(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ドライガスシール
(51)【国際特許分類】
F04D 29/08 20060101AFI20220523BHJP
F04D 29/12 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F04D29/08 F
F04D29/12 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018044978
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】102017000029982
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ・ガールビ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエレ・リッツォ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ベルノッチ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・マラッツォ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド・バルダッサーレ
(72)【発明者】
【氏名】アメリア・ラヴィニア・リッチウティ
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0016303(US,A1)
【文献】特開2007-177887(JP,A)
【文献】特開2011-132953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08
F04D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械のシャフト(14)をシールするためのドライガスシール(30)であって、
シャフト回転速度で回転するように前記ターボ機械の前記シャフト(14)に結合されるよう構成されたメイティングリング(34)と、
前記メイティングリング(34)に対してシールされる主リング(36)であって、前記ターボ機械の固定部に回転不可能に結合されるように構成された、主リング(36)と、
前記主リング(36)を前記メイティングリング(34)に押し付けるように予荷重された1つ以上の弾性要素(38)と
、
を備え、
1つ以上のセンサが設けられており、前記1つ以上のセンサが、前記
ドライガスシール
(30)の障害の早期検出のために、前記主リング(36)および/または前記弾性要素の1つ以上に生じたひずみおよび/もしくは荷重ならびに/または前記主リング(36)もしくは前記主リング(36)に結合された要素(50)の変位を測定するように適合され
、
前記主リング(36)が、回転防止システムに備えられた1つ以上の回転防止ピンまたはラグ(40)によってリテーナ(100)に回転不可能に結合されるように構成されており、
前記センサが、前記主リング(36)および/または前記リテーナ(100)の、前記メイティングリング(34)への/からの軸方向移動を検出するように、前記回転防止ピンまたはラグ(40)の1つ以上に結合された軸方向振動センサ(42)を備える、ドライガスシール(30)。
【請求項2】
前記センサが、前記主リング(36)に生じたトルクを検出するために前記回転防止ピンまたはラグ(40)の1つ以上に結合された荷重センサ(41)を備える、請求項1に記載のドライガスシール(30)。
【請求項3】
前記弾性要素(38)または複数の前記弾性要素(38)が、前記メイティングリング(34)の軸方向移動の際に前記主リング(36)と共に移動するように軸方向移動が可能な中間要素(50)を介して前記主リング(36)に結合されており、前記センサが、前記中間要素(50)の前記軸方向移動を検出する変位センサを
さらに備える、請求項1
または2に記載のドライガスシール(30)。
【請求項4】
前記センサが、前記弾性要素(38)の1つ以上に結合されたまたは組み込まれた軸方向振動センサまたは荷重センサ(80)を備える、請求項
3に記載のドライガスシール(30)。
【請求項5】
前記メイティングリング(34)と前記主リング(36)を離隔させるためにシールガスを入口(61)から出口(62)まで流すための流路
(60)を備え、流量センサが、前記シールガスの流量を測定するために前記流路(60)に設けられている、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のドライガスシール(30)。
【請求項6】
ターボ機械であって、
少なくともインペラ(16)を含むロータアセンブリ(18)と、
前記ロータアセンブリ(18)に接続され、前記ロータアセンブリ(18)を回転可能に支持するための軸受(20)と、
ステータと、
前記ロータアセンブリ(18)と前記軸受(20)との間に配置されたシール機構(26)であって、該シール機構(26)が、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のドライガスシール(30)を含み、前記
ドライガスシール
(30)のメイティングリング(34)およ
び主リング(36)が、それぞれ前記ロータアセンブリ(18)および前記ステータに結合されている、シール機構(26)と
、
を備える、ターボ機械。
【請求項7】
前記主リング(36)が、1つ以上の回転防止ピンまたはラグ(40)を備える回転防止システムを介してリテーナ(100)に、および予荷重された弾性要素(38)の作用下で前記主リング(36)を前記メイティングリング(34)に軸方向に押し付けるプッシャスリーブとして機能する中間要素またはキャリア(50)に結合されており、
前記
ドライガスシール(30)のセンサが、前記主リング(36)の軸方向変位の測定のための変位センサ(42、80)、前記中間
要素(50)の軸方向変位の測定のための変位センサ(90)、前記主リング(36)に生じたトルクの測定のためのひずみセンサ(41)、前記キャリア(50)および/または前記主リング(36)に作用する静荷重の測定のための荷重センサ(80)、ならびに前記キャリア(50)および/または前記主リング(36)の振動の測定のための荷重センサ(80)からなる群に属する1つ以上のセンサを備える、請求項
6に記載のターボ機械。
【請求項8】
前記センサまたは複数の前記センサの出力を読み取り、
前記出力と閾値を比較して前記
ドライガスシール(30)の不具合状態を判定し、
警報表示を提供する
ように構成された制御ユニットをさらに備える、請求項
6または7記載のターボ機械。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記センサの出力が前記
ドライガスシール(30)の重大な不具合状態を示す場合に、前記ターボ機械を停止させるようにさらに構成される、請求項
8に記載のターボ機械。
【請求項10】
ターボ機械のドライガスシー
ルの状態を監視するための方法であって、
前記ドライガスシールの主リングに生じたひずみ/荷重および/または
前記ドライガスシールの前記主リングもしくは前記ドライガスシール
の前記主リングに結合された要素の変位を
センサによって測定する工程と、
前記センサによって測定される値の許容基準を設定する工程と、
前記センサの出力を読み取る工程と、
前記許容基準で前記出力をテストする工程と、
前記センサによって測定された1つ以上の値が前記許容基準を満たさない場合、警報を作動させ、および/または前記ターボ機械を停止させる工程と
、
を含
み、
前記主リングが、回転防止システムに備えられた1つ以上の回転防止ピンまたはラグによってリテーナに回転不可能に結合されるように構成されており、
前記測定する工程が、前記回転防止ピンまたはラグに結合された軸方向振動センサによって前記主リングおよび/または前記リテーナの、メイティングリングへの/からの軸方向移動を検出する工程を含む、方法。
【請求項11】
前記測定する工程が、前記回転防止ピンまたはラグに結合された荷重センサによって前記主リングに生じたトルクを検出する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
弾性要素が、前記メイティングリングの軸方向移動の際に前記主リングと共に移動するように軸方向移動が可能な中間要素を介して前記主リングに結合されており、
前記測定する工程が、変位センサによって、前記中間要素の軸方向移動を検出する工程、及び/または、前記弾性要素の1つ以上に結合されたまたは組み込まれた軸方向振動センサまたは荷重センサによって前記主リングまたは前記中間要素の振動または軸方向移動を検出する工程をさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記ドライガスシールが前記メイティングリングと前記主リングを離隔させるためにシールガスを入口から出口まで流すための流路を備え、
前記測定する工程が、前記流路に設けられている流量センサによって、前記シールガスの流量を測定する工程をさらに含む、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
異なるターボ機械のシールからデータを収集して、早期検出のために分析を実行することが可能な遠隔ソフトウェアプラットフォームに前記センサの前記出力を送信する工程をさらに含む、請求項
10乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
潜在的な損傷に関する通知を送信するか、または状態に基づくメンテナンスを行う工程をさらに含む、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
遠隔配置されたターボ機械のドライガスシール(30)の監視および不具合の早期検出のためのシステムであって、
請求項
6乃至9のいずれか1項に記載の前記ターボ機械の前記ドライ
ガスシール(30)のセンサからデータを収集するための収集ユニット(200)と、
前記ターボ機械と前記収集ユニット(200)を接続するように構成された通信ユニット(100)と、
前記収集ユニット(200)からデータを読み出して、早期検出のために分析を実行し、および/または潜在的な損傷に関する通知を送信するか、もしくは前記ターボ機械の、状態に基づくメンテナンスを行うように構成されたソフトウェアプラットフォーム(300)と
、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題の実施形態は、ターボ機械、特に遠心圧縮機の信頼できるシャフトシールを実現するドライガスシールに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、圧縮可能な流体、例えばガスの粒子を機械的エネルギーの使用によって加速し、最終的にその圧縮可能な流体の圧力を増加させる機械である。圧縮機は、ガスタービンエンジンの最初の段としての動作を含む多くの異なる用途で使用されている。様々なタイプの圧縮機の中には、いわゆる遠心圧縮機があり、そこでは、機械的エネルギーは、例えばガスが通過する遠心インペラを回転させることによってガス粒子を加速する遠心加速によって、圧縮機に入力されるガスに作用する。より一般的には、遠心圧縮機は、「ターボ機械」または「ターボ回転機械」として知られる機械類の一部であると言うことができる。
【0003】
遠心圧縮機には、単一のインペラ(すなわち、単段構成)または直列の複数のインペラ(この場合、遠心圧縮機はしばしば多段圧縮機と呼ばれる)を取り付けることができる。遠心圧縮機の各段は、一般的に、加速されるガスのための入口導管と、入力ガスに運動エネルギーを与えることが可能なインペラ、およびインペラから出るガスの運動エネルギーを圧力エネルギーに変換するディフューザとを含む。遠心圧縮機には様々なタイプのガスが使用されており、そのうちの一部は、環境および/または工場の作業員にとって有毒または危険である。したがって、遠心圧縮機は、ガスが圧縮機から漏れて周辺環境を汚染するのを防止するために、インペラを支持するシャフトの端部に通常は配置されるシールシステムを用いる。単一ロータの遠心圧縮機は通常、このシールシステムの一部として2つの別個のシールを備え(すなわち、シャフトの各端部に1つずつ)、一方、オーバーハング遠心圧縮機(overhung centrifugal compressor)では、インペラのすぐ下流に位置するシャフト端部をシールすれば通常は十分である。
【0004】
近年、遠心圧縮機用のシールシステムに、いわゆる「ドライ」ガスシールを使用することが増えている。ドライガスシールは、メイティングリングまたは回転リングおよび主リングまたは固定リングを含む、非接触の乾式作動の機械的な面シールとして説明することができる。動作時、回転リングの溝は、固定リングを引き離し、2つのリング間に隙間を形成する流体力学的力を発生させる。これらのシールは、潤滑油を必要としないため、「乾式」と呼ばれ、とりわけそのメンテナンス要求を大幅に低減する。
【0005】
遠心圧縮機に関して、このようなドライガスシールは、様々な構成(例えば、入力ガスまたはプロセスガスとして有毒ガスまたは可燃性ガスを用いる圧縮機で主に使用されるいわゆるタンデム構成)で利用可能である。
図1に示すように、タンデム型のドライガスシールシステムは、第1のシール2および第2のシール4を含み、これらは両方とも単一のパッケージに収容される。圧縮機の通常動作中、第1のシール2は、処理されたガスの全圧を封じ込めるように機能し、一方、第2のシール4は、第1のシール2が機能しなくなるか、または過度に漏れを生じさせた場合にのみ機能するように設計されたバックアップとしての役割を果たす。一般的に、圧縮機吐出に由来する調整されたガス流は、プロセスガスからドライガスシールを隔離するためにシール2の上流に噴射される。非常に有毒なプロセスガス(例えば、H2Sの含有量が高いガス)および高いシール圧力を伴う用途では、硫黄含有量の低い外部シールガス源(例えば、いわゆる「スイート(sweet)」ガス)が、周囲からプロセスガスを隔離するために通常は用意される。シール圧力が高いため、遠心圧縮機とは独立して動作する専用の往復圧縮機6が、シールガスシステムに供給するために使用される。タンデム内の第2のシール4は、有毒/可燃性ガスが周囲に漏れることがないようにするために、供給源8から補助的なシールガスとしてより低い圧力(例えば、10バール未満)の窒素を受けることができる。このように、これらのタイプのドライガスシールシステムを備える遠心圧縮機は、シールガスの供給のみがその機能である追加の圧縮機をも必要とし、この結果、システム全体がより複雑になる。単純に複雑度が増すことに加えて、往復圧縮機6のメンテナンス要求が、往復圧縮機6が支えることを目的とする遠心圧縮機よりも大きい場合もある。さらに、タンデム構成の第2のシール4は、バックアップ能力を提供するものの、現在のドライガスシールシステムは依然として不具合が起こらないとはいかず、その場合、それらは、望ましくないことに、ある量のシールガスを大気中に放出する可能性がある。
【0006】
ドライガスシールの障害は、主に、液体または固体粒子による汚染、ディスクの接触をもたらす主ディスクの「ハングアップ(hang up)」、または主ディスクの軸方向振動(「スワッシュ(swashing)」)に起因する。これらのすべてが、シールの深刻な機能不全をもたらす。
【0007】
したがって、既存のシールシステムの前述の欠点を克服するドライガスシールを設計し、提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
第1の例示的な実施形態によると、ターボ機械のシャフトをシールするためのドライガスシールであって、
シャフト回転速度で回転するようにターボ機械のシャフトに結合されるよう構成されたメイティングリングと、
メイティングリングに対してシールされる主リングであって、ターボ機械の固定部に回転不可能に結合されるように構成された、主リングと、
主リングをメイティングリングに押し付けるように予荷重された1つ以上の弾性要素と
を備え、
1つ以上のセンサが、設けられており、シールの障害の早期検出のために、主リングおよび/または弾性要素の1つ以上に生じたひずみおよび/もしくは荷重ならびに/または主リングもしくは主リングに結合された要素の変位を測定するように適合されている、ドライガスシールがある。
【0009】
これにより、ドライガスシールの連続的な健全性監視が可能になり、主な障害の早期検出能力および予防的なメンテナンス作業が可能になる。
【0010】
シールの初期不良の早期検出は、予期せぬ機械停止の回避につながり、したがって、機械の信頼性および有用性の向上に関わる商用ツールの生産性の向上および使用機会の創出をもたらす。
【0011】
第2の例示的な実施形態によると、特に圧縮機であるターボ機械であって、
少なくともインペラを含むロータアセンブリと、
ロータアセンブリに接続され、ロータアセンブリを回転可能に支持するための軸受と、
ステータと、
ロータアセンブリと軸受との間に配置されたシール機構であって、前記シール機構が、ドライガスシールを含み、シールの主リングが、1つ以上の回転防止ピンまたはラグを備える回転防止システムを介してリテーナに、および予荷重された弾性要素の作用下で主リングをメイティングリングに軸方向に押し付けるプッシャスリーブとして機能する中間要素またはキャリアに結合された、シール機構とを備える、ターボ機械がある。シールのセンサまたは複数のセンサは、好適には、主リングの軸方向変位の測定のための変位センサ、中間リングの軸方向変位の測定のための変位センサ、主リングに生じたトルクの測定のためのひずみセンサ、キャリアおよび/もしくは主リングに作用する静荷重ならびに/またはキャリアおよび/もしくは主リングの振動の測定のための荷重センサからなる群に属する1つ以上のセンサを備える。
【0012】
第3の例示的な実施形態によると、ターボ機械のドライガスシールの状態を監視するための方法であって、
主リングに生じたひずみおよび/もしくは荷重ならびに/または主リングもしくはドライガスシールの主リングに結合された要素の変位を測定するように適合されたセンサを用意する工程と、
センサによって測定される値の許容基準を設定する工程と、
センサの出力を読み取る工程と、
許容基準で出力をテストする工程と、
センサによって測定された1つ以上の値が許容基準を満たさない場合、警報を作動させ、および/またはターボ機械を停止させる工程と
を含む、方法がある。
【0013】
第4の例示的な実施形態によると、遠隔配置されたターボ機械のドライガスシールの監視および不具合の早期検出のためのシステムであって、
ターボ機械のドライシールのセンサからデータを収集するための収集ユニットと、
ターボ機械と収集ユニットを接続する通信ユニットと、
収集ユニットからデータを読み出して、早期検出のために分析を実行し、および/または潜在的な損傷に関する通知を送信するか、もしくはターボ機械の、状態に基づくメンテナンスを行うように構成されたソフトウェアプラットフォームと
を備える、システムがある。
【0014】
本発明は、添付図面と併せて考慮される、例示的な実施形態に関する以下の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】例示的な実施形態によるシール機構を備えた多段型遠心圧縮機の概略図である。
【
図3】例示的な実施形態によるシール機構に使用される例示的なドライガスシールの部分断面図である。
【
図4】本明細書の実施形態に従って、ターボ機械の固定部に主リングを結合する回転防止ピン/ラグ上のセンサを概略的に示した、
図3のシールのメイティングリングおよび主リングを概略的に示す。
【
図5】本明細書の実施形態に従って、障害を早期に検出するための1つ以上のセンサを配置するのに適した領域を示す円と共にガスシール装置の断面を概略的に示す。
【
図6】本明細書の例示的な実施形態による、ドライガスシールを監視するための方法を示すフローチャートである。
【
図7】本明細書の例示的な実施形態による、遠隔配置されたターボ機械のドライガスシールの不具合を監視および早期検出するためのシステムのブロック図を示す
【発明を実施するための形態】
【0016】
例示的な実施形態に関する以下の説明は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号により、同じまたは同様の要素が特定される。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。その代わり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0017】
「一実施形態」または「実施形態」に対する本明細書全体での参照は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、または特性が、開示されている主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における句「一実施形態では」または「実施形態では」の記載は、必ずしも同じ実施形態を参照していない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0018】
これらの例示的な実施形態によるシールシステムに関する後の説明のためにある程度の背景を提供するために、
図2は、このようなシールシステムが用いられ得る多段遠心圧縮機10を概略的に示す。そこでは、圧縮機10は、複数の遠心インペラ16を備えた回転圧縮機シャフト14がその中に取り付けられたボックスまたはハウジング(ステータ)12を含む。ロータアセンブリ18は、シャフト14およびインペラ16を含み、ロータアセンブリ18の両側に配置された軸受20によって半径方向および軸方向に支持されている。
【0019】
多段遠心圧縮機は、ダクト入口22から入力プロセスガスを取り込み、ロータアセンブリ18の動作によってプロセスガスの粒子を加速し、次いで、出口ダクト24を介して、その入力圧力よりも高い出力圧力でプロセスガスを供給する。プロセスガスは、例えば、二酸化炭素、硫化水素、ブタン、メタン、エタン、プロパン、液化天然ガス、またはこれらの組み合わせのいずれかであってもよい。インペラ16と軸受20との間には、プロセスガスが軸受20に流れるのを防止するためにシールシステム26が設けられている。ハウジング12は、遠心圧縮機10からのガスの漏れを防止するために軸受20とシールシステム26の両方を覆うように構成されている。また、
図2には、インペラ16によって発生した軸推力を相殺するバランスドラム27と、バランスドラムのラビリンスシール28と、ダクト22を介してプロセスガスが入る圧力と同じレベルにバランスドラム27の外側面の圧力を維持するバランスライン29とが見られる。
【0020】
例示的な実施形態によれば、シールシステム26の各々は、軸受20へ漏れないようにプロセスガスをシールするために一緒に協働する1つ、2つ、3つ、またはそれより多くのドライガスシールを含む。一般的に言えば、シールシステム26のドライガスシールまたは複数のドライガスシールは、例えば
図3に示すように実施することができる。そこでは、ドライガスシール30は、遠心圧縮機10の内側から外側への、ガス通路32に沿ったプロセスガスの流れを遮断するように圧縮機シャフト14に設置されている。ドライガスシール30は、圧縮機シャフトと共に回転し、固定リング36と接触する回転シート34を含む。動作中、回転シート34および固定リング36の少なくとも一方に形成された溝の中には、固定リング36を回転シート34から引き離す流体力学的力を発生させる効果を有する加圧流体が圧送される。これにより、2つのリング間に隙間が形成され、これらの組み合わせは、回転シート34と固定リング36との間の摩擦なしにプロセスガスの漏れを概ね防止するシールとして機能する。これらのタイプのドライガスシールの例は、米国特許第5,492,341号および米国特許第5,529,315号に見出すことができ、また、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
圧縮機が停止されている(回転していない)とき、主リングは、一連のバネによってメイティングリングに押し付けられる。溝は、メイティングリングの全面にわたって機械加工されているわけではないので、2つのリングは、ダム領域上で密着し、作動隙間(running gap)(したがってシール漏れ)が排除される。
【0022】
2つのリング間に作動隙間が存在すると、ガス漏れが生じるが、これは、最小限に抑えられなければならない。理想的には、ドライガスシールは、漏れ速度を最小限に抑えるために最小作動隙間で機能する。しかしながら、遠心圧縮機ロータは、動作中に、スラスト軸受によって制限される軸方向移動を受ける。動作中、2つのリング間の作動隙間は、一般的には0から10μmまでの間で自動調整される。主シールリングとメイティングシールリングとの間の作動隙間が、動作中にロータの軸方向移動に起因して増加する場合、メイティングリングの溝の先端における圧力は、体積が増加するにつれて低下する。主シールリングおよびメイティングシールリングの各面に作用するガスの力は、これらのリングを互いに向かわせ、その結果、作動隙間を所望の値に戻す。逆に、シールリング間の間隙が、ロータの軸方向移動に起因して減少する場合、メイティングリングの溝の先端における圧力は、体積が減少するにつれて増加し、2つのリングの外面に作用するガスの力を上回り、その結果、作動隙間を所望の値に増加させる。
【0023】
ドライガスシールの障害は、主に、液体または固体粒子による汚染、ディスクの接触をもたらす主ディスクの「ハングアップ」、または主ディスクの軸方向振動(「スワッシュ」)に起因する。これらのすべてが、シール表面の壊滅的な損傷をもたらす。
【0024】
図4は、参照番号35で示されている作動隙間と共に、動作時のメイティングリング34および主リング36を概略的に示している。主リング36は、1つ以上のピン/ラグ40を備える回転防止システムを介してターボ機械の固定部(特に、リテーナ100)に結合されている。
【0025】
回転防止システムのピン/ラグ40の1つ以上に荷重センサ41を組み込むことによって、回転ガス力によって主リング36に伝達されるトルクを検出することができる。
【0026】
1つ以上のバネまたはバネ支持部に1つ以上の荷重センサを組み込むことによって、キャリアおよび/または主リングの軸方向振動および/または軸方向移動を効果的に検出することができる。
【0027】
より複雑な構成も可能である。
図5は、本明細書の実施形態によるガスシール装置の断面を概略的に示す。円は、シールの障害の早期検出のために1つ以上のセンサを配置するのに適した、以下のような領域を示す。
【0028】
1)主リング軸方向振動測定(スワッシュ):参照番号70および/または80
2)トルク測定(回転防止ピン/ラグ):参照番号70
3)キャリア/リテーナの移動制御(ハングアップ):参照番号90
4)ドライガスシールベントの流量測定:参照番号60
主リング36は、メイティングリング34から離れるように軸方向に移動することが可能である。これに関連して、1つ以上の弾性要素38は、本明細書ではキャリアとも呼ばれるプッシャスリーブとして機能する中間要素50を介して、主リング36をメイティングリング34に押し付けるように均一に分布した予荷重を加える。
【0029】
キャリア50および/またはリテーナ100の軸方向移動を測定して、キャリア/リテーナのハングアップに起因する不具合状況を検出するために、変位センサを使用することができる。このようなセンサは、一般的に、
図5の参照番号90によって示されているような、ハングアップがより起こり得る、ロータに近い、キャリア/リテーナの軸方向部に配置することができる。このタイプのセンサは、主リングのスワッシュを間接的に測定するためにも使用することができる。センサ80は、好適には、キャリアおよび/または主リングの振動または軸方向移動を測定するための荷重センサであってもよい。実施形態では、このようなセンサは、弾性要素を形成する1つ以上のバネに組み込まれる。
【0030】
シールの状態の監視をさらに改善するために、他のセンサを使用することができる。ドライガスシールが、メイティングリングと主リングを離隔させるためにシールガスを入口61から出口62まで流すための流路を備えるとき、このような流路(例えば、
図5の参照番号60によって示されているような出口領域)に流量センサを設けてシールガスの流量を測定することができる。このような流量センサは、速度、流量、圧力、差圧、または同様のパラメータを検出する、熱線型または熱質量型などの任意の既知のタイプのものであってもよい。
【0031】
これらのすべてのセンサの出力またはその一部は、シールの状態を監視するために使用することができる。例えば、主リングに伝達されるトルクの増加および/または閾値を超える振動周波数を有する軸方向変位は、液体または固体粒子による汚染の指標となり得る。キャリア/リテーナの変位の欠如またはしかるべき経路に従わないキャリア/リテーナの変位は、主リングのハングアップをもたらし得るキャリア/リテーナの障害の指標となり得る一方で、センサ60によって検出されるシールガスの過大な流量は、流路の漏れの指標となり得る。
【0032】
これに関連して、実施形態は、プログラム命令を記憶するメモリと、
センサまたは複数のセンサの出力を読み取り、
出力と閾値を比較してシールの不具合状態を判定し、
センサの出力がシールの深刻な不具合状態を示す場合、警報表示の提供および/またはターボ機械の停止を行う
ためにプログラム命令を実行するように構成されたプロセッサとを備える制御ユニットを提供する。
【0033】
制御ユニットは、専用の安全システムの一部であってもよいし、ターボ機械の機能を制御する同じシステムの一部であってもよい。
【0034】
測定値は、M&Dシステムによって取得することができ、障害を早期に検出し、潜在的な損傷を顧客に通知し、状態に基づくメンテナンスを行うために、分析を利用することができる。
【0035】
図7は、本明細書の実施形態による、遠隔配置されたターボ機械のドライガスシールの不具合を監視および早期検出するためのシステムを例示している。このシステムは、
ターボ機械のドライシールに配置されたセンサからデータを収集するための収集ユニット(200)と、
ターボ機械と収集ユニットを接続する通信ユニット(100)と、
収集ユニット(200)からデータを読み出して、早期検出のために分析を実行し、および/または潜在的な損傷に関する通知を送信するか、もしくはターボ機械の、状態に基づくメンテナンスを行うように構成されたソフトウェアプラットフォーム(300)と
を備える。
【0036】
実施形態はまた、ターボ機械のドライガスシールの状態を監視するための方法であって、
主リングに生じたひずみおよび/または主リングもしくはドライガスシールの主リングに結合された要素の変位を測定するセンサを用意する工程と、
センサによって測定される値の許容基準を設定する工程と、
センサの出力を読み取る工程と、
許容基準で出力をテストする工程と、
センサによって測定された1つ以上の値が許容基準を満たさない場合、警報を作動させ、および/またはターボ機械を停止させる工程と
を含む、方法を提供する。
【0037】
この方法は、好適には、
異なるターボ機械のシールからデータを収集して、早期検出のために分析を実行することが可能な遠隔ソフトウェアプラットフォームにセンサの出力を送信する工程、および/または
潜在的な損傷に関する通知を送信するか、もしくは状態に基づくメンテナンスを行う工程
をさらに含んでもよい。
【符号の説明】
【0038】
2 第1のシール
4 第2のシール
6 往復圧縮機
8 供給源
10 多段遠心圧縮機
12 ハウジング
14 シャフト
16 遠心インペラ
18 ロータアセンブリ
20 軸受
22 ダクト入口
24 出口ダクト
26 シールシステム
27 バランスドラム
28 ラビリンスシール
29 バランスライン
30 ドライガスシール
32 ガス通路
34 メイティングリング、回転シート
35 作動隙間
36 固定リング、主リング
38 弾性要素
40 ピン/ラグ
41 荷重センサ
42 軸方向振動センサ
50 キャリア、中間要素
60 領域、センサ、流路
61 入口
62 出口
70 領域
80 領域、センサ
90 領域
100 リテーナ
200 収集ユニット
300 ソフトウェアプラットフォーム