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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】混合弁及び混合水栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/14 20060101AFI20220523BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20220523BHJP
   E03C 1/042 20060101ALI20220523BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F16K11/14 B
F16K31/68 D
E03C1/042 B
E03C1/044
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017196941
(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2019070408
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜好
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 純也
(72)【発明者】
【氏名】加納 忍
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-169280(JP,U)
【文献】特開2007-198578(JP,A)
【文献】実開昭56-117177(JP,U)
【文献】特許第3632207(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 31/64-31/72
E03C 1/042,1/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯及び水の一方が流入する第1流入口、湯及び水の他方が流入する第2流入口、並びに湯と水の混合水が流出する流出口を備えるケーシングと、
前記ケーシングの内部の流路に摺動可能に配置されて、前記第1流入口及び前記第2流入口を開閉する弁部材と、
前記弁部材を前記第1流入口からの流入量が増加する方向へ付勢しつつ、当該弁部材の位置を変更して前記流出口から流出する混合水の温度を調整する温調部材と、
前記ケーシング内における湯と水の混合領域に配置され、前記混合領域内の混合水の温度に基づいて変化する付勢力により、前記弁部材を前記第2流入口からの流入量が増加する方向へ付勢する感温部材とを有する混合弁において、
前記ケーシングは筒状に構成され、軸方向の他端側に底壁を有しており、前記流出口は、前記底壁に設けられており、
前記ケーシングの軸方向において、前記弁部材、及び前記感温部材よりも下流側の流路には、前記混合領域を流れる混合水の流速を低下させる干渉部材が設けられていることを特徴とする混合弁。
【請求項2】
前記干渉部材は、板状の部材で構成されている請求項1に記載の混合弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された混合弁を備えた混合水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合弁及び混合弁を備えた混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図13(a)、(b)に示すように、湯流入口81、水流入口82、並びに、湯と水の混合水が流出する流出口83を備えるケーシング84と、ケーシング84の内部に摺動可能に配置されて、湯流入口81及び水流入口82を開閉する弁部材85とを有する混合弁80について記載されている。混合弁80は、ケーシング84の一端側から弁部材85を付勢しつつ、弁部材85の位置を調整して流出口83から流出する混合水の温度を調整する温調部材86を有している。また、混合弁80は、ケーシング84の他端側から弁部材85を付勢しつつ、設定された温度の混合水が流出口83から流出するように弁部材85の位置を自動調整する感温ばね87を有している。また、弁部材85と感温ばね87との間に旋回流発生手段としての混合部材88が配置されている。
【0003】
図13(b)に示すように、混合部材88は、円筒状のばね受け部88aと、ばね受け部88aの一端側から複数本突設された旋回流発生部材としてのフィン88bとを備えている。ばね受け部88aの内部は貫通流路88cとなっており、フィン88bは、フィン88bの延長線が貫通流路88cの中心に集まるように形成されている。水流入口82から流入した水は、フィン88bに当たることによって貫通流路88cの中心に向かう旋回流を形成する。この旋回流が貫通流路88cを通過する湯の周りを取り囲むようにして混合水が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-283329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1等の混合弁では、感温ばねが収容される部分に新たに流入してきた湯や水の温度に感温ばねが過敏に反応して感温ばねの動作が不安定になる場合があった。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、感温部材を安定して動作させることのできる混合弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための混合弁は、湯及び水の一方が流入する第1流入口、湯及び水の他方が流入する第2流入口、並びに湯と水の混合水が流出する流出口を備えるケーシングと、前記ケーシングの内部の流路に摺動可能に配置されて、前記第1流入口及び前記第2流入口を開閉する弁部材と、前記弁部材を前記第1流入口からの流入量が増加する方向へ付勢しつつ、当該弁部材の位置を変更して前記流出口から流出する混合水の温度を調整する温調部材と、前記ケーシング内における湯と水の混合領域に配置され、前記混合領域内の混合水の温度に基づいて変化する付勢力により、前記弁部材を前記第2流入口からの流入量が増加する方向へ付勢する感温部材とを有する混合弁において、前記弁部材よりも下流側の流路には、前記混合領域を流れる混合水の流速を低下させる干渉部材が設けられていることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、干渉部材が設けられていることにより、混合水が感温部材を通過するのに要する時間を長くすることができる。これにより、混合領域に流入する湯水の割合変化に対する、感温部材の周囲に存在する混合水の温度変化が緩慢になる。その結果、新たに流入してきた湯や水の温度に感温部材が敏感に反応して動作することが抑制され、感温部材の動作が安定する。
【0008】
上記課題を解決するための混合弁は、湯及び水の一方が流入する第1流入口、湯及び水の他方が流入する第2流入口、並びに湯と水の混合水が流出する流出口を備えるケーシングと、前記ケーシングの内部の流路に摺動可能に配置されて、前記第1流入口及び前記第2流入口を開閉する弁部材と、前記弁部材を前記第1流入口からの流入量が増加する方向へ付勢しつつ、当該弁部材の位置を変更して前記流出口から流出する混合水の温度を調整する温調部材と、前記ケーシング内における湯と水の混合領域に配置され、前記混合領域内の混合水の温度に基づいて変化する付勢力により、前記弁部材を前記第2流入口からの流入量が増加する方向へ付勢する感温部材とを有する混合弁において、前記弁部材よりも下流側の流路には、干渉部材が設けられており、前記干渉部材は、前記弁部材よりも下流側の流路における前記感温部材が配置されている範囲又は前記感温部材よりも下流側に設けられていることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、干渉部材は、弁部材よりも下流側の流路における感温部材が配置されている範囲又は感温部材よりも下流側に設けられていることにより、混合領域を流れる混合水の速度を効率良く低下させることができる。これにより、新たに流入してきた湯や水の温度に感温部材が敏感に反応して動作することを効率良く抑制し、感温部材の動作を安定させることができる。
【0010】
上記混合弁について、前記干渉部材は、前記弁部材よりも下流側の流路における前記感温部材が配置されている範囲又は前記感温部材よりも下流側に設けられていることが好ましい。この構成によれば、混合領域を流れる混合水の速度を効率良く低下させることができる。これにより、新たに流入してきた湯や水の温度に感温部材が敏感に反応して動作することを効率良く抑制し、感温部材の動作を安定させることができる。
【0011】
上記混合弁について、前記干渉部材は、前記感温部材よりも下流側の流路に設けられていることが好ましい。
上記混合弁について、前記干渉部材は、板状の部材で構成されていることが好ましい。この構成によれば、干渉部材の厚さを薄くすることができるため、混合弁を小型化することができる。
【0012】
上記混合弁について、上記混合弁を備えた混合水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記混合弁の機能を奏する混合水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の混合弁によれば、感温部材を安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の混合水栓の斜視図。
図2図1の混合水栓におけるボデーと混合弁と切換弁の斜視図。
図3図1の混合水栓におけるボデーと混合弁と切換弁の正面図。
図4図1の混合水栓におけるボデーと混合弁と切換弁の部分断面図。
図5】本実施形態の混合弁の断面図。
図6】本実施形態の混合弁の分解斜視図。
図7】変更例の混合弁の断面図。
図8】変更例の干渉部材の斜視図。
図9】別の変更例の干渉部材の斜視図。
図10】別の変更例の混合弁の断面図。
図11】(a)は、さらに別の変更例の混合弁の断面図、(b)は、(a)の混合弁における他端側の側面図、(c)は、さらに別の変更例における他端側の側面図。
図12】さらに別の変更例の混合弁の断面図。
図13】(a)は、従来技術の混合弁の断面図、(b)は、従来技術の弁部材、混合部材及び感温ばねの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1、2に示すように、混合水栓10は、浴室の壁面11に設置されている。浴室には、壁面11から突出するように湯用配管12と水用配管13とが設けられている。混合水栓10は、金属製(例えば、銅合金製)のボデー20を備えている。ボデー20は、第1の吐出口33A及び第2の吐出口33Bを有する管部30と、管部30の周面から管部30に湯を流入させる給湯管31と、管部30の周面から管部30に水を流入させる給水管32とが一体に形成された鋳造体で構成されている。
【0016】
図2に示すように、ボデー20の管部30は、混合水栓10が壁面11に設置された状態で、水平方向に延びるように設けられている。管部30の第1の吐出口33Aは、混合水栓10が壁面11に設置された状態で、管部30から水平方向に吐出するように設けられるとともに、エルボ管14を介してシャワー用のホースに接続されている。第2の吐出口33Bは、混合水栓10が壁面11に設置された状態で、管部30から鉛直方向に吐出するように設けられるとともに、集中吐水用の吐水管15に接続されている。
【0017】
給湯管31及び給水管32はそれぞれ、一端側が開口するとともに他端側が管部30と一体に構成されている。ボデー20は、図1に示すように、給湯管31の一端側が湯用配管12に接続されるとともに、給水管32の一端側が水用配管13に接続されることにより、壁面11に固定されている。
【0018】
混合水栓10は、混合水の温度を調整する混合弁40と、第1の吐出口33A及び第2の吐出口33Bからの吐止水を切り換える切換弁50とを備えている。管部30の一方側(図面の紙面左側)の端部には、混合弁40を操作して、混合水の温度を調節する温調ハンドル21が取り付けられている。また、管部30の他方側(図面の紙面右側)の端部には、切換弁50を操作して、混合水の吐止水を切り換える切換ハンドル51が取り付けられている。ボデー20はカバー22によって覆われており、カバー22の一方側から温調ハンドル21が露出しているとともに、カバー22の他方側から切換ハンドル51が露出している。
【0019】
図3、4に示すように、混合弁40は、管部30の一方側の端部に設けられた開口部に挿入されることによって管部30に取付けられ、固定具34によって管部30に固定されている。
【0020】
次に、混合水栓10の内部構造について説明する。
図4に示すように、給水管32から流入した水は、矢印で示すように、管部30の側面に沿って一方側に向かって流れた後、管部30の一方側に設けられた混合弁40に流入する。給湯管31から流入した湯は、管部30の径方向内側に流れた後、混合弁40に流入する。混合弁40で水と湯が混合されて混合水が形成され、この混合水が、切換弁50の通水部52に流入する。通水部52の内部に設けられた弁体を通過することにより、混合水は、管部30の径方向外側に延びる第1の吐出口33A、又は、管部30の径方向外側に延びる第2の吐出口33Bから吐出される。切換ハンドル51の操作により、吐止水を切り換えることができるとともに、第1、第2の吐出口33A、33Bへの流路を切り換えることができる。また、温調ハンドル21の操作により、混合弁40を操作することができる。そして、混合弁40を操作することにより、湯と水との混合割合を調整して、混合水の温度を調整することができる。
【0021】
次に、混合弁の構成について説明する。
図5、6に示すように、混合弁40は、ケーシングとして、第1筒体41と第2筒体42とを有する。第1筒体41は、一端側に底壁41aを有するとともに、他端側は開放され、他端側内周にネジ溝41bが形成されている。第1筒体41の底壁41aは、中央部に第1開口孔41cを備える。第2筒体42は、一端側は開放され、一端側外周にネジ溝42bが形成されているとともに、他端側に底壁42aを有している。第2筒体42の底壁42aは、中央部に第2開口孔42cを備える。
【0022】
第2筒体42の内部は、一端側の第1空間S1と、第1空間S1よりも他端側に位置する第2空間S2とで構成される。第2空間S2は、第1空間S1よりも内径が小さく構成されており、第1空間S1と第2空間S2の境界部分に段部43が設けられている。
【0023】
第2筒体42の周面には、第1空間S1に連通する位置に、湯及び水の一方が流入する第1流入口としての湯流入口44と、湯及び水の他方が流入する第2流入口としての水流入口45とが備えられている。湯流入口44と水流入口45は、それぞれ、第2筒体42の周方向に沿って延びており、湯流入口44は、水流入口45よりも第2筒体42の一端側に位置する。また、第2筒体42の底壁42aに設けられた第2開口孔42cは、湯と水の混合水が流出する流出口として機能する。
【0024】
図5に示すように、第1筒体41のネジ溝41bと第2筒体42のネジ溝42bとが螺合した状態で、第1筒体41と第2筒体42は接合されている。第1筒体41と第2筒体42の内部には、第1筒体41の一端側から順に、軸部材46と、筒状の摺動部材47と、バイアスばね48と、筒状の弁部材60と、感温部材としての感温ばね49と、干渉部材としての網材70とが配置されている。
【0025】
軸部材46は、第1筒体41の第1開口孔41cから一端側が突出した状態で配置されている。軸部材46の突出した部分は、温調ハンドル21を取り付ける取付部46aとして機能する。軸部材46の他端側には、外周にネジ溝46bが形成されている。
【0026】
筒状の摺動部材47は、一端側の内周にネジ溝47aが形成されているとともに、他端側には底壁47bが設けられている。軸部材46のネジ溝46bに摺動部材47のネジ溝47aが螺合した状態で、軸部材46と摺動部材47は接合されている。そして、軸部材46を回転させることによって、摺動部材47はケーシングの軸方向に摺動可能に構成されている。
【0027】
バイアスばね48は、摺動部材47の他端側に配置されている。バイアスばね48は、第1ばね48aと、第1ばね48aの内側に配置されて第1ばね48aよりも長さ方向と径方向の寸法が小さい補助ばねとしての第2ばね48bとを有する。
【0028】
弁部材60は、バイアスばね48の他端側に配置されており、バイアスばね48の第1ばね48aによって付勢されている。弁部材60は、筒状の本体部60aと、本体部60aの他端側に設けられて、感温ばね49の一端側を収容する筒状の収容部60bとを有する。収容部60bは、軸方向に延びる筒状の第1壁部61と、第1壁部61の一端側から径方向内側に延びる第2壁部62とで構成される。第2壁部62の中央部には、開口孔が形成されている。弁部材60の本体部60aの外径は、第1空間S1の内径と略同じ寸法となるように構成され、弁部材60の収容部60bの外径は、本体部60aの外径よりも若干小さく構成され、第2空間S2の内径と略同じ寸法となるように構成されている。すなわち、弁部材60の本体部60aは、第1空間S1の内部を摺動可能に構成されており、弁部材60の収容部60bは、第2空間S2の内部を摺動可能に構成されている。
【0029】
感温ばね49は、一端側が弁部材60の収容部60bにおける第1壁部61の内側に収容されるとともに、第2壁部62に当接した状態で配置される。感温ばね49の他端側は、網材70を介して第2筒体42の底壁42aに当接しており、感温ばね49の一端側が弁部材60を付勢する状態で配置されている。すなわち、感温ばね49は、大部分が第2筒体42の内部における第2空間S2に位置する状態で配置されている。また、感温ばね49は、形状記憶合金(SMAともいう。)で構成されている。
【0030】
干渉部材としての網材70は、弁部材60よりも下流側の流路において、感温ばね49の他端側に配置されている。網材70は、板状に構成され、感温ばね49と、第2筒体42の底壁42aとの間に挟まれた状態となっている。網材70の直径は、底壁42aの第2開口孔42cの内径よりも大きく構成されており、網材70は第2開口孔42cから抜け落ちないように構成されている。網材70の構成としては特に限定されないが、例えば、30~70メッシュの金属製の網材を用いることができる。
【0031】
次に、混合弁の弁機構について説明する。
図4、5に示すように、軸部材46の取付部46aに取り付けられた温調ハンドル21を操作すると、軸部材46の回転に伴って、摺動部材47が摺動する。摺動部材47の位置を調整することにより、弁部材60を付勢するバイアスばね48を介して、弁部材60の位置を変更することができる。弁部材60は、他端側から感温ばね49によっても付勢されており、バイアスばね48と感温ばね49との付勢が釣り合った状態で弁部材60の位置は変更される。
【0032】
弁部材60の本体部60aが、第1空間S1の一端側の所定の位置にあるとき、弁部材60の本体部60aによって湯流入口44は閉鎖されるとともに、水流入口45は開放される。また、弁部材60の本体部60aが、第1空間S1の一端側の所定の位置から他端側に移動すると、湯流入口44が徐々に開放され、水流入口45が徐々に閉鎖される。そして、弁部材60の本体部60aが第1空間S1の他端側の所定の位置にあるとき、湯流入口44は開放されるとともに、水流入口45は閉鎖される。このように、弁部材60の本体部60aの位置を変更することによって、湯流入口44及び水流入口45の開閉状態を調整し、湯と水との混合割合を調整することができる。すなわち、軸部材46と、摺動部材47と、バイアスばね48とにより、弁部材60を湯流入口44からの流入量が増加する方向へ付勢し、流出口から流出する混合水の温度を調整する温調部材が構成されている。また、感温ばね49は、弁部材60を水流入口45からの流入量が増加する方向へ付勢している。そして、湯流入口44及び水流入口45から流入した湯水は、第2筒体42の第2空間S2において混合され、第2筒体42の第2開口孔42cから流出する。よって、第2空間S2は、混合水の混合領域として機能する。
【0033】
ここで、混合水の混合中に、湯の流入量が減少すると、感温ばね49が混合水の温度変化を感知して、弁部材60を付勢する付勢力を減少させる。これにより、弁部材60の位置が他端側に移動して、湯流入口44からの湯の流入量が多くなるため、混合水の温度を自動調整して、温度低下を抑制することができる。また、湯水の混合中に、水の流入量が減少すると、感温ばね49が混合水の温度変化を感知して、弁部材60を付勢する付勢力を増大させる。これにより、弁部材60の位置が一端側に移動して、水流入口45からの水の導入量が多くなるため、混合水の温度を自動調整して、温度上昇を抑制することができる。
【0034】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)感温ばね49と、第2筒体42の底壁42aとの間に網材70が配置されているため、網材70の上流側に位置する混合領域を流れる混合水の流速が低下する。これにより、混合領域に流入する湯水の割合変化に対する、感温ばねの周囲に存在する混合水の温度変化が緩慢になる。その結果、新たに流入してきた湯や水の温度に感温ばねが敏感に反応して動作することが抑制され、感温ばねの動作が安定する。
【0035】
(2)干渉部材は、網材70で構成されている。網材70は、内部に略均一に気孔が形成されているため、網材70の内部を混合水は略均一に流通する。したがって、混合領域を流れる混合水の流速を安定的に低下させることができる。また、干渉部材の厚さを薄くすることが容易になるため、混合弁40を小型化することができる。また、干渉部材が網材70で構成されていることにより、混合弁40の構造を簡素化することができる。
【0036】
本実施形態は、次のように変更して実施することも可能である。また、上記実施形態の構成や以下の変更例に示す構成を適宜組み合わせて実施することも可能である。
・干渉部材の位置は、感温ばねよりも下流側に限定されない。干渉部材は、弁部材60よりも下流側の流路に設けられていればよく、例えば、図7に示すように、一端側に干渉部材76が設けられた筒体77を感温ばね49の内側に配置することにより、感温ばね49が配置されている範囲に、干渉部材76を配置してもよい。干渉部材76が、感温ばね49が配置されている範囲に配置された場合であっても、干渉部材76を通過する混合水の流速が低下することによって、混合領域における混合水の流速を低下させることができる。
【0037】
・本実施形態では、第1流入口が湯流入口44であり、第2流入口が水流入口45であったが、この態様に限定されない。第1流入口が水流入口であり、第2流入口が湯流入口であってもよい。
【0038】
・干渉部材は、網材に限定されない。例えば、図8に示すように、厚さ方向に貫通する多数の貫通孔71を有する板状の部材72であってもよいし、図9に示すように、板材73全体がスポンジ状の多孔体で構成されたものであってもよい。さらに、図10に示すように、第2筒体42の第2開口孔42cの他端側に、板状の干渉部材74が螺合して取付けられていてもよいし、図11(a)に示すように、第2筒体42の第2開口孔42cに、干渉部材75が一体に形成されていてもよい。第2開口孔42cに干渉部材75が一体に形成されている場合は、例えば、図11(b)に示すように、第2開口孔42cが、複数の貫通孔75aによって構成されていてもよいし、図11(c)に示すように、第2開口孔42cの内側に突出する凸状部75bを有していてもよい。
【0039】
・干渉部材は、板状の部材に限定されず、柔軟性を有するシート状の部材であってもよい。柔軟性を有するシート状の部材であっても、使用時に板状の部材と同様に固定して使用することができれば、干渉部材として用いることができる。
【0040】
・干渉部材の形状は、円形に限定されず、楕円形や、多角形であってもよい。
・干渉部材は、複数の干渉部材が積層されて配置されていてもよい。複数の干渉部材が積層されて配置されている場合、個々の干渉部材が、厚さや、多孔度等が異なる部材で構成されていてもよい。また、複数の干渉部材は互いに離間して配置されていてもよい。また、図12に示すように、干渉部材は螺旋状の部材78で構成されていてもよい。
【0041】
・本実施形態における感温部材は、感温ばね49に限定されない。感温ばね49以外の感温部材としては、例えば、温度変化に応じて膨張収縮する板状の感温体(バイメタル)を用いることができる。
【0042】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
(イ)前記軸部材の取付部に温調ハンドルが取り付けられている混合弁。
【符号の説明】
【0043】
10…混合水栓、40…混合弁、42c…流出口(第2開口孔)、44…湯流入口、45…水流入口、49…感温部材(感温ばね)、70…干渉部材(網材)。
図1
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図5
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図7
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図10
図11
図12
図13