(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】鉄道車両の床下塞ぎ板
(51)【国際特許分類】
B61D 17/00 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
B61D17/00 B
(21)【出願番号】P 2018056585
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 十一
(72)【発明者】
【氏名】奥村 将也
(72)【発明者】
【氏名】榎本 年克
(72)【発明者】
【氏名】中尾 稔
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 功
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210045(JP,A)
【文献】特開2004-179520(JP,A)
【文献】特開2013-172123(JP,A)
【文献】特表2007-516370(JP,A)
【文献】米国特許第04334338(US,A)
【文献】特開平09-030412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
B61D 17/02
B61D 17/10
B61D 49/00
E05D 7/10
E05D 1/06
E05D 5/10
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床下底面に形成される開口部を着脱可能に閉塞する鉄道車両の床下塞ぎ板であって、
前記開口部には、その一端縁に沿って水平方向に延設された支持軸部と、その他端縁に形成された止め部とを備えたこと、
前記床下塞ぎ板には、平板状に形成された塞ぎ板本体と、前記塞ぎ板本体に固定され前記支持軸部に対して係脱不能に支持される支持位置より前記塞ぎ板本体を上方向へ所定角度だけ回動させ、かつ軸方向へ所定長だけ移動させた着脱位置のみで係脱可能に形成された被係止部と、前記塞ぎ板本体に固定され前記支持位置で前記止め部に連結されるように形成された被止め部とを備えたこと
、
前記支持軸部には、軸方向へ略円柱状に延設された第1軸部と、前記第1軸部の外周面より凹む切欠き部が軸方向へ延設された第2軸部とを備えていること、
前記被係止部には、前記支持位置で前記第1軸部の外周面と摺接可能に形成された円弧部と、前記円弧部の周端部間に形成され前記第2軸部の切欠き部が前記着脱位置で通過可能に形成された空隙部とを備えていること、
前記支持軸部には、前記第1軸部の外周面に対して同心上で所定深さだけ円弧状に凹む逃し部が形成されていること、
前記支持位置では、前記逃し部の両方の周方向端部が前記円弧部の内周面の範囲内に位置すること、
前記塞ぎ板本体を前記支持軸部に対して前記支持位置より上方向へ前記所定角度だけ回動させたとき、前記逃し部の一方の周方向端部が前記円弧部の内周面の範囲外に位置することを特徴とする鉄道車両の床下塞ぎ板。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の床下塞ぎ板において、
前記被止め部は、前記止め部に形成された受け面に対して上方から当接した状態で連結されることを特徴とする鉄道車両の床下塞ぎ板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床下塞ぎ板に関し、詳しくは、鉄道車両の床下底面に形成される開口部を着脱可能に閉塞する鉄道車両の床下塞ぎ板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、新幹線(登録商標)などの高速で走行する鉄道車両では、車両走行時における空気抵抗を低減する整流等の観点から、車両の床下底面に形成される開口部を塞ぐ床下塞ぎ板が装着されている。斯かる床下塞ぎ板は、床下に固定された各種電気機器や空調機器などを保守点検するときには、簡単に取り外しできる必要があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、簡単に取り外し可能な鉄道車両の床下塞ぎ板として、
図10、
図11に示すように、鉄道車両本体101の底面の開口102を塞ぐ蓋体103を開閉可能に支持する鉄道車両の蓋体開閉装置100が開示されている。すなわち、車両本体101側あるいは蓋体103側の一方に支点軸104を他方に支点軸104が揺動可能に挿入される挿入孔105を設け、支点軸104にその円周上の一部をその直径よりも小さな幅に切り欠いた平坦部104a、104bを形成すると共に、蓋体103を所定角度θで下方dへ開いた状態としたときに支点軸104を平坦部104a、104bと平行な方向から、かつ、車両本体101に接近する方向cから挿通可能なスリット106を挿入孔105に連設し、蓋体103が開口102を閉じた状態のときには、支点軸104廻りの蓋体103の揺動を規制する掛金部材107を設けた鉄道車両の蓋体開閉装置100が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された鉄道車両の蓋体開閉装置100では、支点軸104廻りの蓋体103の揺動を規制する掛金部材107を車両本体101側に取り付けられた止め金具108に十分係合させなかったとき、又は走行中の振動によって掛金部材107が止め金具108から外れたとき等に、蓋体103が下方へ回動して、支点軸104が挿入孔105のスリット106から外れ、蓋体103が車両本体101から脱落する恐れがあった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、機器等を保守点検するときには簡単に取り外しできると共に、車両走行時における不用意な脱落を防止できる鉄道車両の床下塞ぎ板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両の床下塞ぎ板は、以下の構成を備えている。
(1)鉄道車両の床下底面に形成される開口部を着脱可能に閉塞する鉄道車両の床下塞ぎ板であって、
前記開口部には、その一端縁に沿って水平方向に延設された支持軸部と、その他端縁に形成された止め部とを備えたこと、
前記床下塞ぎ板には、平板状に形成された塞ぎ板本体と、前記塞ぎ板本体に固定され前記支持軸部に対して係脱不能に支持される支持位置より前記塞ぎ板本体を上方向へ所定角度だけ回動させ、かつ軸方向へ所定長だけ移動させた着脱位置のみで係脱可能に形成された被係止部と、前記塞ぎ板本体に固定され前記支持位置で前記止め部に連結されるように形成された被止め部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、開口部には、その一端縁に沿って水平方向に延設された支持軸部と、その他端縁に形成された止め部とを備え、床下塞ぎ板には、平板状に形成された塞ぎ板本体と、塞ぎ板本体に固定され支持軸部に対して係脱不能に支持される支持位置より塞ぎ板本体を上方向へ所定角度だけ回動させ、かつ軸方向へ所定長だけ移動させた着脱位置のみで係脱可能に形成された被係止部と、塞ぎ板本体に固定され支持位置で止め部に連結されるように形成された被止め部とを備えたので、開口部の止め部と床下塞ぎ板の被止め部との連結が十分でなく、車両走行中に当該連結が解除された場合、又は止め部と被止め部との連結操作を忘れた場合でも、支持軸部に対する塞ぎ板本体の上方向への回動動作と軸方向への移動動作との2つの動作が行われない限り、鉄道車両の床下底面に形成される開口部に装着された床下塞ぎ板が脱落することはない。そのため、車両走行時において、床下塞ぎ板が不用意に脱落する恐れを回避できる。一方、車両床下に固定された各種電気機器や空調機器などを保守点検するときには、止め部に対する被止め部の連結を解除した後に、支持軸部に対して塞ぎ板本体を支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させ、かつ軸方向へ所定長だけ移動させた着脱位置で、床下塞ぎ板を簡単に取り外しできる。
【0009】
よって、本発明によれば、機器等を保守点検するときには簡単に取り外しできると共に、車両走行時における不用意な脱落を防止できる鉄道車両の床下塞ぎ板を提供することができる。
【0010】
(2)(1)に記載された鉄道車両の床下塞ぎ板において、
前記被止め部は、前記止め部に形成された受け面に対して上方から当接した状態で連結されることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、被止め部は、止め部に形成された受け面に対して上方から当接した状態で連結されるので、開口部の他端縁に形成された止め部と床下塞ぎ板に形成された被止め部との連結が十分でなく、車両走行中に当該連結が解除された場合でも、支持軸部に対する塞ぎ板本体の下方への回動を止め部によって規制できる。そのため、車両走行中に止め部と被止め部との連結が解除された場合でも、鉄道車両の床下底面に形成される開口部に装着された床下塞ぎ板が、装着状態より下方へ垂れ下がって、線路等に干渉する恐れを回避できる。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両の床下塞ぎ板において、
前記支持軸部には、軸方向へ略円柱状に延設された第1軸部と、前記第1軸部の外周面より凹む切欠き部が軸方向へ延設された第2軸部とを備えていること、
前記被係止部には、前記支持位置で前記第1軸部の外周面と摺接可能に形成された円弧部と、前記円弧部の周端部間に形成され前記第2軸部の切欠き部が前記着脱位置で通過可能に形成された空隙部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、支持軸部には、軸方向へ略円柱状に延設された第1軸部と、第1軸部の外周面より凹む切欠き部が軸方向へ延設された第2軸部とを備え、また、被係止部には、支持位置で第1軸部の外周面と摺接可能に形成された円弧部と、円弧部の周端部間に形成され第2軸部の切欠き部が着脱位置で通過可能に形成された空隙部とを備えているので、塞ぎ板本体が支持位置で支持軸部を支点に上方向へ所定角度だけ回動しても、支持軸部の第1軸部に対して被係止部の円弧部が常に係合して、被係止部が支持軸部から外れることはない。したがって、車両走行時における床下塞ぎ板の不用意な脱落を防止できる。
【0014】
一方、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させ、かつ軸方向へ所定長だけ移動させた着脱位置では、支持軸部の第2軸部と被係止部の空隙部とが対峙した状態となる。したがって、被係止部の空隙部が第2軸部の切欠き部を通過する方向へ塞ぎ板本体を移動させ、被係止部と支持軸部との係合を解除させることによって、床下塞ぎ板を簡単に取り外すことができる。
【0015】
(4)(3)に記載された鉄道車両の床下塞ぎ板において、
前記支持軸部には、前記第1軸部の外周面に対して同心上で所定深さだけ円弧状に凹む逃し部が形成されていること、
前記支持位置では、前記逃し部の両方の周方向端部が前記円弧部の内周面の範囲内に位置すること、
前記塞ぎ板本体を前記支持軸部に対して前記支持位置より上方向へ前記所定角度だけ回動させたとき、前記逃し部の一方の周方向端部が前記円弧部の内周面の範囲外に位置することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、支持軸部には、第1軸部の外周面に対して同心上で所定深さだけ円弧状に凹む逃し部が形成され、支持位置では、逃し部の両方の周方向端部が円弧部の内周面の範囲内に位置するので、支持軸部と被係止部との間にガタが生じない。そのため、鉄道車両の床下底面に形成される開口部を床下塞ぎ板によってガタなく確実に閉塞させることができる。また、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させたとき、逃し部の一方の周方向端部が円弧部の内周面の範囲外に位置するので、支持軸部と被係止部との間に微小なガタが生じる。そのため、支持軸部が複数個あって各支持軸部の軸心が僅かにずれている場合でも、その軸心のずれを支持軸部と被係止部との間の微小なガタによって吸収し、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させた状態で、軸方向へ所定長だけスムーズに移動させることができる。その結果、支持位置では床下塞ぎ板のガタが生じるのを防止しつつ、床下塞ぎ板を支持位置から着脱位置へ移動させる操作性を、より一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、機器等を保守点検するときには簡単に取り外しできると共に、車両走行時における不用意な脱落を防止できる鉄道車両の床下塞ぎ板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両の床下塞ぎ板の支持位置における上面図である。
【
図7】
図4に示すE矢視図であって、支持位置での支持軸部と被係止部との係合状態を表す。
【
図8】
図5に示すF矢視図であって、着脱位置での支持軸部と被係止部との係合状態を表す。
【
図9】
図1に示す床下塞ぎ板の取り外し方法を表す部分断面図であって、(A)は、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させた状態を示し、(B)は、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させた状態で、着脱位置へ横移動させる状態を示し、(C)は、着脱位置で被係止部の空隙部が第2軸部の切欠き部を通過する方向へ移動させる状態を示す。
【
図10】特許文献1に記載された鉄道車両の蓋体開閉装置の断面図である。
【
図11】
図10に示す鉄道車両の蓋体開閉装置における支点軸を挿入孔に挿入した後の状態の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本実施形態に係る鉄道車両の床下塞ぎ板について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両の床下塞ぎ板の構成を詳細に説明した上で、床下塞ぎ板を着脱する操作方法を簡単に説明する。
【0020】
<本鉄道車両の床下塞ぎ板の構成>
まず、本鉄道車両の床下塞ぎ板の構成について、
図1~
図8を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の床下塞ぎ板の支持位置における上面図を示す。
図2に、
図1に示すA-A断面図を示す。
図3に、
図1に示すB部詳細図を示す。
図4に、
図3に示すC-C断面図を示す。
図5に、
図3に示すD-D断面図を示す。
図6に、
図5に示す支持軸部の詳細図を示す。
図7に、
図4に示すE矢視図であって、支持位置での支持軸部と被係止部との係合状態を表す。
図8は、
図5に示すF矢視図であって、着脱位置での支持軸部と被係止部との係合状態を表す。
【0021】
図1、
図2に示すように、本鉄道車両の床下塞ぎ板10は、鉄道車両1の床下底面11に形成される開口部12を着脱可能に閉塞する鉄道車両の床下塞ぎ板である。開口部12には、その一端縁121に沿って水平方向に延設された支持軸部3と、その他端縁122に形成された止め部4とを備えている。また、床下塞ぎ板10には、平板状に形成された塞ぎ板本体2と、塞ぎ板本体2に固定され支持軸部3に対して係脱不能に支持される支持位置より塞ぎ板本体2を上方向Xへ所定角度αだけ回動させ、かつ軸方向Yへ所定長d1だけ移動させた着脱位置のみで係脱可能に形成された被係止部5と、塞ぎ板本体2に固定され支持位置で止め部4に連結されるように形成された被止め部6とを備えている。
【0022】
ここで、開口部12には、複数個の支持軸部3と、複数個の止め部4を設けても良く、塞ぎ板本体2を複数個に分割して配置しても良い。また、塞ぎ板本体2には、複数個の支持軸部3に係合される複数個の被係止部5と、複数個の止め部4に連結される複数個の被止め部6を設けても良い。1つの塞ぎ板本体2に対して、複数個の支持軸部3を設ける場合には、支持軸部3の各軸心が一直線上になるように配置される。
【0023】
また、塞ぎ板本体2の支持軸部側には、被係止部5が締結されたブラケット部22が固定されている。ブラケット部22は、水平下段部221と垂直部222と水平上段部223とが階段状に形成されている。水平下段部221に塞ぎ板本体2が固定され、垂直部222と水平上段部223とに被係止部5が締結されている。塞ぎ板本体2の止め部側には、被止め部6が固定されている。被止め部6は、水平下段部61と垂直部62と水平上段部63とが階段状に形成されている。水平下段部61に塞ぎ板本体2が固定され、水平上段部63に止め部4が締結されている。また、被止め部6は、止め部4に水平状に形成された受け面41に対して上方から当接した状態で連結される。被止め部6は、水平上段部63に固定したナット64に、止め部4の下方から挿入する締結ネジ42を係合させて、止め部4と連結する。
【0024】
また、塞ぎ板本体2は、平面視で略矩形状に形成された平板21と、平板21の両側部に上方へ起立する側リブ212とを備えている。塞ぎ板本体2を複数個に分割して配置した場合、側リブ212同士の軸方向Yの隙間d2を介して隣接する。床下塞ぎ板10を着脱するとき、互いに干渉するのを防止するため、隣接するブラケット部22同士の軸方向Yの隙間d3は、側リブ212同士の軸方向Yの隙間d2より大きく形成されている。また、塞ぎ板本体2を支持位置より上方向Xへ所定角度αだけ回動させ、かつ軸方向Yへ所定長d1だけ移動させるときに、隣接する側リブ212の先端部が移動させる塞ぎ板本体2と干渉しないように、側リブ212のブラケット部側の角部212aは、傾斜状に切り欠かれている。また、ブラケット部22同士の軸方向Yの隙間d3は、塞ぎ板本体2を支持位置から着脱位置へ移動させる所定長d1より大きく形成されている。
【0025】
また、
図3~
図8に示すように、支持軸部3には、軸方向Yへ略円柱状に延設された第1軸部3Aと、第1軸部3Aの外周面3A1より凹む切欠き部3B1、3B2が軸方向Yへ延設された第2軸部3Bとを備えている。より具体的には、開口部12の一端縁121には、支持軸部3の軸方向両端部を固定するフランジ部31が形成されている。また、支持軸部3には、一方のフランジ部31Aから軸方向中間部3B3まで軸方向Yへ延設された第1軸部3Aと、軸方向中間部3B3から他方のフランジ部31Bとの接続部3B4まで第1軸部3Aの外周面3A1の外径より小さい間隔d5で軸方向Yへ平行に延設された2つの切欠き部3B1、3B2と第1軸部3Aの外周面3A1と同径の外周面3B5とを有する第2軸部3Bとを備えている。第1軸部と第2軸部は、同軸上で繋がっている。また、2つの切欠き部3B1、3B2は、軸心CCから等距離に形成されている。第2軸部3Bの軸方向長さd7は、被係止部5の軸方向長さd6より大きく形成されている。
【0026】
また、被係止部5には、床下塞ぎ板10の支持位置で第1軸部3Aの外周面3A1と摺接可能に形成された円弧部51と、円弧部51の周端部52、53間に形成され第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2が床下塞ぎ板10の着脱位置で通過可能に形成された空隙部54とを備えている。空隙部54は、被止め部6と反対方向へ開口されている。空隙部54の間隔d4は、第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2同士の間隔d5に対して同一又は僅かに大きく形成されている。第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2は、床下塞ぎ板10の着脱位置で水平軸C1に対して所定角度αだけ傾斜する傾斜方向Zに沿って平行に形成されている。
【0027】
また、支持軸部3には、第1軸部3Aの外周面3A1及び第2軸部3Bの外周面3B5に対して同心上で所定深さγだけ円弧状に凹む逃し部32が形成され、床下塞ぎ板10の支持位置では、逃し部32の両方の周方向端部32a、32bが円弧部51の内周面の範囲内に位置する。また、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して床下塞ぎ板10の支持位置より上方向へ所定角度αだけ回動させたとき、逃し部32の一方の周方向端部32aが円弧部51の内周面の範囲外に位置する。
【0028】
図6に示すように、逃し部32は、支持軸部3の軸心CCに対して内角β(例えば、略110度)で円弧状に形成され、一方の周方向端部32aが、垂直軸C2に対して図面右側の近傍で外周面3B5と交差し、他方の周方向端部32bが、水平軸C1の図面左側で外周面3B5と交差する。また、第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2は、水平軸C1に対して所定角度α(例えば、略20度)で傾斜する傾斜線C3と平行に形成されている。図面下方の切欠き部3B2は、逃し部32内にも形成されている。また、逃し部32の第1軸部3Aの外周面3A1(第2軸部3Bの外周面3B5)に対して凹む深さγは、任意に設定できるが、支持軸部3と被係止部5との間に生じるガタが増大し過ぎないよう、外周面3A1(3B5)から1mm以内が好ましい。
【0029】
<本床下塞ぎ板を着脱する操作方法>
次に、止め部4と被止め部6との連結を解除した後、床下塞ぎ板10を取り外す操作方法について、
図9を用いて説明する。
図9に、
図1に示す床下塞ぎ板の取り外し方法を表す部分断面図を示し、(A)に、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させた状態を示し、(B)に、塞ぎ板本体を支持軸部に対して支持位置より上方向へ所定角度だけ回動させた状態で、着脱位置へ横移動させる状態を示し、(C)に、着脱位置で塞ぎ板本体を平坦軸部の平坦面と平行に傾斜方向へ移動させる状態を示す。
【0030】
図9(A)に示すように、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して
図4に示す支持位置より上方向Xへ所定角度αだけ回動させる。前述したように、支持軸部3には、フランジ部31同士の間で第1軸部3Aの外周面3A1に対して同心上で円弧状に凹む逃し部32が形成され、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して支持位置より上方向へ所定角度αだけ回動させたとき、逃し部32の一方の周方向端部32aが被係止部5の円弧部51における円弧内周面の範囲外に位置する。
【0031】
次に、
図9(B)に示すように、塞ぎ板本体2を支持軸部3の第1軸部3Aに対して支持位置より上方向へ所定角度αだけ回動させた状態で、着脱位置へ横移動させる。そのとき、逃し部32の一方の周方向端部32aが被係止部5の円弧部51における円弧内周面の範囲外に位置するので、支持軸部3と被係止部5との間に微小なガタが生じ得る。そのため、支持軸部3が複数個あって各支持軸部3の軸心が僅かにずれている場合でも、その軸心のずれを支持軸部3と被係止部5との間の微小なガタによって吸収できる。その結果、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して支持位置より上方向へ所定角度αだけ回動させた状態で、軸方向へ所定長だけスムーズに移動させることができる。
【0032】
次に、
図9(C)に示すように、着脱位置では、支持軸部3の第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2と被係止部5の空隙部54とが対峙した状態となり、空隙部54は第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2が着脱位置で通過可能に形成されているので、塞ぎ板本体2を第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2と平行に傾斜方向Zへ移動させる。その結果、被係止部5と支持軸部3との係合を解除することができ、床下塞ぎ板10を開口部12から簡単に取り外すことができる。なお、取り外した床下塞ぎ板10を、鉄道車両1の床下底面11に形成される開口部12に装着する方法は、上述した手順の逆に行えばよい。
【0033】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両の床下塞ぎ板10によれば、開口部12には、その一端縁121に沿って水平方向に延設された支持軸部3と、その他端縁122に形成された止め部4とを備え、床下塞ぎ板10には、平板状に形成された塞ぎ板本体2と、塞ぎ板本体2に固定され支持軸部3に対して係脱不能に支持される支持位置より塞ぎ板本体2を上方向Xへ所定角度αだけ回動させ、かつ軸方向Yへ所定長d1だけ移動させた着脱位置のみで係脱可能に形成された被係止部5と、塞ぎ板本体2に固定され支持位置で止め部4に連結されるように形成された被止め部6とを備えたので、開口部12の止め部4と床下塞ぎ板10の被止め部6との連結が十分でなく、車両走行中に当該連結が解除された場合、又は止め部4と被止め部6との連結操作を忘れた場合でも、支持軸部3に対する塞ぎ板本体2の上方向Xへの回動動作と軸方向Yへの移動動作との2つの動作が行われない限り、鉄道車両1の床下底面11に形成される開口部12に装着された床下塞ぎ板10が脱落することはない。そのため、車両走行時において、床下塞ぎ板10が不用意に脱落する恐れを回避できる。一方、車両床下に固定された各種電気機器や空調機器などを保守点検するときには、止め部4に対する被止め部6の連結を解除した後に、支持軸部3に対して塞ぎ板本体2を支持位置より上方向Xへ所定角度αだけ回動させ、かつ軸方向Yへ所定長d1だけ移動させた着脱位置で、床下塞ぎ板10を簡単に取り外しできる。
【0034】
よって、本実施形態によれば、機器等を保守点検するときには簡単に取り外しできると共に、車両走行時における不用意な脱落を防止できる鉄道車両の床下塞ぎ板10を提供することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、被止め部6は、止め部4に形成された受け面41に対して上方から当接した状態で連結されるので、開口部12の他端縁122に形成された止め部4と床下塞ぎ板10に形成された被止め部6との連結が十分でなく、車両走行中に当該連結が解除された場合でも、支持軸部3に対する塞ぎ板本体2の下方への回動を止め部4によって規制できる。そのため、車両走行中に止め部4と被止め部6との連結が解除された場合でも、鉄道車両1の床下底面11に形成される開口部12に装着された床下塞ぎ板10が、装着状態より下方へ垂れ下がって、線路等に干渉する恐れを回避できる。
【0036】
また、本実施形態によれば、支持軸部3には、軸方向Yへ略円柱状に延設された第1軸部3Aと、第1軸部3Aの外周面3A1より凹む切欠き部3B1、3B2が軸方向Yへ延設された第2軸部3Bとを備え、また、被係止部5には、支持位置で第1軸部3Aの外周面3A1と摺接可能に形成された円弧部51と、円弧部51の周端部52、53間に形成され第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2が着脱位置で通過可能に形成された空隙部54とを備えているので、塞ぎ板本体2が支持位置で支持軸部3を支点に上方向Xへ所定角度αだけ回動しても、支持軸部3の第1軸部3Aに対して被係止部5の円弧部51が常に係合して、被係止部5が支持軸部3から外れることはない。したがって、車両走行時における床下塞ぎ板10の不用意な脱落を防止できる。
【0037】
一方、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して支持位置より上方向Xへ所定角度αだけ回動させ、かつ軸方向Yへ所定長d1だけ移動させた着脱位置では、支持軸部3の第2軸部3Bと被係止部5の空隙部54とが対峙した状態となる。したがって、被係止部5の空隙部54が第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2を通過する傾斜方向Zへ塞ぎ板本体2を移動させ、被係止部5と支持軸部3との係合を解除させることによって、床下塞ぎ板10を簡単に取り外すことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、支持軸部3には、第1軸部3Aの外周面3A1に対して同心上で所定深さγだけ円弧状に凹む逃し部32が形成され、支持位置では、逃し部32の両方の周方向端部32a、32bが円弧部51の内周面の範囲内に位置するので、支持軸部3と被係止部5との間にガタが生じない。そのため、鉄道車両1の床下底面11に形成される開口部12を床下塞ぎ板10によってガタなく確実に閉塞させることができる。また、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して支持位置より上方向Xへ所定角度αだけ回動させたとき、逃し部32の一方の周方向端部32aが円弧部51の内周面の範囲外に位置するので、支持軸部3と被係止部5との間に微小なガタが生じ得る。そのため、支持軸部3が複数個あって各支持軸部3の軸心CCが僅かにずれている場合でも、その軸心CCのずれを支持軸部3と被係止部5との間の微小なガタによって吸収し、塞ぎ板本体2を支持軸部3に対して支持位置より上方向Xへ所定角度αだけ回動させた状態で、軸方向Yへ所定長d1だけスムーズに移動させることができる。その結果、支持位置では床下塞ぎ板10のガタが生じるのを防止しつつ、床下塞ぎ板10を支持位置から着脱位置へ移動させる操作性を、より一層向上させることができる。
【0039】
<変形例>
以上、本実施形態に係る鉄道車両の床下塞ぎ板10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、支持軸部3には、一方のフランジ部31Aから軸方向中間部3B3まで軸方向Yへ延設された第1軸部3Aと、軸方向中間部3B3から他方のフランジ部31Bまで軸方向Yへ延設された第2軸部3Bとを、それぞれ1つ備えている。しかし、これに限定する必要はなく、支持軸部3には、第1軸部3Aと第2軸部3Bとをそれぞれ2つ以上交互に配置しても良い。その場合、被係止部5には、第1軸部3Aの外周面3A1と摺接可能に形成された円弧部51と、円弧部51の周端部52、53間に形成され第2軸部3Bの切欠き部3B1、3B2が着脱位置で通過可能に形成された空隙部54とを、それぞれ2つ以上に分割して備えている。
【0040】
また、本実施形態では、第2軸部3Bには、第1軸部3Aの外周面3A1より凹む切欠き部3B1、3B2を備え、切欠き部3B1、3B2は、水平線C1に対して所定角度αで傾斜する傾斜線C3と平行な平面として表現されている(
図6)。しかし、これに限定する必要はなく、切欠き部3B1、3B2は、両者の最大間隔d5が第1軸部3Aの外周面3A1の外径より小さく形成されていれば、傾斜線C3と平行な平面でなくてもよく、例えば、傾斜線C3に対して傾斜状又は湾曲状に形成されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、鉄道車両の床下底面に形成される開口部を着脱可能に閉塞する鉄道車両の床下塞ぎ板として利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 鉄道車両
2 塞ぎ板本体
3 支持軸部
3A 第1軸部
3A1、3B5 外周面
3B 第2軸部
3B1、3B2 切欠き部
4 止め部
5 被係止部
6 被止め部
10 床下塞ぎ板
11 床下底面
12 開口部
32 逃し部
32a、32b 周方向端部
41 受け面
51 円弧部
52、53 周端部
54 空隙部
121 一端縁
122 他端縁