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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】基板処理方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 651Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018161568
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020035907
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】吉水 康人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】矢内 有美
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118347(JP,A)
【文献】特開2013-161833(JP,A)
【文献】特開2015-032735(JP,A)
【文献】特開2013-016699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが設けられた基板のパターン表面に付着している洗浄液を第1溶媒に置換し、
前記第1溶媒を、第2溶媒にトリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びトリエチルアミンボランのいずれかを含む第1物質を含む溶質が添加されている溶液に置換して、前記パターン表面に前記第1物質を含む被膜を形成し、
前記溶液を第3溶媒に置換し、
前記第3溶媒を乾燥させ、
前記被膜を昇華または揮発させる、
基板処理方法。
【請求項2】
前記被膜を昇華または揮発させる工程は、大気中に前記基板を放置されることによって行われる、
請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記被膜を昇華または揮発させる工程は、加熱または水蒸気処理によって行われる、
請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2溶媒は、構成要素として水分子を含まない、
請求項1乃至のいずれか一項記載の基板処理方法。
【請求項5】
パターンが設けられた基板のパターン表面に付着している洗浄液を第1溶媒に置換し、
前記第1溶媒を、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びトリエチルアミンボランのいずれかを含む有機ホウ素化合物を含む溶液に置換し、
前記溶液を第2溶媒に置換し、
前記第2溶媒を乾燥させる、
基板処理方法。
【請求項6】
基板上にパターンを形成し、
前記基板上に形成されたパターン表面を洗浄液で洗浄し、
前記基板上の前記パターン表面に付着している前記洗浄液を第1溶媒に置換し、
前記第1溶媒を、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びトリエチルアミンボランのいずれかを含む有機ホウ素化合物を含む溶液に置換し、
前記溶液を第2溶媒に置換し、
前記第2溶媒を乾燥させる、
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
パターンが設けられた基板のパターン表面に付着している洗浄液を第1溶媒に置換し、
前記第1溶媒を、第2溶媒に第1物質を含む溶質が添加されている溶液に置換して、前記パターン表面に前記第1物質を含む被膜を形成し、
前記溶液を第3溶媒に置換し、
前記第3溶媒を乾燥させ、
大気中に前記基板を放置されることによって、前記被膜を昇華または揮発させる、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、ウエット処理後に半導体基板を乾燥させる際に、半導体基板の表面に形成された微細なパターンが洗浄液の表面張力により塑性変形する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5806645号公報
【文献】特許第5622675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板のウエット処理工程において、半導体基板の乾燥時に発生するパターンの塑性変形を抑制できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る基板処理方法は、パターンが設けられた基板のパターン表面に付着している洗浄液を第1溶媒に置換し、第1溶媒を、第2溶媒にトリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びトリエチルアミンボランのいずれかを含む第1物質を含む溶質が添加されている溶液に置換して、パターン表面に第1物質を含む被膜を形成し、溶液を第3溶媒に置換し、第3溶媒を乾燥させ、被膜を昇華または揮発させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ドライエッチングを用いたラインパターン形成の流れを示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る基板処理方法において、洗浄工程の各処理を示すフロ―チャートである。
図3図3は、一実施形態に係る基板処理方法において、洗浄工程の各処理時における半導体基板の断面を示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る基板処理方法において、被膜の膜厚と半導体基板の保管時間との関係を示すグラフである。
図5図5は、比較例としてIPA乾燥を用いた場合の半導体基板の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付す。また、以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。実施形態の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0008】
以下では、半導体基板上にライン形状の微細パターンを形成した後の洗浄工程(レジスト剥離工程)において、本実施形態を適用した場合について説明する。なお、本実施形態に係る基板処理方法は、上記の洗浄工程に限定されない。例えば、ウエットエッチング工程であってもよく、薬液を用いた表面処理工程であってもよく、フォトリソグラフィーにおける露光後の現像処理であってもよく、半導体基板を液相で処理する工程に本実施形態は適用できる。
【0009】
1.パターン形成の流れ
まず、ドライエッチングを用いたラインパターン形成の流れについて、図1を用いて説明する。図1の例は、半導体基板上の絶縁層を加工して複数のラインパターンを形成する場合を示しているが、加工される材料及びパターンの形状は、これに限定されない。
【0010】
図1の(a)に示すように、半導体基板10上に絶縁層11を形成後、絶縁層11上にエッチング対象膜として絶縁層12を形成する。次に、フォトリソグラフィーによりレジスト20によるマスクパターンを形成する。図1の例では、半導体基板10に平行なY方向に延伸する複数のマスクパターンが、半導体基板10に平行で且つY方向に垂直なX方向に沿って配置されている。
【0011】
次に、図1の(b)に示すように、ドライエッチングにより、絶縁層12を加工して、半導体基板に垂直なZ方向に延伸する複数のラインパターンを形成する。ドライエッチング後、絶縁層12上にはレジスト20が残存している。
【0012】
次に、図1の(c)に示すように、洗浄工程において、レジスト20及びエッチング残渣等を除去する。例えば、薬液として硫酸と過酸化水素水が混合されたSPM(sulfuric acid hydrogen peroxide mixture)を用いて、レジスト20を除去する。
【0013】
2.乾燥工程の詳細
次に、上述した洗浄工程における乾燥工程の詳細について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、洗浄工程における各処理のフローチャートを示し、図3は、洗浄工程における各処理実行後の半導体基板の断面を示す。なお、以下の説明において、パターン表面と表記する場合、例えば図1で説明した絶縁層11及び絶縁層11上に形成されたラインパターン、すなわち絶縁層12の表面が含まれる。
【0014】
図2に示すように、まず、パターン表面に薬液を供給してウエット処理を行う(ステップS1)。なお、薬液は、上述のSPMに限定されない。例えば、ウエット処理には、アンモニア水、塩酸、または弗酸のいずれかと、過酸化水素水とが混合された薬液が用いられてもよい。更には、ウエット処理として、複数の薬液を用いた複数の処理が組み合わされてもよい。
【0015】
ウエット処理後、パターン表面を乾かすことなく、すなわちパターン表面が薬液により濡れている状態(乾燥していない状態)で、例えばDIW(deionized water;脱イオン水)を用いた水リンス処理を行う(ステップS2)。これにより、パターン表面に付着している薬液が除去される。
【0016】
水リンス後、パターン表面がDIWにより濡れている状態で、IPA(イソプロピルアルコール)への置換処理を行う(ステップS3)。本実施形態では、次に行う溶媒置換に用いる溶媒が水と混ざらない場合、一旦、水をIPAに置換する。なお、IPAに限定されず、溶媒と混合できる液体であればよい、更には、IPA置換処理は、選択される溶媒によっては、省略されてもよい。
【0017】
IPA置換後、パターン表面がIPAにより濡れている状態で、溶媒への置換処理を行う(ステップS4)。溶媒置換処理には、後述する被膜形成用溶液(以下、単に「溶液」と表記する)に用いられる溶媒が用いられる。なお、溶媒置換処理に用いられる溶媒は、被膜形成用溶液の溶媒に限定されない。溶媒は、溶液中の溶質と水との反応を抑制するため、構成要素として水分子を含まない有機溶剤が好ましい。有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノエーテル;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、及びパーフルオロテトラヒドロフラン等のモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコール類の鎖状ジエーテル類;1,4-ジオキサン等の環状ジエーテル類;1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、3-ペンタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、及びイソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート、及びイソプロピル-3-メトキシプロピオネート、プロピレンカーボネート、及びγ-ブチロラクトン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の活性水素原子を持たないアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等のハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、及びジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及び2-フェノキシエタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
溶媒置換後、被膜化処理を行う(ステップS5)。より具体的には、パターン表面が溶媒により濡れている状態で、溶液への置換処理を行う。パターン表面に溶液が供給されると、溶液中の溶質がパターン表面に吸着している水分子により加水分解して、パターン表面に被膜が形成される(このような反応を固液界面反応と呼ぶ)。被膜の膜厚はパターン表面に吸着している水分子の量により制限される。このため、被膜は、パターン全体及びパターン間を埋め込むほどに厚くは形成されない。すなわち、被膜はパターン表面のみに形成され、被膜で覆われたパターン表面は、さらに溶液で覆われている。
【0019】
溶質には、例えば、有機ホウ素化合物が用いられる。この場合、被膜にはホウ素(例えばホウ酸)が含まれる。なお、溶質には、シランカップリング剤として有機シランが含まれていてもよい。有機ホウ素化合物としては、例えば、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びトリエチルアミンボランのいずれかが用いられる。なお、溶質は、有機ホウ素化合物に限定されない。例えば、大気圧以下で昇華または揮発する被膜を形成可能な材料であればよい。
【0020】
被膜形成後、パターン表面が溶液により濡れている状態で、溶媒を用いたリンス処理を行う(ステップS6)。これにより、溶液及びパターン表面と未反応の溶質が除去される。すなわち、パターン表面上に被膜は形成されたままとなる。
【0021】
なお、リンス処理に用いられる溶媒は、被膜形成用溶液の溶媒に限定されない。例えば、リンス処理に用いられる溶媒は、溶質が加水分解して析出するのを抑制するため、構成要素として水分子を含まない有機溶剤であればよい。
【0022】
溶媒を用いたリンス処理後、例えば、窒素雰囲気でパターン表面を乾燥させ(ステップS7)、溶媒を除去する。なお、乾燥雰囲気は、窒素雰囲気に限定されない。被膜の昇華を抑制するため、雰囲気中の水分濃度が低い状態であればよく、例えば減圧雰囲気において乾燥が行われてもよい。
【0023】
窒素乾燥後、被膜を昇華または揮発させ(ステップS8)、洗浄工程が終了する。昇華の方法としては、例えば、大気雰囲気への放置でもよく、ホットプレート等を用いた大気雰囲気中の加熱処理でもよく、水蒸気処理でもよく、UV処理でもよく、プラズマ処理でもよい。被膜は、有機ホウ素化合物材料に由来した昇華性を有するため、溶媒除去による乾燥後に、大気中の水分と反応して気体となり昇華(または揮発)される。
【0024】
より具体的には、例えば、ホウ素を含む被膜は、湿度40%の状態で室温保管されると24時間以内に昇華(または揮発)される。また、例えば、ホウ素を含む被膜は、加熱処理によって昇華(または揮発)が促進される。この場合、加熱温度が高すぎるとパターン(半導体基板)中へのホウ素の拡散が懸念される。従って、加熱温度は、シリコン中へのホウ素の拡散を抑制するため、例えば200℃以下の温度が好ましい。また、例えば、ホウ素を含む被膜は、湿度を上げるほど昇華(または揮発)しやすくなる傾向がある。但し、湿度が高すぎると水が凝結してパターン閉塞原因になる可能性がある。従って、水蒸気処理を行う場合、処理温度を水の沸点(100℃)以上にすることが好ましい。
【0025】
次に、洗浄工程におけるパターン表面の状態について、より詳細に説明する。
【0026】
図3の(a)に示すように、図2のステップS4で説明したように、パターン表面においてIPAを溶媒13に置換する。
【0027】
次に、図3の(b)に示すように、被膜化処理を行う。すなわち、溶媒13を被膜用溶液14に置換する。このとき、パターン表面、すなわち絶縁層11及びラインパターン形状の絶縁層12の表面に被膜15が形成される。被膜15は、固液界面反応によりパターン表面を被覆するように形成される。このため、被膜15は、パターンによらず概略同じ膜厚で一様に形成される。
【0028】
次に、図3(c)に示すように、溶媒によるリンス後、窒素雰囲気でパターン表面を乾燥させる。乾燥の際、溶媒の表面張力により隣接するラインパターンが互いに引かれ合う。このため、ラインパターンが弾性変形して傾斜し、隣接する2つのラインパターンの上部において、互いの被膜15が接着される場合がある。なお、絶縁層12は、被膜15により表面が被覆されているため、隣接パターンの絶縁層12とは直接接しない。
【0029】
次に、被膜15を昇華させる。被膜15が昇華(または揮発)すると、弾性変形していたラインパターンの形状が復元される。
【0030】
3.被膜と保管雰囲気の関係
次に、被膜と保管雰囲気の関係について、図4を用いて説明する。図4は、図2のステップS7で説明した窒素乾燥後における被膜15の膜厚と、半導体基板10の保管雰囲気との関係を示すグラフである。なお、被膜15の膜厚は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM;scanning electron microscope)等により確認可能である。
【0031】
図4に示すように、半導体基板10を窒素封止した雰囲気中に保管した場合、保管時間に関わらず、被膜15の膜厚は、ほとんど減少しない。すなわち、被膜15は、昇華(または揮発)していない。
【0032】
これに対し、半導体基板10を大気雰囲気中に保管(放置)した場合、被膜15は大気中の水分と反応して昇華(または揮発)するため、保管時間の経過とともに被膜15の膜厚は減少する傾向がある。従って、窒素乾燥後、被膜15を昇華(または揮発)させたくない場合は、半導体基板10を窒素雰囲気で保管し、被膜15を昇華(または揮発)させたい場合は、半導体基板10を大気雰囲気に放置してもよい。
【0033】
なお、図4の例は、被膜15の膜厚を示しているが、EDX(energy dispersive X-ray spectroscopy)またはEELS(electron energy loss spectroscopy)等を用いて溶質に含まれるホウ素等の分析を行ってもよい。
【0034】
4.本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、半導体基板の洗浄工程において、半導体基板の乾燥時に発生するパターンの塑性変形を抑制できる。以下、本効果につき、詳述する。
【0035】
半導体デバイスの微細化及び半導体メモリの高積層化に伴ってパターンの微細化及び高アスペクト比化が進むと、パターン強度が低下する傾向にある。また、微細化に伴い、隣接パターンとの間隔が狭くなる傾向にある。このため、ウエット処理後の乾燥工程において、液体の表面張力に起因にしてパターンが変位し、隣接するパターンどうしが接触して離れず、結果として塑性変形を引き起こす可能性がある。
【0036】
このような比較例を、図5に示す。図5の例は、洗浄工程においてIPA置換後、パターン表面を乾燥させた場合を示している。
【0037】
図5に示すように、例えばDIWをIPA16に置換後、IPA16を乾燥させると、IPA16の表面張力によりパターンが変位して隣接するパターンの上部どうしが接触する場合がある。この場合、パターンの接触面では、2つの絶縁層12の間、例えばシリカどうしで共有結合が生じる。このため、パターンが塑性変形してしまう。
【0038】
乾燥時のパターンの変形を抑制する方法の1つとして、パターン全体を固化剤で埋め込み、固化剤を昇華させることにより、液体による表面張力の影響を低減させる方法がある。但し、この場合、固化剤を埋め込む際の固化剤の圧縮応力または引っ張り応力によってパターンが塑性変形する可能性がある。より具体的には、例えば、パターン構造に疎密差があると疎な部位と密な部位とで固化剤がパターンに及ぼす応力に違いが生じる。更に、パターン構造が微細または形状が複雑になることによって固化剤が埋め込めない部位が発生すると、パターンに及ぼす応力に違いが生じる。
【0039】
これに対し、本実施形態に係る構成であれば、パターン表面における表面反応(固液界面反応)により、昇華性(揮発性)の被膜を形成できる。これにより、液体の乾燥工程において液体の表面張力によりパターンが弾性変形しても、被膜どうしが接着され、パターンどうしが直接接着されるのを抑制できる。更に、隣接パターンの被膜どうしが接着しても、被膜を昇華(または揮発)させることができる。パターン間の変形量は比較的小さく弾性的であるため、被膜を昇華(または揮発)させることにより、弾性変形しているパターンを元の形状に復元させることができる。従って、半導体基板の洗浄工程において、乾燥時に発生するパターンの塑性変形を抑制できる。
【0040】
更に、本実施形態に係る構成であれば、パターン構造の疎密差、または形状に関わらず、パターン表面における被膜の膜厚を概略同じにできる。従って、被膜がパターンに及ぼす応力をパターン構造によらず同じにでき、被膜の応力によるパターンの変形を抑制できる。
【0041】
更に、本実施形態に係る構成であれば、乾燥によるパターンの変形を抑制できるため、より微細なパターンが形成可能となる。よって、半導体装置の微細化及び高集積化を向上できる。
【0042】
5.変形例等
実施形態は上記で説明した形態に限られず、種々の変形が可能である。
【0043】
なお、上記実施形態において、ウエット処理(ステップS1)から被膜の昇華または揮発(ステップS8)までの工程が、1台の枚葉式またはバッチ式の液相処理装置で実行されてもよく、ウエット処理(ステップS1)から窒素乾燥(ステップS7)までの工程が、1台の液相処理装置で実行され、被膜の昇華または揮発(ステップS8)は、他の装置によりも実行されてもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10…半導体基板、11、12…絶縁層、13…溶媒、14…被膜用溶液、15…被膜、16…IPA、20…レジスト。
図1
図2
図3
図4
図5