(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】微粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 18/06 20060101AFI20220523BHJP
B02C 18/18 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
B02C18/06 Z
B02C18/18 Z
(21)【出願番号】P 2018021314
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591119624
【氏名又は名称】株式会社御池鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 由和
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀匡
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-279621(JP,A)
【文献】特開2010-125419(JP,A)
【文献】実開昭57-188096(JP,U)
【文献】実開昭58-006741(JP,U)
【文献】特開2010-125420(JP,A)
【文献】特開2009-72783(JP,A)
【文献】中国実用新案第201157788(CN,Y)
【文献】中国特許出願公開第102049338(CN,A)
【文献】中国実用新案第202377031(CN,U)
【文献】中国実用新案第202860626(CN,U)
【文献】米国特許第5938131(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0256507(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 13/00 - 13/31
18/00 - 18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を水平方向に向けて配置され、処理前の被処理物を吸入する被処理物吸入口と、処理後の被処理物を排出する被処理物排出口を有する概ね円筒形状のケーシング本体と、
上記ケーシング本体内に配置され、水平方向に延在する回転軸と、
上記ケーシング本体の内側面に固定された固定刃と、
上記回転軸に連結されて上記固定刃に対向して配置され、回転駆動されるに伴って上記固定刃との間に導かれた被処理物を粉砕する回転刃と、
上記
円筒形状のケーシング本体の
軸方向視において左右の側
面の部分に設けられた開口と、
上記ケーシング本体と分離して水平方向に移動可能に形成され、上記開口を開閉する扉と
を備え
、
上記扉の内側面に、上記固定刃が固定され、
上記扉は、
上記ケーシング本体の開口に嵌合する扉壁体と、
上記扉壁体を支持する支持部材と、
上記支持部材の下端に設けられ、上記ケーシング本体の下方に設置されたレールに沿って転動する車輪と
を有し、
上記ケーシング本体に固定された固定刃の縁部の外側面が、上記開口から外側に露出するように形成され、上記扉が開口を閉鎖したとき、上記扉壁体の縁部の内側面が上記固定刃の縁部の外側面に接するように形成されている
ことを特徴とする微粉砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の微粉砕機において、
上記ケーシング本体
の平面視において上記扉がケーシング本体の中心軸に対して直角方向に移動可能に形成されていることを特徴とする微粉砕機。
【請求項3】
請求項
1に記載の微粉砕機において、
上記固定刃の縁部の外側面と、上記壁体の縁部の内側面との間をシールするシール部材を備えることを特徴とする微粉砕機。
【請求項4】
請求項
1に記載の微粉砕機において、
上記扉壁体に、上記ケーシング本体の開口の縁部の外側面に接する鍔状の被覆部材が設けられていることを特徴とする微粉砕機。
【請求項5】
請求項
4に記載の微粉砕機において、
上記ケーシング本体の開口の縁部の外側面と、上記扉壁体の被覆部材の内側面との間をシールするシール部材を備えることを特徴とする微粉砕機。
【請求項6】
請求項
1に記載の微粉砕機において、
上記扉は、
上記ケーシング本体の開口に嵌合する扉壁体を有し、この扉壁体に貫通孔が形成されており、
上記固定刃は、外側面から内側面に向かって断面が拡大する拡大貫通孔と、この拡大貫通孔に嵌合すると共に雌螺子孔が設けられた嵌合部材を有し、
上記扉壁体の外側から貫通孔に挿通され、上記嵌合部材の雌螺子孔に螺合するボルトによって上記固定刃が上記扉壁体に固定されていることを特徴とする微粉砕機。
【請求項7】
請求項1に記載の微粉砕機において、
上記回転軸は、回転刃の軸方向の少なくとも一方に連結された回転羽根を有し、
上記ケーシング本体の開口は、上記扉が開いたときに上記回転刃を露出するように形成されていることを特徴とする微粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の原材料や、各種の廃棄物を微粉砕するために用いられる微粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の精錬工程における鉱石の粉砕や、セメントの製造工程におけるクリンカーの粉砕や、廃棄物の処理工程における固形物の粉砕のために、微粉砕機が用いられている。従来の微粉砕機としては、円筒形状の縦型のケーシングと、このケーシング内に鉛直方向に立設された回転軸と、この回転軸に固定された回転刃と、この回転刃に対向してケーシングの内側に配置された固定刃を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記回転軸の下端にはプーリが連結されており、このプーリに巻き掛けられたベルトを介してモータから回転力が伝達され、回転軸が駆動される。この回転軸は、下端がスラスト軸受で支持されていると共に、上端がラジアル軸受で支持されている。
【0004】
この微粉砕機は、回転軸の上端側と下端側に固定された羽根で風を生成し、この風により、ケーシングの下端の投入口から被処理物を吸引する。吸引された被処理物は、回転駆動される回転刃と固定刃の間を、下方から上方へ旋回状に移動するに伴って粉砕される。粉砕された被処理物は、ケーシングの上端の排出口から排出され、この微粉砕機の下流側に接続されたフィルタ装置により回収される。この微粉砕機は、数mmから20mm程度の寸法の被処理物を粉砕し、数μから5mm程度の寸法に調製する用途に用いられる。
【0005】
微粉砕機の運転時間が経過するに伴い、回転刃及び固定刃の点検や交換等のメンテナンスを行う必要がある。微粉砕機のメンテナンスを行う場合、ケーシングの側面に形成された扉を、鉛直方向に延びるヒンジ軸回りに回動させて解放する。これにより、ケーシングの開口部に回転刃を露出させると共に、扉の内側面に固定された固定刃を露出させて、回転刃や固定刃のメンテナンスを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の微粉砕機は、ケーシングの扉を回動させて内部を解放するとき、扉は固定刃が固定されて質量が比較的大きいため、扉をチェーンブロック等で吊り下げる必要がある。したがって、メンテナンスの作業に手間がかかる問題がある。また、ケーシングの扉はヒンジで繋がっているので、扉を解放したときの作業スペースが比較的狭く、メンテナンスの作業を行い難い問題がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、メンテナンスの作業の手間が少なく、メンテナンスの作業を行い易い微粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の微粉砕機は、中心軸を水平方向に向けて配置され、処理前の被処理物を吸入する被処理物吸入口と、処理後の被処理物を排出する被処理物排出口を有する概ね円筒形状のケーシング本体と、
上記ケーシング本体内に配置され、水平方向に延在する回転軸と、
上記ケーシング本体の内側面に固定された固定刃と、
上記回転軸に連結されて上記固定刃に対向して配置され、回転駆動されるに伴って上記固定刃との間に導かれた被処理物を粉砕する回転刃と、
上記ケーシング本体の側部に設けられた開口と、
上記ケーシング本体と分離して水平方向に移動可能に形成され、上記開口を開閉する扉と
を備えることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、被処理物吸入口と被処理物排出口を有する概ね円筒形状のケーシング本体が、中心軸を水平方向に向けて配置され、このケーシング本体内に、水平方向に延在する回転軸が配置されている。回転軸は、ケーシング本体と同軸に配置されるのが好ましい。ケーシング本体の内側面には固定刃が固定され、回転刃に連結された回転刃が固定刃に対向して配置されている。この回転刃が回転駆動されるに伴い、被処理物吸入口から吸入された被処理物が回転刃と固定刃の間に導かれ、この回転刃と固定刃の作用によって粉砕される。例えば、被処理物は、数mmから20mm程度の寸法が、数μから5mm程度に調製される。粉砕された処理後の被処理物は、被処理物排出口からケーシング本体外へ排出される。微粉砕機のメンテナンスを行う場合、ケーシング本体の側部の開口を閉じている扉を、ケーシング本体から離脱させて開口を開き、ケーシング本体の内側と扉の内側に存在する部品を露出させる。ここで、扉がケーシング本体から分離して水平方向に移動するので、従来の微粉砕機のようにヒンジで接続された扉をチェーンブロックで吊り下げる必要が無い。したがって、メンテナンスの作業の手間を少なくできる。また、扉がケーシング本体から分離するので、扉をケーシング本体から遠ざけた状態で開口を開くことができる。したがって、ケーシング本体の内側や扉の内側に存在する部品に容易にアクセスできるので、メンテナンスの作業を容易に行うことができる。
【0011】
一実施形態の微粉砕機は、上記扉の内側に、上記固定刃が固定されている。
【0012】
上記実施形態によれば、扉を開いてケーシング本体から離脱させることにより、扉の内側に固定された固定刃に、容易にアクセスすることができる。したがって、メンテナンスの作業を容易に行うことができる。
【0013】
一実施形態の微粉砕機は、上記扉は、
上記ケーシング本体の開口に嵌合する扉壁体と、
上記扉壁体を支持する支持部材と、
上記支持部材の下端に設けられ、上記ケーシング本体の下方に設置されたレールに沿って転動する車輪と
を有する。
【0014】
上記実施形態によれば、扉が、ケーシング本体に嵌合する扉本体と、この扉本体を支持する支持部材と、この支持部材の下端に設けられた車輪を有するので、ケーシング本体の下方に設置されたレールに沿って容易に扉を移動することができる。したがって、ケーシング本体の開口を容易に開閉することができ、メンテナンスの作業を容易に行うことができる。
【0015】
一実施形態の微粉砕機は、上記ケーシング本体の軸方向視において、上記ケーシング本体の両側の側部に開口が形成されており、平面視において上記扉がケーシング本体の中心軸に対して直角方向に移動可能に形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、ケーシング本体の軸方向視において、ケーシング本体の両側の側部に開口が形成されているので、ケーシング本体の内側を効果的に露出することができる。また、平面視において扉がケーシング本体の中心軸に対して直角方向に移動可能に形成されているので、ケーシング本体の開口を開いたときに、ケーシング本体の内側と扉の内側に、開口と扉の水平方向の両側から容易にアクセスできる。したがって、メンテナンスの作業を容易に行うことができる。
【0017】
一実施形態の微粉砕機は、上記ケーシング本体に固定された固定刃の縁部の外側面が、上記開口から外側に露出するように形成され、上記扉が開口を閉鎖したとき、上記扉壁体の縁部の内側面が上記固定刃の縁部の外側面に接するように形成されている。
【0018】
上記実施形態によれば、固定刃の縁部の外側面が、開口から外側に露出するように、ケーシング本体の内側面に固定されている。扉が開口を閉鎖したとき、扉壁体の縁部の内側面が上記固定刃の縁部の外側面に接するので、固定刃と扉壁体との間を塞ぐことができる。したがって、微粉砕機の運転時に、ケーシング本体の内側で粉砕される被処理物の漏れを防止できる。
【0019】
一実施形態の微粉砕機は、上記固定刃の縁部の外側面と、上記壁体の縁部の内側面との間をシールするシール部材を備える。
【0020】
上記実施形態によれば、扉が開口を閉鎖したとき、シール部材により、扉壁体の縁部の内側面と固定刃の縁部の外側面との間をシールするので、ケーシング本体の固定刃と扉壁体との間に隙間が形成されることを効果的に防止できる。したがって、微粉砕機の運転時に、ケーシング本体の内側で粉砕される被処理物の漏れを防止できる。ここで、シール部材は、ケーシング本体に固定された固定刃と、扉壁体とのいずれの側に設けてもよい。
【0021】
一実施形態の微粉砕機は、上記扉壁体に、上記ケーシング本体の開口の縁部の外側面に接する鍔状の被覆部材が設けられている。
【0022】
上記実施形態によれば、ケーシング本体の開口を扉で閉じたとき、鍔状の被覆部材が開口の縁部の外側面に接するので、開口と扉壁体との間の隙間を被覆部材で覆うことができる。したがって、微粉砕機の運転時に、ケーシング本体の内側で粉砕される被処理物の漏れを防止できる。ここで、被覆部材は、扉壁体の縁の一部に設けられていればよいが、扉壁体の縁の全周に設けられるのが好ましい。
【0023】
一実施形態の微粉砕機は、上記ケーシング本体の開口の縁部の外側面と、上記扉壁体の被覆部材の内側面との間をシールするシール部材を備える。
【0024】
上記実施形態によれば、扉が開口を閉鎖したとき、シール部材により、ケーシング本体の開口の縁部の外側面と、扉壁体の被覆部材の内側面との間をシールするので、ケーシング本体の開口と扉壁体の被覆部材との間に隙間が形成されることを効果的に防止できる。したがって、微粉砕機の運転時に、ケーシング本体の内側で粉砕される被処理物の漏れを防止できる。ここで、シール部材は、ケーシング本体の開口の縁部の外側面と、扉壁体の被覆部材の内側面とのいずれの側に設けてもよい。
【0025】
一実施形態の微粉砕機は、上記扉は、
上記ケーシング本体の開口に嵌合する扉壁体を有し、この扉壁体に貫通孔が形成されており、
上記固定刃は、外側面から内側面に向かって断面が拡大する拡大貫通孔と、この拡大貫通孔に嵌合すると共に雌螺子孔が設けられた嵌合部材を有し、
上記扉壁体の外側から貫通孔に挿通され、上記嵌合部材の雌螺子孔に螺合するボルトによって上記固定刃が上記扉壁体に固定されている。
【0026】
上記実施形態によれば、扉は、ケーシング本体の開口に嵌合する扉壁体を有し、この扉壁体に貫通孔が形成されている。また、ケーシング本体の内側面に固定される固定刃は、外側面から内側面に向かって断面が拡大する拡大貫通孔と、この拡大貫通孔に嵌合すると共に雌螺子孔が設けられた嵌合部材を有する。上記扉壁体の外側から貫通孔に挿通され、上記嵌合部材の雌螺子孔に螺合するボルトによって上記固定刃が上記扉壁体に固定されている。したがって、固定刃を扉壁体に強固に固定することができる。また、嵌合部材の雌螺子孔は、表面側には貫通させない有底状に形成するのが好ましい。嵌合部材に有底状の雌螺子孔を形成することにより、雌螺子孔に螺合したボルトが被処理物によって腐食する不都合や、雌螺子孔が被処理物で目詰まりしてボルトの締結や緩解が困難になる不都合を防止できる。
【0027】
一実施形態の微粉砕機は、上記回転軸は、回転刃の軸方向の少なくとも一方に連結された回転羽根を有し、
上記ケーシング本体の開口は、上記扉が開いたときに上記回転刃を露出するように形成されている。
【0028】
上記実施形態によれば、ケーシング本体の内側に、回転軸に連結された回転刃と、この回転刃の少なくとも一方に連結された回転羽根が配置される。ケーシング本体の開口が、扉が開いたときに回転刃を露出するように形成されているので、メンテナンスの頻度の高い回転刃及び固定刃に容易にアクセスすることができると共に、回転羽根で生成される空気流が開口の隙間から漏れる不都合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態の微粉砕機を示す正面図である。
【
図4】固定刃の粉砕部壁体への固定部分を示す断面図である。
【
図6】粉砕部ケーシングの内部を解放した様子を示す横断面図である。
【
図7】粉砕部ケーシングの開口の上部と扉との嵌合部分を示す断面図である。
【
図8】粉砕部ケーシングの開口の側部と扉との嵌合部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態の微粉砕機を示す正面図であり、
図2は、微粉砕機を示す平面図である。本実施形態の微粉砕機は、数mmから約20mmの寸法を有する被処理物を粉砕し、数μから5mm程度の寸法に調整するものである。この微粉砕機は、鉱業、窯業、木材産業、農業、漁業、繊維業及び廃棄物処理業等で用いられ、各種の原料や材料を粉砕するために用いられる。
【0032】
この微粉砕機1は、概ね円筒形状のケーシング2と、ケーシング2の軸方向の一端側に設けられて処理前の被処理物をケーシング2内へ導く吸入ダクト3と、ケーシング2の軸方向の他端側に設けられて処理後の被処理物をケーシング2から排出する排出ダクト4を有する。ケーシング2の吸入ダクト3で隔てられた一端側には、第1軸受6が配置されている。また、ケーシング2の排出ダクト4で隔てられた他端側には、第2軸受7が配置されている。ケーシング2及び排出ダクト4と、第1軸受6と、第2軸受7は、ベース11上に設置されている。ケーシング2は、軸方向の中央部に位置する粉砕部ケーシング21と、この粉砕部ケーシング21の一端側に隣接する吸入側ケーシング22と、粉砕部ケーシング22の他端側に隣接する排出側ケーシング23を含んで形成されている。粉砕部ケーシング21は、軸方向視において左右両側に開口及び扉を夫々備え、これらの扉が水平方向に移動して内部を解放可能に形成されている。上記粉砕部ケーシング21の両側の扉を左右に夫々移動させるためのレール12が、ベース11上と、ベース11の側部から張り出した位置に敷設されている。レール12は、平面視において、粉砕部ケーシング21と軸直角方向に延在している。上記第1軸受6及び第2軸受7は、ケーシング2内を貫通して配置された回転軸を支持しており、この回転軸を回転駆動するモータ9が、ベース11上に配置されている。
【0033】
図3は、微粉砕機1の縦断面図であり、ケーシング2の中心軸に沿って微粉砕機1を切断した様子を示している。
図3に示すように、ケーシング2と、ケーシング2の一端側の吸入ダクト3と、ケーシング2の他端側の排出ダクト4を貫通するように、回転軸15が配置されている。回転軸15は、吸入ダクト3一端側に配置された第1軸受6と、排出ダクト4の他端側に配置された第2軸受7に支持されており、第1軸受6から突出した一端部分に駆動用のプーリ16が連結されている。回転軸15を支持する第1軸受6と第2軸受7は、軸直角方向の荷重を支持するラジアル軸受で形成されている。
【0034】
ケーシング2を構成する粉砕部ケーシング21は、回転軸15と同軸に形成された円筒形状の粉砕部壁体25を有し、この粉砕部壁体25の内側面に固定刃42が固定されている。粉砕部ケーシング21の粉砕部壁体25の内側には、固定刃42に対向して配置され、回転軸15によって回転駆動される複数の回転刃43,43,43・・・が配置されている。
【0035】
固定刃42は、円筒を周方向に複数個に分割したような瓦状の形状を有し、粉砕部壁体25の内側面よりも多少小さい軸方向寸法を有する。この固定刃42は、湾曲した内側面に、中心軸と平行に延在する複数の台形断面の凸条が設けられている。回転刃43が回転駆動されて回転刃43の先端が固定刃42の凸条に接離を繰り返すことにより、回転刃43と固定刃42の間に導かれる被処理物が粉砕されるように形成されている。
【0036】
固定刃42は、軸直角方向の寸法に応じて、粉砕部壁体25の内側面に10乃至20個配列されている。
図4は、固定刃42の粉砕部壁体25への固定部分を示す断面図であり、ケーシング2の軸直角方向の断面を示している。固定刃42は、粉砕部壁体25に設けられた貫通孔に挿通されたボルト52と、このボルト52に螺着される嵌合部材としての固定具53によって、粉砕部壁体25に固定されている。詳しくは、固定刃42には、軸方向の一端側と他端側に、2つの拡大貫通孔としての固定用貫通孔51が形成されている。これらの固定用貫通孔51は、固定刃42の内側面から視て正方形状を有し、固定刃42の外側面から内側面に向かうにつれて断面積が拡大するように形成された角錐台形状に形成されている。この角錐台形状の固定用貫通孔51に、雌螺子孔が設けられた角錐台形状の固定具53が、固定具53の上底面が固定用貫通孔51の底側、すなわち、粉砕部壁体25に接する側を向くように嵌合している。この固定用貫通孔51に嵌合した固定具53の雌螺子孔に、粉砕部壁体25の貫通孔に挿通されたボルト52の雄螺子を螺着して、固定具53を介して固定刃42を粉砕部壁体25の内側に固定するように構成されている。なお、固定具53に形成する雌螺子孔は、固定具53を貫通するように形成することができるが、固定具53を貫通しない有底状に形成するのが好ましい。雌螺子孔を有底状に形成することにより、固定具53に螺合するボルト52の先端が固定刃42の凸条の間に露出しないので、雌螺子孔やボルト52の被処理物との接触を防止できる。したがって、被処理物に起因して腐食する不都合や、雌螺子孔が被処理物で目詰まりする不都合を防止できる。
【0037】
ケーシング2を構成する吸入側ケーシング22は、回転軸15と同軸に形成された円筒形状の吸入側壁体24を有し、この吸入側壁体24の内側に吸入羽根41が配置されている。吸入側壁体24は、回転軸15を取り囲むように開口した端面板を一端に有し、この端面板の開口が、ケーシング本体内に処理前の被処理物を吸入する被処理物吸入口55を形成している。吸入羽根41は、回転軸15に固定されて回転刃43を支持する回転刃支持架構45の一端側の支持円板46Aに、回転軸15を取り囲むように放射状に固定されている。この吸入羽根41は、回転軸15の径方向であって支持円板46Aの径方向に延在する板状体で形成され、径方向外側の辺が、一端側に向かって外径側に傾斜している。また、この吸入羽根41は、径方向内側の辺が、一端側に向かって外径側に傾斜している。複数の吸入羽根41の一端側の辺は、回転軸15と同心に配置された環状の端面板47に固定されている。吸入羽根41が回転駆動されると、端面板47の中央の孔から、粉砕部ケーシング21の固定刃42と回転刃43の間に向かって被処理物を搬送する空気流が形成され、吸入側ケーシング22内に、被処理物吸入通路57が形成される。このように、吸入羽根41によって形成される空気流により、被処理物が、吸入ダクト3から被処理物吸入口55と端面板47の中央の孔を通して吸入され、矢印W2で示すように、吸入側ケーシング22の被処理物吸入通路57を搬送される。
【0038】
ケーシング2を構成する排出側ケーシング23は、回転軸15と同軸に形成された円筒形状の排出側壁体26を有し、この排出側壁体26の内側に排出羽根44が配置されている。排出側壁体26は、概ね扇状の複数個の開口が回転軸15を取り囲むように形成された端面壁61を他端に有し、この端面壁61の開口が、本体ケーシング内から粉砕後の被処理物を排出する被処理物排出口62を形成している。排出羽根44は、回転軸15に固定されて回転刃43を支持する回転刃支持架構45の他端側の支持円板46Bに、回転軸15を取り囲むように放射状に固定されている。この排出羽根44は、回転軸15の径方向であって支持円板46Bの径方向に延在する板状体で形成され、径方向外側の辺が、他端側に向かって内径側に傾斜している。また、この排出羽根44は、径方向内側の辺が、回転軸15に接している。複数の排出羽根44の他端側の辺は、回転軸15と同心に固定された円形の端面板48に固定されている。排出羽根44が回転駆動されると、粉砕部ケーシング21の固定刃42と回転刃43の間から、被処理物排出口62に向かって被処理物を搬送する空気流が形成され、排出側ケーシング23内に、被処理物排出通路58が形成される。このように、排出羽根44によって形成される空気流により、固定刃42と回転刃43で粉砕された被処理物が、矢印W3で示すように、排出側ケーシング23の被処理物排出通路58を搬送されて排出ダクト4に導かれる。
【0039】
上記吸入側ケーシング22の吸入側壁体24と、粉砕部ケーシング21の粉砕部壁体25と、排出側ケーシング23の排出側壁体26は、同じ直径に形成されて同軸に配置されており、内側に円筒形状の処理室を形成している。これらの吸入側壁体24と、粉砕部壁体25と、排出側壁体26により、ケーシング本体を形成している。
【0040】
図5は、微粉砕機1の粉砕部ケーシング21における回転軸15の直角方向の横断面図であり、
図6は、粉砕部ケーシング21の両側の扉を移動させて内部を解放した様子を示す横断面図である。粉砕部ケーシング21の粉砕部壁体25には、軸方向視において左右の側部に開口25aが形成されている。粉砕部ケーシング21は、ベース11上に固定された固定枠体21Aと、この固定枠体21Aに、ケーシング2の他端側から一端側に視て右側に連結された第1移動枠体21Bと、左側に連結された第2移動枠体21Cを有する。これらの第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cが、粉砕部ケーシング21の粉砕部壁体25の開口25aを開閉する扉を夫々構成している。
【0041】
粉砕部ケーシング21の固定枠体21Aは、吸入側ケーシング22の他端側と排出側ケーシング23の一端側に夫々連結されてベース11上に立設された縦枠27,27を有し、この縦枠27,27の間に、粉砕部壁体25が支持されている。粉砕部壁体25の軸方向視において左右の側部に、軸直角方向視において矩形状の開口25aが夫々形成されている。これらの開口25aに、第1移動枠体21Bに設けられた扉壁体35と第2移動枠体21Cに設けられた扉壁体35が、夫々嵌合するようになっている。粉砕部壁体25は、上端と下端にフランジが形成された筒状形状を有すると共に、軸方向視において両側部に開口25aを有する。粉砕部壁体25の内側面には、複数の固定刃42,42,42,・・・が、
図4で示すようにボルト52と固定具53で固定されている。
【0042】
粉砕部ケーシング21の第1移動枠体21Bは、下端に車輪29が装着され、上部が略半割筒状の内側面を形成するように湾曲した支持部材としての支持枠28を有する。この支持枠28の内側面に、円弧状断面を有する瓦状の扉壁体35が取り付けられており、この扉壁体35の内側面に、複数の固定刃42が固定されている。扉壁体35には、
図4の粉砕部壁体25と同様に、ボルト52と固定具53によって固定刃42が固定されている。
【0043】
また、粉砕部ケーシング21の第2移動枠体21Cは、第1移動枠体21Bと同様に、下端に車輪29が装着された支持枠28を有し、この支持枠28の内側面に扉壁体35が取り付けられており、この扉壁体35の内側面に複数の固定刃42が固定されている。第2移動枠体21Cは、粉砕部壁体25の中心軸を通る鉛直面に関して、第1移動枠体21Bと対称に形成されている。
【0044】
上記第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cは、ベース11に固定されたレール12に沿って、固定枠体21Aに対して回転軸15の直角方向に移動可能に形成されている。第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cは、人力によって移動可能に形成されている。なお、第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cは、モータを内蔵し、モータで車輪29を回転駆動して移動可能に形成されてもよい。上記固定枠体21Aに第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cが連結されたとき、粉砕部壁体25と、第1移動枠体21Bの扉壁体35と、第2移動枠体21Cの扉壁体35とで、円筒形状の内側面を形成する。第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cの上端には、固定枠体21A側に向いたフランジが設けられており、固定枠体21Aに第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cが連結されたとき、上記固定枠体21Aの上端のフランジに、第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cのフランジが当接する。この固定枠体21Aのフランジと第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cのフランジをボルトで固定することにより、粉砕部壁体25の開口25aを閉鎖状態に保持するようになっている。一方、レール12の固定枠体21Aから遠い側の端部には、ボルト孔が上端に設けられた図示しない車止め板が立設されている。第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cを固定枠体21Aから遠ざかるように移動させたとき、第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cの支持枠28が車止め板に当接し、レール12からの逸脱が防止される。また、車止め板のボルト孔に挿通したボルトを支持枠28に螺着することにより、第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cをレール12の端部に保持することができる。
【0045】
図7は、粉砕部ケーシング21の固定枠体21Aが有する粉砕部壁体25の開口25aの上部と、第1移動枠体21Bの扉壁体35との嵌合部分を示す断面図である。また、
図8は、固定枠体21Aが有する粉砕部壁体25の開口aの側部と、第1移動枠体21Bの扉壁体35との嵌合部分を示す断面図である。
図6,7に示すように、粉砕部壁体25の開口25aの上側縁と下側縁では、内側に固定された固定刃42の縁部が、粉砕部壁体25の開口25aの上側縁及び下側縁よりも、周方向に突出している。また、粉砕部壁体25の開口25aの両側部では、開口25aの周方向に延びる側縁に沿うように、粉砕部壁体25の内側に板状の縁部材30が固定されている。この縁部材30が、粉砕部壁体25の開口25aの両側の側縁よりも、軸方向に突出している。
【0046】
一方、第1移動枠体21Bの扉壁体35は、この扉壁体35の上端縁と下端縁において、
図7に示すように、内側面に固定された固定刃42の縁部が、扉壁体35の縁よりも周方向に没入している。また、扉壁体35の軸方向の両側の側縁において、
図8に示すように、内側面に固定された固定刃42の縁部が、扉壁体35の縁よりも軸方向に没入している。この扉壁体35の上端縁と下端縁と軸方向の両側縁の近傍には、固定刃42の縁部が没入して形成された内側面であって、固定刃42よりも周方向と軸方向に突出した部分の内側面に、ゴム板で形成された第1シール部材72が、固定刃42を取り囲むように設けられている。
【0047】
また、第1移動枠体21Bの扉壁体35は、扉壁体35の4つの縁部の外側面に、扉壁体35の縁から周方向及び軸方向に突出するように、板状の被覆部材71が夫々設けられている。この被覆部材71は、回転軸15と同心の円弧状断面を形成するように湾曲しており、回転軸15側を向く内側面に、ゴム板で形成された第2シール部材73が、扉壁体35を取り囲むように設けられている。
【0048】
固定枠体21Aに第1移動枠体21Bが連結されたとき、固定枠体21Aの粉砕部壁体25から突出した固定刃42の外側面と、固定枠体21Aの粉砕部壁体25から突出した縁部材30の外側面に、第1移動枠体21Bの扉壁体35の第1シール部材72が接する。これにより、固定刃42及び縁部材30と、扉壁体35との間をシールするように形成されている。これと共に、固定枠体21Aの粉砕部壁体25の外側面に、被覆部材71の内側面の第2シール部材73が接して、粉砕部壁体25と被覆部材71との間をシールするように形成されている。
【0049】
このようにして、固定枠体21Aに設けられた縁部材30と、第1移動枠体21Bに設けられた被覆部材71と、第1及び第2シール部材72,73により、固定枠体21Aと第1移動枠体21Bの嵌合部分において、粉砕部壁体25を密封するように形成されている。
【0050】
また、固定枠体21Aの粉砕部壁体25の開口25aと、第2移動枠体21Cの扉壁体35との嵌合部においても、第1移動枠体21Bと同様のシール構造を有する。すなわち、固定枠体21Aの第2移動枠体21Cが連結される開口25aの内側面に、開口25aの軸方向の両側縁に沿って縁部材30が設けられている。また、第2移動枠体21Cの扉壁体35の上端縁と下端縁と軸方向の両側縁の近傍に、固定刃42よりも周方向と軸方向に突出した部分の内側面に、第1シール部材72が固定刃42を取り囲むように設けられている。さらに、第2移動枠体21Cの扉壁体35の4つの縁部の外側面に、板状の被覆部材71が夫々設けられ、この被覆部材71の内側面に、ゴム板で形成された第2シール部材73が、扉壁体35を取り囲むように設けられている。これらの固定枠体21Aの粉砕部壁体25の内側面に設けられた縁部材30と、第2移動枠体21Cに設けられた被覆部材71と、第1及び第2シール部材72,73により、固定枠体21Aと第2移動枠体21Cの嵌合部分において、粉砕部壁体25を密封するように形成されている。
【0051】
このように構成された固定枠体21Aと第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cにより、固定枠体21Aに第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cが連結されて開口23aが閉じられたとき、粉砕部ケーシング21の粉砕部壁体25を効果的に密閉して、被処理物や空気の漏れを防止している。
【0052】
上記粉砕部ケーシング21の粉砕部壁体25の内側に配置された回転刃43は、回転軸15に固定された回転刃支持架構45に支持されている。回転刃支持機構45は、回転軸15の軸方向に所定間隔をおいて複数個固定され、回転軸15と同心の支持円板46と、この支持円板46の相互間の外径側に周方向に所定間隔をおいて固定され、径方向に延在する板状の複数の回転刃取付板50と、この回転刃取付板50の幅方向の中央に交差するように、隣り合う支持円板46の間に配置され、回転軸15と同心の補助円板49を有する。この回転刃支持機構45の回転刃取付板50に、回転刃43が取り付けられている。回転刃43は、固定刃42に向かう端面が、回転刃取付板50に接する面と直角をなす板状に形成されており、回転刃取付板50に取り付けられるためのボルト孔が、回転軸15と平行方向に2個配列されている。回転刃取付板50には、径方向に延びる長孔が設けられており、この長孔と、回転刃43のボルト孔とに挿通されたボルトにより、回転刃43が回転刃取付板50に固定されている。回転刃43を固定するボルトを、回転刃取付板50の長孔内で移動させることにより、回転刃取付板50からの回転刃43の突出量が調整可能になっており、これにより、回転刃43の先端と、固定刃42の凸条の先端との間のクリアランスを調整するように形成されている。この回転刃43と固定刃42のクリアランスを調整することにより、被処理物の種類に応じて粉砕後の寸法を調整することができる。
【0053】
図9は、吸入ダクト3の縦断図であり、吸入ダクト3をケーシング2との接続部分の近傍で切断し、他端側から一端側に向かって視た縦断面図である。吸入ダクト3は、矩形の横断面を有し、略水平方向に延在して配置されており、正面視において側方に突出した端部に開口3aが設けられている。吸入ダクト3の他方の端部は、回転軸15と同心に形成された半円筒形状に形成され、この半円筒部分が、吸入側ケーシング22の端面板に形成された被処理物吸入口55を取り囲むように、吸入ダクト3がケーシング2に連結されている。すなわち、吸入ダクト3とケーシング2の吸入側ケーシング22は、被処理物吸入口55により連通している。回転軸15が回転駆動され、吸入側ケーシング22内の吸入羽根41が回転して被処理物吸入口55から吸入する空気流が形成されると、吸入ダクト3内に、開口3aから被処理物吸入口55へ向かって流れる空気流が形成される。吸入ダクト3の開口3aから投入された被処理物は、被処理物吸入口55からケーシング22内へ吸入され、矢印W2で示すように被処理物吸入通路57を通り、粉砕部ケーシング21内の固定刃42と回転刃43の間に導かれるように形成されている。
【0054】
吸入ダクト3の他方の端部には、回転軸15を取り囲むように、回転軸15と同軸の概ね円錐台形状の冷却風ダクト31が配置されている。この冷却風ダクト31は、一端部分が短軸の筒状に形成され、この筒状部分の端部に形成された冷却風吸入口64が、第1軸受6の他端側部分に臨むように開口している。一方、冷却風ダクト31は、他端の円錐台形状部分の先端に形成された冷却風吹出口32が、被処理物吸入口55の近傍に開口している。冷却風ダクト31は、一端から他端に向かって縮小する断面を有し、吸入羽根41で形成される空気流を内部に流通させるように形成され、内部に冷却風通路65を形成している。この冷却風ダクト31内の冷却風通路65に空気が流れるに伴い、冷却風吸入口64から外気が吸入され、矢印W0で示すような冷却風が形成される。この冷却風により、第1軸受6が冷却されるようになっている。冷却風通路65を通って冷却風ダクト31の冷却風吹出口32から排出された冷却風は、矢印W1で示すように、吸入ダクト3の被処理物を搬送する空気と合流して、被処理物吸入通路57に導かれる。なお、冷却風通路65を形成する冷却風ダクト31は、円錐台形状でなくてもよく、例えば四角錘台形状や、縦断面が台形の四角柱形状であってもよく、一端から他端に向かって縮小する断面を有していればよい。
【0055】
図10は、吸入ダクト3を回転軸15の中心を通る平面で切断した様子を示す平断面図である。
図9及び
図10に示すように、吸入ダクト3の他方の端部には、冷却風ダクト31の回転軸15に関して開口3aから遠い側に、被処理物の移動方向を被処理物吸入口55に向かって変更させる被処理物反射板33が設けられている。被処理物反射板33は、回転軸15の中心を通る鉛直面に対して約45°の角度で傾斜した板状体で形成されている。吸入ダクト3内を空気流によって搬送された被処理物が、被処理物反射板33に衝突して移動方向が略直角の方向に変更され、これにより、被処理物吸入口55へ効果的に吸入されるように形成されている。
【0056】
排出ダクト4は、
図1の正面図と
図3の縦断面図に示すように、回転軸15を取り囲む環状の流通路47と、この流通路47に接線方向に連通する排出路を有し、排出路の端部に排出口4aが形成されている。ケーシング2の排出側ケーシング23から搬送された被処理物が、流通路47内を旋回して流れ、排出口4aから排出されるように形成されている。
【0057】
上記構成の微粉砕機1は、次のように作動する。微粉砕機1が起動されると、モータ9が回転し、モータ9の回転力がベルトとプーリ16を介して回転軸15に伝達され、回転軸15が回転する。回転軸15が回転するに伴い、吸入羽根41と回転刃43と排出羽根44が回転駆動される。吸入羽根41が回転駆動されると、吸入側ケーシング22の被処理物吸入通路57内に、被処理物吸入口55から固定刃42と転刃43の間に向かう空気流が形成され、これにより、吸入ダクト3内に開口3aから被処理物吸入口55へ向かう空気流が形成される。これと共に、冷却風ダクト31内に、冷却風吸入口64から冷却風吹出口32へ向かう空気流が形成される。
【0058】
起動された微粉砕機1の吸入ダクト3の開口3aに、例えば破砕機等で数mmから20mm程度の寸法に調整された被処理物が導かれ、この被処理物が吸入ダクト3内に吸入される。吸入ダクト3内の空気流によって搬送された被処理物は、被処理物吸入口55から吸入側ケーシング22の吸入側壁体24内に導かれる。円形の被処理物吸入口55から円筒形の吸入側壁体24に導かれた被処理物は、吸入羽根41の間を通って外径側へ移動し、旋回状に搬送される。旋回状に搬送される被処理物は、回転軸15で回転駆動される回転刃43と、粉砕部壁体25の内側面に固定された固定刃42との間に導かれ、この回転刃43と固定刃42との間を旋回状に搬送される。被処理物は、この回転刃43と固定刃42の間を流れる間に、回転刃43と固定刃42の作用によって粉砕される。ここで、回転刃43は、例えば78m/secの周速度で回転駆動することにより、効果的に被処理物の微粉砕を行うことができる。なお、回転刃43は、被処理物の材質や、調整する粒径に応じて、50~90m/secの周速度で回転駆動するのが好ましく、60~80m/secが特に好ましい。
【0059】
粉砕部壁体25内で粉砕された被処理物は、空気の旋回流によって回転刃43と固定刃42の間から、排出側ケーシング23の排出側壁体26内に排出される。粉砕されて排出側壁体26内に排出された被処理物は、回転駆動される排出羽根44で生成される空気流により、排出側壁体26内を旋回状に流れ、被処理物排出口62を通って排出ダクト4へ導かれる。排出ダクト4に導かれた被処理物は、排出羽根44で生成される空気流により、排出ダクト4内を旋回し、排出口4aから排出される。排出口4aから排出された被処理物は、この微粉砕機1の下流に接続されたフィルタ装置によって収集され、被処理物に応じた目的に使用される。
【0060】
本実施形態の微粉砕機1は、回転軸15が回転して吸入羽根41が回転駆動されると、この吸入羽根41の吸引力により、冷却風ダクト31を通じて冷却風吸入口64から外気が吸入され、これにより冷却風が生成される。この冷却風により、冷却風吸入口64の近傍位置の第1軸受6が冷却される。したがって、回転軸15の回転駆動が継続されても、第1軸受6が効果的に冷却されるので、第1軸受6の発熱を防止でき、ひいては第1軸受6の劣化や故障を防止できる。
【0061】
また、本実施形態の微粉砕機1は、粉砕部壁体25を含むケーシング2が水平方向に配置され、上記粉砕部壁体25を貫通する回転軸15が水平方向を向いて配置されているので、回転軸15を回転駆動する際に、鉛直方向の回転軸のような首振り運動が生じない。したがって、回転軸15を支持する第1軸受6及び第2軸受7は、実質的にラジアル方向の荷重のみが作用するので、これらの軸受の負荷を従来よりも軽減できる。また、第1軸受6及び第2軸受7は、被処理物を粉砕する回転刃43の側方に位置するので、従来のように重力によって被処理物が軸受に侵入することが無い。これらにより、第1軸受6及び第2軸受7は、従来よりも劣化や故障を防止できる。
【0062】
本実施形態の微粉砕機1は、運転時間が経過するに伴い、回転刃43及び固定刃42等の摩耗が生じ、これに応じて各部品の補修や交換を行うためのメンテナンス作業が行われる。メンテナンス作業を行う場合、粉砕部ケーシング21から第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cを移動させ、粉砕部ケーシング21内の回転刃43と固定刃42を露出させる。すなわち、レール12に沿って第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cを粉砕部ケーシング21から遠ざかるように移動させ、固定枠体21A側の回転刃43を露出させると共に、第1移動枠体21B及び第2移動枠体21C側の固定刃42を露出させる。露出した回転刃43及び固定刃42について、補修や交換の作業を行う。本実施形態の微粉砕機1によれば、レール12に沿って第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cを移動させることにより、回転刃43及び固定刃42を露出させることができるので、従来の微粉砕機のように扉をチェーンブロック等で吊り下げる必要が無いから、少ない手間でメンテナンス作業を行うことができる。
【0063】
また、粉砕部ケーシング21から第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cを分離して移動させることができるので、第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cを粉砕部ケーシング21から遠ざけた状態で開口を開くことができる。したがって、粉砕部ケーシング21の内側の回転刃43や、第1移動枠体21B及び第2移動枠体21Cの固定刃42に容易にアクセスできるので、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0064】
上記実施形態の微粉砕機1において、第1軸受6に冷却風を流すための冷却風通路65を設けたが、第2軸受7に冷却風を流すための冷却風通路を設けてもよい。第2軸受7のための冷却風通路としては、第2軸受7の近傍に冷却風吸入口を設け、この冷却風吸入口に冷却風通路が連なるように形成し、吸入羽根41で生成される空気流を導いてもよい。また、吸入羽根41及び排出羽根44と隔離して配置された第2の回転羽根を設け、この第2の回転羽根で生成される空気を冷却風通路に導き、第1軸受6及び/又は第2軸受7の近傍に配置された冷却風吹出口から吹き出して、第1軸受6及び/又は第2軸受7を冷却してもよい。
【0065】
また、上記実施形態の微粉砕機1において、吸入羽根41及び排出羽根44を設けたが、吸入羽根41及び排出羽根44の一方のみを配置してもよい。
【0066】
また、上記実施形態の微粉砕機1において、粉砕部壁体25の軸方向視において左右両方の側部に開口25aを形成したが、粉砕部壁体25の一方の側部に開口25aを形成してもよい。
【0067】
また、上記実施形態の微粉砕機1において、扉壁体35の固定刃42よりも周方向と軸方向に突出した部分の内側面に第1シール部材72を配置したが、第1シール部材72は、固定枠体21Aの粉砕部壁体25から突出した固定刃42の外側面と、固定枠体21Aの粉砕部壁体25から突出した縁部材30の外側面に配置してもよい。また、第1移動枠体21Bと第2移動枠体21Cの扉壁体35の被覆部材71の内側面に第2シール部材73を配置したが、第2シール部材73は、固定枠体21Aの粉砕部壁体25の外側面に配置してもよい。また、第1及び第2シール部材72,73はゴム板で形成したが、シール部材72,73は板状以外の形状でもよい。また、シール部材72,73は、ゴム以外の樹脂や金属等で形成されてもよい。
【0068】
本発明の微粉砕機は、鉱業において、例えば原鉱石の粉砕等に用いることができる。また、窯業において、例えばガラス、陶器、セラミック及びセメント等の原料の粉砕に用いることができる。また、木材産業において、例えば木材チップ、プレーナー屑及びバーク等の粉砕に用いることができる。また、農業において、例えば穀物類の粉砕に用いることができる。また、漁業において、例えば貝殻の粉砕や、加工製品の原料の粉砕に用いることができる。また、繊維業において、例えば繊維屑の粉砕に用いることができる。また、廃棄物処理業において、例えば古紙、段ボール、プラスチック、廃木材及び廃電気機器の粉砕に用いることができる。また、建設業において、例えば土木建築用の骨材の粉砕に用いることができる。また、電力業において、例えば火力発電所での微粉炭製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 微粉砕機
2 ケーシング
3 吸入ダクト
4 排出ダクト
6 第1軸受
7 第2軸受
9 モータ
11 ベース
12 レール
15 回転軸
21 粉砕部ケーシング
21A 固定枠体
21B 第1移動枠体
21C 第2移動枠体
22 吸入側ケーシング
23 排出側ケーシング
24 吸入側壁体
25 粉砕部壁体
25a 開口
26 排出側壁体
29 車輪
30 縁部材
31 冷却風ダクト
32 冷却風吹出口
33 被処理物反射板
35 扉壁体
41 吸入羽根
42 固定刃
43 回転刃
44 排出羽根
45 回転刃支持架構
55 被処理物吸入口
57 被処理物吸入通路
58 被処理物排出通路
62 被処理物排出口
64 冷却風吸入口
65 冷却風通路
71 被覆部材
72 第1シール部材
73 第2シール部材