(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】変動する寸法を有する支持構造を伴うカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20220523BHJP
A61B 5/367 20210101ALI20220523BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B5/367 100
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018000500
(22)【出願日】2018-01-05
【審査請求日】2020-11-13
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ウ
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-127920(JP,A)
【文献】特表2014-512226(JP,A)
【文献】特開2016-104129(JP,A)
【文献】特表2002-501769(JP,A)
【文献】米国特許第06071274(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
長手方向の軸線に沿って延在する細長いカテーテル本体であって、前記細長いカテーテル本体が近位端及び遠位端を有する、細長いカテーテル本体と、
前記細長いカテーテル本体の前記遠位端に位置し、形状記憶材料から形成される可撓性ワイヤアセンブリであって、前記可撓性ワイヤアセンブリが複数の可撓性ワイヤを有し、それぞれの可撓性ワイヤが近位端及び遠位端を有し、前記可撓性ワイヤのうちの少なくとも1つが変動する断面を有する、可撓性ワイヤアセンブリと、
前記複数の可撓性ワイヤから形成された複数のスパインと、
それぞれのスパインに取り付けられた複数の電極及び配線と、
を備
え、
前記可撓性ワイヤアセンブリがブラシ形状の可撓性ワイヤアセンブリを備え、それぞれの可撓性ワイヤの前記遠位端が、隣接する可撓性ワイヤに取り付けられておらず、
前記複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、第2の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、を備え、前記第2の幅が前記第1の幅よりも広い、カテーテル。
【請求項2】
前記複数の可撓性ワイヤが、第3の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、前記第3の幅が前記第2の幅よりも広い、請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記複数の可撓性ワイヤが、ある厚さを有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、前記厚さが前記可撓性ワイヤの長さに沿って一定の厚さである、請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記複数の可撓性ワイヤが、変動する厚さを有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、前記変動する厚さが、前記可撓性ワイヤの前記近位
端の第1の厚さから、前記可撓性ワイヤの前記遠位
端の第2の厚さまで次第に薄くなる、請求項
1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記形状記憶材料がニッケルチタン合金を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
カテーテルを形成する方法であって、
細長いカテーテル本体を形成することと、
形状記憶材料から可撓性ワイヤアセンブリを形成することであって、前記可撓性ワイヤアセンブリが複数の可撓性ワイヤを有し、前記複数の可撓性ワイヤが変動する断面を有する、ことと、
前記可撓性ワイヤアセンブリを加熱して前記可撓性ワイヤアセンブリをヒートセットすることと、
複数の電極及び配線を前記複数の可撓性ワイヤのそれぞれに接続して、多重電極アセンブリを形成することと、
前記多重電極アセンブリを前記細長いカテーテル本体の遠位端に接続することと、
を含
み、
前記可撓性ワイヤアセンブリがブラシ形状の可撓性ワイヤアセンブリを備え、それぞれの可撓性ワイヤの前記遠位端が、隣接する可撓性ワイヤに取り付けられておらず、
前記複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、第2の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、を有し、前記第2の幅が前記第1の幅よりも広い、方法。
【請求項7】
前記複数の可撓性ワイヤが、第3の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを有し、前記第3の幅が前記第2の幅よりも広い、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気生理学的(EP)カテーテルに関し、詳細には、心臓におけるマッピング及び/又はアブレーションに対応したEPカテーテルに関する。更に具体的には、本発明は変動する寸法を伴う支持機構を有するEPカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学カテーテルは、通常、心臓中の電気的活性のマッピングのために使用される。異なる目的のための様々な電極の設計が知られている。具体的には、バスケット形状の電極アレイを有するカテーテルが既知であり、例えば、米国特許第5,772,590号、同第6,748,255号、及び同第6,973,340号に記載されている。なお、当該特許文献のそれぞれの全開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
バスケットカテーテルは通常、細長いカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に装着されたバスケット形状の電極アセンブリとを有する。バスケットアセンブリは、近位端と遠位端とを有し、その近位端と遠位端とに接続された、複数のスパインを備える。それぞれのスパインは、少なくとも1つの電極を備える。バスケットアセンブリは、スパインが径方向外側に弓形に曲がっている拡張した配置と、スパインがカテーテル本体の軸線に概ね沿って配列されている畳み込まれた配置とを有する。
【0004】
多重電極アセンブリは、1回の拍動など可能な限り少ない拍動で、左心房又は右心房など電極アセンブリがその中で展開される領域の電気的機能を可能な限り検出できることが望ましい。電極アセンブリにより多くの電極を組み入れることにより、それに応じてその領域のより大きい、より完全な範囲をカバーすることができる。更に、電極の数を増やすことで領域内の所望の全区域に到達するために電極アセンブリを再配置する必要性を低減するか又はなくすことができる。多くの場合、電極の数を増やすことに応じて、これらの電極を支持するスパイン又その他の構造の数が増加する。多重スパインを伴う従来技術の設計の1つの問題は、展開されたスパインの動きが容易に制御されずにスパインが移動して互いに近接してしまうことがあり、その結果スパインと電極が接触又は重なり合う可能性があることにある。スパインと電極の接触又は重なり合いは、不正確なデータの収集、又は組織の非効率な処置をもたらし得る。従来の装置の別の問題としては、スパインが十分堅固でなく、マッピングされる又は取り扱われる組織との接触を維持することができない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、スパインの動きを制御するための、また組織との電極の接触を維持するための改良型支持部材を有する多重電極アセンブリが必要とされる。本開示の技法は、このニーズ及び以下の資料に記載する他のニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、カテーテルに関し、カテーテルが、長手方向の軸線に沿って延在する細長いカテーテル本体であって、細長いカテーテル本体が近位端及び遠位端を有する、細長いカテーテル本体と、細長いカテーテル本体の遠位端に位置し、形状記憶材料から形成される可撓性ワイヤアセンブリであって、可撓性ワイヤアセンブリが複数の可撓性ワイヤを有し、それぞれの可撓性ワイヤが近位端及び遠位端を有し、可撓性ワイヤのうちの少なくとも1つが変動する断面を有する、可撓性ワイヤアセンブリ、を含む。カテーテルは更に、複数の可撓性ワイヤから形成された複数のスパインと、それぞれのスパインに取り付けられた複数の電極及び配線と、を含む。
【0007】
一態様では、複数の可撓性ワイヤの遠位端が遠位ハブで接合されており、バスケット形状の多重電極装置を形成する。
【0008】
一態様では、少なくとも1つの可撓性ワイヤは、可撓性ワイヤの中間部が第1の厚さを有し、かつ可撓性ワイヤの近位部が第2の厚さを有する、変動する厚さを有し、第2の厚さが第1の厚さよりも厚く、そして少なくとも1つの可撓性ワイヤが、第3の厚さを有する遠位部を有し、第3の厚さが第1の厚さよりも厚い。
【0009】
一態様では、第2の厚さが第3の厚さに等しく、可撓性ワイヤの厚さが、遠位部から中間部まで次第に薄くなり、可撓性ワイヤの厚さが近位部から中間部まで次第に薄くなる。
【0010】
一態様では、少なくとも1つの可撓性ワイヤが、近位部から遠位部まで一定である幅を有する。
【0011】
一態様では、少なくとも1つの可撓性ワイヤが、近位部から中間部まで次第に狭くなる幅を有し、その幅が遠位部から中間部まで次第に狭くなる。
【0012】
一態様では、可撓性ワイヤアセンブリがブラシ形状の可撓性ワイヤアセンブリを備え、それぞれの可撓性ワイヤの遠位端が、隣接する可撓性ワイヤに取り付けられていない。
【0013】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、第2の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、を備え、第2の幅が第1の幅よりも広い。
【0014】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、第3の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、第3の幅が第2の幅よりも広い。
【0015】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、ある厚さを有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、その厚さが可撓性ワイヤの長さに沿って一定の厚さである。
【0016】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、変動する厚さを有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、その変動する厚さが、可撓性ワイヤの近位部の第1の厚さから、可撓性ワイヤの遠位部の第2の厚さまで次第に薄くなる。
【0017】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する近位部と、第2の幅を有する遠位部と、を備え、第1の幅が第2の幅よりも広く、その幅が、複数の可撓性ワイヤの長さに沿って、第1の幅を有する近位部から第2の幅を有する遠位部まで次第に狭くなる。
【0018】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、第1の厚さを有する近位部と、第2の厚さを有する遠位部と、を備え、第1の厚さが第2の厚さよりも厚く、その厚さが、複数の可撓性ワイヤの長さに沿って、第1の厚さを有する近位部から第2の厚さを有する遠位部まで次第に薄くなる。
【0019】
一態様では、形状記憶材料はニッケルチタン合金を含む。
【0020】
本開示はまた、カテーテルの形成方法に関し、その方法は、細長いカテーテル本体を形成することと、形状記憶材料から可撓性ワイヤアセンブリを形成することであって、その可撓性ワイヤアセンブリが複数の可撓性ワイヤを有し、複数の可撓性ワイヤが変動する断面を有する、ことと、可撓性ワイヤアセンブリを加熱して可撓性ワイヤアセンブリをヒートセットすることと、複数の電極及び配線を複数の可撓性ワイヤのそれぞれに接続して、多重電極アセンブリを形成することと、多重電極アセンブリを細長いカテーテル本体の遠位端に接続することと、を含む。
【0021】
一態様では、多重電極アセンブリがブラシ形状の電極アセンブリである。
【0022】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、近位部における第1の幅と、遠位部における第2の幅とを有し、その幅が、近位部の第1の幅から遠位部の第2の幅に向かって次第に狭くなる。
【0023】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、第2の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、を有し、第2の幅が第1の幅よりも広い。
【0024】
一態様では、複数の可撓性ワイヤが、第3の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを有し、第3の幅が第2の幅よりも広い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
更なる特徴及び利点は、添付図面に例示するように、本開示の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになるであろう。添付図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、同じ参照記号は、概して、図全体を通じて同一の部分又は要素を示す。
【
図1】一実施形態による、本発明のカテーテルの概略図である。
【
図2A】一実施形態による、ブラシ形状の可撓性ワイヤアセンブリの概略図である。
【
図2B】一実施形態による、ブラシ形状の可撓性ワイヤアセンブリの概略図である。
【
図3A】一実施形態による、別の可撓性ワイヤアセンブリの概略図である。
【
図3B】一実施形態による、別の可撓性ワイヤアセンブリの概略図である。
【
図4】別の実施形態による、バスケット形状の多重電極アセンブリの詳細図である。
【
図5A】
図4の実施形態による、バスケット形状の可撓性ワイヤアセンブリの一部の概略図である。
【
図5B】
図4の実施形態による、バスケット形状の可撓性ワイヤアセンブリの一部の概略図である。
【
図6】一実施形態による、多重電極アセンブリを使用した侵襲性医療処置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
最初に、本開示は、具体的に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、変化し得ることが理解されるべきである。したがって、本開示の実践又は実施形態には、本明細書に記載されている選択肢と類似の又は等価ないくつかの選択肢を用いることが可能であるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載されている。
【0027】
本明細書で使用する用語は、本開示の特定の実施形態を説明するためのみであって、制限することを意図するものでないことも理解されるべきである。
【0028】
添付の図に関連して下記に示される詳細記述は、本開示の例示的実施形態を説明するためのものであり、本開示が実践可能な限定的な例示的実施形態を示すことを意図したものではない。本記述全体にわたって使用される用語「例示的」とは、「実施例、事例、又は実例として役立つ」ことを意味し、必ずしも他の例示的な実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。詳細記述には、本明細書の例示的な実施形態の徹底した理解を提供することを目的とした、具体的な詳細が含まれる。本明細書の例示的実施形態は、これらの具体的な詳細なしでも実施が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。場合によっては、本明細書に示される例示的実施形態の新しさを明確にするために、周知の構造及び装置がブロック図形式で示される。
【0029】
単に便宜的及び明確さの目的で、上、下、左、右、上方、下方、上側、下側、裏側、後側、背側、及び前側などの方向を示す用語が、添付の図に関して使用されることがある。これら及び類似の方向を示す用語は、本開示の範囲をいかなる意味でも制限すると見なされるべきではない。
【0030】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は全て、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0031】
最後に、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0032】
多重電極アセンブリは、電気的活動の解析又はマッピングのために心室内でしばしば使用される。患者のストレスを押さえるためばかりでなく、処置時間の短縮のために、このデータの収集はできる限り迅速に行うことが望ましい。この処置時間の短縮のために、複数のスパインの中に分配された多重電極を持つ医療装置が開発されている。電極を収容するスパイン数の増加によって、スパインが処置部に展開されて使用されるときの、スパインの位置決めと剛比のより良い制御の機会が生み出されている。本開示の技術によれば、バスケット形状又はブラシ形状の多重電極アセンブリのスパインは、スパイン支持体に沿って変わる寸法を有し、使用中に、スパインの動きを制御し、組織との電気接触を維持するように構成されている。
【0033】
図1を参照すると、カテーテル10は細長いカテーテル本体12を備え、その細長いカテーテル本体12は近位端及び遠位端、並びにカテーテル本体の近位端の制御ハンドル14を有する。カテーテル10は更に、カテーテル本体12の遠位端に電極アセンブリ16を備える。電極アセンブリ16は、複数のスパインを備える多重電極アセンブリである。一実施形態では、
図1に示すように、電極アセンブリ16は、それぞれが多重電極20を担持し、カテーテル本体12の遠位端に装着された複数のスパイン18を有するブラシ形状の電極アセンブリ16である。別の実施形態では、以下に説明するように、また
図4に示すように、電極アセンブリ16は、バスケット形状の電極アセンブリを備える。カテーテル本体12は、単一の軸方向ルーメン、つまり中央ルーメン26を有する細長い管状構造を備えるが、所望により、任意追加的に複数のルーメンを有することもできる。電気信号の正確なマッピングを可能とするために、比較的高密度の電極アレイを設けることが望ましい場合がある。したがって、スパイン18の使用数は4個から16個と変動してもよく、又は任意の好適な個数としてもよい。スパイン18の遠位端は隣接するスパインから離間している。それぞれのスパイン18は、1つのスパイン当たり少なくとも6個、多くとも約16個の電極数の、若しくは特定の用途に適した別の数の電極数の、多重電極20を含んでもよい。同様に、電極は、スパインに沿って均一に分配するか、又は測定される電気信号の分析を容易にするために近位、中央、若しくは遠位に偏在させることができる。
【0034】
カテーテル本体12は可撓性、すなわち屈曲可能であるが、その長さに沿って実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の好適な構造であってもよく、任意の好適な材料で作製されてもよい。或る構造物は、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)(ポリエーテルブロックアミド)製の外壁を備える。外壁は、カテーテル本体12の捩り剛性を高めるために、ステンレス鋼などの、埋め込まれた編組みメッシュを備えており、そのため、制御ハンドル14が回転されると、カテーテル本体の遠位端部がそれに対応する方式で回転するようになっている。カテーテル本体12の外径はさほど重要ではないが、一般に可能な限り小さくあるべきであり、所望の用途に応じて約10フレンチ以下であってよい。一態様では、カテーテル本体12の全径は、付属する電気リード線を収容するために、電極アセンブリ16に組み入れられた電極20の数に関係し得る。例えば、各スパインが16個の電極を担持する12本のスパイン(合計192個の電極)からなる設計、各スパインが16個の電極を担持する10本のスパイン(合計160個の電極)からなる設計、及び各スパインが16個の電極を担持する8本のスパイン(合計128個の電極)からなる設計は、最大10.0フレンチのカテーテル本体を使用することができる。同様に、外壁の厚さもさほど重要ではないが、中央ルーメンがリードワイヤ、センサケーブル、及び任意の別のワイヤ、ケーブル、又はチューブを収容できるように、充分に薄いものであってもよい。所望により、外壁の内部表面は補剛チューブ(図示せず)で裏張りされて、捩り安定性が改善される。本発明と関連して使用するうえで好適なカテーテル本体の構造物の例は、米国特許第6,064,905号に記載及び図示されており、同特許の全開示内容は本明細書において参照により援用されている。
【0035】
拡張した配置を取り易いように、後述するような形状記憶材料がスパイン18に備えてある。ブラシ形状の電極アセンブリ16が展開されると、それは拡張した構成をとり、そこではスパイン18が概して平面形態に拡張し、左心房などの、電極アセンブリ16がその中で展開されている室内の壁と接触する。
【0036】
一態様では、電気生理学医は、当該分野において一般に知られているように、ガイド用シース24、ガイドワイヤ、及び拡張器を患者の体内に導入することが可能である。例としては、本発明のカテーテルと関連して用いるために好適なガイド用シースは、10FrのDiRex(商標)ガイド用シース(BARD(Murray Hill,NJ)から市販されている)が挙げられる。ガイドワイヤを挿入し、拡張器を除去して、カテーテルをガイド用シースに通して導入することにより、カテーテルが、ガイドワイヤのルーメン26経由でガイドワイヤ上を通過することが可能になる。1つの例示的処置では、カテーテルは、下大静脈(IVC)を通って右心房(RA)に最初に導入され、左心房(LA)に到達するために、隔膜(S)を貫通して通過する。
【0037】
上記の内容から分かるように、カテーテル全体が、患者の血管系を貫通して所望の位置に到達できるように、ガイド用シース24は、収縮位置にある多重電極アセンブリ16のスパイン18を被覆する。カテーテルの遠位端が所望の位置、例えば左心房に到達すると、ガイド用シースは引き抜かれて、多重電極アセンブリ16が露出する。ガイド用シースが引き抜かれると、多重電極アセンブリの形状記憶材料が、房室内部で装置を拡張する。電極アセンブリ16が拡張した状態で、リング電極20が心房の組織と接触する。当業者には理解されることであるが、電極アセンブリ16は、マッピング又は処置されている心臓の領域の構成に応じて、様々な構成で完全に又は部分的に拡張され、真っ直ぐとするか又は偏向させることができる。
【0038】
電極アセンブリ16が拡張されると、電気生理学医は、電極20を使用して局所活動時間をマッピング及び/又はアブレーションすることができ、それが、診断と患者の治療を行う電気生理学医を手引きすることができる。カテーテルは、カテーテル本体に装着された1個若しくは2個以上の基準リング電極を含んでもよく、かつ/又は1個若しくは2個以上の基準電極を患者の身体の外部に配置してもよい。ブラシ形状の電極アセンブリ上の多重電極を有するカテーテルの使用によって、電気生理学医は、心臓の選択された領域をマッピングすることができる。上述した実施形態は、リング電極を使用した。別の実施形態では、多重電極アセンブリは、複数のプリント回路基板(PCB)電極を使用する。この実施形態では、PCB電極は、処置すべき組織に接触し得るスパインの任意の部分に位置してもよい。例えば、PCB電極は、スパインの第1の側部、第2の側部、又は第1及び第2の側部の両方にあってもよい。PCBの位置は、特定の装置の用途に応じて決めてもよい。
【0039】
ブラシ形状の電極アセンブリ16は、
図1に示すように、10個の電極20をそれぞれ担持する、合計8個のスパイン18を特徴とする。別の実施形態では、異なる数のスパイン18及び/又は電極20を用いてもよく、これらは、所望に応じて、それぞれ均一又は不均一に分配することができる。スパイン18の近位端は、カテーテル本体12の遠位端32に固定されてもよい。ルーメン26は、ガイドワイヤのルーメンとして使用することができる。いくつかの実施形態では、ルーメン26も使用して、ヘパリン処理済生理食塩水など好適な潅注流体を電極アセンブリ16に供給してもよい。制御ハンドル14に金具(図示なし)を装着して、好適な供給源又はポンプからの潅注流体をルーメン26に誘導し得る。
【0040】
それぞれのスパイン18は、スパインによって担持される電極20のためのビルトイン、又は埋め込みリードワイヤを備える配線を含んでよい。この配線は、コアと、各ワイヤが導電部として形成されて機能できるようにする絶縁層によってそれぞれ被覆された、複数の概ね類似のワイヤと、を有する。コアは、以下に更に詳細を説明する可撓性ワイヤ28の形状の支持構造、及び/又は追加のリードワイヤ、配線、チューブ、若しくは別の構成要素などの、他の構成要素が通過できるルーメンを提供する。本発明で用いるのに好適なケーブルは、2013年4月11日出願の米国特許出願第13/860,921号、表題「HIGH DENSITY ELECTRODE STRUCTURE」及び2013年10月25日出願の同第14/063,477号、表題「CONNECTION OF ELECTRODES TO WIRES COILED ON A CORE」に記載されており、これらの開示内容の全体が上記に組み込まれている。それぞれの配線(埋め込まれたリードワイヤを伴う)は、ワイヤの好適な電気接続のために制御ハンドル14まで延在し、それによって、電極20にて測定された信号を検出可能にする。
【0041】
それぞれのスパイン18は、1個又は2個以上のリング電極20がその上に装着される非導電性被覆30付き可撓性ワイヤ28の支持体を備えてもよい。それぞれのリング電極20は、当該技術分野で知られているように、単極又は双極として構成されていてもよい。一実施形態では、可撓性ワイヤ28は形状記憶材料から形成されて、拡張した(展開)構成と畳み込まれた(送出)構成との間の移行を容易にしてもよく、非導電性被覆30は、ポリウレタン又はポリイミドチューブなど生体適合性プラスチックチューブをそれぞれ含み得る。複数の可撓性ワイヤ28を接合して、可撓性ワイヤアセンブリを形成してもよい。以下の
図2A~
図5Bに示す可撓性ワイヤアセンブリ29の実施形態は、スパインがマッピング及び/又は処置すべき組織に接触するとき、多重電極装置の制御と安定性の改善をもたらす。
【0042】
図2A及び
図2Bは、改良型可撓性ワイヤアセンブリ29の一実施形態を示す。可撓性ワイヤアセンブリ29は、複数の可撓性ワイヤ28を備える。一実施形態では、可撓性ワイヤアセンブリ29は、ニチノールというニッケルチタン合金から構成される。一実施形態では、可撓性ワイヤアセンブリ29は、ニチノール合金の単一シートから製造される。別の実施形態では、可撓性ワイヤアセンブリ29は、ニチノール合金の単一チューブから製造され、ブラシ状に形成される。ニチノール合金は、レーザカットされて及び/又はドリル加工されてブラシ形状パターンに形成されてもよい。更に別の実施形態では、個々の可撓性ワイヤ28が製造され、次にそれらの近位端で共に接合され、可撓性ワイヤアセンブリを形成する。これらのそれぞれの実施形態では、可撓性ワイヤ28の近位端は、カテーテル12の遠位端32に接合される。
【0043】
上述したように、可撓性ワイヤアセンブリ29は、ニチノール合金、つまり一つの形状記憶材料から構成される。製造中に、可撓性ワイヤアセンブリは、「記憶」形状にヒートセットされ、その「記憶」形状は、展開形状又は展開構成とも呼ばれる。ニチノール製ワイヤは、体温にて可撓性かつ弾性である。大部分の形状記憶金属と同様、ニチノール製ワイヤは、最小限の力を受けて変形し、力の不在下で本来の形状に戻る。作製中に、ニチノール材料は加熱されて所望の形状へと形成される。その後、この形状を、当該技術分野において公知であるように、ヒートセットさせる。ブラシ形状の電極アセンブリ16は、畳み込まれて(変形)ガイド用シースに収納され、次いで患者の所望の領域に送達されて、ガイド用シースから解放されると、その拡張した形状記憶構成に戻ることができる三次元形状を有することになる。当業者は、ニチノール合金に代えて、例えば別の形状記憶材料及び形状記憶ポリマーなどの別の記憶材料を使用してもよいことを認識するであろう。
【0044】
図1の説明で上述したように、可撓性ワイヤアセンブリ29は、スパイン18と、それらのスパイン上に担持される電極20のための支持構造を提供する。しかしながら、多重電極装置の機能が、従来技術の多重電極装置の機能を上回るように改善するために、本発明者は、可撓性ワイヤアセンブリの断面の寸法と形状を変化させることが、電極を担持するスパインのより良い組織接触と制御を提供することになると決定するに至った。
図2Aは、異なる幅を有する可撓性ワイヤ28を有する可撓性ワイヤアセンブリを示す。この実施形態では、可撓性ワイヤ28の幅Wは、中心線CLのより近くに位置する可撓性ワイヤ28Aの第1の幅W
1から、中心線から遠くに位置する可撓性ワイヤ28Bの中間の第2の幅W
2へ、そして次に中心線から最も遠くに位置する可撓性ワイヤ28Cの最大幅W
3へと広くなる。この実施形態では、それぞれの可撓性ワイヤの特定の幅(W1、W2、又はW
3)は、可撓性ワイヤがカテーテルの取り付け位置40から可撓性ワイヤ28の遠位端42まで延在するにつれて、それぞれの可撓性ワイヤ28の長さに沿って維持される。それぞれの可撓性ワイヤ28は、それぞれの可撓性ワイヤのカテーテル取り付け位置40から近位端46まで遠位に延在する遷移部44を更に備える。それぞれの可撓性ワイヤの遷移部44は、一般にそれぞれの可撓性ワイヤ28の幅にほぼ等しい幅を有する。遷移部44の長さと曲率は、可撓性ワイヤ28の位置によって変化する。一般に、遷移部44は、可撓性ワイヤ28の位置が中心線CLから離れていると、その長さと曲率が大きくなる。例えば、中心線CLにより近い可撓性ワイヤ28Aは、比較的短くて真っ直ぐな遷移部44Aを有し、中間距離にある可撓性ワイヤ28Bは、わずかに長くてもよく、またより顕著な曲率を有してもよく、そして外側の可撓性ワイヤ28Cは、カテーテルの取り付け位置40から実質的に湾曲するより長い遷移部を有する。中心線CLから離れて位置する可撓性ワイヤに対して、可撓性ワイヤと遷移部の幅を広くすることによって、可撓性ワイヤが中心線から離れるように曲げられて、多重電極装置16の外周上のブラシ形状のスパインを形成するように、可撓性ワイヤの安定性を増進させる。
【0045】
図2Bは、
図2Aに示される可撓性ワイヤアセンブリ29の側面図である。
図2Bは、可撓性ワイヤ28の厚さTを示している。この実施形態では、厚さTは、可撓性ワイヤ28A~28Cの全てに対して一定であり、またそれぞれの可撓性ワイヤ28の近位端46から遠位端42まで一定である。しかしながら、可撓性ワイヤ28の幅と厚さの比は、最も狭い可撓性ワイヤ28Aから、最も広い可撓性ワイヤ28Cまで増大する。可撓性スパインの幅は、0.013センチメートル~0.051センチメートル(0.005インチ~0.020インチ)の範囲にあってもよい。厚さは、0.010cm~0.051cm(0.004”~0.020”)の範囲にあってもよい。スパインの幅と厚さの比は、1:1~4:1、又は特定の装置の用途ではそれより大きくてもよい。示されるように、スパインの比は、可撓性ワイヤ28Aで1.1:1、可撓性ワイヤ28Bで1.5:1、可撓性ワイヤ28Cで2:1であってもよい。これらの比を有する可撓性ワイヤの、結果として生じる断面形状は、正方形から長方形の範囲に入るはずである。
図2Aで述べた実施形態は単に実例であること、装置は6個を超える可撓性ワイヤを有してもよいこと、可撓性ワイヤアセンブリは、複数にわたる可撓性ワイヤで示した3つの比より多くの、又はそれより少ない比を有してもよいこと、が留意されるべきである。当業者はまた、幅と厚さの比は、装置の特定の用途及び装置に含まれるスパインの全数などの多くの要因によるであろうことを理解することになる。
図2A及び
図2Bに示す実施形態では、位置が中心線CLから離れて移動するにしたがっての、可撓性ワイヤ28A、28B、28Cの幅と厚さの比の増大は、可撓性ワイヤ28に剛性の増大をもたらし、展開した電極装置16の中心線からより遠く離れたスパイン18をよりよく安定させる。
【0046】
ここで
図3A及び
図3Bを参照すると、
図3Aは、変動する断面を有する可撓性ワイヤ129の別の実施形態である。この実施形態では、断面は、可撓性ワイヤ128の近位端146での第1の幅W11から、可撓性ワイヤの遠位端142での幅W12へ、次第に狭くなる。W11とW12の幅の違いは、0.003cm~0.038cm(0.001”~0.015”)であってもよい。W11の幅の増大は、スパインと、可撓性ワイヤ129を被覆する電極と、のよりよい支持のためのより堅固なベース部をもたらす。遠位端142でのより狭い幅W12は、装置の遠位端の可撓性を高め、電極20の処置されるべき組織とのよりよい接触をもたらすことになる。近位端146の剛性と遠位端142の可撓性は、可撓性ワイヤ128の厚さTを調整することによって、更に高めることができる。
図3Bは、可撓性ワイヤ129の側面図を示し、厚さTを示している。可撓性ワイヤ128は、約0.010cm~0.051cm(約0.004”~0.020”)の変動する厚さを有してもよい。一実施形態では、可撓性ワイヤ128の厚さは、第1の厚さT1から第2の厚さT2まで、次第に薄くなる。上述した幅の違いと同様に、厚さTの違いは、約0.003~約0.038cm(約0.001”~約0.015”)であってもよい。別の実施形態では、厚さは長さLに沿って変動せず、T1はT2に等しい。
図3A~
図3Bに示される可撓性ワイヤアセンブリ129の実施形態は、その他の全ての態様では、上の
図2A~
図2Bに示される可撓性ワイヤアセンブリ29と同等である。
【0047】
ここで
図4を参照すると、
図4は、上の
図1に示すカテーテル12などのカテーテルと共に使用するのに好適なバスケット形状の電極アセンブリ216を示す。バスケット形状の電極アセンブリ216は、複数のスパインを備える多重電極アセンブリである。この実施形態では、電極アセンブリ216は、それぞれ複数の電極220を担持する複数のスパイン218を有するバスケット形状の電極アセンブリ216である。電気信号の正確なマッピングを可能とするために、比較的高密度の電極アレイを設けることが望ましい場合がある。したがって、スパイン218の使用数は4個から16個と変動してもよく、又は任意の好適な個数としてもよい。スパイン218の遠位端は隣接するスパインから離間している。それぞれのスパイン218は、1つのスパイン当たり少なくとも6個、多くとも約16個などの、若しくは、特定の用途に好適な任意の別の数の電極などの、多重電極220を含んでもよい。同様に、電極は、スパインに沿って均一に分配するか、又は測定される電気信号の分析を容易にするために近位、中央、若しくは遠位に偏在させることができる。スパイン218の遠位端は、遠位ハブ222で共に接合される。遠位ハブ222は、特定の用途に好適となるように任意の形状をとってもよい。一実施形態では、遠位ハブ222を略円形の偏平構造としたことにより、マッピング又は処置されるべき組織に、より多くの電極220を接触させることを可能にしている。別の実施形態では、遠位ハブ222は、複数の挿入点で遠位ハブを接合するスパインを有する円柱形状である。スパイン218は、遠位ハブ222を中心として放射状に均一に又は不均一に分配することができる。スパイン218は、上述したように、形状記憶材料を含み、それによって拡張した配置をとることを容易にしている。バスケット形状の電極アセンブリ216が展開されると、それは拡張した構成をとり、そこではスパイン218が外側に湾曲して、左心室などの、電極アセンブリがその中で展開した室内の壁と接触するか、又はその近位に近づく。
【0048】
それぞれのスパイン218は、1個又は2個以上のリング電極220がその上に装着される、非導電性被覆230付き可撓性ワイヤ228の支持体を備えてもよい。それぞれのリング電極220は、当技術分野で知られているように、単極又は双極として構成されていてもよい。一実施形態では、可撓性ワイヤ228は形状記憶材料から形成されて、拡張した(展開)構成と畳み込まれた(送出)構成との間の移行を容易にしてもよく、非導電性被覆230は、ポリウレタン又はポリイミドチューブなど生体適合性プラスチックチューブをそれぞれ含み得る。複数の可撓性ワイヤ28は、以下に
図5A及び
図5Bに関連してより詳細に説明するように、接合されて可撓性アセンブリを形成してもよい。
【0049】
本明細書において用いる場合、電極アセンブリ216を説明するのに用いる「バスケット形状」という用語は、図に描かれた構成に限定されず、それらの近位端と遠位端とにおいて直接的又は間接的に連結された複数の拡張可能なアーム、すなわちスパインを含む、球形又は卵形のデザインなど他の設計も含み得る。一態様では、患者の解剖学的構造に応じて異なる寸法のバスケット形状の電極アセンブリを使用することで、右心房又は左心房などの調べようとする患者の領域に近密に適合させることができる。電極アセンブリ216の別の形状も本発明によって企図される。
【0050】
上に図示して詳細に説明したブラシ形状の多重電極アセンブリと同様に、バスケット形状の多重電極のための基本的な可撓性ワイヤアセンブリの支持体はまた、可撓性ワイヤアセンブリを作り上げる可撓性ワイヤの断面の改良から利益を得ることになる。更に、断面形状は概して正方形又は長方形である。この形状はまた、スパインと電極の制御と移動の改善を支援する。
【0051】
ここで
図5A及び
図5Bを参照すると、
図5A及び
図5Bは、可撓性ワイヤアセンブリ229の変動する断面を伴う可撓性ワイヤ228を示す。一実施形態では、可撓性ワイヤ228の厚さTは、可撓性ワイヤ228の中間部の近くでの第1の厚さT1から、可撓性ワイヤ228の近位端246に隣接する第2の厚さT2まで変動する。可撓性ワイヤ228は、ハブ222に近い位置で第3の厚さT3を有してもよい。
図5Bは、変動する厚さをよりよく示すために、真っ直ぐにした可撓性ワイヤ228を示す。この実施形態では、可撓性ワイヤ228の厚さは、遠位端242での厚さT3から中間部に向けて薄くなり、近位端246での厚さT2もまた中間部に向けて薄くなる。一実施形態では、厚さT2は厚さT3に等しい。可撓性ワイヤ228の厚さは、0.015cm~0.030cm(0.006”~0.012”)の範囲にある。T1とT2/T3の幅の違いは、約0.003~約0.015cm(約0.001”~約0.006”)であってもよい。一実施形態では、可撓性ワイヤの幅は、近位端246から遠位端242まで基本的に一定のままである。別の実施形態では、幅もまた厚さと同様に変化する。幅の寸法は、0.010cm~0.038cm(0.004”~0.015”)であってもよい。
【0052】
当業者に理解されるように、
図2A~
図5Bに関して上記されている各実施形態の要素を、他の実施形態による他の要素と組み合わせて用いることも可能であり、これらの組み合わせは本発明の範囲内に含まれる。後述する
図6の説明はまた、上記の実施形態のそれぞれにも当てはまる。
【0053】
図6は、多重電極アセンブリ16の使用法を説明しやすくするための、本発明の実施形態による侵襲性医療処置の概略図である。遠位端に電極アセンブリ16(
図1参照)を有するカテーテル10は、検出した信号を記録し、解析するコンソール62に対応する電極20(
図1参照)からのワイヤを接続するためのコネクタ60を近位端に有してよい。電気生理学医64は、患者66にカテーテル10を挿入することによって、この患者の心臓68から電極電位信号を取得することができる。この専門家は、挿入を実施するために、カテーテルに取り付けられた制御ハンドル14を使用する。コンソール62は、受信信号を解析する処理装置70を含んでよく、コンソールに取り付けられたディスプレイ72に、解析結果を表示することができる。この結果は典型的に、信号から誘導されたマップ、数値表示、及び/又はグラフの形式である。
【0054】
更なる態様では、処理装置70はまた、電極アセンブリ16に隣接するカテーテル10の遠位端付近に設置された、1個又は2個以上の位置センサ74からの信号を受信することができる。このセンサは、1個の磁場応答コイル又は複数個のかかるコイルをそれぞれ備えてよい。複数のコイルを使用することにより、六次元位置及び向き座標を決定できる。したがって、センサは、外部コイルからの磁場に応答して電気位置信号を生成し、それによってプロセッサ70が、心臓腔内におけるカテーテル10の遠位端の位置を判定すること(例えば、位置及び向き)を可能にする。次いで、電気生理学医は、ディスプレイ72において、患者の心臓画像上の電極アセンブリ16の位置を確認することができる。例として、この位置検出法は、Biosense Webster Inc.社(カリフォルニア州ダイアモンドバー)製のCARTO(商標)システムを使用して実行してよく、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/005768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に開示されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。理解されるように、他の位置検出法も用いることができる。所望により、少なくとも2個の位置センサが電極アセンブリ16の近位及び遠位に位置してもよい。近位センサに対する遠位センサの座標を決定することができ、電極アセンブリ16のスパイン18に付属する他の既知の情報と共に使用して、電極20のそれぞれの位置を検出することができる。
【0055】
上記の説明文は、現時点において開示されている本発明の実施形態に基づいて示したものである。本発明が関連する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨、及び範囲を大きく逸脱することなく、記載される構造に改変及び変更を実施しうる点は認識されるであろう。当業者には理解されるように、図面は必ずしも縮尺どおりではない。したがって、上記の説明文は、添付図面に記載及び例示される正確な構成のみに関連したものとして読まれるべきではなく、むしろ以下の最も完全で公正な範囲を有するものとされる特許請求の範囲と一致し、かつこれを支持するものとして読まれるべきである。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
長手方向の軸線に沿って延在する細長いカテーテル本体であって、前記細長いカテーテル本体が近位端及び遠位端を有する、細長いカテーテル本体と、
前記細長いカテーテル本体の前記遠位端に位置し、形状記憶材料から形成される可撓性ワイヤアセンブリであって、前記可撓性ワイヤアセンブリが複数の可撓性ワイヤを有し、それぞれの可撓性ワイヤが近位端及び遠位端を有し、前記可撓性ワイヤのうちの少なくとも1つが変動する断面を有する、可撓性ワイヤアセンブリと、
前記複数の可撓性ワイヤから形成された複数のスパインと、
それぞれのスパインに取り付けられた複数の電極及び配線と、
を備える、カテーテル。
(2) 前記複数の可撓性ワイヤの前記遠位端が遠位ハブで接合されており、バスケット形状の多重電極装置を形成する、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記少なくとも1つの可撓性ワイヤは、前記可撓性ワイヤの中間部が第1の厚さを有し、かつ前記可撓性ワイヤの近位部が第2の厚さを有する、変動する厚さを有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも厚い、実施態様2に記載のカテーテル。
(4) 前記少なくとも1つの可撓性ワイヤが、第3の厚さを有する遠位部を有し、前記第3の厚さが前記第1の厚さよりも厚い、実施態様3に記載のカテーテル。
(5) 前記第2の厚さが前記第3の厚さに等しく、前記可撓性ワイヤの厚さが、前記遠位部から前記中間部まで次第に薄くなり、前記可撓性ワイヤの厚さが前記近位部から前記中間部まで次第に薄くなる、実施態様4に記載のカテーテル。
【0057】
(6) 前記少なくとも1つの可撓性ワイヤが、前記近位部から前記遠位部まで一定である幅を有する、実施態様4に記載のカテーテル。
(7) 前記少なくとも1つの可撓性ワイヤが、前記近位部から前記中間部まで次第に狭くなる幅を有し、前記幅が前記遠位部から前記中間部まで次第に狭くなる、実施態様4に記載のカテーテル。
(8) 前記可撓性ワイヤアセンブリがブラシ形状の可撓性ワイヤアセンブリを備え、それぞれの可撓性ワイヤの前記遠位端が、隣接する可撓性ワイヤに取り付けられていない、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 前記複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、第2の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、を備え、前記第2の幅が前記第1の幅よりも広い、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) 前記複数の可撓性ワイヤが、第3の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、前記第3の幅が前記第2の幅よりも広い、実施態様9に記載のカテーテル。
【0058】
(11) 前記複数の可撓性ワイヤが、ある厚さを有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、前記厚さが前記可撓性ワイヤの長さに沿って一定の厚さである、実施態様9に記載のカテーテル。
(12) 前記複数の可撓性ワイヤが、変動する厚さを有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを備え、前記変動する厚さが、前記可撓性ワイヤの前記近位部の第1の厚さから、前記可撓性ワイヤの前記遠位部の第2の厚さまで次第に薄くなる、実施態様9に記載のカテーテル。
(13) 前記複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する近位部と、第2の幅を有する遠位部と、を備え、前記第1の幅が前記第2の幅よりも広く、前記幅が、前記複数の可撓性ワイヤの長さに沿って、前記第1の幅を有する前記近位部から前記第2の幅を有する前記遠位部まで次第に狭くなる、実施態様8に記載のカテーテル。
(14) 前記複数の可撓性ワイヤが、第1の厚さを有する近位部と、第2の厚さを有する遠位部と、を備え、前記第1の厚さが前記第2の厚さよりも厚く、前記厚さが、前記複数の可撓性ワイヤの長さに沿って、前記第1の厚さを有する前記近位部から前記第2の厚さを有する前記遠位部まで次第に薄くなる、実施態様13に記載のカテーテル。
(15) 前記形状記憶材料がニッケルチタン合金を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0059】
(16) カテーテルを形成する方法であって、
細長いカテーテル本体を形成することと、
形状記憶材料から可撓性ワイヤアセンブリを形成することであって、前記可撓性ワイヤアセンブリが複数の可撓性ワイヤを有し、前記複数の可撓性ワイヤが変動する断面を有する、ことと、
前記可撓性ワイヤアセンブリを加熱して前記可撓性ワイヤアセンブリをヒートセットすることと、
複数の電極及び配線を前記複数の可撓性ワイヤのそれぞれに接続して、多重電極アセンブリを形成することと、
前記多重電極アセンブリを前記細長いカテーテル本体の遠位端に接続することと、
を含む、方法。
(17) 前記多重電極アセンブリがブラシ形状の電極アセンブリである、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記複数の可撓性ワイヤが、近位部における第1の幅と、遠位部における第2の幅とを有し、前記幅が、前記近位部の前記第1の幅から前記遠位部の前記第2の幅に向かって次第に狭くなる、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記複数の可撓性ワイヤが、第1の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、第2の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤと、を有し、前記第2の幅が前記第1の幅よりも広い、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記複数の可撓性ワイヤが、第3の幅を有する少なくとも1つの可撓性ワイヤを有し、前記第3の幅が前記第2の幅よりも広い、実施態様19に記載の方法。