(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】加温時の温度ムラを抑制した加温販売用容器詰飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/44 20060101AFI20220523BHJP
A23L 2/70 20060101ALI20220523BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220523BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20220523BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220523BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20220523BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
A23L2/00 P
A23L2/00 K
A23L2/44
A23L2/00 Z
A23L2/02 A
A23L2/38 102
A23F3/16
A23F5/24
(21)【出願番号】P 2018041806
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】横山 小夜香
(72)【発明者】
【氏名】茶木 香保里
(72)【発明者】
【氏名】川上 広太
(72)【発明者】
【氏名】栗田 一平
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-011760(JP,A)
【文献】特開2016-086770(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010368(WO,A1)
【文献】特開2009-278970(JP,A)
【文献】特開2010-000038(JP,A)
【文献】特開2014-073119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
A23F 3/00-5/50
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料であって、
キサンタンガムを含有し、かつ、粘度が4.0mPa・s以上であ
り、かつ、セルロース系安定剤の合計濃度に対するキサンタンガムの合計濃度の比率が7以上であることを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料。
【請求項2】
飲料の液の高さが9cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項3】
飲料の液量が300mL以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項4】
セルロース系安定剤の合計濃度が0.03重量%未満であることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項5】
セルロース系安定剤が、発酵セルロース、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上で
ある請求項1~
4のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項6】
不溶性固形分濃度が3.75g/100mL以下であることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項7】
容器が、透明なプラスチック製ボトルであることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項8】
ココア飲料、茶飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、甘酒飲料、おしるこ飲料のいずれかであることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料。
【請求項9】
不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、
少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、
キサンタンガムを前記加温販売用容器詰飲料に含有させること
、及び、セルロース系安定剤の合計濃度に対するキサンタンガムの合計濃度の比率が7以上となるように調整することを含む方法によって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含むことを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料の製造方法。
【請求項10】
加温販売用容器詰飲料の液の高さが9cm以上であることを特徴とする請求項
9に記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法。
【請求項11】
工程Aが、前記加温販売用容器詰飲料におけるセルロース系安定剤の合計濃度を0.03重量%未満に調整すること、及び、
キサンタンガムを前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、セルロース系安定剤の合計濃度に対する
キサンタンガムの合計濃度の比率が7以上となるように調整することを含む方法によって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程であることを特徴とする請求項
9又は
10に記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法。
【請求項12】
加温販売用容器詰飲料における不溶性固形分濃度を3.75g/100mL以下に調整する工程Bをさらに含むことを特徴とする請求項
9~
11のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法。
【請求項13】
飲料がココア飲料、茶飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、甘酒飲料、おしるこ飲料のいずれかであることを特徴とする請求項
9~
12のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法。
【請求項14】
不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、
少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、
キサンタンガムを前記加温販売用容器詰飲料に含有させること
、及び、セルロース系安定剤の合計濃度に対するキサンタンガムの合計濃度の比率が7以上となるように調整することによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含むことを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加温(50~70℃)状態で販売に供される加温販売用容器詰飲料、特に、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料であって、保温ケースによる加温時の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制した加温販売用容器詰飲料、及びその製造方法、並びに、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
容器詰飲料には、冷却(0~10℃)状態で販売に供されるチルド飲料が多いが、加温(50~70℃)状態で販売に供される加温販売用容器詰飲料もある。近年は、消費者の嗜好の多様化から、そのニーズに対応して、加温販売用容器詰飲料として、容器詰ココア飲料、容器詰茶飲料、容器詰コーヒー飲料など、各種の飲料が提供されている。かかる加温販売用容器詰飲料には、その液温の高さからもたらされる、あたたまり感、リラックス感等があり、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストア等の店舗において広く販売されている。
【0003】
これらの店舗において、加温販売用容器詰飲料は、容器詰飲料用の保温ケースに入れて容器詰飲料を加温して販売されることが多い。一般に用いられているほとんどの保温ケースでは、保温ケース内で容器詰飲料を載せる板状の部分(例えば鉄板)が加熱されることにより、容器詰飲料の加温(保温も含む)を行っているため、加温販売用容器詰飲料は、保温ケースにおいて、底部が主に加熱される。
【0004】
ところで、容器詰ココア飲料、コーヒー飲料、抹茶入り飲料など、不溶性固形分の多い容器詰飲料では、沈殿などが問題となり易く、特に容器が透明である場合はその外観品質も低下するため、問題が特に大きくなる。そのため、一般的には、発酵セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系の安定剤が、沈殿抑制の目的で用いられている。例えば特許文献1には、ショ糖脂肪酸エステル1~25重量%、グリセリン脂肪酸エステル3~36重量%、ソルビタン脂肪酸エステル1~11重量%、結晶セルロース26~90重量%、及びκ-カラギーナン2~5重量%を必須成分として含有するココア飲料用乳化安定剤が開示されている。また、特許文献2には、微生物由来のセルロースと高分子物質とを複合化して得られる複合化物を含有することを特徴とする食品の分散安定用組成物が開示されており、かかる高分子物質として、カルボキシメチルセルロースナトリウム,キサンタンガム,アルギン酸ナトリウムおよびカラヤガムが挙げられており、かかる食品として、ココア飲料、コーヒー飲料等が挙げられている。また、特許文献3には、ネイティブジェランガム、ペクチン及び大豆多糖類からなる群から選択される少なくとも一種の高分子物質と発酵セルロースを含有する食品の分散安定化組成物が開示されており、かかる食品として、ココア飲料、コーヒー飲料、抹茶入り飲料、豆乳飲料等が挙げられている。また、特許文献4には、水もしくは湯に対して不溶性の固形物の粉末状もしくはペースト状物と安定剤とを水もしくは湯に加え、ホモジナイズ処理した後、当該処理液に糖類、香料等の常用成分を加えて調合することを特徴とする不溶性固形物入り飲料の製造方法が開示されており、前述の安定剤として、セルロース、カラギナン、ジェランガム、キサンタンガム等が挙げられており、また、前述の不溶性固形物として、ココア、コーヒー、抹茶、ゴマ、栗、ウコンおよび芋類の中から選ばれた1種または2種以上の粉末状もしくはペースト状の物質が挙げられている。
【0005】
しかし、セルロース系安定剤を含有し、不溶性固形分の多い加温販売用容器詰飲料を保温ケース内に入れて、加温(保温も含む)した場合に、かかる容器詰飲料の底部の液温と上部の液温の差(温度ムラ)が特に大きくなるという問題点があること等は知られていなかった。また、かかる温度ムラが、少なくとも1種のセルロース系安定剤と、少なくとも1種の増粘多糖類とを併用し、かつ、飲料の粘度を4.0mPa・s以上とすることによって抑制することができることも知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-125711号公報
【文献】特開平9-121787号公報
【文献】特開平11-178517号公報
【文献】特開2001-29053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したような背景技術の状況下、本発明者らは、不溶性固形分を含有する加温販売用容器詰飲料と、該飲料にセルロース系安定剤を添加した加温販売用容器詰飲料とを保温ケース内に入れて加温した後、各加温販売用容器詰飲料について外観品質の劣化の評価を行うと共に、各加温販売用容器詰飲料の底部の液温と上部の液温の差(温度ムラ)を測定を行った。その結果、「セルロース系安定剤の濃度」及び「飲料の液高」に依存して、温度ムラが増加するという課題があること、特に液高が9cm以上(特に11cm以上)である場合、セルロース系安定剤の濃度が増加すると、温度ムラがより顕著に増加するという課題があることを新たに見いだした。このように、本発明者らは、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料には、保温ケースによる加温時の温度ムラが増加するという新規な課題があること、特に液高が9cm以上(特に11cm以上)である場合に、その温度ムラがより顕著に増加するという新規な課題があることを発見した。
【0008】
本発明の課題は、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料であって、保温ケースによる加温時の外観品質の劣化及び温度ムラが抑制された加温販売用容器詰飲料;及びその製造方法;並びに、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法;を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料において、保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法について様々な検討を行ったところ、少なくとも1種のセルロース系安定剤と少なくとも1種の増粘多糖類を加温販売用容器詰飲料に含有させ、かつ、該加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上に調整することによって、保温ケースで加温した際の外観品質の劣化を抑制しつつ、保温ケースで加温した際の温度ムラを抑制することができることを新たに見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料であって、少なくとも1種の増粘多糖類を含有し、かつ、粘度が4.0mPa・s以上であることを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料;
(2)飲料の液の高さが9cm以上であることを特徴とする上記(1)に記載の加温販売用容器詰飲料;
(3)飲料の液量が300mL以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の加温販売用容器詰飲料;
(4)セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率が、7以上であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料;
(5)セルロース系安定剤の合計濃度が0.03重量%未満であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料;
(6)セルロース系安定剤が、発酵セルロース、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上であり、増粘多糖類が、キサンタンガム、カラギナン、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びタラガムからなる群から選択される1種又は2種以上である上記(1)~(5)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料;
(7)不溶性固形分濃度が3.75g/100mL以下であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料;
(8)容器が、透明なプラスチック製ボトルであることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料;
(9)ココア飲料、茶飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、甘酒飲料、おしるこ飲料のいずれかであることを特徴とする上記(1)~(8)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料。
(10)不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、
少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させることを含む方法によって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含むことを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料の製造方法;
(11)加温販売用容器詰飲料の液の高さが9cm以上であることを特徴とする上記(10)に記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法;
(12)工程Aが、前記加温販売用容器詰飲料におけるセルロース系安定剤の合計濃度を0.03重量%未満に調整すること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率が7以上となるように調整することを含む方法によって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程であることを特徴とする上記(10)又は(11)に記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法;
(13)加温販売用容器詰飲料における不溶性固形分濃度を3.75g/100mL以下に調整する工程Bをさらに含むことを特徴とする上記(10)~(12)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法;
(14)飲料がココア飲料、茶飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、甘酒飲料、おしるこ飲料のいずれかであることを特徴とする上記(10)~(13)のいずれかに記載の加温販売用容器詰飲料の製造方法;及び、
(15)不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、
少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させることによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含むことを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法;
等に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料であって、保温ケースによる加温時の外観品質の劣化及び温度ムラが抑制された加温販売用容器詰飲料;及びその製造方法;並びに、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法;を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、
[1]不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料であって、少なくとも1種の増粘多糖類を含有し、かつ、粘度が4.0mPa・s以上であることを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料(以下、「本発明の容器詰飲料」とも表示する。);
[2]不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、
少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させることによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含むことを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[3]不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、
少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させることによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含むことを特徴とする、前記加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法(以下、「本発明の温度ムラ等の抑制方法」とも表示する。);
などの実施態様を含んでいる。
なお、本明細書において、「~」で表された数値範囲には、特に言及がない限り、「~」の両端の数値も当然含まれる。また、本明細書中、容器詰飲料用の保温ケースは、保温ケース内で容器詰飲料を載せる板状の部分(以下、「板状の加熱板」とも表示する。)が加熱される方式の保温ケースを表す。
【0013】
(加温販売用容器詰飲料)
本発明において「加温販売用容器詰飲料」とは、加温(50~70℃)状態で、販売に供される容器詰飲料を意味する。「加温販売用容器詰飲料」としては、加温状態でのみ販売に供される容器詰飲料に限られず、加温状態で販売に供されることがある容器詰飲料であればよい。
【0014】
(セルロース系安定剤)
本発明における「セルロース系安定剤」としては、発酵セルロース、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、中でも、発酵セルロース、及びそれらの塩からなる群から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられ、中でも、発酵セルロースがより好ましく挙げられる。なお、本発明に用いる「セルロース系安定剤」は、1種類であっても2種類以上であってもよい。上記の塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩などの一価金属塩)、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられ、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0015】
セルロース系安定剤は、市販されているものを用いることができる。
【0016】
本発明の加温販売用容器詰飲料中のセルロース系安定剤の合計濃度としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、また、加温販売用容器詰飲料中の増粘多糖類の合計濃度や、不溶性固形分濃度や、セルロース系安定剤の種類等にも左右されるため一概に規定することはできないが、上限濃度としては、例えば0.03重量%未満、好ましくは0.02重量%未満、より好ましくは0.015重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%未満が挙げられ、また、下限濃度としては、例えば0.0001重量%以上、好ましくは0.0003重量%以上、より好ましくは0.0005重量%以上が挙げられる。
【0017】
(増粘多糖類)
本発明における「増粘多糖類」としては、キサンタンガム、カラギナン、アラビアガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム及びタラガムからなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、中でもキサンタンガムがより好ましく挙げられる。なお、本発明に用いる「増粘多糖類」は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0018】
増粘多糖類は、市販されているものを用いることができる。
【0019】
本発明の加温販売用容器詰飲料中の増粘多糖類の合計濃度としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、また、加温販売用容器詰飲料中のセルロース系安定剤の合計濃度や、不溶性固形分濃度や、増粘多糖類の種類等にも左右されるため一概に規定することはできないが、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から、下限濃度として例えば0.025重量%以上、好ましくは0.04重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上が挙げられ、上限濃度として例えば0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下が挙げられる。
【0020】
本発明の加温販売用容器詰飲料中の、セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から、かかる比率の下限として、例えば7以上、好ましくは10以上、より好ましくは13以上、さらに14以上が挙げられ、加温販売用容器詰飲料の食感をあまり大きく変化させない観点から、比率の上限として、例えば269以下、好ましくは150以下、より好ましくは55以下が挙げられる。
【0021】
本発明において、セルロース系安定剤と増粘多糖類は、セルロース系安定剤と増粘多糖類とを複合化して得られる複合化物ではないことが好ましい。
【0022】
(粘度)
本発明の加温販売用容器詰飲料の粘度としては、4.0mPa・s以上である限り特に制限されないが、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から、好ましくは4.5mPa・s以上、より好ましくは5.0mPa・s以上が挙げられ、加温販売用容器詰飲料の食感をあまり大きく変化させない観点から、粘度の上限として例えば10mPa・s以下、好ましくは7.5mPa・s以下、より好ましくは5.4mPa・s以下が挙げられる。
【0023】
本発明の加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上等に調整する方法としては、少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること(好ましくは、加温販売用容器詰飲料に含有させる少なくとも1種のセルロース系安定剤の量を調整して、該加温販売用容器詰飲料おけるセルロース系安定剤の合計濃度を調整すること、より好ましくは該合計濃度を0.03重量%未満に調整すること)、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること(好ましくは、加温販売用容器詰飲料に含有させる少なくとも1種の増粘多糖類の量を調整して、該加温販売用容器詰飲料おける増粘多糖類の合計濃度を調整すること、より好ましくは該合計濃度を0.025重量%以上に調整すること)を含む方法が挙げられ、中でも、少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること(好ましくは、加温販売用容器詰飲料に含有させる少なくとも1種のセルロース系安定剤の量を調整して、該加温販売用容器詰飲料おけるセルロース系安定剤の合計濃度を調整すること、より好ましくは該合計濃度を0.03重量%未満に調整すること)、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること(好ましくは、加温販売用容器詰飲料に含有させる少なくとも1種の増粘多糖類の量を調整して、該加温販売用容器詰飲料おける増粘多糖類の合計濃度を調整すること、より好ましくは該合計濃度を0.025重量%以上に調整すること)、及び、セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率が7以上となるように調整することをを含む方法が好ましく挙げられる。なお、セルロース系安定剤や増粘多糖類の合計濃度をどの程度の濃度に調整するかという具体例や、セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率をどの程度の数値に調整するかという具体例は、前述の数値を用いることができる。
【0024】
本発明における加温販売用容器詰飲料の「粘度(mPa・s)」とは、以下の測定方法により測定した飲料の粘度(mPa・s)を意味する。
飲料を、目開き75μm及び線径50μmのメッシュに通して前処理を行う。前処理を行って得られた液体を以下の設定条件の粘度計で測定する。
粘度計設定:キャピラリー1.8mm;ボール直径1.5mm;ボール密度7.66g/cm3;角度70度
【0025】
(不溶性固形分)
本発明における「不溶性固形分」としては、容器詰飲料に添加可能な水に不溶又は水に難溶性である固形分であれば特に限定されず、例えば、ココア、抹茶、コーヒー、ごま、大豆、あずき等の粉末に含まれる不溶性固形分;果物の果肉若しくは果汁の繊維分、野菜の葉、根、果肉若しくは果汁の繊維分;不溶性カルシウム成分の粉末である不溶性固形分;等を例示することができ、中でも、ココア粉末、抹茶粉末、コーヒー粉末に含まれる不溶性固形分;果物の果肉若しくは果汁の繊維分;が好ましく挙げられる。なお、本発明に用いる「不溶性固形分」は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0026】
本発明における「不溶性固形」としては、市販されているものを用いることができる。
【0027】
本発明の加温販売用容器詰飲料における不溶性固形分の上限濃度としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、かかる上限濃度は、不溶性固形分の種類や、飲料の種類等にも左右されるため一概に規定することはできないが、当業者はその上限濃度を適宜設定することができる。かかる上限濃度としては、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から、好ましくは3.75g/100mL以下、より好ましくは3.6g/100mL以下、さらに好ましくは3.1g/100mL以下、より好ましくは2.52g/100mL以下が挙げられる。本発明の加温販売用容器詰飲料における不溶性固形分の下限濃度としては、特に制限されないが、外観品質の劣化を抑制するために、セルロース系安定剤を含有させる意義がより大きくなるという観点から、好ましくは0.1g/100mL以上、より好ましくは0.2g/100mL以上、さらに好ましくは0.3g/100mL以上が挙げられる。
【0028】
本発明における加温販売用容器詰飲料の「不溶性固形分の濃度(g/100mL)」とは、以下の測定方法により測定した不溶性固形分の濃度(g/100mL)を意味する。
飲料を遠心用のチューブに入れ、20℃条件下、2500gで20分間、遠心処理を行った後、チューブを10秒間逆さまにして、チューブから沈殿を残して上清を除去する。そのチューブを乾燥機内に入れて85℃で24時間静置し、沈殿を乾燥させる。その沈殿の重量を計測し、飲料100mLあたりの不溶性固形分量(g)を算出する。
【0029】
本発明における加温販売用容器詰飲料の不溶性固形分濃度を例えば3.75g/100mL以下等に調整する方法としては、加温販売用容器詰飲料の製造に際して使用する不溶性固形分の量を一定量以下に調整する方法が挙げられる。
【0030】
本発明における加温販売用容器詰飲料の液面の高さ(「液高」)としては、特に制限されないが、加温時の温度ムラがより大きく、本発明の効果をより多く享受できることから、好ましくは9cm以上、より好ましくは10cm以上、より好ましくは11cm以上、さらに好ましくは13cm以上が挙げられる。液高の上限は特に制限されないが、例えば25cm以下、20cm以下、18cm以下等が挙げられる。液面の高さは、用いる容器の高さや、容器に入れる飲料の液量を調整することにより調整することができる。なお、本発明において「液高」とは、加温販売用容器詰飲料の底部から液面までの垂直方向の高さ(cm)を意味する。
【0031】
本発明における加温販売用容器詰飲料の液量としては、特に制限されないが、加温時の温度ムラがより大きくなり易く、本発明の効果をより多く享受できることから、好ましくは300mL以上、より好ましくは350mL以上、さらに好ましくは370mL以上、より好ましくは430mL以上が挙げられる。液量は、容器に入れる飲料の液量や、容器の容量を調整することにより調整することができる。
【0032】
本発明における加温販売用容器詰飲料の容器としては、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、外観品質の劣化が目立ちやすく、かつ、温度ムラがより大きくなり易いため、本発明の効果をより多く享受できることから、透明なプラスチック製ボトルが好ましく挙げられる。
【0033】
本発明において、「保温ケースによる加温時の外観品質の劣化が抑制された」加温販売用容器詰飲料とは、少なくとも1種のセルロース系安定剤と、少なくとも1種の増粘多糖類のいずれも含有させないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度になるように用いて同じ製法で製造した、加温販売用容器詰飲料(以下、「対照加温販売用容器詰飲料A」とも表示する。)と比較して、外観品質の劣化が抑制された加温販売用容器詰飲料を意味する。ここで「外観品質の劣化」とは、加温販売用容器詰飲料内の飲料に「沈殿」又は「液層の分離」が観察されることを意味する。本発明における「保温ケースによる加温時の外観品質の劣化が抑制された」加温販売用容器詰飲料として、より具体的には、保温ケース内の板状の加熱板上に加温販売用容器詰飲料を載置し、設定温度(50~70℃)で150時間加温した後に飲料を観察した場合に、「沈殿」が明確には観察されず、かつ、「液層の分離」も明確には観察されない加温販売用容器詰飲料(すなわち、表2の評価基準で「〇」又は「△」の加温販売用容器詰飲料)が便宜上挙げられ、中でも、「沈殿」及び「液層の分離」のいずれも観察されない加温販売用容器詰飲料(すなわち、表2の評価基準で「〇」の加温販売用容器詰飲料)が好ましく挙げられる。
【0034】
本発明において、「保温ケースによる加温時の温度ムラが抑制された」加温販売用容器詰飲料とは、前述の対照加温販売用容器詰飲料Aと比較して、保温ケースによる加温時の温度ムラが抑制された加温販売用容器詰飲料;又は、少なくとも1種の増粘多糖類を含有させないこと以外は、同種の原料を同じ最終濃度になるように用いて同じ製法で製造した、加温販売用容器詰飲料(以下、「対照加温販売用容器詰飲料B」とも表示する。)と比較して、保温ケースによる加温時の温度ムラが抑制された加温販売用容器詰飲料;を意味する。ここで、「保温ケースによる加温時の温度ムラ」(℃)とは、加温販売用容器詰飲料において保温ケースでより強く加温される部分に近い部分の飲料の液温(℃)から、保温ケースでより強く加温される部分から遠い部分の飲料の液温(℃)を減じた数値(℃)を意味し、より具体的には、加温販売用容器詰飲料のボトル底面から約1cmの高さの部分の飲料の液温(「下層部の液温」)(℃)から、加温販売用容器詰飲料の液面から深さ約1cmの部分の飲料の液温(「上層部の液温」)(℃)を減じた数値(℃)を意味する。
【0035】
本発明における「保温ケースによる加温時の温度ムラが抑制された」加温販売用容器詰飲料の好適な例として、液高が11.5cm未満(好ましくは5cm以上11.5cm未満)の加温販売用容器詰飲料である場合は、以下の条件で測定及び算出した「温度ムラの差」(℃)が好ましくは+3℃以下、より好ましくは+2℃以下である加温販売用容器詰飲料が挙げられ、液高が11.5cm以上(好ましくは11.5~15cm)の加温販売用容器詰飲料である場合は、以下の条件で測定した「温度ムラの差」(℃)が好ましくは+8℃以下、より好ましくは+6℃以下である加温販売用容器詰飲料が挙げられる。
【0036】
(温度ムラの差の算出方法)
加温販売用容器詰飲料とその対照加温販売用容器詰飲料A(セルロース系安定剤及び増粘多糖類のいずれも含まない加温販売用容器詰飲料)とを、保温ケース内の板状の加熱板上に載置した後、その保温ケースの設定温度を70℃にセットして加温を開始する。加温開始から150時間後に保温ケース内から各容器詰飲料を取り出し、個々の容器詰飲料の温度ムラ(℃)を測定する。この温度ムラ(℃)は、容器詰飲料のボトル底面から約1cmの高さの部分の飲料の液温(「下層部の液温」)(℃)から、その容器詰飲料の液面から深さ約1cmの部分の飲料の液温(「上層部の液温」)(℃)を減じた数値(℃)である。ある加温販売用容器詰飲料の温度ムラの数値(℃)から、その対照加温販売用容器詰飲料Aの温度ムラの数値(℃)を減じた数値(℃)を、その加温販売用容器詰飲料の温度ムラの差(℃)とする。
【0037】
本発明の加温販売用容器詰飲料は、本発明の効果が得られる限り、飲料に通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、着色料などの任意成分を含有することができる。
【0038】
(加熱殺菌処理)
本発明における加温販売用容器詰飲料は、製造工程において加熱殺菌処理された加温販売用容器詰飲料であってもよい。加熱殺菌する方法としては、特に制限されず、例えば、高温短時間殺菌法(HTST法)、パストライザー殺菌法、超高温加熱処理法(UHT法)等を挙げることができる。
【0039】
本発明における加温販売用容器詰飲料の種類としては、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料である限り特に制限されず、例えば、ココア飲料、茶飲料、果汁飲料、コーヒー飲料、甘酒飲料、おしるこ飲料が挙げられ、中でも、ココア飲料が好ましく挙げられる。
【0040】
(本発明の加温販売用容器詰飲料の製造方法)
本発明の加温販売用容器詰飲料の製造方法(本発明の製造方法)としては、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させることを含む方法によって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含んでいる限り特に制限されない。本発明の製造方法は、かかる工程Aを含んでいること以外は、通常の加温販売用容器詰飲料の製造手順に従うことができる。
【0041】
加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上等に調整する方法は前述したとおりであるが、より具体的には、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造に際して、前記加温販売用容器詰飲料の製造原料(例えば、「水」、「不溶性固形分(好ましくは不溶性固形分を含む製造原料)を含有する水」、あるいは「これら2種のいずれかの水に任意成分の一部又は全部をさらに含有させた水」)に、少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有させ(好ましくは添加し)、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を含有させる(好ましくは添加する)ことによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する方法が挙げられ、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から、好ましくは、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造に際して、前記加温販売用容器詰飲料の製造原料に、少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有させて(好ましくは添加して)加温販売用容器詰飲料おけるセルロース系安定剤の合計濃度を調整し(より好ましくは該合計濃度を0.03重量%未満となるように調整し)、かつ、少なくとも1種の増粘多糖類を含有させて(好ましくは添加して)加温販売用容器詰飲料おける増粘多糖類の合計濃度を調整し(より好ましくは該合計濃度を0.025重量%以上となるように調整し)、かつ、前記加温販売用容器詰飲料におけるセルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率が7以上となるように調整することによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する方法が挙げられる。なお、セルロース系安定剤や増粘多糖類の合計濃度をどの程度の濃度に調整するかという具体例や、セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率をどの程度の数値に調整するかという具体例は、前述の数値を用いることができる。
【0042】
本発明の製造方法は、さらに、加温販売用容器詰飲料における不溶性固形分濃度を3.75g/100mL以下に調整する工程Bを含んでいることが、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から好ましい。
【0043】
(本発明の加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法)
本発明の加温販売用容器詰飲料を保温ケースで加温した際の外観品質の劣化及び温度ムラを抑制する方法(本発明の温度ムラ等の抑制方法)としては、不溶性固形分及び少なくとも1種のセルロース系安定剤を含有する加温販売用容器詰飲料の製造において、少なくとも1種のセルロース系安定剤を前記加温販売用容器詰飲料に含有させること、及び、少なくとも1種の増粘多糖類を前記加温販売用容器詰飲料に含有させることによって、前記加温販売用容器詰飲料の粘度を4.0mPa・s以上となるように調整する工程Aを含んでいる限り特に制限されない。
【0044】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
1.[セルロース系安定剤を用いた容器詰ココア飲料における外観品質の劣化と温度ムラの評価]
不溶性固形分の沈殿が問題となり得る容器詰飲料として、容器詰ココア飲料を用意した。かかる容器詰ココア飲料においてセルロース系安定剤を用いた場合に、セルロース系安定剤を用いなかった場合と比較して、外観品質の劣化と温度ムラがどのようであるか、以下のように評価を行った。
【0046】
(発酵セルロースを含む容器詰ココア飲料の調製)
ココアパウダー10gを1Lのお湯に溶解し、ココア溶液を調製した。ココア溶液を半分ずつに分けて、安定剤である発酵セルロースをそれぞれ添加し、発酵セルロース濃度が0.00374重量%であるココア溶液(以下、「ココア溶液A」とも表示する。)と、発酵セルロース濃度が0.0112重量%であるココア溶液(以下、「ココア溶液B」とも表示する。)を調製した。500mL容のペットボトルを6本用意し、そのうち3本にココア溶液Aを、残りの3本にココア溶液Bを、後述の表1記載の液量(mL)及び液高(cm)となるようにそれぞれ注ぎ入れ、表1の試験区1~6の容器詰ココア飲料を調製した。なお、容器詰ココア飲料におけるココア溶液の液高は、容器の底部からココア溶液の液面までの高さを表す。
【0047】
(発酵セルロースを含まない対照容器詰ココア飲料の調製)
発酵セルロースを添加しなかったこと以外は同じ方法で、対照容器詰ココア飲料を調製した。すなわち、ココアパウダー10gを1Lのお湯に溶解したココア溶液を、500mL容の3本のペットボトルに注ぎ入れ、3種類の対照容器詰ココア飲料(液量500mLで液高15cmの対照容器詰ココア飲料;液量370mLで液高11cmの対照容器詰ココア飲料;液量280mLで液高7cmの対照容器詰ココア飲料)を調製した。
【0048】
(容器詰ココア飲料の加温)
容器詰飲料用の市販の保温ケースを用意した。かかる保温ケースは、保温ケース内で容器詰飲料を載せる鉄板部分が加熱される方式の保温ケースである。保温ケース内の鉄板上に、前述の試験区1~6の容器詰ココア飲料及び3種の対照容器詰ココア飲料(以下、併せて「容器詰ココア飲料等」とも表示する。)を載置した後、その保温ケースの設定温度を70℃にセットして加温を開始した。加温開始から150時間後に保温ケース内から容器詰ココア飲料等を取り出し、個々の容器詰ココア飲料等の上層部と下層部の温度ムラを測定した。上層部と下層部の温度ムラは以下のような方法で測定した。
【0049】
(温度ムラの測定方法)
容器詰ココア飲料等の液面から深さ約1cmの部分のココア溶液の液温を測定し、その液温をその容器詰ココア飲料等の上層部の液温とした。また、容器詰ココア飲料等のボトル底面から約1cmの高さの部分のココア溶液の液温を測定し、その液温をその容器詰ココア飲料等の下層部の液温とした。その容器詰ココア飲料等の下層部の液温から上層部の液温を減じた数値を、その容器詰ココア飲料等の温度ムラ(℃)とした。
【0050】
(温度ムラ(℃)の差の算出方法)
ある容器詰ココア飲料と、液高(cm)及び液量(mL)が同じ対照容器詰ココア飲料を、「対応する対照容器詰ココア飲料」と表示する。ある容器詰ココア飲料の温度ムラの数値(℃)から、対応する対照容器詰ココア飲料の温度ムラの数値(℃)を減じた数値(℃)を、その容器詰ココア飲料の「温度ムラの差(℃)」と表す。温度ムラの差の数値が大きいほど、発酵セルロース等のセルロース系安定剤の添加によって温度ムラが増加したことを示す。
【0051】
前述の試験区1~6の容器詰ココア飲料における温度ムラの差(℃)を算出した結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1の結果から、「セルロース系安定剤である発酵セルロースの濃度」及び「飲料の液高」に依存して、加温時の温度ムラの差(℃)が増加することが示された。また、液高が増加するにつれて、セルロース系安定剤である発酵セルロース濃度が増加した際の、温度ムラの差の増加の程度が大きくなることが示された。特に、液高が9cm以上(特に11cm以上)である場合、セルロース系安定剤である発酵セルロース濃度が増加すると、温度ムラの差がより顕著に増加することが明らかとなった。
【0054】
これらのことから、不溶性固形分の沈殿が問題となり得る加温販売用容器詰飲料(例えば加温販売用容器詰ココア飲料等)には、「セルロース系安定剤である発酵セルロースの濃度」及び「飲料の液高」に依存して、加温時の温度ムラの差(℃)が増加するという課題、より具体的には、液高が増加するにつれて、セルロース系安定剤である発酵セルロース濃度が増加した際の、温度ムラの差の増加の程度が大きくなるという課題、より具体的には、液高が9cm以上(特に11cm以上)である場合、セルロース系安定剤である発酵セルロース濃度が増加すると、温度ムラの差がより顕著に増加するという課題があることを本発明者らは見いだした。温度ムラが大きくなると、加温販売用容器詰飲料の上層部の液温が下層部の液温と比べて低い程度が大きくなるため、飲用者の嗜好性を損なうこととなる。現在市販されている加温販売用容器詰飲料は一般的に、チルド販売用容器詰飲料よりも液面が低く、特に、不溶性固形分の沈殿が問題となり得る加温販売用容器詰飲料(例えば加温販売用容器詰ココア飲料等)は一般的に液面が9cm未満あるいは11cm未満であることが多い。したがって、不溶性固形分の沈殿が問題となり得る加温販売用容器詰飲料における前述の課題は、本発明者らが新たに見いだした課題である。
【0055】
(外観品質の劣化の評価)
なお、前述の加温後の試験区1~6の容器詰ココア飲料について、以下の表2に記載の評価基準で飲料の外観品質の劣化を評価した。
【0056】
【0057】
外観品質の劣化の評価結果を表1に示す。表1から分かるように、加温後の試験区1~6の容器詰ココア飲料では、「沈殿」及び「液層の分離」のいずれも観察されなかった。
【0058】
2.[容器詰ココア飲料の外観品質の劣化と温度ムラへの、セルロース系安定剤とキサンタンとの併用による影響]
容器詰ココア飲料の外観品質の劣化と温度ムラに対して、セルロース系安定剤である発酵セルロースと、増粘多糖類であるキサンタンとを併用すること等がどのように影響するかを調べるために、以下の実験を行った。
【0059】
(発酵セルロース及びキサンタンを含む容器詰ココア飲料の調製)
ココアパウダー10gを1Lのお湯に溶解し、ココア溶液を調製した。次いで、ココア溶液に発酵セルロース及び/又はキサンタンを添加して、発酵セルロース及びキサンタンの濃度が後述の表3に記載の濃度である各ココア溶液を調製した。500mL容のペットボトルにこれらの各ココア溶液を、液量370mL及び液高11cmとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、表3の試験区7~11の容器詰ココア飲料を調製した。
【0060】
試験区7~11の容器詰ココア飲料の粘度を以下の測定方法で測定した。各容器詰ココア飲料の粘度を表3に示す。
容器詰ココア飲料の粘度を測定する直前に、目開き75μm及び線径50μmのメッシュを通して前処理を行った。前処理した液体を、以下の設定条件の粘度計で測定した。
粘度計設定:キャピラリー1.8mm;ボール直径1.5mm;ボール密度7.66g/cm3;角度70度
【0061】
試験区7~11の容器詰ココア飲料の温度ムラの差(℃)を、実施例の上記「1.」に記載の方法で測定した。なお、本試験における対照容器詰ココア飲料は、発酵セルロース、キサンタンのいずれも添加せずに調製した容器詰ココア飲料であり、具体的には、ココアパウダー10gを1Lのお湯に溶解したココア溶液を、500mL容のペットボトルに370mL注ぎ入れ、液高11cmとした容器詰ココア飲料である。試験区7~11の容器詰ココア飲料について測定した温度ムラの差(℃)を表3に示す。また、試験区7~11の容器詰ココア飲料の外観品質の劣化を、実施例の上記「1.」に記載の方法で評価した結果も表3に示す。
【0062】
【0063】
表3の試験区8の容器詰ココア飲料は、表1の試験区3の容器詰ココア飲料(キサンタンは添加せず、発酵セルロースを添加)に、キサンタンを0.0546重量%となるように添加した容器詰ココア飲料である。試験区3では+4.5cmであった温度ムラの差(℃)が、試験区8では+2.8cmにまで大幅に(割合で約38%)減少した。一方、表3の試験区11は、発酵セルロースを添加せず、キサンタンを添加した試験区11の容器詰ココア飲料では、温度ムラの差(℃)は低いものの、「沈殿」及び「液層の分離」が明確に観察され、外観品質の評価は×であった。これらのことから、加温販売用容器詰ココア飲料等の、不溶性固形分の沈殿が問題となり得る加温販売用容器詰飲料において、発酵セルロースとキサンタンを併用すると、外観品質の劣化を抑制しつつ、加温時の温度ムラを抑制することができることが示された。
【0064】
また、発酵セルロースとキサンタンの添加濃度を変えて、試験区8(4.0mPa・s)から粘度を変化させた試験区7(粘度3.8mPa・s)、試験区9(5.3mPa・s)及び試験区10(9.8mPa・s)についての、温度ムラの差(℃)と外観品質の劣化の評価結果(表3)から、飲料の粘度にも着目すると、発酵セルロースとキサンタンを併用した上で、飲料の粘度を4.0mPa・s以上に調整することで、外観品質の劣化を抑制しつつ、加温時の温度ムラを抑制することができることが示された。
【0065】
また、本発明の加温販売用容器詰飲料中の、セルロース系安定剤の合計濃度に対する増粘多糖類の合計濃度の比率に着目すると、温度ムラの抑制効果をより多く得る等の観点から、その比率は好ましくは7以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは13以上、さらにより14以上であることがおおむね示された。
【0066】
3.[容器詰ココア飲料の外観品質の劣化と温度ムラへの、不溶性固形分濃度による影響]
容器詰ココア飲料の外観品質の劣化と温度ムラに対して、飲料中の不溶性固形分濃度がどのように影響するかを調べるために、以下の実験を行った。
【0067】
(発酵セルロース及びキサンタンを含む容器詰ココア飲料の調製)
1g(試験区12)、20g(試験区13)、30g(試験区14)、40g(試験区15)、
45g(試験区16)のココアパウダーを、それぞれ1Lのお湯に溶解し、5種のココア溶液を調製した。次いで、発酵セルロース濃度が0.00374重量%で、キサンタン濃度が0.0546重量%となるように、各ココア溶液に発酵セルロース及びキサンタンを添加した。500mL容のペットボトルにこれらの各ココア溶液を、液量370mL及び液高11cmとなるようにそれぞれ注ぎ入れ、表4の試験区12~16の容器詰ココア飲料を調製した。
【0068】
試験区12~16の容器詰ココア飲料中の不溶性固形分濃度(g/100mL)を以下の方法で測定した。各容器詰ココア飲料の不溶性固形分濃度を表4に示す。
容器詰ココア飲料中のココア飲料を遠心用のチューブに入れ、20℃条件下、2500gで20分間、遠心処理を行った後、チューブを10秒間逆さまにして、チューブから沈殿を残して上清を除去した。そのチューブを乾燥機内に入れて85℃で24時間静置し、沈殿を乾燥させた。その沈殿の重量を計測し、ココア飲料100mLあたりの不溶性固形分量(g)を算出した。
【0069】
試験区12~16の容器詰ココア飲料の粘度を、実施例の上記「2.」に記載の方法で測定した。各容器詰ココア飲料の粘度を表4に示す。
【0070】
試験区12~16の容器詰ココア飲料の温度ムラの差(℃)を、実施例の上記「1.」に記載の方法で測定した。なお、本試験における対照容器詰ココア飲料は、それぞれの試験区の容器詰ココア飲料において、発酵セルロース、キサンタンのいずれも添加せずに調製した容器詰ココア飲料である。試験区12~16の容器詰ココア飲料について測定した温度ムラの差(℃)を表4に示す。また、試験区12~16の容器詰ココア飲料の外観品質の劣化を、実施例の上記「1.」に記載の方法で評価した結果も表4に示す。
【0071】
【0072】
不溶性固形分濃度が3.9g/100mLである試験区16では、温度ムラの差が3℃を超えてしまう上、ココア飲料と沈殿物が明確に二層化してしまい、外観品質の評価は×であり、また、不溶性固形分濃度が3.6g/100mLである試験区15では、温度ムラの差は3℃ちょうどであるものの、ココア飲料と沈殿物の軽微な二層化が見られ、外観品質の評価は△であり、また、不溶性固形分濃度が2.52g/100mLである試験区14、1.82g/100mLである試験区13、0.38g/100mLである試験区12では、温度ムラの差は3℃未満であり、外観品質の評価も〇であった。
【0073】
表4の結果と表3の結果を併せ考慮すると、加温販売用容器詰ココア飲料等の、不溶性固形分の沈殿が問題となり得る加温販売用容器詰飲料において、発酵セルロースとキサンタンを併用した上で、飲料の粘度を4.0mPa・s以上に調整し、かつ、不溶性固形分濃度を3.75g/100mL以下、好ましくは3.6g/100mL以下、より好ましくは3.1g/100mL以下、さらに好ましくは2.52g/100mL以下に調整することで、外観品質の劣化を抑制しつつ、加温時の温度ムラを抑制することができることが示された。
【0074】
4.[ココア以外の不溶性固形分を含む加温販売用容器詰飲料]
発酵セルロースとキサンタンの併用効果が、ココアではない不溶性固形分を含む加温販売用容器詰飲料においても、発揮されるかを調べるために、以下の実験を行った。
【0075】
(発酵セルロース及びキサンタンを含む容器詰粉末茶入り茶飲料の調製)
粉末茶10gを1Lのお湯に溶解し、粉末茶溶液を調製した。次いで、発酵セルロース濃度が0.00374重量%で、キサンタン濃度が0.0546重量%となるように、粉末茶溶液に発酵セルロース及びキサンタンを添加した。500mL容のペットボトルにこの粉末茶溶液を、液量370mL及び液高11cmとなるように注ぎ入れ、表5の試験区17の容器詰粉末茶入り茶飲料を調製した。なお、容器詰粉末茶入り茶飲料の不溶性固形分濃度(g/100mL)を、実施例の上記「3.」に記載の方法で測定したところ、0.8g/100mLであった(表5)。
【0076】
(発酵セルロース及びキサンタンを含む容器詰パルプ入り果汁飲料の調製)
オレンジ果汁50%の果汁飲料に発酵セルロース及びキサンタンを添加し、発酵セルロース濃度が0.00374重量%で、キサンタン濃度が0.0546重量%である果汁飲料を調製した。この果汁飲料を、500mL容のペットボトルに、液量370mL及び液高11cmとなるように注ぎ入れ、表5の試験区18の容器詰パルプ入り果汁飲料を調製した。
【0077】
試験区17及び18の容器詰飲料中の不溶性固形分濃度(g/100mL)を、実施例の上記「3.」に記載の方法で測定した。それらの容器詰飲料の不溶性固形分濃度を表5に示す。また、試験区17及び18の容器詰飲料中の粘度を、実施例の上記「2.」に記載の方法で測定した。それらの容器詰飲料の粘度を表5に示す。
【0078】
試験区17及び18の容器詰飲料の温度ムラの差(℃)を、実施例の上記「1.」に記載の方法で測定した。なお、試験区17の容器詰飲料の対照容器詰飲料は、発酵セルロース、キサンタンのいずれも添加せずに調製した容器詰粉末茶入り茶飲料であり、試験区18の容器詰飲料の対照容器詰飲料は、発酵セルロース、キサンタンのいずれも添加せずに調製した容器詰パルプ入り果汁飲料である。試験区17及び18の容器詰飲料について測定した温度ムラの差(℃)を表5に示す。また、試験区17及び18の容器詰飲料の外観品質の劣化を、実施例の上記「1.」に記載の方法で評価した結果も表5に示す。
【0079】
【0080】
表5の結果から、ココアではない不溶性固形分を含む加温販売用容器詰飲料においても、発酵セルロースとキサンタンの併用効果が、発揮されることが示された。より詳細には、ココアではない不溶性固形分を含む加温販売用容器詰飲料においても、発酵セルロースとキサンタンを併用した上で、飲料の粘度を4.0mPa・s以上に調整し、かつ、不溶性固形分濃度を3.75g/100mL以下、好ましくは3.6g/100mL以下、より好ましくは3.1g/100mL以下、さらに好ましくは2.52g/100mL以下に調整することで、外観品質の劣化を抑制しつつ、加温時の温度ムラを抑制することができることが示された。