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特許7077188基板処理方法、基板処理装置および複合処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置および複合処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018167153
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2020043127
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 万奈
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
(72)【発明者】
【氏名】大坪 京
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 美成子
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-028008(JP,A)
【文献】特開2017-174966(JP,A)
【文献】特開2009-049126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHの異なる複数の処理液から、基板の表面のゼータ電位が負となり、かつ前記基板の第1面に付着した異物の表面のゼータ電位が正となるpHを有する処理液を選択し、
前記基板の第1面上に、前記処理液によって第1液膜を形成し、
前記第1液膜の凝固点以下となるように前記基板を冷却して、前記第1液膜の少なくとも一部が凝固した凝固層を形成し、
前記凝固層を融解する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記第1液膜の形成の前に、前記基板の前記第1面上に付着している異物にクラックまたはボイドを生じさせる請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1液膜は、酸性溶液によって構成される請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1液膜への気泡の注入は、前記第1液膜への超音波の印加、前記第1液膜への気体の溶解、および前記第1液膜の電気分解のうちの少なくとも1つによって行われる請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
第1面を上にして基板を保持する基板保持部と、
pHの異なる複数の処理液を各々貯蔵する複数の処理液貯蔵部を含み、前記複数の処理液のいずれか1つの処理液を前記第1面上に供給する処理液供給部と、
前記第1面上に供給された前記処理液を凝固させる凝固部と、
前記複数の処理液から、前記基板の表面のゼータ電位が負となり、かつ前記第1面に付着した異物の表面のゼータ電位が正となるpHを有する処理液を選定する処理液選定部と、
を備える基板処理装置。
【請求項6】
前記第1面上に供給された前記処理液に気泡を注入する気泡注入部をさらに備え、
前記気泡注入部は、前記基板上の前記処理液に超音波を印加する超音波印加装置、前記基板上の前記処理液に気体を溶解させる気体溶解装置、あるいは前記基板上の前記処理液に金属電極を浸して前記処理液を電気分解する電気分解装置のいずれかである請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板に対して凍結洗浄処理を行う凍結洗浄ユニットと、
前記基板に対して、酸またはアルカリを用いた処理、あるいは純水を用いた処理を行う洗浄ユニットと、
前記基板の上下を反転させる基板反転ユニットと、
前記各ユニット間で前記基板の搬送を行う基板搬送部と、
を備え、
前記凍結洗浄ユニットは、pHの異なる複数の処理液を各々貯蔵する複数の処理液貯蔵部を含み、前記複数の処理液のうち、基板の表面のゼータ電位が負となり、かつ前記基板の第1面に付着した異物の表面のゼータ電位が正となるpHを有する処理液を前記基板上に供給する処理液供給部を備える、
複合処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理方法、基板処理装置および複合処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却媒体をテンプレートの裏面に接触させ、テンプレートの表面に供給した液膜を凍結させて凍結膜を形成し、凍結膜を除去することによって、テンプレートの表面の異物を除去する洗浄技術が知られている。
【0003】
しかし、異物のサイズによっては、凍結洗浄でも除去できない場合が存在する。そのため、テンプレートに付着した異物をサイズに依らずに除去することができる洗浄技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4906418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの実施形態は、異物のサイズに依らずに異物を除去することができる基板処理方法、基板処理装置および複合処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、pHの異なる複数の処理液から、基板の表面のゼータ電位が負となり、かつ前記基板の第1面に付着した異物の表面のゼータ電位が正となるpHを有する処理液を選択する。ついで、前記基板の第1面上に、前記処理膜によって第1液膜を形成する。ついで、前記第1液膜の凝固点以下となるように前記基板を冷却して、前記第1液膜の少なくとも一部が凝固した凝固層を形成する。その後、前記凝固層を融解する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、凍結洗浄の処理手順の一例を示す図である。
図2図2は、気泡が含まれる場合の凍結洗浄による異物除去のモデルを示す図である。
図3図3は、気泡が含まれる場合の凍結洗浄によるパターン倒壊のモデルを示す図である。
図4図4は、基板を構成する石英と有機系の異物のpHとゼータ電位との関係を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態による処理液中での気泡と異物と基板との関係を模式的に示す図である。
図6図6は、異物の種類と等電点と異物除去に使用される処理液の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、第1の実施形態による基板処理方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、異物にクラックが存在する場合の凍結洗浄の様子を模式的に示す図である。
図10図10は、異物にボイドが存在する場合の凍結洗浄の様子を模式的に示す図である。
図11図11は、第2の実施形態による基板処理方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、異物に温度差を与える粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図である。
図13図13は、異物に圧力差を与える粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図である。
図14図14は、異物に超臨界乾燥を実施する粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図である。
図15図15は、超臨界乾燥処理での異物の様子を模式的に示す図である。
図16図16は、異物に化学反応させる粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図である。
図17図17は、化学反応させる場合の異物の様子を模式的に示す図である。
図18図18は、異物にエネルギ線を与える粉砕容易化処理の一例を示す図である。
図19図19は、第3の実施形態による基板処理システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図20図20は、反転機構の構成の一例を模式的に示す図である。
図21図21は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがある場合の基板処理方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。
図22図22は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがある場合の基板処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図23図23は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがある場合の基板処理方法の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
図24図24は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがない場合の基板処理方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。
図25図25は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがない場合の基板処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図26図26は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがない場合の基板処理方法の処理手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる基板処理方法、基板処理装置および複合処理装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、凍結洗浄の処理手順の一例を示す図である。洗浄処理の対象である基板200のパターンが形成される面には、異物(パーティクル)120が付着しているものとする。基板200は、インプリント処理で使用されるテンプレート、露光装置で使用されるフォトマスクまたはパターンが形成されていないブランク基板などである。また、異物220には、有機系の異物、無機系の異物が存在する。なお、以下の説明では、洗浄処理を行う際に、基板200の上を向いている面を上面といい、下を向いている面を下面という。また、基板200において、パターンが形成されている面をおもて面といい、おもて面に対向する面を裏面という。基板200のおもて面が上の状態で装置に載置されている場合には、基板200の上面はおもて面となる。また、基板200のおもて面が下の状態で装置に載置されている場合には、基板200の上面は裏面となる。図1の場合では、基板200のおもて面が上面となっている。
【0010】
図1(a)に示されるように、異物220が付着した基板200の上面上に処理液を供給し、処理液膜210を形成する。ついで、図1(b)に示されるように、基板200の下面側に処理液の凝固温度よりも低い温度の冷媒または冷却された気体を供給し、処理液膜210を凍結(凝固)させる。これによって、処理液膜210の基板200側から凝固層である凍結層210aが形成される。処理液膜210が凍結する際に体積が膨張するため、基板200の上面に付着していた異物220は、凍結層210aの形成によって基板200の上面から離れる側に持ち上げられる。この状態で、図1(c)に示されるように、凍結層210aを解凍(融解)し、例えば処理液を供給してリンス処理を行う。これによって、基板200の上面から持ち上げられた異物220が、処理液によって流され、異物220が除去されることになる。上述した凍結を利用した異物除去処理を「凍結洗浄」と称する。
【0011】
凍結洗浄では、例えば200nmよりも大きな径を有する有機系の異物220は除去され難い。しかし、処理液膜210に気泡が含まれると、大きな異物220を除去することができる。図2は、気泡が含まれる場合の凍結洗浄による異物除去のモデルを示す図である。図2(a)に示されるように、基板200上に処理液膜210を形成したときに、気泡230が異物220上に付着したものとする。この状態で、図2(b)に示されるように、処理液膜210を凍結させると、図1で説明したように、処理液膜210の基板200側から凍結層210aが形成される。凍結層210aは、気泡230の上部よりも高い位置にまで形成されているものとする。このとき、凍結層210aの膨張によって、気泡230と異物220との境界部に圧力P1がかかり、この境界部を起点としたクラック225が生じる。その後、図2(c)に示されるように、凍結層210aを解凍し、リンス処理を行うと、異物220中の気泡230が付着していた領域220aが除去される。
【0012】
しかし、処理液膜210中の気泡230は異物220だけではなく、基板200上に設けられたパターンにも付着することがある。このような場合には、付着した気泡230によって、パターンが倒壊してしまうことがある。図3は、気泡が含まれる場合の凍結洗浄によるパターン倒壊のモデルを示す図である。図3(a)に示されるように、基板200上に処理液膜210を形成したときに、基板200上に設けられたパターンである凸部201aの側面に気泡230が付着したものとする。この状態で、図3(b)に示されるように、処理液膜210を凍結させると、図1で説明したように、処理液膜210の基板200側から凍結層210aが形成される。凍結層210aは、気泡230の上部よりも高い位置にまで形成されているものとする。このとき、気泡230が側面に付着していない凸部201では、凸部201間に入り込んだ凍結層210aの膨張によって、どの側面にも同様に圧力がかかるので、凸部201、すなわちパターンは倒壊しない。一方、気泡230が側面に付着した凸部201aでは、気泡230が付着していない側面には凍結層210aの膨張によって圧力がかかるが、気泡230が付着した側面には気泡230が存在しているため凍結層210aの膨張による圧力がかからない。そのため、例えばパターンの付け根付近にはクラック225が入る。その後、図3(c)に示されるように、凍結層210aを解凍し、リンス処理を行うと、クラックが入った凸部201aは、処理液によって除去されてしまう。
【0013】
以上のように、処理液膜210中に気泡230が存在する場合には、基板200上の異物220を除去することができる反面、基板200上のパターンを倒壊させてしまうという弊害もある。そこで、第1の実施形態では、基板200上のパターンを倒壊させずに異物を除去することができる基板処理装置および基板処理方法について説明する。
【0014】
処理液膜210中の気泡はマイナスに帯電している。そこで、第1の実施形態では、破壊したくない基板200の表面については気泡と同じようにマイナスに帯電させ、異物の表面をプラスに帯電させるように選択されたpHを有する処理液を用いて凍結洗浄を行う。
【0015】
図4は、基板を構成する石英と異物のpHとゼータ電位との関係を示す図である。この図で、横軸はある処理液のpHを示し、縦軸は当該処理液中における石英および異物の表面のゼータ電位を示している。また、菱形のマークは、石英の表面のゼータ電位を示し、三角形のマークは、石英上に付着した異物の表面のゼータ電位を示している。この図に示されるように、異物の表面のゼータ電位は、pH3以上ではマイナスを示しているが、pH3未満でプラスとなる。一方、石英の表面のゼータ電位は、pH3以上でマイナスを示しているが、pH3未満でもマイナスを示している。なお、図では、pH3付近までしかグラフがないが、pH3未満では、異物の表面のゼータ電位はプラスとなり、石英の表面のゼータ電位はマイナスとなる。なお、図4において示した異物は、例えば、有機系の異物である。
【0016】
図5は、第1の実施形態による処理液中での気泡と異物と基板との関係を模式的に示す図である。この例では、基板200が石英からなり、凸部201を有する基板200上にpHが3の処理液膜210を形成した場合を示している。図4に示されるように、異物220の表面のゼータ電位はプラスであり、石英の表面のゼータ電位はマイナスであるので、pH3未満の処理液を用いることで、処理液中の気泡230は異物220に付着し、石英からなる基板200には付着し難くなる。その結果、このような状態で凍結洗浄を行うと、図2で示したモデルのように、異物220を除去しながら、基板200に設けられるパターンの倒壊を防ぐことが可能となる。
【0017】
図6は、異物の種類と等電点と異物除去に使用される処理液の一例を示す図である。例えば、異物220がアルミナ(Al23)である場合の等電点はpHが7.4~9.2である。つまり、この等電点よりも大きいpHの処理液中では、アルミナの表面のゼータ電位はマイナスであり、等電点よりも小さいpHの処理液中では、アルミナの表面のゼータ電位はプラスである。一方、基板200が石英である場合の石英の表面のゼータ電位は、図4に示されるように、pHが11以下の範囲でマイナスである。そのため、異物220がアルミナである場合には、アルミナの等電点よりも小さいpHを有する処理液が用いられる。その他の異物220についても同様である。これらの異物220については、オゾン水、過酸化水素水または炭酸水などを用いることができる。
【0018】
つぎに、上記のようなモデルに基づいて基板上の異物220を除去する基板処理装置について説明する。図7は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。第1の実施形態による基板処理装置10は、ステージ11と、処理液供給部12と、冷却媒体供給部13と、気泡注入部14と、制御部15と、を備える。
【0019】
ステージ11は、凍結洗浄の処理対象である基板200を保持する部材である。ステージ11は、基板保持部に対応する。ステージ11には、ステージ11上面よりも高い位置で基板200を支持する支持部111が設けられる。支持部111は、基板200の下面全体に後述する冷却媒体が接触するように、ステージ11の上面から距離を開けて基板200を支持するものである。また、ステージ11の水平方向の中心付近には、鉛直方向に貫通する貫通孔112が設けられている。貫通孔112がステージ11の上面と交わる部分は、後述する冷却媒体の供給口113となる。なお、ステージ11は、基板載置面に垂直な軸を中心に回転可能な構成としてもよい。この場合には、支持部111には、ステージ11の回転によって基板200の水平方向への移動を抑制するストッパが設けられる。
【0020】
処理液供給部12は、凍結洗浄に使用される処理液を供給する。処理液供給部12は、処理液を貯蔵する複数の処理液貯蔵部121と、処理液を基板200の上面に滴下するノズル122と、ノズル122と処理液貯蔵部121との間を接続する配管123と、配管123を介して処理液を処理液貯蔵部121からノズル122まで送るポンプ124と、それぞれの処理液貯蔵部121からノズル122への処理液の供給の切り替えを行うバルブ125と、を備える。ここでは、ノズル122に接続される配管123は、途中で分岐し、それぞれの処理液貯蔵部121に接続されている。
【0021】
第1の実施形態では、複数の処理液貯蔵部121が設けられており、それぞれに異なるpHを有する処理液が貯蔵される。これは、上記したように、基板200上に付着した異物220の種類に応じて、使用する処理液のpHが異なるからである。処理液貯蔵部121に貯蔵される処理液として、純水、脱イオン水、オゾン水、過酸化水素水、または炭酸水などを使用することができる。なお、過酸化水素水は、濃度を変化させることで、pHを変えることができる。
【0022】
冷却媒体供給部13は、凍結洗浄時に基板200を処理液の凝固点以下に冷却する冷却媒体を供給する。冷却媒体供給部13は、冷却媒体を貯蔵する冷却媒体貯蔵部131と、冷却媒体貯蔵部131をステージ11の貫通孔112に接続する配管132と、冷却媒体の供給の切り替えを行うバルブ133と、を備える。冷却媒体として、処理液の凝固点よりも低い温度に冷やした窒素ガスなどの気体、あるいは液体窒素、液体フロンなどの液体を使用することができる。貫通孔112に接続される側の配管132の端部は、冷却媒体の供給口113となる。冷却媒体供給部13は、凝固部に対応する。
【0023】
気泡注入部14は、基板200上に処理液を滴下することによって形成された処理液膜に、気泡を注入する。気泡注入部14は、例えば処理液膜に超音波を印加する超音波印加装置、処理液膜に気体を溶解させる気体溶解装置、あるいは処理液膜に金属電極を浸して処理液膜を電気分解する電気分解装置などによって構成することができる。
【0024】
制御部15は、基板処理装置10全体の動作を制御する。第1の実施形態では、特に、凍結洗浄を行う基板200毎に使用する処理液を選定する処理液選定機能を有する。具体的には、制御部15は、洗浄処理を行う基板200の表面のゼータ電位に応じたpHを持つ処理液を選定するために、処理液供給部12のバルブ125の切り替えを行う。洗浄処理を行う基板200の表面のゼータ電位は、例えば基板200の表面に付着した異物220について、蛍光X線分析法などの非破壊の組成分析を行うことによって決められる。例えば、制御部15は、有機系の異物220が多く付着している場合には、pHが3未満の過酸化水素水を選択したり、アルミナの異物220が多く付着している場合には、pH5.7の炭酸水を選択したりする。
【0025】
つぎに、このような基板処理装置での基板処理方法について説明する。図8は、第1の実施形態による基板処理方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、凍結洗浄の前に処理対象の基板200の表面を親水化処理する(ステップS11)。親水化処理は、例えば基板200の表面にUV(ultraviolet)光を照射することによって行われる。これによって、凍結洗浄で使用される処理液が基板200の表面に濡れやすくなる。そして、親水化処理した基板200をステージ11に保持させる。
【0026】
ついで、処理する基板200に応じて処理液が選定される(ステップS12)。例えば、処理する基板200に有機系の異物220が多い場合には、過酸化水素水が選定され、処理する基板にアルミナが多い場合には、炭酸水が選定される。この選定された処理液が含まれる処理液貯蔵部121のバルブ125を開き、他の処理液貯蔵部121のバルブ125を閉めるように制御部15がバルブ125の制御を行う。
【0027】
その後、選定された処理液がポンプ124によって配管123を介してノズル122から基板200上に供給され、基板200上に処理液膜が形成される(ステップS13)。このとき、基板載置面に垂直な軸を中心にステージ11を回転させると、基板200上に供給された処理液が基板200全面に略均一に広がった処理液膜を形成することができる。
【0028】
ついで、気泡注入部14によって、処理液膜中に気泡が注入される(ステップS14)。例えば、処理液膜に超音波を印加したり、処理液膜に気体を溶解させたり、あるいは処理液膜に金属電極を浸して電気分解したりすることによって、処理液膜中への気泡の注入が行われる。
【0029】
このとき、処理液として、基板200に付着した異物の等電点となるpH未満のpHを有する処理液を用いているので、注入された気泡は、異物に付着するが、基板200または基板200上に設けられたパターンには付着し難くなる。
【0030】
その後、冷却媒体供給部13から配管132を介してステージ11の供給口113へと冷却媒体を供給する。ステージ11の中心の供給口113から吐出される冷却媒体は、基板200の下面とステージ11の上面との間に設けられた隙間を、外周部に向かって流れる。このとき、基板200の下面が冷却媒体と接触するので、基板200は、下面側から冷却される。そして、基板200の上面側の温度が、処理液の凝固点以下の温度になると、処理液膜が凍結する(ステップS15)。処理液膜は、基板200と接触している部分から順に凍る。この凍結では、異物に付着した気泡によって、異物にクラックが生じる。
【0031】
処理液膜が凍った後、バルブ133を閉じて、冷却媒体供給部13からの冷却媒体の供給を止め、処理液膜を解凍し、また、処理液供給部12からの処理液をノズル122を介して基板200の上面に供給し、リンス処理を行う(ステップS16)。処理液膜の解凍およびリンス処理は、処理液膜が全膜厚にわたって凍結した後に実行されてもよいし、基板200との境界から所定の厚さ、たとえば100nm程度の厚さの処理液膜が凍結した後に実行されてもよい。これによって、図2で示したように、基板上の異物220は、気泡230を導入して凍結させたことによって生じたクラック225により除去されるが、基板200上のパターンには気泡230が付着しないので、パターンの倒壊が抑制される。
【0032】
その後、基板200を乾燥させ(ステップS17)、基板200の凍結洗浄処理が終了する。
【0033】
なお、ここでは、凍結洗浄を1回のみ実施しているが、繰り返し複数回実施してもよい。複数回凍結洗浄を実施する場合には、処理液の種類を変えて行ってもよい。このようにすることで、基板200上の異なる種類の異物を除去することができる。
【0034】
第1の実施形態では、基板200上に存在する異物の等電点に応じて選択したpHを有する処理液を基板200上に供給して処理液膜を形成し、処理液膜に気泡を注入した後に、凍結洗浄を行った。これによって、処理液膜中に注入されたマイナスに帯電した気泡は、異物に付着し易くなるが、基板200あるいは基板200に設けられるパターンには付着し難くなる。その結果、凍結時に異物に付着した気泡にかかる圧力によって、異物にはクラックが生じやすくなり、処理液膜の解凍時に異物を除去することができるとともに、パターンの倒壊を防ぐことができる。
【0035】
また、凍結洗浄を複数行う場合に、異なるpHを有する処理液を用いることで、有機系の異物および無機系の異物を除去することができるので、基板200の上面を正常に保つことが可能になる。
【0036】
(第2の実施形態)
図9は、異物にクラックが存在する場合の凍結洗浄の様子を模式的に示す図であり、図10は、異物にボイドが存在する場合の凍結洗浄の様子を模式的に示す図である。図9(a)と図10(a)に示されるように、表面にクラック225が存在する異物220、あるいはボイド226を内部に有する異物220が付着した基板200を凍結洗浄の対象とする。ついで、図9(b)と図10(b)に示されるように、この基板200上に、処理液を供給して処理液膜210を形成する。このとき、異物220のクラック225中およびボイド226内部には処理液膜210が満たされる。
【0037】
その後、図9(c)と図10(c)に示されるように、基板200の下面に冷却媒体を供給して、基板200を介して処理液膜210を冷却し、凍結層210aを形成する。図9(d)と図10(d)に示されるように、異物220の上面よりも高い位置まで処理液膜210が凍結する。このとき、クラック225内およびボイド226内に入り込んだ処理液の体積が凍結によって膨張し、この膨張による力が異物220を分割するように作用する。
【0038】
ついで、図9(e)と図10(e)に示されるように、凍結層210aを含む処理液膜210上に処理液を供給して凍結層210aを解凍し、リンス処理を行うと、異物220は分割され、基板200上から除去される。
【0039】
このように、基板200上の異物220の表面にクラック225が存在したり、内部にボイド226が存在したりする場合には、凍結洗浄によって、異物220が細かく分割され、分割前の大きさの異物220に比して異物220が除去される確率を高めることができる。そこで、第2の実施形態では、凍結洗浄時に大きな異物が細かく砕けやすくなるような粉砕容易化処理を、凍結洗浄処理の前に施す。
【0040】
図11は、第2の実施形態による基板処理方法の手順の一例を示すフローチャートである。なお、第2の実施形態で用いられる基板処理装置は、通常の凍結洗浄処理を行う基板処理装置を用いることができる。例えば、図7の基板処理装置で、気泡注入部14を有さず、また処理液供給部12は、純水が貯蔵された処理液貯蔵部121のみによって構成されるものである。
【0041】
まず、基板200上の異物の粉砕容易化処理を行う(ステップS31)。粉砕容易化処理として、温度差を異物に与える処理を行うことができる。
【0042】
図12は、異物に温度差を与える粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図である。図12(a)に示されるように、ステージ11の上面との間が所定の距離となるように、ステージ11上に異物220が付着した基板200を保持させた後、ステージ11の中央付近に設けられた供給口113から冷却媒体251を所定の時間供給する。冷却媒体251は、例えば凍結洗浄時に使用される処理液の凝固点よりも低い温度に冷却された窒素ガスなどの気体、あるいは液体窒素、液体フロンなどの液体を使用することができる。
【0043】
冷却媒体251の供給を停止した後、図12(b)に示されるように、供給口113から加熱媒体252を所定の時間供給する。加熱媒体252は、例えば常温の窒素ガスである。その後、図12(a)~(b)の処理を繰り返し実行してもよい。このように、基板200上の異物220を温度差の激しい環境下に置くことで、異物220が膨張と収縮とを繰り返し、異物220の表面にクラックを生じさせることができる。
【0044】
なお、基板処理装置が、上記の異物220に温度差を与える機構を設けてもよい。基板処理装置は、例えば図7に示すような構成を有しており、この基板処理装置20に加熱媒体貯蔵部と、冷却媒体の供給と加熱媒体の供給の切り替えを行うバルブと、を設けてもよい。このような構成とすることで、粉砕容易化処理を基板処理装置で行うことが可能となる。
【0045】
粉砕容易化処理を行った後の基板200の処理面を親水化処理する(ステップS32)。親水化処理は、例えば、基板200の表面にUV光を照射することによって行われる。なお、ステップS31の有機系異物の粉砕容易化処理とステップS32の親水化処理とは、前処理に相当する。
【0046】
その後、処理液膜を基板200上に形成する(ステップS33)。粉砕容易化処理で異物220に形成されたクラックまたはボイドにも処理液が入り込む。
【0047】
その後、基板200の下面に冷却媒体を供給することで、処理液を凍結させる(ステップS34)。これによって、基板200側から凍結層210aが生成される。また、図9(d)および図10(d)に示されるように、クラック225またはボイド226に入り込んだ処理液の凍結による膨張によって、異物220に力が作用し、異物220が分割される。その後、凍結層210aを解凍し、リンス処理を行う(ステップS35)。これによって、分割された異物を含む異物220が基板200上から除去される。最後に、基板200を乾燥させて(ステップS36)、処理が終了する。
【0048】
なお、上記の説明では、粉砕容易化処理として、異物220に温度差を与える場合を示したが、実施形態がこれに限定されるものではない。粉砕容易化処理として、例えば、圧力差を異物220に与える処理、異物220に超臨界乾燥を実施する処理、異物220を化学反応させる処理、異物220にエネルギ線を与える処理、などを例示することができる。以下、これらの例について説明する。
【0049】
図13は、異物に圧力差を与える粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図である。図13(a)に示されるように、高圧容器300内に異物220が付着した基板200を入れた後、高圧容器300内に窒素ガス、酸化性のガスなどを大気圧よりも高い第1圧力P11となるまで注入し、所定の時間維持する。これによって、高圧容器300内は加圧状態となる。ついで、図13(b)に示されるように、高圧容器300内が第1圧力P11よりも低い第2圧力P12となるまで減圧し、所定の時間維持する。例えば、高圧容器300内が大気圧となるように減圧する。その後、図13(a)~(b)の処理を繰り返し実行してもよい。このように、基板200上の異物220を圧力差の激しい環境下に置くことで、異物220の表面にクラックを生じさせることができる。
【0050】
図14は、異物に超臨界乾燥を実施する粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図であり、図15は、超臨界乾燥処理での異物の様子を模式的に示す図である。図14(a)に示されるように、高圧容器300内に異物220が付着した基板200を入れ、処理液310で高圧容器300の内部を満たす。処理液310として、純水などを例示することができる。そして、高圧容器300内で、処理液310を加圧する。これによって、図15(a)に示されるように、基板200上に付着した異物220内に処理液310が染み込む状態にする。
【0051】
その後、図14(b)に示されるように、高圧容器300内で処理液310が超臨界状態310aとなるような温度圧力条件にする。これによって、高圧容器300内で処理液310が超臨界状態310aとなり、異物220内に染み込んだ処理液310が超臨界流体に変化する。その後、図14(c)に示されるように、高圧容器300内を大気圧に減圧することで、異物220内の処理液310が抜ける。これによって、図15(b)に示されるように、異物220内に処理液310が抜けた後であるボイド226を形成することができる。
【0052】
図16は、異物に化学反応させる粉砕容易化処理の一例を模式的に示す図であり、図17は、化学反応させる場合の異物の様子を模式的に示す図である。図16(a)に示されるように、ステージ11の上面との間が所定の距離となるように、ステージ11上に異物220が付着した基板200を保持させた後、基板200上に処理液を供給し、処理液膜210を形成する。処理液は、例えば脱イオン水である。その後、処理液膜210内に酸化剤320を注入する。酸化剤320は、有機系の異物220を構成する炭素と反応して、蒸気圧を有する反応生成物を生成するものであればよい。酸化剤として、酸素、フッ素系のガスなどを例示することができる。
【0053】
これによって、次式(1)、(2)に示される反応が処理液膜210中の有機系の異物220で生じる。
C+O2 → CO2 ・・・(1)
4H+O2 → 2H2O ・・・(2)
【0054】
異物220中の炭素が二酸化炭素に変化し、異物220から抜けることで、図17(a)に示されるように、異物220内に水が染み込みやすい状態となる。
【0055】
その後、図16(b)に示されるように、ステージ11の中央付近の供給口113から常温の窒素ガス322を供給することで、基板200を乾燥させる。これによって、図17(b)に示されるように、異物220中の水が抜け、異物220にボイド226が形成される。
【0056】
なお、基板処理装置が、上記の異物220に化学反応させる機構を設けてもよい。基板処理装置は、例えば図7に示すような構成を有しており、この基板処理装置10に酸化剤供給部と、基板200を乾燥させるためのガスを貯蔵する乾燥ガス貯蔵部と、冷却媒体の供給と乾燥ガスの供給の切り替えを行うバルブと、を設けてもよい。このような構成とすることで、粉砕容易化処理を基板処理装置10で行うことが可能となる。
【0057】
図18は、異物にエネルギ線を与える粉砕容易化処理の一例を示す図である。図18に示されるように、基板200に付着した異物220にエネルギ線330を照射する。エネルギ線330として、例えばUV光、X線、電子線などを例示することができる。また、異物220の種類によって、使用されるエネルギ線330、またはエネルギ線330の波長は異なる。異物220が吸収しやすい波長のエネルギ線が選択される。エネルギ線330を照射することで、異物220内の原子の結合状態が変化し、クラックを生じさせることができる。
【0058】
第2の実施形態では、基板200上の異物220にクラック225またはボイド226を生じさせた後に、凍結洗浄処理を行うようにした。これによって、クラック225またはボイド226に入り込んだ処理液が凍結することによる膨張によって異物220が分割され、大きな異物220でも基板200から除去することが可能になる。
【0059】
(第3の実施形態)
図19は、第3の実施形態による基板処理システムの構成の一例を模式的に示す図である。生産システムの一例である基板処理システム500は、処理部501と、操作部502と、記憶部503と、制御装置504と、を備える。
【0060】
処理部501は、基板200を洗浄する複合処理装置である。処理部501は、例えば、ローダ・アンローダ511と、基板搬送部512と、基板反転ユニット513と、前処理ユニット514と、酸/純水処理ユニット515と、アルカリ/純水処理ユニット516と、凍結洗浄ユニット517と、有機処理ユニット518と、加熱処理ユニット519と、を有する。前処理ユニット514では、洗浄処理の前の前処理が行われ、酸/純水処理ユニット515、アルカリ/純水処理ユニット516および凍結洗浄ユニット517で、洗浄処理が行われ、有機処理ユニット518および加熱処理ユニット519で後処理が行われる。
【0061】
ローダ・アンローダ511は、洗浄前の基板200を、処理部501に搬入し、洗浄後の基板200を、処理部501から搬出する。
【0062】
基板搬送部512は、搬送装置(図示せず)を備える。基板搬送部512は、処理部501に搬入された基板200を、処理部501内で搬送する。酸/純水処理ユニット515、アルカリ/純水処理ユニット516および凍結洗浄ユニット517から搬出される基板200の上面の全面は、液膜(純水)で覆われており、この状態でつぎのユニットへの搬送が行われる。
【0063】
基板反転ユニット513は、基板200を反転させる。基板200は、おもて面および裏面が清浄であることが望ましい。そのため、おもて面および裏面の洗浄の際に、基板200の洗浄面をおもて面および裏面のいずれかに切り替える反転機構を基板反転ユニット513は備える。
【0064】
図20は、反転機構の構成の一例を模式的に示す図である。図20では、基板200として、おもて面および裏面の区別を示すため、テンプレートを例示している。図20(a)は、基板200のおもて面が上方に向くように載置している場合を示し、図20(b)は、基板200の裏面が上方に向くように載置している場合を示している。反転機構550は、基板200の、相対する側部を支持する支持部551を備える。支持部551は、基板200の基板面に水平な所定の方向を中心として回転可能な構成を有する。反転機構550は、支持部551を回転させることによって、図20(b)に示すように、支持部551に支持された基板200を反転させる。
【0065】
前処理ユニット514は、基板200に対して、前処理を行う。前処理は、例えば、親水化処理である。この場合の前処理ユニット514は、基板200を保持するステージと、ステージに保持された基板にUV光を照射する光源と、を有する。また、前処理として、第2の実施形態で説明した異物の粉砕容易化処理を行ってもよい。
【0066】
酸/純水処理ユニット515は、基板200に対して酸溶液および純水を用いた洗浄処理(以下、酸/純水処理という)、あるいは純水を用いた洗浄処理(以下、純水処理という)を行う。酸/純水処理ユニット515は、酸溶液を用いた洗浄処理を行う酸処理部と、純水を用いた洗浄を行う純水処理部と、を有する。酸溶/純水処理では、酸溶液を用いた洗浄を行った後に、純水を用いた洗浄を行う。この時、純水には、比抵抗制御などのために、添加剤などが含まれていてもよい。酸溶液として、硫酸溶液、硫酸および過酸化水素水の混合溶液、過酸化水素水、オゾン水、炭酸水などを例示することができる。また、洗浄が終わった後、純水処理部で、基板200の上面の全体は純水で覆われる。そのため、基板200の上面の全体に純水が覆われた状態で、酸/純水処理ユニット515からつぎのユニットへと搬送される。
【0067】
アルカリ/純水処理ユニット516は、基板200に対してアルカリ溶液および純水を用いた洗浄処理(以下、アルカリ/純水処理という)、あるいは純水処理を行う。アルカリ/純水処理ユニット516は、アルカリ溶液を用いた洗浄処理を行うアルカリ処理部と、純水を用いた洗浄を行う純水処理部と、を有する。アルカリ/純水処理では、アルカリ溶液を用いた洗浄を行った後に、純水を用いた洗浄を行う。この時、純水には、比抵抗制御などのために、添加剤などが含まれていてもよい。アルカリ溶液として、アンモニア水、アンモニア水および過酸化水素水の混合溶液(SC-1)、水酸化カリウム溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液などを例示することができる。また、洗浄が終わった後、純水処理部で、基板200の上面の全体は純水で覆われる。そのため、基板200の上面の全体に純水が覆われた状態で、アルカリ/純水処理ユニット516からつぎのユニットへと搬送される。
【0068】
なお、酸/純水処理ユニット515およびアルカリ/純水処理ユニット516で純水処理のみを施す場合には、純水で洗浄する場合のほか、界面活性剤、微量の酸またはアルカリなどを添加した純水で洗浄する場合が含まれる。
【0069】
凍結洗浄ユニット517は、基板200に対して凍結洗浄処理を行う。凍結洗浄処理は、基板200の上面に処理液膜を形成し、処理液膜の凝固点よりも低い温度の冷却媒体を用いて処理液膜を凍結させた凍結層を形成し、凍結層を融解させて処理液を取り除くものである。このような処理を含むものであれば、どのような形式の凍結洗浄処理であってもよい。例えば、第1または第2の実施形態で説明した凍結洗浄処理を用いてもよい。
【0070】
有機処理ユニット518は、基板200に対して有機処理を行う。有機処理として、例えば、基板200の上面(洗浄面)にイソプロピルアルコールなどの有機溶媒を供給し、その後乾燥する処理などを例示することができる。このような処理によって、基板200の上面に残存している微量の水分を除去することができる。
【0071】
加熱処理ユニット519は、基板200に対して加熱処理を行う。加熱処理は、基板200の上面に残存している微量の水分を除去するために行われる。そのため、加熱処理では、基板200の温度が100℃以上となるように加熱することが望ましい。
【0072】
操作部502は、例えば、オペレータが、基板処理システム500を管理するために、入力操作等を行うタッチパネル、および稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含む。
【0073】
記憶部503は、例えば、基板200に対して、洗浄処理を進める制御レシピ等が格納される。
【0074】
制御装置504は、例えば、マイクロプロセッサを含む。制御装置504は、操作部502からの指示に基づいて、制御レシピを記憶部503から読み出す。制御装置504は、制御レシピに従って処理部501を制御する。
【0075】
つぎに、このような基板処理システム500での基板処理方法について説明する。基板処理システム500の凍結洗浄ユニット517で、基板200のパターンが配置されている面(以下、パターン配置面という)が汚染されてしまう場合もある。汚染は、通常、汚染されている冷却媒体を用いた場合、あるいは冷却に伴って基板200に発生する氷または霜が雰囲気中の不純物を付着させてしまう場合に生じると考えられる。そのため、冷却媒体が当たる面では、汚染リスクが高くなる。特に、パターン配置面の汚染は、裏面に比して汚染を抑制しなければならない。例えば、第1および第2の実施形態では、冷却媒体は基板200の裏面側から供給しているので、おもて面側から供給する場合に比して汚染のリスクは低い。このように、基板処理装置での、基板200のパターン配置面が汚染されるリスクの度合いによって、基板処理システム500での処理方法は異なる。また、フィルタリング、霜発生防止機構、または環境清浄化機構などによって冷却媒体が当たる面の汚染のリスクを低減する機構が基板処理装置に設けられているか否かによっても、基板処理システム500での処理方法は異なる。そこで、以下では、凍結洗浄処理によって、パターン配置面が汚染されるリスクがある場合と、汚染されるリスクがない場合と、に分けて説明を行う。
【0076】
図21は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがある場合の基板処理方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。まず、基板200のおもて面が上の状態で、基板200の上面であるおもて面の前処理を行う(ステップS51)。前処理として、UV光、VUV(Vacuum Ultra Violet)光を基板200の上面であるおもて面に照射する親水化処理がある。また、UV光、VUV光の照射処理を酸処理で代用してもよい。
【0077】
ついで、基板200のおもて面の洗浄処理を行う(ステップS52)。洗浄処理として、酸/純水処理、アルカリ/純水処理、純水処理および凍結洗浄処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。
【0078】
その後、基板200を反転させ(ステップS53)、基板200のおもて面が下になる状態として、基板200の上面である裏面の洗浄処理を行う(ステップS54)。洗浄処理として、酸/純水処理、アルカリ/純水処理、純水処理および凍結洗浄処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。
【0079】
ついで、基板200を反転させ(ステップS55)、基板200のおもて面が上になる状態として、基板200の上面であるおもて面の洗浄処理を行う(ステップS56)。洗浄処理として、酸/純水処理、アルカリ/純水処理および純水処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。
【0080】
その後、基板200のおもて面が上になる状態で、基板200の上面の後処理を行う(ステップS57)。後処理として、有機処理および加熱処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。なお、後処理は、場合によって行わなくてもよい。以上で、処理が終了する。
【0081】
図22は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがある場合の基板処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、基板200のおもて面が上となる状態で基板200を、ローダ・アンローダ511を介して、基板処理システム500に搬入する。ついで、基板200を、基板搬送部512の搬送装置を用いて、ローダ・アンローダ511から搬出し、前処理ユニット514に搬入する。前処理ユニット514内で、基板200に対して前処理が行われる(ステップS71)。前処理として、UVを基板200の上面に照射する親水化処理が例示される。
【0082】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、前処理ユニット514から凍結洗浄ユニット517へと基板200が搬送され、凍結洗浄ユニット517で基板200のおもて面の凍結洗浄処理が行われる(ステップS72)。凍結洗浄処理が行われた後の基板200の上面の全面は、純水で覆われた状態にある。
【0083】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、凍結洗浄ユニット517から基板反転ユニット513へと純水で覆われた基板200が搬送される。そして、基板反転ユニット513で、基板200の上下面が反転される(ステップS73)。すなわち、基板200のおもて面が下となるように、反転される。これによって、基板200の上面は、裏面となる。
【0084】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、基板反転ユニット513から酸/純水処理ユニット515へと基板200が搬送され、酸/純水処理ユニット515で基板200の裏面の酸処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS74)。純水処理の後の基板200の上面の全面は、純水で覆われた状態にある。
【0085】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、基板反転ユニット513からアルカリ/純水処理ユニット516へと、純水で覆われた基板200が搬送され、アルカリ/純水処理ユニット516でアルカリ処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS75)。純水処理の後の基板200の上面の全面は、純水で覆われた状態にある。
【0086】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、アルカリ/純水処理ユニット516から基板反転ユニット513へと純水で覆われた基板200が搬送される。そして、基板反転ユニット513で、基板200の上下面が反転される(ステップS76)。すなわち、基板200のおもて面が上となるように、反転される。これによって、基板200の上面は、おもて面となる。
【0087】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、基板反転ユニット513からアルカリ/純水処理ユニット516へと基板200が搬送される。そして、アルカリ/純水処理ユニット516で基板200のおもて面の酸処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS77)。この時基板200の上面であるおもて面が乾燥される。
【0088】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、アルカリ/純水処理ユニット516から加熱処理ユニット519へと基板200が搬送される。ついで、加熱処理ユニット519で、基板200の表面に付着した水分を除去するための加熱処理を実行する(ステップS78)。その後、基板搬送部512の搬送装置によって、加熱処理ユニット519からローダ・アンローダ511へと搬送される。そして、基板200を、ローダ・アンローダ511を介して、基板処理システム500から搬出する。以上によって、基板処理方法が終了する。
【0089】
図23は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがある場合の基板処理方法の処理手順の他の例を示すフローチャートである。図23のフローチャートでは、図22のステップS71の前処理と、ステップS72の凍結洗浄処理と、の間に、酸/純水処理ユニット515での基板200のおもて面である上面の酸処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS81)。
【0090】
また、ステップS76の上下反転処理と、ステップS77のおもて面のアルカリ/純水処理と、の間に、酸/純水処理ユニット515での基板200のおもて面である上面の酸処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS82)。
【0091】
さらに、ステップS78の加熱処理に代えて、有機処理ユニット518での基板200のおもて面である上面の有機処理が行われる(ステップS83)。
【0092】
なお、その他は、図22で説明したものと同様であるので、説明を省略する。また、図22および図23は一例であり、図21で説明したように、用いる洗浄処理によって、基板処理方法には種々のバリエーションが存在する。
【0093】
図24は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがない場合の基板処理方法の手順の概要の一例を示すフローチャートである。まず、基板200のおもて面が上の状態で、基板200の上面であるおもて面の前処理が行われる(ステップS91)。
【0094】
ついで、基板200を反転させ(ステップS92)、基板200のおもて面が下になる状態として、基板200の上面である裏面の洗浄処理を行う(ステップS93)。洗浄処理として、酸/純水処理、アルカリ/純水処理、純水処理および凍結洗浄処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。
【0095】
その後、基板200を反転させ(ステップS94)、基板200のおもて面が上になる状態として、基板200の上面であるおもて面の洗浄処理を行う(ステップS95)。洗浄処理として、酸/純水処理、アルカリ/純水処理、純水処理および凍結洗浄処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。
【0096】
ついで、基板200のおもて面が上になる状態で、基板200の上面の後処理を行う(ステップS96)。後処理として、有機処理および加熱処理のうち少なくとも1つ以上の処理が行われる。なお、後処理は、場合によって行わなくてもよい。以上で、処理が終了する。
【0097】
図25は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがない場合の基板処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、基板200のおもて面が上となる状態で基板200を、ローダ・アンローダ511を介して、基板処理システム500に搬入する。ついで、基板200を、基板搬送部512の搬送装置を用いて、ローダ・アンローダ511から搬出し、前処理ユニット514に搬入する。前処理ユニット514内で、基板200に対して前処理を行う(ステップS111)。前処理として、UVを基板200の上面に照射する親水化処理を例示することができる。
【0098】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、前処理ユニット514から基板反転ユニット513へと基板200が搬送される。そして、基板反転ユニット513で、基板200の上下面が反転される(ステップS112)。すなわち、基板200のおもて面が下となるように、反転される。これによって、基板200の上面は、裏面となる。
【0099】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、基板反転ユニット513から酸/純水処理ユニット515へと基板200が搬送され、酸/純水処理ユニット515で基板200の裏面の酸処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS113)。純水処理の後の基板200の上面の全面は、純水で覆われた状態にある。
【0100】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、基板反転ユニット513からアルカリ/純水処理ユニット516へと、純水が被覆された基板200が搬送され、アルカリ/純水処理ユニット516でアルカリ処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS114)。純水処理の後の基板200の上面の全面は、純水で覆われた状態にある。
【0101】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、アルカリ/純水処理ユニット516から基板反転ユニット513へと純水で覆われた基板200が搬送される。そして、基板反転ユニット513で、基板200の上下面が反転される(ステップS115)。すなわち、基板200のおもて面が上となるように、反転される。これによって、基板200の上面は、おもて面となる。
【0102】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、基板反転ユニット513から酸/純水処理ユニット515へと基板200が搬送される。そして、酸/純水処理ユニット515で基板200のおもて面の酸処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS116)。純水処理の後の基板200の上面の全面は、純水で覆われた状態にある。
【0103】
ついで、基板搬送部512の搬送装置によって、酸/純水処理ユニット515からアルカリ/純水処理ユニット516へと基板200が搬送される。そして、アルカリ/純水処理ユニット516で基板200のおもて面のアルカリ処理が行われ、続けて純水処理が行われる(ステップS117)。この時基板200の上面であるおもて面が乾燥される。
【0104】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、アルカリ/純水処理ユニット516から凍結洗浄ユニット517へと基板200が搬送される。ついで、凍結洗浄ユニット517で、基板200の表面に対して凍結洗浄処理を実行する(ステップS118)。凍結洗浄処理で、基板200のおもて面の乾燥が行われる。
【0105】
その後、基板搬送部512の搬送装置によって、凍結洗浄ユニット517からローダ・アンローダ511へと基板200が搬送される。そして、基板200を、ローダ・アンローダ511を介して、基板処理システム500から搬出する。以上によって、基板処理方法が終了する。
【0106】
図26は、第3の実施形態によるパターン配置面が汚染されるリスクがない場合の基板処理方法の処理手順の他の例を示すフローチャートである。図26のフローチャートでは、図25のステップS117のアルカリ/純水処理が省略され、ステップS118の凍結洗浄処理の後に、加熱処理ユニット519での基板200のおもて面である上面の加熱処理が行われる(ステップS121)。
【0107】
なお、その他は、図25で説明したものと同様であるので、説明を省略する。また、図25および図26は一例であり、図24で説明したように、用いる洗浄処理によって、基板処理方法には種々のバリエーションが存在する。
【0108】
第3の実施形態では、酸/純水処理ユニット515、アルカリ/純水処理ユニット516および凍結洗浄ユニット517間で、基板200の上面の全面が純水で覆われた状態で基板200を搬送した。これによって、洗浄を行う各ユニット間の搬送時に、不純物が基板200に付着することを抑えることができる。
【0109】
洗浄によって不純物が基板200のおもて面に付着する可能性が低い場合には、基板200の裏面の洗浄後におもて面の洗浄を行う。また、洗浄によって不純物が基板200のおもて面に付着する可能性が高い場合には、基板200のおもて面を洗浄し、つぎに裏面を洗浄し、その後に再びおもて面を洗浄する。これによって、洗浄を行うユニットの不純物への対処の程度によって、基板200のおもて面と裏面とを洗浄する回数が変更される。つまり、洗浄によって不純物が基板200のおもて面に付着する可能性が低い場合には、基板200の洗浄回数を減らすことができるので、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
10 基板処理装置、11 ステージ、12 処理液供給部、13 冷却媒体供給部、14 気泡注入部、15 制御部、20 凍結洗浄装置、111 支持部、112 貫通孔、113 供給口、121 処理液貯蔵部、122 ノズル、123,132 配管、124 ポンプ、125,133 バルブ、131 冷却媒体貯蔵部、200 基板、201,201a 凸部、210 処理液膜、210a 凍結層、220 異物、225 クラック、226 ボイド、230 気泡、500 基板処理システム、501 処理部、511 ローダ・アンローダ、512 基板搬送部、513 基板反転ユニット、514 前処理ユニット、515 酸/純水処理ユニット、516 アルカリ/純水処理ユニット、517 凍結洗浄ユニット、518 有機処理ユニット、519 加熱処理ユニット。
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