(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】モルタル充填機
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20220523BHJP
E01C 7/35 20060101ALI20220523BHJP
E01C 7/12 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
E01C19/48 Z
E01C7/35
E01C7/12
(21)【出願番号】P 2018020988
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501436045
【氏名又は名称】ヤハギ道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514318666
【氏名又は名称】株式会社 テクノサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井上 司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 直人
(72)【発明者】
【氏名】服部 啓二
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-131909(JP,A)
【文献】特開2001-348807(JP,A)
【文献】特開平07-018620(JP,A)
【文献】特開平05-156813(JP,A)
【文献】特開平01-295972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上を移動することが可能とされている本体フレームと、その本体フレームに設けられて鉛直方向に延びる回転軸を回転可能に支持している支持部材と、前記回転軸の下端部に固定されて同回転軸と一体的に水平方向に回転する複数の羽根と、を備えており、道路上の多孔質層の表面に載せられている透水性のモルタルを水平回転する前記羽根によって前記多孔質層の空隙に充填するモルタル充填機において、
前記羽根の高さ位置を変更すべく前記支持部材を昇降させることを可能とする昇降機構を備えており、
前記羽根は柔軟性を有する材料によって形成されて
おり、
前記羽根は、前記本体フレームの下側であって同本体フレームの外縁から水平方向にはみ出すことのない位置に設けられており、
前記本体フレームの外縁を形成する回転バーには、下方に突出するスカートが固定されており、
前記回転バー及び前記スカートは、前記回転バーの中心線周りに回転させることが可能となっていることを特徴とするモルタル充填機。
【請求項2】
前記本体フレームは、水平方向を長辺方向及び短辺方向とする長方形の枠状に形成されており、道路上で少なくとも前記長辺方向に移動するものであって、
前記回転バーは、前記本体フレームの外縁のうちの長辺方向に延びる部分を形成しており、
前記スカートは、前記回転バーと同方向に延びるように形成されている請求項
1に記載のモルタル充填機。
【請求項3】
前記回転軸及び前記支持部材はそれぞれ複数設けられており、複数の前記回転軸のうちの少なくとも一つは他のものと逆方向に回転する請求項1
又は2に記載のモルタル充填機。
【請求項4】
前記本体フレームは、道路上で転動することが可能な車輪を備えており、その車輪の転動を通じて道路上を移動することが可能とされており、
前記車輪は、外周部に凹部と凸部とが周方向に沿って交互に形成されている円板状の回転体を有しており、その回転体の中心線周りに転動するものである請求項1~
3のいずれか一項に記載のモルタル充填機。
【請求項5】
前記車輪は、前記回転体がその厚さ方向に間隔をおいて複数設けられており、
隣合う前記回転体のうち、一方の回転体の前記凹部及び前記凸部と、もう一方の回転体の前記凹部及び前記凸部とが周方向にずれて位置している請求項
4に記載のモルタル充填機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル充填機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路上に多数の空隙を有する多孔質層を形成することにより、その道路に対し排水性の舗装を施すことが行われている。こうした排水性の舗装においては、多孔質層の表面における空隙が時間の経過とともに異物で目詰まりすることを抑制すべく、透水性のモルタルを多孔質層の表面に載せた後、そのモルタルをモルタル充填機で多孔質層の表面における空隙に充填することが行われる。この場合、多孔質層の表面における空隙に透水性のモルタルが充填されるため、そのモルタルによって空隙に異物が入り込むことを抑制でき、ひいては同異物によって空隙が目詰まりすることを抑制できるようになる。
【0003】
上記モルタル充填機としては、例えば特許文献1に示されるものが知られている。このモルタル充填機は、道路上を移動することが可能とされている本体フレームと、その本体フレームに設けられて同本体フレームの移動方向と直交する方向且つ水平方向に往復移動するスクリードと、上記本体フレームに固定されたスクレーパと、を備えている。そして、モルタル充填機を道路上で移動させながら、その道路上における多孔質層の表面に載せられた透水性のモルタルを、往復移動するスクリードによって多孔質層の表面に敷きならすとともに同多孔質層の表面における空隙に充填する。更に、スクリードによって多孔質層の表面に敷きならされたモルタルのうち、多孔質層の空隙に充填するうえで余分となるモルタルについては、モルタル充填機のスクレーパで掻き取られることによって取り除かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のモルタル充填機では、道路上における多孔質層の表面にモルタルを敷きならして同多孔質層の空隙にモルタルを充填するスクリードと、その充填後に余分となるモルタルを掻き取って取り除くためのスクレーパとを設けなければならないため、モルタル充填機が大型化することは避けられない。しかし、そのようにモルタル充填機が大型化する割に、多孔質層の空隙に対しモルタルを充填する工程を効率よく行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、道路上の多孔質層の空隙に対しモルタルを充填する工程を効率よく行うことができるモルタル充填機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するモルタル充填機は、道路上を移動することが可能とされている本体フレームと、その本体フレームに設けられて鉛直方向に延びる回転軸を回転可能に支持している支持部材と、上記回転軸の下端部に固定されて同回転軸と一体的に水平方向に回転する複数の羽根と、を備える。上記モルタル充填機は、道路上の多孔質層の表面に載せられている透水性のモルタルを、水平回転する上記羽根によって多孔質層の空隙に対し充填する。また、上記モルタル充填機には上記羽根の高さ位置を変更すべく上記支持部材を昇降させることを可能とする昇降機構を備えており、上記羽根は柔軟性を有する材料によって形成されている。
【0008】
上記構成によれば、昇降機構によって複数の羽根の高さ位置を低くすると、それらの羽根が道路上の多孔質層の表面に当たって湾曲することによって同表面に対し面接触するようになる。この状態のもと、本体フレームを道路上で移動させつつ、回転軸とともに羽根を一体回転させると、道路上の多孔質層の表面に載せられているモルタルが、回転する羽根によって同表面に敷きならされるとともに多孔質層の空隙に対し効果的に充填される。これは、空隙に対するモルタルの進入方向が羽根の回転と本体フレームの移動との二つの運動によってランダムとなり、そうした空隙に対する不規則な方向からのモルタルの進入により、空隙に対するモルタルの充填が効率よく行われるためである。また、昇降機構によって複数の羽根の高さ位置を高くして、それらの羽根の道路側の端部が多孔質層の表面に対し接するようにすれば、その表面に対し羽根がほぼ線接触した状態となる。この場合、回転軸とともに羽根を一体回転させると、多孔質層の表面に敷きならされたモルタルのうち、多孔質層の空隙に充填するうえで余分となっているモルタルが、回転する羽根により掻き取られて取り除かれる。このように羽根の高さ位置を変えることにより、多孔質層の空隙に対するモルタルの充填とその充填にとって余分となるモルタルの除去との二つの用途に羽根を用いることができ、それら二つの用途に対応して別々の部材を設ける場合と比較して、モルタル充填機が大型化することを抑制できる。従って、モルタル充填機が小さい割に、道路上の多孔質層の空隙に対しモルタルを充填する工程を効率よく行うことができるようになる。
【0009】
上記モルタル充填機において、回転軸及び支持部材がそれぞれ複数設けられており、複数の回転軸のうちの少なくとも一つが他のものと逆方向に回転するものとすることが考えられる。
【0010】
この構成によれば、正方向に回転する回転軸の羽根によってモルタルが道路上の多孔質層の表面で敷きならされるとともに、逆方向に回転する回転軸の羽根によってモルタルが上記多孔質層の表面で敷きならされるとき、それらの羽根によって周囲に飛ばされたモルタルが上記二つの回転軸の間の中間部分に集まりやすくなる。そして、その中間部分に集まったモルタルを再び多孔質層の表面で敷きならすとともに同多孔質層の空隙に充填することができるため、空隙に対するモルタルの充填を効率よく行うことができる。
【0011】
上記モルタル充填機において、上記羽根が本体フレームの下側であって同本体フレームの外縁から水平方向にはみ出すことのない位置に設けられており、本体フレームの外縁のうちの少なくとも一部には下方に突出するスカートが設けられているものとすることが考えられる。
【0012】
この構成によれば、回転軸とともに一体回転する羽根によってモルタルが道路上の多孔質層の表面で敷きならされるとき、羽根によって周囲に飛ばされたモルタルが本体フレームの外縁から更に外側に飛び出すことは上記スカートによって抑制される。従って、本体フレームの外縁から更に外側に飛び出したモルタルを作業者が片付けるという手間を省くことができる。
【0013】
なお、本体フレームは、水平方向を長辺方向及び短辺方向とする長方形の枠状に形成されており、道路上で少なくとも上記長辺方向に移動するものであって、上記スカートは、本体フレームの外縁における長辺部分に設けられて同長辺方向に延びるように形成されているものとすることが考えられる。
【0014】
本体フレームをその長辺方向に移動させつつ、回転軸と一体回転する羽根によってモルタルが道路上の多孔質層の表面で敷きならされるとき、同モルタルが羽根によって周囲に飛ばされるとしても、本体フレームの上記進行方向(長辺方向)に飛ばされるものについては再び羽根によって敷きならされる。一方、本体フレームの上記進行方向と直交する水平方向(短辺方向)にモルタルが飛ばされて、本体フレームの外縁における長辺側の部分から更に外側に飛び出したとすると、そのモルタルについては上述したように再び羽根によって敷きならされることはないため、同モルタルを作業者が片付けなければならなくなる。しかし、上記構成によれば、回転する羽根によって本体フレームの短辺方向に飛ばされたモルタルが、本体フレームの外縁における長辺側の部分から更に外側に飛び出すことは上記スカートによって抑制される。
【0015】
上記モルタル充填機において、上記本体フレームは、道路上で転動することが可能な車輪を備えており、その車輪の転動を通じて道路上を移動することが可能とされており、上記車輪は、外周部に凹部と凸部とが周方向に沿って交互に形成されている円板状の回転体を有しており、その回転体の中心線周りに転動するものとすることが考えられる。
【0016】
この構成によれば、道路上を本体フレームが移動するとき、その道路における多孔質層の表面に敷きならされたモルタルの上を車輪が転動したとしても、そのモルタルに対する車輪の接触部分は円板状の回転体の凸部に限られるため、同モルタルに車輪の跡が残りにくくなる。従って、上記モルタルにおける車輪が通った跡を作業者が手作業で消さなくてもよくなる。
【0017】
なお、上記車輪は、上記回転体がその厚さ方向に間隔をおいて複数設けられるものであって、隣合う前記回転体のうち、一方の回転体の凹部及び凸部と、もう一方の回転体の凹部及び凸部とが周方向にずれて位置しているものとすることが考えられる。
【0018】
この構成によれば、車輪が複数の回転体を備えているため、同車輪を頑丈なものとすることができる。また、上記凹部及び上記凸部が隣合う回転体同士で周方向にずれて位置しているため、回転体の凹部及び凸部によって車輪の転動が不安定になることを抑制し、車輪を安定して転動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】(a)は施工用キャスタに設けられる車輪ユニットを示す側面図であり、(b)は車輪の回転体を示す側面図。
【
図5】樹脂モルタルの充填に用いられているモルタル充填機を上方から見た状態を模式的に示す平面図。
【
図6】羽根の高さ位置の違いによる同羽根の形状変化を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、モルタル充填機の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1及び
図2はそれぞれ、モルタル充填機1を側方及び上方から見た状態を示している。このモルタル充填機1は、道路上に形成された多孔質層の表面の空隙に対し透水性を有する樹脂モルタルを充填する際に用いられるものである。
【0021】
モルタル充填機1は、水平方向を長辺方向(
図2の左右方向)及び短辺方向(
図2の上下方向)とする長方形の枠状に形成されている本体フレーム2を備えている。この本体フレーム2には、
図2の左右方向に延びるとともに
図2の上下方向において互いに平行となる一対の縦バー3が設けられている。一対の縦バー3において、
図2の左端部同士はそれら縦バー3と直交する方向(
図2の上下方向)に延びる横バー4に対して固定されており、
図2の右端部同士は上記直交する方向に延びる横バー5に対して固定されている。
【0022】
横バー4における一方の縦バー3と繋がる部分の下面、及び、横バー4におけるもう一方の縦バー3と繋がる部分の下面には、それぞれ施工用キャスタ6が固定されている。また、横バー5における長手方向中央部であって縦バー3の端部に繋がる部分と反対側の部分には取付フレーム11aが固定されており、同取付フレーム11aの下面には施工用キャスタ7が取り付けられている。この施工用キャスタ7は、
図1に示すように横バー5に固定されて鉛直方向に延びる中心軸8周りに回転可能となっている。これら施工用キャスタ6,7は、道路上に形成された多孔質層の空隙に対し樹脂モルタルを充填する際、モルタル充填機1の本体フレーム2を道路上で支持したり移動させたりするためのものである。
【0023】
横バー4,5の長手方向の端部にはそれぞれ移動用キャスタ9が設けられている。これら移動用キャスタ9は、樹脂モルタルの充填を行う場所までモルタル充填機1の本体フレーム2を移動させる際、上述した施工用キャスタ6,7に代えて用いられるものであって、使用位置と収納位置との間で変位可能とされている。なお、
図1は、移動用キャスタ9が収納位置にある状態を示しており、このときには本体フレーム2の支持及び移動に施工用キャスタ6,7が用いられる。一方、使用位置に変位した移動用キャスタ9は本体フレーム2に下側に位置するようになっている。そして、移動用キャスタ9が上記収納位置から使用位置に変位することにより、施工用キャスタ6,7の代わりに移動用キャスタ9によって本体フレーム2が支持されるようになる。このときには本体フレーム2の移動が移動用キャスタ9を用いて行われる。
【0024】
図2に示すように、横バー4の両端部と横バー5の両端部との間には、縦バー3と平行に延びる一対の回転バー10が設けられている。回転バー10は、移動用キャスタ9と縦バー3との間に位置しており、同回転バー10の中心線周りに回転可能となるよう横バー4,5に対し支持されている。そして、モルタル充填機1の本体フレーム2は、横バー4,5及び一対の回転バー10によって長方形の枠状となっている。言い換えれば、回転バー10は本体フレーム2の外縁のうちの長辺方向に延びる部分を形成しており、横バー4,5は本体フレーム2の外縁のうちの短辺方向に延びる部分を形成している。なお、横バー5に固定された取付フレーム11aの上面には、上方に延びる操作バー11が固定されている。そして、その操作バー11を作業者が手で持って押したり引いたりすることにより、モルタル充填機1の本体フレーム2が道路上を移動させられるようになる。
【0025】
本体フレーム2には、道路上に形成された多孔質層の空隙に対し樹脂モルタルを充填するための複数(この例では二つ)の充填機構12,13が、本体フレーム2の長辺方向に並ぶように設けられている。なお、本体フレーム2の縦バー3には充填機構12,13を支持するための補助フレームが固定されているが、モルタル充填機1の構造をわかりやすくするため、
図1及び
図2には上記補助フレームを記載していない。
【0026】
図1及び
図2に示すように、充填機構12,13は、鉛直方向に延びる回転軸14を回転可能に支持する支持部材15を備えている。また、回転軸14の下端部には水平方向に放射状に延びる複数(この例では四つ)の支持バー16が固定されている。これら支持バー16の回転軸14の回転方向についての互いの間隔は等間隔とされており、各支持バー16にはそれぞれ柔軟性を有する板状の羽根17が固定されている。支持バー16に固定された羽根17は、その支持バー16の延びる方向と同方向に延びるとともに、水平面に対し傾斜した状態となっている。これらの羽根17は、本体フレーム2の下側に位置するとともに、同本体フレーム2の外縁から水平方向にはみ出すことがないよう位置している。
【0027】
図1に示すように、充填機構12,13には、羽根17の高さ位置を変更すべく支持部材15を昇降させる昇降機構18が設けられている。そして、昇降機構18によって支持部材15を昇降させると、同支持部材15によって支持された回転軸14、及び、その回転軸14に対し支持バー16を介して固定されている羽根17の高さ位置が変更されるようになる。また、本体フレーム2には、回転軸14を回転させる駆動力を発生するエンジン19、及び、そのエンジン19における出力軸の回転を充填機構12,13の回転軸14に伝達する回転伝達機構20が設けられている。この回転伝達機構20は、エンジン19における出力軸の回転を充填機構12の回転軸14と充填機構13の回転軸14とで互いに逆の方向に伝達する構造を有している。このため、充填機構12における回転軸14(羽根17)の回転方向を正方向とすると、充填機構12における回転軸14(羽根17)の回転方向は逆方向になる。
【0028】
モルタル充填機1の操作バー11には、エンジン19の始動及び停止を行うためのスイッチ21、及び、エンジン19の回転速度を調整するためのスロットルレバー22が取り付けられている。また、横バー5における操作バー11を挟んだ両側にはそれぞれ、上方に突出するポール23が固定されている。これらポール23にはそれぞれ、昇降機構18を動作させて羽根17の高さ位置を調整するための調整レバー24が取り付けられている。そして、一方の調整レバー24はケーブル25を介して充填機構12に設けられている昇降機構18に繋がっており、もう一方の調整レバー24はケーブル25を介して充填機構13に設けられている昇降機構18に繋がっている。そして、昇降機構18は、対応する調整レバー24の操作を通じて、支持部材15(羽根17)を昇降させる。
【0029】
次に、昇降機構18の構造について説明する。
図3に示すように、昇降機構18は、所定の長さを有するリフト部材26を備えている。このリフト部材26における長手方向の一方の端部は、上記ケーブル25と繋がっており、調整レバー24(
図1)の操作に伴ってケーブル25が
図3の矢印方向に変位するときに同ケーブル25からの力を受ける力点となっている。リフト部材26における長手方向のもう一方の端部は、本体フレーム2(
図1、
図2)に固定された補助フレーム27に接しており、上記ケーブル25の矢印方向への変位に伴ってリフト部材26が変位するときの支点となる。また、リフト部材26における長手方向の一方の端部と、もう一方の端部との間には、支持部材15に対し下側から接する接触部28が形成されている。この接触部28は、上記ケーブル25の矢印方向への変位に伴ってリフト部材26が変位するとき、その変位に基づいて支持部材15を昇降させる作用点となる。
【0030】
次に、回転バー10周りの構造について説明する。
図1に示すように、回転バー10の下面には、下方に突出するとともに回転バー10と同方向に延びる板状のスカート29が固定されている。このスカート29は、本体フレーム2の外縁のうちの少なくとも一部、詳しくは本体フレーム2の外縁における長辺部分から下方に突出するものとなっている。回転バー10及びスカート29は、回転バー10の中心線周りにほぼ180°回転させることが可能となっている。そして、通常はスカート29が回転バー10から下方に突出する位置に同回転バー10が保持されている一方、充填機構12,13のメンテナンス時等には、スカート29が回転バー10から上方に突出するようになる位置まで同回転バー10を回転(
図1の位置から180°回転)させ、その位置で回転バー10が保持されるようになっている。
【0031】
次に、施工用キャスタ6,7の構造について説明する。
図4(a)は、施工用キャスタ6,7(
図1及び
図2)に設けられる車輪ユニット30を示している。施工用キャスタ6,7においては、こうした車輪ユニット30が本体フレーム2の左右方向(
図2の上下方向)に並列となるよう二つ設けられている。
【0032】
車輪ユニット30は、下方に突出する一対の脚部31aを有する支持脚31と、それら脚部31aの間に設けられた車輪32と、車輪32の中心を水平方向に貫通して支持脚31の一対の脚部31aに対し回転可能に支持されている中心軸33と、を備えている。車輪32は、中心部分が中心軸33に対し固定されている円板状の回転体34を備えている。車輪32においては、複数(この例では三つ)の回転体34が厚さ方向に間隔をおいて設けられており、これら回転体34が中心軸33の中心線周りに同中心軸33と一体回転することによって同車輪32の道路上での転動が可能となっている。
【0033】
図4(b)は、回転体34を厚さ方向から見た状態を示している。
図4(b)から分かるように、回転体34の外周部には、凹部35と凸部36とが周方向に沿って交互に形成されている。
図4(a)に示すように、隣合う回転体34のうち、一方の回転体34の凹部35及び凸部36と、もう一方の回転体34の凹部35及び凸部36とは周方向にずれて位置している。そうした凹部35及び凸部36の位置関係が実現するよう、中心軸33に対する各回転体34の周方向についての固定位置が定められている。
【0034】
次に、モルタル充填機1の作用について説明する。
モルタル充填機1は、道路に対する排水性の舗装として道路上に多孔質層を形成した後、その多孔質層の表面の空隙に対し透水性を有する樹脂モルタルを充填する際に用いられる。詳しくは、道路上における多孔質層の表面に樹脂モルタルを載せた後、その樹脂モルタルをモルタル充填機1で多孔質層の表面に敷きならすとともに同多孔質層の空隙に充填する。更に、多孔質層の表面に敷きならされたモルタルのうち、多孔質層の空隙に充填するうえで余分となるモルタルを取り除くこともモルタル充填機1によって行われる。
【0035】
図5は、上述したように用いられるモルタル充填機1を上方から見た状態を模式的に示している。
図5から分かるように、モルタル充填機1は、その本体フレーム2の長辺方向を道路Rの延びる方向(
図5の上下方向)とし、その状態のもとで道路R上を
図5の上下方向に移動するようにされる。このとき、充填機構12,13の羽根17が道路R上の多孔質層の表面(樹脂モルタル)に接した状態で、充填機構12,13の回転軸14及び羽根17がエンジン19(
図1、
図2)の駆動を通じて回転させられる。なお、このときの回転軸14及び羽根17の回転方向については、充填機構12と充填機構13とで互いに逆の方向とされる。
【0036】
そして、モルタル充填機1を道路R上で移動させながら、上述したように羽根17を回転させることにより、道路R上における多孔質層の表面に載せられた透水性の樹脂モルタルが、その多孔質層の表面に敷きならされるとともに同表面の空隙に対し充填される。また、羽根17の高さ位置を変えることにより、樹脂モルタルを多孔質層の表面に敷きならしたり空隙に対し充填したりするだけでなく、多孔質層の表面に敷きならされた樹脂モルタルのうち空隙に充填するうえで余分となる樹脂モルタルを取り除くことも行われる。ちなみに、このときの羽根17の高さ位置については、作業者が調整レバー24(
図1)の操作を通じて昇降機構18により支持部材15を昇降させることによって、調整することが可能となっている。また、このときの羽根17の回転速度については、作業者がスロットルレバー22の操作を通じてエンジン19の回転速度を変更することによって、調整することが可能となっている。
【0037】
図6は、羽根17の高さ位置の違いによる同羽根17の形状変化を示している。昇降機構18によって羽根17の高さ位置を
図6の左側にあるもののように低くすると、羽根17が道路R上の多孔質層37の表面に当たって湾曲することによって同表面に対し面接触するようになる。この状態のもとでは、モルタル充填機1(本体フレーム2)を上述したように移動させつつ羽根17を回転させることにより、多孔質層37の表面に載せられている樹脂モルタル39が、回転する羽根17によって同表面に敷きならされるとともに多孔質層37の空隙38に対し効果的に充填される。これは、空隙38に対する樹脂モルタル39の進入方向が羽根17の回転と本体フレーム2の移動との二つの運動によってランダムとなり、そうした空隙38に対する不規則な方向からの樹脂モルタルの進入により、空隙38に対する樹脂モルタル39の充填が効率よく行われるためである。
【0038】
また、昇降機構18によって羽根17の高さ位置を
図6の右側にあるもののように高くすると、羽根17の道路R側の端部が多孔質層37の表面に対し接するようになり、その表面に対し羽根17がほぼ線接触した状態となる。この場合、羽根17を回転させると、多孔質層37の表面に敷きならされた樹脂モルタル39のうち、多孔質層37の空隙38に充填するうえで余分となっている樹脂モルタル39、言い換えれば多孔質層37の表面よりも高い位置にある樹脂モルタル39が、回転する羽根17により掻き取られて取り除かれる。
【0039】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)モルタル充填機1においては、羽根17は柔軟性を有する材料によって形成されており、羽根17の高さ位置を変更すべく支持部材15を昇降させることを可能とする昇降機構18が設けられている。このため、羽根17の高さ位置を変えることができ、それによって羽根17を多孔質層の空隙に対する樹脂モルタルの充填とその充填にとって余分となる樹脂モルタルの除去との二つの用途に用いることができる。従って、それら二つの用途に対応して別々の部材を設ける場合と比較して、モルタル充填機1が大型化することを抑制できる。その結果、モルタル充填機1が小さい割に、道路上の多孔質層の空隙に対しモルタルを充填する工程を効率よく行うことができるようになる。
【0040】
(2)道路上でモルタル充填機1(本体フレーム2)を移動させつつ羽根17を回転させることにより、道路上の多孔質層の表面における空隙に対し樹脂モルタルの充填が行われる。このときには、上記空隙に対する樹脂モルタルの進入方向が羽根17の回転と本体フレーム2の移動との二つの運動によってランダムとなるため、そうした空隙に対する不規則な方向からの樹脂モルタルの進入により、空隙に対する樹脂モルタルの充填を効率よく行うことができるようになる。
【0041】
(3)道路上の多孔質層の表面に載せられた樹脂モルタルを敷きならしたり多孔質層の空隙に対し充填したりする際、及び、余分な樹脂モルタルを掻き取る際、作業者による調整レバー24の操作を通じて羽根17の高さ位置を調整することにより、多孔質層の表面に対する羽根17の接触態様(接触面積、接触圧力等)を変えることができる。このため、作業者が多孔質層の表面を目視しながら、空隙に対する樹脂モルタルの充填状態や余分の樹脂モルタルの除去状態に応じて、羽根17の高さ位置を調整することができる。
【0042】
(4)モルタル充填機1においては、充填機構12の回転軸14及び羽根17と充填機構13の回転軸14及び羽根17とが互いに逆の方向に回転する。この場合、正回転する回転軸14の羽根17によって樹脂モルタルが道路上の多孔質層の表面で敷きならされるとともに、逆回転する回転軸14の羽根17によって樹脂モルタルが上記多孔質層の表面で敷きならされるとき、それらの羽根17によって周囲に飛ばされた樹脂モルタルが上記二つの回転軸14の間の中間部分に集まりやすくなる。そして、その中間部分に集まった樹脂モルタルを、再び多孔質層の表面で敷きならすとともに同多孔質層の空隙に充填することができるため、空隙に対するモルタルの充填を効率よく行うことができる。
【0043】
(5)モルタル充填機1においては、羽根17が本体フレーム2の下側であって同本体フレーム2の外縁から水平方向にはみ出すことのない位置に設けられており、本体フレーム2の外縁(回転バー10)には下方に突出するスカート29が設けられている。このため、回転軸14とともに一体回転する羽根17によって樹脂モルタルが道路上の多孔質層の表面で敷きならされるとき、羽根17によって周囲に飛ばされた樹脂モルタルが本体フレーム2の外縁から更に外側に飛び出すことが上記スカート29によって抑制される。従って、本体フレーム2の外縁から更に外側に飛び出した樹脂モルタルを作業者が片付けるという手間を省くことができる。
【0044】
(6)モルタル充填機1は、その本体フレーム2を長辺方向に移動させつつ羽根17を回転させるものとなっている。また、スカート29は、本体フレーム2の外縁における長辺部分を形成している回転バー10に固定されており、その回転バー10に沿って延びるように形成されている。
【0045】
本体フレーム2をその長辺方向に移動させつつ、回転する羽根17によって樹脂モルタルが道路上の多孔質層の表面で敷きならされるときには、同樹脂モルタルが羽根17によって周囲に飛ばされるとしても、本体フレーム2の上記進行方向(長辺方向)に飛ばされるものについては再び羽根17によって敷きならされる。一方、本体フレーム2の上記進行方向と直交する水平方向(短辺方向)に樹脂モルタルが飛ばされて、本体フレーム2の外縁における長辺側の部分から更に外側に飛び出したとすると、その樹脂モルタルについては上述したように再び羽根によって敷きならされることはないため、同樹脂モルタルを作業者が片付けなければならなくなる。
【0046】
しかし、回転する羽根17によって本体フレーム2の短辺方向に飛ばされた樹脂モルタルが、本体フレーム2の外縁における長辺側の部分から更に外側に飛び出すことについては、上記スカート29によって抑制することができるようになる。
【0047】
(7)モルタル充填機1における施工用キャスタ6の車輪32は、外周部に凹部35と凸部36とが周方向に沿って交互に形成されている円板状の回転体34を有しており、その回転体34の中心線周りに転動するものとなっている。このため、道路上をモルタル充填機1(本体フレーム2)が移動するとき、その道路における多孔質層の表面に敷きならされた樹脂モルタルの上を車輪32が転動したとしても、その樹脂モルタルに対する車輪32の接触部分は回転体34の凸部36に限られるため、同樹脂モルタルに車輪32の跡が残りにくくなる。従って、上記樹脂モルタルにおける車輪32が通った跡を作業者が手作業で消さなくてもよくなる。
【0048】
(8)多孔質層の表面を車輪32が転動するとき、その表面に敷かれた樹脂モルタルが仮に車輪32における回転体34の外周全体に付着したとすると、回転体34の外周に上記樹脂モルタルが巻き付けられ、その巻き付けられた部分の樹脂モルタルが多孔質層の表面から剥がれるおそれがある。しかし、回転体34の外周には凹部35と凸部36とが周方向に亘って交互に形成されているため、隣合う凹部35と凸部36との段差によって回転体34の外周面に巻き付こうとする樹脂モルタルが切断され、その樹脂モルタルの回転体34の外周への巻き付けが抑制される。従って、回転体34の外周に樹脂モルタルが巻き付けられることに伴って、同樹脂モルタルが多孔質層の表面から剥がれることを抑制できる。
【0049】
(9)車輪32においては上記回転体34がその厚さ方向に間隔をおいて複数設けられているため、同車輪32を頑丈なものとすることができる。また、隣合う回転体34のうち、一方の回転体34の凹部35及び凸部36と、もう一方の回転体34の凹部35及び凸部36とが周方向にずれて位置している。このため、回転体34の外周面に凹部35及び凸部36が形成されているとしても、それによって車輪32の転動が不安定になることを抑制することができ、車輪32を安定して転動させることができる。
【0050】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・本体フレーム2の外縁における短辺部分(横バー4,5)から下方に突出するスカートを本体フレーム2の短辺方向に延びるように設けてもよい。
【0051】
・回転軸14に対し必ずしも四つの羽根17を固定する必要はなく、固定する羽根17の数を適宜変更してもよい。
・充填機構12の回転軸14(羽根17)と充填機構13の回転軸14(羽根17)とを同方向に回転させてもよい。
【0052】
・モルタル充填機1に充填機構を一つだけ設けたり、三つ以上設けたりしてもよい。・モルタル充填機1に充填機構を三つ以上設ける場合、少なくとも一つは回転軸を他のものとは逆の方向に回転させることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
1…モルタル充填機、2…本体フレーム、3…縦バー、4…横バー、5…横バー、6…施工用キャスタ、7…施工用キャスタ、8…中心軸、9…移動用キャスタ、10…回転バー、11…操作バー、11a…取付フレーム、12…充填機構、13…充填機構、14…回転軸、15…支持部材、16…支持バー、17…羽根、18…昇降機構、19…エンジン、20…回転伝達機構、21…スイッチ、22…スロットルレバー、23…ポール、24…調整レバー、25…ケーブル、26…リフト部材、27…補助フレーム、28…接触部、29…スカート、30…車輪ユニット、31…支持脚、31a…脚部、32…車輪、33…中心軸、34…回転体、35…凹部、36…凸部、37…多孔質層、38…空隙、39…樹脂モルタル。