(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】撮影画像データ処理装置および撮影画像データ処理方法
(51)【国際特許分類】
G06V 40/10 20220101AFI20220523BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220523BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G06V40/10
G06T7/00 510B
G06T1/00 400H
(21)【出願番号】P 2018072145
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩一郎
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-236141(JP,A)
【文献】特表2010-520542(JP,A)
【文献】特開2002-049912(JP,A)
【文献】特開2013-182601(JP,A)
【文献】特開2003-291084(JP,A)
【文献】特開2011-118452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00
G06V 40/00-40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラの撮影結果に基づいて生成された撮影画像データを記憶する撮影画像データ記憶部と、
前記撮影画像データ記憶部に記憶された前記撮影画像データの外部装置への送信が指示された場合、生体情報が形成され得る人間の身体の部分である身体部分の画像が前記撮影画像データに含まれているか否かを判定する身体有無判定部と、
前記身体有無判定部により前記撮影画像データに前記身体部分の画像が含まれていると判定された場合、前記撮影画像データを複製して複製データを生成する撮影画像データ複製部と、
前記撮影画像データ複製部により生成された前記複製データを対象として、前記身体部分に形成された前記生体情報の画像である生体情報画像に対して、前記身体部分の外観の全体的な特徴を維持しつつ、前記前記生体情報画像の生体認識への利用を防止する画像処理を施す
一方、前記複製データの元となった前記撮影画像データについては更新を行わない画像処理実行部と、
前記画像処理実行部により画像処理が施された後の前記複製データを前記外部装置に送信する複製データ送信部と、
を備えることを特徴とする撮影画像データ処理装置。
【請求項2】
前記画像処理実行部は、
前記生体情報が形成されている前記身体部分の全体的な形状および全体的な色合いを維持しつつ、前記前記生体情報画像の生体認識への利用を防止する画像処理を施す
ことを特徴とする請求項1に記載の撮影画像データ処理装置。
【請求項3】
前記画像処理実行部は、
前記生体情報が認識できない程度に前記前記生体情報画像を粗くする画像処理を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮影画像データ処理装置。
【請求項4】
前記画像処理実行部は、前記前記生体情報画像を粗くする画像処理として、解像度を落とす処理、または、ぼかし処理の何れかを実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮影画像データ処理装置。
【請求項5】
前記画像処理実行部は、
前記生体情報の特徴を改変する画像処理を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮影画像データ処理装置。
【請求項6】
前記生体情報は、指先に形成された指紋、目に形成された虹彩、および、手の平に形成された静脈の何れか1つを少なくとも含み、
前記画像処理実行部は、
前記生体情報が指紋の場合は指紋の模様を改変し、前記生体情報が虹彩の場合は虹彩の模様を改変し、前記生体情報が静脈の場合は静脈の模様を改変する
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の撮影画像データ処理装置。
【請求項7】
カメラの撮影結果に基づいて生成された撮影画像データを記憶する撮影画像データ記憶部を備える撮影画像データ処理装置による撮影画像データ処理方法であって、
前記撮影画像データ処理装置の身体有無判定部が、前記撮影画像データ記憶部に記憶された前記撮影画像データの外部装置への送信が指示された場合、生体情報が形成され得る人間の身体の部分である身体部分の画像が前記撮影画像データに含まれているか否かを判定するステップと、
前記撮影画像データ処理装置の撮影画像データ複製部が、前記身体有無判定部により前記撮影画像データに前記身体部分の画像が含まれていると判定された場合、前記撮影画像データを複製して複製データを生成するステップと、
前記撮影画像データ処理装置の画像処理実行部が、前記撮影画像データ複製部により生成された前記複製データを対象として、前記身体部分に形成された前記生体情報の画像である生体情報画像に対して、前記身体部分の外観の全体的な特徴を維持しつつ、前記前記生体情報画像の生体認識への利用を防止する画像処理を施す
一方、前記複製データの元となった前記撮影画像データについては更新を行わないステップと、
前記撮影画像データ処理装置の複製データ送信部が、前記画像処理実行部により画像処理が施された後の前記複製データを前記外部装置に送信するステップと、
を備えることを特徴とする撮影画像データ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影画像データ処理装置および撮影画像データ処理方法に関し、特に、外部装置に送信される撮影画像データを処理する撮影画像データ処理装置、および、当該装置による撮影画像データ処理方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、専用のデジタルカメラや、デジタルカメラ付きの携帯端末が広く普及しており、多くのユーザーが気軽にデジタルカメラにより撮影を行っている現状がある。デジタルカメラによる撮影に関し、デジタルカメラで撮影される対象に人間が含まれるケースは多々ある。また、近年、SNS(social networking service)の普及に伴い、デジタルカメラにより生成された撮影画像データが、所定のサーバーにアップロード(送信)され、撮影画像データに基づく画像が公開されることが広く行われてきている。この他、従来より、メールにより関係者に撮影画像データが送信され、受信した撮影画像データに基づく画像をこの関係者が閲覧することが広く行われている。
【0003】
また、近年、ATMへのログインのための認証や、携帯端末のロックを解除するための認証、建物や建物における特定の部屋への入室のための認証等の各種認証が、人間の身体に属する生体情報を利用した生体認証により行われることが広く行われてきている。生体情報は、例えば、指紋、虹彩、静脈である。周知のとおり、生体認証は、パスワードの入力による認証やICカードを利用した認証等と比較して、本人以外の第三者が認証されてしまうことをより確実に防止することができ、今後より一層普及してくものと想定される。
【0004】
ここで、特許文献1には、撮影画像データ(写真)を含む処理対象データについて、個人を特定することが可能な個人情報(他の情報と連関して個人を特定することが可能となる情報を含む)が含まれている場合には、個人情報を加工する技術が記載されている。特許文献1には、個人情報の加工方法として、モザイクをかける方法が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、人間が撮影されることによって生成された撮影画像データには、人間の身体の部分に形成された生体情報の画像(以下、「生体情報画像」という)が含まれている場合がある。例えば、指先に形成された指紋の画像が撮影画像データに含まれている場合がある。生体情報画像が含まれている撮影画像データについて、メールによる送信や、サーバーへの送信が行われ、当該撮影画像データを第三者が利用可能な状態となった場合、当該撮影画像データが生体情報を用いて行われる生体認証に悪用される可能性がある。
【0007】
このような撮影画像データの悪用を防止するため、生体情報画像が含まれている撮影画像データについては、特許文献1で例示された方法で生体情報画像を加工することが考えられる。しかしながら、特許文献1では、加工する対象の情報が個人情報であるため、画像を視認する第三者が個人情報の内容を認識できなくなる程度に強いモザイクを個人情報の全体または一部にかけることになる。このような特許文献1で例示された方法を利用して生体情報画像を加工した場合、モザイクが目立ってしまい、撮影画像データに基づく画像を閲覧する第三者が違和感を覚える可能性がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、外部装置に送信された撮影画像データが悪用されることを防止した上で、撮影画像データに基づく画像を視認する第三者が違和感を覚えることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の撮影画像データ処理装置は、撮影画像データ記憶部に記憶された撮影画像データの外部装置への送信が指示された場合、生体情報が形成され得る人間の身体の部分である身体部分の画像が撮影画像データに含まれているか否かを判定し、含まれている場合、撮影画像データを複製して複製データを生成する。そして、本発明の撮影画像データ処理装置は、複製データを対象として、生体情報の画像である生体情報画像に対して、身体部分の外観の全体的な特徴を維持しつつ、生体情報画像の生体認識への利用を防止する画像処理を施す一方、複製データの元となった撮影画像データについては更新を行わず、画像処理が施された後の複製データを外部装置に送信する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した本発明によれば、外部装置に対して送信されるデータは、生体情報画像の生体認識への利用を防止する画像処理が施された後のデータであるため、撮影画像データが悪用されることを防止できる。さらに、本発明によれば、画像処理の後も生体情報が形成されている人間の身体の部分の外観の全体的な特徴が維持されるため、画像処理の前後で人間の身体の部分の画像の内容が大きく変わってしまうことを抑制でき、第三者が撮影画像データに基づく画像を視認したときに違和感を覚えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る携帯端末の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】生体情報が形成され得る範囲の説明に利用する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る携帯端末の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る携帯端末1(特許請求の範囲の「撮影画像データ処理装置」に相当)の機能構成例を示すブロック図である。携帯端末1は、ユーザーが持ち運び可能な小型の端末である。特に本実施形態では、携帯端末1は、デジタルカメラ2が搭載され、前面の広い領域にタッチスクリーン3が設けられた板状の端末(例えば、スマートフォンやタブレット型コンピューター)である。また、携帯端末1は、通信モジュール4を備え、各種ネットワークにアクセス可能である。
【0013】
図1に示すように、携帯端末1は、機能構成として、送信指示受付部10、身体有無判定部11、撮影画像データ複製部12、画像処理実行部13および複製データ送信部14を備える。上記各機能ブロック10~14は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~14は、実際にはコンピューターのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリー等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。また、携帯端末1は、記憶手段として、撮影画像データ(後述)を記憶する撮影画像データ記憶部20と、複製データ(後述)を記憶する複製データ記憶部21とを備える。
【0014】
タッチスクリーン3は、液晶表示パネルや有機ELパネル等の表示パネルと、表示パネルに重ねて配置され、タッチ操作を検出するタッチパネルとを備える。デジタルカメラ2は、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサー等の撮像素子を有する撮影装置である。ユーザーは、タッチスクリーン3をタッチ操作してデジタルカメラ2に撮影を行わせることができる。デジタルカメラ2は撮影結果に基づいて撮影画像データを生成し、生成した撮影画像データを撮影画像データ記憶部20に記憶する。通信モジュール4は、所定の通信規格に従って、LANや、移動体通信ネットワークにアクセスする。
【0015】
送信指示受付部10は、撮影画像データ記憶部20に記憶された撮影画像データのうち、特定の撮影画像データ(複数の撮影画像データであってもよい)について、特定の送信方法で外部装置に送信することの指示(以下、「送信指示」という)をタッチスクリーン3から受け付ける。送信方法は、例えば、メールに撮影画像データを添付して送信するやり方や、インターネット上の特定のサーバーにアップロード(送信)するやり方である。なお、近年、SNSの普及に伴い、携帯端末1のデジタルカメラ2の撮影結果に基づく撮影画像データを、SNSを利用して公開するために特定のサーバーにアップロードすることが広く行われるようになってきている。
【0016】
送信指示受付部10は、送信指示があった場合、送信する対象の撮影画像データの識別情報を身体有無判定部11に通知すると共に、送信方法を複製データ送信部14に通知する。本実施形態では、撮影画像データは、所定のファイルフォーマットの画像データであり、識別情報は当該所定のファイルフォーマットに従って撮影画像データにメタデータとして記述されている。
【0017】
身体有無判定部11は、送信指示受付部10から通知された識別情報の撮影画像データについて、生体情報が形成され得る人間の身体の部分の画像が撮影画像データに含まれているか否かを判定する。以下、身体有無判定部11の処理について詳述する。なお、身体有無判定部11は、所定のデコーダーにより撮影画像データを復元し、作業用のバッファーに展開した後、以下の処理を実行する。
【0018】
本実施形態では、生体情報は、指先に形成される指紋、目(より厳密には目の黒目の部分)に形成される虹彩、および、手の平に形成される静脈である。身体有無判定部11は、指紋に関し、人間の手の指先の手の平側(=爪の反対側)の画像が撮影画像データに含まれている場合、生体情報が形成され得る人間の身体の部分の画像が撮影画像データに含まれていると判定する。例えば、被写体としての人間が普通のやり方でピースサインをしている状態や、被写体としての人間がデジタルカメラ2のレンズに手の平が向かうように手を開いている状態で撮影された場合に、指紋に係る生体情報画像が撮影画像データに含まれることになる。
【0019】
また、身体有無判定部11は、虹彩に関し、開いた状態の人間の目の画像が撮影画像データに含まれている場合、生体情報が形成され得る人間の身体の部分の画像が撮影画像データに含まれていると判定する。例えば、被写体としての人間が、デジタルカメラ2のレンズに顔が対向した状態(ただし、サングラス等の目を覆う部材をしておらず、また、目を閉じていないものとする)で撮影された場合に、虹彩に係る生体情報画像が撮影画像データに含まれることになる。また、身体有無判定部11は、手の平の静脈に関し、手の平の画像が撮影画像データに含まれている場合、生体情報が形成され得る人間の身体の部分の画像が撮影画像データに含まれていると判定する。例えば、被写体としての人間が、デジタルカメラ2のレンズに手の平が向かうように手を開いた状態で撮影された場合に、静脈に係る生体情報画像が撮影画像データに含まれることになる。
【0020】
なお、身体有無判定部11による判定は、パターンマッチング処理を利用した画像認識処理、その他の既存の画像認識処理に基づいて適切に行われる。
【0021】
身体有無判定部11は、生体情報が形成され得る人間の身体の部分の画像が撮影画像データに含まれていると判定した場合、撮影画像データ複製部12に撮影画像データの識別情報を通知する。なお、詳細は省略するが、生体情報が形成され得る人間の身体の部分の画像が撮影画像データに含まれていない場合は、後述する画像処理実行部13による画像処理が施されることなく、従来と同じ方法で撮影画像データの外部装置への送信が行われる。
【0022】
撮影画像データ複製部12は、身体有無判定部11から撮影画像データの識別情報の通知を受けた場合、換言すれば、身体有無判定部11により撮影画像データに身体の部分の画像が含まれていると判定された場合、以下の処理を実行する。すなわち、撮影画像データ複製部12は、通知された識別情報の撮影画像データを複製して複製データを生成し、所定のデコーダーで復号した上で、複製データ記憶部21に記憶する。複製データ記憶部21は、RAM等の一時記憶領域に形成されたバッファーであり、復号後の複製データが複製データ記憶部21に記憶(展開)されることにより、複製データに対して各種画像処理が可能となる。
【0023】
画像処理実行部13は、撮影画像データ複製部12により複製データ記憶部21に記憶された複製データに対して、生体情報画像の生体認識への利用を防止するための画像処理を施す。ただし、画像処理実行部13は、画像処理を施した後の複製データに基づいて、撮影画像データ記憶部20に記憶された撮影画像データを更新しない。以下、画像処理実行部13の処理について詳述する。
【0024】
まず、画像処理実行部13は、生体情報が形成された身体の部分において生体情報が形成され得る範囲を特定する。
図2(A)は、生体情報が指紋の場合の範囲の説明に利用する図である。指紋は、各指の指先の第1関節よりも先端側の領域内に形成される。従って、
図2(A)の例では、画像処理実行部13は、点線の枠で囲まれた領域を、生体情報が形成された身体の部分において生体情報が形成され得る範囲として特定する。
【0025】
図2(B)は、生体情報が虹彩の場合の範囲の説明に利用する図である。虹彩は、黒目の領域内であって、瞳孔の領域を除く範囲に形成される。従って、
図2(B)の例では、画像処理実行部13は、大小2つの円状の点線で囲まれた領域を虹彩に係る生体情報画像の範囲として特定する。
図2(C)は、生体情報が静脈の場合の範囲の説明に利用する図である。手の平において、静脈は、指を含まない手の平の領域内に形成される。従って、
図2(C)の例では、画像処理実行部13は、点線の枠で囲まれた領域を静脈に係る生体情報画像の範囲として特定する。
【0026】
生体情報画像の範囲を特定した後、画像処理実行部13は、特定した範囲内で、生体情報画像が生体認識に利用されるのを防止することを目的とした画像処理を施す。画像処理実行部13は、例えば、以下の2つの態様で画像処理を施す。
【0027】
第1の例では、画像処理実行部13は、生体情報が認識できない程度に、特定した範囲に属するデータ(生体情報画像)を粗くする画像処理を行う。生体情報が認識できないとは、生体情報画像に基づいて生体認証に利用する特徴値の算出を試みたときに、特徴値の算出ができないか、または、正しい特徴値から著しく乖離した値の特徴値が算出されることを意味する。
【0028】
例えば、画像処理実行部13は、特定した範囲に属するデータを対象として「ぼかし処理」を実行する。ただし、ぼかし処理を実行する場合、画像処理実行部13は、ぼかすレベル(レベルが大きいほど画像の鮮明度が低いものとする)を、生体情報を認識できなくすることが可能なレベルの範囲で最低のレベル(=当該範囲で最も鮮明度が高いレベル)とする。また例えば、画像処理実行部13は、特定した範囲に属するデータの解像度を低下する画像処理を施す。ただし、解像度を低下する画像処理を実行する場合、最終的な解像度を、生体情報を認識できなくすることが可能な解像度の範囲で最も高い解像度とする。
【0029】
第1の例によれば、撮影画像データが生体認証に悪用されることを防止できる。その上で、第1の例によれば、さらに以下の効果を奏する。すなわち、人間の身体の部分において生体情報が形成され得る範囲内で画像の加工が行われるため、撮影画像データにおいて画像の加工が行われ得る領域を最小限とすることができ、その点で撮影画像データに基づく画像に加工の痕跡ができるだけ残らないようにすることができる。
【0030】
さらに、第1の例では、画像処理として、特定された範囲に属するデータを生体情報が認識できない程度に粗くする処理が実行される。このため、画像処理が施された後も、生体情報が形成された人間の身体の部分の全体的な形状および全体的な色合い(人間の身体の部分の外観の全体的な特徴)が画像に表れた状態となる。例えば、指先に関しては、画像処理が施された後の撮影画像データに基づく画像においても、指先の形状、および、その色合いが表れた状態となる。このため、生体情報が形成された人間の身体の部分が覆い隠されたり、削除されたりすることによって、生体情報が生体認証に利用できないようにする構成とは異なり、画像処理の後も生体情報が形成されている人間の身体の部分の外観の全体的な特徴が維持されるため、画像処理の前後で人間の身体の部分の画像の内容が大きく変わってしまうことを抑制できる。これにより、第三者が撮影画像データに基づく画像を視認したときに違和感を覚えることを抑制できる。
【0031】
第2の例では、画像処理実行部13は、特定した範囲に属するデータについて、生体情報画像が示す生体情報の特徴を改変する画像処理を行い、撮影画像データから生体情報が認識できないようにする。例えば、生体情報が指紋の場合、画像処理実行部13は、指紋を形成する稜線の画像の一部を削除したり、稜線の画像の形状を改変したりすることによって指紋の模様を改変し、画像処理を施す前後で、指紋に基づいて算出される特徴値が乖離するようにする。同様に、画像処理実行部13は、生体情報が虹彩の場合、虹彩を形成する各要素を表す画像の一部を削除したり形状を改変したりすることによって虹彩の模様を改変する。また、生体情報が静脈の場合、静脈の画像の一部を削除したり形状を改変したりすることによって静脈の模様を改変する。ただし、指紋の模様、虹彩の模様および静脈の模様の改変は、生体情報が形成された身体の部分の全体的な形状および全体的な色合いへの影響ができるだけ抑制された上で、模様の形状のみが改変される。
【0032】
第2の例によれば、撮影画像データが生体認証に悪用されることを防止できる。その上で、第2の例によれば、さらに以下の効果を奏する。すなわち、人間の身体の部分において生体情報が形成され得る範囲内で画像の加工が行われるため、撮影画像データにおいて画像の加工が行われ得る領域を最小限とすることができ、その点で撮影画像データに基づく画像に加工の痕跡ができるだけ残らないようにすることができる。
【0033】
さらに、第2の例では、画像処理として、生体情報画像が示す生体情報の特徴を改変する処理が実行される。このため、画像処理が、生体情報が形成された人間の身体の部分の画像の全体的な形状および全体的な色合いにほとんど影響を与えず、画像処理が施された後も、生体情報が形成された人間の身体の部分の形状および色合い(人間の身体の部分の外観の全体的な特徴)が画像に表れた状態となる。このため、生体情報が形成された人間の身体の部分が覆い隠されたり、削除されたりすることによって、生体情報が生体認証に利用できないようにする構成とは異なり、画像処理の後も生体情報が形成されている人間の身体の部分の外観の全体的な特徴が維持されるため、画像処理の前後で人間の身体の部分の画像の内容が大きく変わってしまうことを抑制できる。これにより、第三者が撮影画像データに基づく画像を視認したときに違和感を覚えることを抑制できる。
【0034】
以上、2つの例を挙げて画像処理実行部13が施す画像処理を説明したが、何れの場合であっても、画像処理実行部13は、生体情報画像に付加画像を付加する画像処理を行わない。付加画像を付加するとは、生体情報画像を覆い隠す画像(例えば、黒く塗りつぶされた画像)を生体情報画像に重畳することを意味する。付加画像を付加した場合、撮影画像データに基づく画像に加工の痕跡がはっきりと出現し、当該画像を第三者が閲覧したときに違和感を覚えることになるが、付加画像の付加が行われないため、このような事態の発生を防止できる。
【0035】
画像処理実行部13は、複製データ記憶部21に展開(記憶)された複製データに対して画像処理を施した後、所定のエンコーダーにより複製データを符号化し、複製データ送信部14に出力する。その際、画像処理実行部13は、画像処理を施した後の複製データに基づいて、撮影画像データ記憶部20に記憶された撮影画像データの更新を行わない。これにより、撮影画像データ記憶部20には、画像処理実行部13により画像処理が施されていない撮影画像データが記憶された状態が維持される。これにより、撮影画像データを正当に所有するユーザー自身は、画像処理が施されていない撮影画像データを常時利用することができ、ユーザーの使い勝手がよい。
【0036】
複製データ送信部14は、画像処理実行部13から入力した複製データを、送信指示受付部10から通知された送信方法で外部装置に送信する。
【0037】
次に、携帯端末1の動作についてフローチャートを用いて説明する。
図3は、ユーザーから送信指示があった場合の携帯端末1の動作を示すフローチャートである。
図3に示すように、送信指示受付部10は、ユーザーによる送信指示を受け付け、送信する対象の撮影画像データの識別情報を身体有無判定部11に通知すると共に、送信方法を複製データ送信部14に通知する(ステップSA1)。
【0038】
身体有無判定部11は、送信指示受付部10から通知された識別情報の撮影画像データについて、生体情報が形成され得る身体の部分の画像が撮影画像データに含まれているか否かを判定する(ステップSA2)。含まれている場合(ステップSA2:YES)、身体有無判定部11は、撮影画像データ複製部12に撮影画像データの識別情報を通知する(ステップSA3)。撮影画像データ複製部12は、身体有無判定部11から撮影画像データの識別情報の通知を受けた場合、通知された識別情報の撮影画像データを複製して複製データを生成し、複製データ記憶部21に記憶する(ステップSA4)。
【0039】
画像処理実行部13は、複製データ記憶部21に記憶された複製データに対して、第1例や、第2例の方法等の方法で、生体情報画像の生体認識への利用を防止する画像処理を施す(ステップSA5)。画像処理実行部13は、画像処理を施した後の複製データを複製データ送信部14に出力する(ステップSA6)。ただし、上述したように、画像処理実行部13は、画像処理を施した後の複製データに基づいて、撮影画像データ記憶部20に記憶された撮影画像データを更新しない。複製データ送信部14は、画像処理実行部13から入力した複製データを、送信指示受付部10から通知された送信方法で外部装置に送信する(ステップSA7)。
【0040】
一方、ステップSA2において、生体情報が形成され得る身体の部分の画像が撮影画像データに含まれていないと判定した場合(ステップSA2:NO)、身体有無判定部11は、複製データ送信部14に識別情報を通知し(ステップSA8)、複製データ送信部14は、通常の方法で通知を受けた撮影画像データを外部装置に送信する(ステップSA9)。
【0041】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0042】
例えば、上記実施形態では、携帯端末1が、特許請求の範囲の撮影画像データ処理装置として機能した。しかしながら、撮影画像データ処理装置として機能する装置は、携帯端末1に限らず、撮影画像データを記憶する装置であればよい。また、上記実施形態では、生体情報は、指紋、虹彩および静脈であったが、生体情報はこれに限らず、身体の部分に形成された情報であればよい。
【0043】
また、上記実施形態では、身体有無判定部11は、一の種類の生体情報に関し、当該一の種類の生体情報が形成された身体の部分(指紋であれば指先、虹彩であれば開いた状態の目、静脈であれば手の平)の画像が撮影画像データに含まれているか否かを判定した。この点に関し、身体有無判定部11が、当該一の種類の生体情報が形成された身体の部分の画像が撮影画像データに含まれており、かつ、身体の部分の画像に、生体情報が生体認識に利用可能な程度に明瞭に記録されているかどうかを判定する構成でもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 携帯端末(撮影画像データ処理装置)
11 身体有無判定部
12 撮影画像データ複製部
13 画像処理実行部
14 複製データ送信部
20 撮影画像データ記憶部