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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】カップリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/112 20060101AFI20220523BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20220523BHJP
   F16J 15/04 20060101ALI20220523BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F16D27/112 N
F16D27/112 G
F16D13/52 Z
F16D27/112 W
F16J15/04 A
F16J15/14 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018023916
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019138418
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519196405
【氏名又は名称】株式会社IJTT
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】濱中 好久
(72)【発明者】
【氏名】木村 淳
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩司
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-167301(JP,A)
【文献】特開2009-2502(JP,A)
【文献】特開2011-252514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00-39/00,48/00-48/12
F16B 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に接続される中空の外側回転部材と、前記外側回転部材内に同軸にかつ回転自在に支持され、入力軸の外周に係合される筒状の内側回転部材と、前記外側回転部材を前記内側回転部材に断接可能に接続するクラッチと、前記クラッチを駆動させるアクチュエータとを備え、
前記入力軸は、前記内側回転部材の一端側に係合され、
前記内側回転部材の他端部内には、その孔を塞ぐプラグが、全周に亘ってかしめ固定され、
前記プラグは、板状に形成されると共に、前記内側回転部材の他端側に向かって断面円弧状に膨らむ凸状に形成され、
前記内側回転部材の他端部には、
前記プラグを嵌合させて収容するプラグ収容部と、
前記プラグ収容部内の前記プラグを一端方向から受けるプラグ受部と、
前記プラグ収容部内の前記プラグを一端方向に押圧するカシメ部と、
前記プラグ受部と前記孔の内面との交差部に形成された面取り面と、
が形成され、
前記カシメ部は、前記プラグ収容部に嵌め込まれた前記プラグよりも他端側に突出された断面三角形状のかしめ用突起部を径方向内方かつ一端側にかしめて形成され、
前記プラグは、前記内側回転部材に接着材またはシール材で液密に接着され、
前記接着材またはシール材は、前記プラグと、前記プラグ受部と、前記面取り面とに接着される
ことを特徴とするカップリング装置。
【請求項2】
前記プラグ受部は環状に形成され、
前記プラグは、前記プラグ受部に前記接着材またはシール材で全周に亘って液密に接着される請求項に記載のカップリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動軸の回転駆動力を入力軸に選択的に伝達するカップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カップリング装置は、中空の外側回転部材と、外側回転部材内に回転自在に設けられる内側回転部材と、外側回転部材内に設けられ外側回転部材及び内側回転部材を断接可能に接続するクラッチとを備える。
【0003】
また、カップリング装置としては、特許文献1,2に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1において、内側回転部材は、概ね筒状に形成されると共に、その内部を仕切る隔壁が形成される。隔壁は、外側回転部材内のクラッチオイルと入力軸側のオイルとが混ざるのを防ぐ。
【0005】
また、特許文献2において、隔壁は内側回転部材とは別体かつ薄板状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5668398号公報
【文献】特許第4369917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の内側回転部材には、隔壁が一体に形成されるため、内側回転部材の内周面にスプライン等の係合部をブローチ加工にて形成することができず、係合部の加工が困難であるという課題がある。
【0008】
また、特許文献2は、筒状の内側回転部材内に薄板状の隔壁を固定するものであるため、液密性およびシール性が低い。この場合、外側回転部材内のクラッチオイルと入力軸側のオイルとが混ざる虞がある。
【0009】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、内側回転部材の内周面に係合部を容易に加工でき、内側回転部材内の孔を確実に塞ぐことができるカップリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一の態様によれば、駆動軸に接続される中空の外側回転部材と、前記外側回転部材内に同軸にかつ回転自在に支持され、入力軸の外周に係合される筒状の内側回転部材と、前記外側回転部材を前記内側回転部材に断接可能に接続するクラッチと、前記クラッチを駆動させるアクチュエータとを備え、
前記内側回転部材内には、その孔を塞ぐプラグが、全周に亘ってかしめ固定されることを特徴とするカップリング装置が提供される。
【0011】
好ましくは、前記プラグは、前記内側回転部材に接着材またはシール材で液密に接着されるとよい。
【0012】
好ましくは、前記入力軸は前記内側回転部材の一端側に係合され、
前記プラグは、前記内側回転部材の他端部にかしめ固定されるとよい。
【0013】
好ましくは、前記プラグは、板状に形成されると共に、前記内側回転部材の他端側に膨らむ凸状に形成されるとよい。
【0014】
好ましくは、前記内側回転部材の他端部には、
前記プラグを嵌合させて収容するプラグ収容部と、
前記プラグ収容部内の前記プラグを一端方向から受けるプラグ受部と、
前記プラグ収容部内の前記プラグを一端方向に押圧するカシメ部と、
が形成されるとよい。
【0015】
好ましくは、前記プラグ受部は環状に形成され、
前記プラグは、前記プラグ受部に接着材またはシール材で全周に亘って液密に接着されるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、内側回転部材の内周面に係合部を容易に加工でき、内側回転部材内の孔を確実に塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の一実施の形態に係るカップリング装置が適用される車両の概略平面図である。
図2】カップリング装置の断面図である。
図3】内側回転部材の要部断面図である。
図4】製作途中の内側回転部材の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、後述する実施の形態における前後左右上下の各方向は、本実施形態に係るカップリング装置が適用される車両の各方向をいうものとする。但しこれら各方向が説明の便宜上定められたものに過ぎない点に留意されたい。
【0019】
図1は、本実施形態に係るカップリング装置1が適用される車両Cの概略平面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態において車両Cは、FF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)ベースのパートタイム4WD車(四輪駆動車)である。駆動軸たるプロペラシャフト2は、車両前部から後方に延びる。プロペラシャフト2には、エンジンEからの回転駆動力が図示しない変速機およびトランスファを介して伝達される。デファレンシャルギア3は、左右の後輪R、Rに連結されると共に、車体に固定されたデフケース4内に収容される。デフケース4内には、デフオイルが収容される。カップリング装置1は、プロペラシャフト2とデファレンシャルギア3の間に設けられ、プロペラシャフト2の回転駆動力をデファレンシャルギア3の入力軸3aに選択的に伝達するよう構成されている。
【0021】
図2は、カップリング装置1の断面図である。図2に示すように、カップリング装置1は、プロペラシャフト2に接続される中空の外側回転部材5と、外側回転部材5内に同軸に、かつ、回転自在に支持される内側回転部材6と、外側回転部材5を内側回転部材6に断接可能に接続するクラッチ7と、クラッチ7を駆動させるアクチュエータ8とを備える。
【0022】
外側回転部材5は、有底筒体状(具体的には有底円筒状)に形成される前部回転部9と、前部回転部9に後方から嵌入されネジ等により固定される後部回転部10とを備える。前部回転部9の内周には第1スプライン11が形成される。後部回転部10は、筒状(具体的には円筒状)に形成され内側回転部材6の後部外周を覆う鞘管部12と、鞘管部12から外周側に延びて形成され前部回転部9の後端部に嵌合される鍔部13とを備える。鍔部13の後面には、電磁石35を収容するための電磁石収容部14が凹状に形成される。鞘管部12には、鞘管部12と内側回転部材6との間を液密にシールするためのシールリング15が設けられる。シールリング15は、シールリング15より前側の外側回転部材5内に収容されるクラッチオイルと、シールリング15より後方のデフケース4内に収容されるデフオイルとが混ざることを防ぐ。また、鞘管部12は、後述する固定側の取付部材36に軸受16を介して回転自在に支持される。
【0023】
内側回転部材6は、概ね筒状(具体的には円筒状)に形成される。内側回転部材6の前端部は、外側回転部材5に軸受16を介して回転自在に支持される。また、内側回転部材6の前部には、外径を拡大される拡径部17が形成される。拡径部17の外周には、第2スプライン18が形成される。拡径部17及び第2スプライン18は、第1スプライン11より短く形成されると共に、第1スプライン11の前部と径方向に対向して配置される。また、内側回転部材6の後部内周には、係合部としての第3スプライン19が形成される。第3スプライン19は、デファレンシャルギア3の入力軸3aに係合され、具体的には、入力軸3aの外周に形成されたスプライン3bに嵌合される。これにより、内側回転部材6の後部はデファレンシャルギア3の入力軸3aに同軸に接続される。また、内側回転部材6の径方向中央の孔6aは軸方向に貫通される。このため、第3スプライン19をブローチ加工にて容易に加工できる。
【0024】
また、内側回転部材6内には、その孔6aを塞ぐプラグ20が設けられる。ここで、孔6aは、外側回転部材5内の空間と、デフケース4内の空間とを連通させる。プラグ20は、これら外側回転部材5内の空間とデフケース4内の空間とを隔絶するために設けられている。プラグ20は、外側回転部材5内に収容されるクラッチオイルと、入力軸3a側のオイル、具体的にはデフケース4内のデフオイルとが混ざることを防ぐ。
【0025】
図3は、内側回転部材6の要部拡大図である。図中のCは、内側回転部材6の中心線である。
【0026】
図3に示すように、プラグ20は、板状に形成されると共に、前方(内側回転部材6の他端方向)に膨らむ凸状に形成される。また、プラグ20は、鋼材等の金属により形成され、例えば金属板をプレス成形等することにより断面円弧状に形成される。なお、プラグ20は断面円弧状でなくてもよく、任意の形状であってよい。例えば単なる平板状であってもよく、断面半円状、断面D形または断面台形状であってもよい。
【0027】
また、内側回転部材6の前端部には、プラグ20を嵌合させて収容するプラグ収容部21と、プラグ収容部21内のプラグ20を後方(一端方向)から受けるプラグ受部22と、プラグ収容部21内のプラグ20を後方(一端方向)に押圧するカシメ部23とが形成される。
【0028】
プラグ収容部21は、内側回転部材6内の孔6aの前端部に、内径を機械加工により若干拡径して形成される。すなわち、プラグ収容部21とプラグ収容部21より後方の孔6aとの間には、段差が形成される。この段差は、環状に形成され、プラグ受部22を構成する。
【0029】
カシメ部23は、内側回転部材6の前端部を径方向内方にかしめて形成される。具体的には、図4に示すように、カシメ部23が形成される前の内側回転部材6には、断面三角形状のかしめ用突起部6bが、形成される。かしめ用突起部6bは、プラグ収容部21の径方向外側に環状に形成されると共に、前方に延びて形成されている。また、かしめ用突起部6bは、プラグ収容部21に嵌め込まれたプラグ20よりも若干前方に突出される。カシメ部23は、ロールかしめ装置(図示せず)でかしめ用突起部6bを全周に亘って径方向内方かつ後方にかしめて形成される。プラグ20は、カシメ部23によって後方に押圧されることでプラグ受部22に圧接され、孔6aを液密に塞ぐ。なお、かしめ用突起部6bは、断面三角形状に限るものではなく、他の形状であってもよい。例えば、かしめ用突起部6bは、断面矩形状であってもよく、断面扇型であってもよい。
【0030】
また、本実施の形態において、プラグ20は、上記のかしめに加え、内側回転部材6に接着材24で液密に接着される。具体的には、接着材24は、プラグ20をプラグ収容部21に嵌め込む前にプラグ収容部21とプラグ受部22に、予め塗布される。これにより、接着材24は、プラグ20とプラグ収容部21の間の隙間を全周に亘ってシールすると共に、プラグ20とプラグ受部22の間の隙間を全周に亘ってシールする。なお、必要であれば、プラグ収容部21に嵌め込まれる前のプラグ20にも予め接着材24を塗布しておいてもよい。また、接着材24は、プラグ20とプラグ受部22の間の隙間のみをシールするものであってもよい。また、接着材24は、シール材で代用されてもよい。
【0031】
図2に示すように、クラッチ7は、第1スプライン11にスプライン嵌合される環状の第1クラッチ板25aと、第2スプライン18に嵌合される環状の第2クラッチ板25bとを備える。第1クラッチ板25aと第2クラッチ板25bは前後方向に交互に配置される。また、クラッチ7より前方の外側回転部材5には、クラッチ7を受けるためのクラッチ受部27が形成される。
【0032】
アクチュエータ8は、電磁石35がアーマチャ34を吸引する力を増幅させてクラッチ7を駆動させる倍力装置として機能する。アクチュエータ8は、第2スプライン18にスプライン嵌合される第1カムブロック28と、第1カムブロック28の後方に配設される第2カムブロック29と、第1カムブロック28及び第2カムブロック29間に配設されるボール30と、第2カムブロック29の外周に形成される第4スプライン31と、第1スプライン11にスプライン嵌合される第3クラッチ板32と、第4スプライン31にスプライン係合される第4クラッチ板33と、第3クラッチ板32及び第4クラッチ板33より前方に配設されるアーマチャ34と、アーマチャ34を後方に吸引する電磁石35とを備える。
【0033】
第1カムブロック28は環状に形成される。第1カムブロック28は、ボール30を受けるための第1カム板部28aと、第1カム板部28aより外周に形成されクラッチ7を前方に押圧するための押圧部28bとを備える。第1カム板部28aには、ボール30を受けるための第1カム溝28cが周方向に複数形成される。第1カム溝28cは、それぞれ周方向に延びる三日月形に形成される。また、第1カム溝28cは、中央部から両端部に向かうにつれて溝幅が狭くなると共に、溝深さが浅くなるように形成される。
【0034】
第2カムブロック29は、第1カムブロック28より外径が小さな環状に形成される。第2カムブロック29は、第1カム板部28aと対向して配置される第2カム板部29aと、第2カム板部29aの外周に設けられ前後方向に延びる筒状のスプライン基部29bとを備える。第2カム板部29aには、ボール30を受けるための第2カム溝29cが第1カム溝28cと対向して複数形成される。第2カム溝29cは第1カム溝28cと前後対称の形状に形成される。スプライン基部29bの外周には、第4スプライン31が形成される。
【0035】
アーマチャ34は第4スプライン31より内径が大きな環状に形成される。アーマチャ34は鉄等の磁性体で構成され、電磁石35から磁力を受けたとき電磁石35に向かって後方に吸引される。また、アーマチャ34は、第2スプライン18にスプライン嵌合される。
【0036】
電磁石35は、取付部材36に取り付けられ、取付部材36はデフケース4に固定される。電磁石35は、電磁石収容部14内に収容され、外部の制御装置(図示せず)により通電されることで磁界を発生させる。なお、アクチュエータ8は、これに限るものではない。アクチュエータ8は、クラッチ7を駆動できるものであればよく、電動モーター、油圧モーター、電動シリンダ、油圧シリンダ等で構成されてもよい。
【0037】
次に、本実施の形態の作用について述べる。
【0038】
電磁石35に通電されないとき、クラッチ7は断状態となる。このため、プロペラシャフト2の回転駆動力は外側回転部材5のみに伝達され、内側回転部材6には伝達されない。
【0039】
この状態から電磁石35に通電されると、アーマチャ34が後方の電磁石35に吸引され、後方に移動される。後方に移動されたアーマチャ34は、第3クラッチ板32及び第4クラッチ板33を後方に押す。これにより、第3クラッチ板32及び第4クラッチ板33はアーマチャ34と後部回転部10とに挟まれて接状態となる。第3クラッチ板32から回転駆動力を受けた第4クラッチ板33は、第2カムブロック29に回転駆動力を伝達する。回転駆動力が伝達された第2カムブロック29は、第1カムブロック28に対して回動される。これにより、第1カム溝28c及び第2カム溝29cが相対的に周方向に移動される。そして、ボール30は、第1カム溝28c及び第2カム溝29cに沿って転がることで第1カム溝28c及び第2カム溝29cの端部に移動される。第1カム溝28c及び第2カム溝29cは、中央部から端部に向かうにつれては溝深さが浅くなる。このため、第1カム板部28aは、第2カム板部29aに対して前方に押され、第1クラッチ板25a及び第2クラッチ板25bを前方に押す。これにより、第1クラッチ板25a及び第2クラッチ板25bは第1カムブロック28の押圧部28bとクラッチ受部27とに挟まれて接状態となる。第1クラッチ板25aから回転駆動力を受けた第2クラッチ板25bは、内側回転部材6に回転駆動力を伝達する。これにより、内側回転部材6は、外側回転部材5と一体的に回転され、デファレンシャルギア3の入力軸3aに回転駆動力を伝達する。こうしてエンジン駆動力が後輪R、Rにも伝達され、車両Cは四輪駆動状態となる。
【0040】
ところで、デフケース4内にはデフオイルが収容され、後部回転部10より前方の外側回転部材5内にはクラッチオイルが収容される。デフオイルとクラッチオイルは特性、性質等が互いに異なる。このため、クラッチオイルとデフオイルが混ざることは好ましくない。しかし、本実施形態では、内側回転部材6内にその孔6aを塞ぐプラグ20が全周に亘ってかしめ固定されて設けられ、内側回転部材6内の孔6aがプラグ20で液密に塞がれるため、クラッチオイルとデフオイルが混ざることを防止または抑制できる。
【0041】
特に、内側回転部材6は筒状に形成され、具体的には、軸方向全長に貫通する孔6aを有する中空軸として形成される。このため、内側回転部材6の内周面に、係合部としての第3スプライン19をブローチ加工にて容易に加工できる。また、プラグ20を内側回転部材6内に全周に亘ってかしめ固定するため、内側回転部材6(具体的にはプラグ受部22)にプラグ20の外周部を全周に亘って密着させることができ、内側回転部材6内の孔6aを確実に塞ぐことができる。よって本実施形態によれば、内側回転部材6の内周面に係合部を容易に加工でき、内側回転部材6内の孔6aを確実に塞ぐことができる。
【0042】
また本実施形態では、プラグ20を板状に形成すると共に、前方に膨らむ凸状に形成するため、プラグ20の外周部がカシメ部23によって後方にかしめられたとき、プラグ20を弾性的に若干変形させることができる。このため、プラグ20に復帰方向の力を発生させることができ、その復帰方向の力でもプラグ20とカシメ部23とを圧着させることができる。そして、その反力でプラグ20とプラグ受部22を密着させることができ、シール性をさらに高められる。
【0043】
また本実施形態では、内側回転部材6(特にプラグ受部22)にプラグ20を接着材24で液密に接着するため、プラグ20と内側回転部材6との間の間隙を接着材24で埋めることができ、シール性をより高められる。
【0044】
ところで、本実施形態におけるデファレンシャルギア3は、駆動時の摩擦等で昇温する。この場合、デフケース4内の圧力が外側回転部材5内の圧力より高くなる。しかし、この圧力は、プラグ20をカシメ部23に押し付ける力として作用し、プラグ20をカシメ部23により強い力で圧接させる。これにより、仮にデフオイルが、プラグ20とカシメ部23との隙間から外側回転部材5側に漏れ出そうとしても、その漏出を防止または抑制でき、外側回転部材5内のクラッチオイルと混ざることを防止または抑制できる。
【0045】
以上、本開示の基本実施形態を詳細に述べたが、本開示は以下のような他の実施形態も可能である。
【0046】
(1)プラグ20は、前後逆向きに配置されてもよい。
【0047】
(2)前述の基本実施形態では内側回転部材6を入力軸3aの外周にスプラインにより係合させた。しかし係合方法は他の方法でもよい。例えばセレーション、キーとキー溝の組み合わせ、歯車、または角軸と角穴の組み合わせ等の様々な同軸接続構造により係合させてもよい。
【0048】
(3)前述の基本実施形態のカップリング装置1は、FF車ベースのパートタイム4WD車において、駆動軸たるプロペラシャフト2の回転駆動力を、デファレンシャルギア3の入力軸3aに選択的に伝達するよう適用された。しかしながら、本開示に係るカップリング装置の用途はこれに限定されない。駆動軸の回転駆動力を何等かの入力軸に選択的に伝達したい場合、本開示に係るカップリング装置は好適に使用可能である。それ故、本開示に係るカップリング装置は、車両以外の分野にも適用可能である。
【0049】
前述の各実施形態の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 カップリング装置
2 駆動軸
3a 入力軸
5 外側回転部材
6 内側回転部材
6a 孔
7 クラッチ
8 アクチュエータ
20 プラグ
図1
図2
図3
図4