(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】転動要素軸受トランスミッション
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20220523BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20220523BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16C19/18
F16C33/78 Z
F16H1/32 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018020031
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】10 2017 202 444.5
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508282993
【氏名又は名称】アクティエボラゲット・エスコーエッフ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・シュテファン
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-243000(JP,A)
【文献】実開昭61-081040(JP,U)
【文献】特開平08-177991(JP,A)
【文献】特開平11-278084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16C 19/18
F16C 33/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動のために提供される駆動要素と、旋回出力として提供される出力要素と、前記駆動要素および前記出力要素に対して回転または旋回しない固定要素と、
前記出力要素に連結されるか、または前記出力要素から形成される少なくとも1つの第1のロールオン面要素、前記駆動要素に連結されるか、または前記駆動要素から形成される第2のロールオン面要素、および前記固定要素に連結されるか、または前記固定要素から形成される第3のロールオン面要素、であって、前記ロールオン面要素上に、転動要素が転動するために設けられる、第1、第2、および第3のロールオン面要素と、
前記第1のロールオン面要素と前記第2のロールオン面要素との間に配置され、これにより前記第1のロールオン面要素と前記第2のロールオン面要素とが互いに対して転動要素軸受の手法において回転可能とされた、少なくとも1つの第1のセットの転動要素と、
前記第2のロールオン面要素と前記第3のロールオン面要素との間に配置され、前記第2のロールオン面要素と前記第3のロールオン面要素とが互いに対して転動要素軸受の手法において回転可能とされた、少なくとも1つの第2のセットの転動要素と、
前記
第1のロールオン面要素、前記第2のロールオン面要素、および前記第3のロールオン面要素同士の間に動作可能に配置され、少なくとも1つの運動パラメータの変化が前記駆動
要素と前記出力
要素との間に達成されるように構成されたトランスミッション機構と、
を備え
、
前記第1のセットの転動要素、少なくとも1つの前記第1のロールオン面要素、および少なくとも1つの前記第2のロールオン面要素により形成された軸受は、前記出力要素に作用する唯一の軸受である、転動要素軸受トランスミッション。
【請求項2】
前記トランスミッション機構は、1:2から1:20000まで、
または1:50から1:500までの比での回転速度の変化が達成されるよう
に構成される、請求項1に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項3】
前記トランスミッション機構は、バックラッシュのない手法で構成される、請求項1または2に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項4】
前記第2のロールオン面要素は、前記第1のロールオン面要素および前記第3のロールオン面要素に対応する少なくとも二部品で構成される、請求項
1から3のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項5】
前記第1のセットの転動要素と前記第2のセットの転動要素とは、
同軸に配置され、前記第1のセットの転動要素および/もしくは前記第2のセットの転動要素は、一列、二列、もしくは複数列のセットの転動要素として構成され、前記転動要素は玉もしくはころとして構成され、ならびに/または前記第1のセットの転動要素および/もしくは前記第2のセットの転動要素と、関連付けられる前記ロールオン面要素と、
は二列のアンギュラーコンタクト玉軸受の手法において構成される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項6】
前記転動要素軸受は、グリス潤滑または油潤滑ともされ、シール要素が、前記転動要素を収容した空間を封止するために設けら
れる、請求項1から5のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項7】
前記転動要素の少なくとも1つのセットのうちの転動要素、または前記転動要素のセットのうちの少なくとも1つの列の転動要素は、ケージ内に配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項8】
前記トランスミッション機構は、遊星トランスミッションの手法において構成され
、周方向に分配され、前記駆動要素または前記第2のロールオン面要素に支持される複数の二重歯車が、前記固定要素もしくは前記第3のロールオン面要素に形成されるか、または連結される、内部で噛み合わされた歯車領域と相互作用し、且つ前記出力要素もしくは前記第1のロールオン面要素に形成されるか、または連結される、さらなる内部で噛み合わされた歯車領域と相互作用する、請求項1から7のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項9】
バックラッシュがないようにするために、周囲にわたって分配される相互に対向した二重歯車の対が
、適切なバネ機構によって、互いに対して反対方向に予荷重を掛けら
れる、請求項
8に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項10】
内部で噛み合わされた前記歯車領域のうちの少なくとも1つが、数十分の1mmの範囲で、歯車対に対して若干の重なりを伴って構成される、請求項8または9に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項11】
前記トランスミッション機構は波動歯車装置を備え
、楕円形の周囲経路を生じる波動歯車装置が、フレクスプラインを変形させるために設けられ、前記フレクスプラインの外歯歯車が、内部で噛み合わされた歯車領域において係合するために設けられ
、前記波動歯車装置
の駆動要素は
、前記第2のロールオン面要素に連結されるか、また
は前記第2のロールオン面要素から形成され、前記フレクスプラインは、前記出力要素もしくは前記第1のロールオン面要素に連結されるか、または前記出力要素もしくは前記第1のロールオン面要素から形成され、前記歯車領域は、前記固定要素もしくは前記第3のロールオン面要素に連結されるか、または前記固定要素もしくは前記第3のロールオン面要素から形成される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項12】
前記トランスミッション機構はサイクロイド駆動部を備え
、カムディスクと、前記カムディスクを駆動する偏心器と、前記カムディスクのための転動相手としてのボルトと、前記カムディスクによって駆動可能なボルトディスクと、が設けられ
、前記偏心器は、前記駆動要素もしくは
前記第3のロールオン面要素に対応した前記第2のロールオン面要素に連結されるか、または前記駆動要素もしくは前記第2のロールオン面要素から形成され、前記ボルトディスクは
、前記第1のロールオン面要素に連結されるか、また
は前記第1のロールオン面要素から形成され、前記ボルトは、前記固定要素もしくは前記第3のロールオン面要素に設けられるか、または前記固定要素もしくは前記第3のロールオン面要素から形成される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【請求項13】
前記トランスミッション機構は玉変換駆動部(玉式減速装置)を備え、前記
トランスミッション機構内の球は、前記トランスミッションの第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、前記第1の構成要素内の前記球は
、楕円の形とされた溝に案内され、前記第2の構成要素内の前記球は
、サイクロイドの形とされた溝に案内される、請求項1から7のいずれか一項に記載の転動要素軸受トランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転動要素軸受トランスミッションに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術領域において、機構は、特に回転速度が比較的大きく減速される駆動部に関連して、できるだけ多数のサイクルの迅速な旋回動作を実行するように設計されなければならないという要求があり、その機構は、同時に耐久性があり、堅牢であり、単純且つ安価でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、この点における改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の主題によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項に記述されている。
【0006】
請求項1による転動要素軸受トランスミッションは、以下の利点をここに提供する。本質的に純粋な転動要素軸受機能と、大きな駆動減速と、が言わば1つの構造ユニットにおいて融合されている。本発明の転動要素軸受トランスミッションを使用することで、さらに比較的小さい角度で、高速で、頻度が高い繰り返しの旋回動作が実現可能となり、内部の転動相手は、実際の回転を有利に受けることになり、例えばブリネリング(brinelling)などの公知の問題を引き起こす可能性のある、本質的に望ましくない方法で互いに対して常に行ったり来たり移動されることはない。それによって、転動相手のグリス潤滑が有利に開始され、それによって、高価な油潤滑は必要とされない。しかしながら、本発明の転動要素軸受トランスミッションは、当然ながらどのような理由であれ、油潤滑される手法で使用および駆動されてもよい。さらに、本発明の転動要素軸受トランスミッションを使用することで、1:50、1:100、1:200またはこれ以上の大きな増速または減速が達成可能である。しかしながら、本発明は、そのため産業用ロボット技術に特に適しており、具体的には大きな減速が必要とされ、頻繁で迅速な旋回移動が耐用年数全体にわたって実行されるロボットアームの関節領域に特に適している。しかしながら、本発明は、風力タービンのブレードにおけるピッチ調節にも適している。
【0007】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、図の助けを借りて、以下に記述されている本発明の例示の実施形態から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】2つの軸方向に隣接して配置されるロールオン面要素を含む、本発明による転動要素軸受トランスミッションを貫く長手方向の断面図である。
【
図3】斜視展開図におけるサイクロイド駆動部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の例示の実施形態としての転動要素軸受トランスミッションを貫いた長手方向の断面図を示しており、断面の表面だけが網掛けなしで描写されている。ここで、転動要素軸受トランスミッションは、環状の形または中空の円筒の形ですべて構成されている第1のロールオン面要素11と、第2のロールオン面要素12と、第3のロールオン面要素13と、を備えている。ここで、第3のロールオン面要素13および第2のロールオン面要素12と、第1のロールオン面要素11および第2のロールオン面要素12と、は二列のアンギュラーコンタクト玉軸受の手法で互いに対してそれぞれ構成されており、第1のロールオン面要素11と第3のロールオン面要素13とは、言わば軸方向に互いに隣接して配置されている。
【0010】
例えば、深溝玉軸受および/または円錐ころ軸受といった、他の種類の軸受も当然ながら使用可能である。したがって、ロールオン面要素11、12、13は、例えば、転動要素軸受鋼から形成され、玉19として形成された二列の転動要素の領域に硬化され、研磨され、および/または磨かれた軌道、または同等に製作された軌道を備え、その軌道上を玉19は転がる。二列の各々の玉19は、ここでは例えばプラスチック材料から製造された、描写されていないケージに配置されているか、または嵌め込まれており、このケージが、玉19の相互の接触を防止する。玉19は、転動要素軸受鋼、具体的には鉄合金といった他の金属、セラミック、または他の適切な材料から形成されてもよい。さらに、玉19を含む転動要素空間は、ロールオン面要素13、11、もしくは12のうちの1つの左右に配置されるか、またはロールオン面要素13もしくは11と12との間に配置される2つの環状のシール要素によって、径方向外側で封止され、それらのシール要素は、シールリップと、例えばいわゆるカバープレートといった隙間シールと、を含む接触シールであり得る。封止された転動要素空間の内部の潤滑は、好ましくは耐用年数全体にわたって設計されたグリス潤滑である。
【0011】
図1では、第1のロールオン面要素11および第3のロールオン面要素13は、少なくとも二部品で構成され、玉19のための軌道を含む二部品のうちの一方は、二列のアンギュラーコンタクト玉軸受の共通の外輪である。第2のロールオン要素12は、複数部品で構成され、玉19のための軌道を含む部品のうちの2つは、二列のアンギュラーコンタクト玉軸受の共通の内輪である。この設計が理由で、基本的にカタログに列記されている二列のアンギュラーコンタクト玉軸受を有利に使用することができる。他の実施形態では、単一部品の一様な材料の構成が、当然ながら使用されてもよい。
【0012】
周方向において分配され、第2のロールオン面要素12において回転可能に支持された複数の対の歯車22および23が、第2のロールオン面要素12の内部において、2つのアンギュラーコンタクト玉軸受の間に軸方向に設けられている。各々の対では、2つの歯車22および23は、例えば、二重歯車として単一部品の一様な材料で構成されることで、互いに固定的に連結されている。歯車22および23の軸受組立体は、ニードル軸受もしくは針状ころとケージ組立体とによって、または滑り軸受によって、ボルトにおいて空間を節約する手法で構築することができる。ここでは、歯車22は、第3のロールオン面要素13に形成された内部で噛み合わされた歯車領域13zと噛み合うように配置および構成され、一方で歯車23は、第1のロールオン面要素11に形成された内部で噛み合わされた歯車領域11zと噛み合うように配置および構成されている。
【0013】
第2のロールオン面要素12は、中空シャフト31に載っている。さらに、電気モータの回転子32は、中空シャフト31に連結されており、電気モータの固定子33は、他のロールオン面要素に対して固定されている第3のロールオン面要素13に連結されている。したがって、中空シャフト31と、それに連結された第2のロールオン面要素12とは、電気モータを介して駆動可能であり、出力が第1のロールオン面要素11を介してもたらされる。
【0014】
ここで、
図1の転動要素軸受トランスミッションは、次のように駆動から出力まで進行する。第3のロールオン面要素13の歯車領域13zと噛み合う歯車22は、中空シャフト31の回転によって、それ自体の回転の軸を中心とした回転を開始する。したがって、歯車23も一緒に回転させられ、その回転は歯車領域11zとの噛み合いによって第1のロールオン面要素11を動かす。
【0015】
周囲にわたって分配されて配置された歯車22および23の4つの対によって、転動要素軸受トランスミッションのバックラッシュのないことが、例えば2つの相互に対向した対と、それらとは反対の2つの他の相互に対向した対と、が例えば適切なバネ機構によって、互いに対して反対の方向に予荷重が掛けられることによって、達成することができる。別の実施形態では、バックラッシュのないことが、例えば数十分の1mmの範囲で、歯車領域11zまたは13zが歯車対に対して若干重なって径方向内側に構成されることで生じさせられてもよい。そのため、設置は、具体的には歯車領域11zおよび13zを加熱することにより達成することが可能であり、歯車領域11zおよび13zは、適切な厚さに構成され、例えば所望のバネ特性曲線を達成するために、十分に薄い壁とされる。
【0016】
図1の転動要素軸受トランスミッションでは、ブレーキ(より詳細には図示略)と、最も多様な値を捕捉するためのセンサ(より詳細には図示略)と、他の拡張要素と、が当然ながら必要に応じて加えられてもよい。
【0017】
転動要素軸受トランスミッションを使用することで、さらに比較的小さい角度の旋回動作が、駆動技術の観点から好ましい大きな減速比と共に、第1のロールオン面要素11と第3のロールオン面要素13との間に達成可能であり、使用される転動相手は、同時に実際の回転を有利に受けることになり、例えばブリネリングなどの公知の問題を引き起こす可能性のある、本質的に望ましくない方法で常に行ったり来たり移動されることはない。それによって、転動相手のグリス潤滑が有利に開始され、これによって高価な油潤滑は必要とされない。しかしながら、本発明の転動要素軸受トランスミッションは、当然ながら如何なる理由であっても、油潤滑される手法において使用および駆動されてもよい。
【0018】
したがって、大きな減速は、すべての部品が回転するという利点と、ひいては良好な潤滑条件の利点と、を有するこの構成により達成することができる。しかしながら、本発明は、そのためロボット技術に特に適しており、具体的には大きな減速が必要とされ、長期間の旋回動作も実行されなければならない、ロボットアームの関節領域に特に適している。
【0019】
他の実施形態では、
図1の遊星トランスミッション式の構成の代わりに、例えば波動歯車装置といった、他の適切なトランスミッション機構または変換機構が使用されてもよく、
図2は、波動歯車装置の主断面図を示している。したがって
図1を参照すると、歯車22および23と歯車領域11zとは省略され、波動発生器としての楕円形円板52と、いわゆるフレクスプライン51と、がそれらの代わりとなる。波動歯車装置の内部で噛み合わされた外輪53は、例えば、歯車領域13zから形成されている。ここで、楕円形円板52は、中空シャフト31もしくは第2のロールオン面要素12において形成され、または、中空シャフト31もしくは第2のロールオン面要素12から形成される。楕円形円板52と内部で噛み合わされた外輪53との間に配置されたフレクスプライン51は、第1のロールオン面要素11に連結され、または、第1のロールオン面要素11から形成される。
【0020】
薄い変形可能な輪を含む、図示されていない転動要素軸受が、楕円形円板52において通常は縮められている。楕円形円板52はトランスミッションの駆動部である。フレクスプライン51は、外歯歯車を含む変形可能な円筒形の鋼ブッシュである。この鋼ブッシュは出力部である。鋼ブッシュの外歯歯車は、外輪53の内歯歯車より少ない歯を有している。一般にこの差は、歯2つ分である。したがって各回転により、フレクスプライン51と外輪53とは、歯約2つ分の相対移動を行う。
【0021】
駆動された楕円形円板52は、薄肉の鋼ブッシュを変形させる。それによって、鋼ブッシュの外歯歯車は、楕円の長軸の領域において外輪53の内歯歯車と係合する。いわゆる固定された外輪53のため、駆動部の回転によって、鋼ブッシュ(出力部)は、外輪53に対する少ない歯の数のため、遅くなる。
【0022】
非常に大きな減速が、歯車の多数の歯に起因して得られる。例えば、内歯歯車が200個の歯を有し、鋼ブッシュが198個の歯を有する場合において、楕円形円板52が駆動部として固定され、鋼ブッシュが出力部とされるとき、減速は198:2=99である。楕円形円板52が99回回転すると、変形可能な鋼ブッシュは一回回転をする。歯のうちのおよそ30%がトランスミッションに関与する。30:1から320:1までの大きな減速比と共に、波動歯車装置は捩じれ耐性があり、バックラッシュがない。実施形態に応じて、位置決めの精度は30角度秒より良好となる。
【0023】
したがって、Harmonic Drive(登録商標)または楕円中心歯車装置とも呼ばれる波動歯車装置は、大きな増速および剛性によって特徴付けられる弾性トランスミッション要素を含むトランスミッションである。大きなトルクの伝達のための、バックラッシュのないさらなるトランスミッションは、サイクロイド駆動部である。サイクロイド駆動部は、波動歯車装置より高い効率を有するが(85%と比較して95%)、製造するのにより費用が掛かる。サイクロイド駆動部は、
図1の遊星トランスミッション式の構成の代わりにも使用でき、この目的のために、
図3はサイクロイド駆動部の概略図を斜視分解図において示している。
【0024】
図1を参照すると、歯車22および23ならびに歯車領域11zおよび13zは、偏心器72、カムディスク75、ボルト73、例えば描写されていないボルトリング、ボルトディスク71によって置き換えられている。ここで、偏心器72は中空シャフト31に、もしくは中空シャフト31から形成され、または第2のロールオン面要素12からも形成される。ボルト73は、歯車領域13zの代わりとなり、第3のロールオン面要素13に連結され、または、第3のロールオン面要素13から形成される。ボルトディスク71は、第1のロールオン面要素11に連結されるか、または第1のロールオン面要素11から形成される。ここで、偏心器72はカムディスク75をn個の曲線部分で駆動し、これら曲線部分はn+1個のボルト73にわたって転動する。駆動部の各々の回転は、ボルトディスク71によって形成された出力部を、1つの曲線部分によってさらに移動させる。したがって、大きな回転速度の減速も生じる。
【0025】
サイクロイド駆動部が偏心駆動部であるため、カムディスクは、転動する手法でトルクを伝達し、歯車なしで行え、せん断力を受けない。突然の故障が防止される。
【0026】
さらに他の実施形態では、
図1の遊星トランスミッション式のトランスミッション機構の代わりに、玉変換駆動部(玉式減速機)が使用されてもよく、球がトランスミッションの第1の構造要素と第2の構造要素との間に配置され、第1の構造要素における球は溝(例えば楕円形の溝)に案内され、第2の構造要素における球は溝(例えば、サイクロイドの溝)に案内される。このようなトランスミッションについての例は、例えば特許文献1に記述されている。1から100までの大きな増速、および適切な組合せで、数千までの大きな増速も、小さな設置空間要件で、このようなトランスミッションを用いて達成可能である。
【符号の説明】
【0027】
11 第1のロールオン面要素
11z 内部で噛み合わされた歯車領域
12 第2のロールオン面要素
13 第3のロールオン面要素
13z 内部で噛み合わされた歯車領域
19 玉
22、23 歯車
31 中空シャフト
32 回転子
33 固定子
51 フレクスプライン
52 楕円形円板
53 内部で噛み合わされた外輪
71 ボルトディスク
72 偏心器
73 ボルト
75 カムディスク