(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】超音波検査方法および超音波検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
G01N29/265
(21)【出願番号】P 2018173542
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千星 淳
(72)【発明者】
【氏名】山本 摂
(72)【発明者】
【氏名】味岡 秀恭
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-175551(JP,A)
【文献】実開平06-087855(JP,U)
【文献】特開2017-138315(JP,A)
【文献】特開2009-075101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0178727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-G01N 29/52
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を探傷対象物の表面に沿って移動させながら、前記移動体に搭載された探傷位置探索装置を用いて前記探傷対象物の探傷位置を探索する移動・探索ステップと、
前記移動・探索ステップで前記探傷位置が検出されたときに前記移動体を停止させる移動体停止ステップと、
前記移動体停止ステップで前記移動体を停止させた状態で、前記移動体に搭載された超音波センサを含む超音波探傷装置を用いて前記探傷対象物の探傷を行う超音波探傷ステップと、
を備え
、
前記探傷対象物は、回転電機の円筒状の固定子の内側に配置された回転子鉄心の外周に周方向に互いに間隔をあけて軸方向に延びる複数のティースであり、
前記移動・探索ステップは、
前記移動体を、前記固定子と前記回転子鉄心との間の円環状の間隙内で前記ティースの径方向先端に沿って軸方向に移動させる移動ステップと、
前記移動ステップを行いながら、前記複数のティースに周方向にはさまれて軸方向端部で互いに軸方向に隣接して配列された複数の楔の前記軸方向端部を前記探傷位置として探索する探索ステップと、
を含む
ことを特徴とする超音波検査方法。
【請求項2】
前記移動体停止ステップの後で前記超音波探傷ステップの前に、前記移動体に対する前記超音波センサの前記探傷対象物の前記表面に沿った位置を調整するセンサ位置調整ステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の超音波検査方法。
【請求項3】
前記超音波探傷ステップは、前記移動体の移動方向に離間して配置された2個の超音波センサを用いて前記探傷対象物の探傷を行うこと、を特徴とする請求項
1または請求項2に記載の超音波検査方法。
【請求項4】
前記センサ位置調整ステップは、前記超音波センサの向きを調整するステップを含むこと、を特徴とする請求項1ないし請求項
3のいずれか一項に記載の超音波検査方法。
【請求項5】
探傷対象物の表面に沿って移動可能な移動体と、
前記移動体に搭載されて探傷位置を探索可能な探傷位置探索装置と、
前記移動体に搭載されて前記探傷対象物の探傷を行う超音波探傷装置と、
前記探傷位置探索装置が前記探傷位置を検出した時に前記移動体を停止させる移動制御部と、
前記移動体が停止しているときに前記超音波探傷装置を制御して前記探傷対象物の探傷を行わせる超音波探傷制御部と、
を有
し、
前記探傷対象物は、回転電機の円筒状の固定子の内側に配置された回転子鉄心の外周に周方向に互いに間隔をあけて軸方向に延びる複数のティースであり、
前記探傷位置探索装置は、
前記移動体を、前記固定子と前記回転子鉄心との間の円環状の間隙内で前記ティースの径方向先端に沿って軸方向に移動させる移動ステップと、
前記移動ステップを行いながら、前記複数のティースに周方向にはさまれて軸方向端部で互いに軸方向に隣接して配列された複数の楔の前記軸方向端部を前記探傷位置として探索する探索ステップと、
を実行する
ことを特徴とする超音波検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、探傷のための超音波検査方法および超音波検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電機などの回転電機の保守作業として、回転子の外周面や固定子の内周面にアクセスし、検査装置などを用いて電気的健全性および機械的健全性を検査する必要がある。しかし、回転子が固定子に挿入された状態では回転子と固定子の間隙の空間がせまいため、回転子を固定子から抜き出して検査作業を行うのが一般的である。しかし、回転子を固定子から抜き出す作業には大きな労力と時間を要する。
【0003】
一方、回転子が固定子に挿入された状態のままで、回転子と固定子の間のせまい間隙(環状空間)内で点検装置を移動させて点検を行う技術も開発されている。
【0004】
また、一般に、超音波を用いた探傷技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-75101号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0047748号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
せまい間隙内で、障害物を避けながら検査装置を検査位置にまで移動させることは容易ではない。
【0007】
本発明の実施形態は、移動体を移動させながら、大きな労力をかけずに効率よく超音波探傷を行う方法およびそのためのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係る超音波検査方法は、移動体を探傷対象物の表面に沿って移動させながら、前記移動体に搭載された探傷位置探索装置を用いて前記探傷対象物の探傷位置を探索する移動・探索ステップと、前記移動・探索ステップで前記探傷位置が検出されたときに前記移動体を停止させる移動体停止ステップと、前記移動体停止ステップで前記移動体を停止させた状態で、前記移動体に搭載された超音波センサを含む超音波探傷装置を用いて前記探傷対象物の探傷を行う超音波探傷ステップと、を備え、前記探傷対象物は、回転電機の円筒状の固定子の内側に配置された回転子鉄心の外周に周方向に互いに間隔をあけて軸方向に延びる複数のティースであり、前記移動・探索ステップは、前記移動体を、前記固定子と前記回転子鉄心との間の円環状の間隙内で前記ティースの径方向先端に沿って軸方向に移動させる移動ステップと、前記移動ステップを行いながら、前記複数のティースに周方向にはさまれて軸方向端部で互いに軸方向に隣接して配列された複数の楔の前記軸方向端部を前記探傷位置として探索する探索ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、実施形態に係る超音波検査システムは、探傷対象物の表面に沿って移動可能な移動体と、前記移動体に搭載されて探傷位置を探索可能な探傷位置探索装置と、前記移動体に搭載されて前記探傷対象物の探傷を行う超音波探傷装置と、前記探傷位置探索装置が前記探傷位置を検出した時に前記移動体を停止させる移動制御部と、前記移動体が停止しているときに前記超音波探傷装置を制御して前記探傷対象物の探傷を行わせる超音波探傷制御部と、を有し、前記探傷対象物は、回転電機の円筒状の固定子の内側に配置された回転子鉄心の外周に周方向に互いに間隔をあけて軸方向に延びる複数のティースであり、前記探傷位置探索装置は、前記移動体を、前記固定子と前記回転子鉄心との間の円環状の間隙内で前記ティースの径方向先端に沿って軸方向に移動させる移動ステップと、前記移動ステップを行いながら、前記複数のティースに周方向にはさまれて軸方向端部で互いに軸方向に隣接して配列された複数の楔の前記軸方向端部を前記探傷位置として探索する探索ステップと、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の実施形態によれば、移動体を移動させながら効率よく超音波探傷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る超音波検査システムの軸方向移動・探索時の状況における全体構成を示す模式的縦断面図である。
【
図3】
図1の制御操作部の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1の超音波検査システムを回転電機の検査に適用する場合の移動体およびベースユニットの設置状況を示す模式図である。
【
図6】
図5において、移動体がベースユニットと係合した状態を示す上面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る超音波検査システムの適用対象となる回転電機の回転子のティースおよび楔の配置状況を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示すティースにおいて傷(欠陥)が生じやすい部分を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る超音波検査方法の手順を示すフロー図である。
【
図10】
図9における軸方向移動・探傷ステップの詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る超音波検査システムの軸方向移動・探索時の状況における全体構成を示す模式的縦断面図である。
図2は、
図1の移動体の模式的上面図である。
図3は、
図1の制御操作部の機能構成を示すブロック図である。
図4は
図1の超音波検査システムを回転電機の検査に適用する場合の移動体およびベースユニットの設置状況を示す模式図である。
図5は
図4のV-V線矢視上面図である。
図6は、
図5において、移動体がベースユニットと係合した状態を示す上面図である。
図7は、本発明の実施形態に係る超音波検査システムの適用対象となる回転電機の回転子のティース122および楔123の配置状況を示す斜視図である。
図8は、
図7に示すティース122において傷(欠陥)が生じやすい部分を示す斜視図である。
【0014】
この第1の実施形態に係る検査システムは、移動体10と、ベースユニット11と、制御操作部12と、移動体10とベースユニット11とを接続するケーブル13と、ベースユニット11と制御操作部12とを接続するケーブル14と、を有する。
図4ないし
図6に示すように、移動体10は、回転電機100の回転子101の回転子本体109と、回転子101の外周に間隙103を介して対向して周方向に配置される固定子102との間の円環状の間隙103内で、回転子本体109の外周上を軸方向に移動可能に構成されている。すなわち、移動体10は、探傷対象物となる回転子本体109の表面に沿って移動可能に構成される。ケーブル13とケーブル14は、ベースユニット11で中継してもよいし、連続のケーブルであってもよい。
【0015】
なお、ここで「上面図」などの表現を用いているが、これは単に説明の便宜のためであって、実際の構成および動作は重力方向のいかんによらない。たとえば、
図1などでは移動体10に対して回転子本体109が下方にあり固定子102が上方にあるように示しているが、実際にはそのような上下関係にいつでもあるわけではない。移動体10は、後述するアーム23を固定子102に接触させてそのアーム23によって移動体10を支持する。これにより、移動体10は、いかなる重力の方向にも対応して回転子本体109の外表面、もしくは固定子102の内周表面に沿って移動できる。
【0016】
図4に示すように、回転子101は、ロータシャフト104と、ロータシャフト104と同軸かつ一体的に構成され回転子コイルを配置した回転子本体109と、回転子本体109の軸方向両側をはさみ込むように配置された円環状のエンドリング105とを有する。ロータシャフト104は回転子101のうち回転子本体109の軸方向の両側の部分であり、回転子101全体を回転支持するための軸受106や、タービンなどとのカップリングのためのフランジ111などが設けられる。回転子本体109の径はロータシャフト104の径よりも大きい。
【0017】
図7に示すように、回転子本体109は回転子鉄心120を有する。回転子鉄心120の外周に沿って軸方向に延びるように複数のスロット121が形成されている。周方向に互いに隣接する2個のスロット121の間には、径方向外側に突出するティース122が形成されている。各スロット121内には、軸方向に延びる回転子コイル(図示せず)が配置され、回転子コイルをスロット121内に保持するための複数の楔123が、各スロット121の径方向外側の開口部付近に配置されている。楔123は各スロット121に沿って軸方向に延びているが、各楔123の軸方向の長さはスロット121よりも短く、各スロット121内に複数の楔123が、軸方向に並び、それらの軸方向端部124同士が隣接してその端部(楔の切れ目)124で軸方向に互いに対向している。
【0018】
図7に示す例では、楔123の径方向外側の端部とティース122の径方向外側の端部とは径方向高さ位置がほぼ同じである。
【0019】
固定子102は、ほぼ円筒状であって、回転子本体109の径方向外側を、間隙103を介して取り囲むように配置されている。固定子102は、詳細の図示は省略するが、複数の電磁鋼板を軸方向に積層してなる固定子鉄心と、この固定子鉄心の内周に沿って軸方向に延びるように形成された複数の固定子スロット内に配置された固定子コイルと、固定子コイルを固定子スロット内に保持するための固定子楔とを含んでいる。
【0020】
図4に示すように、固定子102を支持して固定子102を覆うようにフレーム107が配置されている。軸受106はフレーム107によって支持されている。フレーム107内には密閉空間が形成され、冷却媒体で満たされている。フレーム107内で、ロータシャフト104にファン108が取り付けられていて、冷却媒体を強制的に流動させることができる。
【0021】
この実施形態に係る検査システムは、
図7に示す回転子鉄心120の各スロット121内で軸方向に互いに隣接して対向する複数の楔123の端部(楔の切れ目)124の近傍で、回転子鉄心120のティース(探傷対象物)122に欠陥ができやすいという事実に注目し、探傷位置を効率よく探索できるように構成されている。回転電機の運転中に、回転子101の回転により回転子101の楔123の端部の振動が起こり、それに接する回転子鉄心120のティース122に、軸方向に垂直な方向に延びる欠陥が生じやすいと考えられる。楔123の端部(楔の切れ目)124の近傍で、回転子鉄心120のティース122に欠陥ができやすい位置を
図8の太線Aに示す。この実施形態に係る検査システムは、その楔123の端部位置を探索しながら移動体10を移動させ、楔123の端部位置の近傍を効率的に探傷することができる。なお、ここで述べる探傷位置は、回転子本体109やティース122などの探傷対象物の表面上あるいは表面に沿った位置を表しており、回転電機100においての探傷位置は、軸方向の位置および/または周方向の位置を表している。
【0022】
ベースユニット11は、エンドリング105の外周面上に取り付けられている。ベースユニット11はエンドリング105の外周面上を周方向に移動(回転)できるように構成されている。移動体10は、軸方向に移動することにより、ベースユニット11を介してエンドリング105と係合したり、離脱したりできる。移動体10がベースユニット11を介してエンドリング105と係合した状態(
図6に示す状態)にあるときに、ベースユニット11が周方向に移動(回転)することにより、移動体10をエンドリング105に沿って周方向に回転させることができる。このようにして、移動体10をエンドリング105に沿って周方向に移動させることができる。
【0023】
図1および
図2に示すように、移動体10は、移動体本体20と、移動体本体20に搭載された搭載物21とを含み、一例としては車両として構成される。
【0024】
移動体10は、少なくとも回転電機100の軸方向に直線的に移動可能であって、移動体本体(車体)20にはクローラ22が取り付けられる。クローラ22は移動体10の移動手段であり、回転子本体109の外周面に接し、アーム23によって回転子本体109の外周面に押し付けられている。クローラ22は、移動駆動部24によってその車輪が駆動され、移動体10の前進と後退と停止を行うことができる。また、クローラ22は、左右の車輪の回転数をそれぞれ調整することで移動駆動部24による前進と後退の方向(回転子本体109の軸方向に対する角度)を調整することができるように構成される。移動手段としては、無限軌道であるクローラ22の他、車輪だけからなる構成としても構わない。
【0025】
搭載物21は移動体本体20に搭載されている。搭載物21には、移動駆動部24、アーム23、アーム駆動部25、送受信部26、距離計測器27、移動距離計測部28、探傷位置探索装置29および超音波探傷装置30が含まれる。
【0026】
距離計測器27は固定子102との距離を計測するものである。移動距離計測部28は、たとえばクローラ22の動きを計測することにより、移動体10の移動距離を計測する。
【0027】
探傷位置探索装置29は、探傷位置を探索するものであって、この実施形態では、回転子101の楔123の切れ目124を検出する装置である。探傷位置探索装置29は、たとえば、回転子101の楔123をカメラで撮影して、画像処理を行って楔123の切れ目124を画像認識して検出するものである。なお、この探傷位置探索装置29の一部としてのカメラは、移動体10の位置を検出するためのカメラとしても機能する。ただし、探傷位置探索装置29の一部としてのカメラのほかに、移動体の位置を検出するための別のカメラを搭載物21に含めてもよい。さらに、カメラで取得する画像情報を鮮明なものとするために周囲を照明する照明装置(図示せず)を搭載物21に含めてもよい。
【0028】
超音波探傷装置30は、回転子101のティース122の超音波探傷を行う。超音波探傷装置30は、2個の超音波センサ31および、これらを支持して移動体10に対する各超音波センサ31の探傷対象物の表面に沿った位置を調整するセンサ位置調整装置32を含む。2個の超音波センサ31は、移動体10の進行方向(移動方向)に並んで、互いに間隔をあけて配置されている。センサ位置調整装置32は、超音波センサ31の、移動体10に対する探傷対象物の表面に沿った位置を調整できるだけでなく、超音波センサ31の向きを調整することもできる。ここで、超音波センサ31の向きとは、回転子本体109やティース122などの探傷対象物の表面の法線を軸とした場合の周方向角度、および/またはこの法線となす角度を表す。なお、回転電機100においては、回転子本体109やティース122の表面の法線は回転電機100の径方向となる。
【0029】
移動駆動部24、距離計測器27、移動距離計測部28、探傷位置探索装置29および超音波探傷装置30は、後述するように、制御操作部12によって制御・操作され、得られたデータは制御操作部12で処理される。これらの情報のやり取りはケーブル13、14を通じて行われる。また、全部または一部の情報を、送受信部26を通じて無線でやり取りしてもよい。また、制御操作部12の少なくとも一部の構成を移動体本体20に搭載し、移動体10が自律的に制御・操作を行なうように構成しても構わない。さらに、制御操作部12全体を移動体本体20に搭載することもできる。
【0030】
図3に示すように、制御操作部12は、入力部40と、演算・制御部41と、記憶部42と、表示部43と、送受信部44とを有する。制御操作部12は、たとえばパーソナルコンピュータなどの汎用電子計算機によって実現できる。
【0031】
入力部40は、形状情報入力部46と、検査開始指令入力部47とを含んでいる。
【0032】
形状情報入力部46は、固定子102の形状や、移動体10が支持されるべき回転子本体109などの形状に係る形状情報を入力するものである。この形状情報は、たとえば、回転電機100の設計情報や実測情報などに基づく。実測によって形状情報を取得するには、たとえば、移動体10をマニュアルで移動(走行)させながらカメラや距離計測器27などを用いてデータを取得し、それによって得られたデータに基づいて形状情報を取得することもできる。
【0033】
検査開始指令入力部47は、検査開始指令を入力するものである。
【0034】
演算・制御部41は、移動制御部50と、アーム駆動制御部51、超音波探傷制御部52と、移動体位置演算部53と、画像認識位置演算部55とを含んでいる。
【0035】
移動制御部50は、移動体本体20に搭載された移動駆動部24を制御して移動体10の移動(走行)を制御する。アーム駆動制御部51はアーム駆動部25を制御する。超音波探傷制御部52は超音波探傷装置30を制御する。
【0036】
移動体位置演算部53は、移動体位置情報の履歴と、形状情報と、移動体本体20に搭載された移動距離計測部28で得られた移動距離などに基づいて、移動体10の現在位置を計算するものである。画像認識位置演算部55は、移動体位置情報の履歴と、形状情報と、移動体本体20に搭載されたカメラで得られた画像などに基づいて、移動体10の現在位置を計算するものである。移動体10の現在位置を計算するにあたっては、移動体位置演算部53による結果と画像認識位置演算部55による結果との両方の結果を加味して、より精度の高い結果を出すようにしてもよい。
【0037】
記憶部42は、形状情報保存部58と、移動体位置情報保存部59と、検査結果情報保存部60と、画像情報保存部61とを含んでいる。
【0038】
形状情報保存部58は、形状情報入力部46で入力された形状情報を保存する。移動体位置情報保存部59は、移動体位置演算部53で算出された移動体位置情報を保存する。検査結果情報保存部60は、超音波探傷装置30による検査の結果を保存する。画像情報保存部61は、カメラなどによって得た画像を保存する。
【0039】
表示部43は、移動体位置演算部53で計算した移動体10の位置や、カメラで撮影された現在または過去の画像や超音波探傷装置30による検査の結果などを表示できる。
【0040】
制御操作部12の送受信部44は、搭載物21に含まれる送受信部26との間で信号の送受信を行う。信号の送受信は、ケーブル13、14を介する有線によるものでも、また、無線によるものでもよい。
【0041】
図9は、本発明の第1の実施形態に係る検査システムによる検査方法の手順を示すフロー図である。はじめに、形状情報入力部46により、形状情報を入力し、これらの情報を、形状情報保存部58に保存する(ステップS10)。つぎに、オペレータが検査開始指令入力部47により検査開始指令を入力する(ステップS11)。この後は、検査システムが自動的に検査作業を実行する。本実施形態では、検査の対象範囲(検査対象範囲)を回転子本体109の全周として指定する場合の例を示している。
【0042】
ステップS11において検査開始指令が入力されると、検査開始位置に対応する回転子101のティース122の周方向位置(検査開始周方向位置)までベースユニット11が移動する(ステップS12)。
【0043】
ベースユニット11が検査開始周方向位置まで周方向に移動すると、移動体10とベースユニット11は分離される(ステップS13)。これにより、ベースユニット11を介してエンドリング105と係合していた移動体10がエンドリング105から軸方向に離脱する。
【0044】
次に、移動制御部50の制御により、移動体10が検査位置まで軸方向に移動(走行)し、探傷を行う(ステップS14)。このステップS14の詳細は、
図10を参照して後述する。
【0045】
つぎに、移動体10がベースユニット11に到達したか否かを判断し(ステップS15)到達していなければ、すなわちステップS15でNOであれば、上述のステップS14に戻る。移動体10がベースユニット11に到達していれば、すなわちステップS15でYESであれば、移動体10とベースユニット11とを結合する(ステップS16)。
【0046】
ステップS16のつぎに、ベースユニット11がすでにエンドリング105の外周上を一周(または、予め指定された検査対象範囲全ての検査が完了)したか否かを判断する(ステップS17)。ベースユニット11がすでに一周(または、予め指定された検査対象範囲全ての検査が完了)していれば、すなわちステップS17でYESであれば、動作を終了する。ベースユニット11がまだ一周(または、予め指定された検査対象範囲全ての検査が完了)していなければ、すなわちステップS17でNOであれば、移動体10とベースユニット11が結合した状態で、エンドリング105の外周上を周方向に所定の距離だけ移動する(ステップS18)。そして、上述のステップS13に戻り、移動体10がベースユニット11から分離され、周方向に所定の距離だけ移動した別の周方向位置において、上述のステップS14以降の検査をさらに実施する。
【0047】
このように、検査開始指令入力(ステップS11)の後の一連の作業を、検査システムが自動的に検査作業を実行する。
【0048】
なお、
図4に示すように回転子本体109の軸方向両端部にある2個のエンドリング105のうちの一方のみにベースユニット11が取り付けられている場合は、移動体10がベースユニット11から分離して軸方向に移動して、ベースユニット11と反対側のエンドリング105に到達した後は、移動体10が同じ軸方向経路を逆向きに進み、元のベースユニット11に戻る。他の例として、2個のエンドリング105の両方にベースユニット11を取り付ける場合(図示せず)は、移動体10が2個のベースユニット11と交互に結合することにより、移動体10は同じ軸方向経路を2回通ることなく、両方向に進みながら検査をすることができる。これにより、より効率的な検査を行うことができる。
【0049】
図10は、
図9における軸方向移動・探傷ステップS14の詳細を示すフロー図である。
【0050】
まず、移動体を軸方向に移動させながら、探傷位置探索装置29を用いて探傷位置探索を行う(ステップS141)。具体的には、回転子の楔123の切れ目124を探索しながら移動体を移動させる。
【0051】
そして、探傷位置(回転子の楔123の切れ目)124が検出された時に(ステップS142でYESの時)、移動体10を停止させる(ステップS143)。
【0052】
つぎに、センサ位置調整装置32によって、移動体10に対する超音波センサ31のティース122の表面に沿った位置を調整する(ステップS144)。このとき、
図2に示すように、回転子の楔123の切れ目124の軸方向位置をはさむように2個の超音波センサ31を配置することにより、回転子の楔123の切れ目124の付近にできたティース122の欠陥を検出しやすい。ティース122の欠陥が、回転子の楔123の切れ目124の延びる方向、すなわち軸方向に垂直な方向(回転電機100の径方向および周方向で画定される平面とほぼ平行な方向)に延びることが多く、想定される欠陥の先端位置に向けて斜めに超音波を入射させる射角探傷が有効だからである。逆に、欠陥が延びる方向から超音波を当てると欠陥を検出しにくい。
【0053】
ステップS144の、移動体10に対する超音波センサ31のティース122の表面に沿った位置の調整は、超音波センサ31の軸方向の位置だけでなく、周方向の位置も調整してもよい。さらに、ステップS144で、超音波センサ31の位置調整だけでなく、超音波センサ31の向き(ティース122表面の法線を軸とした場合の周方向角度、および/またはこの法線となす角度)も調整するようにしてもよい。これにより、想定される欠陥が延びる方向に対して、その欠陥を検出しやすい方向から超音波を入射させることができる。
【0054】
なお、ステップS143で、探傷位置が検出されて実際に移動体が停止する位置が、超音波センサ31が超音波検査を行う上で適当な位置になるように移動体の制御を行うことにより、センサ位置調整装置32によるセンサ位置調整を省略することも可能である。ただし、その場合は、ステップS143で、探傷位置が検出された後に、実際に移動体が停止するまでの移動体の走行距離なども考慮する必要がある。
【0055】
つぎに、超音波探傷装置を用いて超音波探傷を行う(ステップS145)。
【0056】
つぎに、当該周方向位置における対象域の探傷が完了していなければ(ステップS146でNOの場合)、ステップS141に戻る。
【0057】
当該周方向位置における対象域の探傷が完了したら(ステップS146でYESの場合)、
図9のステップS15に進む。
【0058】
以上説明したように、この実施形態によれば、移動体を移動させながら、大きな労力をかけずに効率よく超音波探傷を行うことができる。特に、回転子101の楔123の切れ目124を探索することにより、探傷すべき場所を効率的に特定することができる。
【0059】
[他の実施形態]
上記説明では、探傷位置探索装置29として、カメラを用いて、楔123の画像に基づいて楔123の切れ目124を探索する例を示したが、探傷位置探索装置29の他の例として、ギャップセンサを用いることもできる。
【0060】
上記説明では超音波センサ31を2個用いるとしたが、超音波センサ31を1個だけまたは3個以上用いてもよい。超音波センサ31を1個だけ用いる場合は、センサ位置を、回転子101の楔123の切れ目124の軸方向位置から若干ずれた位置とするのが望ましい。ティース122の欠陥が、回転子の楔123の切れ目124の延びる方向、すなわち軸方向に垂直な方向に延びることが多く、また、欠陥が延びる方向から超音波を当てると欠陥を検出しにくいからである。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
10…移動体、 11…ベースユニット、 12…制御操作部、 13…ケーブル、 14…ケーブル、 20…移動体本体、 21…搭載物、 22…クローラ、 23…アーム、 24…移動駆動部、 25…アーム駆動部、 26…送受信部、 27…距離計測器、 28…移動距離計測部、 29…探傷位置探索装置、 30…超音波探傷装置、 31…超音波センサ、 32…センサ位置調整装置、 40…入力部、 41…演算・制御部、 42…記憶部、 43…表示部、 44…送受信部、 46…形状情報入力部、 47…検査開始指令入力部、 50…移動制御部、 51…アーム駆動制御部、 52…超音波探傷制御部、 53…移動体位置演算部、 55…画像認識位置演算部、 58…形状情報保存部、 59…移動体位置情報保存部、 60…検査結果情報保存部、 61…画像情報保存部、 100…回転電機、 101…回転子、 102…固定子、 103…間隙、 104…ロータシャフト、 105…エンドリング、 106…軸受、 107…フレーム、 108…ファン、 109…回転子本体、 111…フランジ、 120…回転子鉄心、 121…スロット、 122…ティース(探傷対象物)、 123…楔、 124…端部(楔の切れ目)