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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】蓄熱資材
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
F28D20/02 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018018127
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019135425
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500241952
【氏名又は名称】三光ライト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303030209
【氏名又は名称】株式会社ヤノ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】酒寄 治樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】矢野 直達
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-018864(JP,A)
【文献】実開昭58-102166(JP,U)
【文献】実開昭54-134103(JP,U)
【文献】国際公開第2014/024732(WO,A1)
【文献】特開2014-009258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に蓄熱物質を封入した蓄熱資材であって、
上記容器の表面には、表面積を広げるための複数本の波状凸部が形成されており、
予め粗面化処理が施された上記容器の上面または下面の何れか一方の面に、近赤外線吸収物質を含む吸熱フィルムと接着シートの積層体が、ラッピング処理によって密着配置されると共に、他方の面には植物育成用の発光色素塗料を塗布した光放射フィルムがラッピングされていることを特徴とする蓄熱資材。
【請求項2】
上記近赤外線吸収物質が、フタロシアニンを含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は蓄熱資材に係り、特に、昼間に太陽熱を蓄積しておき、夜間にこれを放出する機能を備えた蓄熱資材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蓄熱資材に関しては、すでに数々の先行例が存在しており、例えば特許文献1及び2においては、対向配置された一対の面部材よりなる扁平形状のカプセル容器本体内に、塩化カルシウム水和物と水との混合物よりなる蓄熱物質を収納した蓄熱カプセルが開示されている。
このような蓄熱カプセルを多数用意し、ボルト等を介して相互に連結したものを温室に配置しておくことにより、昼間は太陽熱を吸収して温室内温度が過昇温することを防止できると共に、夜間には昼間の中に吸熱・蓄熱しておいた太陽熱を放出することにより、加温燃料費を節約することができる。
【0003】
【文献】特開2005-345081号公報
【文献】特開2007-147165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような蓄熱資材には貫通孔が設けられており、フックに引っ掛けたり、ボルトやワイヤ等を介して相互に連結したりすることにより、比較的広い温室内に多数の蓄熱資材を効率的に配置することができるように工夫されている。
しかしながら、個々の蓄熱資材の蓄熱効率を向上させることができれば、設置個数を徒に増やすことなく、さらなる加熱燃料費の節約が可能となる。
この発明は、このような視点に立ち、既存の蓄熱資材の蓄熱効率を向上させ得る技術の実現を目的として案出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1に記載した蓄熱資材は、容器内に蓄熱物質を封入した蓄熱資材であって、上記容器の表面に、近赤外線吸収物質を配置したことを特徴としている。
【0006】
また、請求項2に記載した蓄熱資材は、請求項1の蓄熱資材であって、上記近赤外線吸収物質が、フタロシアニンを含有するものであることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載した蓄熱資材は、請求項1または2の蓄熱資材であって、上記容器の表面に、近赤外線吸収物質を混練した樹脂フィルムをラッピングしたことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載した蓄熱資材は、請求項1または2の蓄熱資材であって、上記容器の表面に、近赤外線吸収物質を含む塗料を塗布した樹脂フィルムをラッピングしたことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載した蓄熱資材は、請求項1または2の蓄熱資材であって、上記容器の表面に、近赤外線吸収物質を含む塗料を塗布したことを特徴としている。
【0010】
請求項6に記載した蓄熱資材は、請求項1または2の蓄熱資材であって、上記容器の表面に、近赤外線吸収物質を混練した樹脂材よりなるジャケットを装着したことを特徴としている。
【0011】
請求項7に記載した蓄熱資材は、請求項1~6の蓄熱資材であって、上記容器の表面の一部に、植物育成用の発光色素を含む物質を配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る蓄熱資材の場合、蓄熱資材の容器の表面にフタロシアニン等の近赤外線吸収物質を配置しているため、昼間には近赤外線吸収物質が太陽熱を効率的に吸収し、容器内の蓄熱物質の温度も上昇する。この結果、夜間において高い温度で放熱することが可能となり、暖房の燃料消費量を大幅に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)は、この発明に係る蓄熱資材10の平面図であり、図1(b)は、そのA-A断面図である。
この蓄熱資材10は、ポリエチレン等の合成樹脂よりなる比較的扁平な形状をした容器12内に、塩化カルシウム水和物と水との混合物等よりなる蓄熱物質14を充填してなる。
【0014】
容器12の前側面16には、蓄熱物質14を充填するための穴を塞ぐキャップ18が嵌装されている。
また、容器12の上面から下面に向けて複数の貫通孔20が形成されており、この貫通孔20にボルトやロープ、フック等を挿通することにより、他の蓄熱資材10や設置対象物との連結がなされる。
【0015】
容器12の上面には、矩形状凹部22が形成されている。
また容器12の上面には、表面積を広げる目的で複数本の波状凸部24が、相互に一定の間隔をおいて平行するように形成されている。
【0016】
つぎに、この蓄熱資材10の表面に近赤外線吸収物質を配置させる方法について説明する。
まず、図2(a)に示すように、蓄熱資材10の容器12の表面に対し、コロナ放電を用いた粗面化処理を施す。
【0017】
つぎに、図2(b)に示すように、容器12の上面及び下面に、吸熱フィルム34と接着シート36との積層体38を配置させ、図示しないラッピング装置を介して、加熱収縮及び真空吸引を用いたラッピング処理を施す。
この結果、容器12の上面、下面及び側面には、吸熱フィルム34が配置される。
上記のように、事前に容器12の表面に対してはコロナ放電による粗面化処理が施されているため、吸熱フィルム34との間で高い密着性が実現される。
【0018】
上記の吸熱フィルム34は、例えば、ポリカーボネートシート30の裏面に、フタロシアニン等を含む近赤外線吸収色素塗料32を塗布したものよりなる。
ただし、適当な合成樹脂材にフタロシアニン等の近赤外線吸収色素を混練させた材料で吸熱フィルム34を形成することもできる。
【0019】
この吸熱フィルム34によってラッピングされた蓄熱資材10を温室内に設置しておくと、昼間には吸熱フィルム34の近赤外線吸収物質が太陽熱を効率的に吸収し、蓄熱資材10の表面温度を従来の蓄熱資材に比べて数%上昇させることが可能となる。
この結果、容器12内の蓄熱物質14の温度も上昇するため、その分、夜間において高い温度で放熱することが可能となり、暖房の燃料消費量を大幅に抑制することができる。
【0020】
図3は、容器12の表面に吸熱フィルム34をラッピングした蓄熱資材10(対策品)と、容器12の表面に吸熱フィルム34をラッピングしていない従来の蓄熱資材(未対策品)の表面温度を、時系列に沿って測定した結果を示すグラフである。
図示の通り、外気温の上昇に伴い、それぞれの表面温度は上昇していくが、日差しが強まる10時~15時の間において、対策品は未対策品に対して常に高い温度が記録されており、ピーク時には両者間に3℃以上の温度差が生じている。
【0021】
上記においては、容器12の上面及び下面の両方に吸熱フィルム34をラッピングする例を示したが、この発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上面または下面の何れか一方については、吸熱フィルム34の代わりに、ポリカーボネートシートの裏面に植物育成用の発光色素塗料を塗布した光放射フィルムをラッピングするように構成してもよい。
この場合、吸熱フィルム34を配置した面に太陽光が当たり、反対面が栽培植物側に向くように蓄熱資材10を設置することにより、熱エネルギーの吸収率向上効果と植物育成の促進効果が同時に得られる。
上記の「発光色素塗料」は、例えば、ナノフタロシアニン系、金属錯体系、ホウ素錯体系の塗料が該当する。
【0022】
図4は、この発明の他の実施形態として、蓄熱資材10の容器12の上面及び下面に、フタロシアニン等の近赤外線吸収色素を含む吸熱塗料40を吹き付け等よって直接塗布し、吸熱層を形成する例を示している。
【0023】
この場合も上記と同様、容器12の表面には事前にコロナ放電を用いた表面粗面化処理が施されている。
また、上面または下面の何れか一方については、近赤外線吸収色素の代わりに植物育成用の発光色素を含む塗料を塗布するように構成してもよい。
【0024】
図5及び図6は、蓄熱資材10の表面に、吸熱ジャケット50を装着する様子を示す斜視図である。
【0025】
吸熱ジャケット50は、ポリカボネート等の合成樹脂材に、フタロシアニン等の近赤外線吸収色素を混練した素材よりなり、蓄熱資材10の上面を覆う面積及び形状を備えた平面部52と、蓄熱資材10の前側面16及び後側面53に係合される4つの湾曲爪部54を備えている。
【0026】
吸熱ジャケット50の平面部52には、蓄熱資材10の上面に形成された矩形状凹部22に対応する矩形状凸部55と、波状凸部24に対応する複数の波状凹部56が形成されている。
また吸熱ジャケット50の平面部52には、蓄熱資材10に形成された貫通孔20と連通する複数の貫通孔58が形成されている。
【0027】
この吸熱ジャケット50の各湾曲爪部54を、蓄熱資材10の前側面16及び後側面53に係合することにより、図6に示すように、吸熱ジャケット50は蓄熱資材10の上面に装着される。
図示は省略したが、吸熱ジャケット50の平面部52と、蓄熱資材10の上面との間には適当な接着剤が塗布されているため、両者間の密着性が確保されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】この発明に係る蓄熱資材を示す平面図及び断面図である。
図2】蓄熱資材の表面に近赤外線吸収物質を塗布した吸熱フィルムをラッピングする例を示す断面図である。
図3】この発明に係る蓄熱資材の効果を示すグラフである。
図4】蓄熱資材の表面に近赤外線吸収物質を直に塗布する例を示す断面図である。
図5】蓄熱資材の表面に近赤外線吸収物質を含有する吸熱ジャケットを装着する様子を示す斜視図である。
図6】蓄熱資材の表面に近赤外線吸収物質を含有する吸熱ジャケットを装着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 蓄熱資材
12 容器
14 蓄熱物質
16 容器の前側面
18 キャップ
20 貫通孔
22 矩形状凹部
24 波状凸部
30 ポリカーボネートシート
32 近赤外線吸収色素塗料
34 吸熱フィルム
36 接着シート
38 積層体
40 吸熱塗料
50 吸熱ジャケット
52 平面部
53 容器の後側面
54 湾曲爪部
55 矩形状凹部
56 波状凹部
58 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6