IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IDCフロンティアの特許一覧

特許7077067冷却装置、データセンター、及び冷却方法
<>
  • 特許-冷却装置、データセンター、及び冷却方法 図1
  • 特許-冷却装置、データセンター、及び冷却方法 図2
  • 特許-冷却装置、データセンター、及び冷却方法 図3
  • 特許-冷却装置、データセンター、及び冷却方法 図4
  • 特許-冷却装置、データセンター、及び冷却方法 図5
  • 特許-冷却装置、データセンター、及び冷却方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】冷却装置、データセンター、及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20220523BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20220523BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220523BHJP
   H05K 7/18 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G06F1/20 D
H01L23/46 Z
H05K7/20 U
H05K7/18 K
G06F1/20 A
G06F1/20 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018040044
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019153240
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509226783
【氏名又は名称】株式会社IDCフロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 巌
(72)【発明者】
【氏名】中西 重能
(72)【発明者】
【氏名】山中 敦
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229741(JP,A)
【文献】特開2009-110469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106659092(CN,A)
【文献】特開2016-205688(JP,A)
【文献】特開2017-167886(JP,A)
【文献】特開2012-054499(JP,A)
【文献】特開2005-064186(JP,A)
【文献】実開平03-079450(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H01L 23/473
H05K 7/20
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックに配置される複数の電子機器を冷却する冷却装置であって、
前記電子機器に対して冷却油を供給する液供給部と、
前記電子機器に向かって冷却気体を供給する気体供給部と、
前記電子機器の状態に基づいて、前記液供給部及び前記気体供給部による、前記冷却油及び前記冷却気体の供給量を制御する冷却制御部と、
を備え
前記液供給部は、前記冷却油を流下させるノズルと、冷却対象となる前記電子機器に前記冷却油が直接かかるように前記ノズルを制御するノズル制御機構と、を備え、
前記冷却制御部は、前記冷却油及び前記冷却気体の供給量の比率を、前記電子機器ごとに制御する、
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、
前記電子機器により加熱された前記冷却油が回収される液槽部と、
前記液槽部に回収された前記冷却油を前記液供給部に送る液輸送部と、をさらに備える
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却装置において、
前記電子機器が配置される機器配置部の下方から前記液槽部に亘って設けられ、前記機器配置部から前記液槽部に向かって下方に傾斜する傾斜面を有する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷却装置において、
前記電子機器により加熱された前記冷却気体が回収される気体回収部と、
前記気体回収部の前記冷却気体を前記気体供給部に供給する気体輸送部と、
をさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項4に記載の冷却装置において、
前記気体回収部の前記冷却気体を冷却する気体冷却部を備え、
前記気体冷却部は、前記気体回収部の上方に設けられて、前記冷却油を供給する第二液供給部を備える
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
請求項5に記載の冷却装置において、
前記気体冷却部は、前記第二液供給部から供給される前記冷却油がかけ流される気液接触板を備える
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の冷却装置において、
前記電子機器により加熱された前記冷却油が回収される液槽部を備え、
前記気体回収部及び前記気体冷却部は、前記液槽部の上方に設けられる
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の冷却装置において、
前記冷却制御部は、前記電子機器の状態として、前記電子機器の温度に基づいて、前記冷却油及び前記冷却気体の供給量を制御する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
請求項に記載の冷却装置において、
前記冷却制御部は、前記電子機器の情報処理量に基づいて前記温度を判定する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の冷却装置において、
前記冷却制御部は、前記電子機器の状態として、前記電子機器の情報処理量に基づいて、前記冷却油及び前記冷却気体の供給量を制御する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項11】
請求項又は請求項10に記載の冷却装置において、
前記情報処理量は、前記電子機器のインターネットを介した通信における通信量を含む
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項12】
請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の冷却装置において、
前記冷却制御部は、前記電子機器の状態が、前記電子機器の温度が所定の閾値以上となる状態である場合に、当該電子機器に対して前記冷却油及び前記冷却気体を供給する高効率冷却を実施し、前記電子機器の状態が、前記電子機器の温度が前記閾値未満となる状態である場合に、当該電子機器に対して前記冷却気体を供給する通常冷却を実施する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項13】
請求項12に記載の冷却装置において、
前記冷却制御部は、前記電子機器の状態の経時変化に基づいて、前記電子機器の状態が、前記電子機器の温度が所定の閾値以上となる状態となる高負荷日時を予測し、前記高負荷日時の所定時間前から当該電子機器に対して前記高効率冷却を実施する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項14】
複数のサーバ装置が配置されるサーバ室と、
前記サーバ装置を前記電子機器として冷却する請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の冷却装置と、を備えた
ことを特徴とするデータセンター。
【請求項15】
電子機器に対して冷却油を供給する液供給部と、前記電子機器に向かって冷却気体を流す気体供給部と、を備える冷却装置を用い、ラックに配置される複数の前記電子機器を冷却する冷却方法であって、
前記液供給部は、前記冷却油を流下させるノズルと、冷却対象となる前記電子機器に前記冷却油が直接かかるように前記ノズルを制御するノズル制御機構と、を備え、
複数の前記電子機器のそれぞれの状態に基づいて、前記液供給部及び前記気体供給部による、前記冷却油及び前記冷却気体の供給量の比率を、前記電子機器ごとに制御する
ことを特徴とする冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を冷却する冷却装置、及び冷却装置を備えたデータセンター、及び冷却装置による電子機器の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のサーバ装置が設置されたデータセンター等において、サーバ装置を例えばフロリナート(登録商標)等の冷却液で冷却する油冷式の冷却装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1に記載の冷却装置は、冷却液を貯留する液浸槽を有し、当該液浸槽内の冷却液内に情報処理装置(サーバ装置)が浸漬される。これにより、サーバ装置の熱が直接冷却液に移動することで冷却される。
特許文献2に記載の冷却装置は、電子部品に対して調整液体をスプレーすることで、電子部品を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-191431号公報
【文献】特表2009-539246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、冷却液に対してサーバ装置等の電子機器を浸漬させることで、電子機器の冷却効率は高い。しかしながら、データセンターには、非常に多くのサーバ装置が設置されており、これらのサーバ装置の全てを冷却液に含浸させるためには、大量の冷却液が必要になり、コスト高となる。また、冷却槽の冷却液を安全に維持するための専用の装置が必要となり、冷却液のメンテナンス(例えば冷却等)に係る費用も高くなる。
【0005】
特許文献2に記載の装置は、冷却液を電子機器に対してスプレーするので、特許文献1に対して必要とされる冷却液の量が少なく、冷却液に係るコスト削減は見込まれる。しかしながら、大規模データセンター等では、非常に多くのサーバ装置が設置され、これらの全てのサーバ装置を冷却液で冷却するためには、やはり大量の冷却液が必要となってコスト高となる。
【0006】
本発明は、低コストで冷却効率が高い冷却装置、及び当該冷却装置を備えたデータセンター、当該冷却装置による冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷却装置は、電子機器に対して冷却液を供給する液供給部と、前記電子機器に向かって冷却気体を供給する気体供給部と、前記電子機器の状態に基づいて、前記液供給部及び前記気体供給部による、前記冷却液及び前記冷却気体の供給量を制御する冷却制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、電気機器を液供給部から供給される冷却液と、気体供給部から供給される冷却気体とを用いて電子機器を冷却する。また、冷却液は、電子機器を冷却した後に液槽部に回収され、液輸送部により液供給部に送られることで再利用される。このような本発明では、冷却液と冷却気体とを用いて電子機器を冷却するため、例えば冷却液に電子機器を浸漬される構成や、冷却液のみで電子機器を冷却する場合に比べて、冷却液の使用量を大幅に減少させることができ、冷却液の導入に係るコスト、熱せられた冷却液を冷却する等のメンテナンスに係るコストを低減させることができる。また、使用した冷却液は再利用されてもよく、この場合、冷却液を新たに導入することがないため、コストをさらに低減することもできる。
さらに、冷却液と冷却気体とを用いた冷却によって、電子機器を効果的に冷却することができ、冷却効率も高く維持できる。この際、例えば、所定値以上の温度となる高温の電子機器に対しては冷却効果が高い冷却液による冷却や、冷却液と冷却気体との双方を用いた冷却を行い、所定値未満の温度の電子機器に対しては冷却気体のみによる冷却を行うことも可能となる。この場合、冷却液の循環に係るコストをさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る冷却装置を備えたデータセンターの概略構成を示す平面図。
図2】本実施形態の冷却装置を説明するためのデータセンターの模式図。
図3】本実施形態の冷却油の冷却構成の一例を示す図。
図4】本実施形態の冷却装置の制御構成を示すブロック図。
図5】本実施形態の冷却装置によるサーバ装置の冷却方法を示すフローチャート。
図6】変形例1におけるサーバ装置の配置と冷却油供給部の配置とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る一実施形態について説明する。
[データセンターの概略構成]
図1は、本実施形態の冷却装置10を備えたデータセンター1の概略構成を示す平面図である。また、図2は、本実施形態の冷却装置の概略を説明するためのデータセンターの模式図である。
図1に示すように、本実施形態のデータセンター1は、サーバ室20と、回収室11とを備える。また、回収室11は、サーバ装置27(図2参照)を冷却する冷却装置10の一部を構成する貯油槽14(液槽部)を備える。なお、本実施形態の冷却装置10は、冷却油供給部12、エア供給部13、貯油槽14、エア回収部15、エア冷却部16(図2参照)、液輸送部17、エア輸送部18、及び冷却制御部19(図2及び図4参照)等により構成されている。
サーバ室20は、床部21、床部21に対向する天井部22(図2参照)、及び床部21及び天井部22とともに、サーバ室20の内部空間(サーバ室空間A1)を形成する壁部23を有する。
【0011】
[床部21の構成]
床部21は、図2に示すように、床面部24と、床面部24の下方(鉛直下側)に配置された循環室25とを備えている。
床面部24は、壁部23に連続する水平な第一床241と、第一床241に連続する機器配置部242を有する。
【0012】
機器配置部242は、サーバ室空間A1と循環室25とを連通する床材(例えばグレーチング等の連通床242A)を含んで構成されている。また、機器配置部242の外周には、第一床241と機器配置部242との段差を埋めるジョイステップ部材242B等が配置されてもよい。
【0013】
機器配置部242には、複数のラック26が配置されている。ラック26は、例えば、内部に複数の電子機器(例えばサーバ装置27)を収納する収容体である。ラック26に収容されるサーバ装置27は、図2に示すように、高さ(Z方向の寸法)が幅(X方向の寸法)及び奥行き(Y方向の寸法)に対して小さい薄型箱状に構成されており、ラック26において、Z方向に複数並べられて収容される。なお、このラック26は、例えば±Y側が開口し、当該開口から複数のサーバ装置27が露出する状態で、サーバ装置27を保持する。これにより、冷却油(冷却液)やエア(冷却気体)を、ラック26の例えば+Y側の開口から-Y側の開口に流す(或いは、-Y側の開口から+Y側の開口に流す)ことができ、ラック26内のサーバ装置27を効率的に冷却することが可能となる。
【0014】
機器配置部242におけるラック26の配置位置に関しては特に限定されないが、本実施形態では、ラック26の配置位置に対応して、後述する冷却油供給部12やエア供給部13が配置される。つまり、ラック26と冷却油供給部12とエア供給部13とは、最適な冷却を実現するよう適宜配置される。
本実施形態では、ラック26は、図1に示すように、一方向(例えばX方向)に沿って複数のラック26が配置されることで1つのラック列26Aが構成され、当該ラック列26AがX方向に交差する方向(Y方向)に沿って複数配置される。
また、本実施形態では、サーバ室20の+X側に回収室11が配置され、冷却油及びエアが回収される。この場合、回収室11が設けられる+X側の壁部23Aと、ラック列26A+X側端部に配置されたラック26との間には、所定の間隔X1(例えば2m程度)の排気空間A2が形成されることが好ましい。つまり、ラック列26Aの+X側端部に配置されるラック26は、壁部23AからX1の距離だけ離れて配置されている。
【0015】
さらに、Y方向に隣り合うラック列26Aの間、+Y側端部に配置されるラック列26Aと+Y側の壁部23Bとの間、及び、-Y側端部に配置されるラック列26Aと-Y側の壁部23Cとの間には、熱仕切243が設けられる。熱仕切243は、例えば簡易カーテン等により構成することができ、ラック列26Aの+X側端部(回収室11側)に設けられている。これにより、サーバ室20の+X側の空間(排気空間A2)に流れたエア(熱せられたエア)がサーバ装置27側に戻る不都合が抑制される。
【0016】
さらには、サーバ室20の回収室11に隣接する壁部23Aには、回収室11と連通する排熱孔231が設けられる。サーバ装置27で熱せられたエアは、排熱孔231から回収室11側に排気させることが可能となる。
そして、本実施形態では、サーバ室20の排熱孔231に隣接して除湿部30が設けられている。除湿部30は、サーバ室20から回収室11側に抜けるエアを除湿する装置であり、例えば、デシカント空調機等を用いることができる。
本実施形態のように、サーバ装置27に対して冷却油を直接かけ流す場合、冷却油やエアに水分が含まれることは好ましくない。除湿部30を設けることで、エアの水分を除去することができ、水分によるサーバ装置27の故障(ショート等)を抑制することができる。冷却油に水分が含まれる場合でも、冷却油の水分が水蒸気となり、エアに含まれた際に除湿部30により除去することができる。
【0017】
[循環室25の構成]
循環室25は、床面部24の下方に配置されて、機器配置部242の連通床242Aから流れ落ちる冷却油(冷却液)を回収室11の貯油槽14に流す。
具体的には、循環室25は、貯油槽14に向かって斜め下方向に傾斜し、貯油槽14に接続される傾斜面111を有する。床面部24から流れ落ちた冷却油は、循環室25の傾斜面111に沿って流されることで、貯油槽14に送られる。
また、本実施形態では、サーバ室20の天井部22側から、サーバ装置27を冷却する冷却気体(エア)が送風される。そして、サーバ装置27により加熱されたエアも、床面部24から循環室25に送られ、循環室25を通過して回収室11へと流される。この際、サーバ装置27で熱せられた冷却油からエアに放熱が行われることで、冷却油の温度が有る程度低減させられる。また、冷却油に水分が含まれる場合、冷却油の放熱時に水蒸気としてエアに放出される。エアに放出された水蒸気は、上述のように除湿部30により除湿される。
なお、サーバ室20の熱仕切243より+X側では、循環室25から熱せられたエアの一部が、排気空間A2側に移動し、排気空間A2から排熱孔231を通って回収室11に流れる。
【0018】
[天井部22の構成]
天井部22には、機器配置部242の上方で、各ラック26のサーバ装置27が露出する開口に向かって、冷却油供給部12及びエア供給部13が設けられている。また、天井部22には、冷却油供給部12に冷却油を送る液輸送部17、及びエア供給部13にエアを送るエア輸送部18が設けられている。
(冷却油供給部12及び液輸送部17の構成)
冷却油供給部12は、冷却装置10を構成する本発明の冷却液体供給部であり、冷却液である冷却油をサーバ装置27に向かって流下させる。この冷却油供給部12は、冷却油を流下させるノズル121と、当該ノズル121の角度や冷却油の供給を制御するノズル制御機構122と、を備える。冷却油供給部12は、液輸送部17によって貯油槽14に接続され、貯油槽14に貯留される冷却油が供給される。
【0019】
ノズル121は、例えば、冷却油を霧状にして噴霧する開口径としてもよいが、この場合、サーバ装置27で熱せられた冷却油が他のサーバ装置27(例えば、X方向やY方向の隣り合うラック26内のサーバ装置27)に飛散する場合がある。このため、ノズル121は開口寸法が、所定寸法以上に形成されており、ノズル121から供給された冷却油は、冷却対象(ターゲット)とするサーバ装置27に直接流しかけるように、流下される。
【0020】
また、ノズル制御機構122は、例えば、ノズル121又は液輸送部17に設けられた弁(図示略)を開閉することで、ノズル121から冷却油を流下させる。さらに、ノズル制御機構122は、ステッピングモータ等によってノズル121の角度を変更する回転機構(図示略)を備える。これにより、ノズル121から、ラック26内の所望のサーバ装置27に冷却油が直接流下されるように、冷却油の流下方向を制御する。
【0021】
また、ラック26内の各サーバ装置27に対応して、それぞれ個別にノズル121が設けられていてもよい。この場合、ノズル制御機構122は、ターゲットのサーバ装置27に対応するノズル121を選択して冷却油を流すことが可能となる。
【0022】
液輸送部17は、貯油槽14と冷却油供給部12とを接続する冷却油配管171と、貯油槽14の冷却油を送り出すポンプ172と、を備える。ポンプ172は、所定の駆動量(送り出し量)で冷却油を送り出してもよく、例えば冷却制御部19の制御により、送り出し量が可変となる構成としてもよい。
【0023】
(冷却油の説明)
次に、冷却油供給部12から供給される冷却油について説明する。
冷却油は、サーバ装置27等の電子機器を冷却する冷却液であり、冷却対象としての電子機器(サーバ装置27等)に直接触れることで、サーバ装置27の熱を奪って冷却する。このため、電子機器のショートを防止する必要から、冷却油として、絶縁性を有し、かつ熱交換率が高い液体が選択される。具体的には、JISC2101の電気絶縁油試験方法にクリアし、JISC2320、IEC60296、及びIEEE基準を満たし、かつ、引火点及び発火点が90℃より高い電気絶縁油を用いる。このような電気絶縁油として、例えばフロリナート(登録商標)等を挙げることができる。
【0024】
(エア供給部13及びエア輸送部18の構成)
エア供給部13は、冷却装置10を構成する本発明の冷却気体供給部であり、冷却気体であるエア(空気)をサーバ装置27に向かって吹き付ける。
エア供給部13は、ラック26に向かってエアを吹き付ける冷却ファン131と、冷却ファン131の駆動を制御するファン制御部132と、を備える。また、エア輸送部18は、エア供給部13とエア回収部15とを接続し、エア回収部15のエアをエア供給部13に送り出すダクトである。このエア輸送部18は、例えばエアフィルター等を備え、エアに含まれる粉塵等の異物を除去可能な構成とすることがより好ましい。
冷却ファン131は、エアの導入方向(吹き付け方向)を制御可能な角度変更機構を有していてもよい。この場合、ターゲットとなるサーバ装置27に対してエアを直接吹き付けることが可能となる。
【0025】
[回収室11の構成]
回収室11は、サーバ室20に隣接して設けられた密閉された部屋であり、床部分(他方側)が貯油槽14となり、貯油槽14の上方がエア回収部15となる。
すなわち、循環室25から送られた冷却油は、回収室11の貯油槽14に送られて貯留され、循環室25や排熱孔231を通って送られたエアは、貯油槽14の上方のエア回収部15に滞留する。
【0026】
[貯油槽14の構成]
図3は、貯油槽14における冷却油の冷却構成の一例を示す図である。
貯油槽14は、図1及び図2に示すように、冷却装置10の一部を構成し、例えば、サーバ室20に隣接して設けられている。
貯油槽14は、循環室25を介して循環した冷却油を貯留する。
この貯油槽14には、上述したように、液輸送部17の冷却油配管171が接続され、ポンプ172により貯油槽14に貯留された冷却油が冷却油供給部12に輸送される。貯油槽14における冷却油配管171の接続位置は、用いる冷却油の比重によって決定される。水よりも小さい比重の冷却油を用いる場合、貯油槽14の高さ方向(Z方向)における中心よりも上方(+Z側)に冷却油配管171が接続される。これにより、冷却油に水分が混入する不都合をより確実に抑制できる。
【0027】
また、貯油槽14には、冷却油を冷却する油冷却部141が接続されている。具体的には、図3に示すように、貯油槽14には、第一循環管142及び第二循環管143が接続されており、第一循環管142から油冷却部141に冷却油が送り出され、油冷却部141により冷却された冷却油が第二循環管143から貯油槽14に戻される。
また、第一循環管142には、濾過部144が設けられており、濾過部144により濾過された冷却油が油冷却部141に送られる。冷却油は、サーバ室20から循環室25を介して貯油槽14まで流され、この間で、粉塵等の異物が混入することが考えられる。濾過部144は、冷却油に含まれる上記のような異物や汚れを濾過して除去する。
【0028】
油冷却部141における冷却方法は特に限定されず、例えば、図3に示すように、濾過された冷却油が導入される油導入部141Aと、油導入部141Aの外周を冷却水で浸して冷却する冷却水導入部141Bと、を備える構成が例示できる。その他、油冷却部141としては、冷却油又は冷却油を輸送する輸送管にエアを吹き付けて空冷により冷却する構成としてもよい。
本実施形態では、サーバ室20で熱せられた冷却油は、循環室25においてエアとともに回収室11に送られる。したがって、循環室25において、冷却油は空気放熱されることになり、油冷却部141での冷却に係るエネルギーを低減させることが可能となる。
【0029】
[エア回収部15の構成]
回収室11のうち、貯油槽14の上方に形成される空間であるエア回収部15(気体回収部)は、サーバ室20から送られるエアを滞留させる空間となる。このエア回収部15には、熱せられたエアを冷却するエア冷却部16(気体冷却部)が設けられている。
具体的には、エア冷却部16は、図2に示すように、回収室11内に配置された複数の冷却油充填板161(気液接触板)と、冷却油充填板161の上方に設けられた第二冷却油供給部162(第二液供給部)と、を備えて構成されている。
【0030】
冷却油充填板161は、例えば、天井部から吊り下げることで配置されていてもよく、回収室11の壁面から室内側に突出して配置されていてもよい。この冷却油充填板161は、第二冷却油供給部162からかけ流される冷却油を保持し、冷却油とエアとの間で熱交換させることで、熱せられたエアを冷却する。
冷却油充填板161としては、例えば、冷却油を保持する吸収材により構成されていてもよく、表面に複数のフィン部材等が突出して、表面形状が凹凸となり、凹部に冷却油が保持される構成としてもよい。フィン部材を形成する場合、冷却油とエアとの接触面積が増大し、より効果的にエアを冷却することができる。
【0031】
第二冷却油供給部162は、例えばポンプ172に接続され、貯油槽14から送られてきた冷却液を吐出して、冷却油充填板161に向かって流下又は噴霧させる。
なお、ここでは、ポンプ172により汲み出された冷却液を第二冷却油供給部162から流下させる例を示すが、冷却油供給部12とは別の循環経路にて、貯油槽14の冷却液が第二冷却油供給部162に送られる構成としてもよい。
【0032】
本実施形態では、貯油槽14の上方にエア回収部15及びエア冷却部16が設けられることで、第二冷却油供給部162から流下され、冷却油充填板161に充填されなかった冷却油や、冷却油充填板161で熱交換された冷却油が、そのまま貯油槽14に流れ落ちる。この際、エアに含まれる粉塵等の異物は冷却油によって洗い流される。
【0033】
また、回収室11の例えば天井には、エア輸送部18(ダクト)が接続される。また、回収室11のエア輸送部18との接続位置に、エアを送り出すファンが設けられてもよい。
【0034】
[冷却装置10の制御構成]
図4は、本実施形態の冷却装置の制御構成を示すブロック図である。
上述したように、冷却装置10は、データセンター1に設置される冷却油供給部12、エア供給部13、貯油槽14、エア回収部15、及びエア冷却部16を含んで構成される。また、本実施形態の冷却装置10は、さらに、冷却油供給部12やエア供給部13を制御する冷却制御部19を備える。この冷却制御部19は、例えばデータセンター1内のサーバ室20に設置されるサーバ装置27のうちの1つであってもよく、サーバ室20とは別の位置に設けられたコンピューター等により構成されていてもよい。また、データセンター1とは別の位置に設けられ、例えばインターネット等の通信回線を介して冷却油供給部12及びエア供給部13に接続されるコンピューター等により構成されていてもよい。
【0035】
[冷却制御部19の構成]
具体的には、冷却制御部19は、通信部191、記憶部192、及び制御部193を含んで構成されている。
通信部191は、ネットワークに接続されており、ネットワークを介してサーバ室20に設置された各サーバ装置27、冷却油供給部12のノズル制御機構122、及びエア供給部13のファン制御部132と通信する。
【0036】
記憶部192は、例えばメモリ、ハードディスク等により構成された情報記録装置(副記憶装置)であり、各種情報や各種プログラムが記憶されている。
この記憶部192は、サーバ装置27毎の情報処理量を記憶する負荷管理データが記録されている。
この負荷管理データは、サーバ装置27の情報処理量を蓄積するデータであり、例えば、過去の情報処理量(例えば、CPU稼働率や、通信量)とその日時が蓄積されている。すなわち、負荷管理データには、サーバ装置27における演算処理に係る処理負荷の経時変化や、インターネットを介した通信による通信負荷の経時変化が記録されている。
【0037】
制御部193は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路、RAM(Random Access Memory)等の記憶回路により構成される。制御部193は、記憶部192等に記憶されているプログラムをRAMに展開し、RAMに展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
そして、制御部193は、記憶部192に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、図4に示すように、処理負荷取得部193A、温度予測部193B、及び冷却指令部193Cとして機能する。
【0038】
処理負荷取得部193Aは、各サーバ装置27における情報処理量(CPU稼働率や通信量等)を取得する。なお、処理負荷取得部193Aは、各サーバ装置27から上述のような情報処理量を取得してもよく、専用の管理サーバから情報処理量を取得してもよい。例えば、データセンター1では、サーバ室20に配置される各サーバ装置27の通信量に係るトラフィックデータ、すなわち、ネットワーク上において通信に用いられた経路(ノード)、パケットの種類やデータ量が、例えばデータセンター1に設けられた管理サーバにより監視される。処理負荷取得部193Aは、このような管理サーバから、各サーバ装置27のトラフィックデータを含む情報処理量を取得してもよい。
なお、処理負荷取得部193Aとしては、サーバ装置27の情報処理量が、所定の閾値以上となった場合に、当該情報処理量と、情報処理量が閾値以上となった日時を取得してもよい。
【0039】
温度予測部193Bは、記憶部192に記憶される各サーバ装置27の負荷管理データに記録される過去のサーバ装置27の情報処理量の経時変化から、サーバ装置27の温度の変化を予測する。
つまり、サーバ装置27は、情報処理量が多いほど高温となる。インターネットを介してサービスを提供するサーバ装置27では、通信量が多くなるほど、CPU稼働率も高くなり、処理負荷によって発熱量も増大する。したがって、サーバ装置27における通信量を発熱量の指標として用いることができる。そこで、温度予測部193Bは、過去の負荷管理データの、時間毎、曜日毎、月毎、季節毎等の情報処理量(CPU稼働率、通信量)の変化から、将来のサーバ装置の情報処理量(CPU稼働率、通信量)に応じた温度を予測する。
【0040】
この際、温度予測部193Bは、日時を入力、サーバ装置27の温度(情報処理量)を出力としたサーバ装置27の温度の予測モデルを生成してもよい。例えば、負荷管理データに蓄積される情報処理量の半数を学習データとして予測モデルを生成し、半数を実測モデルとして予測モデルの精度を評価する。この場合、負荷管理データのデータ量が増大する程、予測精度が高い予測モデルを生成することができ、さらに、負荷管理データを蓄積し続けて、周期的に予測モデルを更新することで、予測精度の更なる向上を図れる。
【0041】
また、負荷管理データに記録される日時に対応するその他の情報を入力として予測モデルを生成してもよい。インターネット上では、様々な情報が公開されており、例えば特定の日時における天候、時事情報(株価や為替の変動値)等の情報(付加情報)を容易に取得することが可能である。温度予測部193Bは、サーバ装置27の温度(情報処理量)を予測する日時に加え、上記のような付加情報を入力とした予測モデルを生成してもよい。
この場合、さらに、サーバ装置27毎に付加情報を変更してもよい。各サーバ装置27の特性(例えば、サーバ装置27により提供されるサービス、サーバ装置27を管理するサーバ管理者の活動状況等)に基づいて、付加情報を選択することで、サーバ装置27で処理される内容に応じて、より的確にサーバ装置27の温度を予測することが可能となる。例えば、為替レートの予測サービスを提供するサーバ装置27に対して、過去の情報処理量と、その情報処理量が記録された日時と、当該日時における為替レートの変動値とを含む複数の情報から、予測モデルを生成する。この場合、日時に基づいたサーバ装置27の処理負荷の変動予測のみならず、為替レートの変動に対するサーバ装置27の処理負荷の変動予測をも実施することが可能となる。
【0042】
そして、温度予測部193Bは、予測した所定期間分の各サーバ装置27の温度を記憶部192に予測データとして記録する。なお、温度予測部193Bは、例えば周期的に、各サーバ装置27の温度を予測して予測データを更新する。
【0043】
冷却指令部193Cは、冷却油供給部12及びエア供給部13を制御して、サーバ装置27を冷却する。すなわち、冷却指令部193Cは、記憶部192に記録されている予測データに基づいて、サーバ装置27の温度に基づいて、各サーバ装置27の冷却方式を切り替える。
具体的には、冷却指令部193Cは、サーバ装置27の温度が所定の閾値以上となる場合(又はサーバ装置27の情報処理量が所定の第二閾値以上になる場合)、当該サーバ装置27の配置位置の上方に設置された冷却油供給部12を制御してノズル121から冷却油を流下させる。この際、冷却指令部193Cは、流下させる冷却液がターゲットのサーバ装置27に直接流下されるように、ノズル121の角度を変更して冷却油の流下方法を制御する。また、冷却指令部193Cは、同時に、当該サーバ装置27の上方に配置されたエア供給部13の冷却ファン131を駆動させて、エアを当該サーバ装置27に吹き付ける。これにより、高温のサーバ装置27に対して、油冷及び空冷により冷却する高効率冷却が実施される。
【0044】
高効率冷却では、サーバ装置27にかけ流される冷却油と、サーバ装置27に吹き付けられるエアの比率が所定比率となるように、冷却油の供給量及びエアの供給量が制御される。例えば、本実施形態では、(冷却油の供給量):(エアの供給量)=4:1となるように制御される。本実施形態では、冷却油の比熱は、エアの比熱の約2倍となり、冷却油の熱伝導率はエアの5~6倍となり、油冷による冷却効率は、空冷による冷却効率の4倍程度となる。したがって、冷却油とエアの供給量の比を上記のように制御することで、例えば空冷のみによってサーバ装置27を冷却する場合に比べて、例えば3~3.5倍の冷却効率が得られる。
なお、冷却油とエアとの供給比としては、上記に限られず、任意の比率に変更することも可能である。この際、冷却油の供給量を50%以上にすることが好ましく、これにより、空冷のみでサーバ装置27を冷却した場合の2倍以上の冷却効率を得ることができる。したがって、サーバ装置27の温度に応じて、高効率冷却を実施する際の冷却油の供給量と、エアの供給量との比率を変更してもよい。エアの供給量が一定である場合は、流下させる冷却油の量を増減すればよい。
【0045】
一方、冷却指令部193Cは、サーバ装置27の温度が閾値未満になる場合(又はサーバ装置27の情報処理量が所定の第二閾値未満になる場合)、当該サーバ装置27の配置位置の上方に設置されたエア供給部13を制御し、空冷のみによりサーバ装置27を冷却する通常冷却を実施する。これにより、サーバ装置27が、空冷のみによって冷却可能な温度である場合は、無駄に冷却油供給部12を稼働させる必要がなく、省エネを図ることができる。
【0046】
なお、冷却指令部193Cは、予測データに基づいて高効率冷却を実施する際、サーバ装置27の温度が閾値以上となる日時(高負荷日時)の所定時間前(例えば1時間前等)から高効率冷却を開始する。すなわち、サーバ装置27の温度が上昇した後に、当該サーバ装置27を冷却してもよいが、この段階では既に当該サーバ装置27の処理能力が低下している。これに対して、高負荷日時の所定時間前で、サーバ装置27の温度が閾値未満となる日時から高効率冷却を実施することで、高負荷日時においてサーバ装置27が閾値以上の温度となる不都合を未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
さらに、冷却指令部193Cは、各サーバ装置27での情報処理量を常時監視して、サーバ装置27の現在の情報処理量に基づいて、冷却油供給部12及びエア供給部13を制御する。すなわち、予測データに各サーバ装置27の温度予測をすることで、サーバ装置27を効果的に冷却できるが、予測データにずれが生じる場合や、予測データの予測に反してサーバ装置27の温度が上昇する場合等も起こりうる。本実施形態では、このような場合においても、各サーバ装置27での情報処理量を常時監視することで、温度が上昇したサーバ装置27を迅速に冷却することが可能となる。
【0048】
[データセンター1におけるサーバ装置27の冷却方法]
次に、冷却装置10を用いたサーバ装置27の冷却方法(冷却制御方法)について、以下説明する。
図5は、冷却装置10によるサーバ装置27の冷却方法を示すフローチャートである。
本実施形態では、冷却制御部19の処理負荷取得部193Aは、各サーバ装置27に対して常時エアを吹き付けて、空冷によりサーバ装置27を冷却する通常冷却を実施している。
そして、冷却指令部193Cは、各サーバ装置27の情報処理量を監視し(ステップS1)、高効率冷却を実施しておらず、かつ、情報処理量が所定の閾値以上となる高負荷のサーバ装置27が有るか否かを判定する(ステップS2)。ステップS1及びステップS2では、処理負荷取得部193Aは、各サーバ装置27から周期的に送信される情報処理量を参照してもよく、各サーバ装置27の情報処理量を監視する管理サーバから、各サーバ装置27の情報処理量を受信してもよい。
【0049】
ステップS2でYesと判定された場合、冷却指令部193Cは、高負荷のサーバ装置27をターゲットとして、ノズル制御機構122を制御してノズル121の角度を変更し、ターゲットのサーバ装置27に冷却油をかけ流す。すなわち、ターゲットの高負荷のサーバ装置27に対して、油冷及び空冷を併用した高効率冷却を実施する(ステップS3)。
なお、同一のラック26にターゲットとなる高負荷のサーバ装置27が複数ある場合は、ノズル121の角度を一定周期で変化させて、複数の高負荷のサーバ装置27に交互に冷却油をかけてもよい。この場合、周期的に冷却油が直接かけ流されない期間が生じるため、冷却効率を上げるべく、ノズル121から流下させる冷却油の供給量を所定量増大させてもよい。各サーバ装置27に対してそれぞれ個別にノズル121が割り当てられている場合は、ターゲットのサーバ装置27に対応するノズル121から冷却油を流下させればよい。
ステップS3の処理は、例えば、処理負荷取得部193Aが、ターゲットのサーバ装置27の情報処理量を監視し、情報処理量が所定値未満となるまで実施する。
【0050】
ステップS3の後、又はステップS2でNoと判定される場合、冷却指令部193Cは、記憶部192に記憶されている予測データを参照し(ステップS4)、所定時間後に温度が閾値以上となる(情報処理量が第二閾値以上となる)サーバ装置27が有るか否かを判定する(ステップS5)。なお、予測データは、上述したように、温度予測部193Bが、過去のサーバ装置27の情報処理量の変化から予測したサーバ装置27の温度を示すデータであり、一定周期で更新される。
【0051】
ステップS5において、Yesと判定された場合、冷却指令部193Cは、高負荷になると予測されたサーバ装置27をターゲットとして、ノズル制御機構122を制御してノズル121の角度を変更し、ターゲットのサーバ装置27に冷却油をかけ流す(ステップS6)。
ステップS6の処理は、予測データにおいて、情報処理量が閾値未満となる日時まで実施する。
【0052】
また、冷却制御部19は、ステップS5において、Noと判定された場合、又はステップS6の後、ステップS1に戻る。つまり、冷却装置10は、データセンター1における各サーバ装置27の情報処理量、及び、温度予測部193Bにより更新され続ける予測データを常時監視し、サーバ装置27の温度に応じて、高効率冷却と通常冷却とを切り替える。
【0053】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の冷却装置10は、サーバ装置27(電子機器)が配置された機器配置部242の上方に設けられ、サーバ装置27に対して冷却油を供給する冷却油供給部12と、機器配置部242の上方に設けられ、サーバ装置27に向かってエア(冷却気体)を供給するエア供給部13と、を備える。そして、冷却装置10の冷却制御部19は、サーバ装置27の状態(例えば、温度や情報処理量)に基づいて、冷却油供給部12から供給する冷却油や、エア供給部13から供給するエアの供給量を制御する。
【0054】
これにより、各サーバ装置27は、冷却油を用いた油冷と、エアを用いた空冷との併用によって冷却することができ、空冷のみによるサーバ装置27の冷却に比べて、高い冷却効率でサーバ装置27を冷却することができる。例えば、冷却油の供給量を、冷却油とエアの総供給量の50%以上にすることで、空冷のみの冷却に比べて2倍以上の冷却効果が得られ、冷却油の供給量を80%以上にすることで、3倍以上の冷却効果が得られる。
そして、サーバ装置27の状態に応じて、冷却油やエアの供給量を制御することで、冷却油のコストを抑制しつつ、各サーバ装置27に対して最適な冷却を行うことができる。すなわち、サーバ装置27に冷却油を常時供給し続ける構成や、サーバ装置27を冷却油に浸漬させる構成では、大量の冷却液が必要となり、その大量の冷却油を効率的に冷却するための大型の冷却機構も必要となる。これに対して、本実施形態では、サーバ装置27毎に適した量の冷却油を供給すればよいので、冷却油の使用量を大幅に減らすことができる。また、冷却油にサーバ装置27を浸漬される構成では、大量の冷却液が必要となり、その大量の冷却油を効率的に冷却するための大型の冷却機構も必要となるが、本実施形態では、サーバ装置27を浸漬する構成に比べて、大幅に必要とする冷却油の量を減らすことができる。また、サーバ装置27を浸漬する程の大量の冷却油を一度に冷却する必要もなく、小規模な冷却機構(油冷却部141)を設ければよい。したがって、冷却装置10に係るコストをさらに削減できる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、データセンター1に配置される多数のサーバ装置27を、冷却装置10によって高効率かつ低コストで冷却することができる。特に、AI技術の発展に伴い、サーバ室20にGPU(Graphics Processing Unit)を搭載したサーバ装置27が多数配置されることがある。このようなGPUによる処理をメインとするサーバ装置27は、従来のCPUによる処理をメインとしたサーバ装置27に比べて発熱量が高い。また、GPUの処理をメインとしたサーバ装置27の単価は、CPUによる処理をメインとしたサーバ装置27の単価に比べて高く、サーバ装置27の冷却に係るコストが高くなれば、その分、サーバ装置27の運用が困難となる。これに対して、本実施形態のデータセンター1においては、安価かつ高い冷却効率でサーバ装置27を冷却することができるので、GPUによる処理をメインとするサーバ装置27の運用費用を抑制でき、AI技術の発展により一層寄与できる。
【0056】
また、本実施形態では、サーバ装置27の熱を奪って加熱された冷却油は、貯油槽14に貯留され、貯油槽14の冷却油が液輸送部17により冷却油供給部12に送られる。すなわち、冷却油を再利用することで、新たな冷却油を導入する場合に比べて、資源の有効活用ができ、サーバ装置27の冷却に係るコストも削減できる。
【0057】
本実施形態では、データセンター1の床部21は、床面部24と床面部24の下方に設けられる循環室25とを備える。そして、この循環室25には、機器配置部242の下方から貯油槽14に亘って設けられ、機器配置部242から貯油槽14に向かって下方に傾斜する傾斜面111が設けられる。
これにより、冷却装置10において、サーバ装置27にかけ流された冷却油は、傾斜面111に流れ落ちたのち、当該傾斜面111の傾斜に沿って流されることで貯油槽14に送られる。この場合、例えばポンプ等の駆動源を用いて貯油槽14に送る構成に比べて、低コストで冷却液を回収することができる。また、床面部24の下方の循環室25に傾斜面111を設けることで、データセンター1のスペースの有効活用ができる。
【0058】
本実施形態では、サーバ装置27により加熱されたエアが回収されるエア回収部15と、エア回収部15のエアをエア供給部13に送り出すエア輸送部18(気体輸送部)と、をさらに備える。
これにより、サーバ装置27によって加熱されたエアは、エア回収部15に回収され、エア回収部15のエアがエア輸送部18によりエア供給部13に送られて再利用される。エアを外気から新たに導入する場合、外気に含まれる異物を除去するフィルタリング処理、外気に含まれる湿気を取り除く除湿処理等を実施する必要がある。無論、本実施形態のように、エアを循環させる場合でも、フィルタリング処理や除湿処理は必要となるが、エアに含まれる湿気や異物の量は、外気の場合に比べて極めて小さくなるので、フィルタリング処理や除湿処理に係るコストを大幅に低減できる。
【0059】
また、エア回収部15には、エア冷却部16が設けられる。このエア冷却部16は、エア回収部15の上方に設けられて、冷却油を供給する第二冷却油供給部162を備える。これにより、第二冷却油供給部162から供給される冷却油によりエアを冷却することができる。また、エアを冷却油で冷却するとともに、エアに含まれる粉塵等の異物を冷却油で洗い流すことができ、エアの異物除去のために、高性能なフィルターを導入する必要がなく、構成の簡略化及びコスト削減を図れる。
また、冷却油は、貯油槽14に接続された油冷却部141により冷却される際に、濾過部144により濾過され、冷却油から異物が除去される。これにより、エア及び冷却油の双方に異物が混入した場合でも、1つの濾過部144によって異物を取り除くことができる。
【0060】
本実施形態では、エア冷却部16は、冷却油充填板161(気液接触板)を備える。このような冷却油充填板161に冷却油をかけ流すことで、冷却油充填板161に冷却油が保持され、エアと冷却油との接触面積及び接触時間を増大でき、エアの冷却効率を高めることができる。
【0061】
そして、上記のようなエア回収部15及びエア冷却部16は、回収室11における貯油槽14の上方に配置される。
エア回収部15が貯油槽14の上方に設けられることで、循環室25を通り冷却液とともに流されるエアを効率よく回収できる。また、循環室25において、冷却油とエアとが流されることで、サーバ装置27で熱せられた冷却油の熱がエアに放熱されて冷却される。この場合、貯油槽14の冷却油は、ある程度温度が下がっているので、油冷却部141として高価な冷却設備を設ける必要がない。
エア冷却部16が貯油槽14の上方に設けられることで、エアを冷却するために用いた冷却油が直接貯油槽14に流れ落ちる。したがって、エアを冷却した冷却油を貯油槽14に戻す配管等の構成を別途必要とせず、冷却装置10及びデータセンター1における構造の簡素化を図れる。
【0062】
本実施形態の冷却油供給部12は、冷却油をサーバ装置27に対して流下させることで、サーバ装置27に対して直接かけ流す。
このようにサーバ装置27に冷却油をかけ流すことで、サーバ装置27に大量の冷却油が接触して、熱交換効率が向上し、サーバ装置27を効果的に冷却することができる。また、冷却油を霧状に噴霧させた場合、サーバ装置27で熱せられた霧状の冷却油が他のサーバ装置27に飛散することがあり、他のサーバ装置27の温度が上昇する可能性がある。これに対して、本実施形態では、霧状の冷却油の発生が抑制され、他のサーバ装置27の温度上昇を抑制できる。
【0063】
本実施形態の冷却装置10は、更に、冷却制御部19を備え、冷却制御部19は、サーバ装置27の温度に基づいて、冷却油供給部12による冷却油を流下させるサーバ装置27(供給対象)を変更する。つまり、冷却制御部19は、所定の閾値以上の温度のサーバ装置27に対して冷却油及びエアを供給する高効率冷却を実施する。
これにより、温度が高いサーバ装置27を集中的に冷却することができる。
【0064】
より具体的には、冷却制御部19は、閾値(所定値)以上の温度のサーバ装置27に対して冷却油及びエアを供給して油冷及び空冷を併用した高効率冷却を実施し、閾値未満の温度のサーバ装置27に対してエアを供給する空冷のみの通常冷却を実施する。
これにより、冷却油の使用量を必要最小限にすることができ、コスト削減を図ることができる。
また、冷却制御部19は、エアの供給系統に不都合が生じた場合(例えば、冷却ファン131の故障等が生じた場合)に、冷却油供給部12から冷却油を供給することで応急対応が可能となる。例えば、一部の冷却ファン131に回転不良が生じた場合、当該冷却ファン131による冷却対象のサーバ装置27に対して、冷却油による冷却を行う。また、一部の冷却ファン131においてエア導入方向の制御に不都合が生じた場合、エアの供給が不十分となるサーバ装置27に対して、冷却油による冷却を行う。さらには、エア輸送部18によるエアの輸送に不都合が生じ、エア供給部13からのエア供給量が減少している場合では、全てのサーバ装置27に対して、冷却油による冷却を行ってもよい。
【0065】
また、冷却制御部19は、サーバ装置27のインターネットを介した通信における通信量を含む情報処理量に基づいて温度を判定する。つまり、トラフィックデータが多いサーバ装置27では、多くの情報が処理されており、CPUの稼働率が高くなり、発熱量も多くなる。したがって、トラフィックデータを含む情報処理量に基づいて、サーバ装置27の温度を判定することで、高温のサーバ装置27を効果的に冷却できる。
【0066】
さらに、冷却制御部19は、情報処理量の経時変化に基づいて、サーバ装置27の温度が閾値以上となる高負荷日時を予測して、その高負荷日時の所定時間前から高負荷になると予測されるサーバ装置27に対して高効率冷却を実施する。
これにより、サーバ装置27による処理低下を未然に防ぐことができ、例えばインターネットを介してサービスを提供するサーバ装置27においては、負荷増大による処理能力の低下やサービス停止を抑制することができる。
【0067】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で、以下に示される変形をも含むものである。
【0068】
(変形例1)
上記実施形態において、ラック26は、複数のサーバ装置27を、Z方向(高さ方向)に並べて、水平に保持する構成を例示したが、これに限定されない。
図6は、変形例1に係るデータセンター1の概略構成である。
例えば、図6に示すように、薄型箱状のサーバ装置27を、床部21に対して垂直に(高さ方向がXY平面の面方向にとなるように)維持し、水平方向(床部21に対して平行な方向)に沿って、所定数のサーバ装置27を配置(収納)する構成としてもよい。つまり、上記実施形態で説明したようなラック26を横倒しにして用いてもよい。
【0069】
この場合、各サーバ装置27のそれぞれの位置に対向して、冷却油供給部12のノズル121を設けることができ、冷却油供給部12の冷却油の流下方向を変更する構成が不要にできる。無論、第一実施形態と同様に、冷却油供給部12の冷却油の流下方向を変更する構成を設けてもよく、この場合、ノズル121の数を少なくできる。
また、高さ方向に上記のようなラック26を複数個積層させてもよい。この際、上下に配置されるラック26において、サーバ装置27のXY位置を揃えることが好ましい。
【0070】
また、上記実施形態及び図6の例では、サーバ装置27をラック26内に収納して配置するが、例えば台座等にサーバ装置27等の電子機器が自由自在に配置される構成としてもよい。この場合、台座上の各電子機器に対して、冷却油供給部12及びエア供給部13が適宜最適な冷却油、エアが供給可能となるポジションが取れるようにすることで、冷却の実効を図ることができる。
例えば、冷却油供給部12のノズル121の角度、エア供給部13の冷却ファン131の角度が、台座上の各電子機器に向くように、ノズル121や冷却ファン131の可動角度範囲を設定する。この際、撮像装置等により台座上の電子機器の位置を撮像して、画像解析によって電子機器の正確な位置を特定したり、台座部に重量センサーを設けたりして、電子機器の位置を特定する。これにより、ノズル121の角度や冷却ファン31の角度を、台座上の所定の電子機器をターゲットとして、冷却油やエアの供給方向を制御することが可能となる。
また、冷却油供給部12は、台座に対してシャワー状に冷却油をかけ流して供給してもよい。この場合、台座単位で電子機器の冷却方式(高効率冷却か通常冷却か)を変更することができる。
【0071】
(変形例2)
上記実施形態において、冷却油供給部12が冷却油をサーバ装置27に直接かけ流す構成を例示したが、これに限定されず、例えば冷却油供給部12は、冷却油を霧状にして供給する(噴霧する)構成としてもよい。
冷却油を噴霧する構成では、冷却油の使用量をさらに減らすことができ、冷却油を用いた冷却装置10における更なるコストダウンを図ることができる。
【0072】
(変形例3)
上記実施形態において、サーバ室20と貯油槽14とを接続する排熱孔231に、デシカント空調機等により構成される除湿部30が設けられる例を示すが、除湿部30の位置としては、これに限定されない。
例えば、エア供給部13と、エア回収部15との間を接続するエア輸送部18に除湿部30が設けられ、サーバ装置27に吹き付けられる前にエアの除湿を行ってもよい。この場合、エアに含まれる水分によるサーバ装置27のショートをより確実に防止することができる。
また、循環室25内に除湿部30を設けてもよい。
さらに、これらのうちの複数個所に除湿部30を設けてもよい。例えば、排熱孔231の近傍、循環室25、及びエア輸送部18の3か所に除湿部30を設けてもよい。
【0073】
(変形例4)
上記実施形態では、床面部24の機器配置部242が、グレーチング等の連通床242Aを含んで構成される例を示したが、これに限定されない。例えば、機器配置部242が傾斜面を有し、その傾斜面の傾斜下方側に開口が設けられて、冷却油が開口から循環室25に流れ落ちる構成等としてもよい。
【0074】
また、床部21が、床面部24の下方に循環室25を備え、循環室25を通って冷却液やエアが回収室11に回収される例を示したが、これに限定されない。
例えば、サーバ室20の床部21が回収室11に向かって下方に傾斜する構成としてもよい。また、サーバ室20内に流下された冷却液を受ける樋(油受け)を設け、樋が回収室11に向かって傾斜する構成としてもよい。
【0075】
さらに、サーバ室20と回収室11とが離れた位置に配置されていてもよい。この場合、サーバ室20と回収室11とを結び、冷却油を回収室11に輸送する配管や、エアを回収室11に輸送するダクトが、別途、設けられていてもよい。
【0076】
さらには、回収室11に貯油槽14とエア回収部15とが設けられる例を示したが、冷却油が回収される貯油槽14と、エア回収部15とが別室に設けられる構成としてもよい。この場合、エア回収部15に設けられたエア冷却部16において用いた冷却油を貯油槽14に戻す配管等を別途設ける。
【0077】
(変形例5)
上記実施形態において、1つのサーバ室20と1つの回収室11が設けられる構成を例示したが、2つ以上のサーバ室20に隣接して回収室11が設けられる構成としてもよい。例えば、2つのサーバ室20の間に回収室11が設けられ、双方のサーバ室20において、流下された冷却液が回収室11の貯油槽14に回収される構成としてもよい。
【0078】
(変形例6)
上記実施形態において、冷却油供給部12から供給された冷却油が貯油槽14に回収された後、液輸送部17により冷却油供給部12に再度送られ、冷却油が循環することで再利用される構成を例示したが、これに限定されない。
例えば、データセンター1の外部から冷却油供給部12に冷却油が供給され、サーバ装置27を冷却した後の冷却油がデータセンター1の外部で処理される構成としてもよい。このような構成であっても、サーバ装置27に対して供給する冷却油とエアとの供給量をサーバ装置27の状態に応じて変化させることで、常時冷却油をサーバ装置27に供給し続ける構成に比べて、冷却油の供給コストを低減することができる。また、貯油槽14や油冷却部141をデータセンター1内に設ける必要がなく、データセンター1のスペースを有効活用することができる。
【0079】
また、エアに関しても同様であり、エア供給部13から供給されたエアがエア回収部15に回収された後、エア冷却部16で冷却された後、エア輸送部18によりエア供給部13に再度送られる構成を例示したが、これに限定されない。
例えば、サーバ室20と、データセンター1の外部とを連通する、吸気口及び排気口を設けてもよい。この場合、例えば、吸気口から導入された外気を除湿部30により除湿した後、エア供給部13からサーバ装置27に供給する。そして、サーバ装置27を冷却した外気を排気口からデータセンター1の外に排出する。
【0080】
(変形例7)
エア冷却部16としては、上記の構成に限定されない。
例えば、冷却油充填板161が設けられず、第二冷却油供給部162からシャワー状に流下される冷却油によりエアを冷却する構成としてもよい。
また、例えば、水冷等によって冷却されたダクト内にエアを通過させることでエアを冷却してもよい。この場合、エアの冷却時に生じる結露等を抑制するために、冷却されたエアを、例えばデシカント空調機等の除湿部に送り、除湿されたエアをエア供給部13に供給することが好ましい。
【0081】
(変形例8)
上記実施形態において、温度が閾値以上になると予測された場合に、油冷及び空冷を併用した高効率冷却を実施し、それ以外の通常時には、空冷による通常冷却を実施する例を示したが、これに限定されない。
例えば、常時、全てのサーバ装置27に対して油冷及び空冷を用いた高効率冷却を実施してもよい。この場合でも、大量の冷却油を必要とする冷却油浸漬型の冷却装置に比べて、冷却に係るコストは大幅に低減される。
さらに、温度に応じて、冷却油の供給量や、エアの供給量を更に細かく制御する構成としてもよい。例えば、サーバ装置27の予測温度を複数の温度帯に区分し、各温度帯に対応してそれぞれ冷却油の供給量及びエアの供給量が設定されていてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、高効率冷却として、冷却油及びエアによる冷却、通常冷却としてエアのみによる冷却を例示したが、これに限定されない。
例えば、冷却制御部19は、高効率冷却及び通常冷却の双方において、冷却油及びエアの双方を用いた冷却を行い、かつ、冷却油やエアの供給量を、サーバ装置27の温度に基づいて制御してもよい。例えば、温度が高い(或いは温度が高くなると予想される)サーバ装置27に対して、冷却油の供給量を増大させ、温度が低くなる程、冷却油の供給量を低減させる。また、エア供給部13によるエアの供給量においても、温度が高い(或いは温度が高くなると予想される)サーバ装置27ほど増大させてもよい。
あるいは、冷却油及びエアの供給量の比を変更してもよい。例えば温度が高い(或いは温度が高くなると予想される)サーバ装置27に対して、エアよりも冷却油の供給比率を高くし、サーバ装置27の温度が下がるほど、冷却油の供給比を下げてエアの供給比を上げるように制御してもよい。
【0083】
(変形例9)
冷却対象である電子機器としてサーバ装置27を例示したが、その他、如何なる電子機器を冷却対象としてもよい。例えば、データセンター1に設けられるルーター等の他の電子機器をも冷却装置10により冷却してもよい。
【0084】
(変形例10)
冷却油供給部12及びエア供給部13が、天井部22に設けられる例を示したが、これに限定されない。
冷却油供給部12やエア供給部13は、サーバ装置27に対して冷却油やエアを供給可能な位置に配置されていればよく、例えば、サーバ装置27の水平方向(横)や下方から冷却油やエアを吹き付ける構成等としてもよい。
また、ラック26内に、冷却油供給部12やエア供給部13を設ける構成としてもよい。この場合、冷却対象(ターゲット)に対してより近い位置から冷却油やエアを供給することができ、冷却効率を高めることができる。
【0085】
(変形例11)
冷却気体として、エア(空気)を例示したが、これに限定されない。例えば、炭酸ガス,フロン,ヘリウム、窒素等を用いてもよい。特にヘリウム等の不活性ガスや、化学的に安定している窒素等を用いることで、化学反応等により水が発生する不都合も防止され、安全性を向上させることができる。
【0086】
(変形例12)
冷却制御部19の冷却指令部193Cは、サーバ装置27の処理負荷(トラフィックデータ等を含む情報処理量)を監視し、処理負荷が第二閾値以上となるサーバ装置27を高効率冷却により冷却したが、これに限定されない。すなわち、本発明において、「電子機器の状態が、電子機器の温度が所定の閾値以上となる状態である場合」に、高効率冷却を実施し、「電子機器の状態が、電子機器の温度が閾値未満となる状態である場合」に、通常冷却を実施すればよい。電子機器の状態が、電子機器の温度が所定の閾値以上となる状態とは、上記実施形態のように、サーバ装置27の情報処理量が第二閾値以上となる場合に加え、サーバ装置27の温度自体が閾値以上となる場合も含まれる。
サーバ装置27の温度に基づいて高効率冷却及び通常冷却を切り替える場合では、各サーバ装置27や、各ラック26に温度センサーが設けられていてもよい。この場合、冷却指令部193Cは、温度センサーにより計測される温度に基づいて冷却手法を切り替える。例えば、サーバ装置27の温度が第三閾値以上となった場合、またはラック26の温度が第四閾値(第四閾値<第三閾値)となった場合に、高効率冷却を実施する。なお、第三閾値や第四閾値として、熱によるサーバ装置27の処理能力の低下がない温度が設定することが好ましい。これにより、サーバ装置27の温度が徐々に上昇した際、熱暴走等による影響が出る前に高効率冷却に切り替えることができる。
なお、冷却制御部19は、サーバ装置27の情報処理量(例えばCPU稼働率や、通信量)を監視し、情報処理量からサーバ装置27の温度を推定し、推定した温度に基づいて、高効率冷却と通常冷却とを切り替えてもよい。
【0087】
また、温度予測部193Bは、過去のサーバ装置27の情報処理量の経時変化から、将来のサーバ装置27の温度を予測した予測データを生成した。
これに対して、過去のサーバ装置27の情報処理量の経時変化から、将来のサーバ装置27の情報処理量を予測してもよい。さらには、過去のサーバ装置27の温度の経時変化に基づいて、将来のサーバ装置27の温度を予測してもよく、過去のサーバ装置27の温度の経時変化に基づいて、将来のサーバ装置27の情報処理量を予測してもよい。
すなわち、電子機器(サーバ装置27)の状態の経時変化に基づいて、電子機器の状態が、当該電子機器の温度が所定の閾値以上となる状態となる高負荷日時を予測すればよい。
【0088】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0089】
1…データセンター、10…冷却装置、11…回収室、12…冷却油供給部(液供給部)、13…エア供給部(気体供給部)、14…貯油槽(液槽部)、15…エア回収部(気体回収部)、16…エア冷却部(気体冷却部)、17…液輸送部、18…エア輸送部(気体輸送部)、19…冷却制御部、20…サーバ室、21…床部、22…天井部、23…壁部、23A…壁部、23B…壁部、23C…壁部、24…床面部、25…循環室、26…ラック、27…サーバ装置、30…除湿部、111…傾斜面、121…ノズル、122…ノズル制御機構、131…冷却ファン、132…ファン制御部、141…油冷却部、144…濾過部、161…冷却油充填板(気液接触板)、162…第二冷却油供給部、171…冷却油配管、172…ポンプ、193…制御部、193A…処理負荷取得部、193B…温度予測部、193C…冷却指令部、242…機器配置部、242A…連通床、243…熱仕切。
図1
図2
図3
図4
図5
図6