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  • 特許-太陽電池モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20220523BHJP
   H01L 31/046 20140101ALI20220523BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 532Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017558059
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2016087232
(87)【国際公開番号】W WO2017110620
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2015252206
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513009668
【氏名又は名称】ソーラーフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井村 公子
(72)【発明者】
【氏名】駒山 英治
(72)【発明者】
【氏名】田島 祐輔
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-175079(JP,A)
【文献】特開2001-148496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0118357(US,A1)
【文献】国際公開第2007/071703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と、
前記第一の基板上に形成された発電部であって、光吸収層、及び前記光吸収層の上部に設けられた電極を含む複数の発電セルと、前記発電セルに接続された接続用電極と、を有する発電部と、
前記接続用電極に接続された配線と、
前記接続用電極上に設けられ、前記発電セルと前記配線との間に位置し、前記発電セルの端部に連続的に形成された緩衝部材と、
前記発電セルを封止する封止材と、
前記封止材上に積層された第二の基板と、
前記封止材の外側面を覆うように形成されたシール材と、を備え、
前記緩衝部材は、前記発電セルと同一の層構成であり、
前記緩衝部材の最上層と、複数の前記発電セルのうち前記緩衝部材に隣接する前記発電セルの最上層は、1つの連続する層から形成され、
前記封止材と前記シール材の界面は前記緩衝部材の最上層上に位置し、
前記界面と連続する前記封止材の端部、及び前記界面と連続する前記シール材の端部は、前記緩衝部材の最上層上に位置する、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記緩衝部材は非発電セルである、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記封止材はエチレンビニルアセテート樹脂からなり、前記シール材がブチルゴムからなる、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記配線は前記接続用電極の上面に直接形成されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般に、基板上の発電セル(光電変換部)が形成された面側に、カバーガラス等の保護部材をEVA等の透光性の封止材によって接着して形成される。更に、ブチルゴム等からなる遮光性のシール材が、封止材の外側面を覆うと共に、太陽電池モジュールの外縁部上で配線を封止する構造が採られる場合もある(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなシール材を備えた構成により、発電セルへの水分の侵入を低減し、太陽電池モジュールの耐湿信頼性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-135377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている太陽電池モジュールの構造の場合、封止材に温度勾配が加わった際の収縮により生じる応力が発電セルを構成する光吸収層と透明電極の界面に加わり、透明電極が剥離するおそれがある。又、太陽電池モジュールの構造によっては、透明電極とは反対側に位置する金属電極が剥離するおそれがある。又、遮光性のシール材がラミネート工程で押しつぶされて発電セルの上に重なると、発電性能の低下や、電流集中による局所的な温度上昇が懸念される。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、発電性能を低下させずに発電セルを構成する電極の剥離を抑制可能な太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールは、第一の基板と、前記第一の基板上に形成された発電部であって、光吸収層、及び前記光吸収層の上部に設けられた電極を含む複数の発電セルと、前記発電セルに接続された接続用電極と、を有する発電部と、前記接続用電極に接続された配線と、前記接続用電極上に設けられ、前記発電セルと前記配線との間に位置し、前記発電セルの端部に連続的に形成された緩衝部材と、前記発電セルを封止する封止材と、前記封止材上に積層された第二の基板と、前記封止材の外側面を覆うように形成されたシール材と、を備え、前記緩衝部材は、前記発電セルと同一の層構成であり、前記緩衝部材の最上層と、複数の前記発電セルのうち前記緩衝部材に隣接する前記発電セルの最上層は、1つの連続する層から形成され、前記封止材と前記シール材の界面は前記緩衝部材の最上層上に位置し、前記界面と連続する前記封止材の端部、及び前記界面と連続する前記シール材の端部は、前記緩衝部材の最上層上に位置する。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、発電性能を低下させずに発電セルを構成する電極の剥離を抑制可能な太陽電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る太陽電池モジュールの概略平面図である。
図2】実施形態に係る太陽電池モジュールの概略断面図である。
図3】実施形態に係る太陽電池モジュールの製造工程を例示する図(その1)である。
図4】実施形態に係る太陽電池モジュールの製造工程を例示する図(その2)である。
図5】実施形態に係る太陽電池モジュールの製造工程を例示する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[太陽電池モジュールの構造]
図1は、本発明の実施形態に係る太陽電池モジュール10の概略平面図である。図2は、本発明の実施形態に係る太陽電池モジュール10の概略断面図である。なお、図1において、図2に示す封止材14、第二の基板15、シール材16、及び緩衝部材17の図示は省略されている。
【0012】
図1及び図2を参照するに、太陽電池モジュール10は、第一の基板11と、発電セル12と、配線13と、封止材14と、第二の基板15と、シール材16と、緩衝部材17とを有している。
【0013】
第一の基板11は、発電セル12等を形成する基体となる部分である。第一の基板11としては、例えば、青板ガラス(ソーダライムガラス)、低アルカリガラス、樹脂及び金属等を用いることができる。第一の基板11の厚さは、例えば、1.8mm程度とすることができる。
【0014】
発電セル12は、第一の基板11上に形成されている。発電セル12は、第一の基板11側から裏面電極121、光吸収層122、及び透明電極123が順に積層された構造である。発電セル12と、発電セル12の側部の第一の基板11上に設けられた接続用電極18とにより発電部が構成されている。
【0015】
裏面電極121は、第一の基板11上に形成されている。裏面電極121としては、例えば、モリブデン(Mo)やモリブデンを少なくとも含む金属を用いることができる。裏面電極121は、所定方向に沿って設けられた分割溝12xにより分割されている。裏面電極121の厚さは、例えば、数10nm~数μm程度とすることができる。なお、接続用電極18は、裏面電極121と同様の材料から形成することができる。又、接続用電極18は、裏面電極121と同様の厚さとすることができる。
【0016】
光吸収層122は、p型半導体からなる層であり、裏面電極121上及び分割溝12x内に形成されている。光吸収層122は、所定方向に沿って設けられた分割溝12yにより分割されている。光吸収層122は、照射された太陽光等を光電変換する部分である。光吸収層122が光電変換することにより発生した起電力は、接続用電極18上に設けられた配線13から外部に電流として取り出すことができる。
【0017】
例えば、配線13は、第一の基板11に設けられた孔20を介して裏面に導出され、図示しない端子ボックスを介して外部に電流が取り出される。
【0018】
光吸収層122としては、例えば、銅(Cu),インジウム(In),セレン(Se)からなる化合物や、銅(Cu),インジウム(In),ガリウム(Ga),セレン(Se),硫黄(S)からなる化合物やアモルファスシリコン等を用いることができる。前記化合物の一例を挙げれば、CuInSe、Cu(InGa)Se、Cu(InGa)(SSe)等である。光吸収層122の厚さは、例えば、数μm~数10μm程度とすることができる。
【0019】
なお、光吸収層122の表面にバッファ層(図示せず)を形成してもよい。バッファ層は、光吸収層122からの電流の漏出を防止する機能を有する高抵抗の層である。バッファ層の材料としては、例えば、亜鉛化合物、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、硫化インジウム(InS)等を用いることができる。バッファ層の厚さは、例えば、5~50nm程度とすることができる。
【0020】
透明電極123は、n型半導体からなる透明な層であり、光吸収層122上及び分割溝12y内に形成されている。透明電極123としては、例えば、酸化亜鉛系薄膜(ZnO)やITO薄膜等を用いることができる。酸化亜鉛系薄膜(ZnO)を用いる場合には、硼素(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等をドーパントとして添加することにより、低抵抗化でき好適である。透明電極123の厚さは、例えば、数μm~数10μm程度とすることができる。光吸収層122と透明電極123とは、pn接合を形成している。
【0021】
光吸収層122及び透明電極123は、所定方向に沿って設けられた分割溝12zにより分割されている。分割溝12zにより分割された各部分は複数の発電セル12を構成している。所定の発電セル12の分割溝12y内に形成されている透明電極123は、分割溝12yを介して隣接する発電セル12の裏面電極121と電気的に接続されている。つまり、分割溝12zにより分割された複数のセルは、直列に接続されている。
【0022】
第一の基板11の発電セル12が形成されている面には、発電セル12の受光面側を封止する封止材14が設けられ、封止材14上には第二の基板15が積層されている。封止材14としては、例えば、エチレンビニルアセテート(EVA:Ethylene-vinyl acetate)樹脂やポリビニルブチラール(PVB:Polyvinyl butyral)樹脂等の透光性の材料を用いることができる。封止材14の厚さは、例えば、0.2~1.0mm程度とすることができる。第二の基板15としては、例えば、厚さが0.5~4.0mm程度の白板強化ガラス板等を用いることができる。
【0023】
第一の基板11の発電セル12が形成されている面の外縁領域には、配線13を被覆するシール材16が設けられている。言い換えれば、配線13は、例えば、シール材16内に通すことができる。
【0024】
シール材16は、第一の基板11の外縁領域と第二の基板15の外縁領域との間に、封止材14の外側面を覆うように形成され、第一の基板11と第二の基板15の互いに対向する面を接着している。シール材16としては、例えば、ブチルゴムやシリコーン系樹脂等を用いることができる。シール材16を設けることにより、発電セル12への水分等の侵入を低減し、太陽電池モジュール10の耐湿信頼性等を向上させることができる。
【0025】
緩衝部材17は、接続用電極18上に設けられ、平面視において(第一の基板11の法線方向から視て)、第一の基板11上の発電セル12と配線13との間に位置している。緩衝部材17は、発電セル12の端部(封止材14とシール材16の界面付近)の応力を緩衝する機能を備えている。封止材14とシール材16の界面は、緩衝部材17上に位置している。緩衝部材17は、層構成は発電セルと同様であるが、発電には寄与しない非発電セルである。緩衝部材17は、発電セル12に隣接して形成されている。
【0026】
このように、太陽電池モジュール10では、第一の基板11上に緩衝部材17を設け、封止材14とシール材16の界面を緩衝部材17上に位置させている。
【0027】
例えば、封止材14とシール材16の界面が配線13上に位置したりすると、封止材14とシール材16の界面の近傍において封止材14の厚さが変化する(段差が生じる)ことになる。
【0028】
この場合、封止材14に温度勾配が加わった際の収縮具合が場所により異なることにより応力が生じ、光吸収層122と透明電極123との界面に応力が加わる。結果として、透明電極123が光吸収層122から剥離するおそれがある。
【0029】
これに対して、太陽電池モジュール10のように、封止材14とシール材16の界面を緩衝部材17上に位置させることにより、封止材14とシール材16の界面の近傍における封止材14の厚さがほぼ一定となる。これにより、封止材14に温度勾配が加わった際の収縮具合も、封止材14とシール材16の界面の近傍においてほぼ一定となるため応力が生じ難い。その結果、発電セル12の最上面を構成する透明電極123の光吸収層122からの剥離を防ぐことができる。
【0030】
又、太陽電池モジュール10では、封止材14とシール材16の界面が緩衝部材17上に位置しており、シール材16が発電セル12の上に重なることがないため、発電性能の低下や、電流集中による局所的な温度上昇を防ぐことができる。なお、電流集中による局所的な温度上昇とは、シール材16が発電セル12の上に重なった場合に、その部分の発電セルの抵抗値が上がるため、その部分以外の発電セルの抵抗値の低い部分に電流が集中的に流れて局所的に温度が上昇することである。
【0031】
又、特許文献1に開示されている太陽電池モジュールでは、ガラス基板のサイズを変えずに、シール材がラミネート工程で押しつぶされても発電セルの上に重ならないように発電セルと配線の位置を離すと、発電セルの面積が小さくなり、発電性能が低くなる。つまり、特許文献1に開示されている太陽電池モジュールでは、ガラス基板のサイズを変えずに、発電性能の低下を防ぐことができない。これに対して、本実施の形態に係る太陽電池モジュール10では、ガラス基板等である第一の基板11のサイズを変えずに、発電性能の低下を防ぐことができる。
【0032】
[太陽電池モジュールの製造方法]
図3図5は、太陽電池モジュールの製造工程を例示する図である。まず、図3に示す工程では、周知の方法により、第一の基板11上に発電セル12、分割溝12x及び12yを形成する。なお、Bは、発電セル12の外縁領域を示している(以降、外縁領域Bとする)。
【0033】
次に、図4に示す工程では、光吸収層122及び透明電極123を所定方向に沿って分割する分割溝12zを形成して発電セル12をパターニングすると共に、発電セル12の外縁領域Bに位置する光吸収層122及び透明電極123を除去する。これにより、分割溝12z内及び外縁領域Bに接続用電極18が形成され、発電セル12の外縁領域B側の接続用電極18の上面に緩衝部材17が形成される。緩衝部材17は、層構成は発電セルと同様であるが、発電には寄与しない非発電セルである。
【0034】
光吸収層122及び透明電極123の除去は、例えば、YAGレーザ等を用い、パルス状のレーザ光を、除去したい領域の光吸収層122及び透明電極123に照射すればよい。或いは、レーザを用いずに、針等を用いて機械的に光吸収層122及び透明電極123を除去してもよい(メカニカルスクライブ)。
【0035】
次に、図5に示す工程では、外縁領域Bに露出する接続用電極18の上面に、はんだ等を用いて配線13を接合する。配線13としては、例えば、銅からなる電極リボン等を用いることができる。
【0036】
この後、第二の基板15の所定領域に封止材14及びシール材16を形成した構造体を、図5に示す構造体の所定領域に、第一の基板11及び第二の基板15を外側にして接着することにより、図1及び図2に示した太陽電池モジュール10が完成する。この際、封止材14とシール材16の界面が緩衝部材17上に位置するように接着することにより、発電セル12の最上面を構成する透明電極123の剥離を防ぐことができる。
【0037】
以上の工程では、発電セル12のパターニング工程(分割溝12zを形成する工程)と緩衝部材17を形成する工程を兼ねることができるため、緩衝部材17を形成することによる太陽電池モジュール10の製造に要する時間の増加を防ぐことができる。
【0038】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0039】
例えば、上記の実施の形態ではサブストレート構造の太陽電池モジュールについて説明したが、本発明はスーパーストレート構造の太陽電池モジュールにも適用可能である。なお、スーパーストレート構造の場合には、透明電極とは反対側に位置する金属電極が剥離するおそれを抑制することができる。
【0040】
又、上記の実施の形態では、配線13を接続用電極18上に直接配置したが、接続用電極18上に緩衝部材17と離間した光吸収層122及び透明電極123を積層し、透明電極123上に配線13を配置してもよい。この場合、透明電極123は、分割溝12yを介して接続用電極18と接続されるため、透明電極123上の配線13も接続用電極18と接続される。
【0041】
本国際出願は2015年12月24日に出願した日本国特許出願2015-252206号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2015-252206号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0042】
10 太陽電池モジュール
11 第一の基板
12 発電セル
12x、12y、12z 分割溝
13 配線
14 封止材
15 第二の基板
16 シール材
17 緩衝部材
18 接続用電極
20 孔
121 裏面電極
122 光吸収層
123 透明電極
図1
図2
図3
図4
図5