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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】医用画像診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20220523BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20220523BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/055 320
A61B6/03 321Z
G01T1/161 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017148873
(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公開番号】P2019025103
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】堀田 あいら
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆
(72)【発明者】
【氏名】岐津 裕子
(72)【発明者】
【氏名】上原 伸一
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-202514(JP,A)
【文献】特開2008-064911(JP,A)
【文献】特開2017-026866(JP,A)
【文献】特開昭58-017429(JP,A)
【文献】特開2017-093949(JP,A)
【文献】特開2017-080298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/03
G01T 1/161
G02B 5/04
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアが形成され、医用撮像機構を装備する架台と、
前記ボア内を移動可能な移動体と、
前記移動体に設けられ、曲面形状を有し、映写機からの映像が前記ボアへの天板の挿入側とは反対側から投影されるスクリーンと、
前記スクリーンの凸面側に投影され、前記スクリーンの凹面側に映し出された映像を直接入射し、入射した光を反射する反射部と、
前記移動体に設けられ、前記反射部を支持するフレームと、
を具備し、
前記反射部は、複数のプリズムを輪帯ではなく1次元方向に沿って配列した構造を有し、
前記複数のプリズムは、前記光を前記複数のプリズムの表面で反射させる、
医用画像診断装置。
【請求項2】
前記1次元方向は、前記ボア内における前記天板の移動方向を前記反射部に投影させた方向である、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記複数のプリズム各々は、
前記1次元方向とは異なる方向に沿って延伸し、
前記反射部における前記1次元方向に湾曲する、
請求項1または2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記1次元方向への湾曲の程度は、前記複数のプリズムにおいてそれぞれ異なる、
請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記複数のプリズム各々において、水平面に対するプリズム面の傾斜角度は、前記水平面に対する前記反射部の傾斜角度より大きい、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記プリズム面の傾斜角度は、前記複数のプリズムにおいてそれぞれ異なる、
請求項5に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記複数のプリズムのうち隣接する2つのプリズムの間隔はそれぞれ異なる、
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記間隔は、0.5mm以下である、
請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記複数のプリズムは、前記反射部において、前記映像に関する光が前記反射部に入射する入射面側に設けられる、
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記複数のプリズムは、プリズムミラーにより構成される、
請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置は、核磁気共鳴を用いて非侵襲的に患者の断層画像を取得する装置である。MRI装置は、放射線被爆がなく、高解像度の患部の3次元データを取得可能であって、医用現場で広く使われている。
【0003】
MRI装置は、磁石等の撮像機構を装備する架台を有している。架台には略中空形状のボアが形成されている。MR撮像はボア内に患者が挿入された状態において行われる。比較的大きいボア径を有する架台が開発されているが、長時間に及ぶMR撮像時間や架台駆動中の騒音、ボア内での圧迫感及び閉塞感により、MR検査にストレスを感じる患者は少なくない。特に、閉所恐怖を持つ患者は、MRI装置における撮像空間内の環境は耐えられないことがある。このため、閉所恐怖を持つ患者は、MRI装置による検査を受けることができないことも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2016-202514号公報
【文献】特願2016-202515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、架台のボア内において被検体の閉塞感の軽減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、架台と、移動体と、スクリーンと、反射部と、フレームとを有する。架台は、ボアが形成され、医用撮像機構を装備する。移動体は、前記ボア内を移動可能である。スクリーンは、前記移動体に設けられ、映写機からの映像が前記ボアへの天板の挿入側とは反対側から投影される。反射部は、前記スクリーンに投影された映像を反射する。フレームは、前記移動体に設けられ、前記反射部を支持する。前記反射部は、複数のプリズムを1次元方向に沿って配列した構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置を含む医用画像診断システムの構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態における磁気共鳴イメージング装置の構成を示す図である。
図3図3は、本実施形態における移動式スクリーン装置の斜視図である。
図4図4は、本実施形態における移動式スクリーン装置の側面図である。
図5図5は、本実施形態において、互いに隣接した移動式スクリーン装置と天板との斜視図である。
図6図6は、本実施形態において、スクリーンと反射板と頭部コイル装置を装着した被検体との位置関係の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態において、反射板における反射特性の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態において、反射板を天板の載置面側から見た図である。
図9図9は、本実施形態において、1次元方向に湾曲した複数のプリズムを有する反射板を天板の載置面側から見た図である。
図10図10は、本実施形態における図5および図8のFP-FP線矢視断面図である。
図11図11は、本実施形態の応用例において、図5および図8のFP-FP線矢視断面図である。
図12図12は、本実施形態の応用例において、図5および図8のFP-FP線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合に行う。
【0009】
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置10を含む医用画像診断システム1の構成を示す図である。図1に示すように、医用画像診断システム1は、互いに有線又は無線で通信可能に接続された医用画像診断装置10と映写機100と映写機制御装置200とを含む。医用画像診断装置10は、架台11、寝台13、移動式スクリーン装置15及び撮像制御ユニット17を有する。架台11は、医用撮像を実現するため医用撮像機構を装備する。架台11には、例えば、中空形状を有するボアが形成されている。なお、ボアは、例えば、70cm程度のオープン形状であってもよい。また、架台11は、ボアの代わりに、開放された撮像空間を有していてもよい。架台11の前方には寝台13が設置されている。寝台13は被検体Pが載置される天板を移動自在に支持する。寝台13は架台11及びコンソール等による制御に従い天板を移動する。架台11のボア内には移動式スクリーン装置15が移動可能に設けられている。架台11の後方には映写機100が設置されている。移動式スクリーン装置15には映写機100からの映像が投影される。
【0010】
映写機制御装置200は、映写機100を制御するコンピュータ装置である。映写機制御装置200は、映写対象の映像に関するデータを映写機100に供給する。
【0011】
映写機100は、映写機制御装置200からのデータに対応する映像を移動式スクリーン装置15のスクリーンに投影する。
【0012】
撮像制御ユニット17は、医用画像診断装置10の中枢として機能する。例えば、撮像制御ユニット17は、医用撮像を行うために架台11を制御する。また、撮像制御ユニット17は、医用撮像において架台11により収集されたデータに基づいて被検体Pに関する医用画像を再構成する。なお、撮像制御ユニット17は、映写機制御装置200を介して映写機100を制御可能に構成されてもよい。なお、本実施形態における医用画像診断システム1の構成は上記に限定されない。
【0013】
本実施形態に係る医用画像診断システム1は、映写機100と移動式スクリーン装置15とを利用して、医用画像診断装置10による医用撮像時におけるボア内の居住性を高めることを可能にする。本実施形態に係る医用画像診断装置10としては、ボアが形成された架台11を用いて被検体Pを撮像可能な如何なる装置でもよい。具体的には、本実施形態に係る医用画像診断装置10としては、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置、X線コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置及びSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等の単一モダリティに適用可能である。或いは、本実施形態に係る医用画像診断装置10としては、MR/PET装置、CT/PET装置、MR/SPECT装置、CT/SPECT装置等の複合モダリティに適用されてもよい。以下の説明を具体的に行うため、本実施形態に係る医用画像診断装置10は、MRI装置10であるとする。また、MRI装置10と映写機100と映写機制御装置200とを含む医用画像診断システム1をMRIシステム1と呼ぶことにする。
【0014】
図2は、本実施形態に係るMRI装置10の構成を示す図である。図2に示すように、MRI装置10は、撮像制御ユニット17、架台11、寝台13及び移動式スクリーン装置15を有する。撮像制御ユニット17は、傾斜磁場電源21、送信回路23、受信回路25及びコンソール27を有する。コンソール27は、撮像制御回路31、処理回路33、ディスプレイ35、インタフェース36、及び記憶装置37を有する。撮像制御回路31、処理回路33、ディスプレイ35、インタフェース36、及び記憶装置37は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25は、コンソール27と架台11とは別個に設けられている。
【0015】
架台11は、静磁場磁石41、傾斜磁場コイル43及びRFコイル45を有する。また、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とは架台11の筐体(以下、架台筐体と呼ぶ)51に収容されている。なお、MRI装置10は、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43との間において中空の円筒形状のシムコイルを有していてもよい。架台筐体51には中空形状を有するボア53が形成されている。架台筐体51のボア53内にRFコイル45が配置される。また、架台筐体51のボア53内に本実施形態に係る移動式スクリーン装置15が配置される。
【0016】
静磁場磁石41、傾斜磁場コイル43及びRFコイル45等は、医用撮像機構に相当する。なお、医用画像診断装置10がCT装置、PET装置、SPECT装置、CT/PET装置、MR/PET装置、MR/SPECT装置、CT/SPECT装置等の各種モダリティである場合、医用撮像機構は、これらモダリティにおける架台に装備された各種撮像機器一式に相当する。
【0017】
静磁場磁石41は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。静磁場磁石41としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石または常伝導磁石等が使用される。ここで、静磁場磁石41の中心軸をZ軸に規定し、Z軸に対して鉛直に直交する軸をY軸と呼び、Z軸に水平に直交する軸をX軸と呼ぶことにする。
【0018】
傾斜磁場コイル43は、静磁場磁石41の内側に取り付けられ、中空の略円筒形状に形成されたコイルユニットである。傾斜磁場コイル43は、傾斜磁場電源21からの電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。
【0019】
傾斜磁場電源21は、撮像制御回路31による制御に従い傾斜磁場コイル43に電流を供給する。傾斜磁場電源21は、傾斜磁場コイル43に電流を供給することにより、傾斜磁場コイル43に傾斜磁場を発生させる。
【0020】
RFコイル45は、傾斜磁場コイル43の内側に配置される。RFコイル45は、送信回路23からRFパルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。RFコイル45から発生された高周波磁場は、対象原子核に固有の共鳴周波数で振動し、被検体P内に存在する対象原子核を励起させる。RFコイル45は、励起された対象原子核から発せられる磁気共鳴信号(以下、MR信号と呼ぶ)を受信する。受信されたMR信号は、有線又は無線を介して受信回路25に供給される。なお、上述のRFコイル45は、送受信機能を有するコイルであるとしたが、送信用RFコイルと受信用RFコイルとが別々に設けられてもよい。
【0021】
送信回路23は、被検体P内に存在する例えばプロトンなどの対象原子核を励起するための高周波磁場を、RFコイル45を介して被検体Pに送信する。
【0022】
受信回路25は、励起された対象原子核から発生されるMR信号を、RFコイル45を介して受信する。受信回路25は、受信されたMR信号を信号処理してデジタルのMR信号を発生する。デジタルのMR信号は、有線又は無線を介して処理回路33に供給される。
【0023】
架台11に隣接して寝台13が設置される。寝台13は、天板131と基台133とを有する。天板131には被検体Pが載置される。基台133は、天板131をX軸、Y軸、Z軸各々に沿ってスライド可能に支持する。基台133には寝台駆動装置135が収容される。寝台駆動装置135は、撮像制御回路31からの制御を受けて天板131を移動させる。寝台駆動装置135としては、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の如何なるモータが用いられてもよい。
【0024】
撮像制御回路31は、処理回路33から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源21、送信回路23、受信回路25、及び撮像制御回路31を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源21により傾斜磁場コイル43に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源21により電流が傾斜磁場コイル43に供給されるタイミング、送信回路23によりRFコイル45に供給されるRFパルスの大きさ、送信回路23によりRFコイル45にRFパルスが供給されるタイミング、受信回路25によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。
【0025】
処理回路33は、ハードウェア資源として、プロセッサと各種メモリとを有する。処理回路33は、システム制御機能331、再構成機能333、画像処理機能335等の各種処理機能を有する。システム制御機能331、再構成機能333、画像処理機能335等の各種処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置37に記憶されている。処理回路33は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置37から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路33は、図2の処理回路33内に示された各機能を有することになる。
【0026】
なお、図2においては単一の処理回路33にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路33を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、処理回路33が有するシステム制御機能331、再構成機能333、画像処理機能335は、それぞれシステム制御部、再構成部、画像処理部の一例である。
【0027】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0028】
プロセッサは記憶装置37に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶装置37にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。寝台制御回路109、送信回路23、受信回路25、撮像制御回路31等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0029】
処理回路33は、システム制御機能331により、MRI装置10を統括的に制御する。具体的には、処理回路33は、記憶装置37に記憶されているシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置10の各回路を制御する。例えば、処理回路33は、システム制御機能331により、インタフェース36を介して操作者から入力された撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置37から読み出す。処理回路33は、撮像プロトコルを撮像制御回路31に出力し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0030】
処理回路33は、再構成機能333により、リードアウト傾斜磁場の勾配強度に従ってk空間のリードアウト方向に沿ってMRデータを配列する。処理回路33は、k空間に配列されたMRデータに対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を再構成する。処理回路33は、MR画像を、ディスプレイ35や記憶装置37に出力する。
【0031】
処理回路33は、画像処理機能335により、MR画像に種々の画像処理を施す。処理回路33は、画像処理が施されたMR画像を、ディスプレイ35や記憶装置37に出力する。
【0032】
ディスプレイ35は、種々の情報を表示する。例えば、ディスプレイ35は、再構成されたMR画像、画像処理が施されたMR画像を表示する。また、ディスプレイ35は、映写機100により映写される映像を表示してもよい。
【0033】
インタフェース36は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路等を有する。インタフェース36における回路は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路である。なお、インタフェース36における回路は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、本MRI装置10とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路もインタフェース36における回路の例に含まれる。なお、インタフェース36は、有線のケーブル、無線、ネットワーク等を介して、映写機制御装置200、映写機100、PACSサーバ等の外部装置との間でデータ通信を行う回路を有していてもよい。
【0034】
記憶装置37は、k空間に配列されたMRデータ、MR画像のデータ等を記憶する。記憶装置37は、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置37は、処理回路33で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶装置37は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(hard disk drive)、ソリッドステートドライブ(solid state drive)、光ディスク等である。また、記憶装置37は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0035】
以下、図3乃至図5を参照しながら本実施形態における移動式スクリーン装置15の構造について説明する。図3は、本実施形態に係る移動式スクリーン装置15の斜視図である。図4は、移動式スクリーン装置15の側面図である。図5は、互いに隣接した移動式スクリーン装置15と天板131との斜視図である。図3乃至図5に示すように、スクリーン63および反射板(反射部)67は、MRI装置10のボア53内に適用される場合は、移動体61を介して天板131に固定される。好適には、反射板67は、天板131における頭部位置の直上に配置される。なお、反射板67は、頭部コイル装置に搭載されてもよい。
【0036】
図3乃至図5に示すように、移動式スクリーン装置15は、移動体61、スクリーン63、フレーム65及び反射板67を有する。移動体61は、スクリーン63とフレーム65とを支持する。移動体61は、架台筐体51の内壁57において中心軸Zに平行に設けられた不図示のレールに沿って移動可能な構造体(移動台車)である。レールおよび移動体61は、磁場に作用しない非磁性材料により形成される。移動体61の下部には、レールにおける走行性を高めるため、レールを転がる不図示の車輪が設けられる。なお、移動体61がレールを走行可能であれば、必ずしも車輪が設けられる必要は無く、レールに接触する面が低摩擦係数を有する材料により形成されればよい。また、レールと車輪の代わりに、直動軸受等のガイドが設けられてもよい。図5に示すように、移動体61と天板131とは隣接していてもよい。このとき、移動体61は、天板131とともにボア53の中心軸Zに沿って、ボア内を移動可能となる。天板131の移動体61側には、頭部コイル装置の下部コイル137が取り付けられている。下部コイル137は、天板131に仰向けに載置された被検体Pの視界を遮ることなく被検体Pの後頭部を覆うことができる湾曲形状を有している。
【0037】
図3乃至図5に示すように、スクリーン63は、移動体61に設けられている。スクリーン63には、映写機100からの映像がボア53への天板131の挿入側とは反対側から投影される。すなわち、映写機100は、スクリーン63を挟んで寝台13とは反対側に配置される。スクリーン63における少なくとも上半分は、ボア53においてZ軸に垂直な断面形状と同様な形状を有し、ボア内を移動可能なサイズで構成される。スクリーン63の下端は、移動体61の形状に合わせた形状を有する。ここで、スクリーン63の映写機100側の面を表面、寝台13側の面を裏面と呼ぶことにする。
【0038】
スクリーン63は、アクリル、ポリカーボネート、ウレタン系ポリマー、オレフェン系ポリマーなどの非磁性の透明基材の表面に、散乱加工または拡散加工されて形成される。ここで、散乱加工とは、例えば、サンドブラストなどの表面処理(ブラスト処理)、微細な凹凸面を形成するコーティング塗装、拡散加工とは、例えばマイクロプリズムなどの各種拡散器(ディフューザー)の取り付けなどである。なお、これらの加工の代わりに、透明基材に白色粒子を分散させてもよい。また、スクリーン63は、表面に映像を映し出すため、スクリーン63は半透明の材料で形成されるとよい。このような半透明の材料としては、半透明のプラスチックや磨りガラス等が用いられるとよい。
【0039】
映写機100から射出された投影光は、スクリーン63の表面に照射され、投影光に対応する映像が裏面に映し出される。これにより被検体P等は、寝台13側から、スクリーン63に映し出された映像を、反射板67を介して見ることができる。スクリーン63の表面形状は、平面形状であっても曲面形状であってもよい。スクリーン63の表面形状が曲面形状である場合、凸面が映写機100側を向く、すなわち、凸面が表面を成すように配置されるとよい。凸面が映写機100側を向くことにより、天板131に載置された被検体Pの頭部の後方周辺をスクリーン63で覆うことが可能となる。これにより被検体Pの視野をスクリーン63に映し出された映像で満たし、被検体Pを映像に没入させることが可能となる。
【0040】
図3図4及び図5に示すように、フレーム65は、移動体61に設けられ、反射板67を支持する。具体的には、フレーム65は、フレーム65と移動体61との接続箇所66を介して中心軸Zに沿って移動可能に移動体61に設けられる。これにより、反射板67の位置は、中心軸Zに沿って調整可能となる。フレーム65は、例えば、透明な材質により構成される。これにより、フレーム65による被検体Pへの圧迫感を低減させることができる。接続箇所66は、直動軸受とガイドレール62との接触面に相当する。接続箇所66は、移動体61において、映写機100からスクリーン63に投影される映像を遮断しない位置に設けられる。
【0041】
フレーム65は、第1支持部651と第2支持部653とを有する。第1支持部651の下端は、不図示の直動軸受およびガイドレール62を介して、移動体61に設けられる。第1支持部651は、例えば、ボア53の内壁57に沿って湾曲した形状を有するアーチ部材である。第1支持部651の形状は、映写機100からスクリーン63に投影される映像を遮断しない形状であれば、上記形状に限定されない。第2支持部653は、第1支持部651からスクリーン63を超えて寝台13側に延伸するアーム部材である。例えば、第2支持部653は、スクリーン63における上端と下端の中点より上部のスクリーン63の外縁とボア53の内壁57との間隙を通すことにより、スクリーン63を跨いで、反射板67を支持する。
【0042】
また、第2支持部653は、図4に示すように、第2支持部653に設けられた回転機構(図示せず)により、回転軸RR1回りに反射板67を回転可能に支持する。回転軸RR1は、例えば、スクリーン63に対する反射板67の向きを調整可能なようにX軸に平行に設けられる。なお、第2支持部653の構造は、図3乃至図5に記載の構造に限定されない。例えば、第2支持部653は、第1支持部651の上端から、ボア53の中心軸Zに沿ってスクリーン63を超えて、下部コイル137の直上の位置まで延伸する一つのアーム部材であってもよい。
【0043】
反射板67は、スクリーン63に投影された映像を反射する。具体的には、反射板67は、移動体61と天板131とが連結されている状態において、天板131に載置された被検体Pの頭部または頭部コイル装置にぶつからない程度に移動体61の表面から離れて、フレーム65の第2支持部653により支持される。図3乃至図5に示すように、反射板67は、第2支持部653の寝台13側の略端部に設けられている。反射板67は、スクリーン63の表面に映し出された映像を反射する。反射板67は、非磁性材料により構成される。反射板67は、例えば、軽量化および安全性を考慮してプラスチックミラーで構成されることが好ましい。プラスチックミラーは、反射特性を有するミラー薄膜(反射膜)を透明プラスチック上に形成することにより、作成される。ミラー薄膜は、金属薄膜よりも非磁性材料の誘電体多層膜が好ましい。下部コイル137に頭部が配置された被検体Pは、スクリーン63に投影された映像を、反射板67を介して見ることができる。この時、反射板67は、スクリーン63に投影された映像を被検体Pの視線方向に反射させるために、水平方向に対して傾けて配置される。
【0044】
例えば、架台筐体51に形成されたボア53が、ボア53の口径が略60cmなどのナローボアで構成される場合、天板131に載置された被検体Pの目の位置からボア53の内壁57までの距離は、20cm以下となる。さらに、被検体Pに対して頭部コイル装置が装着された場合、頭部コイル装置の最頂位置からボア53の内壁57までの距離は、例えば、10cm未満となる。これらのことから、ナローボアまたは頭部コイル装置の使用時において、反射板67における正反射を介してスクリーン63に投影された映像を被検体Pに提示するために、水平方向に対して反射板67を傾斜させることが困難となる。以下、上記困難を解消する反射板67の構造について説明する。
【0045】
反射板67は、光の入射方向に対して正反射方向とは異なる方向に反射させる構造を有する。この反射板67により、ナローボアまたは頭部コイル装置の使用時においてもスクリーン63に投影された映像を、被検体Pに提示することができる。図6は、スクリーン63と反射板67と頭部コイル装置140を装着した被検体Pとの位置関係の一例を示す図である。図7は、反射板67における反射特性の一例を示す図である。図6に示すように、反射板67は、被検体Pおよび頭部コイル装置140の上部コイル139に接触しない傾斜角度で傾斜される。図6および図7における破線は、反射板67へ水平方向に入射した光LEが反射板67で反射され、垂直方向Yに対する角度θnに沿った反射光LRが被検体Pの目に到達する一例を示している。ここで、角度θnの沿った反射光LRは、被検体Pの視野の中心線の一例である。
【0046】
スクリーン63から離れた反射板67の端部(以下、下端と呼ぶ)よりスクリーン63に近い反射板67の端部(以下、上端と呼ぶ)がボア53の内壁57に近くなるように、反射板67は、傾けられる。また、反射板67の下端が反射板67の上端より被検体Pに近くなるように、反射板67は、傾けられる。なお、スクリーン63に投影された映像を被検体Pに提示するための反射板67の角度は、水平であってもよい。図7に示すように、本実施形態における反射板67は、光の入射方向LEに対して正反射方向とは異なる方向LRに反射させる。すなわち、反射板67における光の入射角度αよりも反射角度βが小さくなる(α>β)ように、反射角度が設定される。具体的には、スクリーン63から発せられた映像光が反射板67で反射されて被検体Pの目の方向に反射する角度に、反射角度が設定される。
【0047】
反射角度に対する必要条件は、天板131に載置された被検体Pがスクリーン63に投影された映像を観察できることである。以下、上記必要条件について説明する。反射板67のサイズは、好適には、被検体Pの視野範囲を包含するサイズである。このとき、天板131に載置された被検体Pの視野範囲にボア53の内壁57が入らないため、スクリーン63に投影された映像に対する被検体Pの没入感は向上する。例えば、天板131に載置された被検体Pにボア53の内壁57を意識させないために、反射板67においてX軸方向に沿った長さは被検体Pの視野の中心線から左右それぞれ60°以上の範囲に含まれる長さであることが望ましい。反射板67においてX軸方向に沿った長さは、例えば、天板131からボア53の内壁57まで距離に基づいて設定される。なお、スクリーン63が平面スクリーンである場合、反射板67は、天板131側を凸部として湾曲してもよい。
【0048】
以下、天板131に載置された被検体Pが反射板67を介してスクリーン63に投影された映像の一部を視認できる限界条件について説明する。このとき、2つの限界条件が存在する。一つ目の限界条件は、スクリーン63の上端が反射板67の下端を介して被検体Pに視認される条件であって、被検体Pの下視野側の条件(以下、下視野限界条件と呼ぶ)である。2つ目の限界条件は、スクリーン63の下端が反射板67の上端を介して被検体Pに視認される条件であって、被検体Pの上視野側の条件(以下、上視野限界条件と呼ぶ)である。
【0049】
まず、スクリーン63の上端が視認される下視野限界条件について説明する。説明を具体的にするために、反射板67のサイズは、狭義の視野範囲を想定する。狭義の視野範囲は、例えば、天板131に載置された被検体Pにおいて、水平面を基準として、60°から130°までの範囲に相当する。このとき、スクリーン63の上端が反射板67の下端に映る下視野限界条件は、スクリーン63の上端と反射板67の下端とを結ぶ直線が水平になるときである。この下視野限界条件において、スクリーン63に投影された映像が反射板67を反射して被検体Pの目に到達するとき、仮想鏡面の配置角度、すなわち正反射させるミラーの傾斜角度は、水平面から例えば65°となる。このとき、仮想鏡面の法線方位の角度は-25°となる。反射板67の配置角度は、ボア53の内壁57および被検体Pに接触しない範囲で設定される。ここで、水平面に対する反射板67の配置角度をα1とし、反射板67における反射角度をα2とすると、仮想鏡面の配置角度は、反射板67の配置角度α1と反射板67における反射角度α2との和(α1+α2:以下、設定角度と呼ぶ)に対応する。
【0050】
次に、上視野限界条件について説明する。スクリーン63の下端が反射板67の上端に映る上視野限界条件は、仮想鏡面の法線が垂直、すなわち仮想鏡面の配置角度が0°となるときである。この上視野限界条件において、反射板67の上端にスクリーン63の下端が映る。上視野限界条件において、仮想鏡面の法線をスクリーン63側に倒すためには反射板67を水平方向に移動させる必要がある。実際には、反射板67の配置角度は、ボア53の内壁57および被検体Pに接触しない範囲で設定される。上述した下視野限界条件および上視野限界条件によれば、スクリーン63に投影された映像は、反射板67により上下、すなわちY軸方向に対して反転される。このため、映写機100からスクリーン63に投影される映像は、被検体Pにより視認される映像を正立状態にするために、予め上下に反転される。
【0051】
実際には、反射板67の配置角度によっては、反射板67に被検体Pの顔が映りこむことがある。このため、反射板67への被検体Pの顔の映り込みを防止するための条件について説明する。この条件を満たすための反射板67の配置角度および反射板67における反射角度は、以下のようにして設定される。まず、反射板67の下端を通り被検体Pの頭部に接する頭接線と、反射板67の下端と被検体Pの目の位置とを結ぶ直線との間の角度を求める。求めた角度二等分線が、反射板67の設定角度(α1+α2)となるように、反射板67の配置角度α1と反射板67における反射角度α2とが設定される。なお、被検体Pの上視野において、できるだけスクリーン63の上端まで被検体Pに視認させるためには、反射板67はできるだけ水平にする必要がある。このため、反射板67の上端を、図6に示すように、スクリーン63の上端位置の水平方向の延長線上に配置させることが好ましい。
【0052】
以下、反射板67のより詳細な構造について説明する。図8は、反射板67を天板131の載置面側から見た図である。図8に示すように、反射板67の天板131側(以下、表面と呼ぶ)には、複数のプリズム(マルチプリズム)671が形成される。すなわち、複数のプリズム671は、反射板67において、スクリーン63に投影された映像に関する光が反射板67に入射する入射面側に設けられる。なお、複数のプリズム671は、反射板67において、ボア53の内壁57側(以下、裏面と呼ぶ)に設けられてもよい。複数のプリズム671は、輪帯ではなく1次元方向に沿って、映像の入射方向に対して垂直に配列される。これにより、被検体Pは、反射板67における複数のプリズム671を介して、スクリーン63に投影された映像を観察することができる。
【0053】
1次元方向とは、図8に示すように、ボア53内における天板131の移動方向(Z軸方向)を反射板67に投影した方向PDである。複数のプリズム各々は、上記1次元方向とは異なる方向に延伸している。異なる方向とは、例えば、天板131の短軸方向(X軸方向)である。なお、複数のプリズム各々は、図9に示すように、1次元方向PDに湾曲して延伸していてもよい。図9は、1次元方向PDに湾曲した複数のプリズムを有する反射板67を天板131の載置面側から見た図である。また、複数のプリズム各々において、1次元方向PDへの湾曲の程度は、それぞれ異なっていてもよい。複数のプリズム各々における湾曲の程度は、スクリーン63に投影された映像の反射後の映像の解像度、天板131上における被検体Pの目の位置の個人差を許容する解像度および視野範囲に関する冗長性を確保するように設定される。なお、複数のプリズム各々における湾曲の程度は、反射板67の形状の湾曲の程度に応じて設定されてもよい。なお、プリズムの代わりに、ホログラフィックシートが用いられてもよい。
【0054】
複数のプリズム671において、互いに隣接する2つのプリズムの間隔(以下、プリズムピッチと呼ぶ)ppは、スクリーン63に投影された映像の反射後の映像の解像度に応じて設定される。好適には、プリズムピッチppは、プリズムによる映像の反射に起因する解像度の劣化の影響が少ない0.5mm以下が望ましい。なお、プリズムピッチppは、反射板67を介して被検体Pに視認される映像における所望の解像度を維持し、上記冗長性を確保するために、それぞれ異なっていてもよい。
【0055】
反射板67の基材は、ガラス、プラスチックのうちいずれであってもよいが、軽量性および加工性を考慮するとプラスチックが望ましい。例えば、反射板67の基材として、アクリル、ポリカ、ウレタン系プラスチック、ポリオレフィン系プラスチック、エポキシ樹脂などが使われる。これら基材上に細かいマイクロプリズムが形成される。マイクロプリズムの形成方法としては、プリズム形状を転写する金型を用いて、プリズム形状をホットプレスで転写、射出成型、または重合成形など一般のプラスチック成型技術が用いられる。複数のプリズム各々の表面には、反射膜がコーティングされること(ミラーコーティング)で、複数のプリズム各々においてミラー効果が生成される。以下、ミラー効果を有するプリズムをプリズムミラーと呼ぶ。
【0056】
ミラーコーティングにはアルミ、銀などの金属薄膜のほかに、誘電体多層膜を用いた反射膜を用いることも可能である。誘電体多層膜は、多くの場合SiO、TiO,Al,ZrOなどの無機多層膜により形成される。反射率は、より高いほうが好ましい。反射率は、例えば、70%以上、より好ましくは85%以上であれば、反射された映像の明るさが確保される。上記手法により、反射板67の基材には、複数のプリズム671が、1次元方向PDに沿って配置した1次元的なマルチプリズムミラーとして形成される。
【0057】
図10は、図5および図8のFP-FP線矢視断面図である。図10に示すように、反射板67の基材673において天板131に対向する表面には、複数のプリズム671が、1次元方向PDに沿って鋸歯状に配列される。図10におけるプリズムピッチppは等距離であるが、上述したように、被検体ごとに異なる目の位置に依存せずに所望の解像度を維持するために、プリズムピッチppは、それぞれ異なっていてもよい。また、複数のプリズム671各々において天板131に対向する表面(以下、プリズム面と呼ぶ)には、反射膜675が設けられる。図10に示す複数のプリズム671において、基材673とプリズム面との間の角度(以下、プリズム角と呼ぶ)θf、すなわち反射板67が水平に配置された状態において水平面に対するプリズム面の傾斜角度は、複数のプリズム671に亘って一定である。複数のプリズム671各々におけるプリズム角θfは、図6に示すような水平面に対する反射板67の傾斜角度より大きく設定される。
【0058】
なお、プリズム角θfとプリズムピッチppとのうち少なくとも一方は、被検体ごとに異なる目の位置に依存せずに所望の解像度を維持するために、反射板67における複数のプリズム671各々の位置、例えば、反射板67の中心位置からの距離等、スクリーン63の形状、ボア53の内径、スクリーン63に対する反射板67の相対的な位置等に応じて、複数のプリズム671毎に異ならせてもよい。また、複数のプリズム671各々は、X軸方向に延伸した構造を有し、1次元方向PDに沿って基材673に配列された例を説明したが、これに限定されない。例えば、複数のプリズム671と基材673との接触面の形状は、方形状であってもよい。このとき、複数のプリズム各々は、基材673上に2次元的に配列される。例えば、接触面が方形状の複数のプリズムは、被検体ごとに異なる目の位置に依存せずに所望の解像度を維持するために、反射板67の中心位置からの距離、スクリーン63の形状、ボア53の内径、スクリーン63に対する反射板67の相対的な位置等に応じて、基材673上に2次元的に配置される。
【0059】
以上に述べた構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態に係る医用画像診断装置10によれば、医用撮像機構を装備する架台11に形成されたボア53内を移動可能な移動体61に設けられ、映写機100からの映像がボア53への天板131の挿入側とは反対側から投影されるスクリーン63と、移動体61に設けられスクリーン63に投影された映像を反射する反射板67を支持するフレーム65と、を有し、反射板67は、ボア53内における天板131の移動方向を反射板67に投影した1次元方向PDに沿って複数のプリズム671を配列した構造(1次元的なマルチプリズム構造)を有する。
【0060】
また、本実施形態によれば、複数のプリズム671各々を、1次元方向PDとは異なる方向に沿って延伸させ、1次元方向PDに湾曲させることができる。このとき、1次元方向PDへの湾曲の程度を、複数のプリズム671に関してそれぞれ異ならせることができる。また、本実施形態によれば、複数のプリズム671各々において、水平面に対するプリズム面の傾斜角度を、水平面に対する反射板67の傾斜角度より大きくすることができる。また、本実施形態によれば、プリズム面の傾斜角度θfとプリズムピッチppとのうち少なくとも一方を複数のプリズム671においてそれぞれ異ならせることができ、プリズムピッチを0.5mm以下にすることができる。また、本実施形態によれば、複数のプリズム671を、反射板67において、映像に関する光が反射板67に入射する入射面側に設けることができる。
【0061】
以上のことから、本実施形態における医用画像診断装置10によれば、反射板67に光の入射方向に対して正反射方向とは異なる方向に反射させる構造(プリズムミラー)を設けることで、ナローボアまたは頭部コイル装置140の使用時においてもスクリーン63に投影された映像を、被検体Pに提示することができる。加えて、本実施形態によれば、反射板67の表面に1次元的なマルチプリズム構造を設けることで、天板131上における被検体Pの目の位置の個人差を許容することができる。これらのことから、本実施形態によれば、架台11のボア53内において被検体Pの閉塞感を軽減することができる。
【0062】
(応用例)
本実施形態との相違は、反射板67において反射された映像を拡大する拡大機能を、反射板67に付加することにある。本応用例における複数のプリズム671は、反射板67の基材673において、反射板67の裏面側に設けられる。拡大機能は、反射板67の基材673において、反射板67の表面側に光学的なパワーまたはフレネルレンズを設けることで実現される。ここで、光学的なパワーとはレンズの焦点距離の逆数に相当し、本応用例では、天板131側を凸部とするレンズにおける「度(ジオプトリー:diopter)」に対応する。以下、反射板67における拡大機能に関する構造について説明する。
【0063】
図11は、本応用例において、図5および図8のFP-FP線矢視断面図である。図11に示すように、反射板67において、スクリーン63に投影された映像に関する光が反射板67に入射する入射面には天板131側を凸部とする凸形状の透明レンズ(以下、凸レンズと呼ぶ)が形成される。加えて、図11に示す反射板67において、この入射面に対向する対向面には複数のプリズム671が形成される。すなわち、映像を反射する反射膜675を有する複数のプリズム671の天板131側において、反射板67の基材673は、凸レンズとなる。凸レンズによりスクリーン63に投影された映像は拡大される。このため、天板131に載置された被検体Pは、拡大された映像を視認することが可能となる。なお、凸レンズの表面形状は球面、非球面いずれの形状であってもよい。図11に示すように、映像を反射する光を反射する反射膜675は、基材673に対してスクリーン63とは反対側に配置される。反射膜675で反射された映像を拡大する凸形状のレンズパワー面677は、基材673に対してスクリーン63側に配置される。レンズパワー面677の表面には反射防止用のAR(Anti-Reflection)コーティングが施されることが望ましい。
【0064】
光学パワーを有する凸レンズは反射板67の厚みを増大させるため、反射板67の自重が増大する。このため、反射板67の操作性の低下、およびフレーム65の剛性を高めるためのコストの増加が懸念される。これらの懸念を解消するために、拡大機能を有する基材673すなわちレンズ部分として、より軽くかつ薄くできるフレネル構造を用いることが有効である。アクリルやポリカーボネート、ポリオレフィン系透明プラスチック材料、ウレタン系透明プラスチック材料など透明光学プラスチックを用いることで、反射板67をより軽量に作ることができる。フレネル構造におけるレンズの溝のピッチは0.5mm以下が望ましく、より好ましくは0.3mmピッチ以下である。
【0065】
図12は、本応用例において、図5および図8のFP-FP線矢視断面図である。図12に示すように、反射板67において、スクリーン63に投影された映像に関する光が反射板67に入射する入射面にはフレネルレンズ679が形成される。加えて、図12に示す反射板67において、この入射面に対向する対向面には複数のプリズム671が形成される。フレネルレンズ679によりスクリーン63に投影された映像は拡大される。このため、天板131に載置された被検体Pは、拡大された映像を視認することが可能となる。図12に示すように、映像を反射する光を反射する反射膜675は、基材673に対してスクリーン63とは反対側に配置される。フレネルレンズ679の表面には反射防止用のAR(Anti-Reflection)コーティングが施されることが望ましい。
【0066】
以上に述べた構成によれば、本実施形態における効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態の応用例に係る医用画像診断装置10によれば、反射板67において、スクリーン63に投影された映像に関する光が反射板67に入射する入射面に凸レンズを形成し、この入射面に対向する対向面に複数のプリズム671を形成することができる。また、本応用例によれば、反射板67において、スクリーン63に投影された映像に関する光が反射板67に入射する入射面にフレネルレンズを形成し、この入射面に対向する対向面には複数のプリズム671を形成することができる。
【0067】
これらのことから、本応用例によれば、スクリーン63に投影された映像は拡大され、天板131に載置された被検体Pは、拡大された映像を視認することができる。また、本応用例によれば、スクリーン63が平面スクリーンであったとしても、開放感のある映像を被検体Pに提供することができ、架台11のボア53内において被検体Pの閉塞感をさらに軽減することができる。
【0068】
以上述べた実施形態および応用例等の医用画像診断装置によれば、架台11のボア53内において被検体Pの閉塞感の軽減を図ることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
1…医用画像診断システム(磁気共鳴イメージングシステム)、10…医用画像診断装置(磁気共鳴イメージング装置)、11…架台、13…寝台、15…移動式スクリーン装置、17…撮像制御ユニット、21…傾斜磁場電源、23…送信回路、25…受信回路、27…コンソール、31…撮像制御回路、33…処理回路、35…ディスプレイ、36…インタフェース、37…記憶装置、41…静磁場磁石、43…傾斜磁場コイル、45…RFコイル、51…架台筐体、53…ボア、57…内壁、61…移動体、62…ガイドレール、63…スクリーン、65…フレーム、66…接続箇所、67…反射板、100…映写機、131…天板、133…基台、135…寝台駆動装置、137…下部コイル、139…上部コイル、140…頭部コイル装置、200…映写機制御装置、331…システム制御機能、333…再構成機能、335…画像処理機能、651…第1支持部、653…第2支持部、671…複数のプリズム、673…基材、675…反射膜、677…レンズパワー面、679…フレネルレンズ、LE…反射板へ水平方向に入射した光、LR…反射光、P…被検体、pp…プリズムピッチ、RR1…回転軸、α…反射板における光の入射角度、β…反射板における光の反射角度、θf…プリズム角、θn…垂直方向に対する反射光の角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12