(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】掘削工事における泥水の管理方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/13 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
E21D9/13 B
(21)【出願番号】P 2018160106
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】大山 将
(72)【発明者】
【氏名】林 茂郎
(72)【発明者】
【氏名】松生 隆司
(72)【発明者】
【氏名】小山 孝
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 彰夫
(72)【発明者】
【氏名】有田 亮一
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169587(JP,A)
【文献】特開2002-339690(JP,A)
【文献】特開2000-328050(JP,A)
【文献】特開2015-044171(JP,A)
【文献】特開平10-325790(JP,A)
【文献】特開平09-239256(JP,A)
【文献】特開2002-188082(JP,A)
【文献】特開2016-079771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0092619(US,A1)
【文献】特開平11-062472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然由来の砒素を含む地層を掘削対象とする泥水を用いる掘削工事における泥水の管理方法において、
泥水に含まれる掘削土砂を分離した泥水を調整槽に導入し、該調整槽において、当該泥水に、pH管理装置から酸を添加することによって、泥水のpHを4.0~6.0の弱酸性領域となるようにするとともに、
分散剤添加装置から分散剤を添加
し、さらに、調整槽内の泥水を気液混合装置を介して循環させながら、該気液混合装置により泥水に酸化促進作用を有する1μm以下の気泡を添加する泥水管理工程を有し
、該泥水管理工程を経た泥水を掘削位置へ供給するようにすることを特徴とする掘削工事における泥水の管理方法。
【請求項2】
前記分散剤として酸性分散剤を用いることを特徴とする請求項1に記載の掘削工事における泥水の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削工事における泥水の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルや坑井を掘削する場合、例えば、泥水式シールド工法や泥水式推進工法における切羽安定、地中連続壁工法や場所打ち杭工法における孔壁保護などの目的で泥水が用いられている。
そして、これらの泥水を用いる掘削工事においては、掘削位置に泥水を地上から加圧して送り、この泥水圧で切羽の安定を保ったり、孔壁の保護を行いながら掘削を行い、掘削した土砂を泥水と共に地上にポンプにて液体輸送するようにし、以下、この作業を繰り返すことにより順次掘削を行うようにしている。
掘削現場から排出される泥水は、一次処理として、発生土の分離回収、比重調整などの処理がなされた後、その一部は再び掘削位置へと供給されて再利用される。一方、再利用されない残りの余剰泥水は、二次処理を経て、一般に産業廃棄物(建設汚泥)として処分される(例えば、特許文献1~2参照。)。
【0003】
ところで、掘削工事が行われる地中には、自然由来で砒素などの有害物質を含む地層が存在する。このような領域の掘削に泥水を用いた場合、泥水に有害物質が溶出するおそれがあり、これを適切に処理しなければ汚染が拡散するおそれがある。
【0004】
この問題に対処するため、自然由来の砒素などの有害物質が含有される余剰泥水を廃棄する二次処理前に鉄粉や薬剤を用いて処理する(砒素を吸着除去したり、不溶化させる。)ことで安定化した後、二次処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献3~4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-219239号公報
【文献】特開平10-225700号公報
【文献】特開2009-66471号公報
【文献】特開2016-169587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有害物質としての砒素は、例えば、一次処理時に、砒素を含有する粘土分が分級する砂分にも付着してしまうため、回収される土砂が砒素の基準を超過するおそれがある。また、自然由来の砒素は、砂分やシルト分にも含まれるため、掘削土全量の砒素を安定化させることはコスト的にも困難であった。
また、粘土(粘性土)主体の地盤では、余剰泥水の二次処理能力でシールド掘削の日進量が制限されるため、二次処理への負荷を低減する必要があった。
【0007】
本発明は、上記従来の有害物質、特に、自然由来の砒素を含む地層を掘削対象とする泥水を用いる掘削工事に付随する問題点に鑑み、余剰泥水を含む掘削土全量の砒素を低コストで、確実に安定化させるとともに、余剰泥水の二次処理への負荷を低減することができる掘削工事における泥水の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、泥水を用いる掘削工事における泥水の管理方法において、泥水のpHを4.0~6.0の弱酸性領域となるようにするとともに、当該泥水に分散剤を添加する泥水管理工程を有していることを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記分散剤として酸性分散剤を用いることができる。
【0010】
また、前記泥水管理工程において、泥水に酸化促進作用を有する1μm以下の気泡を添加することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の掘削工事における泥水の管理方法によれば、泥水管理工程において、泥水のpHを4.0~6.0の弱酸性領域となるようにすることにより、自然由来の砒素を含む地層を掘削対象とする泥水を用いる掘削工事において、掘削位置から泥水と共にポンプにて液体輸送される掘削した土砂に含まれる砒素が、弱酸性領域の泥水によって安定化する(土粒子や土中・泥水中に含まれる鉄分に吸着して、間隙水中に溶出している砒素濃度が低下する。)ため、二次処理前に砒素の溶出を防止することが可能となる。
ところで、泥水を酸性化すると泥水の粘性が増大するが、泥水管理工程において、泥水に分散剤を添加することにより、泥水の酸性化による泥水の粘性の増大を抑制するようにし、泥水管理方法が制限されることなく、余剰泥水の二次処理への負荷を低減することが可能となる。具体的には、泥水の粘性が増大すると、通常の廃棄泥水比重(例えば、γ=1.20)よりかなり低い比重で泥水管理をしなくてはならず、廃棄泥水量(余剰泥水量)も増加して二次処理の負荷は増大し、さらに、泥水比重の低下は水分量の増加につながり、二次処理における脱水処理の効果を低下させてしまうが、酸性化による泥水の粘性の増大を抑制することで、この問題を解消することができる。
これにより、余剰泥水を含む掘削土全量の砒素を低コストで、確実に安定化させるとともに、余剰泥水の二次処理への負荷を低減することができる。
【0012】
また、前記分散剤として酸性分散剤を用いることにより、泥水を弱酸性に維持するために必要な希硫酸などの酸性薬剤の量を低減することができる。
【0013】
また、前記泥水管理工程において、泥水に酸化促進作用を有する1μm以下の気泡を添加することにより、弱酸性領域の泥水によって安定化した砒素を含有する土砂の酸化を促進し、当該土砂が、長期間放置されることによって土砂の緩衝能力により中性化し(pHが中性~弱アルカリ性に戻る。)、砒素が再溶出することを長期的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の掘削工事における泥水の管理方法一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の掘削工事における泥水の管理方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1に、本発明の掘削工事における泥水の管理方法の一実施例を示す。
この掘削工事における泥水の管理方法は、自然由来の砒素を含む地層を掘削対象とする泥水を用いる掘削工事における泥水の管理方法において、泥水のpHを4.0~6.0の弱酸性領域となるようにするとともに、泥水に分散剤を添加する泥水管理工程を有している。
【0017】
より具体的には、本発明の掘削工事における泥水の管理方法を適用する、この泥水式シールド工法における掘削方法は、シールドマシン1前面の掘削位置にあるカッター後方に隔壁を設け、切羽と隔壁間のチャンバー内に泥水を地上から加圧して送り、切羽に造成される泥膜をこの泥水圧で保持することで切羽の安定を保ちながらカッターを回転させ、掘削した土砂を泥水と混合させてポンプにより地上へ還流させる。以下、この作業を繰り返すことにより順次掘削を行うようにする。粘性土がある地盤では必然的に泥水濃度(=泥水比重)は上昇していく。
そして、掘削現場から排出される泥水は、一次処理として、振動ふるい等の土砂分離機21、調整槽22及び遠心分離機23等からなる泥水処理設備2において、発生土の分離回収、比重調整などの処理がなされた後、その一部は再び掘削位置へと供給されて再利用される。一方、再利用されない残りの余剰泥水は、二次処理を経て、産業廃棄物(建設汚泥)として処分するようにする。
ここで、遠心分離機23で分離された土砂のうちの細粒分の一部は、裏込め注入プラントに送られ、裏込め材として利用される。
この掘削工事における泥水の管理方法は、一般的には、例えば、泥水比重1.20以下、ファンネル粘度FV:40秒以下、好ましくは、35秒以下、さらに好ましくは、30秒以下で管理され、泥水比重やファンネル粘度の値が上記値を超える泥水は一部を余剰泥水として廃棄処理され、残った泥水は加水して再利用される。
【0018】
この場合において、泥水処理設備2によって行われる泥水管理工程として、pH管理装置3から酸を添加することによって、泥水のpHを4.0~6.0、好ましくは、4.0~5.5、より好ましくは、4.0~5.0の弱酸性領域となるようにするとともに、分散剤添加装置4から分散剤を添加するようにしている。
【0019】
pH管理装置3から添加する酸には、硫酸、塩酸等の任意の酸性薬剤を用いることができる。
【0020】
また、分散剤添加装置4から添加する分散剤は、泥水の酸性化による泥水の粘性の増大を抑制するためのもので、各種分散剤を用いることができるが、泥水のpHを4.0~6.0の弱酸性領域に維持することを阻害しないとともに、泥水を弱酸性に維持するために必要な酸性薬剤の量を低減することができ、弱酸性領域で分散剤の機能を発揮する酸性分散剤を好適に用いることができる。
この酸性分散剤には、ポリアクリル酸系の酸性分散剤、例えば、東亞合成社製「アロン(登録商標)A-10SL」(商品名)(pH:<2、分子量:5,000)(以下、「A-10SL」という。)を好適に用いることができる。
【0021】
泥水管理工程において、泥水のpHを4.0~6.0の弱酸性領域となるようにする理由は、自然由来の砒素を含む地層を掘削対象とする泥水を用いる掘削工事において、掘削位置から泥水と共にポンプ圧送される掘削した土砂に含まれる砒素が、弱酸性領域の泥水によって安定化する(土粒子や土中・泥水中に含まれる鉄分に吸着して、間隙水中に溶出している砒素濃度が低下する。)ようにするためであり、これにより、二次処理前に砒素の溶出を防止することが可能となる。
一方、泥水を酸性化すると泥水の粘性が増大するが、泥水管理工程において、泥水に分散剤を添加することにより、泥水の酸性化による泥水の粘性の増大を抑制する(泥水比重が、例えば、γ=1.20以上の領城でも還流可能な粘性(具体的には、ファンネル粘度FV:40秒以下、好ましくは、35秒以下、さらに好ましくは、30秒以下。)を維持できる)ようにし、余剰泥水の二次処理への負荷を低減することが可能となる。具体的には、泥水の粘性が増大すると、通常の廃棄泥水比重(例えば、γ=1.20)よりかなり低い比重で泥水管理をしなくてはならず、廃棄泥水量(余剰泥水量)も増加して二次処理の負荷は増大し、さらに、泥水比重の低下は二次処理における脱水処理の効果を低下させてしまうが、泥水の酸性化による泥水の粘性の増大を抑制することで、この問題を解消することができる。
これにより、余剰泥水を含む掘削土全量の砒素を低コストで、確実に安定化させるとともに、余剰泥水の二次処理への負荷を低減することができる。
【0022】
また、泥水管理工程において、泥水に酸化促進作用を有する1μm以下の気泡(以下、「UFB」という。)を添加することができる。
この泥水への酸化促進作用を有する1μm以下の気泡の添加は、調整槽22内の泥水を気液混合装置51を介して循環させるようにしたり、調整槽22に清水を供給する清水槽6内の清水を気液混合装置52を介して循環させるようにすることによって行うことができる。
気液混合装置51、52には、例えば、ワイビーエム社製「フォームジェット」(商品名)や「ファビー」(商品名)等の気液混合装置を適用することができる。
この場合、必要に応じて、酸素濃縮装置、酸素ガス発生装置、オゾン発生装置等を併用することによって、空気のほか、酸素やオゾンの1μm以下の気泡(以下、「酸素UFB」、「オゾンUFB」という。)を添加するようにすることができる。
このように、泥水管理工程において、泥水に酸化促進作用を有する1μm以下の気泡を添加することにより、弱酸性領域の泥水によって安定化した砒素を含有する土砂の酸化を促進し、当該土砂が、長期間放置されることによって土砂の緩衝能力により中性化し(pHが中性~弱アルカリ性に戻る。)、砒素が再溶出することを長期的に抑制することができる。すなわち、地中の還元雰囲気で三価の形態を取りやすい砒素(亜砒酸などが優勢)を積極的に酸化することで、五価の形態の砒素(砒酸など)とすることで、鉄分等に吸着しやすい形態とし、長期的にpHがリバウンドしても(土砂の緩衝能力により中性~弱アルカリ性に戻ることがあっても)、砒素が再溶出しにくいように(再溶出を抑制)することができる。
【0023】
そして、再利用されない残りの余剰泥水は、二次処理として、塩化第二鉄等の凝集剤を添加して凝集させた後、フィルタプレス等を用いて脱水処理し、産業廃棄物(建設汚泥)として処分するようにする。
【0024】
[実証試験例]
以下、具体的な実証試験を行った結果について説明する。
【0025】
まず、表1に、実証試験に用いた土砂(粘性土)を示す。
【0026】
【0027】
次に、表1に示す土砂(粘性土)を用いて、以下の実証試験を行った。
・実験ケース(1):所定の泥水比重となるように粘性土をミキサーを用いて解泥し、撹拌器で5分間撹拌し、ファンネル粘度を測定した。
・実験ケース(2):実験ケース(1)の泥水に62.5%希硫酸を添加し、pH5.0程度にpH調整しながら、5~15分間撹拌し、ファンネル粘度を測定した。
・実験ケース(3):実験ケース(2)の泥水に酸性分散剤(A-10SL)を3.3kg/m3(土砂(地山))となるように添加し、5~12分間撹拌し、ファンネル粘度を測定した。
・実験ケース(4):実験ケース(3)の泥水に酸性分散剤(A-10SL)を6.5kg/m3(土砂(地山))となるよう追加添加し、5~10分間撹拌し、ファンネル粘度を測定した。
【0028】
上記の実証試験の結果を表2に示す。
【0029】
【0030】
表2の実証試験の結果からも明らかなように、泥水に希硫酸を添加して酸性化すると泥水の粘性が増大するが、泥水に酸性分散剤(A-10SL)を添加することにより、泥水の酸性化による泥水の粘性の増大を抑制することができる(泥水比重が、例えば、γ=1.20以上の領城でも還流可能な粘性(具体的には、ファンネル粘度FV:40秒以下)を維持できる)ことを確認した。
【0031】
【0032】
次に、上記表3(砒素分析結果)に示すように、自然由来の砒素を含有し、砒素溶出量が基準値(0.01mg/L以下)を超過する粘性土Aを用いて、以下の実証試験を行った。
・ケース1(比較試験):
(1)粘性土A約8000kgに対して、水を加えながら重機で解泥し、5m3の貯泥槽及び10m3の調整槽(撹拌器付き)に泥水を貯留した。
(2)(1)の泥水の一部を3m3の撹拌槽に移送し、30分間撹拌して、泥水比重、泥水pH、ファンネル粘度を測定し、「泥水」試料を採取した。
(3)(2)の泥水を振動ふるい機、遠心分離機の順に移送し、それぞれ砂及びシルト主体の土砂を回収した。
(4)(3)の過程で、「振動ふるい回収土(砂)」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」及び「遠心分離機ろ水(泥水)」試料を採取した。
・ケース2(酸性化試験):
(5)(1)の泥水の一部を3m3の撹拌槽に移送し、酸性分散剤(A-10SL)を3.5kg/m3(土砂(地山))となるように添加し、さらに泥水pHが4.5~5.0となるように50%希硫酸を自動添加しながら撹拌した。
(6)(5)の泥水を30分間撹拌して、泥水比重、泥水pH、ファンネル粘度を測定し、「泥水」試料を採取した。
(7)(6)の泥水を振動ふるい機、遠心分離機の順に移送し、それぞれ砂及びシルト主体の土砂を回収した。
(8)(7)の過程で、「振動ふるい回収土(砂)」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」及び「遠心分離機ろ水(泥水)」試料を採取した。
・ケース3(酸性化+酸素UFB添加試験):
(9)(1)の泥水の一部を3m3の撹拌槽に移送し、酸性分散剤(A-10SL)を3.5kg/m3(土砂(地山))となるように添加し、さらに泥水pHが4.5~5.0となるように50%希硫酸を自動添加しながら撹拌した。
(10)撹拌槽には気液混合装置(「フォームジェット」(商品名))を設置し、酸素ガス発生装置から酸素ガスを供給し、泥水中に酸素UFBを継続して発生させた。
(11)(9)(10)の泥水を30分間撹拌して、泥水比重、泥水pH、ファンネル粘度を測定し、「泥水」試料を採取した。
(12)(9)(10)の泥水を振動ふるい機、遠心分離機の順に移送し、それぞれ砂及びシルト主体の土砂を回収した。
(13)(12)の過程で、「振動ふるい回収土(砂)」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」及び「遠心分離機ろ水(泥水)」試料を採取した。
・ケース4(酸性化+オゾンUFB添加試験):
(14)(1)の泥水の一部を3m3の撹拌槽に移送し、酸性分散剤(A-10SL)を3.5kg/m3(土砂(地山))となるよう添加し、さらに泥水pHが4.5~5.0となるように50%希硫酸を自動添加しながら撹拌した。
(15)撹拌槽には気液混合装置(「フォームジェット」(商品名))を設置し、オゾン発生装置からオゾンを供給し、泥水中にオゾンUFBを継続して発生させた。
(16)(14)(15)の泥水を30分間撹拌して、泥水比重、泥水pH、ファンネル粘度を測定し、「泥水」試料を採取した。
(17)(14)(15)の泥水を振動ふるい機、遠心分離機の順に移送し、それぞれ砂及びシルト主体の土砂を回収した。
(18)(17)の過程で、「振動ふるい回収土(砂)」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」及び「遠心分離機ろ水(泥水)」試料を採取した。
【0033】
次に、ケース1~4について、「泥水」、「遠心分離機ろ水(泥水)」試料は固液分離を行い、固形分について土壌溶出量試験(H15環告18号)に供し、砒素溶出量及び検液pHを測定した。
「振動ふるい回収土(砂)」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」試料は、そのまま土壌溶出量試験(H15環告18号)に供し、砒素溶出量及び検液pHを測定した。
「振動ふるい回収土(砂)」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」試料については、試験7日後、28日後、91日後(「遠心分離機回収土(シルト主体)」のみ)にも土壌溶出量試験(H15環告18号)に供し、砒素溶出量及び検液pHを測定し、回収土の長期的な砒素溶出挙動を調査した。
【0034】
上記の実証試験の結果を表4-1及び表4-2に示す。
【0035】
【0036】
【0037】
表4-1及び表4-2の実証試験の結果からも明らかなように、ケース1(比較試験)では、「泥水」、「遠心分離機回収土(シルト主体)」、「遠心分離機ろ水(泥水)」試料で砒素溶出量が基準値(0.01mg/L以下)を超過した。
長期的にも、砒素の溶出は継続し、砒素溶出量が基準(0.01mg/L以下)を超過した。
ケース2~4では、いずれの試料も、砒素溶出量は基準値(0.01mg/L以下)に適合した。
総じて、検液pH値は、中性~アルカリ性にリバウンドしているが、ケース2~4では砒素は安定化されていることを確認した。
長期的にも、砒素溶出量は基準(0.01mg/L)に適合し、砒素の再溶出が長期的に抑制されていることを確認した。
【0038】
以上、本発明の掘削工事における泥水の管理方法について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の掘削工事における泥水の管理方法は、余剰泥水を含む掘削土全量の砒素を低コストで、確実に安定化させるとともに、余剰泥水の二次処理への負荷を低減することができる特性を有していることから、泥水を用いる掘削工事の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 シールドマシン
2 泥水処理設備
21 土砂分離機
22 調整槽
23 遠心分離機
3 pH管理装置
4 分散剤添加装置
51 気液混合装置
52 気液混合装置
6 清水槽
7 裏込め注入プラント