本)から、商品名「Aronix M-305」で東亞合成株式会社(東京、日本)から、及び、商品名「Etermer 235」でEternal Chemical Co.,Ltd.,Kaohsiung,Taiwanからも入手可能である。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(ジ-TMPTA)は、商品名「SR351」及び「SR355」でSartomer Companyから市販されている。TMPTAは、商品名「Aronix M-309」で東亞合成株式会社からもまた入手可能である。更に、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート及びエトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレートはそれぞれ、商品名「SR454」及び「SR494」でSartomerから市販されている。
【0125】
重合性組成物は任意選択的に、例えば、450g/モル以下の数平均分子量を有する、(例えば単官能性)反応性希釈剤を含んでよい。存在する場合、反応性希釈剤の量は、1重量%~約10重量%の範囲であり得る。好適な反応性希釈剤としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、プロポキシル化アリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、エトキシ化ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、アルコキシルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及びエトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0126】
放射線(例えば紫外線)硬化性組成物は通常、少なくとも1種の光開始剤を含む。1種の光開始剤、又は光開始剤の組み合わせは、約0.1~約10重量%の濃度で使用することができる。より好ましくは、光開始剤又はその組み合わせは、約0.2~約3重量%の濃度で使用される。
【0127】
概ね、光開始剤は、少なくとも部分的に可溶性であり(例えば、樹脂の加工温度で)、重合後に実質的に無色である。紫外線源への曝露後に光開始剤が実質的に無色となるのであれば、光開始剤は有色(例えば黄色)であってよい。
【0128】
好適な光開始剤としては、モノアシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドが挙げられる。市販のモノ又はビスアシルホスフィンオキシド光開始剤としては、商品名「Lucirin TPO」でBASF(Charlotte,NC)から市販されている、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;商品名「Lucirin TPO-L」でBASFからまた市販されている、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート;及び、商品名「Irgacure 819」でCiba Specialty Chemicalsから市販されている、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドが挙げられる。他の好適な光開始剤としては、商品名「Darocur 1173」でCiba Specialty Chemicalsから市販されている、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、並びに、商品名「Darocur 4265」、「Irgacure 651」、「Irgacure 1800」、「Irgacure 369」、「Irgacure 1700」、及び「Irgacure 907」でCiba Specialty Chemicalsから市販されている、他の光開始剤が挙げられる。
【0129】
低屈折率層は、任意の好適な厚さであってよい。概ね、光学コーティング層のような低屈折率層は比較的薄いが、光学コーティング層よりも厚くてもよい。典型的には、低屈折率コーティングは、2~10マイクロメートル、又は更に3~7マイクロメートルの厚さを有する。
【0130】
光学コーティング層及び低屈折率層の両方が概ね光硬化性層であるため、これらの層を含む物品を作製するために、様々な配列を使用することができる。例えば、硬化性のコーティング可能な組成物を、第1の基材又は第1の基材上に配置された接着剤層上にコーティングして、光学コーティング層を形成することができる。次いで、光学コーティング層を必要に応じて任意選択的に乾燥させ、硬化させることができる。この硬化済み光学コーティング層に重合性樹脂材料を塗布して低屈折率層を形成することができ、重合性樹脂材料を硬化させることができる。代替的に、硬化性のコーティング可能な組成物を、第1の基材又は第1の基材上に配置された接着剤層上にコーティングして、光学コーティング層を形成することができる。次いで、所望される場合、光学コーティング層を任意選択的に乾燥させることができる。この硬化性光学コーティング層に、重合性樹脂材料を適用して低屈折率層を形成することができ、硬化性光学コーティング層及び重合性樹脂材料を同時に硬化させることができる。加えて、構造化フィルムツールは、硬化前又は重合性樹脂材料の適用前に、光学コーティング層に接触させることができる。
【0131】
本開示の物品は、追加の層を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、第2の基材は、低屈折率層の第2の主表面に隣接していてもよい。第2の基材は、第1の基材と同じでもよく、異なっていてもよい。多くの実施形態では、第2の基材は、剥離基材を含む。このようにして、第2の基材を取り外し、デバイスにおける本開示の物品の使用を容易にすることができる。多くの実施形態において、第2の基材は、その上にコーティングされた接着剤層を有することができ、この接着剤層は、低屈折率層の第2の主表面と接触している。このようにして、第2の基材を取り外して接着剤層を露出させることができ、それ故、本開示の多層光学物品をデバイスに組み込むことを容易にすることができる。
【0132】
図1は、本開示の多層光学物品の一実施形態を示す。
図1は、物品100(層140、110、120、130、及び150を有する多層光学物品)を示す。層140は、層110に接触している基材である。物品100において、基材140は剥離ライナー等の剥離基材であり、層110は光学接着剤層である。層120は高屈折率光学層であり、層130は低屈折率層である。
図1に示す実施形態では、層120と130との間の境界面は構造化境界面であるが、必ずしもそうである必要はない。層150は層130と接触しており、単一層又は多層を含んでもよい。物品100において、層150は剥離ライナー等の剥離基材であってよい、又は、層150は、層150の接着剤表面が層130と接触している接着剤層であってよい、又は、層150は、層130と接触している接着剤層と、接着剤層と接触している剥離基材との接着積層体であってよい。
【0133】
また、本明細書では、上述の多層光学物品を含むデバイスも開示される。デバイスの例としては、OLEDデバイスが挙げられる。このようなデバイスの例を
図2に示す。
図2は、基材280と、基材280上に配置されたデバイス260とを含む物品を示す。層270はパッシベーション層である。上記の
図1と同様に、接着剤層210、高屈折率光学層220、及び低屈折率層230は、デバイス260及び層270と接触している。
図1と同様に、層220と層230との間の境界面は、構造化境界面である。
図2は、単一層又は多層であることができ、有機層及び無機層の両方を含み得、かつ接着剤層、光学層等を含み得る光学層290もまた含む。層210(光学接着剤)、220(高屈折率光学層)、及び230(低屈折率層)は、
図1で上述したものと同様である。
【0134】
光学物品の製造方法もまた、本明細書で開示される。これらの光学物品は、OLEDデバイス等のデバイスを作製するために使用することができる多層光学物品である。本方法は、第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材を準備することと、上述の硬化性のコーティング可能な組成物を準備することと、硬化性のコーティング可能な組成物を第1の基材の第2の主表面の少なくとも一部の上にコーティングして、第1の主表面及び第2の主表面を有するコーティングであって、コーティングの第1の主表面は第1の基材の第2の主表面に隣接している、コーティングを形成することと、任意選択的にコーティングを乾燥させることと、光学コーティング層を硬化することと、を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、光学コーティング層の硬化後、接着積層体物品を光学コーティング層の露出表面に接触させて、積層構造を生成することができる。接着積層体物品は、接着剤層及び剥離基材を含む。第1の基材は積層構造から取り外し、一般的な構造:剥離基材/接着剤層/硬化済み光学コーティング層を有する物品を生成することができる。第1の基材は、構造化された剥離ライナーを含み、光学コーティング層の露出表面はこのようにして、構造化された表面となることができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、光学コーティング層の硬化前に、光学コーティング層の露出表面を構造化されたツールと接触させて、構造化された表面を生成する。構造化された表面は、微細構造化された表面又はナノ構造化された表面であり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、硬化性低屈折率材料は、コーティング済み光学コーティング層の表面上にコーティングされる。この低屈折率コーティングは、コーティング済み光学コーティング層の硬化前、又はコーティング済み光学コーティング層の硬化後のいずれかで、コーティング済み光学コーティング層に接触させることができる。また、硬化性低屈折率材料がコーティングされた光学コーティング層は、上記のような構造化された表面を有していてもよい。硬化性低屈折率材料は硬化される。コーティング済み光学コーティング層が未硬化である場合、低屈折率材料と共に同時に硬化させることができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、第2の基材は、低屈折率層に接触する。この基材は剥離ライナー等の剥離基材であってもよい。第2の基材は、硬化前に低屈折率に接触させることができる。他の実施形態では、第2の基材は、接着剤層と剥離基材とを含む接着性積層体物品を含む。接着剤層を低屈折率層に接触させて、積層構造を生成する。剥離基材は、この積層体構造から取り外されて、接着剤層を露出させることができる。
【0139】
本開示は、以下の実施形態を含む。
【0140】
特に、実施形態は硬化性のコーティング可能な組成物である。実施形態1は、硬化性のコーティング可能な組成物であって、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、硬化性反応混合物であって、硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む、硬化性のコーティング可能な組成物を含む。
【0141】
実施形態2は、硬化性のコーティング可能な組成物を基材上にコーティング及び硬化させて、光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、5%以下のヘイズ、及び少なくとも1.78の屈折率を有するコーティングを作製することができ、コーティングは10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができる、実施形態1に記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0142】
実施形態3は、1.6以上の高屈折率である第1の(メタ)アクリレートモノマーが、式Iの化合物:
【化7】
[式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、tは1~4の整数であり、R2は水素又はメチルである。]
を含む、実施形態1又は2に記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0143】
実施形態4は、化合物が、-CH2-Arの型の置換若しくは非置換芳香族基、又は、-X-Arの型のへテロ原子結合芳香族基[式中、XはS又はOである]であって、各Arは独立して、置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である、少なくとも1つの芳香族置換基R1を含む、実施形態3に記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0144】
実施形態5は、少なくとも1つのR1基が、
【化8】
[式中、各
*は、式Iの芳香環への結合点を示し、Arは置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である。]
を含む、実施形態3又は4に記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0145】
実施形態6は、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又はウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0146】
実施形態7は、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、式IIの化合物:
H2C=CR2-(CO)-O-(L-O)n-A-(O-L)n-O-(CO)-R2C=CH2
式II
[式中、R2は水素又はメチルであり、(CO)はカルボニル基C=Oであり、Aは芳香族又は縮合芳香族基を含む二価の基であり、基(O-L)nは、繰り返しの-O-L-単位を含むポリオキシアルキレン基を表し、式中、Lは二価のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。]
を含む、実施形態6に記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0147】
実施形態8は、Aが、ナフチル基又はフルオレニル基を含む縮合芳香族基であり、Lがエチレン基又はプロピレン基を含み、nが10又は20である、実施形態7に記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0148】
実施形態9は、少なくとも1種の開始剤が少なくとも1種の光開始剤を含む、実施形態1~8のいずれかに記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0149】
実施形態10は、高屈折率を有する無機ナノ粒子が、ジルコニアナノ粒子又はチタニアナノ粒子から選択される金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0150】
実施形態11は、無機ナノ粒子が、硬化性のコーティング可能な組成物の全固体重量を基準にして、コーティング可能な組成物の少なくとも64重量%を構成する、実施形態1~10のいずれかに記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0151】
実施形態12は、硬化性のコーティング可能な組成物が少なくとも1種の溶媒を更に含む、実施形態1~11のいずれかに記載の硬化性のコーティング可能な組成物である。
【0152】
物品もまた開示される。実施形態13は、第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材と、第1の基材の第2の主表面の少なくとも一部に隣接した硬化済み又は硬化可能な光学コーティング層であって、硬化済み又は硬化性光学コーティング層が、コーティングされており、かつ任意選択的に硬化された、硬化性のコーティング可能な組成物から作製され、硬化性のコーティング可能な組成物が、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、硬化性反応混合物であって、硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む、硬化性反応混合物と、を含む、硬化済み又は硬化性光学コーティング層と、を含む硬化性反応混合物を含む、物品を含む。
【0153】
実施形態14は、硬化性のコーティング可能な組成物を基材上にコーティング及び硬化させて、光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、5%以下のヘイズ、及び少なくとも1.78の屈折率を有するコーティングを作製することができ、コーティングは10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができる、実施形態13に記載の物品である。
【0154】
実施形態15は、1.6以上の高屈折率である第1の(メタ)アクリレートモノマーが、式Iの化合物:
【化9】
[式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、tは1~4の整数であり、R2は水素又はメチルである。]
を含む、実施形態13又は14に記載の物品である。
【0155】
実施形態16は、化合物が、-CH2-Arの型の置換若しくは非置換芳香族基、又は、-X-Arの型のへテロ原子結合芳香族基[式中、XはS又はOである]であって、各Arは独立して、置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である、少なくとも1つの芳香族置換基R1を含む、実施形態15に記載の物品である。
【0156】
実施形態17は、少なくとも1つのR1基が、
【化10】
[式中、各
*は、式Iの芳香環への結合点を示し、Arは置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である。]
を含む、実施形態15又は16に記載の物品である。
【0157】
実施形態18は、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又はウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含む、実施形態13~17のいずれかに記載の物品である。
【0158】
実施形態19は、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、式IIの化合物:
H2C=CR2-(CO)-O-(L-O)n-A-(O-L)n-O-(CO)-R2C=CH2
式II
[式中、R2は水素又はメチルであり、(CO)はカルボニル基C=Oであり、Aは芳香族又は縮合芳香族基を含む二価の基であり、基(O-L)nは、繰り返しの-O-L-単位を含むポリオキシアルキレン基を表し、式中、Lは二価のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。]
を含む、実施形態18に記載の物品である。
【0159】
実施形態20は、Aが、ナフチル基又はフルオレニル基を含む縮合芳香族基であり、Lがエチレン基又はプロピレン基を含み、nが10又は20である、実施形態19に記載の物品である。
【0160】
実施形態21は、少なくとも1種の開始剤が少なくとも1種の光開始剤を含む、実施形態13~20のいずれかに記載の物品である。
【0161】
実施形態22は、高屈折率を有する無機ナノ粒子が、ジルコニアナノ粒子又はチタニアナノ粒子から選択される金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態13~21のいずれかに記載の物品である。
【0162】
実施形態23は、無機ナノ粒子が、硬化性のコーティング可能な組成物の全固体重量を基準にして、コーティング可能な組成物の少なくとも64重量%を構成する、実施形態13~22のいずれかに記載の物品である。
【0163】
実施形態24は、硬化性のコーティング可能な組成物が少なくとも1種の溶媒を更に含む、実施形態13~23のいずれかに記載の物品である。
【0164】
実施形態25は、第1の基材の第2の主表面と硬化済み又は硬化性光学コーティング層との間に接着剤層を更に含む、実施形態13~24のいずれかに記載の物品である。
【0165】
実施形態26は、低屈折率層であって、境界面が硬化済み又は硬化性光学コーティング層と低屈折率層との間に形成されるように、硬化済み又は硬化性光学コーティング層と接触している、低屈折率層を更に含む、実施形態13~24のいずれかに記載の物品である。
【0166】
実施形態27は、硬化済み又は硬化性光学コーティング層と低屈折率層との間の境界面が、ナノ構造化された表面境界面を含む、実施形態26に記載の物品である。
【0167】
実施形態28は、低屈折率コーティング層に隣接した、取り外し可能な基材を更に含む、実施形態26又は27に記載の物品である。
【0168】
実施形態29は、光学コーティング層が、少なくとも1.78の屈折率を有する硬化済み光学コーティング層を含む、実施形態26又は27に記載の物品である。
【0169】
多層光学物品を含むデバイスもまた開示される。実施形態30は、多層光学物品を含むデバイスであって、デバイスが、デバイス表面であって、デバイス表面に多層光学物品が取り付けられたデバイス表面を含み、多層光学物品が、デバイス表面と接触した接着剤層と、接着剤層に接触している硬化済み光学コーティング層であって、硬化済み光学コーティング層が、コーティング済みかつ硬化済みの硬化性のコーティング可能な組成物から作製され、硬化性のコーティング可能な組成物が、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、硬化性反応混合物であって、硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む、硬化性反応混合物と、を含み、硬化済み光学コーティング層は光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、及び5%以下のヘイズを有し、少なくとも1.78の屈折率を有し、10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができる、デバイスを含む。
【0170】
実施形態31は、1.6以上の高屈折率である第1の(メタ)アクリレートモノマーが、式Iの化合物:
【化11】
[式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、tは1~4の整数であり、R2は水素又はメチルである。]
を含む、実施形態30に記載のデバイスである。
【0171】
実施形態32は、化合物が、-CH2-Arの型の置換若しくは非置換芳香族基、又は、-X-Arの型のへテロ原子結合芳香族基[式中、XはS又はOである]であって、各Arは独立して、置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である、少なくとも1つの芳香族置換基R1を含む、実施形態31に記載のデバイスである。
【0172】
実施形態33は、少なくとも1つのR1基が、
【化12】
[式中、各
*は、式Iの芳香環への結合点を示し、Arは置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である。]
を含む、実施形態31又は32に記載のデバイスである。
【0173】
実施形態34は、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又はウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含む、実施形態30~33のいずれかに記載のデバイスである。
【0174】
実施形態35は、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、式IIの化合物:
H2C=CR2-(CO)-O-(L-O)n-A-(O-L)n-O-(CO)-R2C=CH2
式II
[式中、R2は水素又はメチルであり、(CO)はカルボニル基C=Oであり、Aは芳香族又は縮合芳香族基を含む二価の基であり、基(O-L)nは、繰り返しの-O-L-単位を含むポリオキシアルキレン基を表し、式中、Lは二価のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。]
を含む、実施形態34に記載のデバイスである。
【0175】
実施形態36は、Aが、ナフチル基又はフルオレニル基を含む縮合芳香族基であり、Lがエチレン基又はプロピレン基を含み、nが10又は20である、実施形態35に記載のデバイスである。
【0176】
実施形態37は、少なくとも1種の開始剤が少なくとも1種の光開始剤を含む、実施形態30~36のいずれかに記載のデバイスである。
【0177】
実施形態38は、高屈折率を有する無機ナノ粒子が、ジルコニアナノ粒子又はチタニアナノ粒子から選択される金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態30~37のいずれかに記載のデバイスである。
【0178】
実施形態39は、無機ナノ粒子が、硬化性のコーティング可能な組成物の全固体重量を基準にして、コーティング可能な組成物の少なくとも64重量%を構成する、実施形態30~38のいずれかに記載のデバイスである。
【0179】
実施形態40は、硬化性のコーティング可能な組成物が少なくとも1種の溶媒を更に含む、実施形態30~39のいずれかに記載のデバイスである。
【0180】
実施形態41は、低屈折率層であって、境界面が硬化済み光学コーティング層と低屈折率層との間に形成されるように、硬化済み光学コーティング層と接触している、低屈折率層を更に含む、実施形態30~40のいずれかに記載のデバイスである。
【0181】
実施形態42は、硬化済み光学コーティング層と低屈折率層との間の境界面が、ナノ構造化された境界面を含む、実施形態41に記載のデバイスである。
【0182】
実施形態43は、低屈折率層と接触した少なくとも1つの追加の層を更に含み、少なくとも1つの追加の層が接着剤層、有機層、又は無機層を含む、実施形態41に記載のデバイスである。
【0183】
実施形態44は、デバイス表面がOLEDデバイスの表面を含む、実施形態30~43のいずれかに記載のデバイスである。
【0184】
また、光学物品を作製する方法も開示する。実施形態45は、第1の主表面と第2の主表面とを有する第1の基材を準備することと、高屈折率を有する表面処理された無機ナノ粒子であって、表面処理された無機ナノ粒子はシラン表面処理剤を含む表面処理剤により処理されている、表面処理された無機ナノ粒子と、硬化性反応混合物であって、硬化性反応混合物は、屈折率が1.6以上の高屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第1の(メタ)アクリレートモノマーと、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の開始剤と、を含む、硬化性反応混合物と、を含む、硬化性のコーティング可能な組成物を準備することと、第1の基材の第2の主表面の少なくとも一部の上に硬化性のコーティング可能な組成物をコーティングして、第1の基材の第2の主表面に隣接した光学コーティング層を形成することと、光学コーティング層を硬化することと、を含む、光学物品の作製方法を含む。
【0185】
実施形態46は、硬化性のコーティング可能な組成物を基材上にコーティング及び硬化させて、光学的に透明であり、少なくとも88%の可視光透過率、5%以下のヘイズ、及び少なくとも1.78の屈折率を有するコーティングを作製することができ、コーティングは10ミリメートルのマンドレル可撓性試験を合格することができる、実施形態45に記載の方法である。
【0186】
実施形態47は、1.6以上の高屈折率である第1の(メタ)アクリレートモノマーが、式Iの化合物:
【化13】
[式中、少なくとも1つのR1は芳香族置換基を含み、tは1~4の整数であり、R2は水素又はメチルである。]
を含む、実施形態45又は46に記載の方法である。
【0187】
実施形態48は、化合物が、-CH2-Arの型の置換若しくは非置換芳香族基、又は、-X-Arの型のへテロ原子結合芳香族基[式中、XはS又はOである]であって、各Arは独立して、置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である、少なくとも1つの芳香族置換基R1を含む、実施形態47に記載の方法である。
【0188】
実施形態49は、少なくとも1つのR1基が、
【化14】
[式中、各
*は、式Iの芳香環への結合点を示し、Arは置換若しくは非置換フェニル基、縮合芳香族基、又は2つ以上のアルキル基結合フェニル若しくは置換フェニル基である。]
を含む、実施形態47又は48に記載の方法である。
【0189】
実施形態50は、屈折率が1.6未満の低屈折率(メタ)アクリレートモノマーを含む第2の(メタ)アクリレートモノマーが、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマー、又はウレタン(メタ)アクリレートモノマーを含む、実施形態45~49のいずれかに記載の方法である。
【0190】
実施形態51は、少なくとも1つのアルキレンオキシド連結基を有する(メタ)アクリレートモノマーが、式IIの化合物:
H2C=CR2-(CO)-O-(L-O)n-A-(O-L)n-O-(CO)-R2C=CH2
式II
[式中、R2は水素又はメチルであり、(CO)はカルボニル基C=Oであり、Aは芳香族又は縮合芳香族基を含む二価の基であり、基(O-L)nは、繰り返しの-O-L-単位を含むポリオキシアルキレン基を表し、式中、Lは二価のアルキレン基であり、nは10以上の整数である。]
を含む、実施形態50に記載の方法である。
【0191】
実施形態52は、Aが、ナフチル基又はフルオレニル基を含む縮合芳香族基であり、Lがエチレン基又はプロピレン基を含み、nが10又は20である、実施形態51に記載の方法である。
【0192】
実施形態53は、少なくとも1種の開始剤が少なくとも1種の光開始剤を含む、実施形態45~52のいずれかに記載の方法である。
【0193】
実施形態54は、高屈折率を有する無機ナノ粒子が、ジルコニアナノ粒子又はチタニアナノ粒子から選択される金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態45~53のいずれかに記載の方法である。
【0194】
実施形態55は、無機ナノ粒子が、硬化性のコーティング可能な組成物の全固体重量を基準にして、コーティング可能な組成物の少なくとも64重量%を構成する、実施形態45~54のいずれかに記載の方法である。
【0195】
実施形態56は、硬化性のコーティング可能な組成物が少なくとも1種の溶媒を更に含む、実施形態45~55のいずれかに記載の方法である。
【0196】
実施形態57は、光学コーティング層の硬化前に、ナノ構造化されたツールをコーティングの第2の主表面に接触させて、光学コーティング層の第2の主表面にナノ構造を付与することを更に含む、実施形態45~56のいずれかに記載の方法である。
【0197】
実施形態58は、光学コーティング層の硬化前、又は光学コーティングの硬化後のいずれかに、光学コーティング層上に硬化性低屈折率層を接触させることと、硬化性低屈折率層を硬化させることと、を更に含む、実施形態45~56のいずれかに記載の方法である。
【0198】
実施形態59は、接着剤層と剥離基材とを含む接着積層体物品を、硬化済み低屈折率層にコーティングすることと、第1の基材を取り外すことと、を更に含む、実施形態58に記載の方法である。
【0199】
実施形態60は、接着剤層と剥離基材とを含む接着積層体物品を、硬化済み光学コーティング層に適用することと、第1の基材を取り外すことと、を更に含む、実施形態45~56のいずれかに記載の方法である。
【実施例】
【0200】
可撓性光学コーティングは、(メタ)アクリレートモノマー及びナノ粒子から作製した。これらの実施例は、単に例示的な目的のものであり、添付の特許請求の範囲の限定を意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、特に断りのない限り、重量に基づくものである。使用される溶媒及び他の試薬は、特に指定しない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company(St.Louis,Missouri)から得た。
【表1】
【0201】
試験方法:
屈折率
光学コーティングの屈折率を、Metricon MODEL 2010プリズムカプラー(Metricon Corporation Inc.Pennington,NJ)を使用して、632.8nmにて測定した。測定する光学コーティングを、0.1μmオーダーの空隙を残しながら、ルチルプリズムの基部と接触させた。レーザーからの光ビームがプリズムに入射し、プリズムの基部に当たった。光は、プリズムの基部で光検出器に向けて完全に反射した。全反射は、空隙中でエバネッセント場を残したのみであった。これらのエバネッセント場を通して、プリズムからの光波が導波管内に向けて結合した。プリズム、サンプル、及び光検出器は、対応してレーザビームの入射角を変更することができるように、回転テーブル上に取り付けられている。以下の位相整合条件が満たされた場合に、結合は最も強かった。
βm=Konpsin(θm)
式中、βmは伝搬定数であり、Ko=ω/c、npはプリズム屈折率であり、mは結合角である。
【0202】
特定の入射角において、導波モードの励起に対応して、急な反射率の低下がスペクトルで発生した。これは、ダークモード線スペクトルとして知られており、傾斜は「ダーク」m線として知られている。βmにおいて、光は導波管に向けて結合され、プリズム基部にて反射光が存在しないようになり、同時に、ダークモード線スペクトルを形成する。βmの位置から、モードの効果的なインデックス、導波管の厚さ、及び、導波管の屈折率nを測定することができた。
【0203】
透過率、ヘイズ、及び透明度
Haze-Gard Plusモデル4725(BYK Gardner,Columbia,MD)を使用して、透過率、ヘイズ、及び透明度を測定した。全ての測定を3回行い、平均を報告した。透過率及びヘイズは、コーティング及び硬化されたサンプルが光源を向くヘイズポート上に、基材を配置することにより測定した。透明度測定に関しては、コーティング済みかつ硬化済み材料を透明度ポート上に配置して、測定した。透過性プラスチックのヘイズ及び視感透過率に関しては、ASTM D 1003-13試験法を用いた。透過率(%)、ヘイズ(%)、及び透明度(%)の値を記録した。
【0204】
可撓性-屈曲試験
Elcometer 1506柱状(cylindrical)マンドレル屈曲試験器(Elcometer Inc.Rochester Hills,MI)を使用して、コーティングの可撓性を評価した。2種類の屈曲試験:引張及び圧縮を実施した。圧縮では、硬化済みコーティングが屈曲中にロッドのほうを向き、引張屈曲では、コーティングがロッドから逸れる。試験ロッドの直径は2mm~30mmの範囲であった。試験には、約2インチ幅及び約5インチ長のコーティング済みフィルムのストリップを使用した。自由端を位置でクランプし、屈曲レバーをロッドの周りで持ち上げた/ロッドの周りに巻きつけた。合計20回の屈曲の後、屈曲領域で目視可能な亀裂を確認した。通過した最小ロッド半径(mm)(目視できない亀裂)を報告した。
【0205】
分光光度色測定
BYK-Gardner USAから入手可能なSpectro Guide Sphere Gloss #6834を用いて、色測定を行った。機器は以下のように較正した:
1. 測定ボタンを押して、分光ガイドのスイッチを入れる。
2. トグルを右に倒して「オプション」にし、下に倒して「較正」にし、再び右に倒して「chk green」オプションを選択する(測定ボタンで選択)。
3. 較正のための緑色の基準に分光ガイドを配置し、測定ボタンを押す。較正が正しく行われると、「較正完了」というメッセージが表示され、測定を行うことができるようになる。
【0206】
黒色の生地に、コーティング側面を上にして配置した2インチ×2インチのサンプルで、測定を行った。サンプル上で「開口部切断」のレシピで、分光光度計をL、a*、b*に測定した。測定ボタンを押し、b*の読み取り値を結果表に記録した。
【0207】
チタニア表面改質
48.76ポンドのN1(10nmのチタニア)を、ライナーを用いて、2個の5ガロンのバケツに移した。バケツ1は26.41ポンドのN1を有し、バケツ2は22.35gのN1を有した。Amberlyst A23(OH)イオン交換樹脂(Dow Chemical Company)を各バケツに、内容物の5重量%(それぞれ1.3ポンド及び1.12ポンド)添加した。両溶液を20分間撹拌し、この時点で、溶液のpHは、pH紙により測定すると、2.5からおよそ4に上昇した。処理した溶液をメッシュバッグで濾過し、重量が46.05ポンドの最終濾液を得た。溶液を20ガロンのケトルに移し、撹拌を始めた。溶液固体は、測定すると15%であった。74ポンドの1-メトキシ-2-プロパノールを、ケトルの濾液に添加した。2つの改質剤(S1及びS2)を、それぞれおよそ4:1の比で、固体重量で濾液の24.34%でケトルに連続して添加した。改質剤の添加後、ケトルの内容物を20分間撹拌した。ケトルのジャケット温度を82℃に設定し、およそ1時間後に、バッチ温度が79℃となった。ケトル内の材料をそのままにして、一晩(約18時間)反応させた。ケトルへの熱源を、約18時間の反応後に停止させ、室温まで冷却した。ケトルの内容物を溶媒除去し、最終的に0.5%未満の湿度を達成した。これは、1-メトキシ-2-プロパノールを数回ケトルに添加し、最終的に、メチル-イソブチルケトン及びメチルエチルケトンを添加することにより行った。ケトルの最終溶液の固体は、39.29%であった。この溶液を1ミクロンの濾紙で濾過し、溶液の重量を測ると14.51ポンドであった。これにより、処理済みN1ナノ粒子溶液を作製した。
【0208】
埋め戻し配合物
各種モノマーを、表1に示すに示すとおりにペアリングした。
【表2】
【0209】
混合配合例E1~E4
各配合物の重量は、目標配合物固体が41重量%含まれて100gであった。配合物は、処理済みN1ナノ粒子溶液及び会合した樹脂混合物を含む。混合物はまた、樹脂混合物の2.5重量%の担持量で、1:1の比で二重光開始剤も含有する。
【0210】
30%の樹脂混合物を含む、39.29%固体での70%の処理済みN1ナノ粒子溶液
それぞれ150mLの褐色ボトルに、以下を添加した。
i) それぞれ約0.15gのPH1及びPH2
ii) それぞれ約7.23gの、メチル-イソブチルケトン(MIBK)及びメチルエチルケトン(MEK)
iii) 約12.3gの樹脂混合物(表1に記載)
iv) 約73.2gの処理済みN1ナノ粒子溶液
【0211】
36%の樹脂混合物を含む、39.29%固体での64%の処理済みN1ナノ粒子溶液
それぞれ150mLの褐色ボトルに、以下を添加した。
i) それぞれ約0.16gのPH1及びPH2
ii) それぞれ約8.75gのMIBK及びMEK
iii) 約14.90gの樹脂混合物(表1に記載)
iv) 約67.25gの処理済みN1ナノ粒子溶液
【0212】
単一層実施例E1~E4、及びC1
スロットダイを使用して、溶液をフィルム1のプライマー処理されていない側面にコーティングした。1495mJ/cm2の用量で、Fusion HバルブUVAチャンバを通過させることでコーティングを硬化させた。コーティングのおよその厚さは、2.5ミクロンであった。ADH1をフィルム2の処理された側面に積層し、この積層体の開口側の面における接着剤の側面を、フィルム1のコーティング済みの側面に積層した。次に、フィルム1を取り外し、高屈折率コーティング表面を露出させた。
【0213】
各実施例に関して、上述した試験法を使用して、透過率、ヘイズ、透明度、屈折率、及びコーティング可撓性を測定し、表2に示す。注:屈折率測定は、フィルム1をコーティングしたサンプルで実施した。
【表3】
【0214】
二重層実施例(E5~E8)
低屈折率層で平坦化した高屈折率構造化層を用いて、実施例を行った。これらの二重層実施例の特性を、環境条件設定後に評価した。
【0215】
E6、E7、及びE8での溶液の配合物の重量を測ると、目標配合物固体41%を含んで1200グラムであった。E5の配合物の重量を測定すると、目標配合物固体41%を含んで500グラムであった。固体は、処理済みN1ナノ粒子溶液及び会合した樹脂混合物を含む。混合物はまた、樹脂混合物の2.5重量%の担持量で、1:1の比で二重光開始剤も含有する。E5の配合物は、1.5%の光開始剤の担持量を有した。
【0216】
それぞれ1.5Lのプラスチックボトルに、以下を添加した。
【0217】
配合物
30%の樹脂混合物(1200グラム)を含む、39.29%固体での70%の処理済みN1ナノ粒子溶液
i) それぞれ約1.86gのPH1及びPH2
ii) それぞれ約92.55gのMIBK及びMEK
iii) 約147.95gの樹脂混合物(表1に記載)
iv) 約858.27gの処理済みN1ナノ粒子溶液
【0218】
36%の樹脂混合物(1200グラム)を含む、39.29%固体での64%の処理済みN1ナノ粒子溶液
i) それぞれ約1.86gのPH1及びPH2
ii) それぞれ約92.55gのMIBK及びMEK
iii) 約147.95gの樹脂混合物(表1に記載)
iv) 約858.27gの処理済みN1ナノ粒子溶液
【0219】
36%の樹脂混合物(500グラム)を含む、39.29%固体での64%の処理済みN1ナノ粒子溶液
i) それぞれ約1.11gのPH3(1.5%)
ii) それぞれ約45.50gのMIBK及びMEK
iii) 約74.23gの樹脂混合物(表1に記載)
iv) 約327.20gの処理済みN1ナノ粒子溶液
【0220】
スロットダイを使用して、各溶液を、フィルム1のプライマー処理されていない側面にコーティングした。ピッチが500nm~600nmの範囲であり、高さが300nmの構造化フィルムツールを、コーティングの上に積層した。(米国特許第8,659,221号に記載の構造化フィルムツール。ツールAは、500nm~600nmとなるように選択された、1:1の三角形ピッチの頂点を有する。このツールを使用して、PET系構造化フィルムツールを作製した。)1495mJ/cm2の用量で、Fusion HバルブUVチャンバを通過させることでコーティングを硬化させた。コーティングのおよその厚さは、2.5ミクロンであった。構造化フィルムツールを取り外した。スロットダイを使用してコーティング1を適用し、構造化された表面を平坦化した。1495mJ/cm2の用量で、Fusion HバルブUVチャンバを通過させることでこのコーティングを硬化させた。コーティングのおよその厚さは5ミクロンであった。ADH1をフィルム2の処理された面に積層し、この積層体の開口側の面における接着剤の側面を、フィルム1のコーティング済みの側面(コーティング1)に積層した。次に、フィルム1を取り外し、高屈折率コーティング表面を露出させた。
【0221】
実施例の構造体を1週間、湿度90%/温度65C(劣化(aging:エージング))のチャンバに通した。
【0222】
以下の測定を、1週間の劣化の前(0)及び後(1)に実施した:
各実施例に関して、上述の試験法を用いて透過率、ヘイズ、透明度、色、及びコーティング可撓性を測定し、表3に示す。
【表4】