(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】蓄熱性熱伝導性粒子および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/06 20060101AFI20220523BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20220523BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220523BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C09K5/06 J
C09K5/14 E
C08L101/00
C08K9/02
(21)【出願番号】P 2017199421
(22)【出願日】2017-10-13
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 孝宏
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-108085(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103351850(CN,A)
【文献】特開2006-132071(JP,A)
【文献】特開2009-286811(JP,A)
【文献】特開2002-003830(JP,A)
【文献】特開2006-348224(JP,A)
【文献】特開平04-085387(JP,A)
【文献】特開2014-111746(JP,A)
【文献】特開2013-135005(JP,A)
【文献】化学工学会 第41回秋季大会 研究発表講演要旨集,2009年,セッションID:V207,URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2009f/0/2009f_0_708/_pdf(令和3年11月10日取得)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
C08L 101/00
C08K 9/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材を含有する樹脂粒子の蓄熱性熱伝導性粒子であって、
前記樹脂粒子が蓄熱材を樹脂被膜で覆って作製された樹脂粒子ではな
く、前記蓄熱性熱伝導性粒子が前記樹脂粒子の表面に
繊維状の熱伝導性フィラーを付着し
た蓄熱性熱伝導性粒子であり、前記樹脂粒子の樹脂が熱可塑性樹脂であり、前記蓄熱材がオクタン酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のいずれか1種以上の脂肪族カルボン酸であり、前記熱伝導性フィラーが炭素繊維、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブのいずれか1種以上の炭素系化合物であり、前記蓄熱性熱伝導性粒子の粒径が平均粒径で0.5~100μmの範囲にある蓄熱性熱伝導性粒子。
【請求項2】
熱伝導性フィラーの熱伝導率が1W/mK以上であることを特徴とする請求項
1に記載の蓄熱性熱伝導性粒子。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の蓄熱性熱伝導性粒子を含有する樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱性と熱伝導性を併せ持った粒子およびそれからなる蓄熱性熱伝導性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気、電子機器等から発生する熱による機器の温度上昇が問題となっている。この問題に対して、従来から、熱伝導性シートやヒートシンク等を用いた放熱が行われているが、機器の小型化や高性能化に伴って、機器内で発生する熱の問題がますます大きくなっており、より効果的に機器の温度上昇を抑制できる技術が求められている。また、急激な発熱に対して対応できるような技術も求められており、蓄熱材を含有したシートが開発されているが(例えば、特許文献1)、これらは急激な発熱への対応は一定程度期待できるものの、放熱性は十分ではなく、温度上昇抑制技術としては不十分なものであった。
蓄熱性フィラーと熱伝導性フィラーの両者を樹脂に分散した組成物も開示されている(例えば、特許文献2、3)。しかしながら、それぞれのフィラーの添加量は、それぞれを単独で添加した場合よりも少なくせざるを得ないため性能が不十分であり、また、筆者らの検討結果によると、熱は熱伝導性フィラーを中心に伝導していくので、蓄熱性フィラーへの効果的な熱伝導が行われず、結果的に蓄熱性能が低下するという問題があることが判明した。また、特許文献4には、樹脂で形成されるシェル内に蓄熱材が封入された蓄熱マイクロカプセルと熱伝導性フィラーを含む蓄熱材料が開示されており、蓄熱マイクロカプセルの作製方法について詳述されているが、樹脂被膜で蓄熱材を覆ったカプセル状のものは、樹脂被膜が熱抵抗となり、内部の蓄熱材への熱伝導が阻害されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-89065号公報
【文献】特開2016-79230号公報
【文献】特開2014-208728号公報
【文献】特開2004-293983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電気、電子機器等の温度上昇を効果的に抑制できる、蓄熱性と熱伝導性を併せ持った材料を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題の解決へ向けて鋭意検討した結果、蓄熱材を含有する樹脂粒子であって、蓄熱材を樹脂被膜で覆って作製されたものではないものの表面に熱伝導性フィラーを付着することで、それを用いた樹脂組成物は、蓄熱材を含有する樹脂粒子と熱伝導性フィラーをそれぞれ添加したものに比べて、発熱源の温度上昇を効果的に抑制できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]~[5]に記載の事項を特徴とするものである。
[1]蓄熱材を含有する樹脂粒子の蓄熱性熱伝導性粒子であって、蓄熱材を樹脂被膜で覆って作製された樹脂粒子ではない樹脂粒子の表面に熱伝導性フィラーを付着した蓄熱性熱伝導性粒子。
[2]蓄熱材が、脂肪族系の化合物から選ばれる前記[1]に記載の蓄熱性熱伝導性粒子。
[3]粒径が、平均粒径で0.5~100μmの範囲にあることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の蓄熱性熱伝導性粒子。
[4]熱伝導性フィラーの熱伝導率が1W/mK以上であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載の蓄熱性熱伝導性粒子。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の蓄熱性熱伝導性粒子を含有する樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子からなる樹脂組成物は、発熱源の温度上昇を効果的に抑制できるため、各種電気、電子機器等の熱の問題を解決することにつながる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子は、蓄熱材を含有する樹脂粒子の表面に熱伝導性フィラーを付着したものである。熱伝導性フィラーは、樹脂粒子の表面の一部に付着していれば良く、付着している部分と付着していない部分がそれぞれあっても良く、必ずしも表面全体に均一に付着していなくても良い。また、表面から樹脂粒子内部へフィラーの一部が入り込んでいても良いし、粒子内部へ含まれたものが一部あっても良い。また、樹脂粒子の表面だけでなく、付着した熱伝導性フィラーの表面に層状に付着させても良い。
【0008】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する蓄熱材は、所定温度の熱の蓄熱、放熱を繰り返し行うことのできる材料であり、このような蓄熱材としては、蓄熱量や取扱い易さの観点から潜熱蓄熱材が好ましい。
【0009】
潜熱蓄熱材としては、脂肪族系のものや無機系のものが挙げられ、このうち、脂肪族系のものとしては、脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪族カルボン酸などが挙げられる。これらのうち、本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する蓄熱材は、脂肪族炭化水素および脂肪族カルボン酸から選ばれることが好ましい。
【0010】
脂肪族炭化水素としては、例えば、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン、n-エイコサン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0011】
脂肪族アルコールとしては、セチルアルコール、1-オクタデカノール、エリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0012】
脂肪族カルボン酸としては、オクタン酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0013】
無機系のものとしては、硝酸リチウム3水和物、硫酸ナトリウム10水和物、酢酸ナトリウム3水和物、硫酸アルミニウムカリウム12水和物などに代表される無機塩類などが挙げられる。
【0014】
これらの蓄熱材は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。2種以上の蓄熱材を組み合わせることで、蓄熱温度や放熱温度を所望の温度に設定し易くなる。
【0015】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子における蓄熱材の含有量は、粒子の20~90wt%の範囲であることが好ましい。含有量が20wt%を下回ると、蓄熱効果が十分に発揮されず、発熱源の温度上昇を抑制する効果が小さく、90wt%を上回ると、蓄熱材の漏出が問題になる場合がある。蓄熱材の含有量は、40~80wt%の範囲にあることがより好ましい。
【0016】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する樹脂粒子は、蓄熱材を樹脂被膜で覆って作製されたカプセル状のものではなく、例えば、樹脂と蓄熱材が混合され、樹脂粒子中に蓄熱材成分が均一に分散したもの、樹脂のネットワーク間に蓄熱材成分が保持されたもの、ゲルに蓄熱材成分が保持されたものなどが挙げられる。
【0017】
樹脂粒子を構成する樹脂としては、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、エラストマー、ゲルなどを用いることができる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、EVA樹脂、EVOH樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、SBC樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、液晶ポリマー、PPS、PEEK、PPE、ポリサルフォン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる
【0019】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などが挙げられる。
【0020】
エラストマーとしては、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム等の共役ジエンゴム、EPMやEPDM等のエチレン・α-オレフィン共重合体ゴム、SEBS等の水添共役ジエン重合体などが挙げられる。
【0021】
ゲルとしては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド誘導体、多糖類、ゼラチンなどが挙げられる。
【0022】
樹脂粒子を構成する樹脂としては、溶解度パラメータ等で表される極性が蓄熱材と近いものを選択すると蓄熱材の漏出が抑えられるため好ましい。例えば、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸を蓄熱材として用いる場合は、ポリカーボネートやポリエステルが好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0023】
また、樹脂が架橋等で3次元的な網目構造を有していると蓄熱材の漏出が抑えられるため好ましい。また、樹脂中に、シリカ等の3次元的な網目構造をしている成分が含まれていると蓄熱材の漏出が抑えられるため好ましい。
【0024】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する樹脂粒子は、上記した成分以外にも、粒子の形状維持や蓄熱材の漏出防止の目的で、無機多孔質体や繊維などが含有されていてもよい。その他に、界面活性剤、分散剤、可塑剤、架橋剤などが含有されていてもよい。
【0025】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する樹脂粒子の形状は、とくに限定はされず、球状、棒状、板状、鱗片状、針状、繊維状、中空状、角状、塊状のものなどを用いることができる。
【0026】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する樹脂粒子は、平均粒径が0.5~100μmの範囲にあることが好ましい。樹脂粒子の平均粒径が0.5μmを下回ると、樹脂粒子への熱伝導性フィラーの付着が困難となり、100μmを上回ると、樹脂組成物の強度等の力学的特性が損なわれる。樹脂粒子の平均粒径は1~50μmの範囲にあることが好ましく、5~30μmの範囲にあることがより好ましい。
【0027】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する樹脂粒子の製造方法としては、樹脂や蓄熱材等の成分を溶解した溶液から溶媒を留去する方法、樹脂や蓄熱材等の成分を溶解した溶液を貧溶媒に滴下して析出させる方法、ミセルを利用した方法、スプレードライ法などが挙げられる。
【0028】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する熱伝導性フィラーとは、樹脂等のマトリクスに添加して熱伝導性を高めるための粒子のことを言う。本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する熱伝導性フィラーの熱伝導率は1W/mK以上であることが好ましい。該フィラーの熱伝導率が1W/mKより小さいと、本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を樹脂等のマトリクスに添加した際に発熱源の温度上昇を抑制する効果が小さい。熱伝導性粒子の熱伝導率は3W/mK以上であることが好ましく、5W/mK以上であることがより好ましい。
【0029】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を構成する熱伝導性フィラーの具体例としては、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、ダイヤモンド等の炭素系化合物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素や炭化ホウ素等の炭化物などが挙げられる。これらのうち、炭素系化合物や金属酸化物、窒化物が、比較的熱伝導率が高く、樹脂に比較的混合し易いため好ましい。
【0030】
熱伝導性フィラーの形状は、とくに限定はされず、球状、棒状、板状、鱗片状、針状、繊維状、中空状、角状、塊状のものなどを用いることができる。
【0031】
熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.05~100μmの範囲にあることが好ましい。熱伝導性粒子の平均粒径が0.05μmを下回ると、樹脂組成物の熱伝導性が低くなる傾向にあり、100μmを上回ると、熱伝導性フィラーの樹脂粒子への付着が困難になる。熱伝導性フィラーの平均粒径は0.1~50μmの範囲にあることが好ましく、0.5~30μmの範囲にあることがより好ましい。
【0032】
熱伝導性フィラーは1種単独で用いてもよく、2種以上の成分を共存して用いてもよい。
【0033】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子中の熱伝導性フィラーの含有量は、0.5~50wt%の範囲であることが好ましい。熱伝導性フィラーの含有量が0.5wt%を下回ると、熱伝導性を高める効果が小さくなり、50wt%を上回ると、蓄熱材の含有量が少なくなり、蓄熱性が低くなるとともに、熱伝導性フィラーの樹脂粒子への付着が困難になる。含有量は、1~30wt%の範囲であることがより好ましく、3~20wt%の範囲であることが更に好ましい。
【0034】
本発明の熱伝導性フィラーの付着方法としては、溶媒中で樹脂粒子と熱伝導性フィラーの成分を攪拌や超音波等で混合する方法、樹脂粒子に熱伝導性フィラーの成分をスプレー等でコーティングする方法、あるいは樹脂粒子と熱伝導性フィラーの成分をボールミルやミキサー、ホモジナイザー等で機械的に混合する方法などが挙げられる。これらのうち、溶媒中で攪拌や超音波等で混合する方法が簡便かつ均一に付着するため好ましい。
【0035】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子は、シランカップリング剤などで表面処理されていても良い。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、樹脂と本発明の蓄熱性熱伝導性粒子とからなる。
【0037】
本発明の樹脂組成物を構成する蓄熱性熱伝導性粒子は、1種類のものを単独で用いてもよいし、2種類以上のものを共存して用いてもよい。
【0038】
また、本発明の熱蓄熱性熱伝導性粒子に加えて、それ以外の熱伝導性フィラーを少量共存して用いることは、本発明の目的を損なわない範囲であれば可能である。この場合の熱伝導性フィラーとしては、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、ダイヤモンド等の炭素系化合物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸マグネシウムや炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、炭化ケイ素や炭化ホウ素等の炭化物などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で蓄熱性熱伝導性粒子以外のフィラーが含まれていても良い。このようなフィラーとしては、難燃剤、耐衝撃性改善剤、補強剤、耐候性改善剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等が使用可能である。
【0040】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子と混合する樹脂としては、とくに限定はされないが、各種の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂、ブタジエンゴムやEPDM等のゴム系樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、EVA樹脂、EVOH樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、SBC樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、液晶ポリマー、PPS、PEEK、PPE、ポリサルフォン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、フィラーの添加量が10~95wt%の範囲にあることが好ましい。フィラーの添加量が10wt%を下回ると、発熱源の温度上昇を抑制する効果が小さくなり、95wt%を上回ると、均一な樹脂組成物が得られにくくなるとともに力学特性等が低下する。添加量は、20~90wt%の範囲にあることがより好ましく、30~90wt%の範囲にあることが更に好ましく、50~80wt%の範囲にあることがとくに好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定はされないが、一軸あるいは多軸の混練機、ラボプラストミル、ニーダーやダイナミックミキサー等のバッチ式ミキサー、ロール混練機等で樹脂とフィラーを所定の配合で混練する方法や、溶媒を用いて、溶解あるいは懸濁した状態で混合する方法等が用いられる。
【0043】
なお、本発明の樹脂組成物中で、蓄熱性熱伝導性粒子の全てが元の形状を保持している必要はない。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形等の成形方法で成形することができ、板状、フィルム状、シート状の他にも各種の3次元形状の成形品とすることができる。また、封止剤、塗料や接着剤のような形態で用いることもできる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はもとよりこれらの例に限定されるものではない。
【0046】
実施例および比較例において、評価は以下のように行った。
(1)融点および蓄熱量
TA Instruments製Discovery DSCを用いて、窒素流通下、室温から100℃まで10℃/分で昇温し、融解のピークトップ(融点)および融解の熱量(蓄熱量)を測定した。
(2)温度上昇試験
5cm角で厚み1mmのサンプルシートを2枚のアルミ板(7.5X5cm、厚み0.85mm)で上下挟んだものを、80℃に温調したヒーター上に載せ、上から0.2kgの重しを載せた。熱電対を、下部アルミ板とサンプルの間(下部熱電対)と上部アルミ板の上(上部熱電対)にそれぞれ設置し、ヒーター上に載せてからの温度上昇を測定した。下部熱電対が70℃に到達するまでの時間と、上部熱電対が60℃に到達するまでの時間をそれぞれ記録した。
【0047】
[実施例1]
THF中に、ステアリン酸(ナカライテスク製試薬特級)60重量部とポリカーボネート(帝人化成製パンライトL-1225L)35重量部を溶解した溶液を調製し、蒸留水を攪拌したものに滴下し、30分間攪拌した。その後、カーボンナノファイバー(昭和電工製VGCF-H、熱伝導率1200W/mK)5重量部を添加し、30分間超音波分散した。その後、遠心分離して沈殿物を回収し、減圧下60℃で24時間乾燥して、蓄熱性熱伝導性粒子を調製した。調製した粒子の、融点は71℃、蓄熱量は120J/gであった。SEM観察の結果、粒子の形状は塊状で、平均粒径は約10μmであり、粒子表面に繊維状のカーボンナノファイバーが繊維どうしがバラバラに付着していることを確認した。
【0048】
[比較例1]
カーボンナノファイバーを添加しないこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、蓄熱材を含有した樹脂粒子を得た。
【0049】
[実施例2]
ポリエチレン(アルドリッチ製LDPE、MFR=25g/10min)40重量部と実施例1で調製した粒子60重量部を、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製 4M150)を用いて、シリンダー設定温度150℃、スクリュー回転数30rpmにて3分間溶融混練を行った。得られた樹脂組成物を、真空プレス成形機(テスター産業(株)製SA-401-A)を用いて、減圧下150℃にてプレス成形を行い、5cm角、厚み1mmのシートを得た。該シートを用いて温度上昇試験を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
実施例1で調製した粒子の代わりに、比較例1で得られた樹脂粒子57重量部とカーボンナノファイバー3重量部を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[参考例]
ポリエチレンのみを真空プレス成形機を用いてプレス成形を実施例2と同様に行い、5cm角、厚み1mmのシートを得た。該シートを用いて温度上昇試験を行った。結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
下部70℃到達時間を比較すると、実施例2は比較例2に比べて長時間を要していることから、本発明の蓄熱性熱伝導性粒子を用いた樹脂組成物は、蓄熱材を含有する樹脂粒子と熱伝導性フィラーをそれぞれ添加したものに比べて、発熱源の温度上昇を効果的に抑制できることわかる。また、上部60℃到達時間は、実施例2、比較例2ともに参考例よりも時間が短く、熱伝導が促進され、放熱性にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の蓄熱性熱伝導性粒子からなる樹脂組成物は、各種電気、電子機器等の放熱シートや冷却シートへの適用や、蓄熱を目的として、建材や自動車の内装材などへの適用が可能である。