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  • 特許-粘着フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220523BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018056732
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019167458
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】加茂 実希
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027787(WO,A1)
【文献】特開平05-009449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPC製造用の粘着フィルムであって、
基材と粘着剤層とを有し、
前記粘着剤層は、アミド系モノマー、下記式(1)で示される化合物および2-エチルヘキシルアクリレートを含むアクリル系粘着剤を含む材料で構成されており、
前記アクリル系粘着剤中における前記アミド系モノマーの含有率は、0.01質量%以上5質量%以下であり、
前記アクリル系粘着剤中における前記式(1)で示される化合物の含有率は、0.02質量%以上10質量%以下であり、
前記アクリル系粘着剤中における前記2-エチルヘキシルアクリレートの含有率は、50質量%以上95質量%以下であり、
ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が、50mN/25mm以上100mN/25mm以下であり、かつ、
ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX1[mN/25mm]、ポリイミドフィルムに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後23℃で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX2[mN/25mm]としたとき、1.01≦X2/X1≦4.0の関係を満足することを特徴とする粘着フィルム。
【化1】
(ただし、式(1)中、Xは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素原子数が4以上31以下、酸素原子数と窒素原子数との和が2以上15以下の置換基である。)
【請求項2】
前記粘着剤層の70℃貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さは、5μm以上50μm以下である請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記基材は、ポリエチレンテレフタレートで構成されている請求項1ないしのいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
Cuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が、10mN/25mm以上80mN/25mm以下であり、かつ、
Cuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX3[mN/25mm]、Cuに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後23℃で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX4[mN/25mm]としたとき、1.01≦X4/X3≦4.0の関係を満足する請求項1ないしのいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
適度な粘着力で被着体に貼着することができるとともに、使用目的を終えた際には容易に被着体から剥離する目的で再剥離性粘着フィルムは、フレキシブルプリント基板(FPC)の製造工程における裏打用シートや、半導体ウェハの切断工程、積層セラミックコンデンサーの小片化加工工程における仮止めシート等として、電気・電子業界において広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の再剥離性粘着フィルムでは、被着体に貼着された後に熱履歴(例えば、60℃以上の温度での10秒以上の加熱処理)を受けると、粘着剤層の粘着力が変化し、被着体からの剥離性が低下し、例えば、再剥離性粘着フィルムを用いたFPCの生産性が低下したり、場合によっては、被着体からの剥離の際に糊残りを生じたり、被着体からの剥離自体が困難になる等の問題を生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-200567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被着体に対して適度な粘着力を示し、被着体に貼着された状態で熱履歴を受けた後も、被着体からの再剥離性を維持することができ、フレキシブルプリント基板(FPC)の製造に使用した場合に、FPCの生産性の低下を防止することができる粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) FPC製造用の粘着フィルムであって、
基材と粘着剤層とを有し、
前記粘着剤層は、アミド系モノマー、下記式(1)で示される化合物および2-エチルヘキシルアクリレートを含むアクリル系粘着剤を含む材料で構成されており、
前記アクリル系粘着剤中における前記アミド系モノマーの含有率は、0.01質量%以上5質量%以下であり、
前記アクリル系粘着剤中における前記式(1)で示される化合物の含有率は、0.02質量%以上10質量%以下であり、
前記アクリル系粘着剤中における前記2-エチルヘキシルアクリレートの含有率は、50質量%以上95質量%以下であり、
ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が、50mN/25mm以上100mN/25mm以下であり、かつ、
ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX1[mN/25mm]、ポリイミドフィルムに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後23℃で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX2[mN/25mm]としたとき、1.01≦X2/X1≦4.0の関係を満足することを特徴とする粘着フィルム。
【化1】
(ただし、式(1)中、Xは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素原子数が4以上31以下、酸素原子数と窒素原子数との和が2以上15以下の置換基である。)
【0014】
) 前記粘着剤層の70℃貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である上記(1)に記載の粘着フィルム。
【0015】
) 前記粘着剤層の厚さは、5μm以上50μm以下である上記(1)または(2)に記載の粘着フィルム。
【0016】
) 前記基材は、ポリエチレンテレフタレートで構成されている上記(1)ないし()のいずれかに記載の粘着フィルム。
【0017】
) Cuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が、10mN/25mm以上80mN/25mm以下であり、かつ、
Cuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX3[mN/25mm]、Cuに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後23℃で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX4[mN/25mm]としたとき、1.01≦X4/X3≦4.0の関係を満足する上記(1)ないし()のいずれかに記載の粘着フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被着体に対して適度な粘着力を示し、被着体に貼着された状態で熱履歴を受けた後も、被着体からの再剥離性を維持することができ、フレキシブルプリント基板(FPC)の製造に使用した場合に、FPCの生産性の低下を防止することができる粘着フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の粘着フィルムの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[粘着フィルム]
図1は、本発明の粘着フィルムの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0021】
粘着フィルム10は、フレキシブルプリント基板(FPC)の製造に用いられるものであって、基材1と粘着剤層2とを有している。そして、ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が、50mN/25mm以上100mN/25mm以下であり、かつ、ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX1[mN/25mm]、ポリイミドフィルムに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後23℃で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX2[mN/25mm]としたとき、1.01≦X2/X1≦4.0の関係を満足する。
【0022】
このような条件を満足することにより、被着体に対して適度な粘着力を示し、被着体に貼着された状態で熱履歴を受けた後も、被着体からの再剥離性を維持することができ、フレキシブルプリント基板(FPC)の製造に使用した場合に、FPCの生産性の低下を防止することができる粘着フィルムを提供することができる。
【0023】
なお、本発明において、被着体に対する粘着力の条件で、上記のように、被着体としてポリイミドフィルムを採用したのは、FPCの製造において、広くポリイミドフィルムが用いられているためである。
【0024】
また、粘着フィルム10の被着体(例えば、ポリイミドフィルム)に対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)は、被着体に貼付してから24時間後に、引きはがし角度:90°、引張速度:1m/分という条件で被着体から剥離する際の粘着力を採用することができる。
【0025】
また、粘着力の測定においては、被着体であるポリイミドフィルムとしては、例えば、東レ・デュポン社製、カプトン200Hを用いることができる。
【0026】
これに対し、前記のような条件を満たさないと、満足のいく結果が得られない。
例えば、ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が前記下限値未満であると、被着体に対して十分な粘着力を発揮することができない。また、FPCの製造過程において被着体の位置ずれや剥離等を生じやすくなり、安定的な生産が困難となる。
【0027】
また、ポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が前記上限値を超えると、粘着フィルムの被着体からの再剥離性が低下する。また、製造されたFPCの粘着フィルムからの剥離性が低下することによりFPCの生産性が低下したり、被着体(FPC)への糊残りが生じやすくなったりする。
【0028】
また、前記X2/X1の値が前記下限値未満であると、加熱後に被着体(特に、ポリイミドで構成された被着体)に貼付した粘着フィルムの浮きが発生しやすくなる。
【0029】
また、前記X2/X1の値が前記上限値を超えると、粘着フィルムの被着体からの再剥離性が低下する。また、製造されたFPCの粘着フィルムからの剥離性が低下することによりFPCの生産性が低下したり、被着体(FPC)への糊残りが生じやすくなったりする。
なお、本発明において、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。
【0030】
前述したように、粘着フィルム10のポリイミドフィルムに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)は、50mN/25mm以上100mN/25mm以下であればよいが、55mN/25mm以上95mN/25mm以下であるのが好ましく、60mN/25mm以上90mN/25mm以下であるのがより好ましく、65mN/25mm以上85mN/25mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0031】
また、前述したように、粘着力X1と粘着力X2との間では、1.01≦X2/X1≦4.0の関係を満足していればよいが、1.05≦X2/X1≦3.5の関係を満足しているのが好ましく、1.10≦X2/X1≦3.0の関係を満足しているのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0032】
また、粘着フィルム10は、Cuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)が、10mN/25mm以上80mN/25mm以下であり、かつ、Cuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX3[mN/25mm]、Cuに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後23℃で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)をX4[mN/25mm]としたとき、1.01≦X4/X3≦4.0の関係を満足するのが好ましい。
【0033】
これにより、例えば、FPCの製造において、Cuで構成された層の表面に粘着フィルム10を貼着する場合において、前述したのと同様の効果が得られる。
【0034】
粘着フィルム10のCuに対する23℃での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)は、10mN/25mm以上80mN/25mm以下であるのが好ましいが、15mN/25mm以上60mN/25mm以下であるのがより好ましく、20mN/25mm以上50mN/25mm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0035】
また、粘着力X3と粘着力X4との間では、1.01≦X4/X3≦4.0の関係を満足しているのが好ましいが、1.05≦X4/X3≦3.5の関係を満足しているのがより好ましく、1.10≦X4/X3≦3.0の関係を満足しているのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0036】
なお、粘着力の測定においては、被着体であるCuとしては、例えば、久宝金属製作所社製、R150を用いることができる。
【0037】
<基材>
基材1は、粘着剤層2を支持する機能を有するものである。
基材1は、例えば、緻密なフィルム状、織布、不織布、紙、多孔質体等、いかなる形態のものであってもよい。
【0038】
基材1の構成材料は、特に限定されず、例えば、樹脂材料、金属材料、パルプ等の植物性繊維等が挙げられるが、樹脂材料が好適に用いられる。
【0039】
基材1を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ-p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
中でも、基材1は、ポリエチレンテレフタレートで構成されているのが好ましい。
これにより、粘着フィルム10の強度をより向上させることができ、粘着フィルム10をロール状に巻き取りやすくなる。
【0041】
また、基材1は、前述した以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
【0042】
また、基材1は、単層より構成されるものであってもよいし、複数の層を備える積層体であってもよい。また、基材1は、例えば、厚さ方向に組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
【0043】
基材1は、例えば、粘着剤層2との密着性を向上させる等の目的で、表面処理が施されたものであってもよい。
このような表面処理としては、例えば、コロナ処理等が挙げられる。
【0044】
基材1の厚さは、特に限定されないが、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、20μm以上75μm以下であるのがより好ましい。
【0045】
<粘着剤層>
粘着剤層2は、粘着フィルム10を被着体に貼付する際に、当該被着体に接触する部位である。
【0046】
粘着剤層2を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。中でも、粘着剤層2は、アクリル系粘着剤を含んでいるのが好ましい。
【0047】
これにより、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をより容易かつより確実に得ることができる。
【0048】
以下、粘着剤層2を構成する粘着剤の一例としてのアクリル系粘着剤について、詳細に説明する。
【0049】
アクリル系粘着剤は、粘着性を付与する主モノマー、架橋性官能基を有するモノマー、架橋を促進させるモノマー、凝集力を付与するモノマー、その他のモノマーとの共重合体と、架橋剤等を含有する。
【0050】
粘着性を有する主モノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
架橋性官能基を有するモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、アリルアルコール等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
アクリル系粘着剤は、2-エチルヘキシルアクリレートを主モノマーとして含んでいるのが好ましい。
【0053】
これにより、粘着剤にタック性を好適に付与し、粘着フィルム10の被着体への濡れ性をさらに向上させることができる。また、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をより容易かつより確実に得ることができる。
【0054】
アクリル系粘着剤中における2-エチルヘキシルアクリレートの含有率は、50質量%以上95質量%以下であるのが好ましく、60質量%以上92質量%以下であるのがより好ましく、70質量%以上90質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
これにより、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をさらに容易かつさらに確実に得ることができる。
【0056】
また、アクリル系粘着剤は、アミド系モノマーを含んでいるのが好ましい。
これにより、例えば、アクリル系粘着剤および架橋剤を含む組成物を用いて粘着剤層2を形成する場合に、アクリル系粘着剤(特に、構成モノマーとしてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むアクリル系粘着剤)と架橋剤との架橋反応を好適に進行させることができる。その結果、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をより容易かつより確実に得ることができる。
【0057】
アクリル系粘着剤を構成するアミド系モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;エトキシメチルアクリルアミド、プロポキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルメタクリルアミド、プロポキシメチルメタクリルアミド、ブトキシメチルメタクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-ブチルメタクリルアミド等のN-アルカノール化(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0058】
中でも、粘着剤層2は、アミド系モノマーとして(メタ)アクリルアミドを含んでいるのが好ましく、メタクリルアミドを含んでいることがさらに好ましい。
【0059】
これにより、例えば、アクリル系粘着剤および架橋剤を含む組成物を用いて粘着剤層2を形成する場合に、アクリル系粘着剤(特に、構成モノマーとしてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むアクリル系粘着剤)と架橋剤との架橋反応をより好適に進行させることができる。その結果、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をさらに容易かつさらに確実に得ることができる。
【0060】
アクリル系粘着剤中におけるアミド系モノマーの含有率は、0.01質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.03質量%以上3質量%以下であるのがより好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0061】
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。これに対し、アミド系モノマーの含有率が前記下限値未満であると、前述したアミド系モノマーを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、アミド系モノマーの含有率が前記上限値を超えると、粘着剤層形成用組成物のポットライフが短くなってしまう可能性がある。
【0062】
また、アクリル系粘着剤は、下記式(1)で示される化合物を構成モノマーとして含んでいるのが好ましい。
【0063】
【化2】
(ただし、式(1)中、Xは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素原子数が4以上31以下、酸素原子数と窒素原子数との和が2以上15以下の置換基である。)
【0064】
これにより、粘着剤の凝集力を適度に向上させることができる。その結果、被着体に対する粘着フィルム10の粘着力を適度に低くさせることができ、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をより容易かつより確実に得ることができる。
【0065】
式(1)中のRの炭素原子数は、4以上31以下であるが、7以上25以下であるのが好ましく、10以上20以下であるのがより好ましい。
【0066】
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。これに対し、式(1)中のRの炭素原子数が前記下限値未満であると、前述したような式(1)で示される化合物を構成モノマーとして含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、式(1)中のRの炭素原子数が前記上限値を超えると、被着体に対する粘着フィルム10の粘着力が低下しすぎる可能性がある。
【0067】
式(1)中のRの酸素原子数と窒素原子数との和は、2以上15以下であるが、3以上12以下であるのが好ましく、4以上10以下であるのがより好ましい。
【0068】
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。これに対し、式(1)中のRの酸素原子数と窒素原子数との和が前記下限値未満であると、前述したような式(1)で示される化合物を構成モノマーとして含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、式(1)中のRの酸素原子数と窒素原子数との和が前記上限値を超えると、被着体に対する粘着フィルム10の粘着力が低下しすぎる可能性がある。
【0069】
なお、式(1)中のRは、酸素原子数、窒素原子数のうち一方のみを含んでいて、他方を含まないものであってもよい。
【0070】
式(1)中のRは、直鎖構造を有しているのが好ましい。
これにより、粘着剤分子の絡み合いがより生じやすくなり、粘着剤の凝集力をより適度に向上させることができる。その結果、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をさらに容易かつさらに確実に得ることができる。
【0071】
また、式(1)で示される化合物の分子量は、50以上2000以下であるのが好ましく、100以上1800以下であるのがより好ましく、200以上1500以下であるのがさらに好ましい。式(1)で示される化合物としては、例えば、ジ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ヘプタ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、オクタ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ペンタデカ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
これにより、粘着剤分子の絡み合いがより生じやすくなり、粘着剤の凝集力をより適度に向上させることができる。その結果、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をさらに容易かつさらに確実に得ることができる。
【0073】
アクリル系粘着剤中における前記式(1)で示される化合物の含有率は、0.02質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以上5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0074】
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。これに対し、式(1)で示される化合物の含有率が前記下限値未満であると、前述した式(1)で示される化合物を含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、式(1)で示される化合物の含有率が前記上限値を超えると、被着体に対する粘着フィルム10の粘着力が低下しすぎる可能性がある。
【0075】
アクリル系粘着剤中における架橋性官能基を有するモノマーの含有率は、3質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、4質量%以上15質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以上12質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0076】
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。これに対し、架橋性官能基を有するモノマーの含有率が前記下限値未満であると、前述した架橋性官能基を有するモノマーを含むことによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、架橋性官能基を有するモノマーの含有率が前記上限値を超えると、被着体に対する粘着フィルム10の粘着力が低下しすぎる可能性がある。また、粘着剤層形成用組成物のポットライフが短くなってしまう可能性がある。
【0077】
アクリル系粘着剤は、上記以外の構成モノマーを含んでいてもよい。
このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、2-カルボキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルアセトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
ただし、アクリル系粘着剤中におけるアクリル酸およびメタクリル酸の含有率の和は、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、2質量%以下であるのがさらに好ましい。特に、アクリル系粘着剤は、アクリル酸およびメタクリル酸を構成モノマーとして含んでいないのが好ましい。
【0079】
特に、粘着剤層2を構成する粘着剤は、構成モノマーとして、2-エチルヘキシルアクリレート、アミド系モノマー(特に、メタクリルアミド)、式(1)で示される化合物および4-ヒドロキシブチルアクリレートを前述した含有率で含んでいるのが好ましく、これらのモノマーを前述した含有率で含み、かつ、アクリル酸、メタクリル酸を含んでいないのがより好ましい。
【0080】
これにより、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をさらに容易かつさらに確実に得ることができる。また、粘着フィルム10を被着体に貼付した状態で加熱した後に剥離した際に、被着体への汚染が生じにくい。
【0081】
粘着剤層2を構成する粘着剤は、架橋剤により架橋された構造を有していてもよい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、およびアミノ樹脂系架橋剤が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
中でも、イソシアネート基を有する化合物を主成分として含有する架橋剤(イソシアネート系架橋剤)が好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0083】
また、多価イソシアネート化合物は、例えば、前述の化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、イソシアヌレート環を有するイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0084】
粘着剤層2は、粘着剤以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、ロジン、ロジンエステル等の粘着付与剤、改質剤、防錆剤、スメクタイト、カオリン、タルク、マイカ、バーミキュライト、パイロフィライト、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、ウレタン樹脂以外の粘着剤(樹脂材料)、帯電防止剤、重合禁止剤、錫系やチタン系等の架橋促進剤、反応抑制剤、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤、消泡剤等が挙げられる。
【0085】
粘着剤層2の70℃貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であるのが好ましく、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であるのがより好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であるのがさらに好ましい。
【0086】
これにより、前述したような粘着力についての条件を満足する粘着フィルム10をより容易かつより確実に得ることができる。
【0087】
なお、粘着剤層2の70℃貯蔵弾性率は、例えば、直径8mm、厚さ3mmの円柱状の粘着剤層2の試験片について、粘弾性測定装置(例えば、Anton Paar社製、MCR300)を用いて、1Hz、70℃の環境下で、ねじりせん断法により測定することができる。
【0088】
粘着剤層2の厚さは、5μm以上50μm以下であるのが好ましく、7μm以上40μm以下であるのがより好ましく、10μm以上30μm以下であるのがさらに好ましい。
【0089】
[粘着フィルムの製造方法]
次に、本発明の粘着フィルムの製造方法について説明する。
【0090】
前述したような基材1を用意する。
そして、粘着剤層2を形成する。粘着剤層2の形成方法は、特に限定されないが、用意した基材1の一方の面上に、粘着剤層2の形成用の組成物(粘着剤層形成用組成物)を付与することにより好適に形成することができる。
【0091】
粘着剤層2を形成するための粘着剤層形成用組成物の付与は、例えば、液状の粘着剤層形成用組成物(塗工液)を、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、ナイフコート、ダイコート、バーコート等の各種塗布法により、基材1上に塗布することにより行うことができる。
その後、塗工液の塗膜を架橋させることにより、粘着剤層2を形成することができる。
【0092】
粘着剤層2は、塗工液としての粘着剤層形成用組成物と異なる組成を有するものであってもよい。例えば、粘着剤層形成用組成物を塗工した後、含まれる溶媒を除去してもよいし、硬化反応、架橋反応を進行させることにより、重合度、架橋度を異なるものとしてもよい。粘着剤層形成用組成物が架橋剤を含む場合、当該架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましい。また、粘着剤層形成用組成物中における架橋剤の含有量は、当該架橋剤により架橋されるべき粘着剤100質量部に対し、5質量部以上18質量部以下であるのが好ましく、8質量部以上15質量部以下であるのがより好ましい。
【0093】
また、粘着剤層2の形成に際して、粘着剤層形成用組成物と他の成分とを混合して、塗工液を調整してもよい。例えば、粘着剤層2の形成に際して、粘着剤層形成用組成物と溶媒とを混合してもよい。
【0094】
塗工液は塗工可能なものであればよく、塗工液における固形分濃度は、特に限定されないが、10質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上50質量%以下であるのがより好ましい。
【0095】
塗工液の乾燥温度は、80℃以上130℃以下であるのが好ましい。
これにより、構成材料の不本意な変性劣化等をより効果的に防止しつつ、粘着フィルム10の生産性をより優れたものとすることができる。
【0096】
また、粘着剤層2は、いったん剥離ライナー上に形成し、その後、基材1に貼り合せて、粘着フィルム10を製造してもよい。
【0097】
[被着体]
本発明の粘着フィルムが貼着される被着体としては、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)や、その原料(FPC製造用のフィルム材等)等が挙げられ、粘着フィルム(粘着テープ)としては、これらの製造過程で用いられるもの(例えば、キャリアテープ)が挙げられる。
【0098】
特に、本発明の粘着フィルムは、被着体としてのFPC製造用のフィルム材(例えば、ポリイミドフィルムと銅箔とを備えた積層体)に貼着される粘着フィルム(特に、FPCの製造過程において用いられるFPC用キャリアテープ)であるのが好ましい。
【0099】
FPCは、その製造過程において、粘着フィルムを貼着した状態で、比較的高い温度で熱処理に曝される。例えば、30kg/cm程度の圧力で加圧しつつ、160℃程度の熱処理が施される。
【0100】
また、本発明の粘着フィルムが貼着される被着体は、表面がポリイミドで構成された部材であるのが好ましい。
これにより、前述したような本発明による効果がさらに確実に発揮される。
【0101】
また、被着体は、一方の面がポリイミドで構成され、他方の面がCuで構成されていてもよい。
【0102】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0103】
例えば、本発明に係る粘着フィルムは、基材と粘着剤層との間に、少なくとも1層の中間層を有するものであってもよい。
【0104】
また、本発明に係る粘着フィルムは、基材の粘着剤層に対向する面とは反対の面側に、少なくとも1層の被覆層を有するものであってもよい。例えば、基材の粘着剤層に対向する面とは反対の面側は、印刷層が設けられていてもよい。また、印刷層との密着性を向上させるために、印刷用コート層等が設けられていてもよい。また、粘着フィルムの表面を保護する等の機能を有するコート層が設けられていてもよい。
【0105】
また、本発明に係る粘着フィルムにおいては、粘着剤層の表面(基材に対向する面とは反対側の面)が剥離ライナーで保護されていてもよい。
【実施例
【0106】
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(23℃)、相対湿度50%において行ったものである。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(23℃)、相対湿度50%における数値である。また、以下の記載での粘着力は、角度:90°、速度:1m/分という条件で被着体から剥離する際の粘着力のことである。
【0107】
[1]粘着フィルムの製造
(実施例1)
まず、モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)と、上記式(1)で示される化合物(ただし、式(1)中のXが水素原子、Rが-(CHCHO)CHである化合物)と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)と、メタクリルアミド(mAAm)とを、質量比で、90.5:2.0:7.0:0.5の割合で含むアクリル系粘着剤(重合体)を用意した。
【0108】
このアクリル系粘着剤100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートHX)12質量部とを混合し、メチルエチルケトンで希釈し固形分濃度30%の粘着剤層形成用組成物を得た。
【0109】
次に、基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その表面にコロナ処理を施した。
【0110】
次に、基材のコロナ処理を施した面に、上記のようにして調製した粘着剤層形成用組成物を、ロールコーターを用いて10μmの塗布厚で塗布し、90℃で1分間乾燥し、その後、剥離ライナーとして、シリコーンによる剥離処理がなされた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせた。
【0111】
その後、温度23℃の環境下で7日間養生して、基材、粘着剤層および剥離ライナーがこの順で積層されてなる粘着フィルムを得た。
【0112】
(実施例2~8)
粘着剤層を構成する粘着剤のモノマー組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを製造した。
【0113】
(比較例1、2)
粘着剤層を構成する粘着剤のモノマー組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして粘着フィルムを製造した。
【0114】
前記各実施例および各比較例の粘着フィルムの粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤のモノマー組成を表1にまとめて示した。なお、表1中、2-エチルヘキシルアクリレートを「2EHA」、上記式(1)で示される化合物(ただし、式(1)中のXが水素原子、Rが-(CHCHO)CHである化合物)を「(1)―A」、上記式(1)で示される化合物(ただし、式(1)中のXが水素原子、Rが-(CHCHO)CHである化合物)を「(1)―B」、上記式(1)で示される化合物(ただし、式(1)中のXが水素原子、Rが-(CHCHO)CHである化合物)を「(1)―C」、上記式(1)で示される化合物(ただし、式(1)中のXが水素原子、Rが-(CHCHO)15CHである化合物)を「(1)―D」、4-ヒドロキシブチルアクリレートを「4HBA」、メタクリルアミドを「mAAm」、アクリルアミドを「AAm」と示した。また、表1中には、粘着フィルムのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H)に対する室温(23℃)での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)X1[mN/25mm]、粘着フィルムを当該ポリイミドフィルムに貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後室温(23℃)で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)X2[mN/25mm]、粘着フィルムの銅箔(久宝金属製作所社製、R150)に対する室温(23℃)での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)X3[mN/25mm]、粘着フィルムを当該銅箔に貼着した状態で70℃×1分間の熱処理を施し、その後室温(23℃)で24時間静置した後の90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)X4[mN/25mm]、粘着剤層の70℃貯蔵弾性率も示した。なお、X1、X3の測定は、被着体に粘着フィルムを貼着してから1時間放置した後に行った。
【0115】
【表1】
【0116】
[2]評価
<FPCの生産性(粘着フィルムの剥離の作業性)>
まず、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H)を用意し、その表面に、前記のように製造した粘着フィルムを貼着した。
【0117】
次に、ポリイミドフィルム上の粘着フィルムに対し、30kg/cmで加圧しつつ、160℃×60分間の熱処理(熱プレス)を行った(加熱加圧処理)。
【0118】
その後、ポリイミドフィルムから粘着フィルムを剥離し、その際の作業性について、以下の基準に従い評価した。剥離が容易であるほど、FPCの生産性が高いといえる。
【0119】
A:被着体を安定的に固定しつつも、きわめて容易に剥離することができる。
B:被着体を安定的に固定しつつも、容易に剥離することができる。
C:被着体を剥離する際の抵抗がやや大きいものの、問題なく剥離することができる。
D:被着体を剥離する際の抵抗がやや大きく、剥離がやや困難である。
E:被着体を剥離する際の抵抗が大きく、剥離が困難である。
【0120】
<糊残り(再剥離性)>
前記各実施例および各比較例の粘着フィルム(剥離ライナーで保護された状態の粘着フィルム)について、幅25mm×長さ150mmの大きさに切断し、それぞれ複数の試験片を得た。
【0121】
前記各実施例および各比較例の粘着フィルムを、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H)に貼着し、160℃×60分間加熱した。
【0122】
その後、ポリイミドフィルムから粘着フィルムを剥離し、粘着フィルムが剥離されたポリイミドフィルム表面について、目視による観察を行い、以下の基準に従い評価した。
【0123】
A:糊残りが全く認められない。
B:糊残りがほとんど認められない。
C:糊残りがわずかに認められる。
D:糊残りがはっきりと認められる。
E:糊残りが顕著に認められる。
【0124】
<架橋速度>
前記各実施例および各比較例の粘着フィルムの製造において、それぞれ、養生の際の温度条件を40℃にした以外は、前記と同様にして粘着フィルムを製造した。
【0125】
23℃で7日間養生を行った粘着フィルムのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H)に対する室温(23℃)での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)X1[mN/25mm]と、23℃で7日間養生の後さらに40℃で7日間加熱促進を行った粘着フィルムのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H)に対する室温(23℃)での90°引きはがし粘着力(引張速度1m/分)X5[mN/25mm]とを測定し、これらの結果から、(X1/X5)×100[%]の値を求めた。(X1/X5)×100の数値が100に近いほど、架橋速度が速く、室温での養生において架橋反応がより好適に進行していると言え、(X1/X5)×100の数値が100よりも大きいほど、架橋速度が遅く、室温での養生において架橋反応が十分に進行しておらず、室温での養生の後、更に加熱促進が必要となる。なお、X1、X5の測定は、被着体に粘着フィルムを貼着してから1時間放置した後に行った。
これらの結果を、表2にまとめて示す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2から明らかなように、本発明では優れた結果が得られたのに対し、比較例では満足のいく結果が得られなかった。より具体的には、比較例1、2では、FPCの生産性(粘着フィルムの剥離の作業性)、糊残り(再剥離性)の評価が低かった。特に、粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤がアミド系モノマーを含んでいない比較例2では、アクリル系粘着剤と架橋剤との架橋反応が好適に進行していなかった。
【0128】
また、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン200H)の代わりに銅箔(久宝金属製作所社製、R150)を被着体として用いた以外は、前記の<FPCの生産性(粘着フィルムの剥離の作業性)>と同様にして評価を行ったところ、本発明の粘着フィルムでは、優れた剥離性を示した。
【0129】
また、粘着フィルムを、ポリイミドフィルムの代わりに銅箔(久宝金属製作所社製、R150)を用いた以外は、前記の<糊残り(再剥離性)>と同様の評価を行ったところ、本発明の粘着フィルムでは、前記と同様に、糊残りの発生が効果的に防止されていることが確認された。
【0130】
また、ポリイミドフィルムの代わりに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、前記と同様の測定、評価を行ったところ、前記と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0131】
10…粘着フィルム
1…基材
2…粘着剤層
図1