(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】電力系統またはその関連の改善
(51)【国際特許分類】
H02H 3/28 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
H02H3/28 W
(21)【出願番号】P 2018520440
(86)(22)【出願日】2016-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2016075272
(87)【国際公開番号】W WO2017068067
(87)【国際公開日】2017-04-27
【審査請求日】2019-10-10
(32)【優先日】2015-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH-5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】スリ・ゴパラ・クリシュナ・ムーティ,サンカラ・スブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ハー,ヘンシュ
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-017509(JP,A)
【文献】特開平01-008821(JP,A)
【文献】特表2018-522517(JP,A)
【文献】国際公開第2012/061978(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0181755(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0057479(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02744130(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第102751708(CN,A)
【文献】特開2011-015543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多端末多接続部電力系統(10)内のローカル端末(L)と複数の遠隔端末(R1~R5)のそれぞれとの間の
通信ネットワークにおける通信
遅延時間を特定する方法であって、
前記ローカル端末(L)と前記複数の遠隔端末(R1~R5)が、前記通信ネットワークで通信し、
前記多端末多接続部電力系統(10)を介して送電が行われ、
前記複数の遠隔端末(R1~R5)の各々が、対応する接続部(J1、J2、J3、J4)で前記多端末多接続部電力系統(10)に接続し、前記多端末多接続部電力系統(10)の測定値を測定し、
(a)
前記複数の遠隔端末(R1~R5)の各々から前記ローカル端末(L)に送信された前記測定値に基づいて、各遠隔端末(R1~R5)と前記ローカル端末(L)の間のそれぞれの
通信
遅延時間(T
p1~T
p5)を制御ユニットが算出するステップと、
(b)
前記複数の遠隔端末(R1~R5)の各々から前記ローカル端末(L)に送信された前記測定値に基づいて、前記多端末多接続部電力系統(10)内の送電媒体(12)上の隣接する接続部(J1、J2、J3、J4)の間のそれぞれの接続部時間差(T12、T23、T34)を制御ユニットが算出するステップと、
(c)前記
接続部時間差(T12、T23、T34)に応じて、前記ローカル端末(L)から2つ以上の接続部(J1~J4)によって間隔があけられた
遠隔端末(R1~R5)の算出された
通信
遅延時間(T
p1~T
p5)を制御ユニットが補正するステップとを含む、方法。
【請求項2】
各遠隔端末(R1~R5)と前記ローカル端末(L)の間のそれぞれの
通信
遅延時間(T
p1~T
p5)を制御ユニットが算出するステップ(a)が、
各遠隔端末(R1~R5)について、電力ネットワーク(10)内の計算ノードを制御ユニットが選択するステップであって、前記計算ノードが、前記送電媒体(12)上の点である、前記ステップと、
各遠隔端末(R1~R5)から対応する前記計算ノードに流れ込むそれぞれのノード電流(i
JR1~i
JR5)を制御ユニットが算出するステップと、
各遠隔端末(R1~R5)について、制御ユニットが前記対応する計算ノードに流れ込むノード電流(i
JR1~i
JR5)の和がキルヒホッフの第1の法則によりゼロに等し
くなるように、前記ローカル端末(L)と前記それぞれの遠隔端末(R1~R5)との間の
通信
遅延時間(T
p1~T
p5)
を制御ユニットが抽出するステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
各遠隔端末(R1~R5)から前記対応する計算ノードに流れ込むそれぞれのノード電流(i
JR1~i
JR5)を算出する前記ステップが、各遠隔端末(R1~R5)について、前記遠隔端末(R1~R5)から前記対応する計算ノードに流れ込む対応する遠隔ノード電流(i
JR1~i
JR5)を算出するステップと、前記ローカル端末(L)について、前記対応する遠隔端末(R1~R5)から前記対応する計算ノードに流れ込む電流を表す各遠隔端末(R1~R5)の等価ノード電流(i
JR1_L~i
JR5_L)を制御ユニットが算出するステップとを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
各等価ノード電流(i
JR1_L~i
JR5_L)が前記ローカル端末(L)で算出され、
各遠隔ノード電流(i
JR1~i
JR5)が、前記対応する遠隔端末(R1~R5)で算出され、その後、
各遠隔ノード電流(i
JR1
~i
JR5
)は、前記通信ネットワークを介して
各遠隔端末(R1~R5)から前記ローカル端末(L)まで送信されて、対応する受信遠隔ノード電流(i’
JR1~i’
JR5)として受信され、
各遠隔端末(R1~R5)について、制御ユニットが前記対応する算出された等価ノード電流(i
JR1_L~i
JR5_L)と前記対応する遠隔ノード電流(i’
JR1~i’
JR5)との和がゼロに等し
くなるように、前記ローカル端末(L)と前記それぞれの遠隔端末(R1~R5)との間の通信遅延時間(T
p1
~T
p5
)を制御ユニットが抽出するステップとを含む、請求項3記載の
方法。
【請求項5】
前記ローカル端末(L)について、各遠隔端末(R1~R5)の等価ノード電流(i
JR1_L~i
JR5_L)を制御ユニットが算出するステップが、
各遠隔端末(R1~R5)の等価アドミタンス(y
eR1~y
eR5)を制御ユニットが
特定するステップと、
前記ローカル端末(L)での電流測定により、ローカルノード電流(i
JL)を得るステップと、
各遠隔端末(R1~R5)の前記
等価アドミタンス(y
eR1~y
eR5)および前記ローカルノード電流(i
JL)を利用して、前記対応する等価ノード電流(i
JR1_L~i
JR5_L)を制御ユニットが算出するステップとを含む、請求項3または請求項4記載の
方法。
【請求項6】
各遠隔端末(R1~R5)の前記
等価アドミタンス(y
eR1~y
eR5)および前記ローカルノード電流(i
JL)を利用して、前記等価ノード電流(i
JR1_L~i
JR5_L)のそれぞれを制御ユニットが算出するステップが、
各遠隔端末(R1~R5)の等価ノード電流(i
JR1_L
~i
JR5_L
)を算出するために、前記ローカルノード電流(i
JL)に、
各遠隔端末(R1~R5)の等価アドミタンス(y
eR1~y
eR5)
に比例する係数を制御ユニットが乗算するステップと、
各遠隔端末(R1~R5)の等価ノード電流(i
JR1_L
~i
JR5_L
)を算出するために、別の遠隔端末(R1~R5)の等価アドミタンス(y
eR1~y
eR5)
の和と、前記ローカル端末(L)について算出された対応するノード電圧(v’
JL)
の積をローカルノード電流(i
JL)に制御ユニットが加えるステップとのうちの1つを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
隣接する接続部(J1~J4)の前記接続部時間差(T12、T23、T34)を制御ユニットが算出するステップ(b)が、
前記ローカル端末(L)および各遠隔端末(R1~R5)について、それが接続される前記接続部(J1~J4)における予想電圧(v
J1_L、v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5)を制御ユニットが前記ローカル端末(L)および各遠隔端末(R1~R5)における測定電圧及び測定電流に基づいて算出するステップと、
最初に各遠隔端末(R1~R5)の対応する計算された前記予想電圧(v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5)を制御ユニットが前記ローカル端末(L)の計算された前記予想電圧(v
J1_L)を用いて補正するステップと、
前記ローカル端末(L)および各遠隔端末(R1~R5)について、それが接続される接続部(J1~J4)における予想電流(i
J1_L、i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5)を制御ユニットが前記ローカル端末(L)および各遠隔端末(R1~R5)における測定電圧及び測定電流に基づいて算出するステップと、
最初に各遠隔端末(R1~R5)の対応する前記
予想電流(i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5)を制御ユニットが前記ローカル端末(L)の前記
予想電流(i
J1_L)を用いて補正するステップと、
各接続部(J1~J4)における接続部電圧を、前記遠隔端末(R1~R4)および前記ローカル端末(L)の前記最初に補正された予想電圧および予想電流に基づいて制御ユニットが算出するステップと、
隣接する接続部(J1~J4)の前記接続部時間差(T12、T23、T34)を、隣接する接続部(J1~J4)の計算された前記接続部電圧同士を比較することにより制御ユニットが特定するステップとを含む、請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記接続
部は、
前記ローカル端末(L)の側から前記送電媒体(12)に沿って順番に並び、
各接続部(J1~J4)における接続部電圧を、前記遠隔端末(R1~R5)および前記ローカル端末(L)の前記最初に補正され算出された予想電圧および予想電流に基づいて算出するステップが、先行する接続部における電圧および電流を制御ユニットが
計算に使用するステップを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
先行する接続部における電圧および電流を制御ユニットが
計算に使用するステップが、前記先行する接続部に接続された
各端末の
算出された前記
予想電流と、前記先行する接続部から受信された電流とを加算して、さらに前の先行する接続部から対象の接続部へ供給される電流を制御ユニットが算出するステップを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記さらに前の先行する接続部から受信される前記電流が次式により算出され、
ik(t)=[f
k-1(t-2Tc)×K-b
k-1(t)/K]/2zc
ここで、
f
k-1(t)=v
k-1(t)+zc×i
k-1(t-Tz)
b
k-1(t)=v
k-1(t)-zc×i
k-1(t-Tz)
であり、また
kは対象の接続部であり、
k-1は先行する接続部であり、
zc=abs(sqrt(z
1/y
1))
Tz=phase[sqrt(z
1/y
1)]/(2πf
0)
K=exp[-real(sqrt(z
1×y
1)×l]
Tc=imag[(sqrt(z
1×y
1)×l]/(2πf
0)
であり、ここで、
f
0は前記多端末多接続部電力系統(10)の基本周波数であり、
lは、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの送電媒体(12)の区間長であり、
z
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの送電媒体(12)の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの送電媒体(12)の単位長さ当たりの並列アドミタンスである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記さらに前の先行する接続部から受信される前記電流が次式により算出され、
【数1】
ただし、
Dはcosh(γl)であり、
Cは-sinh(γl)/Zcであり、
kは前記対象の接続部であり、
k-1は前記先行する接続部であり、
ここで、
Zcは√(z
1/y
1)で与えられ、
γは√(z
1×y
1)で与えられ、
lは、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの送電媒体(12)の区間長であり、
z
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの前記送電媒体(12)の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの前記送電媒体(12)の単位長さ当たりの並列アドミタンスである、請求項9記載の方法。
【請求項12】
対象の接続部における前記接続部電圧が次式により計算され、
vk(t)=[f
k-1(t-2Tc-Tz)×K+b
k-1(t-Tz)/K]/2
ただし、
f
k-1(t)=v
k-1(t)+zc×i
k-1(t-Tz)
b
k-1(t)=v
k-1(t)-zc×i
k-1(t-Tz)
であり、また
kは前記対象の接続部であり、
k-1は前記先行する接続部であり、
zc=abs(sqrt(z
1/y
1))
Tz=phase[sqrt(z
1/y
1)]/(2πf
0)
K=exp[-real(sqrt(z
1×y
1)×l]
Tc=imag[(sqrt(z
1×y
1)×l]/(2πf
0)
であり、ここで、
f
0は前記多端末多接続部電力系統(10)の
基本周波数であり、
lは、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの送電媒体(12)の区間長であり、
z
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの前記送電媒体(12)の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの前記送電媒体(12)の単位長さ当たりの並列アドミタンスである、請求項8乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
対象の接続部における前記接続部電圧が次式により算出され、
【数2】
ただし、
Aはcosh(γl)であり、
Bは-Zc×sinh(γl)であり、
kは前記対象の接続部であり、
k-1は前記先行する接続部であり、
ここで、
Zcは√(z
1/y
1)で与えられ、
γは√(z
1×y
1)で与えられ、
lは、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの送電媒体(12)の区間長であり、
z
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの前記送電媒体(12)の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、前記先行する接続部から前記対象の接続部までの前記送電媒体(12)の単位長さ当たりの並列アドミタンスである、請求項8乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の特定された通信
遅延時間(14
R1~14
R5)を、制御ユニットがピンポン
伝送方式に基づき測定した遅延
時間と比較するステップをさらに含む、請求項1乃至1
3のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
1つまたは複数の特定された通信
遅延時間(14
R1~14
R5)を
前記ピンポン伝送方式に基づき測定した遅延時間と比較する前記ステップが、
前記ローカル端末(L)とそれぞれの遠隔端末(R1~R5)との間の第1の通信
遅延時間(TPL)を制御ユニットが特定するステップと、
前記ローカル端末(L)として仮に指定された前記それぞれの遠隔端末(R1~R5)と、前記遠隔端末(R1~R5)として仮に指定された前記ローカル端末(L)とについて、第2の通信
遅延時間(TPR)を制御ユニットが特定するステップと、
前記第1と第2の通信
遅延時間を制御ユニットが加算するステップと、
加算された第1と第2の通信
遅延時間を、対応する遅延検査値の2倍と制御ユニットが比較するステップと、
加算値と前記遅延検査値の2倍との差が所定の閾値を超える場合、通信
遅延時間(14
R1~14
R5)をさらに特定することを制御ユニットが一時的に保留するステップとを含む、請求項1
4記載の方法。
【請求項16】
前記多端末多接続部電力系統(10)内に障害状態が検出されたときに、通信
遅延時間(14
R1~14
R5)をさらに特定することを一時的に保留するステップと、
前記障害状態の間は、以前に特定された通信
遅延時間を使用するステップとをさらに含む、請求項1乃至1
5のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ローカル端末(L)および各遠隔端末(R1~R5)に動作可能に付随するそれぞれのサーキットブレーカが閉じているかどうかを制御ユニットが検査するステップと、
前記ローカル端末(L)のサーキットブレーカが閉じている場合
、それぞれの通信
遅延時間(14
R1~14
R5)を制御ユニットが特定するステップとをさらに含む、請求項1乃至1
6のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多端末多接続部電力系統内のローカル端末と複数の遠隔端末のそれぞれとの間の通信ネットワークにおける通信時間遅延を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同期技法は、送電線に関連する障害が発生したときを明らかにすることによって電力系統内の送電線を保護することを助ける線差動保護方式において、重要な役割を果たす。線差動保護の基本原理は、差動電流(電力系統内のローカル端末と遠隔端末の両方の電流サンプルまたは電流フェーザの直接加算)をバイアス電流(ローカル端末と遠隔端末の両方の電流振幅の加算)と比較することに基づいている。すなわち、
【0003】
【数1】
である。ただし、
I
diffは差動電流であり、
I
biasはバイアス電流であり、
I
Lはローカル端末における測定電流であり、
I
Rは遠隔端末からの受け取り測定電流である。
【0004】
遠隔端末からの受信電流がローカル電流と厳密に同期している場合は、相互接続している送電線に内部障害がないので、差動電流は非常に小さいはずである(理論上はゼロ)。しかし、遠隔端末における測定電流を遠隔端末からローカル端末まで伝達することによって、また遠隔端末において電流を非同期サンプリングすることによってももたらされる遅延に起因する、遠隔端末からの受信電流サンプルの、ローカル端末の電流サンプルと比較した時間遅延を考慮しなければならない。この時間遅延は、差動電流の大幅な増加をまねくことがあり、その結果、外部障害が発生した場合に差動保護が正常に動作しないことになり得る。
【0005】
したがって、ローカル端末電流が遠隔端末からの受信電流と時間整合することを可能にする同期技法を使用する必要がある。従来は、全地球測位システム(GPS)に基づく処理と、いわゆる「ピンポン」技法などのエコーに基づく処理とが同期のために使用されており、GPSが主要同期要素として、ピンポンがバックアップとして機能する。
【0006】
GPSが、非交換通信ネットワークだけでなく交換通信ネットワークにも適応性のある同期を実現できることは明らかである。しかし、GPSは非常にコストがかかり、加えて、GPS信号が失われた場合には正常に動作しなくなる恐れがある。その一方で、ピンポン技法は、順方向通信経路と折り返し通信経路が同じである(すなわち、ローカル端末から遠隔端末までの時間遅延が遠隔端末からローカル端末までの遅延と同じである)非交換通信ネットワークに対してしか正しく機能することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様によれば、通信ネットワークにおいて、多端末多接続部電力系統内のローカル端末と複数の遠隔端末との間の通信時間遅延を決定する方法が提供され、この方法は、
(a)各遠隔端末とローカル端末の間のそれぞれの初期通信時間遅延を算出するステップと、
(b)隣接する接続部の1つのまたは各それぞれの対の間のそれぞれの接続部時間差を算出するステップと、
(c)前記または各遠隔端末とローカル端末の間に生じる前記または各対応する接続部時間差に応じて、ローカル端末から2つ以上の接続部によって間隔があけられた前記または各前記遠隔端末の算出された初期通信時間遅延を補正するステップとを含む。
【0009】
多端末多接続部電力系統内のローカル端末と複数の遠隔端末それぞれとの間のそれぞれの通信時間遅延を決定すると、その後にローカル端末電流を各遠隔端末からの受信電流と時間整合させることが可能になり、したがって、差動保護方式の動作を可能にするのに必要な、これらの電流を同期させることが可能になる。
【0010】
さらに、本発明の方法では、このような差動保護方式の動作が容易になり、費用のかかるGPSインフラストラクチャを必要とせず、あるいは、特定の通信ネットワークトポロジ、すなわち非交換(すなわち平衡)ネットワークだけに限定されるピンポンなどのエコーに基づく処理を必要としない。
【0011】
加えて、1つまたは複数のそれぞれの接続部時間差を算出すること、およびその後に、これらを使用して算出初期通信時間遅延を補正することは、本発明の方法が容易にスケール変更可能であり、多端末多接続部電力系統の様々なトポロジに容易に適合させ得ることを意味する。
【0012】
好ましくは、各遠隔端末とローカル端末の間のそれぞれの初期通信時間遅延を算出するステップ(a)は、
各遠隔端末について、電力ネットワーク内の計算ノードを選択するステップと、
各遠隔端末から対応する計算ノードに流れ込むそれぞれのノード電流を算出するステップと、
各遠隔端末について、対応する計算ノードに流れ込むノード電流の和がキルヒホッフの第1の法則によりゼロに等しいとするステップと、
各遠隔端末について、ローカル端末と前記それぞれの遠隔端末との間の初期通信時間遅延を対応する、ノード電流の等しくされた和から抽出するステップとを含む。
【0013】
各遠隔端末について、対応する計算ノードに流れ込むノード電流の和がゼロに等しいとすること(またその後、このようなノード電流の等しくされた和から初期通信時間遅延を抽出すること)、すなわちキルヒホッフの第1の法則を利用することは有利である。その理由は、そうしなければ前述の差動電流Idiffに悪影響を及ぼし得る、またその後、関連する差動保護方式を誤って活動化することにつながり得るエラーから、本発明の方法、およびそれによって得られる1つのまたは各初期通信時間遅延を隔てるのに役立つからである。
【0014】
特に、初期通信時間遅延を確立するのに、代わりに電力系統内の選択された計算ノードにおける算出電圧の差を考慮に入れると、それにより、算出電圧のほんの軽微な誤差の結果として、算出される差動電流Idiff値に大きい誤差が生じる恐れがある。
【0015】
任意選択で、各遠隔端末から対応する計算ノードに流れ込むそれぞれのノード電流を算出するステップは、各遠隔端末について、前記遠隔端末から対応する計算ノードに流れ込む対応する遠隔ノード電流を算出するステップと、ローカル端末について、対応する遠隔端末から対応する計算ノードに流れ込む電流を表す各遠隔端末の等価ノード電流を算出するステップとを含む。
【0016】
遠隔ノード電流および等価ノード電流を算出することにより、本発明の方法に所望の度合いのスケール変更可能性がもたらされ、したがって、たとえば大幅に数の異なる遠隔端末、および/またはこれらの遠隔端末を相互接続する接続部を有する、広い範囲の様々な電力系統構成に本発明の方法を使用することが可能になる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、
各等価ノード電流がローカル端末で算出され、
各遠隔ノード電流が、対応する遠隔端末で算出され、その後、通信ネットワークを介してローカル端末まで送信されて、対応する受信遠隔ノード電流として受信され、
各遠隔端末について、対応する計算ノードに流れ込むノード電流の和がキルヒホッフの第1の法則によりゼロに等しいとするステップは、各遠隔端末について、対応する算出された等価ノード電流と対応する遠隔端末との和がゼロに等しいとするステップを含む。
【0018】
前述のステップでは、望ましくはノード電流のそれぞれの対応する和の中に、所与の算出遠隔ノード電流が関連する遠隔端末から、選択された計算ノードまで(通信ネットワークを介して)進むのに要する時間である、初期通信時間遅延を組み入れる。
【0019】
ローカル端末について、各遠隔端末の等価ノード電流を算出するステップは、
各遠隔端末の等価アドミタンスを確立するステップと、
ローカルノード電流を得るステップと、
各遠隔端末の確立された等価アドミタンスおよびローカルノード電流を利用して、対応する等価ノード電流を算出するステップとを含み得る。
【0020】
各遠隔端末の確立された等価アドミタンスおよびローカルノード電流を利用して、対応する等価ノード電流を算出することには、このような計算から、たとえば電流の流れの状態に関して、それぞれの対応する等価ノード電流について、いかなる未知数も除去するという利点があり、したがって、その後に、対応する初期通信時間遅延を容易に抽出することが可能になる。その理由は、関連するノード電流の等しくされた和を、1つだけの未知数(すなわち必要な初期通信時間遅延)が含まれるように操作できるからである。
【0021】
本発明の別の好ましい実施形態による方法では、各遠隔端末の確立された等価アドミタンスおよびローカルノード電流を利用して、対応する等価ノード電流を算出するステップは、
ローカルノード電流に、前記確立された等価アドミタンスに基づく電流分散係数を乗算するステップと、
別の遠隔端末の等価アドミタンスと、ローカル端末について算出された対応するノード電圧とから決定される1つまたは複数の別のノード電流をローカルノード電流に加えるステップとのうちの1つを含む。
【0022】
このようなステップでは、望ましくは、それぞれの対応する等価ノード電流を、本発明の方法が適用される特定の電力系統内に含まれる遠隔端末の数に応じて容易にスケール変更ができるようにして、算出する。
【0023】
隣接する接続部の1つのまたは各それぞれの対の間のそれぞれの接続部時間差を算出するステップは、
最初に各遠隔端末の対応する算出予想電圧をローカル端末の算出予想電圧と整合させるステップと、
ローカル端末および各遠隔端末について、それが接続される接続部における予想電流を算出するステップと、
最初に各遠隔端末の対応する算出予想電流をローカル端末の算出予想電流と整合させるステップと、
各接続部における接続部電圧を、遠隔端末およびローカル端末の最初に整合された予想電圧および予想電流に基づいて算出するステップと、
隣接する接続部の前記または各それぞれの対について、それぞれの接続部時間差を、隣接する接続部の前記または各前記対の算出接続部電圧を比較することにより抽出するステップとを含み得る。
【0024】
このようなステップはすべて、GPSまたはピンポンに基づく処理などの外部同期要素にさらに頼ることなく実行することができ、したがって、そのような外部要素からの独立性を本発明の方法が維持するようにして、前記または各それぞれの接続部時間差が算出されることを可能にする。加えて、このようなステップは、電力系統の任意の数の端末、任意の数の接続部、および異なるトポロジに対してスケール変更可能である。
【0025】
好ましくは、最初に各遠隔端末の対応する算出予想電圧をローカル端末における算出予想電圧と整合させるステップと、最初に各遠隔端末の対応する算出予想電流をローカル端末における算出予想電流と整合させるステップとは、
最大初期通信時間遅延を特定するステップと、
補正係数を、各端末の算出予想電圧および算出予想電流のそれぞれについて、前記端末の対応する初期通信時間遅延を最大初期通信時間遅延から差し引くことによって算出するステップと、
対応する補正係数を、各端末の算出予想電圧および算出予想電流に適用するステップとを含む。
【0026】
前述のステップは、必要な最初の整合を望ましいように実現しながら容易に実施することができる。
【0027】
任意選択で、各接続部における接続部電圧を、遠隔端末およびローカル端末の最初に整合され算出された予想電圧および予想電流に基づいて算出するステップは、先行する接続部における電圧および電流を考慮に入れるステップを含む。
【0028】
先行する接続部、すなわち接続部が設置されている電力系統の動作中に電流がそこから受信される隣接接続部、における電圧および電流を考慮に入れるステップは、いかなる外部同期の必要性もなくすようにして接続部電圧の算出を可能にする。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態では、先行する接続部における電圧および電流を考慮に入れるステップは、先行する接続部に接続された1つのまたは各端末の算出された予想電流と、先行する接続部から受信された電流とを加算して、さらに前の先行する接続部から対象の接続部へ供給される電流を算出するステップを含む。
【0030】
このようなステップはやはり同様に、いかなる外部同期の必要性もなくす。
【0031】
さらに前の先行する接続部から受信される電流は次式により算出することができ、
ik(t)=[fk-1(t-2Tc)×K-bk-1(t)/K]/2zc
ここで、
fk-1(t)=vk-1(t)+zc×ik-1(t-Tz)
bk-1(t)=vk-1(t)-zc×ik-1(t-Tz)
であり、また
kは対象の接続部であり、
k-1は先行する接続部であり、
zc=abs(sqrt(z1/y1))
Tz=phase[sqrt(z1/y1)]/(2πf0)
K=exp[-real(sqrt(z1×y1)×l]
Tc=imag[(sqrt(z1×y1)×l]/(2πf0)
であり、ここで、
f0は電力系統の基本周波数であり、
lは、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の区間長であり、
z1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0032】
あるいは、さらに前の先行する接続部から受信される電流は次式により算出することができ、
【0033】
【数2】
ただし、
Dはcosh(γl)であり、
Cは-sinh(γl)/Zcであり、
kは対象の接続部であり、
k-1は先行する接続部であり、
ここで、
Zcは√(z
1/y
1)で与えられ、
γは√(z1×y1)で与えられ、
lは、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の区間長であり、
z
1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0034】
好ましくは、対象の接続部における接続部電圧は次式により計算され、
vk(t)=[fk-1(t-2Tc-Tz)×K+bk-1(t-Tz)/K]/2
ただし、
fk-1(t)=vk-1(t)+zc×ik-1(t-Tz)
bk-1(t)=vk-1(t)-zc×ik-1(t-Tz)
であり、また
kは対象の接続部であり、
k-1は先行する接続部であり、
zc=abs(sqrt(z1/y1))
Tz=phase[sqrt(z1/y1)]/(2πf0)
K=exp[-real(sqrt(z1×y1)×l]
Tc=imag[(sqrt(z1×y1)×l]/(2πf0)
であり、ここで、
f0は電力系統の基本周波数であり、
lは、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の区間長であり、
z1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0035】
対象の接続部における接続部電圧は次式により算出され、
【0036】
【数3】
ただし、
Aはcosh(γl)であり、
Bは-Zc×sinh(γl)であり、
kは対象の接続部であり、
k-1は先行する接続部であり、
ここで、
Zcは√(z
1/y
1)で与えられ、
γは√(z1×y1)で与えられ、
lは、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の区間長であり、
z
1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0037】
先行するステップは、望ましくは、多端末多接続部電力系統のすべての異なるトポロジに適用可能になるように容易にスケール変更可能であるようにして、それぞれの接続部電圧の算出を可能にする。
【0038】
任意選択で、隣接する接続部の1つのまたは各それぞれの対について、それぞれの接続部時間差を、隣接する接続部の前記または各前記それぞれの対の算出接続部電圧を比較することにより抽出するステップは、
対応する算出接続部電圧がゼロと交差するときを考慮に入れるステップ、および
周波数時間領域においてフーリエ変換法を利用するステップ
のうちの1つを含む。
【0039】
このようなステップは、たとえばマイクロコントローラによる制御ユニットで容易に実施することができ、各接続部電圧について本明細書で算出されるタイプのサンプリング電圧波形の時間シフトを特定するのによく適している。
【0040】
本発明の方法は、好ましくは、1つまたは複数の決定された通信時間遅延を、エコーに基づく処理によって確立された遅延検査値と照合するステップをさらに含む。
【0041】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、1つまたは複数の決定された通信時間遅延を、遅延検査値と照合するステップは、実際の遅延が電力系統の動作の1周期よりも大きい場合に、前記または各前記決定された通信時間遅延を補正するステップを含む。
【0042】
1つまたは複数の決定された通信時間遅延を遅延検査値と照合するステップは、
指定ローカル端末とそれぞれの遠隔端末との間の第1の通信時間遅延を決定するステップと、
ローカル端末として仮に指定されたそれぞれの遠隔端末と、遠隔端末として仮に指定されたローカル端末とについて、第2の通信時間遅延を決定するステップと、
第1と第2の通信時間遅延を加算するステップと、
加算された第1と第2の通信時間遅延を、対応する遅延検査値の2倍と比較するステップと、
加算値と遅延検査値の2倍との差が所定の閾値を超える場合、通信時間遅延をさらに決定することを一時的に保留するステップとを含み得る。
【0043】
このような照合を行うことは、本発明の方法の正確で確実な動作を維持する助けになる。
【0044】
本発明の方法は任意選択で、
電力系統内に障害状態が検出されたときに、通信時間遅延をさらに決定することを一時的に保留するステップと、
障害状態の間は、以前に決定された通信時間遅延に依拠するステップとをさらに含む。
【0045】
前述のステップを実行することは、本発明の方法が障害状態を正確かつ確実に乗り越える助けになる。
【0046】
本発明の方法は、
ローカル端末および各遠隔端末に動作可能に付随するそれぞれのサーキットブレーカが閉じているかどうかを検査するステップと、
ローカル端末のサーキットブレーカが閉じている場合にだけ、また付随するサーキットブレーカがやはり閉じている前記または各遠隔端末に関してだけ、それぞれの通信時間遅延を決定するステップとをさらに含み得る。
【0047】
このようなステップは、それぞれのサーキットブレーカがちょうど閉じつつあるときに、したがって、完全に閉じていることも閉じていないこともある電力系統の初期動作中に、通信時間遅延を誤って決定しないようにする助けになる。
【0048】
次に本発明の好ましい実施形態について、非限定的な例によって、以下の図を参照して簡潔に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】例示的な多端末多接続部電力系統の概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による方法の全体構成の概略図である。
【
図3(a)】構成が一時的に修正されている、
図1に示した電力系統の概略図である。
【
図3(b)】等価アドミタンスを含む、
図3(a)に示した一時的に修正された電力系統の等価バージョンの図である。
【
図4(a)】
図2に示した第2の計算ブロックの一部分を形成する様々な計算サブブロックを示す図である。
【
図4(b)】
図4(a)に示した計算サブブロックのうちの1つの一部分を形成する第1の調整ブロックを示す図である。
【
図4(c)】
図4(b)に示した第1の調整ブロックで使用される例示的な構成を示す図である。
【
図5】先行する接続部の電圧および電流に基づく、対象の特定の接続部の接続部電圧の算出を概略的に示す図である。
【
図6】
図2に概略的に示した方法の一部分を形成する、算出接続部電圧の比較を示す図である。
【
図7】
図2に示した全体構成の一部分を形成する制御部構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
例示的な多端末多接続部電力系統が、全体的に参照数字10で示され、
図1に概略的に示されている。
【0051】
電力系統10は、ローカル端末Lと、第1、第2、第3、第4および第5の遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5と、ならびに第1、第2、第3および第4の接続部J1、J2、J3、J4を含む。接続部J1、J2、J3、J4は、送電媒体12のそれぞれの部分、たとえばそれぞれの送電線または他の送電管路を介して、それぞれの遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5とローカル端末Lとを相互に接続する。
【0052】
他の多端末多接続部電力系統もまた可能であり、本発明の方法は、これらの他の電力系統に対しても同様に動作することができる。たとえば、ローカル端末Lは、必ずしも第1の接続部J1に接続する必要がない。
【0053】
図示の例示的な電力系統10を再び参照すると、本発明の第1の実施形態による方法では、通信ネットワーク(図示せず)においてローカル端末Lと遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5との間のそれぞれの通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5を決定する。
【0054】
この方法の全体構成は
図2に概略的に示されており、次の主なステップ、すなわち、
(a)各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5とローカル端末Lの間のそれぞれの初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を算出するステップと、
(b)隣接する接続部J1、J2、J3、J4のそれぞれの第1、第2、および第3の対16、18、20の間のそれぞれの接続部時間差T
12、T
23、T
34を算出するステップと、
(c)各前記遠隔端末R2、R3、R4、R5とローカル端末Lの間に生じるそれぞれの対応する接続部時間遅延T
12、T
23、T
34に応じて、ローカル端末Lから2つ以上の接続部J1、J2、J3、J4によって間隔があけられた各遠隔端末R2、R3、R4、R5の算出された初期通信時間遅延Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を補正するステップ
とを含む。
【0055】
より詳細には、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5とローカル端末Lの間のそれぞれの初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を算出するステップ(a)は、第1の計算ブロックB1によって実行され、
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、電力系統10内の計算ノードを選択するステップと、
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5から対応する計算ノードに流れ込むそれぞれのノード電流を算出するステップと、
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、対応する計算ノードに流れ込むノード電流の和がキルヒホッフの第1の法則によりゼロに等しいとするステップと、
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、ローカル端末Lと前記それぞれの遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5との間の初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を対応する、ノード電流の等しくされた和から抽出するステップ
とを含む。
【0056】
同じ計算ノードが各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について選択されてよく、またそれが送電媒体12のそれぞれの部分内の任意の点であってもよいが、例として、それがローカル端末Lの最も近くにある第1の接続部J1であるとして選択される。
【0057】
このような選択は、第2、第3、第4および第5の遠隔端末R2、R3、R4、R5のそれぞれが第1の接続部J1に一時的に接続され(
図3(a)に示す)、それによって、接続部J1、J2、J3、J4自体間のデータ送信時に発生し得る、まだ未知の時間遅延を無視することを前提とするに等しい。その結果、計算は、前述の遠隔端末R2、R3、R4、R5のそれぞれからローカル端末Lへ送出されるデータの時間遅延を表すおおよその、すなわち初期の通信時間遅延値のみを得ることが目的となる。
【0058】
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5から対応する計算ノード、すなわち第1の接続部J1に流れ込むそれぞれのノード電流を算出するステップは、遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5のそれぞれについての様々な計算を含む。
【0059】
より詳細には、このような計算は、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、すなわち各遠隔端末において、前記遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5から対応する計算ノード、すなわち第1の接続部J1に流れ込む電流である、対応する遠隔ノード電流iJR1、iJR2、iJR3、iJR4、iJR5を算出することを含む。
【0060】
このような計算はまた、ローカル端末Lについて、すなわちローカル端末Lにおいて、対応する遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5から対応する計算ノード、すなわち第1の接続部J1に流れ込む電流を(ローカル端末Lの観点から)表す、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lを算出することも含む。
【0061】
より詳細には、第1の遠隔端末R1から第1の接続部J1、すなわち計算ノードに流れ込む第1の遠隔ノード電流iJR1は、第1の遠隔端末R1で利用する時間基準に基づくように、第1の遠隔端末R1について算出される、すなわち第1の端末R1において算出される。
【0062】
その一方で、第1の遠隔端末R1の第1の等価ノード電流iJR1_Lは、ローカル端末Lで利用する異なる時間基準に基づくように、ローカル端末Lについて算出され、すなわちローカル端末Lにおいて算出され、したがって、第1の遠隔端末R1から第1の接続部J1に流れ込む電流をローカル端末Lの観点から表す。
【0063】
同様に、第2の遠隔端末R2から第1の接続部J1に流れ込む第2の遠隔ノード電流iJR2は、第2の遠隔端末R2について算出され、すなわち第2の遠隔端末R2において算出され、第2の遠隔端末R2の第2の等価ノード電流iJR2_Lは、第2の遠隔端末R2から第1の接続部J1に流れ込む電流をローカル端末Lの観点から表すように、ローカル端末Lについて算出される、すなわちローカル端末Lにおいて算出される。
【0064】
第3の遠隔端末R3から第1の接続部J1に流れ込む第3の遠隔ノード電流iJR3は、第3の遠隔端末R3について算出され、すなわち第3の遠隔端末R3において算出され、第3の遠隔端末R3の第3の等価ノード電流iJR3_Lは、第3の遠隔端末R3から第1の接続部J1に流れ込む電流をローカル端末Lの観点から表すように、ローカル端末Lについて算出される、すなわちローカル端末Lにおいて算出される。
【0065】
第4の遠隔端末R4から第1の接続部J1に流れ込む第4の遠隔ノード電流iJR4は、第4の遠隔端末R4について算出され、すなわち第4の遠隔端末R4において算出され、第4の遠隔端末R4の第4の等価ノード電流iJR4_Lは、第4の遠隔端末R4から第1の接続部J1に流れ込む電流をローカル端末Lの観点から表すように、ローカル端末Lについて算出される、すなわちローカル端末Lにおいて算出される。
【0066】
第5の遠隔端末R5から第1の接続部J1に流れ込む第5の遠隔ノード電流iJR5は、第5の遠隔端末R5について算出され、すなわち第5の遠隔端末R5において算出され、第5の遠隔端末R5の第5の等価ノード電流iJR5_Lは、第5の遠隔端末R5から第1の接続部J1に流れ込む電流をローカル端末Lの観点から表すように、ローカル端末Lについて算出される、すなわちローカル端末Lにおいて算出される。
【0067】
第1、第2、第3、第4および第5の遠隔ノード電流iJR1、iJR2、iJR3、iJR4、iJR5の算出は、以下で説明するローカルノード電流iJLの算出と同様に行われ、それぞれの遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5において電流iR1、iR2、iR3、iR4、iR5を測定すること、およびその測定された電流iR1、iR2、iR3、iR4、iR5を用いて対応する遠隔ノード電流iJR1、iJR2、iJR3、iJR4、iJR5を算出することを、関連する遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5と第1の接続部J1の間の送電媒体12の対応する等価区間12B、12C、12D、12E、12Fの適切なモデル、すなわち、
抵抗-インダクタモデル、
線形の抵抗-インダクタ-コンデンサモデル、および
分散パラメータモデル
のうちの1つを使用して行うことを含む。
【0068】
送電媒体12の対応する等価区間12B、12C、12D、12E、12Fの適切なモデルに関して、
図3(a)に示した等価区間12B、12C、12D、12E、12Fは、対応する遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5と計算ノード、すなわち第1の接続部J1との間の送電媒体12の実際の個々の区間を加算することによって得られる。加えて、このような各等価区間12B、12C、12D、12E、12Fの並列アドミタンスy、伝搬係数γ、および特性インピーダンスZ
Cは、送電媒体12のそれぞれの区間の運営者から提供される、送電媒体12の単位長さ当たりのインピーダンスz、および単位長さ当たりの並列アドミタンスyから同様に決定することができる。
【0069】
第1の遠隔ノード電流iJR1は第1の遠隔端末R1によって、すなわちその中にある制御ユニットによって算出され、第2の遠隔ノード電流iJR2は第2の遠隔端末R1によって算出され、第3の遠隔ノード電流iJR3は第2の遠隔端末R3によって算出され、第4の遠隔ノード電流iJR4は第4の遠隔端末R4によって算出され、第5の遠隔ノード電流iJR5は第5の遠隔端末R5によって算出される。
【0070】
それぞれの場合で、対応する遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5はローカル端末Lへ、通信ネットワークを介して、関連する算出遠隔ノード電流iJR1、iJR2、iJR3、iJR4、iJR5を送信し、これらの電流は、それぞれの第1の受信遠隔ノード電流i’JR1、それぞれの第2の受信遠隔ノード電流i’JR2、それぞれの第3の受信遠隔ノード電流i’JR3、それぞれの第4の受信遠隔ノード電流i’JR4、およびそれぞれの第5の受信遠隔ノード電流i’JR5として受信される。
【0071】
このようにして、各受信遠隔ノード電流i’JR1、i’JR2、i’JR3、i’JR4、i’JR5は、関連する遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5とローカル端末Lの間の対応する初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5、すなわち、第1の遠隔端末R1とローカル端末Lの間の第1の初期通信時間遅延Tp1、第2の遠隔端末R2とローカル端末Lの間の第2の初期通信時間遅延Tp2、第3の遠隔端末R3とローカル端末Lの間の第3の初期通信時間遅延Tp3、第4の遠隔端末R4とローカル端末Lの間の第4の初期通信時間遅延Tp4、および第5の遠隔端末R5とローカル端末Lの間の第5の初期通信時間遅延Tp5、を具現化することができる。
【0072】
各等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lは、ローカル端末Lによって、より詳細には、その中にある制御ユニットによって算出される。
【0073】
ローカル端末Lは、第1、第2、第3、第4および第5の等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lを算出する際、すなわち、
iJR1_L=iJL+iJR2+iJR3+iJR4+iJR5
iJR2_L=iJL+iJR1+iJR3+iJR4+iJR5
iJR3_L=iJL+iJR1+iJR2+iJR4+iJR5
iJR4_L=iJL+iJR1+iJR2+iJR3+iJR5
iJR5_L=iJL+iJR1+iJR2+iJR3+iJR4
に従って算出する際、第1、第2、第3、第4および第5の受信遠隔ノード電流i’JR1、i’JR2、i’JR3、i’JR4、i’JR5を使用することができるが、これにより5つの未知数、すなわち第1、第2、第3、第4および第5の通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5、が計算ノード、すなわち第1の接続部J1に流れ込むノード電流の和がゼロに等しいとする次のステップ、ステップ(c)において導入されることになり、それによって、前記通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5のそれぞれをその後に抽出することがより困難になる。
【0074】
それゆえに、本明細書に記載の本発明の方法の実施形態では、第1、第2、第3、第4および第5の等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lのそれぞれを算出するステップは、任意選択で、
遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5ごとに等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5を確立するステップと、
ローカルノード電流iJLを取得するステップと、
確立された遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5ごとの等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5、およびローカルノード電流iJLを利用して、対応する等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lを算出するステップ
を含む。
【0075】
図3(b)は、第2、第3、第4および第5の遠隔端末R2、R3、R4、R5からそれぞれ流れる第2、第3、第4および第5の遠隔ノード電流i
JR2、i
JR3、i
JR4、i
JR5のそれぞれの代わりとして、対応する第2、第3、第4および第5の等価アドミタンスy
eR2、y
eR3、y
eR4、y
eR5をどのように考察できるかの1つの例を示す。
【0076】
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5は、サンプルに基づく方法またはフーリエに基づく方法によって確立することができる。
【0077】
例として、本発明の方法では、次式によるフーリエに基づく方法を利用する。
【0078】
【0079】
【数5】
は、第1の遠隔端末R1とローカル端末Lの間の第1の通信時間遅延Tp1を具現化する、第1の受信遠隔ノード電流i’
JR1のフーリエフェーザであり、
【0080】
【数6】
は、第1の遠隔端末R1で測定された電圧v
R1に基づいて第1の遠隔端末R1によって算出され、また第1の通信時間遅延Tp1をやはり具現化する、第1の受信遠隔ノード電圧v’
JR1のフーリエフェーザであり、
【0081】
【数7】
は、第2の遠隔端末R2とローカル端末Lの間の第2の通信時間遅延Tp2を具現化する、第2の受信遠隔ノード電流i’
JR2のフーリエフェーザであり、
【0082】
【数8】
は、第2の遠隔端末R2で測定された電圧v
R2に基づいて第2の遠隔端末R2によって算出され、また第2の通信時間遅延Tp2をやはり具現化する、第2の受信遠隔ノード電圧v’
JR2のフーリエフェーザであり、
【0083】
【数9】
は、第3の遠隔端末R3とローカル端末Lの間の第3の通信時間遅延Tp3を具現化する、第3の受信遠隔ノード電流i’
JR3のフーリエフェーザであり、
【0084】
【数10】
は、第3の遠隔端末R3で測定された電圧v
R3に基づいて第3の遠隔端末R3によって算出され、また第3の通信時間遅延Tp3をやはり具現化する、第3の受信遠隔ノード電圧v’
JR3のフーリエフェーザであり、
【0085】
【数11】
は、第4の遠隔端末R4とローカル端末Lの間の第4の通信時間遅延Tp4を具現化する、第4の受信遠隔ノード電流i’
JR4のフーリエフェーザであり、
【0086】
【数12】
は、第4の遠隔端末R4で測定された電圧v
R4に基づいて第4の遠隔端末R4によって算出され、また第4の通信時間遅延Tp4をやはり具現化する、第4の受信遠隔ノード電圧v’
JR4のフーリエフェーザであり、
【0087】
【数13】
は、第5の遠隔端末R5とローカル端末Lの間の第5の通信時間遅延Tp5を具現化する、第5の受信遠隔ノード電流i’
JR5のフーリエフェーザであり、
【0088】
【数14】
は、第5の遠隔端末R5で測定された電圧v
R5に基づいて第5の遠隔端末R5によって算出され、また第5の通信時間遅延Tp5をやはり具現化する、第5の受信遠隔ノード電圧v’
JR5のフーリエフェーザである。
【0089】
その一方で、ローカルノード電流iJLは、ローカル端末Lにおいて電流iLを測定し、そのローカル端末Lにおいて測定された電流iLを使用してローカルノード電流iJLを、ローカル端末Lと第1の接続部J1の間の送電媒体12の区間12Aの抵抗-インダクタモデルを使用して算出することによって、得ることができる。
【0090】
より詳細には、ローカル端末Lと第1の接続部J1の間の送電媒体12の区間12Aは、抵抗-インダクタ直列接続回路とみなされ、区間12Aは約50km未満の高架送電線であるので、並列アドミタンスは無視することができ、それにより、ローカルノード電流iJLは次式で与えられる。
【0091】
iJL=iL
同様の抵抗-インダクタモデルが、ローカル端末と第1の接続部、すなわち計算ノードの間の送電媒体の対応する区間が約3km未満の地下ケーブルによって画定されるネットワークに適用される場合に、この方法の別の実施形態で使用されてよい。
【0092】
本発明の方法の別の実施形態では、ローカル端末と第1の接続部の間の送電媒体の区間が約50kmから150kmまでの間の長さの高架送電線によって、または約3kmから20kmまでの間の長さの地下ケーブルによって画定されるネットワークに適用される場合、ローカルノード電流iJLは、送電媒体の前述の区間の線形の抵抗-インダクタ-コンデンサモデルを使用して得ることができる。すなわち、抵抗、インダクタンス(またはリアクタンス)および並列静電容量(またはアドミタンス)の各パラメータは、前記区間に沿って線形に変化すると考えられる。このような線形の抵抗-インダクタ-コンデンサモデルはまた、π等価回路と呼ぶこともできる。
【0093】
このような実施形態では、ローカルノード電流iJLは、サンプルに基づく方法またはフーリエ位相に基づく方法によって得ることができる。
【0094】
フーリエ位相に基づく方法に関して、ローカルノード電流iJLは次式で与えられる。
【0095】
【0096】
【数16】
はローカル端末Lにおける測定電流i
Lのフーリエフェーザであり、
【0097】
【数17】
はローカル端末Lにおける測定電圧v
Lのフーリエフェーザであり、
【0098】
【数18】
はローカルノード電流i
JLのフーリエフェーザであり、
y
Lは、ローカル端末Lと計算ノード、すなわち第1の接続部J1の間の送電媒体12の区間12Aの並列アドミタンスである。
【0099】
最後のパラメータ、すなわち並列アドミタンyLに関して、このパラメータは、単位長さ当たりのアドミタンス(送電媒体12の運営者から得ることができる)に区間12Aの全長を乗算することによって決定することができる。
【0100】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、ローカル端末と第1の接続部の間の送電媒体の区間が約150kmを超える長さの高架送電線によって、または約20kmを超える長さの地下ケーブルによって画定されるネットワークに適用される場合、ローカルノード電流iJLは、送電媒体の前述の区間の分散パラメータモデルを使用して得ることができる。
【0101】
このような実施形態では、ローカルノード電流iJLは、サンプルに基づく方法またはフーリエ位相に基づく方法によって得ることができ、フーリエ位相に基づく方法ではローカルノード電流iJLが次式により得られる。
【0102】
【0103】
【数20】
はローカル端末Lにおける測定電流i
Lのフーリエフェーザであり、
【0104】
【数21】
はローカル端末Lにおける測定電圧v
Lのフーリエフェーザであり、
【0105】
【数22】
は送電媒体の区間の伝搬係数であり、zが送電媒体の単位長さ当たりのインピーダンス、yが送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスであり、
【0106】
【数23】
は送電媒体の区間の特性であり、やはりzが送電媒体の単位長さ当たりのインピーダンスであり、yが送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスであり、
Dは、ローカル端末Lと計算ノード、すなわち第1の接続部J1の間の送電媒体の区間の長さである。
【0107】
その後、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の確立された等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5、およびローカルノード電流iJLを利用して、対応する第1、第2、第3、第4および第5の等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lを算出することには、ローカルノード電流iJLに、前記確立された等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5に基づく電流分散係数を乗算することが含まれる。すなわち次式により、
【0108】
【0109】
【数25】
は第1の等価ノード電流i
JR1_Lのフーリエフェーザであり、
【0110】
【数26】
は第2の等価ノード電流i
JR2_Lのフーリエフェーザであり、
【0111】
【数27】
は第3の等価ノード電流i
JR3_Lのフーリエフェーザであり、
【0112】
【数28】
は第4の等価ノード電流i
JR4_Lのフーリエフェーザであり、
【0113】
【数29】
は第5の等価ノード電流i
JR5_Lのフーリエフェーザであり、
【0114】
【数30】
はローカルノード電流i
JLのフーリエフェーザである。
【0115】
本発明の方法の別の実施形態では、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の確立された等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5、およびローカルノード電流iJLを利用して、対応する第1、第2、第3、第4および第5の等価ノード電流iJR1_L、iJR2_L、iJR3_L、iJR4_L、iJR5_Lを算出することには、別の遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の等価アドミタンスyeR1、yeR2、yeR3、yeR4、yeR5と、ローカル端末Lについて算出される、すなわちローカル端末Lにおいて算出される対応するノード電圧とから決定される1つまたは複数の別のノード電流を、ローカルノード電流iJLに加えることが含まれ得る。すなわち次式により、
【0116】
【0117】
【数32】
は第1の等価ノード電流i
JR1_Lのフーリエフェーザであり、
【0118】
【数33】
は第2の等価ノード電流i
JR2_Lのフーリエフェーザであり、
【0119】
【数34】
は第3の等価ノード電流i
JR3_Lのフーリエフェーザであり、
【0120】
【数35】
は第4の等価ノード電流i
JR4_Lのフーリエフェーザであり、
【0121】
【数36】
は第5の等価ノード電流i
JR5_Lのフーリエフェーザであり、
【0122】
【数37】
はローカルノード電流i
JLのフーリエフェーザであり、
【0123】
【数38】
は、計算ノード、すなわち第1の接続部J1において予期され、ローカル端末Lにおける測定電圧v
Lに基づいてローカル端末Lで算出される、ノード電圧v
JLのフーリエフェーザである。
【0124】
その後、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、計算ノード、すなわち第1の接続部J1に流れ込むノード電流の和がキルヒホッフの第1の法則によりゼロに等しいとするステップは、
第1の遠隔端末R1について、第1の算出等価ノード電流iJR1_Lと第1の遠隔ノード電流iJR1の和がゼロに等しいとするステップと、
第2の遠隔端末R2について、第2の算出等価ノード電流iJR2_Lと第2の遠隔ノード電流iJR2の和がゼロに等しいとするステップと、
第3の遠隔端末R3について、第3の算出等価ノード電流iJR3_Lと第3の遠隔ノード電流iJR3の和がゼロに等しいとするステップと、
第4の遠隔端末R4について、第4の算出等価ノード電流iJR4_Lと第4の遠隔ノード電流iJR4の和がゼロに等しいとするステップと、
第5の遠隔端末R5について、第5の算出等価ノード電流iJR5_Lと第5の遠隔ノード電流iJR5の和がゼロに等しいとするステップと
を含む。
【0125】
言い換えると、キルヒホッフの第1の法則によれば、同じノード、すなわち第1の接続部J1に流れ込む全電流の和は、第1の遠隔端末R1については、
iJR1_L+iJR1=0
第2の遠隔端末R2については、
iJR2_L+iJR2=0
第3の遠隔端末R3については、
iJR3_L+iJR3=0
第4の遠隔端末R4については、
iJR4_L+iJR4=0
第5の遠隔端末R5については、
iJR5_L+iJR5=0
となるように、ゼロでなければならない。
【0126】
上記に続いて、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、ローカル端末Lと前記各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5との間の対応する初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を対応する、ノード電流の等しくされた和から、すなわち上述の和のうちの対応する1つから抽出するステップは、前記ノード電流の位相を考慮するステップを含む。この理由は、受信遠隔ノード電流i’JR1、i’JR2、i’JR3、i’JR4、i’JR5について上述したものと同様に、このような受信遠隔ノード電流i’JR1、i’JR2、i’JR3、i’JR4、i’JR5のフェーザはまた、対応する初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を具現化もするが、それがより容易に抽出可能であるようにして具現化するからである。
【0127】
したがって、フェーザ形式で上述された和をフーリエ変換法を採用して書き直し、受信遠隔ノード電流i’JR1、i’JR2、i’JR3、i’JR4、i’JR5のそれぞれのフェーザを利用して対応する初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を組み込むと、第1の遠隔端末R1について、
【0128】
【0129】
【数40】
は等価ノード電流i
JR1_Lのフーリエフェーザであり、
【0130】
【数41】
は、第1の遠隔端末R1からローカル端末Lへ送信された第1の受信遠隔ノード電流i’
JR1のフーリエフェーザであり、
fはノード電流i
JR1_L、i’
JR1の周波数であり、
第2の遠隔端末R2について、
【0131】
【0132】
【数43】
は等価ノード電流i
JR2_Lのフーリエフェーザであり、
【0133】
【数44】
は、第2の遠隔端末R2からローカル端末Lへ送信された第2の受信遠隔ノード電流i’
JR2のフーリエフェーザであり、
fはノード電流i
JR2_L、i’
JR2の周波数であり、
第3の遠隔端末R3について、
【0134】
【0135】
【数46】
は第3の等価ノード電流i
JR3_Lのフーリエフェーザであり、
【0136】
【数47】
は、第3の遠隔端末R3からローカル端末Lへ送信された第3の受信遠隔ノード電流i’
JR3のフーリエフェーザであり、
fはノード電流i
JR3_L、i’
JR3の周波数であり、
第4の遠隔端末R4について、
【0137】
【0138】
【数49】
は第4の等価ノード電流i
JR4_Lのフーリエフェーザであり、
【0139】
【数50】
は、第4の遠隔端末R4からローカル端末Lへ送信された第4の受信遠隔ノード電流i’
JR4のフーリエフェーザであり、
fはノード電流i
JR4_L、i’
JR4の周波数であり、
第5の遠隔端末R5について、
【0140】
【0141】
【数52】
は第5の等価ノード電流i
JR5_Lのフーリエフェーザであり、
【0142】
【数53】
は、第5の遠隔端末R5からローカル端末Lへ送信された第5の受信遠隔ノード電流i’
JR5のフーリエフェーザであり、
fはノード電流i
JR5_L、i’
JR5の周波数である。
【0143】
次に、前述の和のそれぞれは、対応する初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を与えるように再構成され、すなわち第1の初期通信時間遅延Tp1が次式で与えられ、
【0144】
【数54】
ただし、argは前述のフーリエフェーザの角度を与え、
第2の初期通信時間遅延Tp2が次式で与えられ、
【0145】
【数55】
第3の初期通信時間遅延Tp3が次式で与えられ、
【0146】
【数56】
第4の初期通信時間遅延Tp4が次式で与えられ、
【0147】
【数57】
また第5の初期通信時間遅延Tp5が次式で与えられるように、再構成される。
【0148】
【数58】
本発明の方法の次の主なステップ、ステップ(b)では、隣接する接続部J1、J2、J3、J4の第1、第2および第3の対16、18、20それぞれの間のそれぞれの接続部時間差T
12、T
23、T
34を算出することが必要とされる。
【0149】
これらの計算は、
図2に示した第2の計算ブロックB2で実行され、それぞれの計算には、
ローカル端末Lおよび各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、それが接続される接続部J1、J2、J3、J4における予想電圧v
J1_L、v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5を算出すること、
最初に各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の対応する算出予想電圧v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5をローカル端末Lにおける算出予想電圧v
J1_Lと整合させること、
ローカル端末Lおよび各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5について、それが接続される接続部J1、J2、J3、J4における予想電流i
J1_L、i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5を算出すること、
最初に各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の対応する算出予想電流i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5をローカル端末Lにおける算出予想電流i
J1_Lと整合させること、
各接続部J1、J2、J3、J4における接続部電圧を、遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5およびローカル端末Lの前記最初に整合された予想電圧および予想電流に基づいて算出すること、および
隣接する接続部J1、J2、J3、J4の各前記対16、18、20について、それぞれの接続部時間差T
12、T
23、T
34を、隣接する接続部J1、J2、J3、J4のそれぞれの前記対16、18、20の算出接続部電圧を比較することにより抽出すること
が含まれる。
【0150】
説明した実施形態の方法では、ローカル端末Lおよび遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5のそれぞれが接続される接続部における予想電圧は、他の技法もまた可能であるが、以下のように算出される。
【0151】
ローカル端末Lについては、第1の接続部J1における予想電圧は次式で与えられる。
【0152】
vJ1_L(t)=[fL(t-2TcL-TzL)×KL+bL(t-TzL)/KL]/2
ただし、
fL(t)=vL(t)+zcL×iL(t-TzL)
bL(t)=vL(t)-zcL×iL(t-TzL)
であり、ここで、
zcL=abs(sqrt(zL/yL))
TzL=phase[sqrt(zL/yL)]/(2πf0)
KL=exp[-real(sqrt(zL×yL)]
TcL=imag[(sqrt(zL×yL)]/(2πf0)
であり、ただし、
vLはローカル端末Lにおける測定電圧であり、
iLはローカル端末Lにおける測定電流であり、
zLは、ローカル端末Lを第1の接続部J1に接続する送電媒体部分12Aの知られているインピーダンスであり、
yLは、ローカル端末Lを第1の接続部J1に接続する送電媒体部分12Aの知られているアドミタンスである。
【0153】
同様に、第1の遠隔端末R1については、第1の接続部J1における予想電圧は次式で与えられる。
【0154】
vJ1_R1(t)=[fR1(t-2TcR1-TzR1)×KR1+bR1(t-TzR1)/KR1]/2
ただし、
fR1(t)=vR1(t)+zcR1×iR1(t-TzR1)
bR1(t)=vR1(t)-zcR1×iR1(t-TzR1)
であり、ここで、
zcR1=abs(sqrt(zR1/yR1))
TzR1=phase[sqrt(zR1/yR1)]/(2πf0)
KR1=exp[-real(sqrt(zR1×yR1)]
TcR1=imag[(sqrt(zR1×yR1))]/(2πf0)
であり、ただし、
vR1は第1の遠隔端末R1における測定電圧であり、
iR1は第1の遠隔端末R1における測定電流であり、
zR1は、第1の遠隔端末R1を第1の接続部J1に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
yR1は、第1の遠隔端末R1を第1の接続部J1に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスである。
【0155】
残りの遠隔端末R2、R3、R4、R5の対応する接続部における予想電圧は、同様に次式で与えられる。
【0156】
vJ2_R2(t)=[fR2(t-2TcR2-TzR2)×KR2+bR2(t-TzR2)/KR2]/2
vJ3_R3(t)=[fR3(t-2TcR3-TzR3)×KR3+bR3(t-TzR3)/KR3]/2
vJ4_R4(t)=[fR4(t-2TcR4-TzR4)×KR4+bR4(t-TzR4)/KR4]/2
vJ4_R5(t)=[fR5(t-2TcR5-TzR5)×KR5+bR5(t-TzR5)/KR5]/2
ただし、
fR2(t)=vR2(t)+zcR2×iR2(t-TzR2)
bR2(t)=vR2(t)-zcR2×iR2(t-TzR2)
fR3(t)=vR3(t)+zcR3×iR3(t-TzR3)
bR3(t)=vR3(t)-zcR3×iR3(t-TzR3)
fR4(t)=vR4(t)+zcR4×iR4(t-TzR4)
bR4(t)=vR4(t)-zcR4×iR4(t-TzR4)
fR5(t)=vR5(t)+zcR5×iR5(t-TzR5)
bR5(t)=vR5(t)-zcR5×iR5(t-TzR5)
であり、
vR2は第2の遠隔端末R2における測定電圧であり、
vR3は第3の遠隔端末R3における測定電圧であり、
vR4は第4の遠隔端末R4における測定電圧であり、
vR5は第5の遠隔端末R5における測定電圧であり、
iR2は第2の遠隔端末R2における測定電流であり、
iR3は第3の遠隔端末R3における測定電流であり、
iR4は第4の遠隔端末R4における測定電流であり、
iR5は第5の遠隔端末R5における測定電流であり、
zR2は、第2の遠隔端末R2を第2の接続部J2に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
zR3は、第3の遠隔端末R3を第3の接続部J3に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
zR4は、第4の遠隔端末R4を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
zR5は、第5の遠隔端末R5を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
yR2は、第2の遠隔端末R2を第2の接続部J2に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスであり、
yR3は、第3の遠隔端末R3を第3の接続部J3に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスであり、
yR4は、第4の遠隔端末R4を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスであり、
yR5は、第5の遠隔端末R5を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスである。
【0157】
ローカル端末Lおよび遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5が接続される接続部の予想電流は、予想電圧の算出と同様に他の技法もまた可能であるが、以下のように算出される。
【0158】
ローカル端末Lについては、第1の接続部J1における予想電流は次式で与えられる。
【0159】
iJ1_L(t)=[fL(t-2TcL-TzL)×KL+bL(t-TzL)/KL]/2zcL
ただし、
fL(t)=vL(t)+zcL×iL(t-TzL)
bL(t)=vL(t)-zcL×iL(t-TzL)
であり、ここで、
zcL=abs(sqrt(zL/yL))
TzL=phase[sqrt(zL/yL)]/(2πf0)
KL=exp[-real(sqrt(zL×yL)]
TcL=imag[(sqrt(zL×yL)]/(2πf0)
であり、ただし、
vLはローカル端末Lにおける測定電圧であり、
iLはローカル端末Lにおける測定電流であり、
zLは、ローカル端末Lを第1の接続部J1に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
yLは、ローカル端末Lを第1の接続部J1に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスである。
【0160】
同様に、第1の遠隔端末R1については、第1の接続部J1における予想電流は次式で与えられる。
【0161】
iJ1_R1(t)=[fR1(t-2TcR1-TzR1)×KR1+bR1(t-TzR1)/KR1]/2zcR1
ただし、
fR1(t)=vR1(t)+zcR1×iR1(t-TzR1)
bR1(t)=vR1(t)-zcR1×iR1(t-TzR1)
であり、ここで、
zcR1=abs(sqrt(zR1/yR1))
TzR1=phase[sqrt(zR1/yR1)]/(2πf0)
KR1=exp[-real(sqrt(zR1×yR1)]
TcR1=imag[(sqrt(zR1×yR1)]/(2πf0)
であり、ただし、
vR1は第1の遠隔端末R1における測定電圧であり、
iR1は第1の遠隔端末R1における測定電流であり、
zR1は、第1の遠隔端末R1を第1の接続部J1に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
yR1は、第1の遠隔端末R1を第1の接続部J1に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスである。
【0162】
残りの遠隔端末R2、R3、R4、R5の対応する接続部における予想電流は、同様に次式で与えられる。
【0163】
iJ2_R2(t)=[fR2(t-2TcR2-TzR2)×KR2-bR2(t-TzR2)/KR2]/2zcR2
iJ3_R3(t)=[fR3(t-2TcR3-TzR3)×KR3-bR3(t-TzR3)/KR3]/2zcR3
iJ4_R4(t)=[fR4(t-2TcR4-TzR4)×KR4-bR4(t-TzR4)/KR4]/2zcR4
iJ4_R5(t)=[fR5(t-2TcR5-TzR5)×KR5-bR5(t-TzR5)/KR5]/2zcR5
ただし、
fR2(t)=vR2(t)+zcR2×iR2(t-TzR2)
bR2(t)=vR2(t)-zcR2×iR2(t-TzR2)
fR3(t)=vR3(t)+zcR3×iR3(t-TzR3)
bR3(t)=vR3(t)-zcR3×iR3(t-TzR3)
fR4(t)=vR4(t)+zcR4×iR4(t-TzR4)
bR4(t)=vR4(t)-zcR4×iR4(t-TzR4)
fR5(t)=vR5(t)+zcR5×iR5(t-TzR5)
bR5(t)=vR5(t)-zcR5×iR5(t-TzR5)
であり、
vR2は第2の遠隔端末R2における測定電圧であり、
vR3は第3の遠隔端末R3における測定電圧であり、
vR4は第4の遠隔端末R4における測定電圧であり、
vR5は第5の遠隔端末R5における測定電圧であり、
iR2は第2の遠隔端末R2における測定電流であり、
iR3は第3の遠隔端末R3における測定電流であり、
iR4は第4の遠隔端末R4における測定電流であり、
iR5は第5の遠隔端末R5における測定電流であり、
zR2は、第2の遠隔端末R2を第2の接続部J2に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
zR3は、第3の遠隔端末R3を第3の接続部J3に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
zR4は、第4の遠隔端末R4を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
zR5は、第5の遠隔端末R5を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているインピーダンスであり、
yR2は、第2の遠隔端末R2を第2の接続部J2に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスであり、
yR3は、第3の遠隔端末R3を第3の接続部J3に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスであり、
yR4は、第4の遠隔端末R4を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスであり、
yR5は、第5の遠隔端末R5を第4の接続部J4に接続する実際の送電媒体部分12の知られているアドミタンスである。
【0164】
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の対応する算出予想電圧v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5をローカル端末Lにおける算出予想電圧v
J1_Lと最初に整合させること、および各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の対応する算出予想電流i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5をローカル端末Lにおける算出予想電流i
J1_Lと最初に整合させることは、
図4(a)に示した、第2の計算ブロックB2内にある第1の計算サブブロックD1で実行される。
【0165】
第1の計算サブブロックD1は、三相電力系統で発生するような、関連する算出予想電圧および算出予想電流をそれぞれが持つ第1、第2および第3の相A、B、Cを扱うものとして図示されている。図は説明のみを目的として、本発明の方法が単相について説明されているが、三相系統などの多相電力系統にも同様に適用することができる。
【0166】
前記最初の整合を実行するために、第1の計算サブブロックD1、より詳細には第1の計算ブロックD1内の第1の整合ブロック22(
図4(b)に示す)は、まず最大初期通信時間遅延を特定し、次に、補正係数を、各端末L、R1、R2、R3、R4、R5の算出予想電圧v
J1_L、v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5および算出予想電流i
J1_L、i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5のそれぞれについて、補正時間の形で補正係数24
L、24
R1、24
R2、24
R3、24
R4、24
R5を、前記端末L、R1、R2、R3、R4、R5の対応する初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を最大初期通信時間遅延から差し引くことによって算出する。
【0167】
より詳細には、第1の整合ブロック22は、必要な補正係数24
L、24
R1、24
R2、24
R3、24
R4、24
R5を算出するために、他の方式もまた可能であるが、
図4(c)に概略的に示された特定の方式を使用する。
【0168】
たとえば、第1の遠隔端末R1から受信した算出予想電圧vJ1_Lおよび算出予想電流iJ1_Lのそれぞれについて、これらのデータの時間遅延の補正係数は次式で与えられる。
【0169】
24R1=Tmax-Tp1
ただし、
Tmaxは最大初期通信時間遅延である。
【0170】
一方、ローカル端末Lの算出予想電圧vJ1_Lおよび算出予想電流iJ1_Lについては、補正係数は次式となる。
【0171】
24
L=T
max-0
次に、第1の計算サブブロックD1は、
図4(b)にも概略的に示されるように、補正係数24
L、24
R1、24
R2、24
R3、24
R4、24
R5を各端末L、R1、R2、R3、R4、R5の算出予想電圧v
J1_L、v
J1_R1、v
J2_R2、v
J3_R3、v
J4_R4、v
J4_R5および算出予想電流i
J1_L、i
J1_R1、i
J2_R2、i
J3_R3、i
J4_R4、i
J4_R5に適用して、端末L、R1、R2、R3、R4、R5のすべてについて最初に整合させる予想電圧(図示せず)および最初に整合させる予想電流(図示せず)を得る。
【0172】
その後、全端末L、R1、R2、R3、R4、R5の前記最初に整合させる予想電圧および予想電流に基づいて各接続部J1、J2、J3、J4における接続部電圧を算出することが、先行する接続部J1、J2、J3、J4における電圧および電流を考慮に入れることによって実現される。すなわち、
図5に概略的に示されるように、対象のk番目の接続部における電圧および電流が、(k-1)番目の接続部における電圧および電流から算出される。
【0173】
第2の計算サブブロックD2(
図4(a)に示す)は、接続部電圧算出を以下の方法で実行する。
【0174】
前の接続部k-1から供給される電流I(k-1)inは、先行する接続部k-1に接続されている1つのまたは各端子L、R1、R2、R3、R4、R5の算出予想電流を、さらに前の先行する接続部から受信した電流ik-1と加算することによって算出される。
【0175】
k番目およびk-1番目の接続部のそれぞれに接続されている1つのまたは各端末の数および識別は、ローカルおよび遠隔の端末L、R1、R2、R3、R4、R5と関連接続部J1、J2、J3、J4とのトポロジ、すなわち関連電力系統10のトポロジに依存する。
【0176】
所与の電力系統のトポロジの詳細を記録し数学的に利用できる1つの方法は、トポロジ行列によるものであり、
図1に示した例示的な電力系統10の場合、すべての端末R1、R2、R3、R4、R5と接続部J1、J2、J3、J4との接続関係を下表のように表す。
【0177】
【表1】
この例では、各列が端末を表し、各行が接続部を表し、ある特定の端末R1、R2、R3、R4、R5が所与の接続部に、たとえば第2の遠隔端末R2が第2の接続部J2に接続されている場合、列R2、行J2のセルに1が入り、それ以外にはゼロが用いられる。
【0178】
次に、例として、第3の接続部J3が接続部電圧を算出すべき対象の接続部である場合、すなわち第3の接続部J3がk番目の接続部である場合、第2の接続部から供給される電流I(k-1)inは、第2の接続部J2に接続されたこれらの端末の最初に整合させる算出予想電流、すなわち第2の遠隔端末R2の算出予想電流iJ2_R2を、第1の接続部J1、すなわちさらに前の先行する接続部から受信した電流ik-1と加算することによって算出される。
【0179】
一方で、第1の接続部J1から受信される電流ik-1は、次式により算出される。
【0180】
ik-1(t)=[fk-2(t-2Tc)×K-bk-2(t)/K]/2zc
一方、接続部k-1、すなわち第2の接続部J2の電圧vk-1は次式により算出される。
【0181】
vk-1(t)=[fk-2(t-2Tc)×K+bk-2(t)/K]/2
ここで、
fk-2(t)=vk-2(t)+zc×i(k-2)in(t-Tz)
bk-2(t)=vk-2(t)-zc×i(k-2)in(t-Tz)
であり、また、
k-1は第2の接続部J2であり、
k-2は第1の接続部J1であり、
vk-2は、第1の接続部J1に接続された1つのまたは各端末の最初に整合させる予想電圧の平均値であり、これは、第1の接続部に先行する他の接続部がないので、ローカル端末Lおよび第1の遠隔端末R1の各算出予想電圧の平均値であり、
i(k-2)inは、第1の接続部J1に接続された前記または各端末の最初に整合させる各予想電流の和、すなわちローカル端末Lの予想電流iJ1_Lと第1の遠隔端末R1の予想電流iJ1_R1との和であり、
zc=abs(sqrt(z1/y1))
Tz=phase[sqrt(z1/y1)]/(2πf0)
K=exp[-real(sqrt(z1×y1)×l]
Tc=imag[(sqrt(z1×y1)×l]/(2πf0)
であり、ここで、
f0は電力系統の基本周波数であり、
lは第1と第2の接続部J1、J2間の実際の送電媒体12の区間長であり、
z1は、第1と第2の接続部J1、J2間の実際の送電媒体12の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y1は、第1と第2の接続部J1、J2間の実際の送電媒体12の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0182】
その後、たとえば第3の接続部J3の接続部電圧は、次式により算出される。
【0183】
vk(t)=[fk-1(t-2Tc-Tz)×K+bk-1(t-Tz)/K]/2
ただし、
fk-1(t)=vk-1(t)+zc×i(k-1)in(t-Tz)
bk-1(t)=vk-1(t)-zc×i(k-1)in(t-Tz)
であり、また、
kは第3の接続部J3であり、
k-1は第2の接続部J2であり、
vk-1は、第2の接続部J2の(以前のステップで算出された)算出接続部電圧であり、
i(k-1)inは、第2の接続部J2から供給される(上で算出された)電流ik-1と、第2の接続部J2に接続されている端末の算出予想電流、すなわち第2の遠隔端末R2の算出予想電流iJ2_R2との和であり、
zc=abs(sqrt(z1/y1))
Tz=phase[sqrt(z1/y1)]/(2πf0)
K=exp[-real(sqrt(z1×y1)×l]
Tc=imag[(sqrt(z1×y1)×l]/(2πf0)
であり、ここで、
f0は電力系統の基本周波数であり、
lは第2と第3の接続部J2,J3間の実際の送電媒体12の区間長であり、
z1は、第2と第3の接続部J2,J3間の実際の送電媒体12の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y1は第2と第3の接続部J2,J3間の実際の送電媒体12の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0184】
代替形態として、対象の接続部における電流および電圧は次式により算出することができる。
【0185】
【数59】
ただし、
Aはcosh(γl)であり、
Bは-Zc×sinh(γl)であり、
Dはcosh(γl)であり、
Cは-sinh(γl)/Zcであり、
kは対象の接続部であり、
k-1は先行する接続部であり、
ここで、
Zcは√(z
1/y
1)で与えられ、
γは√(z1×y1)で与えられ、
lは、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の区間長であり、
z
1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの直列インピーダンスであり、
y
1は、先行する接続部から対象の接続部までの送電媒体の単位長さ当たりの並列アドミタンスである。
【0186】
どの事象でも、接続電圧が各接続部J1、J2、J3、J4について前述のようにして算出された後、それぞれの時間差T12、T23、T34が、隣接する接続部J1、J2、J3、J4の対16、18、20ごとに抽出される。
【0187】
このような抽出は、接続部J1、J2、J3、J4の各前記対16、18、20の算出接続部電圧を比較することによって、より詳細には、たとえば第1および第2の接続部J1、J2の算出接続部電圧v
J1、v
J2を例として
図6に概略的に示した、対応する算出接続部電圧がゼロと交差するときを考慮に入れることによって、行われる。
【0188】
隣接する接続部J1、J2、J3、J4の対16、18、20ごとに、対応する接続部時間差T12、T23、T34(すなわち、第1と第2の接続部J1、J2間の第1の接続部時間差T12、第2と第3の接続部J2、J3間の第2の接続部時間差T23、および第3と第4の接続部J3、J4間の第3の接続部時間差T34)を抽出することに続いて、本発明の方法では次に、各前記遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5とローカル端末Lの間に生じるそれぞれの対応する接続部時間差T12、T23、T34に応じて、ローカル端末Lから2つ以上の接続部J1、J2、J3、J4によって間隔があけられた各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の算出された初期通信時間遅延TP1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5を補正する主ステップ(c)を実行する。
【0189】
算出された初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5の補正はブロックB2で、より詳細には、
図4(a)に示されるように、その中の第3の計算サブブロックD3で、行われる。
【0190】
算出された初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5の補正のされ方は、ローカルおよび遠隔端末L、R1、R2、R3、R4、R5と関連接続部J1、J2、J3、J4とのトポロジに依存する。
【0191】
上記のように、所与の電力系統のトポロジの詳細を記録し数学的に利用できる1つの方法は、トポロジ行列によるものであり、
図1に示した例示的な電力系統10の場合、下表の形を取る。
【0192】
【表2】
実際には、第3の計算サブブロックB3は、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5に対応する補正時間DTp1、DTp2、DTp3、DTp4、DTp5を確立し、この補正時間は、対応する算出された初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5のそれぞれを補正するのに使用される。しかし、この特定の実施形態では、第1の遠隔端末R1に関連する補正時間DTp1は下記のようにゼロとなり、それにより、第1の遠隔端末R1に対する算出された初期通信時間遅延Tp1の補正は生じない。
【0193】
次に、第3の計算サブブロックB3は、
図2に概略的に示されているように、補正時間DTp1、DTp2、DTp3、DTp4、DTp5を対応する算出された初期通信時間遅延Tp1、Tp2、Tp3、Tp4、Tp5に適用して、すなわち加えて、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の最終の正確な通信時間遅延14
R1、14
R2、14
R3、14
R4、14
R5を決定する。
【0194】
次に、この最終の正確な通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5を使用して、ローカル端末Lにおける算出予想ローカル電流iJ1_Lを、各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5から受信された算出予想電流iJ1_R1、iJ2_R2、iJ3_R3、iJ4_R4、iJ4_R5と同期させることができ、それによって、電力系統10を保護するための差動保護方式を実施することが可能になる。
【0195】
各補正時間DTp1、DTp2、DTp3、DTp4、DTp5は、特定の遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5が接続される接続部J1、J2、J3、J4の関連補償時間を考慮に入れることによって確立される。また補償時間は、電力系統10のトポロジによって決まり、より詳細にはローカル端末の相対位置によって決まる。
【0196】
図1に示した電力系統10では、ローカル端末Lは第1の接続部J1に接続され、したがって、第1、第2、第3および第4の接続部J1、J2、J3、J4のそれぞれの補償時間T
J1、T
J2、T
J3、T
J4は以下となる。
【0197】
TJ1=0
TJ2=-T12 (すなわち、第1と第2の接続部J1、J2間の接続部時間差を差し引く)
TJ3=-(T12+T23) (すなわち、第1と第2の接続部J1、J2間の接続部時間差と、第2と第3の接続部J2、J3間の接続部時間差との和を差し引く)、および
TJ4=-(T12+T23+T34) (すなわち、第1と第2の接続部J1、J2間の接続部時間差と、第2と第3の接続部J2、J3間の接続部時間差と、第3と第4の接続部J3、J4間の接続部時間差との和を差し引く)
各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5の補正時間DTp1、DTp2、DTp3、DTp4、DTp5は、所与の遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5が接続される接続部J1、J2、J3、J4の補償時間に等しく、それにより補正時間は以下となる。
【0198】
DTp1=TJ1=0
DTp2=TJ2=-T12
DTp3=TJ3=-(T12+T23)
DTp4=TJ4=-(T12+T23+T34)
DTp5=TJ4=-(T12+T23+T34)
したがって、最終の正確な(すなわち、必要に応じて補正された)決定通信時間遅延は、
第1の遠隔端末R1については次式で与えられ、
14R1=Tp1+DTp1
=Tp1+0
=Tp1
第2の遠隔端末R2については次式で与えられ、
14R2=Tp2+DTp2
=Tp2+(-T12)
第3の遠隔端末R3については次式で与えられ、
14R3=Tp3+DTp3
=Tp3+(-(-T12+T23))
第4の遠隔端末R4については次式で与えられ、
14R4=Tp4+DTp4
=Tp4+(-(-T12+T23+T34))
第5の遠隔端末R5については次式で与えられる。
【0199】
14
R5=Tp5+DTp5
=Tp5+(-(-T
12+T
23+T
34))
図1に示したものと類似しているが、ローカル端末Lが第2の接続部J2に接続されている電力系統では、第1、第2、第3および第4の接続部J1、J2、J3、J4のそれぞれの補償時間T
J1、T
J2、T
J3、T
J4は、上記の代わりに以下のように決定される。
【0200】
T
J1=T
12
T
J2=0
T
J3=-T
23
T
J4=-(T
23+T
34)
さらに、
図1に示したものと類似しているが、ローカル端末Lが第3の接続部J3に接続されている別の電力系統では、第1、第2、第3および第4の接続部J1、J2、J3、J4のそれぞれの補償時間T
J1、T
J2、T
J3、T
J4は、上記の代わりに以下のように決定される。
【0201】
T
J1=T
12+T
23
T
J2=T
23
T
J3=0
T
J4=-T
34
さらに、
図1に示したものと類似しているが、ローカル端末Lが第4の接続部J4に接続されている別の電力系統では、第1、第2、第3および第4の接続部J1、J2、J3、J4のそれぞれの補償時間T
J1、T
J2、T
J3、T
J4は、上記の代わりに以下のように決定される。
【0202】
TJ1=T12+T23+T34
TJ2=T23+T34
TJ3=T34
TJ4=0
本発明の別の実施形態では、決定通信時間遅延の精度をさらに改善するために、主ステップ(b)および(c)の一方または両方が繰り返される。
【0203】
上記に加えて、本発明の方法はまた、
図7に概略的に示された制御方式を実施する第3の計算ブロックB3(
図2に示す)によって実行される、様々な監視および照合手順を含む。
【0204】
より詳細には、本発明の方法は、最終の正確な決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5を、エコーに基づく処理によって、詳細にはピンポン技法によって確立された遅延検査値と照合するステップを含む。本発明の別の実施形態では、最終の正確な決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5のすべてが検査される必要があるわけではない。
【0205】
第1の事例では、検査は第1の監視ブロックE1で行われ、ピンポンによって算出された相応する通信時間遅延TPPの形で遅延検査値を確立することを含む。次に、第1の監視ブロックE1は、遅延検査値が電力系統10の動作の1周期にほぼ等しいかどうかを検査する。
【0206】
遅延検査値が1周期にほぼ等しい場合には、これは、実際の通信時間遅延が決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5に1周期の時間を加えたものと等しいことを示す。
【0207】
このような状況では、すなわち、実際の遅延が電力系統10の動作の1周期よりも大きい場合、それに応じて第1の監視ブロックE1は、前記決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5をさらに補正する。
【0208】
たとえば、決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5は3msと算出されるが、ピンポンによって算出された相応する通信時間遅延TPP、すなわち遅延検査値は18msである場合、(50Hzで動作する、したがってサイクルタイムが20msである系統の)実際の通信時間遅延は以下の値に補正される。
【0209】
3ms+1×20ms=23ms
第2の事例では、検査は第2の監視ブロックE2で行われ、
ローカル端末Lとそれぞれの遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5との間の第1の通信時間遅延TPLを決定すること、
ローカル端末として仮に指定されたそれぞれの遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5と、遠隔端末として仮に指定されたローカル端末Lとについて、第2の通信時間遅延TPRを決定すること、
第1と第2の通信時間遅延を加算すること、
加算された第1と第2の通信時間遅延を、対応する遅延検査値の2倍と、すなわちピンポンによって算出された相応する通信時間遅延TPPの2倍と比較すること、および
加算値と遅延検査値の2倍との差が、例として2.5msにもできる所定の閾値を超える場合、通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5をさらに決定することを一時的に保留すること
を含む。
【0210】
実際には、通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5をさらに決定することを一時的に保留することは、保留しなければ差動保護方式を実施する際に通信時間遅延を利用しようとする下流の機器に向けて決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5が送信されることを阻止することによって実現することができる。
【0211】
本発明の方法のうちの監視手順の1つは、障害状態がたとえば電力系統10の障害検出信号FdSigによって検出されたときに、通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5をさらに決定することを一時的に保留する(たとえば、決定通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5が下流機器へ送信されることを再び阻止することによって)、第3の監視ブロックE3で行われる。
【0212】
このような状況下で、本発明の方法は、障害状態の間は、以前に決定された通信時間遅延、すなわち履歴通信時間遅延値に依拠する。実際には、これは、前述の履歴通信時間遅延値が代わりに、障害状態の間は、また通常では障害状態が取り除かれた後の短い時間にも、下流の機器へ(差動保護方式を動作させる際に使用するために)送信されることを意味する。
【0213】
本発明の方法のうちの別の監視手順は、ローカル端末Lおよび各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5に動作可能に付随するそれぞれのサーキットブレーカ(図示せず)が閉じているかどうかを検査し、それぞれの通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5を決定する第4の監視ブロックE4によって実行され、たとえば、このような通信時間遅延14R1、14R2、14R3、14R4、14R5が、ローカル端末Lのサーキットブレーカが閉じている場合にだけ、また付随するサーキットブレーカがやはり閉じている前記または各遠隔端末R1、R2、R3、R4、R5に関してだけ、下流の機器へ送信されることを可能にする。
【符号の説明】
【0214】
10 電力系統
12 送電媒体
12B 等価区間
12C 等価区間
12D 等価区間
12E 等価区間
12F 等価区間
16 第1の対
18 第2の対
20 第3の対
24L 補正係数
24R1 補正係数
24R2 補正係数
24R3 補正係数
24R4 補正係数
24R5 補正係数
B1 第1の計算ブロック
B2 第2の計算ブロック
D1 第1の計算ブロック
D2 第2の計算ブロック
D3 第3の計算ブロック
L ローカル端末
R1 第1の遠隔端末
R2 第2の遠隔端末
R3 第3の遠隔端末
R4 第4の遠隔端末
R5 第5遠隔端末
J1 第1の接続部
J2 第2の接続部
J3 第3の接続部
J4 第4の接続部
T12 第1の接続部時間差
T23 第2の接続部時間差
T34 第3の接続部時間差
Tp1 初期通信時間遅延、第1の通信時間遅延
Tp2 初期通信時間遅延、第2の通信時間遅延
Tp3 初期通信時間遅延、第3の通信時間遅延
Tp4 初期通信時間遅延、第4の通信時間遅延
Tp5 初期通信時間遅延、第5の通信時間遅延
TPL 第1の通信時間遅延
TPR 第2の通信時間遅延
DTp1 補正時間
DTp2 補正時間
DTp3 補正時間
DTp4 補正時間
DTp5 補正時間
14R1 決定された通信時間遅延
14R2 決定された通信時間遅延
14R3 決定された通信時間遅延
14R4 決定された通信時間遅延
14R5 決定された通信時間遅延
f0 電力系統の基本周波数
l 区間長
iR1 R1で測定された電流
iR2 R2で測定された電流
iR3 R3で測定された電流
iR4 R4で測定された電流
iR5 R5で測定された電流
iJR1 第1の遠隔ノード電流
iJR2 第2の遠隔ノード電流
iJR3 第3の遠隔ノード電流
iJR4 第4遠隔ノード電流
iJR5 第5の遠隔ノード電流
iJR1_L 第1の等価ノード電流
iJR2_L 第2の等価ノード電流
iJR3_L 第3の等価ノード電流
iJR4_L 第4の等価ノード電流
iJR5_L 第5の等価ノード電流
iJ1_L 算出予想電流
iJ1_R1 算出予想電流
iJ2_R2 算出予想電流
iJ3_R3 算出予想電流
iJ4_R4 算出予想電流
iJ4_R5 算出予想電流
i’JR1 第1の受信遠隔ノード電流
i’JR2 第2の受信遠隔ノード電流
i’JR3 第3の受信遠隔ノード電流
i’JR4 第4の受信遠隔ノード電流
i’JR5 第5の受信遠隔ノード電流
vR1 R1で測定された電圧
vR2 R2で測定された電圧
vR3 R3で測定された電圧
vR4 R4で測定された電圧
vR5 R5で測定された電圧
vJ1_L 算出予想電圧
vJ1_R1 算出予想電圧
vJ2_R2 算出予想電圧
vJ3_R3 算出予想電圧
vJ4_R4 算出予想電圧
vJ4_R5 算出予想電圧
v’JR1 第1の受信遠隔ノード電圧
v’JR2 第2の受信遠隔ノード電圧
v’JR3 第3の受信遠隔ノード電圧
v’JR4 第4の受信遠隔ノード電圧
v’JR5 第5の受信遠隔ノード電圧
y1 単位長さ当たりの並列アドミタンス
yR1 アドミタンス
yR2 アドミタンス
yR3 アドミタンス
yR4 アドミタンス
yR5 アドミタンス
yeR1 等価アドミタンス
yeR2 等価アドミタンス
yeR3 等価アドミタンス
yeR4 等価アドミタンス
yeR5 等価アドミタンス
Zc 特性インピーダンス
z1 単位長さ当たりの直列インピーダンス
zR1 インピーダンス
zR2 インピーダンス
zR3 インピーダンス
zR4 インピーダンス
zR5 インピーダンス
γ 伝搬係数