(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ノズル洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2019052261
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐木 省司
(72)【発明者】
【氏名】浦野 光雄
(72)【発明者】
【氏名】大角 朋也
(72)【発明者】
【氏名】垣内 伸平
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-009289(JP,U)
【文献】特開2003-211074(JP,A)
【文献】米国特許第05435488(US,A)
【文献】特開2017-074560(JP,A)
【文献】特開平10-113597(JP,A)
【文献】国際公開第2007/111055(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105057297(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C7/00-21/00
B05B12/16-12/36
14/00-16/80
B08B1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽と、
洗浄すべきノズルを取り付け可能な接続部を有した一方の洗浄液出口と、
前記洗浄液出口に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記洗浄液供給手段によって洗浄液が供給される他方の洗浄液出口と、
前記他方の洗浄液出口に接続される洗浄アタッチメントとを具備し、
前記洗浄アタッチメントが、
前記一方の洗浄液出口に取り付けたノズルの先端部を挿入するノズル保持部と、
前記ノズル保持部に挿入された前記ノズルの先端部と対向し、前記他方の洗浄液出口に供給された前記洗浄液を前記ノズルの先端部に向けて噴射する外側洗浄液噴射口と、
前記ノズルの先端部が前記ノズル保持部に挿入された状態において、前記ノズルの吐出部が配置され、前記吐出部から第1の方向に噴出した洗浄液と前記外側洗浄液噴射口から第2の方向に噴出した洗浄液とが互いに衝突する洗浄室と、
前記洗浄室に流入した前記洗浄液を排出する洗浄液排出孔と、
を具備したことを特徴とするノズル洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄アタッチメントが、
前記ノズル保持部と前記洗浄室とを有し前記ノズルに取り付けるノズルカバーと、
前記外側洗浄液噴射口と前記洗浄室とに連通する洗浄液流入室を有し、前記ノズルカバーに取り付ける洗浄ホルダと、
前記他方の洗浄液出口に接続される継手と、
前記継手と前記外側洗浄液噴射口との間に設けられたパイプと、
を具備したことを特徴とする請求項1に記載のノズル洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ホルダの軸線に沿う方向に、前記ノズルの先端部と、前記洗浄室と、前記外側洗浄液噴射口とを有したことを特徴とする請求項2に記載のノズル洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄ホルダが、前記洗浄液流入室に連通する前記洗浄液排出孔を有したことを特徴とする請求項2に記載のノズル洗浄装置。
【請求項5】
互いに形状が共通の前記一方の洗浄液出口と、前記他方の洗浄液出口と、さらに別の洗浄液出口とを有し、これら洗浄液出口を塞ぐ栓部材を具備したことを特徴とする請求項1に記載のノズル洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄槽が、洗浄槽本体と、前記洗浄槽本体の開口部を開閉する蓋とを有し、
前記蓋に前記全ての洗浄液出口が配置されたことを特徴とする請求項5に記載のノズル洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接着剤等の吐出物を塗布対象物に塗布するためのノズルを洗浄するノズル洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤等の吐出物を塗布対象物に塗布するために、ノズルを備えた塗布装置(ディスペンサ)が使用されることがある。吐出物の一例は、粘性を有する接着剤やペースト状の導電材料である。このような吐出物を塗布対象物に塗布するために、吐出物を加圧してノズルの先端開口部から押し出すようにしている。塗布する際の吐出物の圧力(塗布圧)は吐出物の粘性等に応じて設定されるが、数100KPaに及ぶ場合もある。
【0003】
使用後のノズルは洗浄され、ノズルに付着した吐出物が除去される。特にノズルの内部やノズルの先端部に付着した吐出物を念入りに洗浄する必要がある。ノズルの内部や先端部を洗浄するには、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、加圧された洗浄液をノズルの内部に流すのが通例である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-45094号公報
【文献】特開2018-79417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばハードディスク装置(HDD)に使用されるHDDサスペンションのような小さな塗布対象物に吐出物を塗布するためには、吐出孔の内径が1mm以下(例えば内径φ0.1-0.16mm)のノズルが使用される。しかも吐出孔の長さは、吐出孔の内径と比較してかなり長い。このように細くて長いノズルの内部を洗浄するために、数10MPaに加圧された高圧の洗浄液がノズルに供給されることもある。
【0006】
しかし高圧洗浄を行ってもノズルを十分に洗浄することが困難なこともある。特にノズルの先端開口部付近に付着した吐出物は、ノズルの内部に高圧の洗浄液を流すだけでは除去しにくく、吐出物がノズルに付着したまま残ってしまうことがある。もしもノズルの先端付近に吐出物が付着した状態で塗布を行うと、塗布量や塗布形状が安定しないため好ましくない。
【0007】
このためノズルを確実に洗浄するために、ブラシ等の洗浄具を用いて、手作業による洗浄が行われることもある。しかしそのような手作業は時間がかかるだけでなく、小さなノズルをくまなく洗浄するには熟練が必要であり、場合によってはノズルの先端開口部付近に吐出物が残ってしまうこともあるなど、改善の余地があった。
【0008】
従って本発明の目的はノズルを十分洗浄することができ、特にノズルの先端開口部付近に付着している吐出物も効果的に除去することが可能なノズル洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態に係るノズル洗浄装置は、洗浄槽と、洗浄すべきノズルを取り付け可能な接続部を有した一方の洗浄液出口と、前記洗浄液出口に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄液供給手段によって洗浄液が供給される他方の洗浄液出口と、前記他方の洗浄液出口に接続される洗浄アタッチメントとを具備している。前記洗浄アタッチメントは、前記一方の洗浄液出口に取り付けたノズルの先端部を挿入するノズル保持部と、外側洗浄液噴射口と、洗浄室と、前記洗浄室に流入した前記洗浄液を排出する洗浄液排出孔とを具備している。
【0010】
前記外側洗浄液噴射口は、前記ノズル保持部に挿入されたノズルの先端部と対向し、前記他方の洗浄液出口に供給された前記洗浄液を前記ノズルの先端部に向けて噴射する。前記洗浄室は、前記ノズルの先端部が前記ノズル保持部に挿入された状態において、前記ノズルの吐出部が配置され、前記吐出部から第1の方向に噴出した前記洗浄液と、前記外側洗浄液噴射口から第2の方向に噴出した洗浄液とが互いに衝突する。
【0011】
前記洗浄アタッチメントが、前記ノズル保持部と前記洗浄室とを有し前記ノズルに取り付けるノズルカバーと、前記外側洗浄液噴射口と前記洗浄室とに連通する洗浄液流入室を有し前記ノズルカバーに取り付ける洗浄ホルダと、前記他方の洗浄液出口に接続される継手と、前記継手と前記外側洗浄液噴射口との間に設けられたパイプとを備えてもよい。好ましくは、前記洗浄ホルダの軸線に沿う方向に、前記ノズルの先端部と、前記洗浄室と、前記外側洗浄液噴射口とを有しているとよい。
【0012】
前記洗浄ホルダが、前記洗浄液流入室に連通する前記洗浄液排出孔を有してもよい。また、互いに形状が共通の前記一方の洗浄液出口と、前記他方の洗浄液出口と、さらに別の洗浄液出口とを有し、これら洗浄液出口を塞ぐ栓部材を具備してもよい。前記洗浄槽が、洗浄槽本体と、前記洗浄槽本体の開口部を開閉する蓋とを有し、前記蓋に前記全ての洗浄液出口が配置されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のノズル洗浄装置によれば、ノズルから第1の方向に噴出する洗浄液(内側洗浄液)と、ノズルに向かって外側洗浄液噴射口から第2の方向に噴出する洗浄液(外側洗浄液)とが洗浄室内のノズルの先端部付近で衝突することにより、ノズルを十分洗浄することができ、特にノズルの先端開口部付近も確実に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】1つの実施形態に係るノズル洗浄装置の斜視図。
【
図2】
図1に示されたノズル洗浄装置を含む洗浄設備の一部のブロック図。
【
図5】
図1に示されたノズル洗浄装置の蓋を開け、洗浄アタッチメントを取り付ける前の状態を示す斜視図。
【
図6】
図5に示されたノズル洗浄装置に洗浄アタッチメントを取り付けた状態を示す斜視図。
【
図7】洗浄アタッチメントの一部とノズルの一部を示す分解斜視図。
【
図8】
図7に示された洗浄アタッチメントをノズルに取り付けた状態の斜視図。
【
図9】
図8に示された洗浄アタッチメントとノズルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に1つの実施形態に係るノズル洗浄装置1を備えた洗浄設備2について、
図1から
図9を参照して説明する。
図1はノズル洗浄装置1の斜視図である。
図2はノズル洗浄装置1を含む洗浄設備2の一部のブロック図である。
図2に示された洗浄設備2は、ノズル洗浄装置1に洗浄液を供給する洗浄液供給系3と、ノズル洗浄装置1から洗浄液を回収するための洗浄液回収系4とを含んでいる。
図2中の矢印Fは洗浄液が流れる方向を示している。
【0016】
洗浄液供給系3は、洗浄液供給手段として機能する洗浄液供給管5と、洗浄液を洗浄液供給管5に供給するポンプ6と、リリーフ弁7と、開閉弁8と、圧力計9などを含んでいる。洗浄液供給管5はポンプ6の吐出口に接続されている。洗浄液回収系4は、洗浄液排出手段として機能する洗浄液排出管10と、洗浄液を濾過するフィルタ11などを含んでいる。洗浄液排出管10はポンプ6の吸入口に接続されている。ノズル洗浄装置1に圧力計12が設けられていてもよい。
【0017】
洗浄するノズルの種類は特に問わないが、例えば
図3に示すように、塗布対象物W1の塗布部W2に接着剤等の吐出物を塗布するノズル20である。ノズル20は塗布装置(ディスペンサ)の一部をなし、加圧室21を有するノズルボディ22と、ノズルボディ22に設けられたピン形の吐出部23とを有している。吐出部23の数は1つでもよいし、あるいは2以上でもよい。塗布対象物W1の一例は、ハードディスク装置に使用されるHDDサスペンションである。
【0018】
図3に示すように、ノズル20の吐出部23から吐出物が押し出されて塗布部W2に供給される。吐出物の一例はペースト状の導電材料(例えば銀ペースト)であるが、硬化前の液状の接着剤などが使用されることもある。塗布の際に吐出物に加える圧力(塗布圧)は、吐出物の粘性等の性状に応じて設定されるが、例えば数100KPaに及ぶ場合もある。
【0019】
図4はノズル20の先端部20aに設けられた吐出部23を示している。吐出部23の先端に先端開口部25が形成されている。吐出部23の内側に吐出孔26が形成されている。吐出孔26はノズルボディ22の加圧室21と先端開口部25とに連通している。吐出孔26の内径は問わないが、例えばφ0.1-0.16mmである。吐出孔26の長さは内径の10倍を超えることもある。使用後のノズル20には吐出物が付着している。このため本実施形態のノズル洗浄装置1によってノズル20が洗浄される。
【0020】
図1と
図5および
図6に示すように、ノズル洗浄装置1は洗浄槽30を有している。洗浄槽30は、上面に開口部31を有する洗浄槽本体32と、開口部31を塞ぐことができる蓋33と、蓋33のためのヒンジ機構34およびクランプ機構35とを有している。蓋33はヒンジ機構34によって上下方向に回動することができる。洗浄槽本体32の底部に洗浄液排出管10が接続されている。
【0021】
蓋33の内側には、洗浄槽本体32との合わせ面を密封するためのOリング等のシール材36が設けられている。蓋33に取っ手37が設けられている。作業者は取っ手37を使って蓋33を開閉させることができる。洗浄槽本体32の正面または側面には、洗浄槽30の内部を目視できるように透明な材料からなる観察用の窓部38が設けられている。
【0022】
図1は蓋33が閉じた状態を示している。
図5と
図6とは、それぞれ蓋33が開いた状態を示している。クランプ機構35は、洗浄槽本体32に設けられた受け金具35aと、蓋33に設けられたクランプレバー35bとを有している。蓋33を閉じ、クランプレバー35bをロック位置に移動させて受け金具35aに係合させることにより、蓋33を閉位置に固定することができる。クランプレバー35bをロック解除位置に操作すれば、蓋33を開けることができる。
【0023】
図5と
図6とに示されるように、蓋33の内側に複数(例えば6つ)の洗浄液出口40a-40fが設けられている。これら洗浄液出口40a-40fは互いに共通の形状であり、ノズル20と、栓部材41と、洗浄アタッチメント50の継手54と、のいずれも取り付けることが可能なねじ部を有する接続部42(
図5に一部のみ示す)が形成されている。
【0024】
蓋33には、洗浄液出口40a-40fに連通する洗浄液流通部45(
図5に一部のみ示す)が形成されている。洗浄液流通部45に洗浄液供給管5が接続されている。洗浄液出口40a-40fには、洗浄液流通部45を介して互いに実質的に同等の圧力の洗浄液が供給される。洗浄槽本体32の底部には、洗浄槽本体32の内部に流入した洗浄液を排出するための洗浄液排出管10が接続されている。
【0025】
この明細書では、
図5と
図6とに示すように、6か所の洗浄液出口40a-40fのうち、第1の洗浄液出口40aと第2の洗浄液出口40bとを用いてノズル20を洗浄する場合について説明する。例えばノズル20は一方の洗浄液出口40aに取り付けられる。また、他方の洗浄液出口40bに洗浄アタッチメント50が取り付けられる。洗浄アタッチメント50については後に詳しく説明する。洗浄に使用しない洗浄液出口40c-40fは、着脱可能な栓部材41によって塞がれている。
【0026】
なお、第1の洗浄液出口40aと第2の洗浄液出口40b以外の洗浄液出口40c-40fを使用してノズルを洗浄することもできる。その場合も、2つの洗浄液出口のうちの一方にノズルを取り付け、他方に洗浄アタッチメント50を取り付ける。洗浄に使用しない洗浄液出口は、栓部材41によって塞がれる。
【0027】
以下に洗浄アタッチメント50について説明する。
図7はノズル20と洗浄アタッチメント50の一部を示す分解斜視図である。
図8は、洗浄アタッチメント50をノズル20に取り付けた状態の斜視図である。
図9は、ノズル20と洗浄アタッチメント50の軸線X1に沿う断面図である。
【0028】
洗浄アタッチメント50は、ノズルカバー51と、洗浄ホルダ52と、接続部材53(
図5と
図6に示す)とを含んでいる。接続部材53は、洗浄液出口40a-40fに着脱可能な継手54と、可撓性のパイプ55とを有している。継手54は、洗浄液出口40a-40fのいずれにも取り付けることができるが、
図5と
図6に示す例では第1の洗浄液出口40aに接続されている。洗浄ホルダ52にパイプ55の一端が接続されている。パイプ55の他端は継手54に接続されている。
【0029】
ノズルカバー51の一例は、略円筒形の樹脂の成形品であり、ノズルカバー51をノズル20に固定する際に使用する固定部材60,61が取り付けられている。固定部材60,61の一例はボルトであり、ノズルカバー51の径方向に突出している。ノズルカバー51は、ノズル20を挿入するノズル挿入孔62が形成されたノズル保持部63と、ノズル20の吐出部23を収容する洗浄室64とを有している。
【0030】
固定部材60,61をそれぞれノズルカバー51のねじ孔65,66に挿入し、ノズル20の外周面に締め付けることにより、ノズルカバー51がノズル20に固定される。
図9に示されるように、ノズル20の先端部20aがノズルカバー51に挿入された状態において、ノズル20の吐出部23が洗浄室64に位置する。またノズル20の吐出部23が洗浄ホルダ52の軸線X1に沿う方向に突き出る。
【0031】
洗浄ホルダ52は略円筒形をなし、ノズルカバー51が挿入される穴70を有する筒部52aと、洗浄室64に連通する洗浄液流入室71(
図9に示す)と、洗浄液流入室71に連通する外側洗浄液噴射口72と、洗浄液流入室71に流入した洗浄液を排出するための洗浄液排出孔73とを有している。外側洗浄液噴射口72は、雌ねじ部を有する接続口74を介して、洗浄アタッチメント50のパイプ55の一端に接続されている。洗浄ホルダ52の軸線X1に沿う方向に、ノズル20の先端部20aと、洗浄室64と、外側洗浄液噴射口72とが設けられている。
【0032】
洗浄ホルダ52の筒部52aには、固定部材60,61に係止可能な嵌合部80,81が設けられている。嵌合部80,81は、洗浄ホルダ52をノズルカバー51に固定するために使用される。嵌合部80,81の一例は、洗浄ホルダ52の軸線X1に沿う方向に延びる第1溝部82,83と、洗浄ホルダ52の周方向に延びる第2溝部84,85とを有している。
【0033】
洗浄ホルダ52をノズルカバー51に固定する際に、固定部材60,61を第1溝部82,83に挿入し、さらに洗浄ホルダ52を少し回転させることにより、固定部材60,61を第2溝部84,85に挿入する。こうすることにより、固定部材60,61が洗浄ホルダ52の軸線X1に沿う方向に移動することが阻止され、ノズルカバー51に対する洗浄ホルダ52の抜け止めがなされる。
【0034】
図9に示されるように、ノズルカバー51が洗浄ホルダ52の筒部52aの穴70に挿入された状態において、ノズル20の先端部20aと、洗浄室64と、洗浄液流入室71と、外側洗浄液噴射口72とが、洗浄ホルダ52の軸線X1上に位置している。このためノズル20の吐出部23から第1の方向に噴出する洗浄液は、洗浄室64を通り、洗浄液流入室71に向かう。これに対し、外側洗浄液噴射口72から第2の方向に噴出する洗浄液は、洗浄液流入室71を通り、ノズル20の吐出部23に向かう。
【0035】
以下に本実施形態のノズル洗浄装置1を備えた洗浄設備2の作用について説明する。
図5に示すように洗浄槽30の蓋33を開ける。蓋33の内側には互いに共通の形状の洗浄液出口40a-40fが設けられている。これら洗浄液出口40a-40fのうち、例えば第1の洗浄液出口40aにノズル20を取り付ける。第2の洗浄液出口40bには洗浄アタッチメント50の継手54を接続する。洗浄に使用しない洗浄液出口40c-40fは、栓部材41によって塞がれている。なお、第1の洗浄液出口40aに洗浄アタッチメント50の継手54を接続し、第2の洗浄液出口40bにノズル20を取り付けてもよい。
【0036】
第1の洗浄液出口40aと第2の洗浄液出口40b以外の洗浄液出口40c-40fを用いてノズルを洗浄することもできる。例えば第3の洗浄液出口40cにノズルを取り付け、第4の洗浄液出口40dに洗浄アタッチメント50を取り付けてもよい。また、第5の洗浄液出口40eにノズルを取り付け、第6の洗浄液出口40fに洗浄アタッチメント50を取り付けてもよい。
【0037】
このように本実施形態のノズル洗浄装置1は、6つの洗浄液出口40a-40fのうち対をなす洗浄液出口を用いて、最大3個のノズルを洗浄することができる。洗浄液出口の数が偶数の場合には、洗浄液出口の数の2分の1の数のノズルを洗浄することが可能である。ただし洗浄液出口の数が奇数であってもよい。洗浄に使用しない洗浄液出口は栓部材41によって塞ぐ。
【0038】
図6に示された例では、複数の洗浄液出口40a-40fのうち第1の洗浄液出口40aにノズル20を取り付け、第2の洗浄液出口40bに洗浄アタッチメント50の継手54が接続されている。洗浄に使用しない洗浄液出口40c-40fは栓部材41によって塞がれている。
【0039】
図1に示すように洗浄槽30の蓋33を閉じ、クランプ機構35のクランプレバー35bをロック位置に移動させることにより、蓋33を洗浄槽本体32に固定する。この状態のもとで、ポンプ6(
図2に示す)によって加圧された洗浄液を洗浄液供給管5に供給することにより、洗浄液を一方の洗浄液出口40aと他方の洗浄液出口40bに供給する。供給する圧力は、数MPa(例えば2-4MPa)から数10MPa(例えば20-40MPa)である。
【0040】
洗浄液供給管5から一方の洗浄液出口40aに供給された洗浄液は、
図9に矢印Aで示すようにノズル20の内部に入る。そしてこの洗浄液はノズル20の吐出孔26(
図4に示す)を通り、吐出部23の先端開口部25から洗浄室64に向けて第1の方向に噴出する。このとき吐出孔26の内部を流れる洗浄液によって、吐出孔26の内面に付着していた吐出物が洗い流される。
【0041】
一方、洗浄液供給管5から他方の洗浄液出口40bに供給された洗浄液は、洗浄アタッチメント50のパイプ55を通り、
図9に矢印Bで示すように、外側洗浄液噴射口72からノズル20の吐出部23に向けて第2の方向に噴出する。このため外側洗浄液噴射口72から洗浄室64に向けて噴出する洗浄液と、ノズル20から洗浄室64に噴出する洗浄液とが洗浄室64において激しく衝突し、洗浄液の激流と乱流が生じる。衝突によって洗浄液に混入した微細な気泡が洗浄作用を促進することもある。
【0042】
従来のようにノズル20の内部に洗浄液を流すだけでは、十分に洗浄することができず吐出部23の先端開口部25付近に吐出物(
図4に2点鎖線Yで示す)が残ることがあった。これに対し本実施形態のノズル洗浄装置1によれば、洗浄室24内に配置された吐出部23付近で激しく衝突する洗浄液に吐出部23がさらされることにより、吐出部23を効果的に洗浄することができた。特に、吐出部23の先端開口部25付近に付着していた吐出物も確実に除去され、ノズル20を十分洗浄することができた。
【0043】
図9に示されるように、ノズル20から噴出した洗浄液と、外側洗浄液噴射口72から噴出した洗浄液とは、矢印Cで示すように洗浄液流入室71から洗浄液排出孔73を通って洗浄ホルダ52の外に排出される。洗浄ホルダ52から排出された洗浄液は、洗浄槽30の底部へ流れる。そして洗浄液排出管10を通り、フィルタ11によって濾過されたのち、再びポンプ6によってノズル洗浄装置1に供給される。こうして洗浄液がノズル洗浄装置1とポンプ6との間を循環することにより、ノズル20が洗浄される。
【0044】
ノズルの種類や吐出物の種類によっては、ノズルの内部に洗浄液を流すだけで十分洗浄できることもある。そのような場合には、洗浄アタッチメント50を使用することなく、ノズルのみを洗浄液出口40a-40fのいずれかに取り付け、ノズルから洗浄液を噴出させればよい。
【0045】
なお本発明を実施するに当たり、ノズル洗浄装置を構成する洗浄槽や洗浄アタッチメントをはじめとして、洗浄液供給系や洗浄液回収系などの具体的な態様を必要に応じて変形して実施できることは言うまでもない。本発明に係るノズル洗浄装置は、様々な形態のノズルを洗浄する場合に使用することができる。
洗浄アタッチメントを構成するノズルカバーと洗浄ホルダとが互いに一体の部品であってもよい。また、少なくとも一対の洗浄液出口(ノズルを取り付ける洗浄液出口と、洗浄アタッチメントを取り付ける洗浄液出口)が、蓋以外の部材、例えば洗浄槽本体や補助部材などに配置されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…ノズル洗浄装置、2…洗浄設備、3…洗浄液供給系、4…洗浄液回収系、5…洗浄液供給管(洗浄液供給手段)、6…ポンプ、10…洗浄液排出管(洗浄液排出手段)、20…ノズル、20a…先端部、23…吐出部、25…先端開口部、26…吐出孔、30…洗浄槽、32…洗浄槽本体、33…蓋、40a-40f…洗浄液出口、41…栓部材、45…洗浄液流通部、50…洗浄アタッチメント、51…ノズルカバー、52…洗浄ホルダ、X1…軸線、53…接続部材、54…継手、55…パイプ、60,61…固定部材、62…ノズル挿入孔、63…ノズル保持部、64…洗浄室、71…洗浄液流入室、72…外側洗浄液噴射口、73…洗浄液排出孔。