(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】タービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン発電設備
(51)【国際特許分類】
F01D 19/00 20060101AFI20220523BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20220523BHJP
F01D 17/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F01D19/00 R
F01D17/08 Z
F01D17/10 C
F01D17/10 E
(21)【出願番号】P 2019049180
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】根岸 尚史
(72)【発明者】
【氏名】山根 雄介
(72)【発明者】
【氏名】荻原 健司
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 円
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】竹丸 竜平
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080672(JP,A)
【文献】特開昭61-167103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 19/00
F01D 17/08
F01D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気加減弁が設置された主蒸気管を介してボイラからの主蒸気を流入させる蒸気タービンを備えるタービン発電設備のタービン制御装置であって、
前記蒸気加減弁に流す前記主蒸気の蒸気流量の目標値に基づいて、前記蒸気加減弁の開度の目標値である開度信号を算出する蒸気流量開度変換部と、
タービン起動時の前記蒸気加減弁を開く直前に前記蒸気加減弁の開度検出器で計測された実開度のデータである開直前実開度信号を記憶する記憶部と、
前記開度信号および前記開直前
実開度信号が入力され、前記開度信号と前記開直前実開度信号との加算値である開度目標信号を前記蒸気加減弁に出力する加算部と、
を備え
、
前記開度検出器からの前記開直前実開度信号が入力され、この開直前実開度信号とあらかじめ設定された所定の開度とを比較して、この開直前実開度信号が前記所定の開度よりも小さい場合にはこの開直前実開度信号を前記記憶部に出力し、この開直前実開度信号が前記所定の開度以上の場合には前記所定の開度を前記記憶部に出力する開直前実開度評価部を更に備えるタービン制御装置。
【請求項2】
蒸気加減弁が設置された主蒸気管を介してボイラからの主蒸気を流入させる上流側の蒸気タービンと、
前記上流側の蒸気タービンから排出された蒸気を流入し、この蒸気を加熱する再熱器と、
インタセプト弁が設置された再熱蒸気管を介して前記再熱器で加熱された再熱蒸気を流入させる下流側の蒸気タービンと、
を備えるタービン発電設備のタービン制御装置であって、
前記インタセプト弁に流す前記再熱蒸気の蒸気流量の目標値に基づいて、前記インタセプト弁の開度の目標値である開度信号を算出する蒸気流量開度変換部と、
タービン起動時の前記インタセプト弁を開く直前に前記インタセプト弁の開度検出器で計測された実開度のデータである開直前実開度信号を記憶する記憶部と、
前記開度信号および前記開直前
実開度信号が入力され、前記開度信号と前記開直前実開度信号との加算値である開度目標信号を前記インタセプト弁に出力する加算部と、
を備え
、
前記開度検出器からの前記開直前実開度信号が入力され、この開直前実開度信号とあらかじめ設定された所定の開度とを比較して、この開直前実開度信号が前記所定の開度よりも小さい場合にはこの開直前実開度信号を前記記憶部に出力し、この開直前実開度信号が前記所定の開度以上の場合には前記所定の開度を前記記憶部に出力する開直前実開度評価部を更に備えるタービン制御装置。
【請求項3】
前記開度目標信号および前記開度検出器で計測される実開度信号が入力され、前記開度目標信号と前記実開度信号との差分値である開度指令信号を前記蒸気加減弁に出力する減算部をさらに備える請求項1に記載されたタービン制御装置。
【請求項4】
前記開度目標信号および前記開度検出器で計測される実開度信号が入力され、前記開度目標信号と前記実開度信号との差分値である開度指令信号を前記インタセプト弁に出力する減算部をさらに備える請求項2に記載されたタービン制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載されたタービン制御装置を備えるタービン発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンバイパス系統を有する再熱式のタービン発電設備では、高圧タービンに導入される主蒸気を主蒸気管から分岐して高圧タービン排気管に導く高圧タービンバイパス管と、高圧タービンバイパス管に設けられた高圧タービンバイパス弁と、中低圧のタービンに導入される再熱蒸気の一部を再熱蒸気管から分岐して復水器に導く低圧タービンバイパス管と、低圧タービンバイパス管に設けられた低圧タービンバイパス弁とを備えている。また、主蒸気管と再熱蒸気管とには、高圧タービンと中低圧タービンとにそれぞれ蒸気を導くための蒸気弁(蒸気加減弁、インターセプト弁)が設置されている。
【0003】
このタービン発電設備を起動させるタービン起動時においては、ボイラで発生する主蒸気が最適な条件に到達するまでの間、主蒸気がボイラから高圧タービン、および中低圧のタービンを迂回して復水器へ流すために、高圧タービンバイパス弁および低圧タービンバイパス弁を利用する。すなわち、それぞれの蒸気弁を共に全閉としたまま、高圧タービンバイパス弁および低圧タービンバイパス弁を開くことで、ボイラからの主蒸気が主蒸気管、高圧タービンバイパス管、再熱蒸気管、低圧タービンバイパス管、復水器へと順次導かれる。このようにすることで、タービン起動時間の短縮およびタービンの起動制御の効率化を実現させることができる。
【0004】
ところで、一般に蒸気弁における実際に計測される開度と開度指令値との間の調整は、例えばタービン起動時に行われる。蒸気を導く前の蒸気弁の温度が十分に低い状態でこの調整を行うと、主蒸気からの熱による蒸気弁の熱膨張を加味して蒸気弁の開度を制御することができない。そこで、主蒸気からの熱による蒸気弁の熱膨張を加味するために、例えば蒸気弁を構成する弁箱に変位検出器を新たに設置して、高圧タービンバイパス弁および低圧タービンバイパス弁を経て蒸気をバイパスする間に、変器計測器により検出される弁箱の変位および既設の開度検出器により検出される弁棒の変位の差である伸び差を測定し、この伸び差を用いて開度指令値を調整する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では弁棒の変位に加えて弁箱の変位を測定するための変位検出器が必要である。したがって、この変位検出器が故障した際など、弁棒と弁箱との間の伸び差を測定できない場合には、熱膨張を加味して蒸気弁の開度を制御することができない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、新たな検出器を設けることなく熱膨張による影響を加味した蒸気弁の制御を可能とするタービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン発電設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、実施形態のタービン制御装置は、蒸気加減弁が設置された主蒸気管を介してボイラからの主蒸気を流入させる蒸気タービンを備えるタービン発電設備のタービン制御装置であって、前記蒸気加減弁に流す前記主蒸気の蒸気流量の目標値に基づいて、前記蒸気加減弁の開度の目標値である開度信号を算出する蒸気流量開度変換部と、タービン起動時の前記蒸気加減弁を開く直前に前記蒸気加減弁の開度検出器で計測された実開度のデータである開直前実開度信号を記憶する記憶部と、前記開度信号および前記開直前開度信号が入力され、前記開度信号と前記開直前実開度信号との加算値である開度目標信号を前記蒸気加減弁に出力する加算部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新たな検出器を設けることなく熱膨張による影響を加味した蒸気弁の制御を可能とするタービン制御装置、タービン制御方法、およびタービン発電設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第一の実施形態に係るタービン発電設備の構成を示す図である。
【
図2】第一の実施形態に係るタービン制御装置の構成を示す図である。
【
図3】第二の実施形態に係るタービン制御装置の構成を示す図である。
【
図4】第三の実施形態に係るタービン制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係るタービン発電設備について、
図1を用いて説明する。
図1は、第一の実施形態に係るタービン発電設備の構成を示す図である。
【0012】
タービン発電設備1は、ボイラ10と、蒸気タービン20と、再熱器30と、復水器60と、発電機70と、主蒸気管P10と、低温再熱蒸気管P21と、クロスオーバー管P22と、高温再熱蒸気管P30と、高圧タービンバイパス管PB1と、低圧タービンバイパス管PB2と、主蒸気止め弁V10aと、蒸気加減弁V10bと、インタセプト弁V30aと、再熱蒸気止め弁V30bと、高圧タービンバイパス弁VB1と、低圧タービンバイパス弁VB2とを備える。また、
図1では図示を省略しているが、タービン発電設備1はタービン制御装置100をさらに備える。
【0013】
ボイラ10は、水を加熱して主蒸気を発生させる。
【0014】
蒸気タービン20は、上流側に設けられた高圧タービン21と、この高圧タービン21よりも下流側に設けられた中圧タービン22および低圧タービン23とを備える。本実施形態においては、高中低圧の蒸気タービンをそれぞれ有する場合を例示しているが蒸気タービン20の構成はこの場合に限定されず、例えば中圧タービン22を備えずに、高低圧の蒸気タービンを有する構成でもよい。
【0015】
ボイラ10と高圧タービン21との間には、主蒸気管P10が設けられ、この主蒸気管P10に主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとが設置されている。この蒸気加減弁V10bには、図示していない開度検出器11が取り付けられ、蒸気加減弁V10bの開度を常時測定している。
【0016】
高圧タービン21と再熱器30との間には、低温再熱蒸気管P21が設けられている。再熱器30と中圧タービン22との間には、高温再熱蒸気管P30が設けられ、この高温再熱蒸気管P30にインタセプト弁V30aと再熱蒸気止め弁V30bとが設置されている。さらに、中圧タービン22と低圧タービン23との間には、クロスオーバー管P22が設けられている。
【0017】
ボイラ10で発生した主蒸気は、主蒸気管P10から主蒸気止め弁V10aと蒸気加減弁V10bとを順次経て、高圧タービン21に導かれる。主蒸気は、高圧タービン21の各タービン段落(図示省略)で膨張仕事をした後に、高圧排気として排出される。この高圧排気は、低温再熱蒸気管P21から再熱器30に導かれた後、この再熱器30で加熱されて再熱蒸気となる。再熱蒸気は、高温再熱蒸気管P30からインタセプト弁V30aと再熱蒸気止め弁V30bとを順次経て、中圧タービン22に導かれる。再熱蒸気は、中圧タービン22の各タービン段落(図示省略)で膨張仕事をした後に中圧排気として排出され、クロスオーバー管P22から低圧タービン23に導かれる。中圧排気は、低圧タービン23の各タービン段落(図示省略)で膨張仕事をした後に低圧排気として排気され、復水器60で凝縮(復水)される。復水器60で凝縮された水(復水)は、配管(図示省略)を経て再度ボイラ10に導かれる。
【0018】
蒸気タービン20においては、高圧タービン21、中圧タービン22、および低圧タービン23それぞれのタービンロータが同軸に連結されている。作動流体である蒸気(主蒸気、再熱蒸気、または中圧排気)の膨張仕事によって各タービンロータが回転すると、発電機70が駆動して発電が行われる。
【0019】
高圧タービンバイパス管PB1は、主蒸気管P10と低温再熱蒸気管P21とを連結する。具体的には、高圧タービンバイパス管PB1は、ボイラ10および主蒸気止め弁V10aの間の位置と、高圧タービン21および再熱器30の間の位置とを連結する。また、高圧タービンバイパス管PB1には、高圧タービンバイパス弁VB1が設置されている。
【0020】
これに対して、低圧タービンバイパス管PB2は、高温再熱蒸気管P30と復水器60とを連結する。具体的には、低圧タービンバイパス管PB2は、再熱器30およびインタセプト弁V30aの間の位置と復水器60とを連結する。また、低圧タービンバイパス管PB2には、低圧タービンバイパス弁VB2が設置されている。
【0021】
タービン発電設備1を起動させるタービン起動時においては、ボイラ10で発生する蒸気が最適な条件に到達するまでの間、ボイラ10からの主蒸気を蒸気タービン20を迂回して復水器60へ導くために、高圧タービンバイパス管PB1と低圧タービンバイパス管PB2とが利用される。具体的には、ボイラ10からの主蒸気が主蒸気管P10から高圧タービンバイパス管PB1を通り、高圧タービンバイパス弁VB1、および低温再熱蒸気管P21を順次経て再熱器30に導かれる。この主蒸気は、再熱器30から高温再熱蒸気管P30を通り、低圧タービンバイパス管PB2および低圧タービンバイパス弁VB2を経て復水器60に導かれる。
【0022】
そして、ボイラ10で発生する主蒸気が最適条件になってタービンを起動させる段階になったときは、蒸気加減弁V10bを流れる主蒸気の流量とインタセプト弁V30aを流れる蒸気(再熱蒸気)の流量との比率を最適に保った状態で、蒸気タービンに流入させる蒸気流量を増加させる。これにより、所望の蒸気流量で蒸気タービンを駆動させることができる。
【0023】
なお、タービン起動前においては、主蒸気止め弁V10a、蒸気加減弁V10b、インタセプト弁V30a、および再熱蒸気止め弁V30bが全閉にされ、高圧タービンバイパス弁VB1、低圧タービンバイパス弁VB2が圧力制御運転に対応して動作する。そして、タービンリセットの際には、主蒸気止め弁V10aは全開にされ、インタセプト弁V30aを開ける。起動開始のときには、まずは蒸気加減弁V10bおよび再熱蒸気止め弁V30bの副弁を開ける動作が開始され、副弁を全開とした状態で再熱蒸気止め弁V30bの主弁を全開とし、その後、インタセプト弁V30aを開ける。そして、規定の負荷に到達したところで、インタセプト弁V30aが全開にされ、蒸気加減弁V10bを動作させて負荷を制御する。なお、負荷運転中においては、高圧タービンバイパス弁VB1と低圧タービンバイパス弁VB2とは全閉にされる。
【0024】
タービン制御装置100は、タービン発電設備1を構成するそれぞれの弁の動作を制御する。ここで、第一の実施形態におけるタービン制御装置100の詳細について、
図2を用いて説明する。
図2は、第一の実施形態に係るタービン制御装置100の構成を示す。なお、これ以降の説明においてはタービン制御装置100による制御対象として蒸気加減弁V10bを例示するが、このタービン制御装置100の制御対象は蒸気加減弁V10bだけでなく、例えば主蒸気止め弁V10a、インタセプト弁V30a、または再熱蒸気止め弁V30bでもよい。この関係は、後述する他の実施形態においても同様に成り立つこととする。
【0025】
図2に示すように、タービン制御装置100は、回転数変換部101と、蒸気流量開度変換部102と、ワンショット回路103と、記憶部104と、加算部105と、減算部106とを備える。
【0026】
回転数変換部101は、タービン回転数信号S20を蒸気流量信号S101に変換する。具体的には、回転数変換部101にタービン回転数信号S20が入力されると、回転数変換部101は、目標回転数とこのタービン回転数信号が示す蒸気タービン20の実回転数との偏差に対して一定のゲイン(1/k、kは速度調定率)を積算して、蒸気流量信号S101を出力する。この蒸気流量信号S101は、蒸気加減弁V10bに流す主蒸気の蒸気流量の目標値である。
【0027】
蒸気流量開度変換部102は、蒸気流量信号S101を蒸気加減弁開度信号S102(開度信号)に変換する。本実施形態では、あらかじめ求められている蒸気流量と蒸気加減弁V10bの開度との関係から、蒸気流量信号S101に対応する蒸気加減弁V10bの開度のデータを求め、その開度を蒸気加減弁開度信号S102として出力する。この蒸気加減弁開度信号S102は、蒸気流量信号S101に基づいて出力される蒸気加減弁V10bの目標値である。
【0028】
ワンショット回路103は、外部からタービン起動指令信号S103が入力される。ワンショット回路103は、タービン起動指令信号S103が入力された時(蒸気加減弁V10bを開く直前)に、開度検出器11からの開直前実開度信号S11aを記憶部104に出力する。この開直前実開度信号S11aは、蒸気加減弁V10bを開く直前に、開度検出器11により測定された蒸気加減弁V10bの開度である。
【0029】
記憶部104は、開度検出器11からの開直前実開度信号S11aを記憶する。具体的には、タービン起動指令信号S103がワンショット回路103に入力された場合に、記憶部104は、ワンショット回路103を経て開度検出器11からの開直前実開度信号S11aが入力される。この開直前実開度信号S11aは、後述する加算部105に対して、開直前実開度信号S104として出力される(S104=S11a)。
【0030】
加算部105は、蒸気流量開度変換部102から入力される蒸気加減弁開度信号S102と、記憶部104から入力される開直前実開度信号S104(S11a)とを加算処理する。つまり、加算部105は、蒸気流量開度変換部102からの蒸気加減弁開度信号S102に、蒸気加減弁V10bを開く直前の蒸気加減弁V10bの開度である開直前実開度信号S11aを加算して、蒸気加減弁V10bの開度の目標値である蒸気流量開度変換部からの蒸気加減弁開度信号S102を補正する。そして、加算部105は、加算処理の結果である開度目標信号S105を減算部106へ出力する(S105=S102+S104=S102+S11a)。
【0031】
減算部106は、開度目標信号S105と、開度検出器11からの実開度信号S11bとを減算処理する。この実開度信号S11bは、今の蒸気加減弁V10bの開度である。そして、減算部106は、減算処理の結果である開度指令信号S106を蒸気加減弁V10bへ出力する(S106=S105-S11b)。蒸気加減弁V10bの開度は、開度指令信号S106に基づいて制御される。
【0032】
例えば、蒸気加減弁V10bの全開時に対する百分率で表記して、開直前実開度信号S11aが0.1パーセントの開度、蒸気加減弁開度信号S102が50パーセントの開度、実開度信号S11bが5.3パーセントの開度をそれぞれ示す場合を考える。この場合、開度目標信号S105は、開直前実開度信号S11aと蒸気加減弁開度信号S102とを加算した50.1パーセント、開度指令信号S106は、この値から実開度信号S11bを減算した44.8パーセントとなり、44.8パーセント分だけ蒸気加減弁V10bの開度を開けるよう指令する開度指令信号S106が、蒸気加減弁V10bへ出力される。
【0033】
上述した第一の実施形態によれば、タービン制御装置100は、蒸気加減弁V10bを開く直前に開度検出器11で測定された開度である開直前実開度信号S11aを用いて、蒸気加減弁V10bの目標値である蒸気加減弁開度信号S102を補正し、補正後の開度目標信号S105を基に蒸気加減弁V10bへの開度指令信号106を出力する。したがって、タービン起動前に主蒸気管P10を流れる主蒸気によって蒸気加減弁V10bを構成する弁棒や弁箱(共に図示省略)が熱膨張した場合でも、その影響を加味して蒸気加減弁V10bの開度を制御することができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、開度検出器11が蒸気加減弁V10bの開度を常時測定している場合を例示したが、この開度検出器11は少なくとも蒸気加減弁V10bを開く直前、および減算部106による減算処理の直前に蒸気加減弁V10bの開度を測定していればよく、必ずしも蒸気加減弁V10bの開度を常時測定する必要はない。本実施形態の変形例として、例えばタービン制御装置100に新たに開度検出指令部を設け、蒸気加減弁V10bを開く直前および減算部106による減算処理の直前に、この開度検出指令部から開度検出器11に対して、蒸気加減弁V10bの開度を検出する信号を出力する構成としてもよい。
【0035】
また、本実施形態においては、タービン制御装置100の制御対象が蒸気加減弁V10bである場合を例示して説明したが、本実施形態の変形例として、蒸気加減弁V10bとインタセプト弁V30aとを、それぞれを流れる蒸気流量の比率が最適になるように制御してもよい。
【0036】
さらに、本実施形態においては、蒸気加減弁V10bを開く直前に外部からワンショット回路103にタービン起動指令信号S103が入力される場合を例示して説明したが、本実施形態の変形例として、例えば蒸気加減弁V10bのウォーミング直前に、外部からワンショット回路103にウォーミング直前指令信号を入力させる構成としてもよい。
【0037】
これらの変形例については、後述する他の実施形態においても同様に成り立つ。
【0038】
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係るタービン発電設備について、
図3を用いて説明する。
図3は、第二の実施形態に係るタービン制御装置100の構成を示す図である。以降では、第一の実施形態と異なる箇所について説明し、それ以外の箇所については、第一の実施形態と同じものとして同じ図番を付し、その説明を省略する。
【0039】
図3に示すように、第二の実施形態に係るタービン制御装置100は、回転数変換部101と、蒸気流量開度変換部102と、ワンショット回路103と、記憶部104と、加算部105と、減算部106と、開直前実開度評価部117とを備える。すなわち、第二の実施形態では、タービン制御装置100が開直前実開度評価部117をさらに備える点が第一の実施形態と異なる。
【0040】
開直前実開度評価部117は、記憶部104と加算部105との間に設けられる。開直前実開度評価部117は、記憶部104から入力される開直前実開度信号S104(S11a)が所定の開度を超える場合、この所定の開度を評価後開直前実開度信号S117として、加算部105へ出力する。ここでいう所定の開度は、あらかじめ開直前実開度評価部117に設定された値である。一方、開直前実開度信号S104が所定の開度以下である場合、開直前実開度信号S104をそのまま評価後開直前実開度信号S117として加算部105へ出力する。
【0041】
例えば、蒸気加減弁V10bの全開時に対する百分率で表記して、所定の開度が0.2パーセント、開直前実開度信号S11aが0.3パーセントの開度である場合、開直前実開度信号S11aは所定の開度よりも大きいため、開直前実開度評価部117では、0.2パーセントの開度(所定の開度)を評価後開直前実開度信号S117として加算部105へ出力する。
【0042】
一方、蒸気加減弁V10bの全開時に対する百分率で表記して、所定の開度が0.2パーセント、開直前実開度信号S104(S11a)が0.1パーセントの開度である場合、開直前実開度信号S104は所定の開度よりも小さいため、開直前実開度評価部117では、0.1パーセントの開度(開直前実開度信号S104)を評価後開直前実開度信号S117としてそのまま加算部105へ出力する。
【0043】
加算部105は、蒸気加減弁開度信号S102と評価後開直前実開度信号S117とを加算処理して、その結果である開度目標信号S115を減算部106へ出力する(S115=S102+S117)。また、減算部106は、開度目標信号S115と、開度検出器11からの実開度信号S11bとを減算処理して、その結果である開度指令信号S116を蒸気加減弁V10bへ出力する(S116=S115-S11b)。
【0044】
上述した第二の実施形態によれば、記憶部104と加算部105との間に開直前実開度評価部117を設け、開度検出器11の位置ずれ等によって基準値である開直前実開度信号S11aが過度に大きな値を示した場合であっても、この基準値に補正をかけて蒸気加減弁V10bの開度を制御することができる。
【0045】
なお、本実施形態の変形例として、例えば蒸気加減弁V10bのメタル温度を検出するメタル温度検出部を設けると共に、開直前実開度評価部117に対して、所定の開度をメタル温度毎にそれぞれ設定してもよい。このような構成とすることにより、メタル温度検出部から開直前実開度評価部117に入力されるメタル温度に応じて所定の開度を適宜変化させ、蒸気加減弁V10bを構成する弁棒や弁箱(共に図示省略)が熱膨張した場合の影響をより詳細に加味して蒸気加減弁V10bの開度を制御することができる。また、メタル温度検出部の代わりに、蒸気加減弁V10bを流れる主蒸気の温度を検出する蒸気温度検出部を設けてもよいし、これらを組み合わせた構成としてもよい。
【0046】
(第三の実施形態)
第三の実施形態に係るタービン発電設備について、
図4を用いて説明する。
図4は、第三の実施形態に係るタービン制御装置100の構成を示す図である。以降では、第一および第二の実施形態と異なる箇所について説明し、それ以外の箇所については、第一および第二の実施形態と同じものとして同じ図番を付し、その説明を省略する。
【0047】
図4に示すように、第三の実施形態に係るタービン制御装置100は、回転数変換部101と、蒸気流量開度変換部102と、ワンショット回路103と、記憶部104と、第一の減算部126と、第二の減算部127とを備える。すなわち、第三の実施形態では、タービン制御装置100が加算器105の代わりに第一の減算部126を、減算部106の代わりに第二の減算部127をそれぞれ備える点が第一および第二の実施形態と異なる。
【0048】
第一の減算部126は、記憶部104から入力される開直前実開度信号S104(S11a)と、開度検出器11から入力される実開度信号S11bとを減算処理する。つまり、第一の減算部126は、蒸気加減弁V10bを開く直前の蒸気加減弁V10bの開度である開直前実開度信号S11aをオフセット値として用いることで、今の蒸気加減弁V10bの開度を補正する。そして、第一の減算部126は、減算処理の結果である補正蒸気加減弁実開度信号S126(補正実開度信号)を第二の減算部127へ出力する(S126=S11b-S104=S11b-S11a)。
【0049】
第二の減算部127は、蒸気流量開度変換部102から入力される蒸気加減弁開度信号S102と、第一の減算部126から入力される補正蒸気加減弁実開度信号S126とを減算処理する。そして、第二の減算部127は、減算処理の結果である開度指令信号S127を蒸気加減弁V10bへ出力する(S127=S102-S126)。蒸気加減弁V10bの開度は、開度指令信号S127に基づいて制御される。
【0050】
例えば、蒸気加減弁V10bの全開時に対する百分率で表記して、開直前実開度信号S11aが0.1パーセントの開度、蒸気加減弁開度信号S102が50パーセントの開度、実開度信号S11bが5.3パーセントの開度をそれぞれ示す場合を考える。この場合、補正蒸気加減弁実開度信号S126は、実開度信号S11bから開直前実開度信号S11aを減算した5.2パーセント、開度指令信号S127は、蒸気加減弁開度信号S102から補正蒸気加減弁実開度信号S126を減算した44.8パーセントとなり、44.8パーセント分だけ蒸気加減弁V10bの開度を開けるよう指令する開度指令信号S106が、蒸気加減弁V10bへ出力される。
【0051】
上述した第三の実施形態によれば、蒸気加減弁V10bを開く直前に、開度検出器11で測定された蒸気加減弁V10bの開度である開直前実開度信号S11aをオフセット値として用いて、今の蒸気加減弁V10bの開度を補正し、補正後の開度である補正蒸気加減弁実開度信号S126を基に蒸気加減弁V10bへの開度指令信号S127を出力する。したがって、タービン起動時からの蒸気によって蒸気加減弁V10bを構成する弁棒や弁箱(共に図示省略)が熱膨張した場合でも、その影響を加味して蒸気加減弁V10bの開度を制御することができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1.タービン発電設備、10.ボイラ、11.開度検出器、20.蒸気タービン、30.再熱器、60.復水器、70.発電機、100.タービン制御装置、101.回転数変換部、102.蒸気流量開度変換部、103.ワンショット回路、104.記憶部、105.加算部、106.減算部、117.開直前実開度評価部、126.第一の減算部、127.第二の減算部、P10.主蒸気管、P21.低温再熱蒸気管、P22.クロスオーバー管、P30.高温再熱蒸気管、PB1.高圧タービンバイパス管、PB2.低圧タービンバイパス管、V10a.主蒸気止め弁、V10b.蒸気加減弁、V30a.インタセプト弁、V30b.再熱蒸気止め弁、VB1.高圧タービンバイパス弁、VB2.低圧タービンバイパス弁