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  • 特許-極低温管路用プラグイン式継手 図1
  • 特許-極低温管路用プラグイン式継手 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】極低温管路用プラグイン式継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/00 20060101AFI20220523BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20220523BHJP
   F16L 39/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F16L21/00 A
F16L59/065
F16L39/00
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017246633
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2018115763
(43)【公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】16306805.9
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501044725
【氏名又は名称】ネクサン
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾイカ ライナー
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ホルガー
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-065696(JP,A)
【文献】特開2000-320729(JP,A)
【文献】特開2017-019531(JP,A)
【文献】特開平11-101576(JP,A)
【文献】実開昭53-006923(JP,U)
【文献】実開昭58-052396(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00
F16L 59/065
F16L 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手ソケット(1)と継手プラグ(2)を有し、水平又はほぼ水平の継手構成で使用するための極低温管路用のプラグイン式継手であって、
前記継手ソケット(1)と前記継手プラグ(2)がそれぞれ、内側管構成要素(3,8)と外側管構成要素(4,9)を有し、
前記内側管構成要素(3,8)と前記外側管構成要素(4,9)のそれぞれの間には真空の空間(34,89)があり、
前記継手ソケット(1)と前記継手プラグ(2)が、「ウォーム」端と呼ばれる端に配置されたフランジ接続(5,10)によって取り外し可能に互いに接続され、
前記継手ソケット(1)と前記継手プラグ(2)の間に存在する環状ギャップ(14)が、「コールド」端と呼ばれる別の端で環状シール(1)によって封止され、
前記「ウォーム」端が、前記フランジ接続(5,10)の領域内に配置された環状シール(10b)によって封止されたブラグイン式継手であって、
前記「コールド」端で、前記継手ソケット(1)が、前記継手ソケット(1)の前記内側管構成要素(3)の直径に対して拡大された直径を有する環状部分(6)によって形成されたリザーバ(6)を有し、
前記リザーバ(6)は、前記環状シール(10b)によって前記「ウォーム」端で封止されている前記継手ソケット(1)と前記継手プラグ(2)の間の前記環状ギャップ(14)を構成し、
前記リザーバ(6)は、前記継手ソケット(1)と前記継手プラグ(2)が前記フランジ接続(5,10)によって互いに接続された状態において、前記継手プラグ(2)の前記外側管構成要素(9)の外径に対して拡大された内径を有するプラグイン式継手。
【請求項2】
前記リザーバ(6)が、長手方向断面で見たときに平坦な基部(6a)を有し、したがって、前記リザーバ(6)が、前記内側管構成要素(3)の残りの部分に対して同心に配置された、請求項1に記載のプラグイン式継手。
【請求項3】
前記環状部分(6)が、一定の直径を有する、請求項1又は2に記載のプラグイン式継手。
【請求項4】
前記リザーバ(6)が、長手方向断面で見たときに凹面形基部を有する、請求項1に記載のプラグイン式継手。
【請求項5】
前記リザーバ(6)の基部が、長手方向断面で見たときに「コールド」端の方向に拡大された円錐形状を有する、請求項1又は2に記載のプラグイン式継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平又はほぼ水平な継手構成で使用するための継手ソケットと継手プラグを有する極低温管路用プラグイン式継手に関し、継手ソケットと継手プラグがそれぞれ、内側管構成要素と外側管構成要素を有し、継手ソケットと継手プラグが、端にあって「ウォーム」端と呼ばれるフランジ接続によって取り外し可能に互いに接続され、継手ソケットと継手プラグの間にある環状ギャップが、別の端にあって「コールド」端と呼ばれる環状シールによって封止され、「ウォーム」端は、フランジ接続の領域内にある環状シールによって封止される。
【背景技術】
【0002】
そのようなプラグイン式継手は、例えば特許文献1から収集されうる。
【0003】
そのようなプラグイン式継手の継手ソケットと継手プラグは、フランジ接続によって一端が取外し可能に互いに接続される。この端は、「ウォーム」端と呼ばれ、その理由は、この領域が、実質的に周囲温度による影響を受けるからである。継手ソケット内で最も遠くに突出する継手プラグの端は、「コールド」端と呼ばれる。継手要素間の環状ギャップは、「コールド」端では環状シールによって封止され、「ウォーム」端では、フランジ接続の領域内に配置された環状シールによって封止される。そのような継手は、ジョンストン継手とも呼ばれる。
【0004】
ジョンストン継手は、一般に、極低温媒体を輸送するように意図された真空絶縁管路システム内で使用される。継手の要素は、便宜上、二重壁を有し真空絶縁された設計のものである。これにより、2つの外側継手要素の接続位置と、極低温媒体が1つの管路から他の管路内に移る位置との間の空間内の距離が大きくなる。継手の「ウォーム」端と「コールド」端の間のこの比較的大きい距離によって、常温から極低温への熱負荷が減少するはずである。したがって、蒸発の結果として継手位置が凍結し極低温媒体が失われる例が減少するはずである。
【0005】
そのような継手の場合、継手プラグは、「雄形部分」とも呼ばれ、関連付けられた継手ソケットは、「雌形部分」とも呼ばれる。
【0006】
導入で述べた特許文献1は、ジョンストン継手の方式で真空絶縁管路用プラグイン式継手を開示している。同等のプラグイン式継手は、特許文献2から収集されうる。継手は、プラグイン式継手の「コールド」領域と「ウォーム」領域内にそれぞれのシールを有する。コールド領域内のシールは、プラスチック材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は他の金属からなりうる。ウォーム領域では、Oリングシールによって更なる封止が作成される。それらのシールにも関わらず、環状ギャップ内に流入して閉じ込められた濃縮流体、例えば継手のコールド端に入った極低温液体は、継手が暖められたときに環状ギャップ内に過剰圧力を生成する可能性があり、前記過剰圧力は、組み込まれた安全弁によって防止される。
【0007】
水平又はほぼ水平の継手構成では、コールド端での凝縮による環状ギャップ内に生じた液体は、ウォーム端に流れ込み、そこで蒸発する。次に、蒸気が、コールド端に流れ、そこで新たに凝縮される。この一定相変化の回路は、常時導入され発散される潜熱と関連付けられ、その結果、きわめて大量の熱が、周囲と交換され、したがって継手凍結の外側で交換される。この効果は、ヒートパイプ効果とも呼ばれる。この望ましくない効果は、垂直の継手と約45°以下の角度で傾けられた継手では生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1957851号明細書
【文献】実開昭53-6923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、きわめて低い損失によって差別化される取り外し可能な極低温管路用プラグイン式継手を提供する目的に基づく。詳細には、意図は、プラグイン式継手のヒートパイプ効果と凍結の発生を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、「コールド」端に継手ソケットがリザーバを有し、このリザーバが、継手ソケットの内側管構成要素の直径に対して拡大された直径を有する環状部分によって形成された、本発明によって達成される。
【0011】
本発明によるプラグイン式継手は、水平又は実質的水平の構成の場合に、プラグイン式継手が組み立てられたとき存在する空気中の凝縮液が、継手のコールド端でリザーバ内に維持されるように設計される。したがって、凝縮液は、ウォーム端に流れてそこで蒸発できず、従って、ヒートパイプ効果が防止される。したがって、過剰な熱が周囲と交換されまた継手が外部で凍結する状況を回避できる。リザーバは、全ての凝縮流体を中に維持できるように構成される。従って、リザーバのサイズは、継手要素間の環状ギャップの体積に適応される。したがって、継手に比較的大きい環状ギャップを提供でき、そのような環状ギャップは、継手がヒートパイプ効果による悪影響を受けることなく、特定用途に必要である。大部分のプラグイン式継手のウォーム端とコールド端での封止は、極低温液体、蒸気又は空気が環状ギャップに侵入するのを防ぐ。しかしながら、プラグイン式継手のコールド端での不完全な封止の結果として、極低温液体が環状ギャップに侵入すると、その極低温液体が、空気中の凝縮物と共に、リザーバ内に維持され、継手のウォーム端に流れることが妨げられる。
【0012】
本発明の更に有利な構成は、従属クレームに含まれる。
【0013】
本発明の内容の例示的実施形態は、図面に示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】組み立て前の本発明によるプラグイン式継手の一実施形態の継手プラグと継手ソケットを示す図である。
図2】組み立てられた状態のプラグイン式継手を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面では、類似の引用符号は、類似の技術的特徴に関連する。
【0016】
図1は、組み立て前の2つの継手要素1,2を示す。参照符号1は、継手ソケット又は雌形部分を指し、一方、参照符号2は、継手プラグ又は雄形部分を示す。
【0017】
継手ソケット又はボックス1は、内側管構成要素3と外側管構成要素4を含む。内側管及び外側管構成要素3,4は、その端がフランジ5に気密に溶接される。フランジ5の内腔の内径は、内側管構成要素3の内径に対応する。フランジ5から遠くに向けられたパイプ構成要素3,4の端は、極低温管路の内側管と外側管、及び極低温媒体(図示せず)用の冷却設備の供給ノズルに気密に溶接される。内側管構成要素3と外側管構成要素4の間には、真空環状空間34がある。この環状空間34は、極低温管路の真空空間に接続されかつ/又は端で仕切られる。
【0018】
フランジから遠くに向けられた端で、継手ソケット1の内側管構成要素3が、パイプの内径より拡大された直径を有する領域6を有する。この拡大環状部分6は、リザーバ6を形成する。フランジ5から遠くに向けられた端に、リザーバ6は、収納部品7を有する。収納部品7は、拡大領域6と極低温管路とまた供給ノズルとの間の遷移を提供する回転部品である。収納部品7は、継手ソケット1内に突出し継手プラグ2の端と相互作用する突起を有する。
【0019】
継手プラグ2は、内側管構成要素8と外側管構成要素9を有する。パイプ構成要素8,9の間に真空環状空間89がある。この真空環状空間89は、同様に、極低温管路の真空環状空間に接続される(図示せず)。
【0020】
継手ソケット1の内側管構成要素3の内径は、継手プラグ2の外側管構成要素9の外径より僅かに大きい。
【0021】
フランジ10は、雄形部分2又は継手プラグの外側管構成要素9の一端に気密に溶接される。フランジ10から遠くに向けられた内側管構成要素8と外側管構成要素9の端はそれぞれ、収納部品11に気密に溶接される。収納部品11は、管状突起11aを有し、その上に封止リング12が配置される。封止リング12は、例えば、PTFEからなりうる。PTFE封止リングの代わりに、C形リングシールからなってもよい。
【0022】
フランジ10は、フランジ面のまわりに延在する環状溝10aを有し、その中に配置された封止リング10bを有する。また、フランジ10は、管状拡張部分10cを有する。継手ソケット1のフランジ5は、その内側内腔内に拡張径部分5aを有し、その中にフランジ10の管状拡張部分10cが導入されうる。拡張部分10cが拡張径部分5aに挿入されることによって、2つの継手部品1,2は、組み立てられたときに互いに同心にされる。
【0023】
図2は、組み立てられた状態のプラグイン式継手を示す。2つのフランジ5,10が、テンションチェーン13によって接続される。示されたテンションチェーン13の代わりに、フランジ5,10を締め付けるための他の手段(例えば、クリップ)も使用できる。代替として、フランジ5,10は、内腔を備え、ねじ又はボルトによって接続されうる。継手1のコールド端が低温になると、封止リング12が、2つの収納部品7,11上に収縮し、それにより、継手プラグ2と継手ボックス1の間にある環状ギャップ14が、極低温管路の内部に対して密閉される。示された封止リング12の代わりに、C形リングシールが使用される場合、C形リングシールは、縦軸方向に一定に作用する力によってプレストレスされなければならない。反対端で、環状ギャップ14が、同様に、封止リング10bによって封止される。
【0024】
組み立てられた状態で、リザーバ6は、継手プラグのコールド端における2つの継手要素1,2間の環状ギャップ14を拡張する。水平方向に配置されたプラグイン式継手の場合、環状ギャップ14内で凝縮された流体(例えば、空気又は極低温媒体)は、継手のコールド端でリザーバ6内に維持されうる。したがって、液体がウォーム端に流れるのが防止される。リザーバ6は、全ての凝縮液体を中に保持できるように設計される。ここで、例えば、継手が組み立てられたときに環状ギャップ内に存在する空気体積と、その結果生じる液体体積が考慮される。気体空気と液体空気の体積比は750前後である。したがって、例えば、空気体積が1500mlの場合、リザーバ6は、約2mlの液体を収容できなければならない。雄形部分2の外径を約142mm、雌形部分1の内径を約150mm、ジョンストン継手の内部長(リザーバ6の長さを含む)を約800mmにすると、例えば、リザーバ6の内径が約154mm、リザーバの長さが約50mmとなり、したがって、2mlの凝縮液を収容できる。接続される20mm又は50mmの極低温管路のパイプ内径は、例えば、リザーバ6が、内側管構成要素3の直径より約2~4mm大きい直径を有し、継手に沿って約5~20mm延在することを意味する。拡大径を有する環状部分6は、有利には、リザーバ6が継手のウォーム領域内に拡張せず、したがってリザーバ6内に収集された液体が蒸発しないように選択された長さを有する。
【0025】
図1図2に示された実施形態では、リザーバは、長手方向断面で示されたように平らな基部6aを有し、したがって、リザーバ6は、ソケットの内側管3の残りの部分に対して同心で配置される。リザーバ6の直径は、環状部分全体に一定である。他の実施形態(図示せず)によれば、リザーバの基部は、凹面形状を有するか、コールド端の方向に拡大された円錐形状を有しうる(各場合に長手方向断面で分かるように)。
【0026】
本発明は、例えば、極低温媒体を輸送するためのパイプ間の接続を確立するため、又は超電導ケーブルシステムとエンドシール間の接続を確立するために使用されうる。特に好ましい応用分野は、極低温媒体を輸送するための水平管路間の接続を確立する分野である。
【符号の説明】
【0027】
1 継手ソケット
2 継手プラグ
3,8 内側管構成要素
4,9 外側管構成要素
5,10 フランジ接続
6 リザーバ、環状部分
10b 環状シール
14 環状ギャップ
15 環状シール
図1
図2