IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 資生堂の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】とろみ状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220523BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20220523BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/898
A61Q19/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018020072
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019137623
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】宇山 允人
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 敦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直輝
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 友香
(72)【発明者】
【氏名】松森 孝平
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081868(JP,A)
【文献】特開2016-088868(JP,A)
【文献】特開2014-040385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油滴を有する水中油型乳化物に疎水変性ポリエーテルウレタンを配合してな
前記油滴の平均粒径が、150nm以下であり、
32℃、1気圧で測定したときの剪断速度1/s時における粘度が、100mPa・s以下、及び32℃、1気圧で測定したときの剪断速度1000/s時における粘度が、10mPa・s以下のうちの少なくとも1つを呈する、
とろみ状組成物。
【請求項2】
前記油滴が、油分及び界面活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水変性ポリエーテルウレタンが、下記式1で表される、請求項1又は2に記載の組成物:
i-{(O-Riik-OCONH-Riii[-NHCOO-(Riv-O)p-Rvhq …式1
式1中、
i、Rii及びRivは、それぞれ独立に、炭素原子数2~4の炭化水素基を示し、
iiiは、ウレタン結合を有していてもよい炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
vは、炭素原子数8~36の炭化水素基を示し、
kは、1~500の整数であり、
pは、1~200の整数であり、
hは、1以上の整数であり、かつ
qは、2以上の整数である。
【請求項4】
前記疎水変性ポリエーテルウレタンが、ポリエチレングリコール-デシルテトラデセス-ヘキサメチレンジイソシアネートコポリマーである、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記剪断速度1/s時における粘度が、5.00mPa・s以上、100mPa・s以下であり、前記剪断速度1000/s時における粘度が、1.80mPa・s以上、10mPa・s以下であり、かつ、粘度比が、2.0以上、30以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の全量に対して、前記疎水変性ポリエーテルウレタンを、0.08質量%以上、0.3質量%以下含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む、化粧料基剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な使用感触を呈するとろみ状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化粧料の分野においては、種々の化粧料が開発されており、例えば、さらさら感を付与できる化粧料、或いは保湿作用等を呈し得るジェル状の化粧料などが提供されている。
【0003】
特許文献1には、平均粒径150nm以下の油滴を有する水中油型乳化物に、疎水変性ポリエーテルウレタンを含有せしめた、ぷるぷるとした独特の触感を有する弾力ジェル状組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、(A)シリコーン樹脂粉体、(B)両性ポリマー、(C)ノニオン性界面活性剤、及び(D)水を含有し、(A)シリコーン樹脂粉体及び(B)両性ポリマーの質量比〔(A)/(B)〕が5~40である、さらさら感に優れる化粧料が開示されている。
【0005】
特許文献3には、(1)炭素数10~30のアルキル基を有していても、架橋構造を有していても良いカルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、(2)硫酸化されていても良いトレハロース及び/又はその塩、並びに(3)吸水性ポリマーを含有する、保湿作用を有するジェル状化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-088868号公報
【文献】特開2013-112680号公報
【文献】特開2005-225769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、化粧料の分野においては、さらさら感、弾力のあるぷるぷるとした触感などを呈する様々な化粧料が提供されているが、さらに、これまでとは異なる新規な使用感触を呈する化粧料などが望まれている。
【0008】
したがって、本発明の主題は、これまでとは異なる新規な使用感触を呈する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〈態様1〉
油滴を有する水中油型乳化物に疎水変性ポリエーテルウレタンを配合してなる、とろみ状組成物。
〈態様2〉
前記油滴の平均粒径が、150nm以下である、態様1に記載の組成物。
〈態様3〉
前記油滴が、油分及び界面活性剤を含む、態様1又は2に記載の組成物。
〈態様4〉
前記疎水変性ポリエーテルウレタンが、下記式1で表される、態様1~3のいずれか一項に記載の組成物:
i-{(O-Riik-OCONH-Riii[-NHCOO-(Riv-O)p-Rvhq …式1
式1中、
i、Rii及びRivは、それぞれ独立に、炭素原子数2~4の炭化水素基を示し、
iiiは、ウレタン結合を有していてもよい炭素原子数1~10の炭化水素基を示し、
vは、炭素原子数8~36の炭化水素基を示し、
kは、1~500の整数であり、
pは、1~200の整数であり、
hは、1以上の整数であり、かつ
qは、2以上の整数である。
〈態様5〉
前記疎水変性ポリエーテルウレタンが、ポリエチレングリコール-デシルテトラデセス-ヘキサメチレンジイソシアネートコポリマーである、態様4に記載の組成物。
〈態様6〉
剪断速度1/s時における粘度が、5.00mPa・s以上、100mPa・s以下であり、剪断速度1000/s時における粘度が、1.80mPa・s以上、10mPa・s以下であり、かつ、粘度比が、2.0以上、30以下である、態様1~5のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様7〉
組成物の全量に対して、前記疎水変性ポリエーテルウレタンを、0.08質量%以上、0.3質量%以下含む、態様1~6のいずれか一項に記載の組成物。
〈態様8〉
態様1~7のいずれか一項に記載の組成物を含む、化粧料基剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、これまでとは異なる新規な使用感触を呈する組成物を提供することができる。特に、塗布性に優れることに加え、滑らかな触感を呈し得る、とろみ状の組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
本発明のとろみ状組成物は、油滴を有する水中油型乳化物に疎水変性ポリエーテルウレタンを配合してなる組成物である。
【0013】
原理によって限定されるものではないが、本発明の作用原理は以下のとおりであると考える。
【0014】
本発明のとろみ状組成物は、油滴を有する水中油型乳化物に、疎水変性ポリエーテルウレタンを配合することにより、優れた塗布性及び滑らかな触感を得ることができ、係る効果は、特定の水中油型乳化物及び疎水変性ポリエーテルウレタンの併用に基づく相乗的な作用効果であると考えている。
【0015】
疎水変性ポリエーテルウレタンは、両末端の疎水部が会合してループ構造及び/又はブリッジ構造を呈し得る会合性増粘剤として知られている。本発明のとろみ状組成物は、油滴を有するため、疎水変性ポリエーテルウレタンの少なくとも一部の疎水部が、少なくとも一部の油滴と結合点等を形成するものと考えている。このような構造が、新規な使用感触を呈する一因であると考えている。
【0016】
本発明における用語の定義は以下のとおりである。
【0017】
本発明において「とろみ状」なる用語は、一般的なジェル状組成物に比べて粘度が低く粘性的であるが、イオン交換水等の水に比べては粘度の高い液体の状態であることを意図する。したがって、本発明のとろみ状組成物は、一般的なジェル状組成物又はイオン交換水などとは異なる形態を呈している。
【0018】
本発明における「とろみ状」は、例えば、レオメーターとしてMCR-302(Anton-Paar社製)を用いて、32℃、1気圧で測定したときの測定対象物の剪断速度1/s時の粘度が、100mPa・s以下、90mPa・s以下、又は80mPa・s以下の値を示すものを包含することができ、係る粘度は、5.00mPa・s以上、5.50mPa・s以上、6.00mPa・s以上、10.0mPa・s以上、又は20.0mPa・s以上とすることができる。
【0019】
本発明における「とろみ状」は、同一条件で測定したときの測定対象物の剪断速度1000/s時の粘度が、10mPa・s以下、9mPa・s以下、又は8mPa・s以下の値を示すものを包含することができ、係る粘度は、1.80mPa・s以上、1.85mPa・s以上、又は1.90mPa・s以上とすることができる。
【0020】
また、本発明における「とろみ状」は、剪断速度1000/s時の粘度に対する剪断速度1/s時の粘度の比として定義される粘度比としては、2.0以上、2.1以上、又は2.4以上、30以下、25以下、又は20以下の値を示すものを包含することができる。
【0021】
本発明における「とろみ状」は、同一条件で測定したときの測定対象物の線形領域における貯蔵弾性率(G’)としては、0.050Pa以上又は0.060Pa以上、1.00Pa以下又は0.90Pa以下の範囲とすることができる。
【0022】
本発明における「とろみ状」は、同一条件で測定したときの測定対象物の線形領域における損失弾性率(G”)としては、0.10Pa以上又は0.15Pa以上、1.00Pa以下又は0.90Pa以下の範囲とすることができる。
【0023】
本発明における「とろみ状」は、同一条件で測定したときの測定対象物の線形領域における粘弾性比(tanδ=(G”/G’))としては、1.00以上又は1.10以上、5.00以下又は4.00以下の範囲とすることができる。
【0024】
本発明において「結合点」とは、少なくとも1つの疎水変性ポリエーテルウレタンが有する疎水部のうちの少なくとも1つが、油滴内に取り込まれた部位又は油滴の表面近傍に吸着した部位を意図する。
【0025】
《水中油型乳化物》
本発明のとろみ状組成物は、油滴を有する水中油型乳化物を含む。係る水中油型乳化物は、分散相としての油滴が、連続相である水中に分散している状態の乳化組成物である。
【0026】
〈油滴〉
水中油型乳化物における油相又は分散相としての油滴は、油分及び界面活性剤を含むことができ、任意に、高級アルコールも含むことができる。
【0027】
本発明のとろみ状組成物における油分の配合量は、次のものに限定されないが、とろみ状形態の発現性の観点から、例えば、組成物全量に対して、1.0質量%以上、1.2質量%以上、又は1.5質量%以上とすることができる。油分配合量の上限値は安定性の観点から20質量%以下又は18質量%以下とすることができる。とろみ状形態の発現性、分散性、又は油分としての有効な作用を発揮させる上で、油分の配合量は、2.0~15質量%の範囲とすることが好ましい。
【0028】
界面活性剤及び高級アルコールの配合量は、次のものに限定されないが、とろみ状形態の発現性、安定性等の観点から、例えば、界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量は、水相に対して、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上とすることができる。上限値は特に限定されないが、10質量%以下、9質量%以下、又は8質量%以下とすることができる。界面活性剤及び高級アルコールの合計配合量に対する油分量は、1/3以上とすることができる。上限値は特に限定されないが、5以下とすることができる。
【0029】
本発明で用いられる水中油型乳化物は、とろみ状形態の発現性、安定性等の観点から、ナノメーターオーダーの油滴を含む超微細エマルジョンであることが好ましい。分散相である係る油滴の平均粒径は、例えば、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、又は110nm以下とすることができ、さらに透明又は半透明の組成物とする場合には、100nm以下、90nm以下、又は80nm以下とすることが好ましい。平均粒径の下限値は特に限定されないが、例えば、5nm以上、10nm以上、20nm以上、又は50nm以上とすることができる。油滴の平均粒径は、例えば、油滴の粒子形状を球状と仮定したときに、動的光散乱法等により光学的に測定された油滴の直径の平均値として規定することができる。
【0030】
ここで、平均粒径150nm以下の超微細な油滴を含む水中油型乳化物は、凝集法又は分散法といった方法により調製することができる。
【0031】
凝集法とは、界面化学的特性を利用したコロイド調製法であり、一様に溶け合った状態から何らかの手段で過飽和状態にし、分散相となるものを出現させる方法である。具体的な手法として、HLB温度乳化法、転相乳化法、非水乳化法、D相乳化法、及び液晶乳化法等が知られている。
【0032】
分散法とは、分散相の塊を力により微細化する方法である。具体的には、乳化機の破砕力を利用して乳化する方法である。本発明において好ましく用いられる分散法は、特許第3398171号公報に記載されているような高圧乳化による分散法である。ここで、高圧乳化とは、水相成分及び油相成分を、必要に応じてホモミキサー等により予備乳化し、例えば、高圧下の高圧ホモジナイザーを用いた高剪断力により微細な乳化粒子を有する乳化物を得る方法である。
【0033】
(油分)
油分としては、液状油分、固型油分、半固型油分のいずれでもよく、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、月見草油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、水添ポリデセン等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固型油脂、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カボックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアレン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル-2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸-2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソプロピル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セパチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸-2-ヘキシルデシル、パルミチン酸-2-ヘキシルデシル、アジピン酸-2-ヘキシルデシル、セバチル酸ジイソプロピル、コハク酸-2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロデカリン、パーフルオロヘキサン、トリパーフルオロ-n-ブチルアミン等のパーフルオロカーボンないしパーフルオロポリエーテル、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンD及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、ビタミンK及びその誘導体等のビタミン類、ステロール類、天然及び合成の香料等が挙げられる。
【0034】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、アニオン性、カチオン性又は両性のイオン性界面活性剤、或いはノニオン性界面活性剤が使用できる。中でも、アニオン性又はカチオン性のイオン性界面活性剤が好ましい。
【0035】
(高級アルコール)
例えば、上記の高圧乳化により調製されるマイクロエマルジョンの場合、油滴は、界面活性剤、高級アルコール及び水の系において、常温以上でゲルを形成し得るものの中から選択された界面活性剤、高級アルコール及び油分を含むことができる。特に、高級アルコール及び界面活性剤の実質的全量が、油滴界面に存在するものが好ましい。当該ゲルは、安定性の点からαタイプであることが好ましく、ゲルの転移温度は、60℃以上であるのが好ましい。係る高級アルコールとしては、炭素鎖長が16以上のものが好ましい。具体例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、モノステアリルグリセレンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の直鎖又は分岐型の高級アルコールなどが挙げられる。
【0036】
高級アルコール及び界面活性剤の組み合わせ(以下、高級アルコール-界面活性剤のように表記する。)としては、ベヘニルアルコール(高級アルコール)-べへン酸(ベヘニン酸)石鹸(界面活性剤)、ステアリルアルコール(高級アルコール)-ステアリン酸石鹸(界面活性剤)、ステアリルアルコール(高級アルコール)-セチル硫酸ナトリウム(界面活性剤)、ベヘニルアルコール(高級アルコール)-塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(界面活性剤)、ベヘニルアルコール(高級アルコール)-塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(界面活性剤)、ベヘニルアルコール及び/又はステアリルアルコ-ル(高級アルコール)-ステアロイルグルタミン酸ナトリウム(界面活性剤)等が好ましい例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
《疎水変性ポリエーテルウレタン》
本発明の疎水変性ポリエーテルウレタンは、会合性増粘剤、会合性高分子などとも呼ばれる材料であり、次のものに限定されないが、下記の式1
i-{(O-Riik-OCONH-Riii[-NHCOO-(Riv-O)p-Rvhq …式1
で表されるものを使用することができ、疎水変性ポリエーテルウレタンの好ましい例としては、ポリエチレングリコール-デシルテトラデセス-ヘキサメチレンジイソシアネートコポリマーが挙げられる。特に好ましい例としては、INCI名称が「(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー(PEG-240/HDI COPOLYMER BISDECYLTETRADECETH-20 ETHER)」である疎水変性ポリエーテルウレタンが挙げられる。当該コポリマーは、商品名「アデカノールGT-700」として株式会社ADEKAから市販されている。
【0038】
式1において、Ri、Rii及びRivは、それぞれ独立に炭素原子数2~4の炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数2~4のアルキル基又はアルキレン基である。Riiiは、ウレタン結合を有していてもよい炭素原子数1~10の炭化水素基を示す。Rvは、炭素原子数8~36、好ましくは12~24の炭化水素基を示す。kは、1~500の整数であり、好ましくは100~300の整数である。pは、1~200の整数であり、好ましくは10~100の整数である。hは、1以上の整数であり、好ましくは1である。qは、2以上の整数であり、好ましくは2である。
【0039】
式1で表される疎水変性ポリエーテルウレタンは、例えば、Ri-[(O-Riik-OH]qで表される1種又は2種以上のポリエーテルポリオール、Riii-(NCO)h+1で表される1種又は2種以上のポリイソシアネート、及びHO-(Riv-O)p-Rvで表される1種又は2種以上のポリエーテルモノアルコールを反応させることにより得ることができる。ここで、Ri、Rii、Riii、Riv、Rv、k、p、h、及びqは、上記で定義したとおりである。
【0040】
この製造方法では、式1中のRi~Rvは、原料となるRi-[(O-Riik-OH]q、Riii-(NCO)h+1、HO-(Riv-O)p-Rvにより決定される。係る三者の配合比は、特に限定されるものでないが、ポリエーテルポリオール及びポリエーテルモノアルコール由来の水酸基と、ポリイソシアネート由来のイソシアネート基との比が、NCO/OH=0.8:1~1.4:1であるのが好ましい。
【0041】
〈Ri-[(O-Riik-OH]qで表されるポリエーテルポリオール〉
i-[(O-Riik-OH]qで表されるポリエーテルポリオールは、q価のポリオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキシド、スチレンオキシド等を付加重合することにより得ることができる。
【0042】
ここでポリオールとしては、2~8価のものが好ましく、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタトリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール等の4価のアルコール;アドニット、アラビット、キシリット等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビット、マンニット、イジット等の6価アルコール;ショ糖等の8価アルコール等が挙げられる。
【0043】
iiは、付加させるアルキレンオキシド、スチレンオキシド等により決定される。特に入手が容易であり、優れた効果を発揮し得るため、炭素原子数2~4のアルキレンオキシド又はスチレンオキシドが好ましい。付加させるアルキレンオキシド、スチレンオキシド等は単独重合、2種類以上のランダム重合又はブロック重合であってよい。付加の方法は通常の方法であってよい。重合度kは、1~500の整数である。Riiに占めるエチレン基の割合は、好ましくは全Riiの50~100質量%である。
【0044】
i-[(O-Riik-OH]qの分子量は、500~10万が好ましく、1000~5万がより好ましい。
【0045】
〈Riii-(NCO)h+1で表されるポリイソシアネート〉
iii-(NCO)h+1で表されるポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、フェニルメタンのジ-、トリ-又はテトラ-イソシアネート等を使用することができる。
【0046】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、3-メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3-ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
ビフェニルジイソシアネートとしては、例えば、ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
フェニルメタンのジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5,2’,5’-テトラメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、シクロヘキシルビス(4-イソシオントフェニル)メタン、3,3’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、4,4’-ジエトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチル-5,5’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジクロロジフェニルジメチルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ベンゾフェノン-3,3’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
フェニルメタンのトリイソシアネートとしては、例えば、1-メチルベンゼン-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゼン-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,7-ナフタレントリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。
【0052】
これらのポリイソシアネート化合物は、ダイマー、イソシアヌレート結合等に基づくトリマーの形態で用いられてもよく、或いはアミンと反応させてビウレットとして用いてもよい。
【0053】
これらのポリイソシアネート化合物、及びポリオールを反応させたウレタン結合を有するポリイソシアネートも用いることができる。ポリオールとしては、2~8価のものが好ましく、前述のポリオールが好ましい。Riii-(NCO)h+1として3価以上のポリイソシアネートを用いる場合は、このウレタン結合を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0054】
〈HO-(Riv-O)p-Rvで表されるポリエーテルモノアルコール〉
HO-(Riv-O)p-Rvで表されるポリエーテルモノアルコールは、1価アルコールのポリエーテルであれば特に限定されない。このような化合物は、1価アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキシド、スチレンオキシド等を付加重合することにより得ることができる。
【0055】
ここでいう1価アルコールは、下記式I~IIIで表される。
vi-OH …式I
【化1】
…式II
【化2】
…式III
【0056】
即ち、Rvは、上記式I~IIIの1価アルコールから水酸基を除いた基である。上記式I~IIIにおいて、Rvi、Rvii、Rviii、Rx及びRxiは、炭化水素基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等である。
【0057】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-オクチルドデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐-イソステアリル等が挙げられる。
【0058】
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
【0059】
アルキルアリール基としては、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
【0060】
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0061】
上記式IIにおいて、Rixは炭化水素基であり、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基等である。
【0062】
vは、炭化水素基であり、そのうちアルキル基であることが好ましく、さらにその合計の炭素原子数が8~36が好ましく、12~24が特に好ましい。
【0063】
付加させるアルキレンオキシド、スチレンオキシド等は、単独重合、2種以上のランダム重合又はブロック重合であってよい。付加の方法は通常の方法であってよい。重合度pは0~1000の整数であり、1~200の整数であることが好ましく、10~200の整数であることがより好ましい。Rivに占めるエチレン基の割合は、全Rivの50~100質量%の範囲が好ましく、65~100質量%の範囲がより好ましい。
【0064】
(式1で表されるコポリマーの製造方法)
上記の式1で表されるコポリマーは、一般的なポリエーテル及びイソシアネートの反応と同様に、例えば、80~90℃で1~3時間加熱して反応させて製造することができる。
【0065】
i-[(O-Riik-OH]qで表されるポリエーテルポリオールDと、Riii-(NCO)h+1で表されるポリイソシアネートEと、HO-(Riv-O)p-Rvで表されるポリエーテルモノアルコールFとを反応させる場合には、式1の構造のコポリマー以外のものも副生することがある。例えば、ジイソシアネートを用いた場合、主生成物としては、式1で表されるF-E-D-E-F型のコポリマーが生成されるが、その他、F-E-F型、F-E-(D-E)x-D-E-F型等のコポリマーが副生することがある。この場合、特に式1型のコポリマーを分離することなく、式1型のコポリマーを含む混合物の状態で本発明に使用することができる。
【0066】
(疎水変性ポリエーテルウレタンの配合量)
本発明のとろみ状組成物における疎水変性ポリエーテルウレタンの配合量は、新規な使用感触を得る観点から、組成物の全量に対して、0.3質量%以下とすることができ、疎水変性ポリエーテルウレタンの配合量の下限値としては、剪断速度1000/s時の粘度や線形領域のG’の値から、0.08質量%以上とすることができる。
【0067】
《水》
本発明のとろみ状組成物における水の配合量は、特に限定されるものではないが、例えば、とろみ状の形態発現性等の観点から、組成物全量に対して70~95質量%であることが好ましく、75~90質量%であることがより好ましい。
【0068】
《他の成分》
本発明のとろみ状組成物は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、係る組成物の使用用途等に応じて各種成分を適宜配合することができる。各種成分としては、化粧料に通常配合し得るような添加成分、例えば、低級アルコール、多価アルコール、各種抽出液、保湿剤、酸化防止剤、緩衝剤、防腐剤、色素、香料、キレート剤、pH調整剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。各種成分は、その性質に応じて、例えば、水中油型乳化物の場合には、連続相としての水相、及び/又は分散相としての油相、即ち、油滴内に配合され得る。
【0069】
水相には、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤などの他、通常、医薬品又は化粧品等に用いられる任意の水性成分が、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲の配合量で配合されていてもよい。特に、水性成分としては、使用感等の観点から、エタノール及びポリオールから選択される1種又は2種以上が配合されることが好ましい。
【0070】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、特にプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールが好ましい。エタノール及びポリオールから選択される1種又は2種以上の水性成分は、組成物全量に対して1~20質量%、又は3~10質量%の範囲で配合することができる。
【0071】
《とろみ状組成物の用途》
本発明のとろみ状組成物は、粘度が低く粘性的な挙動を示すため、塗布性に優れるとともに、滑らかな触感を呈することができる。また、本発明のとろみ状組成物は、用途に応じて透明又は半透明にすることもできる。したがって、係る性能を呈する本発明のとろみ状組成物は、例えば、皮膚等に適用される化粧料の基剤として使用することができる。
【0072】
化粧料としては、例えば、美容液、化粧水、乳液等のスキンケア化粧料、サンケア用品、ヘアセット剤等の毛髪化粧料、又は染毛剤等を挙げることができる。
【0073】
《とろみ状組成物の製造方法》
本発明のとろみ状組成物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、凝集法又は分散法により、油滴を有する水中油型乳化物を調製し、必要に応じてイオン交換水等の水性媒体で希釈した後、必要に応じて適量の水性媒体に溶解させた疎水変性ポリエーテルウレタン溶液を添加して調製することができる。
【実施例
【0074】
以下に実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0075】
《実施例1~10及び比較例1》
下記に示す表1の処方及び製造方法により得た、本発明の組成物、及び比較のための疎水変性ポリエーテルウレタンを含まない組成物について、剪断速度1/s時の粘度、剪断速度1000/s時の粘度、線形領域における粘弾性比、線形領域における貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)の評価を行った。これらの測定については、Anton Paar社製のレオメーターMCR302を用い、32℃、1気圧の条件で行った。また、剪断速度1000/s時の粘度に対する剪断速度1/s時の粘度の比として定義される粘度比を算出し、その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
〈組成物の製造方法〉
(実施例1)
油分としての水添ポリデセン、ベヘニルアルコール及びステアリルアルコールを80℃で加熱溶解し、撹拌混合して混合物Aを作製した。イオン交換水、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、グリセリン、ジプロピレングリコール、フェノキシエタノール、及びメチルパラベンを75℃で加熱溶解して撹拌しながら、ここに、混合物Aを添加し、100MPa程度の圧力下で高圧乳化を行い、水中油型乳化物を作製した。得られた水中油型乳化物に疎水変性ポリエーテルウレタンを添加した後、撹拌、混合して組成物を作製した。ここで、高圧乳化は、高圧乳化装置Nanomizer markII(吉田機械興業株式会社製)及びホモジナイザーH-20型(三和エンジニアリング株式会社製)を用いて実施した。
【0078】
(実施例2~10)
表1に記載される配合割合を採用したことを除いて、実施例1と同様にして、実施例2~10の組成物を各々作製した。
【0079】
(比較例1)
疎水変性ポリエーテルウレタンを含有させないことを除いて、実施例1と同様にして、比較例1の組成物を作製した。
【0080】
〈結果〉
表1から明らかなように、疎水変性ポリエーテルウレタンを含まない比較例1の組成物は、剪断速度1/s時において、粘度が3.2mPa・sと極めて低く、水のようなさらさらとした触感を呈していた。一方、実施例1~10の組成物は、剪断速度1/s時において、7.6~35.8mPa・sの粘度を有しており、とろみ状の滑らかな触感を呈していた。実施例1~10の組成物は、一般的なジェル状組成物に比べて剪断速度1/s時の粘度が低いため、塗布性にも優れていた。また、実施例1~10の組成物は、剪断速度1000/sのような高剪断下に付されると、粘度がさらに低下する性能を奏するため、高剪断下における塗布性をさらに向上させ得ることが確認された。
【0081】
本発明のとろみ状の形態を、疎水変性ポリエーテルウレタンのみで達成しようとすると、疎水変性ポリエーテルウレタンを高度に使用する必要があるため、乾燥後にべとつき感が発生してしまう。本発明のとろみ状組成物は、上述したような従来にない新規な使用感触が得られることに加え、同一の粘度を達成する上で、疎水変性ポリエーテルウレタンのみの系に比べて係る材をより低量で使用することができるため、疎水変性ポリエーテルウレタンに由来するべたつき感を低減させつつ、乾燥後のしっとり感も発揮させ得ることが分かった。
【0082】
なお、比較例1における組成物中の油滴の平均粒径を、25℃においてZeta sizer nano(Malvern社製)を用いて測定したところ、64nmであった。実施例1~10における組成物は、疎水変性ポリエーテルウレタンによるポリマーミセル由来のピークも生じ得るため、多少変動はするが、これらの組成物中の油滴の平均粒径も、比較例1と同程度の粒子径であると推認される。
【0083】
《とろみ状組成物の処方例》
以下に、本発明のとろみ状組成物を基剤とする化粧料の処方例を挙げるが、この例示に限定されるものではない。なお、以下の処方例に記載した化粧料は、本発明のとろみ状組成物に基づく使用感触、すなわち、とろみ状のなめらかな感触を備えていた。
【0084】
〈処方例1 化粧水〉
(成分) (質量%)
精製水 適量
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム 0.6
グリセリン 3
ジプロピレングリコール 3
フェノキシエタノール 0.3
メチルパラベン 0.17
ベヘニルアルコール 1
ステアリルアルコール 1
水添ポリデセン 4.05
香料 適量
(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー 0.3
【0085】
(化粧水の製造方法)
ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、水添ポリデセン及び香料を80℃で加熱溶解して混合し、混合物Aを作製した。イオン交換水、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、グリセリン、ジプロピレングリコール、フェノキシエタノール、及びメチルパラベンを75℃で加熱溶解して撹拌しながら、ここに、混合物Aを添加し、100MPa程度の圧力下で高圧乳化を行い、水中油型乳化物を作製した。得られた水中油型乳化物に疎水変性ポリエーテルウレタンである(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを添加した後、撹拌、混合して化粧水を作製した。ここで、高圧乳化は、高圧乳化装置Nanomizer markII(吉田機械興業株式会社製)及びホモジナイザーH-20型(三和エンジニアリング株式会社製)を用いて実施した。