IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許7077240フィルター硬度を高めるための被覆されたプラグラップ
<>
  • 特許-フィルター硬度を高めるための被覆されたプラグラップ 図1
  • 特許-フィルター硬度を高めるための被覆されたプラグラップ 図2
  • 特許-フィルター硬度を高めるための被覆されたプラグラップ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】フィルター硬度を高めるための被覆されたプラグラップ
(51)【国際特許分類】
   A24D 1/02 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
A24D1/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018565892
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 IB2017053279
(87)【国際公開番号】W WO2017216671
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】16174448.7
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】プレスティア イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ボニチ アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】グランジャン エメリック
(72)【発明者】
【氏名】モンタナリ エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】キアリーニ イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】デル ボッレッロ ミケレ
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532106(JP,A)
【文献】中国実用新案第201062330(CN,Y)
【文献】特表2014-521360(JP,A)
【文献】特開2000-064192(JP,A)
【文献】国際公開第2015/035137(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0015916(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B1/00-A24F47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品であって、
喫煙可能材料と、
喫煙可能材料の下流にあるフィルターであって、フィルター材料および前記フィルター材料の周りに配置されたプラグラップを備えるフィルターと、を備え、
前記プラグラップが前記フィルターの長軸方向軸の方を向く内表面および前記フィルターの前記長軸方向軸から離れる方を向く外表面を備え、前記プラグラップの前記外表面が硬度を高める被覆を備え、前記フィルターの平均半径方向硬度が、前記フィルターが前記被覆を塗布したプラグラップを有すること以外は本質的に同一のフィルターより少なくとも2%大きく、
前記硬度を高める被覆は、前記プラグラップが前記フィルター材料の周りに配置された後、前記プラグラップに塗布される、喫煙物品。
【請求項2】
前記フィルターの長軸方向の硬度が、前記被覆が塗布されていないプラグラップを有するフィルターより少なくとも2N大きい、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記フィルターの半径方向硬度が、前記被覆が塗布されていないプラグラップを有するフィルターより少なくとも2%大きい、請求項1または2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記被覆の厚さが2マイクロメートル~200マイクロメートルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記被覆がポリビニルアルコールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記ポリビニルアルコールの分子量が40~125,000グラム/モルの範囲内である、請求項5に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記被覆が、5ミリメートル以上の幅の細片に塗布される、請求項1~6のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記被覆が前記プラグラップの前記外表面全体に塗布される、請求項1~6のいずれか一項に記載の喫煙物品。
【請求項9】
喫煙物品用のフィルターの硬度を高めるための方法であって、
プラグラップをフィルター材料の周りに配置することと、
前記プラグラップが前記フィルター材料の周りに配置された後、前記フィルターの硬度を高めるために、硬度を高める被覆組成物を前記プラグラップに塗布することと、を含む方法。
【請求項10】
前記被覆組成物が、10%~70%の固形分のポリビニルアルコールを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被覆組成物がポリビニルアルコールから本質的に成る、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記被覆組成物が、20メートル/分~50メートル/分の速度で前記プラグラップに塗布される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記塗布された被覆組成物から溶剤を除去するために、前記被覆されたフィルターを硬化することをさらに含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
周囲温度で乾燥が生じる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被覆組成物が、前記フィルターが乾燥した後に2マイクロメートル~200マイクロメートルの範囲の厚さの被覆層を生成するために十分な量で前記プラグラップに塗布される、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品および喫煙物品のための硬度が高められたフィルターに関する。より具体的には、本発明は、フィルター材料の周囲にプラグラップが巻かれた後に硬度を高める被覆を有するプラグラップを被覆することに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻たばこなどの可燃性喫煙物品は典型的に、たばこロッドを形成する紙ラッパーによって包囲された細かく切られたたばこ(通常はカットフィラーの形態)を有する。紙巻たばこは、紙巻たばこの一方の端に点火し、たばこロッドを燃焼することによって、喫煙者によって使用される。次に喫煙者は、典型的にフィルターを収容する紙巻たばこの反対側の端または口側の端を吸うことによって、主流煙を受け入れる。フィルターは、主流煙が喫煙者に送達される前に主流煙の一部の成分を取り込むように位置付けられている。
【0003】
喫煙物品中のフィルターは典型的に、プラグラップによって包囲されたフィルター材料を含む。プラグラップはフィルターの剛直さに貢献する。よりしっかりした、より剛直なフィルターを生産するために、より高い坪量の紙から形成されたプラグラップなどの剛性が高められたプラグラップが作製されている。剛性が高められたプラグラップは、長軸方向の剛性が高められたことに起因して、喫煙物品をもみ消す助けとなり、結果として消費者が取り上げた時に高められた半径方向硬度に起因して、より高い質の製品の知覚をもたらす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被覆されたプラグラップでフィルター材料の周囲を囲むと、プラグラップの剛性の増加に起因して課題を呈する場合がある。例えば、より堅いプラグラップをフィルター材料の周囲に巻くことができるように、フィルター製造ライン上の機器は改変が必要になる場合がある。
【0005】
フィルター硬度が改善された喫煙物品を提供することが望ましい。標準的なフィルター作製機器を使用して硬度が改善されたフィルターを製造することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の様々な態様において、喫煙可能材料と、喫煙可能材料の下流にあるフィルターとを含む喫煙物品が提供されている。フィルターは、フィルター材料と、フィルター材料の周りに配置されたプラグラップとを備える。プラグラップは、フィルターの長軸方向軸の方を向く内表面と、フィルターの長軸方向軸から離れる方を向く外表面とを備える。プラグラップの外表面は、硬度を高める被覆を備える。被覆はフィルターの硬度を高めてもよい。被覆は、フィルターの長軸方向の硬度と、フィルターの半径方向の硬度とを増加することが好ましい。被覆はポリビニルアルコールを含むことが好ましい。
【0007】
本発明の様々な態様において、喫煙物品用のフィルターの硬度を高める方法が提供されている。方法は、プラグラップをフィルター材料の周りに配置することと、フィルターの硬度を高めるために、プラグラップがフィルター材料の周りに配置された後、硬度を高める被覆組成物をプラグラップに塗布することとを含む。
【0008】
本発明のフィルター、喫煙物品、および方法の様々な態様は、先行のフィルター、喫煙物品、および方法に対して一つ以上の利点を提供する場合がある。例えば、長軸方向の硬度が高められたフィルターは、剛性の増加に起因して、結果として喫煙物品をもみ消すのがより簡単になる場合がある。別の例としては、半径方向の硬度が増加したフィルターは、消費者が握った時に、質の向上の知覚を提供する場合がある。半径方向の硬度が増加した喫煙物品のフィルター部分は、従来のプラグラップよりもしゃきっとした感触を有する場合がある。よりしゃきっとした感触を有するフィルターは、弾性のある接触または感触と関連付けられる従来のプラグラップより硬く、より堅く、曲がらないように、またはよりしっかりしているように感じられる場合がある。本発明のフィルターは、標準的なフィルター作製機械およびプロセスを使用して作製され、次いでこうした機械およびプロセスによって作製された後に被覆されることが好ましい。本発明のフィルターおよび方法は、主流煙が通過する区域内に構成要素またはフィルター材料を追加することなく、フィルター硬度の増加を提供してもよい。これらの利点およびその他の利点は、本開示を読み、かつ理解すると当業者には容易に明らかになるであろう。
【0009】
本発明による任意の適切なフィルターが使用されてもよい。フィルターは、フィルター材料と、フィルター材料の周囲に配置されたプラグラップとを含む。プラグラップがフィルター材料の周囲に巻かれた後、プラグラップは任意の適切な硬度を高める被覆を用いて被覆されてもよい。プラグラップは、標準的なフィルター製造機器を使用して、フィルター材料の周囲に巻かれることが好ましい。プラグラップは、フィルター材料の周囲に巻かれた後に被覆されてもよいので、当初のフィルター製造段階中は、プラグラップの硬度は高められていない。ひいては、被覆する前にフィルターを形成するために、標準的なフィルター製造機器ラインを修正することなく使用してもよい。
【0010】
プラグラップは、任意の適切な硬度を高める被覆組成物で被覆されてもよい。被覆は、被覆されたプラグラップを含むフィルターの半径方向の硬度および長軸方向の硬度を高めることが好ましい。本明細書で使用される「半径方向の硬度」という用語は、長軸方向軸を横断する方向での圧縮に対する抵抗を指す。フィルターの半径方向硬度は、フィルターの長軸方向軸を横断し、フィルターを横切って負荷をかけ、そしてフィルターの押圧された平均直径を測定することによって決定されてもよく、フィルターは喫煙物品と分離されていてもよく、または喫煙物品へと組み込まれていてもよい。硬度=(押圧された直径/公称の押圧されていない直径)×100%。この試験は、ISO187に従って摂氏22±2度の周囲温度および50%の相対湿度にて、硬度を高める被覆の二週間後に実施されることが好ましい。Hardness Tester H10(Borgwaldt KC GmbH、ドイツ、ハンブルグ)という商品名で市販されている装置を使用して試験を遂行することができる。印加される負荷は250グラムであることが好ましい。平均硬度は試験されたフィルター20個から決定されることが好ましい。硬度を高める被覆をプラグラップ上に含む本発明のフィルターは、被覆が塗布されていないプラグラップをフィルターが有すること以外は本質的に同一であるフィルターより少なくとも2%大きい平均半径方向硬度を有することが好ましい。例えば、平均硬度は、被覆を有しないフィルターより約2%~約5%硬い場合がある。
【0011】
本明細書で使用される「直径」は、フィルターまたはフィルターを含む喫煙物品の横断方向(長軸方向軸を横断する)での最大寸法を記述するために使用される。フィルターまたは喫煙物品の長軸方向軸は、フィルターまたは喫煙物品の長さの方向である。本開示の目的で「半径」という用語は、長軸方向軸からフィルターまたは喫煙物品の縁までの横断方向距離を指す。典型的には、フィルターおよび喫煙物品は円筒形状となる。しかしながら、フィルター、喫煙物品、またはフィルターと喫煙物品の両方が円筒形状である必要はない。
【0012】
本明細書で使用される「長軸方向の硬度」は、長軸方向における圧縮に対する抵抗を指す。フィルターの長軸方向の硬度は、フィルターの長軸方向軸に沿ってフィルターに負荷をかけ、そしてフィルターに対して重大な損傷が生じる時点の負荷を測定することによって決定されてもよい。重大な損傷は、フィルターを圧縮するために必要とされる負荷が50%減少する時に生じると考えられる。試験はまた、喫煙物品の火を消す時に消費者によってかけられる代表的な力である16Nの負荷をかけることによって実施される場合がある。変形が(好ましいはミリメートル単位で)測定されてもよい。試験は摂氏22±2度の周囲温度で実施されることが好ましい。Instron 5944 dynamometer(Illinois Tool Works、米国ミシガン州グレンビュー)という商品名で市販されている装置を使用して、500Nロードセルを使用して試験を遂行することができる。平均硬度は試験されたフィルター20個から決定されることが好ましい。硬度を高める被覆をプラグラップ上に含む本発明のフィルターは、被覆が塗布されていないプラグラップをフィルターが有すること以外は本質的に同一であるフィルターより少なくとも2N大きい(重大な損傷の際の負荷)平均長軸方向硬度を有することが好ましい。例えば、平均硬度は被覆を有しないフィルターより約2N~約5N硬い場合がある。
【0013】
硬度を高める任意の適切な被覆組成物は、本発明によるフィルターのプラグラップに塗布されてもよい。硬度を高める被覆組成物は、被覆されたフィルターを含む喫煙物品の喫煙中に味覚を損なうように変える被覆をもたらさないことが好ましい。一部の好ましい実施形態において、硬度を高める被覆組成物は、結合剤またはその他の添加物などの、紙巻たばこ製造で使用される一つ以上の構成成分を含む。例えば、被覆組成物は、シガレットペーパー、チッピングペーパー、またはプラグラップで使用される適切な結合剤を含んでもよい。
【0014】
硬度を高める被覆組成物内に含まれてもよい適切な材料の例は、デンプン、ポリアクリルアミド誘導体、スチレンブタジエン、スチレンアクリル、デキストラン、酸化デンプン、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはその他の適切なセルロース誘導体(ペクチン、グアーガム、キャロブビーンカーネルミール、寒天、アルギン酸ナトリウムまたはその他の適切なアルギン酸塩、およびこれに類するもの)である。
【0015】
被覆組成物は、一つ以上の適切な硬度を高める材料および適切な溶剤または液体担体を含んでもよい。適切な溶剤および液体担体は、使用される硬度を高める薬剤(複数可)に基づいて変わる場合がある。しばしば極性液体(水、エタノール、または水とエタノールとの組み合わせなど)は適切な溶剤または担体である。場合によっては、非極性溶剤が適切である場合がある。
【0016】
被覆組成物は、任意の適切な量の硬度を高める材料を含んでもよい。例えば、被覆組成物は、約5~約50重量パーセントの硬度を高める材料を含んでもよい。一部の好ましい実施形態において、被覆組成物は、約10~約40重量パーセントの硬度を高める材料を含む。例えば、被覆組成物は、約15~約25重量パーセントの硬度を高める材料を含む。
【0017】
硬度を高める被覆組成物は、任意の適切な厚さで塗布されてもよい。例えば、湿潤状態での被覆の厚さは約10マイクロメートル~約200マイクロメートルであってもよい。例えば、湿潤被覆の厚さは約20マイクロメートル~約100マイクロメートルであってもよい。一部の好ましい実施形態において、塗布された湿潤被覆の厚さは、約40マイクロメートル~約60マイクロメートルである。
【0018】
被覆組成物は、プラグラップの外表面全体、またはプラグラップの外表面の一つ以上の部分に塗布されてもよい。例えば、被覆組成物は一本以上の細片として塗布されてもよい。一本以上の細片の幅は約5ミリメートル以上であることが好ましい。細片はプラグラップの周りに配置されてもよく、プラグラップの長さに沿って配置されてもよく、または任意の他の適切な方法でプラグラップ上に配置されてもよい。
【0019】
被覆組成物は任意の適切な方法で塗布されてもよい。例えば、被覆組成物は、プラグラップ上にスプレーされてもよく、プラグラップ上に印刷されてもよく、プラグラップ上に刷毛でまたはローラーで塗られてもよく、またはこれに類するものであってもよい。
【0020】
被覆はスプレーまたは印刷によって塗布されることが好ましい。被覆組成物はフィルター製造ライン上で塗布されることが好ましい。被覆組成物は、任意の適切な速度で塗布されてもよく、またフィルター製造機械の速さに依存してもよい。例えば、被覆組成物は、約20メートル/分~約500メートル/分の機械の速さで塗布されてもよい。組成物は約5グラム/分~約250グラム/分の範囲で塗布されてもよい。
【0021】
一部の好ましい実施形態において、被覆組成物はポリビニルアルコールの溶液もしくは分散体を含む、またはポリビニルアルコールの溶液もしくは分散体から本質的に成る、またはポリビニルアルコールの溶液もしくは分散体から成る。被覆組成物は、ポリビニルアルコール溶液の粘度および温度に依存して、約5~約50重量パーセントポリビニルアルコールを含むことが好ましく、10~40重量パーセントのポリビニルアルコールを含むことがより好ましく、15~25重量パーセントのポリビニルアルコールを含むことがなおより好ましい。任意の適切な溶剤または液体担体が採用されてもよい。適切な溶剤および液体担体の例としては、任意の極性溶剤、例えば水、エタノール、または水とエタノールの組み合わせが挙げられる。
【0022】
ポリビニルアルコールは任意の適切な分子量を有してもよい。例えば、ポリビニルアルコールの分子量は、約40グラム/モル~約150 000グラム/モルであってもよく、約100 000グラム/モル~約125 000g/モルであることが好ましい。
【0023】
ポリビニルアルコールは加水分解されていてもよく、または加水分解されていなくてもよい。ポリビニルアルコールは加水分解されていないことが好ましい。被覆組成物は、ポリビニルアルコールホモポリマー溶液もしくは分散体を含んでもよく、またはポリビニルアルコールホモポリマー溶液もしくは分散体から本質的に成っていてもよく、またはポリビニルアルコールホモポリマー溶液もしくは分散体から成っていてもよい。
【0024】
被覆組成物は、任意の適切な固形分を有するポリビニルアルコールを含んでもよい。例えば、ポリビニルアルコールの固形分は約10重量パーセント~約70重量パーセントであってもよく、約5~約50重量パーセントのポリビニルアルコール固形分であることが好ましい。一部の好ましい実施形態において、被覆組成物は10~40重量パーセントのポリビニルアルコール固形分を含み、ポリビニルアルコール組成物の粘度および温度に依存して約15~約25重量パーセントであることが好ましい。固形分は炉の揮発分を測定することによって決定されてもよい。
【0025】
被覆組成物は、例えばプラグラップ上に固くなった被覆を生成するように任意の適切な方法で、溶剤を除去するために乾燥されてもよい。被覆組成物は追加的な加熱を使用することなく周囲条件下で乾燥または硬化されることが好ましい。別の方法として、被覆を乾燥するために追加的な加熱を使用してもよい。気流条件または真空条件が随意に採用されてもよい。
【0026】
乾燥した被覆は任意の適切な厚さを有してもよい。例えば、乾燥した被覆の厚さは約1マイクロメートル~約100マイクロメートルであってもよい。例えば、被覆の厚さは約10マイクロメートル~約50マイクロメートルであってもよい。一部の好ましい実施形態において、乾燥した被覆の厚さは、約20マイクロメートル~約40マイクロメートルである。
【0027】
一部の好ましい実施形態において、被覆はポリビニルアルコールを含む、またはポリビニルアルコールから本質的に成る、またはポリビニルアルコールから成る。ポリビニルアルコールは任意の適切な分子量を有してもよい。例えば、ポリビニルアルコールの分子量は、約40グラム/モル~約150 000グラム/モルであってもよく、約100 000グラム/モル~約125 000g/モルであることが好ましい。
【0028】
任意の適切なプラグラップは、硬度を高める被覆で被覆されてもよい。プラグラップは、紙プラグラップを含む、または紙プラグラップから本質的に成る、または紙プラグラップから成ることが好ましい。
【0029】
プラグラップは任意の適切な坪量を有してもよい。プラグラップの坪量は、1平方メートル当たり約20グラム~1平方メートル当たり約120グラムであることが好ましい。プラグラップの坪量は、1平方メートル当たり約25グラム~1平方メートル当たり約100グラムであることがより好ましく、1平方メートル当たり約40グラム~1平方メートル当たり約80グラムであることがなおより好ましい。一部の好ましい実施例において、プラグラップの坪量は、1平方メートル当たり約80グラムである。
【0030】
プラグラップは任意の適切な厚さを有してもよい。適切なプラグラップ紙の厚さは、約25マイクロメートル~約200マイクロメートルであってもよく、約50マイクロメートル~約150マイクロメートルであることが好ましい。一部の好ましい実施形態において、プラグラップの厚さは約75マイクロメートル~約125マイクロメートルである。
【0031】
プラグラップは被覆組成物の塗布前に、任意の適切な空隙率を有してもよく、または無孔であってさえもよい。例えば、プラグラップの空隙率は比較的高くてもよく、例えば約1,000コレスタ単位より大きい、または約5,000コレスタ単位より大きくてもよい。加えて、または別の方法として、プラグラップの空隙率は約10,000コレスタ単位未満であってもよい。
【0032】
プラグラップは、任意の適切なフィルター材料の周りに巻かれてもよい。適切なフィルター材料の例としては、セルロースエステル(酢酸セルロースなど)、ポリ乳酸(PLA)、セルロース系材料、ポリプロピレン、綿、亜麻、麻、または任意の分解性濾過媒体、または任意の二つ以上のフィルター材料の組み合わせまたはブレンドが挙げられる。好ましい実施形態において、フィルター材料はポリ乳酸、セルロースエステル、およびこれらのブレンドなどの高分子フィルター材料を含む。フィルター材料はセルロースエステルを含むことが好ましい。フィルター材料を形成するために使用できるセルロースエステルの例としては、置換度が異なる酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートのほか、これらの混合エステルが挙げられる。こうした混合エステルの例としては、酢酸セルロースプロピオネート、酢酸セルロースブチレート、酢酸セルロースプロピオネートブチレートが挙げられる。フィルター材料は酢酸セルロースを含むことが好ましい。
【0033】
フィルター材料は繊維を含むことが好ましい。フィルター材料は繊維状の高分子フィルター材料を含むことが好ましい。好ましい実施形態において、フィルター材料は酢酸セルロース繊維またはポリ乳酸繊維を含む。好ましい実施形態において、フィルター材料はトウバンドの形態の繊維または繊維の束を含む。
【0034】
フィルターは一つ以上の随意の結合剤を含んでもよい。結合剤を含むフィルターは、高分子繊維を含むことが好ましい。結合剤は高分子繊維を共に結合させることができる。結合剤は(含まれる場合)、可塑剤であることが好ましい。本明細書で使用される「可塑剤」は、高分子繊維に適用された時に繊維を共に溶剤接着する溶剤である。可塑剤の例としては、トリアセチン(グリセロールトリアセタートとしても知られる)、ジエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジアセタート、トリプロピオン、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリエチル、およびこれらの一つ以上の混合物が挙げられる。一つ以上の可塑剤は、例えばポリエチレングリコールと混合され、高分子繊維と接触して、繊維をまとめて溶剤接着してもよい。繊維は任意の適切な方法で結合剤と接触してもよい。結合剤を含む組成物が、高分子繊維上にスプレーされることが好ましい。
【0035】
本開示の目的のために、フィルターは、フィルター材料と、フィルター材料を囲むプラグラップとを含む。フィルターは、活性炭、風味剤(化合物、フレーバースレッド、ビーズ、カプセル、またはこれに類するものの形態であってもよい)、または任意のその他の適切な材料などの追加的な材料を含んでもよい。追加的な材料は、フィルター材料の中へと組み込まれてもよく、または例えばプラグ-スペース-プラグ構成で、フィルター材料のプラグの間の空洞の中に配置されてもよい。こうした構成において、本明細書に記載のプラグラップは、高められた構造的硬度を空洞の外側に追加することによって、特に都合の良いものになる場合がある。
【0036】
本発明のフィルターは任意の適切な寸法を有してもよい。典型的には、フィルターは円筒状の形状である。フィルターの直径は約5mm~約10mmの範囲内であることが好ましい。フィルターの長さは約50~約150mmの範囲内であることが好ましい。フィルターの直径は、フィルターが組み込まれる喫煙物品の直径と同一または実質的に同一であることが好ましい。
【0037】
本発明のフィルターは、任意の適切な方法で任意の適切な喫煙物品の中へと組み込まれてもよい。フィルターは、喫煙可能材料の下流にある喫煙物品の中へと組み込まれることが好ましい。「下流」という用語は、主流煙が喫煙可能材料からユーザーの口へと引き出される際の主流煙の方向に関して記述された喫煙物品の複数の要素の相対的な位置を指す。
【0038】
「喫煙物品」という用語は、紙巻たばこ、葉巻たばこ、シガリロ、および喫煙可能材料(たばこなど)が点火され、かつ燃焼されて煙を生成するその他の物品を含む。「喫煙物品」という用語はまた、喫煙用組成物を直接的もしくは間接的に加熱する喫煙物品、または気流もしくは化学反応を使用して、熱源を用いてもしくは熱源を用いずに、喫煙可能材料からニコチンもしくはその他の材料を送達する喫煙物品など(しかしこれらに限定されない)、喫煙可能材料が燃焼しない物品も含む。
【0039】
本明細書で使用される「煙」という用語は、喫煙物品によって生成されるエアロゾルを記述するために使用される。喫煙物品によって生成されるエアロゾルは、例えば紙巻たばこなどの可燃性の喫煙物品によって生成される煙、または加熱式喫煙物品もしくは非加熱式喫煙物品などの不燃性の喫煙物品によって生成されるエアロゾルでもよい。
【0040】
ここで本発明の一部の態様が図示されている図面を参照する。図面に描かれていないその他の態様は、本発明の範囲および趣旨に収まることが理解されよう。概略図は必ずしも実寸に比例していない。図内で使用されている類似の番号は、類似の構成要素、工程、およびこれに類するものを指す。しかし当然のことながら、所与の図内で一つの構成要素を指すために一つの番号を使用することは、別の図内で同一の番号が付けられた構成要素を制限することを意図するものではない。加えて、異なる図内で構成要素を指すための異なる番号の使用は、異なる番号の付いた構成要素を他の番号の付いた構成要素と同一または類似のものとすることはできないと示すことを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、硬度が高められたフィルターを有する喫煙物品の製造方法の実施形態の流れ図である。
図2図2は、被覆されたプラグラップを有するフィルターの実施形態の概略断面図である。
図3図3は、被覆されたプラグラップ付きのフィルターを有する部分的に広げられた紙巻たばこの実施形態の概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで図1を参照すると、硬度が高められたフィルターを有する喫煙物品の製造方法の実施形態が描かれている。方法は、フィルターを形成するためにプラグラップをフィルター材料の周囲に巻くこと(100)を含む。フィルター材料は、従来のフィルター形成機器および製造ライン上で形成されてもよい。例えば、フィルター材料は、標準的な機器を使用して、酢酸セルローストウから形成されてもよい。プラグラップは形成されると、フィルター材料の周囲に巻かれて、フィルターを形成してもよい。複数のフィルターユニットから成るフィルター前駆体が形成されてもよく、その後、適切な長さに切断されてフィルターを形成してもよい。フィルターが形成されると、プラグラップは硬度を高める組成物で被覆され(110)、乾燥して、硬度(好ましくはフィルターの半径方向の硬度および長軸方向の硬度)を高める被覆が形成される。プラグラップは製造ライン上で高速で被覆されることが好ましい。被覆されたプラグラップを有するフィルターは次いで、当業界で一般的に周知の方法で喫煙物品(120)の中へと組み込まれる。
【0043】
ここで図2を参照すると、フィルター30の実施形態の概略的な断面図が示されている。フィルター30は、コアを形成するフィルター材料32と、フィルター材料32を囲むプラグラップ62とを含む。プラグラップ62の外表面(フィルター材料から離れる方を向く表面)は、硬度を高める被覆65で被覆されている。
【0044】
ここで図3を参照すると、部分的に広げられた喫煙物品10(この場合では、紙巻たばこ)の実施形態の概略的な斜視図が示されている。喫煙物品10は、単に物品の代表的な構成要素を図示するために部分的に広げられたものとして描かれている。喫煙物品10は、たばこロッドなどの喫煙可能材料20のロッドと、喫煙可能材料20の下流にあるフィルター30とを含む。フィルター30およびロッド20は、喫煙物品10の長軸方向の軸と同軸で整列し、この軸は線A~Aによって描かれる。描かれている喫煙物品10は、被覆されたプラグラップ60、シガレットペーパー40、およびチッピングペーパー50を含む。シガレットペーパー40はロッド20の少なくとも一部分を囲む。チッピングペーパー50またはその他の適切なラッパーは、当業界で一般的に周知のように、被覆されたプラグラップ60およびシガレットペーパー40の一部分を囲む。フィルター30は、被覆されたプラグラップ60と、フィルター材料32とを含む。プラグラップは、喫煙物品10の長軸方向軸A~Aに面する内表面62を含み、これはフィルター材料32と接触してもよい。被覆されたプラグラップは、喫煙物品10の長軸方向軸A~Aに背いて面する反対向きの外表面(図3に図示せず)を含む。硬度を高める被覆(図3に図示せず)はプラグラップ60の外表面上である(例えば、図2を参照のこと)。
【0045】
上述の例示的な実施形態は限定するものではない。上述の例示的な実施形態と一貫性のあるその他の実施形態は、当業者には明らかであろう。
本明細書で使用されるすべての科学的および技術的な用語は、別途指定のない限り、当業界で一般に使用される意味を持つ。本明細書で提供した定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供されている。
【0046】
本明細書で使用される単数形(「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」)は、複数形の対象を有する実施形態を含蓄するが、その内容によって明らかに別途定められている場合はその限りではない。
【0047】
本明細書で使用される「または」は一般的に、「および/または」を含む意味で使用されるが、その内容によって明らかに別途定められている場合はその限りではない。「および/または」という用語は、列挙された要素の一つまたはすべて、または列挙された要素のうちの任意の二つ以上の組み合わせを意味する。
【0048】
本明細書で使用される「有する、持つ(have)」、「有している、持っている(having)」、「含む(include)」、「含まれる(including)」、「備える(comprise)」、「備える(comprising)」、またはこれに類するものは制約のない意味で使用され、一般的に「含むが、これに限定されない」を意味する。「から本質的に成る」、「から成る」、およびこれに類する用語は、「含む」およびこれに類するものに包摂されることが理解されるであろう。
【0049】
「好ましい」および「好ましくは」という語は、ある特定の状況下で、ある特定のメリットをもたらしうる本発明の実施形態を指す。ただし、同一またはその他の状況下で、その他の実施形態もまた好ましいものでありうる。その上、一つ以上の好ましい実施形態の列挙は、その他の実施形態が有用ではないことを暗に意味するものではなく、請求の範囲を含む本開示の範囲からその他の実施形態を除外するものではない。
【0050】
ひいては、フィルター硬度を高めるための被覆されたプラグラップ用の方法、システム、装置、組立品、および物品が記述されている。本発明の様々な修正および変形が、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記述してきたが、当然のことながら、本発明は特許請求の通り、こうした特定の実施形態に不当に限定されるべきではない。実際に、機械技術、電子技術およびエアロゾル発生物品製造または関連分野の当業者にとって明らかである、本発明を実行するための記述された方法の様々な修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内に収まるものであることが意図される。
図1
図2
図3