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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/02 20090101AFI20220523BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20220523BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20220523BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20220523BHJP
【FI】
H04W72/02
H04W84/12
H04W16/14
H04W4/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019024675
(22)【出願日】2019-02-14
(65)【公開番号】P2020136773
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】吉川 信也
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/179397(WO,A1)
【文献】特開2007-013665(JP,A)
【文献】特表2013-544477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル干渉の可能性がある複数のチャネルの中から使用チャネルを指定して通信を行う無線通信装置において、
電源投入時に使用するチャネルを記憶するチャネル記憶手段と、
使用チャネルについて、レーダーによるチャネル干渉の有無を判定するチャネル干渉判定手段と、
前記チャネル干渉判定手段によってチャネル干渉ありの判定が行われたときに、その時点においてチャネル干渉が生じていない他のチャネルを検索して使用チャネルに設定する代替チャネル検索手段と、
電源切断時に、前記チャネル記憶手段に記憶したチャネルを、その時点における使用チャネルに置き換える記憶チャネル更新手段と、
前記代替チャネル検索手段によって前記他のチャネルが検索されたときの自装置の状況に応じて、前記記憶チャネル更新手段に対してチャネルの置き換え動作の実行あるいは中止を判定する更新実施・中止判定手段と、
を備え、前記更新実施・中止判定手段は、前記代替チャネル検索手段によって前記他のチャネルが検索されたときの自装置の位置が、自装置を所有あるいは使用する利用者の生活エリアに含まれる場合に前記記憶チャネル更新手段に対してチャネルの置き換え動作の実施を指示し、含まれない場合に中止を指示するものであって、自装置の位置が前記利用者の自宅から所定範囲に含まれている場合に前記生活エリアに含まれると判定し、自装置の位置が前記利用者の自宅から所定範囲に含まれない場合に前記生活エリアに含まれないと判定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
チャネル干渉の可能性がある複数のチャネルの中から使用チャネルを指定して通信を行う無線通信装置において、
電源投入時に使用するチャネルを記憶するチャネル記憶手段と、
使用チャネルについて、レーダーによるチャネル干渉の有無を判定するチャネル干渉判定手段と、
前記チャネル干渉判定手段によってチャネル干渉ありの判定が行われたときに、その時点においてチャネル干渉が生じていない他のチャネルを検索して使用チャネルに設定する代替チャネル検索手段と、
電源切断時に、前記チャネル記憶手段に記憶したチャネルを、その時点における使用チャネルに置き換える記憶チャネル更新手段と、
前記代替チャネル検索手段によって前記他のチャネルが検索されたときの自装置の状況に応じて、前記記憶チャネル更新手段に対してチャネルの置き換え動作の実行あるいは中止を判定する更新実施・中止判定手段と、
を備え、自装置が車両内に配置されており、
前記更新実施・中止判定手段は、前記代替チャネル検索手段によって前記他のチャネルが検索されたときの自装置の位置が、自装置を所有あるいは使用する利用者の生活エリアに含まれる場合に前記記憶チャネル更新手段に対してチャネルの置き換え動作の実施を指示し、含まれない場合に中止を指示するものであって、所定の目的地までの移動経路に沿って前記利用者の移動を案内する移動案内をしていない状態で、前記代替チャネル検索手段によって前記他のチャネルが検索されたときに、前記生活エリアに含まれると判定し、それ以外のときに、前記生活エリアに含まれないと判定することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
前記複数のチャネルは、5GHz帯の通信帯域に含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
車両に搭載されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等とともに移動可能な無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線LANチャネルの干渉防止、衝突回避については、DFS(Dynamic Frequency Selection)やACS(Auto Channel Selection)などの既存技術が存在する。DFSでは、レーダーによるチャネル干渉を検知した場合に、他のチャネルをスキャンして干渉しないチャネルを自動的に選択することができる。
【0003】
ところで、通信品質の向上のためには、チャネル干渉が生じない2.4GHz帯よりも5GHz帯の使用を継続することが望ましいが、一旦チャネル干渉が検知されると、5GHz帯の他のチャネルにおいてレーダー干渉が発生していないことを確認するために60秒を要したり、チャネル干渉が生じたチャネルについてはチャネル干渉がなくなっても30分間は使用できないなどの制約があるため、できるだけチャネル干渉が生じない5GHz帯のチャネルを使用するための工夫が必要になる。例えば、5GHz帯を使用しかつ静止状態で電波を送受信する他システムから送信された電波の到達範囲に関する情報である干渉データを用いて、現在位置においてチャネルの切り替えが必要であるか否かを判定するようにした無線通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/179397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に開示されたシステムでは、干渉データと自車位置にしたがってその都度使用可能な5GHz帯のチャネルが選択されるため、処理が複雑になるとともに、チャネルの切り替え回数が多くなるという問題があった。5GHz帯のチャネルに切り替える場合には、上述したような数々の制約があるため、チャネルの切り替え回数は少ない方が望ましい。また、最新の干渉データを取得するためには、ネットワーク環境下で干渉データを受信することが望ましいが、現状では必ずしも車載装置においてネットワーク環境は整っておらず、簡易に5GHz帯のチャネル干渉を低減することができる手法が望まれる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、簡単な処理でチャネル干渉を低減することができる無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の無線通信装置は、チャネル干渉の可能性がある複数のチャネルの中から使用チャネルを指定して通信を行う無線通信装置において、電源投入時に使用するチャネルを記憶するチャネル記憶手段と、使用チャネルについて、レーダーによるチャネル干渉の有無を判定するチャネル干渉判定手段と、チャネル干渉判定手段によってチャネル干渉ありの判定が行われたときに、その時点においてチャネル干渉が生じていない他のチャネルを検索して使用チャネルに設定する代替チャネル検索手段と、電源切断時に、チャネル記憶手段に記憶したチャネルを、その時点における使用チャネルに置き換える記憶チャネル更新手段と、代替チャネル検索手段によって他のチャネルが検索されたときの自装置の状況に応じて、記憶チャネル更新手段に対してチャネルの置き換え動作の実行あるいは中止を判定する更新実施・中止判定手段とを備えている。
【0008】
チャネル干渉発生時に新たにチャネルを検索した時点での自装置の状況に応じて、電源切断時の使用チャネルについて、それ以後もチャネル干渉の発生が生じる可能性が低いのか否かを推定することが可能であり、この推定結果を反映させて次回の電源投入時におけるチャネルの継続使用の有無を切り替えるという簡単な処理でチャネル干渉を低減することができる。
【0009】
また、上述した更新実施・中止判定手段は、代替チャネル検索手段によって他のチャネルが検索されたときの自装置の位置が、自装置を所有あるいは使用する利用者の生活エリアに含まれる場合に記憶チャネル更新手段に対してチャネルの置き換え動作の実施を指示し、含まれない場合に中止を指示する。
【0010】
利用者の生活エリア内では使用中のチャネルについてレーダーによるチャネル干渉が検知されて使用チャネルが変更された場合にはそのまま同じチャネルの使用を次回の電源投入後も継続することでチャネル干渉が生じる可能性を低減することができる。
【0011】
一方、利用者の生活エリア外では使用中のチャネルについてレーダーによるチャネル干渉が検知されて使用チャネルが変更された場合には、たまたまその場所においてチャネル干渉が生じただけであって、次回の電源投入時に使用するチャネルを切り替えて生活エリア内に戻ったときにそのまま同じチャネルの使用を継続するとかえってそれ以後のチャネル干渉を引き起こす場合があるため、次回の電源投入時に使用するチャネルを更新しないことでこのようなチャネル干渉が生じることを未然に抑制することができる。
【0012】
また、上述した更新実施・中止判定手段は、自装置の位置が利用者の自宅から所定範囲に含まれている場合に生活エリアに含まれると判定し、自装置の位置が利用者の自宅から所定範囲に含まれない場合に生活エリアに含まれないと判定する。利用者の自宅を中心としたその周辺を考慮することで、生活エリアであるか否かを簡易かつ正確に把握することができる。
【0013】
また、自装置が車両内に配置されており、更新実施・中止判定手段は、所定の目的地までの移動経路に沿って利用者の移動を案内する移動案内をしていない状態で、代替チャネル検索手段によって他のチャネルが検索されたときに、生活エリアに含まれると判定し、それ以外のときに、生活エリアに含まれないと判定する。地図アプリ等のナビゲーション機能を使用せずに移動可能な土地勘のある範囲を考慮することで、生活エリアであるか否かを簡易かつ正確に把握することができる。
【0014】
また、上述した複数のチャネルは、5GHz帯の通信帯域に含まれていることが望ましい。これにより、レーダー使用による障害が多い5GHzの通信帯域を有効に利用することができ、2.4GHzの通信帯域を使用する場合に比べてスループットの高い無線通信を行うことが可能となる。
【0015】
また、無線通信装置は、車両に搭載されていることが望ましい。車両に搭載された無線通信装置の場合には、車両の走行に伴って無線通信装置の使用環境が大きく変化する場合があるため、たまたま出かけて行った遠隔地等の使用環境に合わせてチャネルの設定を変えないようにすることで、かえってチャネル干渉が発生する事態を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の車載装置の全体構成を示す図である。
図2】無線通信装置の構成を示す図である。
図3】起動チャネルの設定、更新を行う無線通信装置の動作手順を示す流れ図である。
図4】チャネル干渉に伴うチャネル変更時に生活エリア内を走行している場合の起動チャネル更新の説明図である。
図5】チャネル干渉に伴うチャネル変更時に生活エリア外を走行している場合の起動チャネル更新の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の無線通信装置を適用した一実施形態の車載装置について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一実施形態の車載装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の車載装置100は、ナビゲーション処理部10、操作部20、入力処理部22、表示処理部30、表示装置32、デジタル-アナログ変換器(D/A)40、スピーカ42、CPU50、メモリ60、無線通信装置80を備えている。この車載装置100は、例えば車両に搭載されたヘッドユニットであり、ナビゲーション装置等として動作するとともに、無線LANのアクセスポイントとしての機能を備えている。
【0019】
ナビゲーション処理部10は、メモリ60に記憶されている地図データを用いて車載装置100が搭載された車両の走行を案内するナビゲーション動作を行う。このナビゲーション動作には、GPS装置12を用いた自車位置検出や、自車位置周辺の地図表示、目的地までの走行経路を計算する経路探索、計算した走行経路に沿って目的地までの走行を案内する経路誘導などの各動作が含まれる。また、本実施形態では、この車両の所有者(あるいは使用者)の自宅が登録されているものとする。なお、ナビゲーション動作に必要な地図データは、メモリ60に格納されているものとしたが、ハードディスク装置などその他の記憶装置に格納したり、外部の地図配信サーバ(図示せず)などから無線通信によって取得するようにしてもよい。
【0020】
操作部20は、車載装置100に対する利用者(車載装置100を所有あるいは使用する利用者)による操作を受け付けるためのものであり、表示装置32の周囲に配置された各種の操作キー、操作スイッチ、操作つまみ等を含んで構成されている。また、表示装置32に各種の操作画面や入力画面が表示された時点で、これらの操作画面や入力画面の一部を利用者が指などで直接指し示すことにより、操作画面や入力画面の表示項目を選択することができるようになっており、このような操作画面や入力画面を用いた操作を可能とするために、指し示された指などの位置を検出するタッチパネルが操作部20の一部として備わっている。入力処理部22は、操作部20を監視しており、利用者による操作内容を決定する。
【0021】
表示処理部30は、各種の操作画面や入力画面等を表示する映像信号を出力して表示装置32にこれらの画面を表示するとともに、ナビゲーション処理部10によって作成した地図画面や交差点案内画面等を表示する映像信号を出力して表示装置32にこれらの画面を表示する。表示装置32は、運転席と助手席の中央前方に設置されており、例えば液晶表示装置(LCD)を用いて構成されている。
【0022】
デジタル-アナログ変換器40は、ナビゲーション処理部10によって生成される案内音声等をアナログの音声信号に変換してスピーカ42から出力する。
【0023】
CPU50は、メモリ60に格納された所定のプログラムを実行することにより、車載装置100の全体を制御するとともに、無線通信装置80において起動チャネルを設定する際に必要な各種情報の提供を支援する動作を行う。
【0024】
メモリ60は、CPU50の動作プログラムを格納するとともに、CPU50の動作に必要な各種データを格納する作業領域として用いられる。CPU50によって実行される動作プログラムには、上述した起動チャネルに関する支援動作のためのプログラムが含まれている。メモリ60は、例えば、ROMやRAM等の半導体メモリによって構成されており、これら以外にハードディスク装置などを含むようにしてもよい。
【0025】
無線通信装置80は、2.4GHz帯および5GHz帯に含まれる複数のチャネルの中から使用チャネルを指定して無線通信を行うものであり、外部の携帯端末装置(図示せず)の無線通信を中継するアクセスポイントとしての機能を有する。なお、本実施形態では、2.4GHzの通信帯域を使用する場合に比べてスループットの高い5GHz帯の無線帯域を優先して使用するものとする。また、図1に示す構成では、車載装置100に無線通信装置80を内蔵する場合について説明したが、車載装置100の外部に外付けするようにしてもよい。
【0026】
図2は、無線通信装置80の構成を示す図である。図2に示すように、無線通信装置80は、無線通信部81、DFS処理部82、起動ch(チャネル)記憶部83、起動時ch設定部84、起動ch更新部85、更新実施・中止判定部86を含んで構成されている。
【0027】
無線通信部81は、IEEE802.11等の規格に基づいて2.4GHz帯および5GHz帯に含まれるいずれかのチャネルを用いたWi-Fiによる無線通信を制御する。
【0028】
DFS処理部82は、無線通信部81による無線通信に用いられるチャネルについて、気象レーダ等が使用している電波を検出(チャネル干渉の検出)し、チャネル干渉が生じていない他のチャネルを検索して新たな使用チャネルとして設定する処理を行う。
【0029】
起動ch記憶部83は、無線通信装置80(車載装置100)の電源投入時に使用するチャネル(起動チャネル)を記憶する。
【0030】
起動時ch設定部84は、無線通信装置80(車載装置100)の電源投入時に、起動ch記憶部83に記憶されているチャネルを、無線通信部81による無線通信の使用チャネルとして設定する。
【0031】
起動ch更新部85は、無線通信装置(車載装置100)の電源切断時に、起動ch記憶部83に記憶されたチャネルを、その時点における使用チャネルに置き換える。
【0032】
更新実施・中止判定部86は、チャネル干渉発生時にDFS処理部82によって他のチャネルが検索されたときの車載装置100の状況に応じて、起動ch更新部85に対してチャネルの置き換え動作の実行あるいは中止を判定する。
【0033】
上述した起動ch記憶部83がチャネル記憶手段に、DFS処理部82がチャネル干渉判定手段、代替チャネル検索手段に、起動ch更新部85が記憶チャネル更新手段に、更新実施・中止判定部86が更新実施・中止判定手段にそれぞれ対応する。
【0034】
本実施形態の車載装置100はこのような構成を有しており、次に、無線通信装置80において起動チャネルの設定および更新を行う動作について説明する。
【0035】
図3は、起動チャネルの設定、更新を行う無線通信装置80の動作手順を示す流れ図である。電源投入によって車載装置100が起動されると、起動時ch設定部84は、起動ch記憶部83に記憶されているチャネルを読み出す(ステップ100)。次に、DFS処理部82は、この読み出されたチャネルにおいて所定時間(60秒)レーダー検知を行って、チャネル干渉が発生しているか否かを判定する(ステップ102)。チャネル干渉が発生していない場合には否定判断が行われ、起動時ch設定部84は、このチャネルを無線通信部81の使用チャネルとして設定する(ステップ104)。無線通信部81は、設定された使用チャネルを用いて無線通信動作を行う(ステップ106)。
【0036】
その後、更新実施・中止判定部86は、利用者によって電源切断が指示されたか否かを判定する(ステップ108)。例えば、車両のアクセサリースイッチ(図示せず)がオフされることで電源切断が指示されるものとすると、アクセサリースイッチがオフされない間はステップ108の判定において否定判断が行われる。この場合はステップ102に戻って、チャネル干渉の判定動作が繰り返される。
【0037】
また、レーダーが検知されてチャネル干渉の発生が検出されると、ステップ102の判定において肯定判断が行われる。なお、このチャネル干渉は、電源投入直後のレーダー検知動作で発見された場合と、その後のアクセスポイントとして動作中のレーダー検知動作で発見された場合の両方が含まれる。チャネル干渉が発生すると、DFS処理部82は、DFSスキャンを実施して、チャネル干渉が生じていない他のチャネルを検索する(ステップ110)。上述したように、本実施形態では、2.4GHzの通信帯域よりもスループットの高い5GHz帯の無線帯域を優先しており、ステップ110ではチャネル干渉が生じていない5GHz帯の他のチャネルが検索される。その後、ステップ104に移行し、この新たに検索されたチャネルが使用チャネルに設定される。
【0038】
また、利用者によって電源切断が指示(アクセサリースイッチがオフ)されると、ステップ108の判定において肯定判断が行われる。次に、更新実施・中止判定部86は、電源投入から今までの間にチャネル変更が行われたか否かを判定する(ステップ112)。チャネル変更が行われなかった場合には否定判断が行われ、起動ch記憶部83(起動チャネル)の更新は行わずに、一連の処理を終了する。
【0039】
また、チャネル変更が行われた場合にはステップ112の判定において肯定判断が行われる。次に、更新実施・中止判定部86は、チャネル変更時の自車位置が利用者の生活エリア内にあるか否かを判定する(ステップ114)。
【0040】
生活エリア内に含まれるか否かは、例えば、以下の基準で判断される。なお、以下に示す基準は一例であって、基準の追加、変更、削除を適宜行うようにしてもよい。また、生活エリア内にあるか否かを判定する情報(自車位置、自宅位置、経路誘導動作中か否かなど)は、ナビゲーション処理部10で作成されて、CPU50経由で提供される。
(1)チャネル変更時の自車位置が利用者の自宅(予め自宅位置がナビゲーション処理部10に登録されているものとする)から所定範囲(例えば、直線距離で10km以内)に含まれている場合に生活エリアに含まれると判定し、含まれない場合に生活エリアに含まれないと判定する。
(2)経路探索処理によって得られた所定の目的地(利用者によって指定された目的地)までの走行経路に沿って自車両の移動を案内する移動案内(経路誘導)をしていない状態でチャネル変更が行われたときに生活エリアに含まれると判定し、移動案内(経路誘導)中にチャネル変更が行われときに生活エリアに含まれないと判定する。
【0041】
自車位置が生活エリア内の場合にはステップ114の判定において肯定判断が行われる。次に、更新実施・中止判定部86は、電源切断時の使用チャネルと起動ch記憶部83に記憶されているチャネルとが同じであるか否かを判定する(ステップ116)。異なる場合(電源投入から電源切断までの間にチャネル干渉が生じて使用チャネルが変更された場合)には否定判断が行われる。この場合には、更新実施・中止判定部86は、起動ch更新部85に実施指示を送り、起動ch記憶部83に記憶されたチャネルを、電源切断時の使用チャネルに置き換える動作が実施される(ステップ118)。なお、電源切断時の使用チャネルと起動ch記憶部83に記憶されているチャネルとが同じ場合にはステップ116の判定において肯定判断が行われ、ステップ118の起動ch記憶部83に対する更新動作は省略される。
【0042】
また、自車位置が生活エリア外の場合にはステップ114の判定において否定判断が行われる。この場合には、更新実施・中止判定部86は、起動ch更新部85に中止指示を送り、起動ch記憶部83に記憶されたチャネルの更新動作は中止される。
【0043】
図4は、チャネル干渉に伴うチャネル変更時に生活エリア内を走行している場合の起動チャネル更新の説明図である。図4に示した例では、電源投入時に使用チャネル(100ch)に設定された後、例えば自宅周辺の生活エリア内でチャネル干渉が検出されて他のチャネル(120ch)に変更され、その後電源が切断された。この場合には、チャネル変更時の自車位置が生活エリア内にあるため、電源切断時には、起動ch更新部85による起動ch記憶部83の更新が行われ、それまでの起動チャネルが100chから120chに変更される。次回の電源投入時には、起動ch記憶部83に記憶されている起動チャネル(120ch)が読み出されて、無線通信部81の使用チャネルとして設定される。
【0044】
図5は、チャネル干渉に伴うチャネル変更時に生活エリア外を走行している場合の起動チャネル更新の説明図である。図5に示した例では、電源投入時に使用チャネル(100ch)に設定された後、例えば生活エリア外を旅行中にチャネル干渉が検出されて他のチャネル(120ch)に変更され、その後電源が切断された。この場合には、チャネル変更時の自車位置が生活エリア外にあるため、電源切断時には、起動ch更新部85による起動ch記憶部83の更新が中止され、それまでの起動チャネルが100chのまま維持される。次回の電源投入時には、起動ch記憶部83に記憶されている起動チャネル(100ch)が読み出されて、無線通信部81の使用チャネルとして設定される。
【0045】
このように、本実施形態の車載装置100(無線通信装置80)では、チャネル干渉発生時に新たにチャネルを検索した時点での自装置の状況に応じて、電源切断時の使用チャネルについて、それ以後もチャネル干渉の発生が生じる可能性が低いのか否かを推定することが可能であり、この推定結果を反映させて次回の電源投入時におけるチャネルの継続使用の有無を切り替えるという簡単な処理でチャネル干渉を低減することができる。
【0046】
特に、利用者の生活エリア内では使用中のチャネルについてレーダーによるチャネル干渉が検知されて使用チャネルが変更された場合にはそのまま同じチャネルの使用を次回の電源投入後も継続することでチャネル干渉が生じる可能性を低減することができる。
【0047】
一方、利用者の生活エリア外では使用中のチャネルについてレーダーによるチャネル干渉が検知されて使用チャネルが変更された場合には、たまたまその場所においてチャネル干渉が生じただけであって、次回の電源投入時に使用するチャネルを切り替えて生活エリア内に戻ったときにそのまま同じチャネルの使用を継続するとかえってそれ以後のチャネル干渉を引き起こす場合があるため、次回の電源投入時に使用するチャネルを変更しないことでこのようなチャネル干渉が生じることを未然に抑制することができる。
【0048】
また、生活エリア内か否かを判定する際に、利用者の自宅を中心としたその周辺を考慮することで、簡易かつ正確に把握することができる。あるいは、生活エリア内か否かを判定する際に、地図アプリ等のナビゲーション機能を使用せずに移動可能な土地勘のある範囲を考慮することで、簡易かつ正確に把握することができる。
【0049】
また、このような起動チャネルの更新を適宜行うことにより、レーダー使用による障害が多い5GHzの通信帯域を有効に利用することができ、2.4GHzの通信帯域を使用する場合に比べてスループットの高い無線通信を行うことが可能となる。
【0050】
また、車両に搭載された無線通信装置80の場合には、車両の走行に伴って無線通信装置80の使用環境が大きく変化する場合があるため、たまたま出かけて行った遠隔地等の使用環境に合わせてチャネルの設定を変えないようにすることで、かえってチャネル干渉が発生する事態を未然に防止することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、車両に搭載された無線通信装置80について説明したが、自装置の位置検出や自宅登録、ナビゲーション動作などが可能な地図アプリを有するスマートフォンなどの携帯端末装置をアクセスポイントとして使用する場合にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述したように、本発明によれば、チャネル干渉発生時に新たにチャネルを検索した時点での自装置の状況に応じて、電源切断時の使用チャネルについて、それ以後もチャネル干渉の発生が生じる可能性が低いのか否かを推定することが可能であり、この推定結果を反映させて次回の電源投入時におけるチャネルの継続使用の有無を切り替えるという簡単な処理でチャネル干渉を低減することができる。
【符号の説明】
【0053】
100 車載装置
10 ナビゲーション処理部
80 無線通信装置
81 無線通信部
82 DFS処理部
83 起動ch記憶部
84 起動時ch設定部
85 起動ch更新部
86 更新実施・中止判定部
図1
図2
図3
図4
図5