IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッドの特許一覧

特許7077247スマートポリマーを用いた埋め込み型生物医学プローブにおける局所電場制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】スマートポリマーを用いた埋め込み型生物医学プローブにおける局所電場制御
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20220523BHJP
   A61N 2/04 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
A61N1/05
A61N2/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019016977
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2019150565
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】15/908,211
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン・チャガラジャン
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0254146(US,A1)
【文献】特表2013-512062(JP,A)
【文献】特開2012-97050(JP,A)
【文献】特開2007-11011(JP,A)
【文献】特開2015-72427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 - 1/44
A61N 5/06 - 5/08
A61N 2/02 - 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁場を生成するための埋め込み型生物医学プローブであって、
基板と;
前記基板の上に位置付けられた1つ以上の金属コイルであって、少なくとも1つの金属コイルは交流電流(AC)電源に結合し、前記1つ以上の金属コイルは、前記埋め込み型生物医学プローブの周りに電磁場を生成するように構成される、金属コイルと;
前記1つ以上の金属コイルの上に位置付けられたスマートポリマー層であって、光刺激に応答して磁化率を変化させ、光刺激を適用することによって前記埋め込み型生物医学プローブの周りの電磁場の調整を容易にする少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含むスマートポリマー層と、を備える、埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項2】
前記基板がSiを含み、前記基板の厚さが100~300nmの間である、請求項1に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項3】
前記1つ以上の金属コイルが同一平面上にあり、金属コイルが前記基板の縁の周りに位置付けられている、請求項1に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項4】
前記基板と前記1つ以上の金属コイルとの間に位置付けられた第1の絶縁層をさらに備える、請求項1に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項5】
前記第1の絶縁層がSiO2を含む、請求項4に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項6】
前記第1の絶縁層の厚さが100~200nmの間である、請求項4に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項7】
前記1つ以上の金属コイルの上に位置付けられた第2の絶縁層をさらに備える、請求項1に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項8】
前記第2の絶縁層がSiNOxを含む、請求項7に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項9】
前記第2の絶縁層が100nm~1ミクロンの間の厚さを有する、請求項7に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項10】
前記スマートポリマー層が、前記1つ以上の金属コイルと前記第2の絶縁層との間に位置付けられる、請求項7に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項11】
前記スマートポリマー層が、前記第2の絶縁層の上に位置付けられる、請求項7に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの金属コイルがAu層を備える、請求項1に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項13】
前記Au層が、1~10ミクロンの間の厚さおよび5~30ミクロンの間の幅を有する、請求項12に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの金属コイルが、
前記Au層の上に位置付けられ、1~10nmの間の厚さを有するTi-W層と、
前記基板と前記Au層との間に位置付けられ、10~50nmの間の厚さを有するMo-Cr層とをさらに備える、請求項12に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項15】
前記スマートポリマー層が、
異方性Fe23ナノフィラーを有する液晶ポリマー;
Cu2[Mo(CN)8]・8H2O(CuMo);
RbMn[Fe(CN)6](RbMnFe);
Co3[W(CN)82(ピリミジン)4・6H2O(CoW);
Fe2[Nb(CN)8].(4-ピリジンアルドキシム)8.2H2O(FeNb);
スピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)34が埋設された液晶ポリマー;および
スピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の埋め込み型生物医学プローブ。
【請求項16】
生物医学システムであって、
電磁場を生成するための埋め込み型プローブであって、
基板と;
前記基板の上に位置付けられた1つ以上の金属コイルであって、
少なくとも1つの金属コイルは交流電流(AC)電源に結合し、前記1つ以上の金属コイルは、前記埋め込み型生物医学プローブの周りに電磁場を生成するように構成される、金属コイルと;
前記金属コイルの上に位置付けられたスマートポリマー層であって、
光刺激に応答して磁化率を変化させ、光刺激を適用することによって前記埋め込み型生物医学プローブの周りの電磁場の調整を容易にする少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含むスマートポリマー層と、を備える、埋め込み型プローブと;
前記埋め込み型プローブに電気的に結合されたプローブコネクタであって、複数の金属フィンガを備えるプローブコネクタと;
互いに電気的に結合されたケーブルコネクタおよび入出力ポートを備えるプリント回路板であって、前記ケーブルコネクタは、前記プローブコネクタの金属フィンガと可撓性ケーブルを介して電気的に結合され、前記入出力ポートは、電力を供給するための外部電源制御ユニットに電気的に結合される、プリント回路板と、を備えるシステム。
【請求項17】
前記スマートポリマー層が、
異方性Fe23ナノフィラーを有する液晶ポリマー;
Cu2[Mo(CN)8].8H2O(CuMo);
RbMn[Fe(CN)6](RbMnFe);
Co3[W(CN)82.(ピリミジン)4.6H2O(CoW);
Fe2[Nb(CN)8].(4-ピリジンアルドキシム)8.2H2O(FeNb);
スピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)34が埋設された液晶ポリマー;および
スピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項16に記載の生物医学システム。
【請求項18】
埋め込み型生物医学プローブを製造するための方法であって、
Si基板を準備することと、
前記Si基板上に位置付けられた1つ以上の金属コイルを形成することであって、少なくとも1つの金属コイルは交流電流(AC)電源に結合するように構成され、前記1つ以上の金属コイルは、前記埋め込み型生物医学プローブの周りに電磁場を生成するように構成され、形成することと、
前記1つ以上金属コイルの上にスマートポリマー層を堆積させることであって、前記スマートポリマー層は、光に応答して磁化率を変化させ、光刺激を適用することによって前記埋め込み型生物医学プローブの周りの電磁場の調整を容易にする少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含む、堆積させることと、を含む方法。
【請求項19】
前記スマートポリマー層が、
異方性Fe23ナノフィラーを有する液晶ポリマー;
Cu2[Mo(CN)8].8H2O(CuMo);
RbMn[Fe(CN)6](RbMnFe);
Co3[W(CN)82.(ピリミジン)4.6H2O(CoW);
Fe2[Nb(CN)8].(4-ピリジンアルドキシム)8.2H2O(FeNb);
スピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)34が埋設された液晶ポリマー;および
スピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの金属コイルが、1~10ミクロンの間の厚さおよび5~30ミクロンの間の幅を有するAu層を備える、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、埋め込み型生物医学プローブに関する。より具体的には、本開示は、局所電磁場制御を可能にする埋め込み型生物医学プローブに関する。
【0002】
近年、神経学的障害、心理学的障害、聴覚障害または視覚障害等を含む様々な病気を治療するための埋め込み型生物医学デバイスおよびシステムが開発されている。例えば、蝸牛インプラントは、聴覚障害者の聴覚を取り戻すために使用されており、また網膜視覚人工装具は、視覚障害者の視覚を取り戻すために使用されている。生物医学デバイスまたはシステムを患者の体内に埋め込むためには、しばしば外科手術が必要とされる。
【0003】
多くの埋め込み型デバイスは、局所的に生物学的物質を刺激または抑制することができる電磁場を生成することによって、その治療機能を達成する。一般に、これらの埋め込み型デバイスは、体内および/または神経束内の非常に特異的な小さな体積を標的とする場合により効果的となり得る。これは、効果的な治療結果を達成するために、標的領域の近くにデバイスを挿入することによって達成することができる。例えば、パーキンソン病の症状を緩和するために、電気パルスを脳に送達するために電極を患者の脳に埋め込むことができる。
【0004】
埋め込み型プローブ等の従来の埋め込み型生物医学デバイスは、典型的には、設計および製造時に所定の局所電磁場プロファイルを有する。つまり、患者の体内の変化に反応することができない。さらに、埋め込みプロセスの侵襲的性質により、埋め込まれたデバイスを交換することが困難である。
【0005】
一実施形態は、埋め込み型生物医学プローブを提供することができる。プローブは、基板と、基板の上に位置付けられた1つ以上の金属コイルとを含んでもよい。各金属コイルは、金属コイルを流れる交流電流に応答して電磁場を生成するように構成される。プローブは、金属コイルの上に位置付けられたスマートポリマー層をさらに含んでもよい。スマートポリマー層は、光刺激に応答して磁化率を変化させる少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含んでもよい。
【0006】
この実施形態の変形例では、基板はSiを含んでもよく、基板の厚さは100~300nmであってもよい。
【0007】
この実施形態の変形例では、金属コイルは同一平面上にあってもよく、金属コイルは基板の縁の周りに位置付けられてもよい。
【0008】
この実施形態の変形例では、プローブは、基板と金属コイルとの間に位置付けられた第1の絶縁層をさらに備えてもよい。
【0009】
さらなる変形例では、第1の絶縁層は、SiOを含む。
【0010】
さらなる変形例では、第1の絶縁層の厚さは、100~200nmの間である。
【0011】
この実施形態の変形例では、プローブは、金属コイルの上に位置付けられた第2の絶縁層をさらに備えてもよい。
【0012】
さらなる変形例では、第2の絶縁層は、SiNOを含んでもよい。
【0013】
さらなる変形例では、第2の絶縁層は、100nm~1ミクロンの間の厚さを有してもよい。
【0014】
さらなる変形例では、スマートポリマー層は、金属コイルと第2の絶縁層との間に位置付けられてもよい。
【0015】
さらなる変形例では、スマートポリマー層は、第2の絶縁層の上に位置付けられる。
【0016】
この実施形態の変形例では、各金属コイルは、Au層を備える。
【0017】
さらなる変形例では、Au層は、1~10ミクロンの間の厚さおよび5~30ミクロンの間の幅を有してもよい。
【0018】
さらなる変形例では、各金属コイルは、Au層の上に位置付けられたTi-W層と、基板とAu層との間に位置付けられたMo-Cr層とさらに含んでもよい。Ti-W層は、1~10nmの間の厚さを有してもよく、Mo-Cr層は、10~50nmの厚さを有してもよい。
【0019】
この実施形態の変形例では、スマートポリマー層は、異方性Feナノフィラーを有する液晶ポリマー、Cu[Mo(CN)].8HO(CuMo)、RbMn[Fe(CN)](RbMnFe)、Co[W(CN).(ピリミジン).6HO(CoW)、Fe[Nb(CN)].(4-ピリジンアルドキシム).2HO(FeNb)、スピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)が埋設された液晶ポリマー、および、スピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーの1つ以上を含んでもよい。
【0020】
一実施形態は、生物医学システムを提供し得る。このシステムは、基板と、基板の上に位置付けられた1つ以上の金属コイルと、金属コイルの上に位置付けられたスマートポリマー層とを含んでもよい埋め込み型プローブを含んでもよい。各金属コイルは、金属コイルを流れる交流電流に応答して電磁場を生成するように構成される。スマートポリマー層は、光に応答して磁化率を変化させる少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含んでもよい。システムは、埋め込み型プローブおよびプリント回路板に電気的に結合されたプローブコネクタをさらに含んでもよい。プローブコネクタは、複数の金属フィンガを含んでもよい。プリント回路基板は、互いに電気的に結合されたケーブルコネクタおよび入出力ポートを含んでもよい。ケーブルコネクタは、可撓性ケーブルを介してプローブコネクタの金属フィンガに電気的に結合されてもよく、入出力ポートは、外部電力制御ユニットに電気的に結合されてもよい。
【0021】
本特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を有する本特許または特許出願公開のコピーは、要求に応じて、および必要な手数料の支払いに応じて特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】一実施形態による例示的な埋め込み型生物医学プローブを示す図である。
図1B】一実施形態による、コイルの複数のループを有する例示的な生物医学プローブを示す図である。
図1C】一実施形態による、センサを有する例示的な生物医学プローブを示す図である。
図2A】一実施形態による、光あり、および光なしでの埋め込み型プローブの周囲の電場勾配の模擬分布を示す図である。
図2B】一実施形態による、プローブの異なる部分に光が照射された場合の埋め込み型プローブ周辺の電場勾配の模擬分布を示す図である。
図3A】一実施形態によるいくつかの製造された埋め込み型プローブの写真を示す図である。
図3B】一実施形態によるいくつかのプラグアンドプレイボードの写真を示す図である。
図4】一実施形態による埋め込み型電磁プローブを有する例示的な生物医学システムを示す図である。
図5A】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5B】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5C】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5D】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5E】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5F】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5G】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5H】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5I】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5J】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5K】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図5L】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す図である。
図6A】一実施形態による例示的な埋め込み型生物医学プローブの断面図である。
図6B】一実施形態による例示的な埋め込み型プローブの部分上面図である。
図7】一実施形態による埋め込み型生物医学プローブによって生成される電磁場を制御する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【0023】
図において、類似の参照番号は、同様の図の要素を指す。
【0024】
概要
本明細書において説明される実施形態は、埋め込み型生物医学プローブによって生成される電磁場の動的制御を可能にする技術的問題を解決する。より具体的には、生物医学プローブは、生体適合性スマートポリマーを組み込むことができ、その磁化率は、外部刺激(例えば光)に応答して変化し得る。いくつかの実施形態では、生物医学プローブは、Si基板上に製造された金属コイルを含んでもよい。さらに、スマートポリマー(例えば、強磁性ナノ粒子、スピネルフェライト、スピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設されたポリマー)の層が金属コイルの上に堆積されてもよい。体組織を貫通する外部から照射される光は、スマートポリマーの磁化率、ひいては局所磁化率を変化させ得る。その結果、プローブ周囲の励起電磁石場プロファイルは、プローブの異なる位置で光を照らすことによって変化され得る。
【0025】
埋め込み型プローブ
埋め込み型電磁プローブは、生物学的物質の特性を改変するか、または生物学的物質を刺激するために、生物学的物質(例えば脳)内の電磁場を励起することができる埋め込み型生物医学デバイスの1つのタイプである。より具体的には、電磁プローブは、交流電流がコイルを流れるときに電磁場を発生させることができる金属コイルを含んでもよい。脳内に誘導される電場は脳活動に影響し得ることが示されている。
【0026】
図1Aは、一実施形態による例示的な埋め込み型プローブを示す。埋め込み型プローブ100は、プローブ本体102およびコネクタ104を含んでもよい。動作時には、プローブ本体100を脳等の人間の体内に埋め込むことができ、コネクタ104を本体の外部に残してプローブ本体102と外部回路部品との間の結合を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、コネクタ104は、外部回路部品と結合するための複数の金属フィンガ(例えばフィンガ106)、およびプローブ本体102上の金属コイル(複数可)と結合するための金属トレース(例えば金属トレース108)を含んでもよい。
【0027】
その侵襲的性質のために、プローブ本体102のサイズ(特に断面)は小さく保たれる必要がある。いくつかの実施形態では、プローブ本体102の断面は、数百ミクロン×数百ミクロンであってもよい。一実施形態では、プローブ本体102の厚さは、約250ミクロンであってもよく、プローブ本体102の幅は、約100~150ミクロンであってもよい。プローブ本体102の長さは、用途または所望の浸透深さに基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、プローブ本体102は、数ミリメートル(例えば7mm)の長さであってもよい。一方、コネクタ104のサイズは、外科医による容易な取り扱いを可能にするのに十分に大きくする必要がある。いくつかの実施形態では、コネクタ104の寸法は、数ミリメートル×数ミリメートル、例えば3mm×5mmであってもよい。いくつかの実施形態では、プローブ本体102およびコネクタ104は、同じ基板上に製造されてもよい。代替として、それらは別々に製造され、様々なウエハボンディング技術を用いて一緒にボンディングされてもよい。
【0028】
図1Aはまた、プローブ本体102の一部の拡大図を示す。破線の円に示すように、プローブ本体は、基板領域110およびコイル領域112を含んでもよい。いくつかの実施形態では、基板領域110は、金属で被覆されていないプローブ本体の部分を含んでもよく、コイル領域112は、コイル状構造を形成する金属または導電性材料で被覆されたプローブ本体の部分を含んでもよい。コイルは、同一平面コイルであってもよい。図1Aに示される例では、コイル領域112は、単一ループコイルを形成するプローブ本体102の上面の縁を被覆する金属ストリップを含んでもよい。そのような金属ストリップは、プローブ本体102の縁の周りに金属層を堆積させることによって形成することができる。コイル領域(または金属ストリップ)112は、コネクタ104上に位置する金属トレース(例えば金属トレース108)に結合され、したがってコイル領域112への電流注入を容易にし得ることに留意されたい。例えば、単一ループコイルのいずれかの端部がコネクタ104上の金属トレースに結合されてもよく、2つの金属トレースがAC電流源の2つの出力に結合されてもよく、したがってその結果AC電流が単一ループコイルを通して流れ、プローブ本体102の周囲の領域に電磁場(EM)を発生させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、金属ストリップ112の幅は、1~30ミクロンの間、好ましくは約10ミクロンであってもよく、金属ストリップ112の厚さは、1~30ミクロンの間、好ましくは1~10ミクロンの間(例えば2ミクロン)であってもよい。金属ストリップ112は、典型的には、その生体適合性、耐腐食性、および抗炎症特性のために金を含んでもよい。いくつかの実施形態では、金ストリップは、より良好な生体適合性およびより大きな強度を提供するために、モリブデン-クロム(Mo-Cr)合金およびチタン-タングステン(Ti-W)合金等の他の種類の金属材料でコーティングされてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、埋め込み型プローブの周囲のEM場分布の埋め込み後の変調を可能にするために、コイル領域(または金属ストリップ)112は、光励起に応答することができる生体適合性のスマートポリマーの層で完全にまたは部分的にコーティングされてもよい。より具体的には、スマートポリマーは、光刺激によって磁気特性が制御され得る少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含んでもよい。スマートポリマーの例としては、これらに限定されないが、異方性Feナノフィラーを有する液晶ポリマー、Cu[Mo(CN)].8HO(CuMo)、RbMn[Fe(CN)](RbMnFe)、Co[W(CN).(ピリミジン).6HO(CoW)、Fe[Nb(CN)].(4-ピリジンアルドキシム).2HO(FeNb)、およびスピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)またはスピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーを挙げることができる。その光磁気特性のために、スマートポリマーの磁化率は、特定の位置に光を照射することによって局所的に変化させることができる。適切な条件下で、プローブの透過率は40%まで変化させることができる。結果として、特定の位置で光を照らすことによって、コイル領域112を流れる電流により励起されたEM場を変調することができる。
【0031】
図1Aに示される単一ループ構造に加えて、他の種類のコイル(例えば、複数ループ同心コイルまたは異なる幾何学的形状を有する金属ストリップ)がプローブ本体上に形成されてもよい。EM場が励起され得る限り、本発明はコイルの厳密な形状によって制限されない。図1Bは、一実施形態による、コイルの複数のループを有する生物医学プローブを示す。図1Bにおいて、プローブ120は、少なくとも2つの同心ループ、ループ122およびループ124を含んでもよい。これらのループを流れるAC電流は、プローブ120の周囲にEM場を生成し得る。より多くのループまたは異なる幾何学的形状を有する金属層を有することも可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、EM場を励起するための金属コイル/ストリップの他に、埋め込み型プローブはまた、ニューロンによって生成された電気/磁気信号を測定し、そのようにしてプローブの制御にフィードバックを提供することができる複数のセンサを含むこともできる。図1Cは、一実施形態による、センサを有する生物医学的プローブを示す。埋め込み型プローブ130は、金属ストリップ/コイル132を含むだけでなく、センサ134等の複数のセンサも含む。これらのセンサは、埋め込み型プローブ130の基板領域(すなわち、金属コイル132によって被覆されていない領域)に位置してもよい。そのようなシナリオにおいて、センサおよびコイルは、交互にオンにされてもよい。代替として、これらのセンサは、埋め込み型プローブ130の背面に位置してもよく、センサおよびコイルが同時にオンにされてもよい。説明を簡単にするために、センサとプローブコネクタとの間の電気的接続は、図面には示されていない。そのような接続は、典型的には、金属トレースを介して達成することができる。
【0033】
図2Aは、一実施形態による、光あり、および光なしでの埋め込み型プローブの周囲の電場勾配の模擬分布を示す。図2Aでは、埋め込み型プローブ202は、図1に示される埋め込み型プローブ100と同様であってもよく、単一ループコイルを含んでもよい。プローブを囲む領域の電場(E場)勾配は、色分けされ得る。右端の図は、光がプローブに照射されないシナリオを示している。確認され得るように、プローブ先端はより強いE場勾配(黄色で示される)を示す。中央の図は、光がプローブ上の特定の場所に照射されるシナリオを示している。確認され得るように、E場勾配は、光が照射される場所(円で示される)で著しく高められている。
【0034】
コイルのループ数を増やすと、EM場の強度が増加し得る。さらに、光が異なるループ上を照射する場合、異なる場所でE勾配を励起することができる。図2Bは、一実施形態による、プローブの異なる部分に光が照射された場合の埋め込み型プローブ周辺の電場勾配の模擬分布を示す。図2Bに示される例では、プローブは、図1Bに示されるものと同様であるが図1Bに示すものよりも多くのループを有するスマートポリマーでコーティングされた、複数の同心同一平面コイルを含んでもよい。
【0035】
より具体的には、左側の図は、プローブ周辺の模擬E場勾配を示し、E場勾配は色分けされている。円は、光磁気活動の位置、すなわち局所的磁化率が光によって変化する場所を示す。いくつかの実施形態では、有限要素法(FEM)を使用してEM場を模擬している。図面から確認され得るように、光がプローブの右側(または端)からその長手方向軸に沿って移動すると、励起されたE場は光と共に移動する傾向がある。換言すれば、磁化率の局所的変化は、励起されたE場の変化をもたらす。
【0036】
図2Bの右側の図は、光の位置の関数としてプローブの長手方向軸に沿った模擬されたE場勾配をプロットしている。プローブの長手方向軸は、各図において破線で示されている。図2Bから確認され得るように、E場勾配のピークは、光と共にシフトする(ピーク212および214によって示されるように)。換言すれば、磁化率の不連続性により、E場勾配のピークが位置をシフトし得る。これにより、局所磁化率を変調することによって、局所EM場プロファイルを変調することが可能になる。光磁気効果に加えて、圧電性および形状記憶等のスマートポリマーの他の特性もまた、局所電場を変調するために使用され得る。
【0037】
ヒトの体内(例えばヒトの脳内)に埋め込まれた場合に埋め込み型プローブが機能するためには、埋め込み型プローブは、外部電力および制御回路に結合することが必要となり得る。移植されたプローブと外部電源および制御回路部品との間の結合を容易にするために、特別に設計されたコネクタ、ケーブル、およびプリント回路板(PCB)を使用することができる。図3Aは、一実施形態による、いくつかの製造された埋め込み型プローブの写真を示す。各埋め込み型プローブ(例えばプローブ302)は、そのコネクタを介してケーブルに取り付けることができる。例えば、プローブ302はケーブル304に取り付けられる。いくつかの実施形態では、ケーブルは、一緒に束ねられた複数のワイヤを含んでもよく、ワイヤボンディング技術を使用して、プローブのコネクタがケーブルの一端に取り付けられてもよい。ケーブルは、可撓性材料で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、各可撓性ケーブルは、埋め込み型プローブのプラグアンドプレイを可能にし得る、外部プラグアンドプレイ(PnP)板に結合するためのソケット型コネクタ(例えばゼロ挿入力(ZIF)コネクタ)を含んでもよい。例えば、PnP板は、可撓性ケーブルの剥ぎ取られていない端部を受け入れることができるZIFソケットを含んでもよい。
【0038】
図3Bは、一実施形態によるいくつかのプラグアンドプレイ板の写真を示す。各PnP板(例えばPnP板310)は、ケーブルコネクタ312、入力/出力(I/O)ポート314、およびプリント回路板(PCB)316を含んでもよい。ケーブルコネクタ312は、可撓性ケーブル上のコネクタに適合することができ、したがって、可撓性ケーブルとPnP板との間の結合を容易にし得る。いくつかの実施形態では、ケーブルコネクタ312は、ZIFソケットを含んでもよい。I/Oポート314は、PnP板310と外部制御および電力回路との間の結合を容易にし得る。プローブコネクタの用途または構成に応じて、プリント回路板316は、異なるパターンの金属トレースを含むことができる。例えば、プローブコネクタは、6つの金属フィンガを含んでもよく(例えば図1Aに示されるように)、これは、プローブに最大6つの接続を行うことができることを意味する。したがって、ケーブルコネクタは6本のリード線のみを有してもよく、I/Oポートは6本のピンを有することができる。いくつかの実施形態では、PnP板上のI/Oポートは、PnP板と外部電源および制御回路部品との間の容易なインターフェースを可能にするために、業界標準に準拠することができる。
【0039】
図4は、一実施形態による埋め込み型電磁プローブを有する例示的な生物医学システムを示す。生物医学システム400は、埋め込み型プローブ402、プローブコネクタ404、可撓性ケーブル406、ケーブルコネクタ408、PCB410、I/Oポート412、および電力および制御ユニット414を含んでもよい。より具体的には、電力および制御ユニット414は、電源416、発振器418、変調器420、センサデータプロセッサ422、およびマイクロコントローラ424を含んでもよい。
【0040】
埋め込み型プローブ402は、生物学的物質(例えばヒトの脳)に埋設されてもよいが、他の部品は、破線によって示されるように、生物学的物質の外部に留まる。埋め込み型プローブ402は、埋め込み型プローブ402と同じ基板上に製造することができるプローブコネクタ404を介して、可撓性ケーブル406の一端に結合することができる。可撓性ケーブル406の他端は、可撓性ケーブル406の予め剥がされた端部を受け入れるZIFソケットであってもよいケーブルコネクタ408に結合することができる(例えば挿入することができる)。ケーブルコネクタ408およびI/Oポート412の両方がPCB410上に位置してもよく、PCB410上の金属トレースをケーブルコネクタ408およびI/Oポート412に結合することができる。I/Oポート412は、電力および制御ユニット414とインターフェースすることができ、したがって、埋め込み型プローブ402と電力および制御ユニット414の様々な部品との間の結合を容易にし得る。
【0041】
より具体的には、電源416は、埋め込み型プローブ402に電力(例えば電流)を供給することができる。発振器418および変調器420は、共に出力電流を変調する。いくつかの実施形態では、電源416は、プローブ402に交流電流を供給することができる。電流の強度は、1~60mAの間、好ましくは5~30mAの間であってもよい。一実施形態では、電流強度は約10mAであってもよい。いくつかの実施形態では、交流電流の周波数は、1~5kHzの間、好ましくは2~4kHzの間であってもよい。一実施形態では、周波数は、約3kHzであってもよい。センサデータプロセッサ422は、埋め込み型プローブ402上に位置する1つ以上のセンサから受信したデータを処理することができる。マイクロコントローラ424は、電力制御ユニット414内の様々な部品の動作を制御する役割を果たすことができる。例えば、マイクロコントローラ424は、電源416および発振器418の設定を調整することによって、電流強度および周波数を調整することができる。いくつかの実施形態では、そのような調整は、センサデータプロセッサ422からの出力に基づいて行うことができる。換言すれば、マイクロコントローラ424は、センサデータに基づいて埋め込み型プローブ402の動作を動的に調整することができる。
【0042】
図4に示される例では、埋め込み型プローブに電力および制御を提供する回路が、生物学的物質の外部に位置していることに留意されたい。実際には、これらの回路のサイズを小さくし、それらをプローブと共に生物学的物質の内部に埋め込むことも可能である。
【0043】
埋め込み型プローブの製造
図5は、一実施形態による埋め込み型生物医学プローブを製造するための例示的なプロセスを示す。操作5Aにおいて、基板502が準備される。基板502は、約50mm(または2インチ)の直径および約250ミクロンの厚さを有する結晶性Siウエハを含んでもよい。結晶性Siウエハに加えて、多結晶シリコンウエハ等の他のタイプの基板も使用することができる。いくつかの実施形態では、Si基板502の準備は、酸素プラズマを用いてウエハ表面を洗浄することを含んでもよい。動作5Bでは、誘電体材料の薄い層(誘電体層504)をSi基板502の表面上に堆積させて、プローブの底部に絶縁を提供することができる。いくつかの実施形態では、誘電体層504はSiOの層を含んでもよく、誘電体層504の厚さは100~200nmの間、好ましくは約150nmであってもよい。いくつかの実施形態では、誘電体層504の堆積は、プラズマ強化CVD(PECVD)等の化学気相堆積(CVD)プロセスを含んでもよい。さらなる実施形態では、PECVD操作は、150~250℃の間の温度で行うことができる。
【0044】
動作5Cでは、1つ以上の金属層を誘電体層504上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、Mo-Cr合金(層506)、金(Au)の層(層508)、およびTi-W合金の層(層510)が誘電体層504。の表面上に逐次堆積されてもよい。さらなる実施形態では、Mo-Cr層506は、10~50nmの間(例えば20nm)の厚さを有してもよく、Ti-W層510は、1~10nmの間(例えば3nm)の厚さを有してもよく、金層508は、1~30ミクロンの間、好ましくは1~10ミクロンの間(例えば2ミクロン)の厚さを有してもよい。より厚い金層はより強いE場を生成することができるが、埋め込み型プローブを製造する際に材料費およびアスペクト比を考慮することが必要となり得ることに留意されたい。
【0045】
操作5Dにおいて、パターン化されたフォトレジスト層512を金属層510の上面上に堆積させることができる。パターン化されたフォトレジスト層512を形成することは、スピン、ベーキング、露光、およびフォトレジストの現像などのフォトリソグラフィ技術を含んでもよい。いくつかの実施形態では、マスクは、プローブ本体内のコイル領域ならびにプローブコネクタ内の金属トレースおよびフィンガ領域を含む、プローブ上の金属領域を画定し得る。
【0046】
操作5Eにおいて、パターン化されたフォトレジスト層をエッチングマスクとして使用して、それに従い1つ以上の金属層をエッチングし、コイル(複数可)、金属トレースおよび金属フィンガを含む所望の金属パターンを形成することができる。いくつかの実施形態では、異なる金属層をエッチングするために、異なるエッチング技術が使用されてもよい。例えば、Mo-Cr層506およびAu層508はウェットエッチングされ得るが、Ti-W層510はドライエッチングされ得る。一実施形態では、Mo-Cr層506は、KMG Electronic Chemicals(Fort Worth、Texas)によって製造されたCR44等のクロムエッチャントを用いてエッチングされてもよく、Au層508は、Transene Company, Inc.(Danvers、Massachusetts)によって製造されたTFA等の金エッチャントでエッチングされてもよい。一実施形態では、Ti-W層510は、誘導結合プラズマ(ICP)エッチング等のプラズマエッチング技術を使用してエッチングされてもよい。いくつかの実施形態では、パターン化された金属コイルは、1~30ミクロンの間、好ましくは3~30ミクロンの間(例えば10ミクロン)の幅を有してもよい。
【0047】
操作5Fにおいて、生体適合性絶縁層514を、構造全体の上面に堆積させ、誘電体層504ならびに金属層506、508、および510の露出した表面を被覆することができる。生体適合性絶縁層514は、プローブによって引き起こされる可能性のあるあらゆる負の影響から生物学的物質を保護することができる、優れた生体適合性を有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、生体適合性絶縁層514は、酸窒化ケイ素(SiON)を含んでもよく、生体適合性絶縁層514の厚さは、100nm~1ミクロンの間、好ましくは約500nmであってもよい。さらなる実施形態では、SiON層514を堆積させるために、PECVDプロセスが使用され得る。PECVDプロセスは、100~200℃の間、好ましくは約150℃の温度で行うことができる。
【0048】
操作5Gにおいて、ワックス層516を使用して、構造全体をハンドリングSiウエハ518上に取り付けることができる。ハンドリングSiウエハ518は、後のプロセスのためのウエハの取り扱いを容易にする。操作5Hにおいて、パターン化されたハードマスク層520が構造の上に形成され、その後の深堀反応性イオンエッチング(DRIE)操作を容易にする。いくつかの実施形態では、ハードマスク層520は、約200nmのAl層および約50nmのTi-W層を含んでもよい。パターン化されたハードマスク層520は、各埋め込み型プローブの境界を画定する。パターン化されたハードマスク層520内のウィンドウは、隣接するプローブ構造を分離するトレンチの位置に対応する。パターン化されたハードマスク層520の形成は、フォトリソグラフィ工程に続く金属リフトオフ工程を含んでもよい。代替として、パターン化されたハードマスク層520の形成は、ドライエッチング技術を使用してビアマスクおよびパターン化されたハードマスク層520を画定することを含んでもよい。
【0049】
操作5Iにおいて、ハードマスク層520をエッチングマスクとして使用して、Si基板502をエッチングするためにDRIE操作を行うことができる。いくつかの実施形態では、DRIE動作を実行するためにICPマシンが使用されてもよい。操作5Jにおいて、ハードマスク層520を除去することができる。いくつかの実施形態では、ドライエッチングプロセス(例えばICPエッチング)を用いてハードマスク層520が除去されてもよい。操作5Kにおいて、スマートポリマー層522をプローブ構造の上に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、スマートポリマー層522を堆積させるためにスピンコーティング技術が使用されてもよい。スマートポリマー層522は、少なくとも1種の光スイッチング磁性材料を含んでもよい。スマートポリマーの例としては、これらに限定されないが、異方性Feナノフィラーを有する液晶ポリマー、Cu[Mo(CN)].8HO(CuMo)、RbMn[Fe(CN)](RbMnFe)、Co[W(CN).(ピリミジン).6HO(CoW)、Fe[Nb(CN)].(4-ピリジンアルドキシム).2HO(FeNb)、およびスピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)またはスピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーを挙げることができる。スマートポリマー層522の厚さは、500nm~10ミクロンの間であってもよい。
【0050】
操作5Lにおいて、ハンドリングウエハ518を取り外すことができる。いくつかの実施形態では、ワックス層516を溶融させてハンドリングウエハ518をSi基板502から分離することができる。得られるプローブ構造は、Si基板502;誘電体層504;金属層506、508、および510;生体適合性絶縁層514;ならびにスマートポリマー層522を含むことができる。スマートポリマー層522もまた、優れた生体適合性を有するため、これは生物学的物質(例えばヒトの脳)に直接接触する、埋め込み型プローブの最上層であってもよいことに留意されたい。
【0051】
他の製造プロセスもまた可能である。いくつかの実施形態では、プローブ構造の境界を画定するDRIE操作後にスマートポリマー層をスピンコーティングする代わりに、スマートポリマー層を生体適合性絶縁層の堆積前に金属層上に堆積させることができる。このようにして、スマートポリマー層を生体適合性絶縁層と金属層との間に配置することができる。図6Aは、一実施形態による例示的な埋め込み型生物医学プローブの断面を示す。
【0052】
埋め込み型生物医学プローブ600は、Si基板602と、Si基板602の上に位置付けられた絶縁層604とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、絶縁層604は、SiOの薄い層(例えば150nm)を含んでもよい。パターン化された金属層のスタック(例えば、金属層606、608、および610)は、絶縁層604の上に形成することができる。金属層は、金属コイル(複数可)、接続経路、および金属フィンガの設計された位置に基づいてパターン化される。いくつかの実施形態では、金属層606は、Mo-Cr合金の薄層(例えば20nm)を含んでもよく、金属層608は、約2ミクロンの厚さを有するAu層を含んでもよく、金属層610は、Ti-Wの薄層(例えば3nm)を含んでもよい。さらなる実施形態では、金属層606、608、および610によって形成される金属コイルは、約10ミクロンの幅を有してもよい。
【0053】
スマートポリマー層612は、金属層606、608、および610の上に位置付けられ、それらを完全に被覆してもよい。スマートポリマー層612としては、これらに限定されないが、異方性Feナノフィラーを有する液晶ポリマー、Cu[Mo(CN)].8HO(CuMo)、RbMn[Fe(CN)](RbMnFe)、Co[W(CN).(ピリミジン).6HO(CoW)、Fe[Nb(CN)].(4-ピリジンアルドキシム).2HO(FeNb)、およびスピネルフェライト(Mn,Zn,Fe)またはスピロピラン保護FePtナノ粒子が埋設された液晶ポリマーを挙げることができる。スマートポリマー層612は、十分な光磁気効果を確実にするために十分厚くてもよい。スマートポリマー層612の厚さは、500nm~1ミクロンの間であってもよい。
【0054】
埋め込み型プローブ600はまた、スマートポリマー層612を被覆する生体適合性絶縁層614を含んでもよい。生体適合性絶縁層614は、外光をスマートポリマー層612上に照射させるために透明であってもよい。いくつかの実施形態では、生体適合性の絶縁層614は、SiONを含んでもよく、SiON層614の厚さは、約500nmであってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、同様のスピンコーティング技術を用いて、金属層のパターン化後にスマートポリマー層612を金属層上に堆積させることができる。その結果、スマートポリマー層612は、金属スタックの全ての表面を被覆することができる。いくつかの実施形態では、スマートポリマー層612がパターン化されてもよい。換言すれば、スマートポリマー層612は、金属スタック表面のある特定の領域のみを被覆する。例えば、光励起を必要とし得るコイル上の領域を予め決定することができる場合、スマートポリマー層612によってそれらの領域のみを被覆することができる。そのようなシナリオでは、パターン化されたスマートポリマー層を堆積させるために、フォトリソグラフィプロセスを実行することができる。
【0056】
図6Bは、一実施形態による例示的な埋め込み型プローブの部分上面図を示す。埋め込み型プローブ620は、AC電流によって励起されるとEM場を生成することができる金属コイル622を含むことができる。図6Bに示される例では、金属コイル622は、埋め込み型プローブ620の上面の縁に沿って位置付けられている。図6Bはまた、金属コイル622の上面の一部がスマートポリマーの層によって被覆され得ることを示している。例えば、金属コイル622の部分624および626は、スマートポリマーの層によって被覆されている。スマートポリマーの光磁気特性のために、スマートポリマー領域内の特定のスポットに光が照射されると、局所的な磁化率が急激に変化し、したがって励起EM場が変化する。より具体的には、E場勾配のピーク位置は、光の影響によりシフトし得る。
【0057】
埋め込み型プローブの操作
図7は、一実施形態による埋め込み型生物医学プローブによって生成される電磁場を制御する例示的なプロセスを示すフローチャートを示す。手術中、埋め込み型プローブを生体物質(例えばヒトの脳)に挿入することができる(操作702)。AC電流は、埋め込み型プローブ上の1つ以上の金属コイルに注入され、プローブを囲む領域内でEM場を励起し得る(操作704)。いくつかの実施形態では、AC電流の強度は、1~60mAの間(例えば約10mA)であってもよく、AC電流の周波数は、1~5kHzの間(例えば約3kHz)であってもよい。励起されたEM場によって影響され得る生物学的物質内の領域の深さは、50~150ミクロンの範囲内であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、システムは、任意選択で、埋め込み型プローブからセンサデータを受信し(操作706)、受信したセンサデータに基づいてAC電流の強度および/または周波数を調整する(操作708)。生物学的物質内の異なる位置がE場勾配刺激を必要とするかどうかを決定するために、追加の分析または診断が行われてもよい(操作710)。例えば、脳の中に埋め込まれたプローブを有する人の認知分析は、プローブの近くの異なる位置が刺激を必要とすることを示すことができる。代替として、(例えば所定の治療計画に従い)所定の経路に従ってE場勾配位置をシフトさせることが必要となり得る。
【0059】
E場勾配がその位置を変えることができるようにEM場を変調する必要があると決定された場合、E場勾配のピークを移動させるために光を外部から特定のスポットに入射させることができる(操作712)。いくつかの実施形態では、生体物質の外側から生体物質内に埋め込まれたプローブ上に光を照射するために、レーザーが使用されてもよい。生物学的物質(例えばヒトの脳)に浸透するために、レーザーは、700~1200nmの間、好ましくは900~1000nmの間の波長を有してもよい。EM場を発生させる金属コイルは、光の影響下で磁化率を変化させるスマートポリマー層によって被覆され得るため、局所的な光(例えばレーザービームを使用)を入射させることにより、プローブの局所磁化率を変化させることができ、したがって周囲のEM場を変化させることができる。レーザービームのスポットサイズは、数百ナノメートル程度であってもよい。光を除去すると、局所磁化率が元の値に戻ることに留意されたい。
【0060】
詳細な説明の項に説明されている方法およびプロセスは、上に説明されているようなコンピュータ可読記憶媒体に格納され得る、コードおよび/またはデータとして具体化され得る。コンピュータシステムが、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されているコードおよび/またはデータを読み取り、実行すると、コンピュータシステムは、データ構造およびコードとして具体化され、かつコンピュータ可読記憶媒体内に格納されている方法およびプロセスを行う。
【0061】
さらに、上に説明されている方法およびプロセスは、ハードウェアモジュールまたは装置に含まれてもよい。ハードウェアモジュールまたは装置は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application-Specific Integrated Circuit)チップ、場プログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)、特定の時点で特定のソフトウェアモジュールまたは1つのコードを実行する専用または共有のプロセッサ、および現在知られているかまたは後に開発される他のプログラマブルロジックデバイスを含むことができるが、それらに限定されるものではない。ハードウェアモジュールまたは装置が起動されると、それらは、それら内に含まれている方法およびプロセスを行う。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6A
図6B
図7