(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】膣分泌物の診断のための採取装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/52 20060101AFI20220523BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20220523BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G01N33/52 B
G01N33/49 Z
G01N33/48 K
(21)【出願番号】P 2018548882
(86)(22)【出願日】2017-03-20
(86)【国際出願番号】 US2017023246
(87)【国際公開番号】W WO2017161378
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-19
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517058901
【氏名又は名称】クラセンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QURASENSE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【氏名又は名称】磯江 悦子
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ナセリ
(72)【発明者】
【氏名】セレン・テアケルセン
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19837678(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/019214(WO,A1)
【文献】特表2010-526564(JP,A)
【文献】特表2006-504954(JP,A)
【文献】特開2011-089968(JP,A)
【文献】特表2007-511770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0007161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体透過性の表面シートと、
流体不透過性の裏シートと、
上記表面シートと上記裏シートとの間に配置された吸収性パッドと、
縁部から延びる把持可能な部分を有し、上記吸収性パッドと流体接触するように配置された流体採取検査ストリップと
を備え、
上記流体採取検査ストリップは、
上部保護層と下部保護層との間に配置された流体採取層を備え、
上記流体採取層は全血採取のための少なくとも1つの流体吸収ゾーン及び/又は血漿/血清分離のための少なくとも1つの流体吸着ゾーンを含み、上記上部及び/又は下部保護層は少なくとも1つの開口を有し、上記少なくとも1つの開口は、
上記少なくとも1つ
の流体吸収
ゾーン及び/又は
上記少なくとも1つ
の流体吸着
ゾーンに流体連通するような位置に設けられており、
上記上部保護層と上記流体
採取層との間に配置された流体不透過層を備え、この流体不透過層は、上記流体吸収
ゾーンへの流体の流れを可能とする少なくとも1つの第1の開口及び/又は上記
流体吸着ゾーンへの流体の流れを可能とする、上記流体吸着
ゾーンへのウィンドウを画定する第2の開口を有し、
上記裏シート又は上記表面シートの少なくとも1つは、上記流体採取検査ストリップの取り外し及び/又は挿入を可能にする大きさに形成された開口を含み、
上記吸収性パッドは、おむつ、又は、女性生理用品若しくは失禁パッド等の吸収性衛生パッドに組み込まれている、膣流体の採取システム。
【請求項2】
上記把持可能な部分は上記表面シートの開口又は上記裏シートの開口に配置されており、上記流体採取検査ストリップは上記表面シート又は裏シートと上記吸収性パッドとの間に配置されており、上記流体採取検査ストリップは上記吸収性パッド上に位置するポケット内に配置されており、上記ポケットは、このポケットを画定するように上記吸収性パッドに選択的に接着され選択的に接着されていない上記表面シートで作られている、請求項1に記載の採取システム。
【請求項3】
上記流体採取検査ストリップは上記吸収性パッドに形成されている凹部に配置されており、上記流体採取検査ストリップは上記吸収性パッド上に位置するポケット内に配置されており、上記ポケットは、このポケットを画定するように上記吸収性パッドに選択的に接着され選択的に接着されていない上記表面シートで作られており、上記ポケットは、上記流体採取検査ストリップの取り外し及び/又は挿入を可能にする大きさに形成された上記開口を備えており、上記流体採取検査ストリップは上記表面シートの上に付着され、取り付け/取り外し可能である、請求項1に記載の採取システム。
【請求項4】
流体は直接上記表面シートから上記流体採取検査ストリップの開口に流れる、請求項3に記載の採取システム。
【請求項5】
上記流体採取検査ストリップは上記表面シートと上記吸収性パッドとの間に配置されている、請求項1に記載の採取システム。
【請求項6】
上記上部及び下部保護層は複数の開口を有し、上記流体
採取層は複数の流体吸着ゾーンと少なく
とも1つの流体吸収
ゾーンとを備え、上記複数の流体吸着ゾーンは、互いから流体的に分離されていると共に、上記上部及び下部保護層の異なる開口と流体的に連通している、請求項1に記載の採取システム。
【請求項7】
上記流体採取検査ストリップは、月経血を濾過するのに適した孔径を有するようにコーティング及び/又は選択される、請求項3に記載の採取システム。
【請求項8】
人間の目及び/又は電子的読取装
置によって識別可能な、膣流体にバイオマーカがあることを視覚的に示すように選択されたカラーインジケータを備えている、請求項1に記載の採取システム。
【請求項9】
膣流体の格納及び保存のための採取管をさらに備え、上記採取管は、添加剤、バッファ、抗凝固剤、防腐剤、又は、診断用化学プロセスに使用可能な他の化学物質を収容している、請求項1-8のいずれかに記載の採取システム。
【請求項10】
コンピュータが読み取り可能な識別子であるRFID、QRコード、又は他の種類の識別子を有する、請求項1-9のいずれかに記載の採取システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膣流体の採取システムに膣流体を採取すること、
採取された上記膣流体を輸送し、分析すること、
を備えた膣流体分析方法。
【請求項12】
上記流体採取検査ストリップは乾燥血液スポット検査ストリップ又は乾燥血漿若しくは血清ストリップであり、上記分析には、他のウイルス、バクテリア、真菌、ホルモン、脂質、タンパク質を含むがこれらに限定されない健康に関係した他のバイオマーカの検出又はスクリーニングが含まれる、請求項11に記載の膣流体分析方法。
【請求項13】
上記採取システムは尿採取システムとして使用可能であり、上記流体採取検査ストリップは尿採取検査ストリップとして使用可能である、請求項1に記載の採取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月経血及び膣分泌物の診断の目的での月経血及び膣分泌物の採取に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、診断分析のために全身性血液(体血)(systemic blood)にアクセスする唯一の方法は、シリンジ又はフィンガープリックスティック(finger prick stick)を用いた採血等の侵襲的処置によるものである。子宮内膜組織分析のためには、人は子宮頸部の生検つまり子宮頸部の掻爬を受けなければならない。これは、侵襲的処置であると共に不快な経験でもある。子宮内膜及び全身性血液のいずれも、女性の健康の診断に使用される重要なバイオマーカを含んでいるが、両方の採取方法は不便で、費用がかさむものであり、かつ時間がかかる。
【0003】
以前は、月経中に月経血を採取するための女性用衛生用品として月経カップが使用されていた。月経カップは通常、医療グレードシリコーンで作られており、ベルのような形で、柔軟性がある。それは、月経流体(血液)を受けるために、月経中、膣の内部に装着されている。月経中の女性は月経カップを膣から外して、採取された月経流体を、例えば、トイレ又は流しのなかに捨てるのである。
【発明の開示】
【0004】
一側面において、膣分泌流体の採取及び分析のための流体採取装置が提供される。この装置は、月経血及び/又は膣流体の採取のための、流体密の蓋を有する新規な流体採取容器(receptacle)を備えている。この蓋は、月経血が輸送のために遠隔地に輸送されることができるよう、あるいは、保存又は他の方法で扱われることができるよう、月経血を封止する役目をする。
【0005】
一側面において、膣流体採取システムは次のものを備えている。
(i)月経カップ。この月経カップは、開いた上端から閉じた下端まで延びる容器と、上記容器の下端に取り付けられたステムとを備えており、上記容器は内壁と外壁とを有する。
(ii)上記容器の開いた上端に適合する寸法を有する蓋。この蓋は上面と下面とを有しており、上記蓋及び上記容器の開いた上端は、互いに係合して流体密シールを形成するように、寸法設定されると共に構成されている。
【0006】
1以上の実施形態では、上記膣流体採取システムは、上記蓋及び上記月経カップの開いた上端に相補のねじ溝を備えている。
【0007】
1以上の実施形態では、上記膣流体採取システムは、上記月経カップの開いた上端に位置する複数の凹み又はスロットと、上記蓋の周縁(circumference)に位置し、上記凹みと係合可能な複数の突起とを備えている。
【0008】
1以上の実施形態では、上記蓋と上記容器の開いた上端とは、ボール・ソケット機構を形成する。
【0009】
1以上の実施形態では、上記膣流体採取システムは、スナップフィット機構を形成するシール機構を備えている。
【0010】
1以上の実施形態では、上記膣流体採取システムは、上記月経カップと共に接着シールを形成するように配置可能な、裏面に接着剤が付いたシート(以下、接着剤付きシート)(adhesive-backed sheet)を有する上記蓋を備えている。
【0011】
上記実施形態のいずれにおいても、上記膣流体採取システムは、添加剤(添加物)(additive)をさらに備えている。
【0012】
1以上の実施形態では、上記添加剤は、抗凝固剤、防腐剤、若しくは抗生物質、又は、診断アッセイのために、又は細胞を溶解するために使用され得るその他の化学物質である。
【0013】
1以上の実施形態では、上記添加剤は上記月経カップの内壁及び/又は上記蓋の下面を被覆している。
【0014】
1以上の実施形態では、上記添加剤は上記月経カップ内に収納された流体又は固体である。
【0015】
1以上の実施形態では、上記膣流体採取システムは、上記月経カップとは別に、上記添加剤を収容している容器を備えている。
【0016】
上記実施形態のいずれにおいても、上記膣流体採取システムは、膣流体を格納するための採取管をさらに備えている。
【0017】
1以上の実施形態では、上記採取管は添加剤を収容している。
【0018】
1以上の実施形態では、上記添加剤は、抗凝固剤、防腐剤、及び/若しくは抗生物質、又は、膣流体保存用の若しくは診断用化学プロセスに有用な化学物質である。
【0019】
1以上の実施形態では、上記添加剤は上記採取管の内壁を被覆している。
【0020】
1以上の実施形態では、上記添加剤は上記採取管内に収容された流体又は固体である。
【0021】
上記実施形態のいずれにおいても、上記月経カップ及び/又は上記蓋はコンピュータが読み取り可能な識別子RFID又はその他の任意の種類の識別子(ID)を備えている。
【0022】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取システムは、上記の封止された月経カップ又は上記採取管の輸送に使用するためのパッケージング(包装容器、包装材料)を備えている。
【0023】
一側面において、膣流体採取システムは、流体透過性の表面シートと、流体不透過性の裏シートと、上記表面シートと上記裏シートとの間に配置された吸収性パッドと、把持可能な部分が縁部から延び、上記吸収性パッドと流体接触するように配置された流体採取検査ストリップとを備え、上記表面シート又は上記裏シートの少なくとも一方は、この膣流体採取システムからの上記流体採取検査ストリップの取り出し及び/又は上記流体採取検査ストリップの挿入を可能とする大きさに形成された開口を有する。
【0024】
1以上の実施形態では、上記把持可能な部分は上記表面シートの開口に配置されているか、上記裏シートの開口に配置されている。
【0025】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは上記表面シートと上記吸収性パッドとの間に配置されている。
【0026】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは上記吸収性パッドに形成された凹部内に配置されている。
【0027】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは上記吸収性パッド上に位置するポケット内に配置されている。
【0028】
上記実施形態のいずれにおいても、上記ポケットは、このポケットを画定するように上記吸収性パッドに選択的に接着され選択的に接着されていない上記表面シートで作られている。
【0029】
上記実施形態のいずれにおいても、上記ポケットの開口は、上記流体採取検査ストリップの取り出し及び/又は挿入を可能とする大きさに形成されている。
【0030】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは、上部保護層と下部保護層との間に配置された流体吸収層を備え、上記上部及び下部保護層は少なくとも1つの開口を有し、上記少なくとも1つの開口は上記吸収性パッドとの流体接触を提供するように配置されている。
【0031】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取システムはさらに、上記上部保護層と上記流体吸収層との間に配置された流体不透過層を備え、この流体不透過層は上記流体吸収層への流体の流れを可能とするために少なくとも1つの開口を有する。
【0032】
上記実施形態のいずれにおいても、上記上部及び下部保護層並びに/又は上記流体不透過層(この層が存在する場合)は、複数の開口を有する。
【0033】
上記実施形態のいずれにおいても、流体吸着層は複数の流体吸着ゾーンを有する。
【0034】
上記実施形態のいずれにおいても、上記複数の流体吸着ゾーンは、互いから流体的に分離されていると共に、上記上部及び下部保護層の異なる開口と流体的に連通している。
【0035】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体吸収層は少なくとも1つの全血(whole blood) 検査ストリップを備えている。
【0036】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体吸着層は少なくとも1つの血漿分離検査ストリップを備えている。
【0037】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは、血球を濾過するのに適した孔径(pore size)を有するようにコーティングされかつ/又は選択される。
【0038】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体吸着層は少なくとも1つの血漿分離検査ストリップと少なくとも1つの全血検査ストリップとを備えている。
【0039】
上記実施形態のいずれにおいても、上記複数の検査ストリップは同一の層にある。
【0040】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは、上記吸収パッドと流体連通する少なくとも1つの流体吸着領域を有する非吸着シートを備える。
【0041】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは、膣流体にバイオマーカがあることを視覚的に示すように選択されたカラーインジケータを備えている。
【0042】
上記実施形態のいずれにおいても、上記カラーインジケータはモバイル装置又は他の電子的読み取り装置を用いて読み取り可能である。
【0043】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップはコンピュータが読み取り可能な識別子RFID又は他の種類の識別子(ID)を有する。
【0044】
上記実施形態のいずれにおいても、上記膣流体採取システムはさらに、上記流体採取検査ストリップ又はこの流体採取検査ストリップの構成部分の輸送に使用するためのパッケージングを備える。
【0045】
別の側面において、膣流体採取検査ストリップは、上部保護層と下部保護層との間に配置された流体吸収層を備え、上記上部及び下部保護層は少なくとも1つの開口を有し、上記少なくとも1つの開口は上記流体吸収層に流体連通するような位置に設けられており、流体吸着層は血漿分離検査ストリップを備えている。この膣流体採取検査ストリップはまた、上記上部保護層と上記流体吸収層との間に配置された流体不透過層を備え、この流体不透過層は上記流体吸収層への流体の流れを可能とするために第1の開口を有すると共に、分離された血漿を視るためのウィンドウを画定する第2の開口を有する。
【0046】
上記実施形態のいずれにおいても、上記上部及び下部保護層は複数の開口を有する。
【0047】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体吸着層は複数の流体吸着ゾーンを有する。
【0048】
上記実施形態のいずれにおいても、上記複数の流体吸着ゾーンは、互いから流体的に分離されていると共に、上記上部及び下部保護層の異なる開口と流体的に連通している。
【0049】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体吸着層は少なくとも1つの血漿分離検査ストリップと少なくとも1つの全血検査ストリップとを備えている。
【0050】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体吸着層は2つの血漿分離検査ストリップを備えている。
【0051】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップは、膣流体にバイオマーカがあることを視覚的に示すように選択されたカラーインジケータを備えている。
【0052】
上記実施形態のいずれにおいても、上記流体採取検査ストリップはコンピュータが読み取り可能な識別子RFID又は他の種類の識別子(ID)を有する。
【0053】
別の側面において、分離可能な吸収部を有する吸収層を備えた膣流体採取システムが提供される。上記分離可能な吸収部は上記吸収層と流体接触する。上記吸収層はタンポン、パンティーライナー(panty liner)、又は月経パッドに統合されている。
【0054】
上記実施形態のいずれにおいても、上記吸収層は開口を有しており、上記開口は、上記分離可能な吸収部へのアクセスを提供すると共に、上記分離可能な吸収部の通過を許容する大きさに形成されている。
【0055】
上記実施形態のいずれにおいても、上記分離可能な吸収部はタンポン、パンティーライナー、又は月経パッドの外からアクセス可能な紐に取り付けられている。
【0056】
上記実施形態のいずれにおいても、上記膣流体採取システムはさらに、上記分離可能な吸収部の輸送に使用するためのパッケージングを備えている。
【0057】
別の側面において、任意の上記実施形態に係る方法で得られた膣流体分析情報を保存して、その情報をユーザ又は医療専門家に表示するウェブサイト、アプリケーション又は別のデジタルサービル及び表示が提供される。
【0058】
さらに別の側面において、膣流体を分析する方法が提供される。この方法は、ここに記載の実施形態のいずれかに係る膣流体採取システムで膣流体を採取すること、そして、採取された上記膣流体を分析することを備える。
【0059】
上記実施形態のいずれにおいても、上記方法はさらに、採取された膣流体を分析のための場所に輸送することを備える。
【0060】
上記実施形態のいずれにおいても、上記方法はさらに、膣流体サンプルの分析に関係する分析データを受け取ることを備える。
【0061】
上記実施形態のいずれにおいても、採取装置は流体採取検査ストリップであり、上記分析には、人の流体採取検査ストリップの存在についてのスクリーニングが含まれるscreening for presence of human fluids collection test strip。
【0062】
上記実施形態のいずれにおいても、採取装置は流体採取検査ストリップであり、上記分析には、他のウイルス、バクテリア(細菌)及び真菌(fungi)を含むがこれらに限定されない健康に関係した他のバイオマーカの検出又はスクリーニングが含まれる。
【0063】
別の側面において、尿採取システムが提供される。この尿採取システムは、表面シートと、流体不透過性の裏シートと、上記表面シートと上記裏シートとの間に配置された吸収性パッドと、把持可能なタブが縁部から延びている乾燥尿スポット検査シートとを備え、上記乾燥尿スポット検査シートは上記吸収パッドと上記裏シートとの間に配置されるとともに、これら吸収パッド及び裏シートと流体接触する。
【0064】
上記裏シートは、上記乾燥尿スポット検査シートの通過を許容する(つまり上記乾燥尿スポット検査シートが通ることができる)大きさに形成された開口を備えており、上記把持可能な部材は、上記裏シートの開口に配置されている。
【0065】
1以上の実施形態では、上記吸収パッドはおむつに一体化されている。
【0066】
1以上の実施形態では、上記吸収パッドは女性用衛生用品に一体化されている。
【0067】
本明細書に記載された膣流体診断法は、血液サンプルを家で採取することを可能とする新規な装置(月経カップ+蓋)を提供するものである。この装置は、血液サンプルがカップ内で無菌状態のままでいることを可能とし、そのサンプルを別の採取管内に注ぎ込む必要が無い。使用した月経パッド及びタンポンを取り出し、それを小さな袋に入れた後、その材料を分析のために遠隔場所に送ることは、先行技術文献には記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は1以上の実施形態に係る蓋付き月経カップの分解図である。
【0069】
【0070】
【
図2E】上記月経カップの蓋のみを示す。この蓋は、既に市販されているものも含めて如何なる月経カップにも合うようにデザインされている。
【0071】
【
図3】1以上の実施形態に係る月経カップと血液採取管とを用いた月経血採取の概念を示す。
【0072】
【
図4A】1以上の実施形態に係る乾燥血液スポット検査月経パッドの実施形態である。
【
図4B】1以上の実施形態に係る乾燥血液スポット検査月経パッドの実施形態である。
【0073】
【
図4C】1以上の実施形態に係る新規な乾燥尿スポット検査尿採取装置(ここではおむつとして示されている)の実施形態である。
【0074】
【
図5A】1以上の実施形態に係る乾燥血液検査カードを示す。
【
図5B】1以上の実施形態に係る乾燥血液検査カードのカバーを示す。
【0075】
【
図5C】比色検出法を用いて健康マーカを検出及び/又は測定する1以上の実施形態に係るDBS/DUSカードを示す。
【0076】
【
図5D】同じカードであるが、ここでは1以上の実施形態に従いモバイル装置を用いて結果が与えられ、解析される。
【0077】
【
図6】1以上の実施形態に係る引っ張り紐のついた月経パッド又はパンティーライナーで、この紐がパッドのキューブを外に取り出す。
【0078】
【
図7】
図7A-7Dは、乾燥血液スポット検査月経パッドの別の実施形態であり、流体採取検査ストリップの付いた月経パッドを示している。この流体採取検査ストリップは、1以上の実施形態に従って、月経パッドから簡単に取り出せる。この流体採取検査ストリップは全血分離又は血漿分離を可能とできる。
【0079】
【
図8】
図8A-8Eは、血漿の分離を可能とし得る、1以上の実施形態に係る血液採取ストリップを示す。
【0080】
【
図9】
図9A-9Dは、1以上の実施形態に係る血液採取ストリップの別の実施形態を示す。
【0081】
【
図10】
図10A-10Dは、1以上の実施形態に係る血液採取ストリップの別の実施形態を示す。
【0082】
【
図11】トップ層(表層)の上に、剥がして分析に使用できるストリップを有する月経パッドである。
【0083】
【
図12】
図12A-12Hは種々の血液採取装置の郵送コンセプトのための異なる実施形態を示す。
【0084】
【
図13】乾燥血液スポットサンプルのための郵送要件に合うようにカスタマイズされた新規なマルチバリア封筒を示す。
【0085】
【
図14】1以上の実施形態に係る、月経血採取のためのカスタマイズされた採取キットと郵送ボックスである。
【0086】
【
図15】1以上の実施形態に係る、臨床現場(point of care)で分析用の月経血を用いる家庭用検査装置である。
【0087】
【0088】
【
図17】
図17A-17Cは流体採取検査ストリップからサンプルを抽出してその分析を行うための研究室プロセスの一実施形態を示す。
【0089】
【
図18】
図18A-18Cは1以上の実施形態に係る電子装置の異なる実施形態において分析データをユーザに表示し得る方法を例示している。
【0090】
【
図19】1以上の実施形態に係る遠隔血液分析サービスの展開の全ての情報の流れを示すプロセス流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
流体採取システムを、膣流体の採取、保存、分析について説明する。本明細書に使用されているように、「膣流体」は、膣腔(vaginal cavity)から採取可能な流体のことをいう。典型的な流体には、月経サイクルの種々の段階を通じて膣から分泌される生物学的流体(月経血を含む)が含まれる。また、膣から採取され得る流体も含まれる。また、流体採取システムを、尿の採取及び分析について説明する。他の実施形態では、尿が膣流体と一緒に採取され得る。たとえば、少量の尿が膣周辺から採取されるときなどである。
【0092】
まず、
図1を参照して、本発明に係る月経流体採取システム(番号100で示される)の実施形態を説明する。この月経流体採取システムは流体容器200と封止キャップ300とを有する。流体容器200は柔軟(可撓)で弾力があるようになっている。この流体容器200の全体的構造は、月経中の月経流体の採取に使用される月経カップに手を加えて作ることができる(adapted from menstrual cups)。この流体容器は開いた上端201から閉じた下端202まで延び、このカップつまり流体容器の挿入時及び取り外し時における使用のためにオプションのステム203がこの容器の下端に取り付けられている。この流体容器は壁を有し、この壁は、流体採取のために適合化されたキャビティを画定する内壁面203と、反対側の外壁面204とを有する。開いた上端は所定の直径を有し、リム210を備えている。このリム210は、使用中女性の膣管(vaginal canal)内の所定位置に流体容器を保持するのに十分な弾性外向保持力を提供するようになっている。上部リム210は、カップが一旦使用中になると、スタビライザーとして働く。このシステムは蓋300も備えている。この蓋300は、カップの上部リム210と協働して、採取流体を保存すると共に輸送を許容するために流体密のシールを形成する。上記上部リムは、蓋300と共に閉鎖機構の一部として使用可能な封止部分(sealing feature)を備えている。1以上の実施形態において、上部リム210は、溝220、例えば、ねじ溝によって、流体密封止(シーリング)を容易にする機能が与えられる。蓋300は、流体容器のねじ溝と係合して流体密シールを形成する相補のねじ溝(図示せず)を含んでいる。
【0093】
流体容器の内面203は、流体サンプルを保管し、又は、その分析準備を助ける(assists in its preparation for analysis)物質で予め被覆(コーティング)しておくことができる。例えば、上記内面は、例えば、抗凝固剤、防腐剤、又は抗生物質若しくはバクテリア(細菌)その他の微生物の増殖を防止するための薬剤、又は、診断アッセイのために若しくは細胞を溶解するために使用され得るその他の化学物質で被覆することができる。これらは、耐久性を高めると共に、分析のための遠隔場所への輸送のために月経血を保存する目的で選択される。例示的な添加剤には、EDTA、クエン酸ナトリウム、ヘパリン等のクロットアクチベーター(clot activators)、ヘパリンリチウム、ヘパリンナトリウム、シンプレップ(ThinPrep)(登録商標)、トロンビンベースのクロットアクチベーター、K2EDTA、フッ化物、シュウ酸塩又はポリアネトールスルホン酸ナトリウム(sodium polyanethol sulfonate)、コラゲナーゼ、PBS又はその他の化学保存剤又は安定化剤が含まれる。物質は、壁203の内面又は蓋300の内面の全て又は一部を被覆する液体、粉末又はゲルコーティングであり得、容器内に入れられた流体と接触することのできるものである。他の実施形態では、添加剤は、流体採取のために、又は流体採取後にカップに添加される粉末又は液体とすることができ、例えば、カップ202の底部に配置される。外壁面204も、流体容器の挿入を容易にする、潤滑剤等のコーティングを備えることができる。上記流体容器又は蓋(又は両方)は、サンプルつまり試料を一意的に識別するためのバーコードとIDコードを有することができる。
【0094】
図1は月経血採取装置100を封止するための機構をさらに示している。これは、螺旋蓋300を、相補のねじを有する月経カップ200のリム210に螺合させることからなる。月経カップ200の上部において、上部リム210には外溝220が形成されている。蓋300は内溝(図示せず)を有しているので、上記月経カップの上部リム210に螺合することができる。他の実施形態では、ねじは逆にすることができ、上部リム210の内面と上記蓋の外周面とにねじ切りされている。係合したねじ同士が月経血を封止するので、分析のために遠隔地へ輸送することができる。
【0095】
本発明に係る月経流体採取システムは、流体密の嵌め合い及びオプションとして気密の嵌め合いを提供する蓋及び流体封止機構を備えることができる。例示としての封止方法が
図2A-2Dに示されている。キャップは、水不透過性及びガス不透過性を高めるために、オプションとしてガスケット(図示せず)を備えてもよい。
【0096】
図2Aにおいて、流体容器400はプッシュ蓋(押し込み蓋)405を備えている。この流体容器の上部には、上部リム410の下方かつ近傍に小さい凹み又はスロット404が複数ある。これらの凹み404は、リッド405の下部周囲に設けられた突起、フック又はクリップ402と係合するよう形成されていて、月経流体採取システムのための閉鎖機構(closing mechanism)として作用する。上記凹みは穴又はスロットの形状とできる。蓋が月経カップに押しつけられると、フックが上部リム410上をスライドしてスロット404に係合して月経カップ内に採取された月経サンプルをシールする。これらの小さな穴は、月経カップが膣内部にあるときに真空を防止する。フックは安定性をよくするために、月経カップ開口の周囲に等間隔で配置される。キャップは、流体密シールを形成ために流体容器の上面201と係合するオプションのガスケット(図示せず)を備えることができる。
【0097】
別の実施形態では、シールは、キャップと、月経流体容器の拡張リムとの間に形成される。一実施形態において、
図2Bは月経流体容器420及び丸い拡張リム440を有する蓋430を示している。流体容器420は上部リム425を有している。この上部リム425は、カップの残りの部分よりも僅かに厚い、例えば、直径が大きい。この蓋430がカップの上に押しつけられると、この蓋のリム440が上記上部リム425と係合し、蓋をカップに対して閉じて封止する。蓋430は、シールを完成するために月経カップ420の上部リム425の下方で押しつけることができる。蓋のリム440は柔軟で、上部リム425全体にわたってカップ420に押しつけられて上記上部リム425の下縁428と係合する。蓋がカップの頂部に押し下げられると、例えばスナップフィット機構内部に採取されたサンプルを効果的にシールする。
図2Cは、閉鎖機構がリム440を備えていない点を除き、同様のシール機構を備えている。
図2Cにおいて、蓋430は流体容器のリム425の上面上をスライドする。カップはその内側に接着剤を塗布することができ、これが蓋をカップに対して閉じて封止する。
【0098】
別の実施形態では、キャップと月経カップとの間のシールは「ボール・ソケット」デザインである。この「ボール・ソケット」デザインでは、一方の部材のボール形状又は凸状の湾曲面が、他方の部材のカップ状の凹部又は凹状湾曲面内に嵌まり込む。1以上の実施形態において、上記容器の上部リムが湾曲面を有し、上記蓋の内面がカップ状の凹部を提供する。
図2Dにおいて、流体容器460は蓋470を備えており、カップの上部リブ480は丸く、湾曲した形状を有する。したがって、蓋470がリム480の上に押し込まれると、蓋のリム474の内面が表面領域の内側及び外側の周りをシールし、採取された月経サンプルのための密閉空間を形成する。月経カップ460と蓋470との間の閉鎖機構はボール・ソケット機構のように機能する。
【0099】
他の実施形態では、キャップは商業的に入手可能な(市販されている)月経カップと係合できるように適合化することができる。そのような月経カップは1以上の実施形態によれば流体容器として使用可能である。
図2Eは、月経カップの従来技術、例えばUS 20080077097 A1 (Chambers)、に見られる如何なるカップとも協働するように設計された万能蓋を示している。例えば、この蓋は、内側に如何なるカップとも液密シールを形成する接着剤を備える。他の実施形態では、蓋は接着剤付きシート(裏面に接着剤が付いたシート)を備えることができる。このシートは、剥がして接着剤を露出させることができ、その接着剤を使用して蓋をカップに対して閉じて封止する。
【0100】
1以上の実施形態では、可撓性の流体採取システムは、エラストマー材料からなる。1以上の実施形態では、カップは成形されており、例えば、射出成形で形成することができる。他の実施形態では、上記エラストマー材料は、ラテックスゴム又は有機ケイ素酸化物ポリマーすなわちシリコーンゴムである。シリコーンゴムは好ましく使用される。なぜならば、それはめったに(これまでの場合)皮膚刺激を引き起こさず、また、必要な弾力性と耐久性を持っているからである。シリコーンゴムは、すでにFDAによって承認された医療用グレードであるのが好ましい。
【0101】
使用時、女性はカップを長手方向に折り畳み、上端を先に膣内にそのカップを挿入する。一旦挿入されると、上端はそのいつものサイズに戻り、子宮頸部に重ねられる(nested)。カップは取り出しやすく、かつ漏れを防止しやすいように、膣の比較的低いところに配置するのが好ましい。女性がカップを取り外したいとき、彼女はステム部を握ってカップを引っ張り出す。カップが膣の外に取り出されると、月経血サンプルをカップ内にシールして閉じ込めるために、蓋がカップに固定される。幾つかの実施形態では、月経カップは、輸送前及び輸送中のサンプルの保存及び/又は安定化のために必要とされる全ての添加剤でコーティングされているか、又は、そのような添加剤を中に入れている。他の実施形態においては、安定用成分及び/又は保存用(防腐)成分は別々に提供され、採取後及び保存及び輸送前に、採取された血液に添加される。1以上の実施形態において、採取された流体は診断テストのためにラボラトリーつまり研究所に輸送される。流体容器又は蓋はサンプルを一意的に特定するためにバーコード及びIDコードを有する。ユーザ及び分析研究所の双方が、サンプルを登録し且つ/又はサンプルをユーザのプロファイルに関連づけるために、例えば、スマートフォン又は他のスキャナを用いて、IDコードをスキャンするか、又は、手動で入力することができる。研究所からの結果は、例えば、メール、電話により、又はモバイルのアプリケーション(アプリとも言う)又はウェブサイトで、同じバーコードと共にユーザに送ることができる。
【0102】
他の実施形態において、
図3に示すように、月経血は遠隔地に輸送される前に採取管に移される。1以上の実施形態において、流体採取容器510は膣流体520の採取装置として使用される。採取後、膣流体520は血液採取管500に移される。1以上の実施形態において、採取管は無菌である。1以上の実施形態において、上記採取管にはバクテリアその他の微生物の増殖を防止するために抗生物質その他の薬剤が入れられている。採取管の内側は、例えば、抗凝固剤、EDTA、クエン酸ナトリウム、ヘパリン、ヘパリンリチウム、ヘパリンナトリウム、カリウム塩、K
2EDTA、シンプレップ(ThinPrep)(登録商標)フッ化物、シュウ酸塩又はポリアネトールスルホン酸ナトリウム等の物質で予めコーティングされていてもよい。月経流体が採取管に入ると、そのコーティングは、採取された月経血が流体分析のために遠隔地に送られる前の月経血の耐久性と持続性を延長するために使用される。月経採取管は、バーコード及びIDコードを有することができ、ユーザ及び研究所は、スマートフォンでそれをスキャン又は手動で入力して、サンプルを登録し且つ/又はサンプルをユーザのプロファイルに関連づけることができる。研究所からの結果は、例えば、メール、電話により、又はモバイルのアプリケーション又はウェブサイトで、同じバーコードと共にユーザに送ることができる。
【0103】
液体血液サンプルを検査用に生きた(viable)ままにしておくために、コールドチェーングッズ用プロセス(低温物流方式)(process for cold chain goods)を実施できる。成分表面温度が摂氏2度~10度に維持されることを確保するために、具体的検査に応じて、輸送容器(transit containers)、梱包材料、及び手順が検証される。実行可能である限り、輸送容器は、成分充填前にそれらの保管温度に平衡させておくべきである。融氷を使って血液標本を冷やしておく場合、その融氷は成分と直接に接触すべきではない。梱包容器内のデッドスペースは最小限にすべきであり、輸送時間は通常12時間を超えるべきではない。1以上の実施形態において、サンプルは血液出荷キットを用いて輸送される。血液出荷キットは、冷却ボックス(例えば発泡ボックス)その他の断熱性外側容器、吸収材(例えばタオル)付きの二次容器、そして、冷却用ゲルパックを含むことができる。
【0104】
1以上の実施形態において、膣流体採取キットは、流体密の蓋を有する膣流体採取容器を含む。このキットは、オプションとして、次のものの1つ以上を含むこともできる:(i) 添加物のパケット(膣流体採取容器に添加物を添加するための使用説明書と共に)、(ii) 採取管(輸送前に採取された膣流体をこの採取管に移すための使用説明書と共に)、及び(iii) 血液出荷キット(採取された膣流体サンプルの調製とそれの出荷のための使用説明書と共に)。1以上の実施形態において、そのキットは、サンプルを梱包してアイスその他の冷蔵運送をすることを可能とする返送用パッケージを含む。
【0105】
別の側面では、月経血は採取されて安定化基材(stabilizing substrate)上の乾燥サンプルとして輸送される。乾燥サンプルはより安定性が有り、軽量で、遠隔の検査場で受領されると直ぐに検査できる形態(a ready format for testing)を提供することができる。1以上の実施形態において、乾燥血液スポット(dried blood spot (DBS))流体採取パッド(本明細書では、流体採取検査ストリップ(fluid collection test strip (FCTS))とも言われている)を用いて月経流体採取を達成する。この流体採取検査ストリップは、安定化基材として、紙、セルロース等の吸収層を用いる。ある実施形態では、安定化基材は血液を採取し保管するために用いられる。幾つかの実施形態では、本明細書においてより詳細に説明しているように、上記層の孔径(pore size)及び化学処理は種々の血液成分を区別又は濾過しないので、乾燥血液スポットは「全体血」を含有することになり、本明細書ではこれを、「全体血検査ストリップ」と称す。他の実施形態では、後で詳述するように、上記層の孔径及び化学処理は種々の血液成分を濾過するように選択される。たとえば、血漿の流れを可能とする一方、より大きい赤血球及び白血球は保持するように、孔径が選択される。流体採取検査ストリップは、赤血球及び白血球の領域と、血漿を含有する領域とを含んでおり、本明細書ではこれを「血漿分離検査ストリップ」と称す。特に明示しない場合には、流体採取検査ストリップは、全体血検査ストリップ若しくは血漿分離検査ストリップのいずれか一方、又はそれらの両方を含むことができる。さらに、用語「乾燥血液スポット」シート、DBSシート、流体採取検査ストリップ、及びFCTSは、特に指定しない限り、交換可能に用いられている。
【0106】
1以上の実施形態において、流体採取システムは、従来の月経パッドの収着材(sorbent materials)及び取り付け部材(attachment features)を用いて適合化することができる。
図4A及び4Bは乾燥血液スポット月経パッド(DBSパッド)600の2つの実施形態を示している。DBSパッド600は、流体採取パッドと乾燥血液スポットカード630とからなる。吸収パッドは、セルロース系又は合成吸収材料で作られており、香り、抗菌剤、他の薬品/化学物質無しで調製することができる。適応(適応症)(indication of use) は月経その他の膣分泌物の吸収及び分析のためのものである。この装置は膣流体、月経流体又は軽度の尿を採取して保持するように設計されている。
【0107】
図4AのDBSパッド600は、上部の透過性トップシート層(即ち表シート層)601を有する。この透過性トップシート層601は流体をコア層610へと通過させることができる。DBSパッド600は、ユーザの下着内でのパッドの安定性を向上させるためのウィングを有していてもいいいし、有していなくてもいい。この上部の透過層下の層は、流体を捕らえて貯える吸収コア610である。この吸収コア610は、オプションとしての不透過性カバー層620上に設けられている。不透過性カバー層620は、1以上の入口625を有していて流体がそこを通って乾燥血液スポット(DBS)カード630へと行くのを可能とする。このDBSカードは、ある量の月経又は膣分泌物を吸収する。吸収パッドと乾燥血液スポットシートとは不透過性カバー層620の入口625を通じて互いに流体接触する。本明細書で使用する用語「流体接触」又は「流体連通」は、流体が存在するときに上記の層を通過する流体流れが可能であることを意味している。不透過性のバックシート640は流体の移動を防止する。DBS厚紙(ボール紙、板紙)(cardboard)630はタブ631を用いてバックシート640に固定される。タブ631は、このパッドの不透過性バックシート(即ち裏シート)640のスリット又は開口641から挿入可能となるように配置されることができる。パッドの外側の背面には取り付け用の接着剤642がある。タブ631は、パッドを所定位置に保持する接着剤642が取り除かれると、パッドの外側裏面に見えるだろう。
【0108】
DBS検査月経パッドの他の実施形態が
図4Bに示されている。
図4Aに示されているカバー層620は
図4Bでは無く、その代わりに、DBSカード630の周囲にカバーシート650が設けられている。このカバーシートは、柔軟性はあるが不透過性の材料からなるものとでき、そのような材料には、プラスチック、例えばABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン),アクリル(プレキシグラス(登録商標)、ルーサイト(登録商標)、PMMAとしても知られる)、薄い金属、例えばステンレス鋼(0.060インチ迄),スプリング鋼(0.060インチ迄)、発泡材(フォーム)、例えばデプロンフォーム(RC飛行機によく使用されている)、EPM、布(含浸革、スエード、フェルト、麻、綿)又は磁性シートが含まれるが、これらに限定されない。カバーシート650は1以上の入口652を有していて流体がそこを通って乾燥血液スポット(DBS)カード630へと行くのを可能とする。この吸収パッドと乾燥血液スポットシートとはカバーシート650の入口652を通じて互いに流体接触する。カバー650は、例えば接着剤を用いて、バックシート640に固定することができる。DBS検査厚紙を入れたカバーは
図5Bによりよく示されている。カバーの一端には開口651がある。タブ631がその開口631から突き出しており、スリット又は開口641を通って不透過性バックシート640の中へと入る。タブ631は、パッドを所定位置に保持する接着剤642が取り除かれると、パッドの外側裏面に現れる。
【0109】
別の実施形態では、カバーの後の開口651は閉じられている。その代わりに、片(slip)631は、月経パッドのバックシートの開口641も位置している上記カバー下の開口から出ている。この場合、膣流体が漏れない。
【0110】
使用時には、上記接着剤642を保護する保護シートが剥がされ、月経パッドと略同じような方法でパッド600がユーザの下着に固定される。ユーザは、DBSパッドを自分の下着に置く。血液はパッドの上記層(複数)を通過し、パッドの底部に集まり、そこにおいて小さい厚紙又は紙シートが1以上の入口から血液を吸収する。DBSパッドは、膣流体が乾燥血液スポットプレートに吸収されるに十分な時間所定位置に置かれた後、取り外される。使用後、パッドを取り外し、パッドの裏面のタブ631を引っ張って、DBS検査カードをパッドの底部の層641の開口から引っ張り出す。カバー650はパッドの内部に残存している。パッドは処分することができ、一方、DBS厚紙は健康分析のために使用することができる。
【0111】
図5Aは例示的なDBS検査カード630の正面図及び背面図である。この厚紙は、非吸収領域637によって画定される複数の吸収領域635を有する。この吸収領域635は月経及び膣流体を吸収し濾過する。これらの吸収領域635は血液を吸収する領域である一方、シートの残りの領域は血液を吸収しない。このシートは、後述するように、種々のフォーマットとサイズを有する。吸収領域は、この図に示すように円形であってもよいしその他の形態でもよく、また、この図に示すように複数の領域があってもよいし、1つの大きな吸収領域であってもよい。DBS検査厚紙はバーコード638とIDコード639とを有する。このIDコード639は、ユーザ及び分析研究所が、DBS検査厚紙630をユーザのプロファイルと共に登録するために、例えば、スマートフォン又は他のスキャナを用いてスキャンするか、又は、手動で入力することができる。研究所からの結果は、同じバーコードと共にユーザに送られ、モバイルのアプリケーション又はウェブサイトに示される。DBS検査厚紙630の裏面にはユーザのための手引き(指示書き)632が記載されている。
図5Bは保護カバー650内にある同一のDBS検査カードを示している。保護カバー650は複数の開口652を有する。これらの開口652は血液がパッド内に流れ込むのを確保するとともに、吸収領域635のみに接触する。DBS検査カードはタブ631を引っ張ることで保護カバー650から取り外し可能である。
【0112】
図7は乾燥血液スポット月経パッドの別の実施形態であり、容易に取り外すことのできる血液採取装置ストリップを有する月経パッドを示している。このストリップは血漿分離を可能とする。
【0113】
1以上の実施形態において、流体採取検査ストリップは、可逆的に吸収流体採取パッド内に挿入可能である。流体採取検査ストリップは使用の少し前にパッドに挿入するか、組み込まれたフォーマットで入手可能である。ストリップは製造中に挿入することもできる。1以上の実施形態において、流体採取検査ストリップは吸収パッドから簡単に取り外すことが可能である。吸収パッド700は、不透過性バックシート740と吸収コア710とを有しており、
図7Aに示されている。流体採取検査ストリップ800は、液透過性トップ層701を用いて吸収コア710に固定することができる。液透過性トップ層701は、例えば接着剤702を用いて、吸収コア710に接着されており、検査ストリップのための凹部又はポケット705を備えている。スロット704は、流体採取検査ストリップの容易な挿入及び/又は取り外しを可能とする。
図7Bにおいて、接着剤702が吸収コア上に散在しており、濃灰色の領域として示されている。接着剤のない領域703は、流体採取検査ストリップを入れることのできるポケット705のための基部として働く。
図7Cは吸収コア710上に透過性トップシート701が配置されたところを示している。そこでは、接着剤702が透過性トップシート701を所定位置に保持する。さらに、トップシート701は、
図7Dに示すように、流体採取ストリップ800の挿入及び取り外しを可能とする開いたスロット704を有する。
【0114】
例示的な流体採取ストリップ800が
図8A-8Dに示されている。このストリップは
図8Aに示す上部保護カバー801を有する。上部保護カバー801は例えば上部フレーム810に塗布された接着剤によって固定されている。保護カバー801は、このストリップ800が使用済みパッド700から取り外された後、除去することができる。保護カバー801は空気は透過するが液体は透過しない材料によって作ることができる。上部保護カバー801は、膣流体及び月経血がこのストリップ内に流れ込んで吸収材820に吸収されるのを可能とする入口802を有する。代表的な実施形態では、吸収材は紙である。吸収紙材料820は、如何なる種類の乾燥血液スポット紙であってよく、特定の病原体、タンパク質、DNA、RNA、その他の対象となるバイオマーカを安定化させるために処理されていてもよく、又は非処理であってもよい。紙は、血球を濾過するのに適切な孔径を有するように、コーティングが施され、かつ/又は、選択されてもよく、赤血球と血漿とを分離することを可能とする。保護カバー801の下には
図8Bに示す上部フレーム810がある。この上部フレーム810は空気及び液体に対して不透過性を有する任意の材料で作ることができる。この層は、膣流体及び月経血がこのストリップ内に流れ込んで吸収材820に吸収されるのを可能とする入口812を有する。さらに、この上部フレームは血漿採取ウィンドウとして機能する開口811も有する。このストリップの上部フレームの下には
図8Cに示された吸収紙材があり、これが月経血を吸収し、全血(whole blood)と血漿とに分離する。全血はストリップの入口領域に採取される一方、澄んだ血漿流体はストリップの血漿ウィンドウ領域に現れる。ストリップの保護カバーにおける入口802及び上部フレームにおける入口812は、月経血及び膣流体が入口802及び812の下の吸収紙材の閉じ込め領域に吸収されるのを可能とするが、血漿ウィンドウ領域811に吸収されるのは許容しない。閉じ込め領域に吸収された流体は吸収紙材の入口領域から血漿ウィンドウ領域まで横方向(水平方向)に流れる。この過程で、吸収紙材は、白血球及び赤血球を血漿から分離する。その結果、入口領域は全血を含有し、血漿ウィンドウ領域は澄んだ月経血の血漿を含有することになる。
図8Dはストリップの下部フレーム830を示している。この下部フレームは上部フレーム810と同様の材料で作られている。底部フレーム830も入口831を有する。この入口831は、過剰流体が通過するのを可能とし、その流体がその入口から血漿ウィンドウへと流れるのを防止する。過剰流体は月経パッドの吸収コア810によって吸収される。より多くの層、例えば追加のフレーム層及び吸収材料層が考えられる(予期される)。
【0115】
図8Eは血液吸収ストリップ800の分解図を示している。保護カバー801は裏面804に接着剤を有する。この接着剤は、ストリップの上部フレーム810に付着するが、上記入口及び血漿ウィンドウにより、吸収紙材820には付着しない。ストリップの上部フレームの裏面にも接着剤814がある。この接着剤814は下部フレーム830には付着するが、吸収紙材820には付着しない。
【0116】
他の実施形態において、流体採取検査ストリップは複数の入口を含むことができる。1以上の実施形態において、1以上の入口は吸収材料層の複数の
吸着材料ゾーンと流体連通している。1以上の実施形態において、上記
吸着材料ゾーンは流体的に互いに分離されている、つまり、2つの流体流は混ざり合わない。
図9A-9Dは流体採取ストリップ900の一実施形態の4つの層を示している。この流体採取ストリップ900は、保護カバーの2つの入口902と上部フレームの2つの入口912とを有する。より多くの層、例えば追加のフレーム層及び吸収材料層が考えられる(予期される)。しかし、この実施形態では、吸収紙材は2つのゾーン920,921に分割されている。これは、この吸収紙材の異なる領域を異なる試薬で処理することを可能とし、1つのストリップからより多くの分析を行うことを可能とする。この実施形態では領域921は月経血を全血と血漿とに分離しない。この分離は領域920でのみ起こる。この領域920では吸収紙材は任意の乾燥血液スポット紙とすることができ、特定の病原体、タンパク質、DNA、RNA、その他の対象となるバイオマーカを安定化させるために処理されていてもよく、又は非処理であってもよい。紙は、血球を濾過するのに適切な孔径を有するように、コーティングが施され、かつ/又は、選択されてもよく、赤血球と血漿とを分離することを可能とする。したがって、下部フレームも2つの入口931を有する。
【0117】
他の実施形態では、流体採取検査ストリップは複数のゾーンで月経血の全血と血漿とへの分離を行う。
図10A-10Dには、別の実施形態の流体採取検査ストリップ1000が示されている。このがストリップは、吸収紙材層が複数の吸収材料ゾーンを有する。
図10C参照。これらのゾーンは、入口1002及び1012に対して配置されており、両入口から血漿分離を行う。この場合、
図10Bに示された2つの血漿ウィンドウ1011の中に見える紙材1020及び1021の両方が血漿分離を行う。紙材1020,1021は任意の乾燥血液スポット紙とすることができ、特定の病原体、タンパク質、DNA、RNA、その他の対象となるバイオマーカを安定化させるために処理されていてもよく、又は非処理であってもよい。紙は、血球を濾過するのに適切な孔径を有するように、コーティングが施され、かつ/又は、選択されてもよく、赤血球と血漿とを分離することを可能とする。
図10Dにおいて、ストリップ1000の下部フレーム1030も2つの入口1031を有する。
【0118】
同一の概念をタンポンやパンティーライナー、又は
図4Cに示すようにおむつで乾燥尿スポット(dried urine spot) カード(DUSカード)を用いた尿分析のためにも用いることができる。
図4CはDUS装置660を示しており、ここではおむつ661として示しているが、子供たち及び大人たち両方のための尿採取装置とし得る。尿採取装置はタブ664のついたDUSカード663を有している。DUSカード663は尿採取装置の開口662から引っ張り出して、遠隔地での分析のために送付することができる。
【0119】
1以上の実施形態において、流体採取検査ストリップは、血球を濾過するために、コーティングが施されているか、又は、異なる孔径のものとすることができ、複数の層からなるものとすることもできる。DUSカードは、
図5AにおけるDBSカード又は
図7-10における多層流体採取検査ストリップについて説明したような流体不透過性領域及び流体収着(fluid sorbent) 領域と同じ特徴を有することができる。
【0120】
1以上の実施形態において、流体採取検査ストリップは比色検出方法を用いて様々な健康マーカを診断することが可能な添加剤を含むことができる。実施形態では、色は、バイオマーカの存在又は不在を表す。その結果は、バイオマーカが定量化可能である場合は特に、モバイル装置等によって解析することができる。比色検出法を用いることは、現場での診断(on-location diagnosis)に対してさらなる柔軟性を提供するもので、診断のために流体採取検査ストリップを輸送することは要求されない。分析することが可能なバイオマーカは、バクテリア若しくはヒトパピローマウイルス等のウイルス等の病原体を含むだけでなく、ヘモグロビンA1c、脂質、ホルモン、癌マーカなども含む。
【0121】
上記紙材820,920,921,1020,1021,1100は全血を濾過してその種々の成分に分離する材料から作ることができる。任意のセルロース材料を用いることができる。上記紙材は高流量及び高血漿収率を可能とでき、ラテラルフローアミノアッセイ及びバーティカルフローアミノアッセイのためにしばしば使用されている。従来技術で使用される媒体は広範囲の全血サンプル量(volumes)のサンプルを効率的に分離することができる。血漿分離材料は、例えば、ユニークなアクリルバインダー系を含むガラスホウケイ酸ガラスマイクロファイバーフィルター媒体(glass borosilicate glass microfiber filter media)で作ることができるだけでなく、他の多くのバリエーションが利用可能であり、開発中である。幾つかの材料はコーティング技術を用いて処理されており、血漿分離を向上させることができると同時に、サンプル領域からの赤血球溶解を低下させることができる。紙又は血漿分離材料のタイプは、厚さ及び密度が変動し得、それが吸着率及び分離率に影響する。ガラス繊維材料の利点の一つは、それが試薬を吸い取らないことであり、それによって膜上への非特異的なアナライトの吸着が少なくなることである。選択された特定のガラス繊維材料は、全血からの血漿の効率的な分離のために最適化することができる。綿ベース材料とガラス繊維材料との両方に、DNA/RNAの安定化のための処理を追加することができる。その処理は、ガラスマイクロファイバー採取領域に直接行うことができる。商業的に入手可能な方法は、細胞を溶解してDNA/RNAを露出させ、タンパク質及び酵素を変性させ、微生物の増殖を防止して核酸の保管及び分析のために保存性を高めることができる。綿材料及びガラス繊維材料820,920,921,1020,1021,1100は、例えばGE、IWトレモント又はパーキンエルマー、アールストローム、その他の製造会社によって製造されることができる。
【0122】
DBS検査厚紙(板紙、ボール紙)は、特定の孔径と厚みの非セルロース又はセルロース(濾紙)母材から構成することができる。種々の市販のDBSカードが利用可能である。即ち、分析要件のタイプに従って、ワットマン903カード、FTA DMPK タイプA, B, Cカード、FTA Elute カード(GE ヘルスケア, アメリカ合衆国ニュージャージ州ピスカタウェイ)がある。日常的には、ワットマン903カードは基本的に、新生児スクリーニングにおいて使用され、FTA DMPKタイプA,B,CカードはPK/TK試験で使用され、FTA Eluteカードは、主に、下流分析のためのDNAの収集及び精製のためのものである。全てのタイプのDMPKカードが2つの形態すなわちレギュラーカード及び指示カード(indicating cards)として入手可能である。指示カードは、尿、血漿、滑液、脳脊髄液などの無色サンプルのために有用であり、恐らくこの使用ケースに適用されない可能性が高い。DMPKタイプA及びBカードは、独自の試薬で化学的に処理されている。この試薬は、接触したときに、細胞の溶解を引き起こし、タンパク質を変性させ、酵素を不活性化し、細菌の増殖を防止するものである。これらのコーティングされたカードは、保管及び分析のために良好な安定性をもって核酸を露出させるべく細胞膜及び核膜の両方を溶解させるように調製される。また、これらのDMPKカードは、血液中に存在するエステラーゼによる幾つかのアナライト、即ち、プロカイン及びアセチルサリチル酸、の酵素分解を阻害する。これらの酵素は、血液をカードにスポッティングすると、変性し、不活性化して、アナライトの安定性が向上することになる。DMPK-Cカード及びアールストローム226カード(IDバイオロジカルシステムズ、サウスカロライナ州グリーンビル)は如何なる薬品によっても処理されていない。したがって、分析を妨害する含浸化学物質(impregnated chemicals)は何もない。さらに、タンパク質は変性しないので、タンパク質ベースの生体分子分析にとって、DMPK-Cカード及びアールストローム226カードはよりよい選択かもしれない。
【0123】
米国食品医薬品局(FDA)は、血液アナライト採取のための医療機器として、3つのDBSカード、即ちアールストロム226-K062932、ワットマン903及びパーキンエルマー226を21CFR 862.1675の下で承認した。これらは本発明に従って使用することができるものである。非セルロースDBSカード(Bond ELUT DMSカード、アジレント・テクノロジー、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクララ)も、DMPK研究用に市販されており、これも本発明に従って使用することができる。それらは、改善された質量分析(MS)信号の形状、孔開け(打ち抜き)(punching)の容易性、及びヘマトクリット値と無関係なスポット均質性(hematocrit independent spot homogeneity)において優れていることが主張されている。
【0124】
従来の生物学的土台(biological matrices)とは対照的に、流体採取検査ストリップは、保管及び輸送の分野で大きな単純化を提供する。試料の安定性に重要な影響を有すると共に細菌増殖の可能性を高める湿度因子を締め出しているので、流体採取検査ストリップカードは周囲温度(ambient temperature)で出荷し、保管することができる。環境湿度から保護するために、流体採取検査ストリップを、適切な乾燥剤と、この乾燥剤をいつ交換する必要があるかを見つけるための湿度インジケータとを有する密封されたプラスチック製の袋で包み、包装することができる。
【0125】
DBSカードは、米国運輸省(DOT)及び米国郵便公社によれば、非規制及び免除材料として考えられている。適切にラベルの貼られたDBSカードの小包は、パッケージの中の内容物の生体有害性をはっきりと輸送人員や他の従業員に伝えているので、郵便、宅配便、又は速達便にて分析研究所に出荷することができる。有害な(危険な)血液サンプルの職業露出(occupational exposure)からサンプルの完全性と安全性を確立するために、DBSカード出荷のために基本的なトリプルパッケージング技術が使用されている。トリプルパッケージは、一次容器、二次容器、及び、国際バイオハザードシンボルが取り付けられ又は印刷された高品質の紙の封筒である三次カバーを備えている。だから、DBSパッケージは、研究所に輸送されるまで、涼しく乾燥した所に保管でき、又は、発泡ポリスチレン箱の中に入れておくこともできる。DBS検査カード上で室温でのアナライトの長期安定性が確立されないならば、乾燥剤を入れて包装されたDBSカードを、アナライトの劣化を最小限に抑えるために分析まで研究所の冷凍庫に保存することができる。
【0126】
流体採取検査ストリップは、ジップロック(登録商標)袋又はマルチバリアパウチに入れ、予め郵便料金前納印の押された封筒に入れて分析のために遠隔地まで郵送することができる。オプションとして、流体採取検査ストリップは、例えば15~30分間、空気で乾燥させることができる。必要であれば、これをカードの裏面の手引き(説明書)に含めることができる。研究所からの結果は、例えば、メール、電話により、又はモバイルアプリケーションやウェブサイトで、同じバーコードをつけてユーザーに送信することができる。乾燥した流体採取検査ストリップは、様々な直径の(手動、半自動、及び自動化された)パンチングツールで打ち抜くことができる。打ち抜かれた乾燥カードは、(マイクロフルイディクスによって)直接に使用、又は、適切な抽出溶媒でアナライト(分析物)を抽出することによって使用することができる。例えば、
図16,17を参照。抽出溶媒は、干渉する内性不純物の抽出の最少化を考慮しつつ、アナライト(単数又は複数)の溶解性プロファイルに従って最適化されるべきである。固定されたDBSからの抽出効率は、液体アンモニアの添加によって向上させることができる。抽出後、サンプルは分析にかけられる。液体クロマトグラフィー、タンデム質量分析法(LC-MS/MS)、脱離エレクトロスプレーイオン化質量分析法(DESI-MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)、マトリックス支援レーザー脱離(matrix assisted laser desorption)質量分析法(MALDI-MS)、MALDl飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、等電点電気泳動(IEF)-HPLC、直接レーザー脱離(LD)TOF-MS、誘導結合プラズマ質量分析法(IC-P-MS )、レーザーアブレーション(LA)ICP TOF-MS、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、酵素結合免疫収着アッセイ(イライザ)(ELISA)及びマイクロ流体チップは、血液サンプルの定性及び定量分析のためのDBS法とうまく結合できた。完全に自動化されたオンラインDBSサンプリングと分析のために市販の装置が利用可能である。オンラインで自動化されたツール(ABS2(商標)、インステックソロモン社、アメリカ合衆国、ペンシルバニア、プリマスミーティング、Culex(登録商標),BASi(登録商標)、アメリカ合衆国インディアナ州ウェスト・ラファイエット)は、自由に動く実験動物から血液を採取することが可能であり、高スループット及び高精度でDBSカードに(マイクロリットルの血液量の)逐次サンプリング(serial sampling)を行うために結合することができる。自動化されたSCAP(登録商標)(Automated Sample Card and Prep)システム(プロラブ社、スイス、ライナッハ)は、オンライン薬物分析のためにLC-MS/MSと結合することができる。
【0127】
1以上の実施形態において、膣流体採取キットは、膣流体採取システム、例えば、上述したような流体採取検査ストリップを備えた月経パッドを含む。このキットは、オプションとして、返送用パッケージ(DBS検査カードサンプルの調製及び出荷のための使用説明付き)を含むこともできる。
【0128】
例示的な一の実施形態では、流体採取検査ストリップサンプルを、ヒトパピローマウイルス(HPV)の検出に使用することができる。HPVの検出のために、DBSパッドが使用され、DBS-カードが研究所での分析のために送られる。研究所で、無菌のハサミや自動化されたパンチングマシンを使用して、DBSカードのlcm x lcm x lmm又は1.5cm x l.5cm x l.5mmの小片が打ち抜かれる。ゲノムDNAは、市販の例えばQIAamp(登録商標)DNAミニキット(カタログ番号51306 キアゲン社、ドイツ、ヒルデン)を用いて、乾燥スポットプロトコルにしたがって抽出される。HPVのDNAの検出は、MYL11及びMY09縮重プライマーの同じセットを使用してPCRの50サイクルを2ラウンド使用して行うことができる。これらのプライマーは、HPVタイプを広範囲に検出することを可能とするHPVゲノムの保存LI領域を対象としている。第一ラウンドのPCRは20μlの反応容量(reaction volume)を用いて行い、各反応につきDNAの100 ngを使用する。第二ラウンドのPCRについては、第一ラウンドのPCR産物の1μlが、20μlの反応容量で使用される。βグロビンDNAの検出は、ハウスキーピングコントロールとしてのすべてのサンプルに対して、確立されたプライマーの別のペアを使用して実行されるべきである。反応は二重に実施され、MYL11プライマーを用いたダイレクトシークエンシング(直接配列決定)(direct sequencing)によって特定のHPV型が確認される。シークエンシング産物は、ABI 3730x1ジェネティックアナライザー(アプライドバイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)を用いて分析され、配列相同性は、NCBI(米国立生物工学情報センター)のBLAST検索プログラムを使用することにより調べることができる。膣流体採取検査ストリップからのヒトパピローマウイルスを検出する別の方法は、全血がある入口から一領域を打ち抜き、それをThinPrep(登録商標)等の固定剤の溶液中に入れて、ボルテックスマシンにかけることである。なお、固定剤はThinPrepに限定されない。最後に、固定液中の希釈膣流体の量をGeneExpert(登録商標)を使用して分析することができる。サンプルは、ロシュ(roche)などの他の検出機器を用いて分析することもできるだろうが、プロトコルの一部としてサンプルを遠沈(スピンダウン)させる必要があるかもしれない。HPV検出の他のプロトコルもDBSカードに対して使用することができる。
【0129】
流体採取検査ストリップについて、他のタイプの分析も行うことができる。これには、ヘモグロビン、ALc、リポプロファイル、ビタミン、ミネラル、ホルモンなどの通常の健康バイオマーカ及び他の血液バイオマーカが含まれる。他の実施形態では、DBS検査サンプルは、ウイルス及びバクテリア並びに子宮内膜癌その他の血液中で検出可能な癌のタイプを検出するために使用することができる。ます。蓋付きの月経カップ内の液体月経血サンプルについては、分析のために上記バイオマーカが存在するはずであるが、細胞を見、そして、後の使用のために恐らくそれらの細胞を採取することも可能である。例えば、幹細胞が殊に興味深いものとして示されている。
【0130】
1以上の実施形態において、流体採取システムは、流体吸収パッドに取り外し可能に一体化され得る流体採取検査ストリップを備える。1以上の実施形態において、この流体吸収パッドは従来の女性用月経パッドの特徴を有することができる。
【0131】
他の側面においては、出荷及び遠隔分析のために月経パッドから簡単に取り外せる吸収バッド又は他の形態の要素を用いて月経血を採取する。他の実施形態では、当業者には明らかな様に、DBS検査月経パッド(流体採取ストリップを有する月経パッド)を、パンティーライナー、タンポン、又は月経カップに一体化することもできる。
【0132】
図5Cは、比色検出法を用いて健康マーカを検出及び/又は測定するDBS/DUS検出カード690を示している。この検出カードは、女性用衛生用品又は尿採取装置に組み込むことができる。この実施形態のためのDBS/DUS検出カードは、抗体などの特定の化学物質でコーティングされた紙で作ることができる。この紙は、イライザ(ELISA)検査法などの方法により、目的のアナライトが一旦検出されると、色を変える。それは
図5Cに示すように横方向(水平方向)の流れを用いるが、それに代えて、垂直方向の流れを用いることも可能である。上記カードは、
図5BのDBSカードのように、カバーを有していても、いなくてもよい。DBS/DUS検出カードは入口691を有する。この入口691は尿又は膣流体を採取し、(横方向であれば)毛細管作用により、(垂直方向であれば)重力により、尿又は膣流体を導いてチャレンジングシステム(challenging system)693の中を通す。チャネリングシステム693は、特定の場所が特定の分子(例えば、膣流体中の目標抗原のための抗体)でコーティングされている。膣流体が(複数の)チャネル693を通って流れ(紙フルイディクスならば、これは毛細管力による。)、第1反応ゾーン692に到達してこのゾーンを浸すと、膣流体中の抗原が、この場所に配置されていた抗体に結合する。抗体は固定化されていない(不動とされていない)ため、抗体-抗原分子及び抗原と反応しなかった抗体は毛細管力によって、第2反応ゾーン694へと流れる。そこには、抗抗体(anti-antibodies)が存在している。それらは動くことができず、抗原と反応しなかった全ての抗体に結合する。抗原-抗体分子だけが流れ続けて第3反応ゾーン695へと行き、そこで比色検出を行うことができる。色の変化は第3反応ゾーン695においてカード上に示される。十分な流体が検出カードを流れたことを確実にするためのコントロール領域が含まれていてもよい。この場合、妊娠検査と同様に、ユーザは、検査が陽性であるための色変化のラインに注意しなければならない。手引き(説明書き)におけるこれらの詳細事項は検出カードの裏に明確に記載されるだろう。
【0133】
図5Dは、
図5Cと同じカードを示すが、結果は直ちに与えられ、モバイルデバイスを使用して解析される。携帯電話698等のデバイスのカメラが、比色変化が生じたその領域695の写真を撮り、画素密度699を用いた画像解析を使用してその色をアナライトの比状態量(specific quantity)に変換する。
【0134】
検査のための月経流体及び/又は膣流体を採取する他の方法及び装置が考えられる。1以上の実施形態において、吸収バッドは、月経中に月経流体を採取するために使用される吸収バッドの取り外し可能部分である。このパッド部分は女性用バッドから簡単に分離可能で、取り外しを容易にするタブ又は紐(string)を装着することができる。
図6は、使用後に引き紐681を引っ張ることができ、高吸収層からパッドのキューブ680を引き出して月経と膣液分析のために使用することができる月経パッド又はパンティーライナーを示す。
【0135】
1以上の実施形態において、流体採取検査ストリップは流体吸収パッド又は月経パッドに固定された又は固定可能な取り外し可能な吸収ストリップである。流体採取検査ストリップは月経又は膣流体がしみ込んだ後、剥がすことができる。
図11は月経パッドのトップ層1101上にストリップ1100を有する月経パッドである。このストリップ1100は、月経又は膣流体がしみ込んだ後、剥がすことができる。ストリップ1100は、ユーザが購入し、彼女が使用しているパッドに取り付ける別体のストリップであってもよい。あるいは、それは、特定のパッドに既に配置されていてもよい。ストリップのデザインは、例えば、
図8-10に記載されたデザインのいずれかとし得る。
【0136】
図12A-12Hは、蓋つき月経カップ100,月経血を入れた採取管500,使用後の月経パッド/パンティーライナー700,DBSカード630,高吸収パッドから紐で引き抜かれた四角形680、サンプル採取装置800,900,1000,1100,又は使用後のタンポン1250がどのようにしてマルチバリアパウチ1220に入れられるかを示している。マルチバリアパウチは、月経血サンプルを空気と湿度とから保護するために気密容器(air-secured container)として機能する。マルチバリアポーチ1220は、酸化剤と乾燥剤とを含むことができるとともに、バーコード又はIDコード1230を付すことができる。バーコード又はIDコード1230は、この製品のユーザ、研究所、バイオバンク等側からサンプルを追跡するために使用することができる。100,500,700,710,630,680又は800,900,1000,1100,1250を入れたマルチバリアパウチ1220は閉じられ、料金前納印のある(pre-stamped)封筒1240に入れられ、特定の離れた分析場所に送られる。
【0137】
図13は封筒と結合したマルチバリアパウチ1300を示している。100,500,700,710,630,680又は800,900,1000,1100,1250等のサンプルがパウチに入れられると、パウチの開口1301はリム1302をスライドすることでくっつけられる。パウチのバリア1303は3層で、即ち内側、中央、及び外側の材料でできている。これらの3層は、熱可塑性材料、例えば、硬質PVC、半硬質PVC、ポリカーボネート、アクリル、耐衝撃性改質アクリル、ポリスチレン、耐衝撃性改質ポリスチレン、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせ等で作ることができる。パウチ1300は開口1301を閉じることで封止されたとき、バリア1304から剥離ライナー1305を取り除いて準強力(semi-strong)接着剤1306を露出させることで、二つ目の密閉法が活性化される。この機構はバリア1304を1302上に折り曲げることで閉じられ、バリアの外側部分1307に接着剤1306を付着させることで封止される。マルチバリアパウチ1300も封筒なので、分析のために研究所に郵送されるために封筒上には予め記入した住所1308が印刷され、郵便料金前納の表示1309がなされている。
【0138】
図14は月経血採取郵送キット1400を示している。
図1,2A-E,3,4A-B,5A-B,6,7,8A-E,9A-D,10A-D,11に示した異なる実施形態の月経血採取を、女性たちに、例として示した膣流体採取装置100を備えたここに示したような完全な採取キットと共に届けることができる。キットはさらに、月経カップ200の使用方法、システム100への蓋300のシール方法、必要ならば採取管内へのサンプルの採取方法などについての取り扱いマニュアル並びに
図7-11に示した流体採取ストリップの使用方法についての説明書を含むことができる。キットは、郵送手続で使用するための、通常の月経パッド、タンポン、その他の月経血採取装置を含むことができる。
【0139】
キットは、採取装置100,500,700,710,630,680,800,900,1000,1100,1250に使用される1220又は1300等のマルチバリアパウチ1402を含むことができる。マルチバリアパウチだけがある場合には、料金前納のスタンプが押された封筒1240も同封される。サンプルは研究所での遠隔分析のために郵送することができる。キットはまた、固有のID1403も有する。このID1403は、このキットを特定するために、そして、ウェブサイト、アプリケーション又は同様のサービスでオンライン登録するために使用できるものである。
【0140】
サンプルが遠隔地の保管施設に郵送されると、そのサンプルは、商業研究所及び医療研究所で既に使用されている既存のサンプル分析方法と、膣流体中にある固有のバイオマーカを探す新規な方法とを用いて、処理することができる。
【0141】
分析可能なバイオマーカは月経血及び膣流体に含まれるものである。具体的には、流体採取ストリップについては、子宮内膜癌と同様に、HR-HPV又はHPVの任意の他の株(strain)が、最適であり、HIVウイルス負荷(HIV viral loads)、フリーフローティング(free floating) RNA又はDNAが対象である。血液中の他のウイルス、細菌、又はバイオマーカ、例えば、ビタミン、ミネラル、脂質プロフィール、ホルモンレベル、を分析し、検出することができる。
【0142】
図15は月経血又は膣流体を家庭で検査及び分析するための装置1500である。サンプル100,500,630,680,690,800,900,1000,1100又は1250を遠隔の分析場に送る代わりに、ここに示すような家庭で使用する装置は理想的であるかもしれない。この装置は、サンプルの保持、サンプル調製、又はこの装置に挿入される容量の制御を行うことができる仲介装置を使用するためにサンプルを挿入するための開口1510を有する。この装置は、510等の月経カップからの月経血、800,900,1000,1100等の流体採取ストリップからの月経血、若しくは使用タンポン1250からの月経血等、特定の月経血採取タイプ、又は1520に示されたような電気化学的バイオセンサ又は光学バイオセンサに対して特化されたものである。この装置は、この実施形態に示した全ての異なるフォーマットを処理可能である。この装置の仕様は、月経血及び膣流体に対して調整される(calibrated)。流れやすいサンプルの使用の場合には、この装置は遠心分離機能を備えてもよい。さらに、装置は、幾つかの異なる血液分析技術を採用しており、それには、電気化学的検査、光学検査、ポリメラーゼ連鎖反応、質量分析法、化学的シークエンシング(化学的配列決定)、連鎖停止(chain-termination)法、より大きいDNA断片を切断又は剪断するためのデノボ(de novo)シークエンシング、個々のDNA分子を増幅するためのインビトロ(in vitro)クローニングが含まれる。次世代シークエンシングなどの方法はまた、ゲノムシークエンシング、ゲノムリーシークエンシング(resequencing)、トランスクリプトームプロファイリング(RNA-Seq)、DNA-タンパク質相互作用(ChIP-シークエンシング)、及びエピゲノムの解析(characterization)のために適用することができる。これらの方法は、単一分子リアルタイムシークエンシング、イオン半導体、パイロシークエンシング、合成によるシークエンシング、ライゲーション又は連鎖停止によるシークエンシングであり得る。方法には、MPSS法(massively parallel signature sequencing)、ポロニーシークエンシング、454パイロシークエンシング、SOLiDシークエンシング、DNAナノボールシークエンシング、ヘリスコープ(heiiscope(登録商標))単一分子シークエンシング、ナノポアDNAシークエンシング又はRNAPシークエンシングも含まれ得る。分析のデータ結果は、コンピュータや携帯電話又は他の同様の装置に、USBケーブルを介して、又はBluetooth(登録商標),GSM(登録商標), Wi-Fi(登録商標), RFIDその他の図示しない伝送技術によるワイヤレスの方法で、送信することができる。壁に差し込むことができる電源コンセント(power outlet)1501は、装置に電力を供給することができる。装置は、システムに電力を供給すると共にデータ結果の伝送装置として機能するために電話に差し込めるジャック又はミニジャックを使用することもできる。
【0143】
図16Aは、月経血等の膣流体サンプルが1000等のサンプル採取ストリップに導入されると何が起こるかを示している。図は、保護カバー1001の除去後にサンプル採取ストリップがどのように見えるかを示している。血液は入口1012を通って来るので、血液は紙1020及び1021を流れて下る。この例では両方の紙のタイプは血漿を分離可能な濾紙であるので、入口1012は赤血球等のより大きい細胞で一杯になる。流体は濾紙1020及び1021を横方向に移動するので、より澄んだサンプルとして血漿ウィンドウ1011において視認可能である。サンプルはここでは例えば、血漿又はその他の小さい細胞タイプであり得る。サンプルが血液研究所に到着したとき、自動化システム又は検査技師のいずれかが、サンプル採取ストリップ1000から小さいサンプルを打ち抜くか切り出すことができる。
図16Bはどのようにサンプル1601,1602,1603,1604が打ち抜かれるかを示している。この例では、1602が入口1012から打ち抜かれる。サンプルの紙1020が、例えばDNA保存剤で安定化されていないのであれば、このサンプルは全血サンプルと同じ特性を有することになる。この例では、1601は純粋な血漿サンプルである。サンプル採取ストリップ1000の第2入口1012の下方には、濾紙1021が組み込まれている。濾紙はDNA/RNA安定剤でコーティングされていてもよく、ストリップからサンプル1603及び1604が打ち抜かれると、サンプル1601及び1602とは異なるものとなる。
【0144】
図17A,17B,17Cには研究所でのプロセスが示されている。
図17Aは、サンプル材料1601がどのようにしてサンプル採取ストリップ1000から打ち抜かれるかを示している。
図17Bにおいて、検査技師がピンセット1710でサンプル1601を、予め定義された緩衝材料1725を入れたメスフラスコ(全量フラスコ)1720の中に導入する。緩衝材料は目的のバイオマーカを処理するために必要な固定剤その他の薬剤である。サンプル1601が緩衝材料中で希釈されると、1730等の化学分析装置に導入される。
【0145】
図18は、分析結果のデータをどのように電子装置1800、例えばコンピュータ1810上でのウェブサイト若しくはアプリ、スマートフォン1820等の携帯装置、又はスマートウォッチ1830でユーザに表示し得るかを例示している。他の実施形態では、データを、インターネットに接続した眼鏡に、又は音声としてヘッドフォンを介して、又は浴室内の流しの傍のスマートミラーに、又は同様の製品カテゴリに、表示することもできる。データは、数字又はグラフ等によって表示してもよい。データは、ヘルスケアの専門家による解析後に、又は、単に生のデータとして、表示してもよい。また、データは、いくつかのバイオマーカについて月経血中のバイオマーカのレベルを全身血液中の同等のものに変換するために必要とされるデータ処理の後に表示されてもよい。
【0146】
次に示すものは、ユーザがアプリ/ウェブサイトで送信(submit)可能なデータである。氏名、年齢、場所(GPS又はIPアドレスを通じて)、家の住所、Eメールアドレス、パスワード(彼女らのプロファイルをオンラインで保存するため)、アプリにアクセスするためのピンコード(生体認証機能が装置上で使用される場合、これも使用することもできる。)、検査その他のサービスを注文するためのクレジットカード情報。ユーザは彼女らの月経サイクルについての情報を入力し、彼女らの月経サイクルをカレンダー機能で見ることもできる。カレンダーの頁は、予想される月経期間を表示したり、月経サイクル中のいつが最も妊娠しやすいかを示したりすることもできる。このデータは、履歴データとして見ることもでき、ユーザに彼女らの月経期間を追跡する機会を提供する。さらに、そこからバイオマーカ分析を注文でき、研究所が分析を終えると結果を見ることのできるバイオマーカメニューリストも利用可能である。
【0147】
図19に示すように、アプリ/ウェブサイトで集められたデータは暗号化されてクラウドサービス1900に保存される。ユーザが100,200,600,680,690,900,1000,1100等の月経血採取装置を受け取ると、ユーザは、その月経血採取装置, マルチバリアパウチ,郵送キット1400等に付されている通し番号(SN番号)639又はバーコード638を登録する。一旦登録されると、その情報は暗号化1935されて、クラウドサービス1900に保存される。ユーザが医療装置100,200,600,680,690,900,1000,又は1100を使用した後、その装置は封筒1240又は1300に入れられて、血液検査のために血液研究所1940に郵送1937される。この血液サンプルが血液研究所1940で受け取られると、研究所はこのサンプルをクラウドサービス1900に登録1945する。血液研究所1940がクラウドサービスに通し番号を入力した後、バイオマーカを分析すべきための詳細がスタッフのために入手可能1946となり、血液分析が実行可能となる。ユーザによって選択されたバイオマーカのみがスタッフにとって入手可能である。これは、そのSN番号固有のユーザについて保存されたその他の如何なる情報も見ることができないことを意味している。研究所が分析を行ってしまうと、結果が暗号化されてクラウド1900に保存1945される。クラウド1900では、暗号化された結果は今やユーザに返送1936可能となっている。クラウド1900はアプリケーションプログラムインターフェース(API)1955を有しており、これを介して他の組織はクラウド内の情報及び血液分析結果への特定のアクセスが可能となる。API1955は、ユーザによって制御されることがよくある種々の許可レベルを持つことができる。例えば、医者等の医療従事者 (health providers)1950は特定のユーザ情報及び血液結果にアクセスすることが可能である。また、例えば医学研究者1960又は生命保険会社等の他のプロバイダー1970に対しては、限定的にアクセスできるようにすることも可能である。幾つかの実施形態において、ディジタルサービスは、月経流体分析の累積収集結果を集計することができる。集計データは、流体分析の合計値から新しい情報を発見する機会を提供することが可能である。
【0148】
本発明は多くの形態を取りうること、そしてそのような形態は請求項に記載の発明の範囲内にあることは、当業者に理解されるであろう。したがって、請求項の精神と範囲は本明細書に含まれる好ましい形態について説明したものに限定されるべきではない。