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<図1>
  • -排気補助装置 図1
  • -排気補助装置 図2
  • -排気補助装置 図3
  • -排気補助装置 図4
  • -排気補助装置 図5
  • -排気補助装置 図6
  • -排気補助装置 図7
  • -排気補助装置 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】排気補助装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/08 20060101AFI20220523BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20220523BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F24F7/08 Z
F24F7/007 Z
F24F9/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019093687
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020186892
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000150567
【氏名又は名称】株式会社朝日工業社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 栄造
(72)【発明者】
【氏名】河野 仁志
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109396199(CN,A)
【文献】特開2001-340230(JP,A)
【文献】特開昭63-243646(JP,A)
【文献】特開昭57-071000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0113839(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101598360(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/08
F24F 7/007
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を誘導するための排気補助装置であって、
中心軸と、外壁と、一端が開放された内壁とを有する筒部と、
前記筒部の外壁と内壁との間に形成された閉空間と、
前記筒部の外壁に形成され、前記閉空間に空気を導入する空気導入口と、
前記筒部の内壁に周方向に沿って形成され、前記閉空間から排出された空気を前記内壁に沿って前記筒部の一端に向けて前記内壁内に噴出する空気噴出口と、
前記筒部の内壁の他端を閉塞する閉塞部と、を備え
前記空気噴出口から空気が噴出されたとき、前記空気噴出口の周辺に負圧が生じ、当該負圧により、前記中心軸より半径方向外側の前記内壁内の領域において、前記空気噴出口から噴出された空気の一部が前記空気噴出口を基点に渦を巻いて流れ、前記噴出された空気の一部が、前記筒部の径方向における中心位置に向かって収束しながら、前記閉塞部に向かって他端側に流れた後、前記空気噴出口に向かって一端側に折り返されるように構成された
ことを特徴とする排気補助装置。
【請求項2】
前記筒部の一端に対向する位置に前記筒部から離間して設けられ、誘導された前記排気を吸い込む吸込部を更に備えた
請求項1に記載の排気補助装置。
【請求項3】
前記筒部よりも径方向の内側の位置に設けられ、前記排気に含まれる特定成分を捕集する捕集部を更に備えた
請求項1または2に記載の排気補助装置。
【請求項4】
前記閉塞部には、開口部が形成され、
前記開口部には、前記筒部の他端側から一端側に延びる排気管が嵌合され、
前記排気管の出口は、前記排気の排出源を構成する
請求項1に記載の排気補助装置。
【請求項5】
前記排気管の出口は、前記筒部の一端よりも軸方向の外側に位置される
請求項4に記載の排気補助装置。
【請求項6】
前記空気噴出口は、前記筒部の内壁に周方向の全周に亘って形成される
請求項1~5何れか一項に記載の排気補助装置。
【請求項7】
前記筒部は、円筒状に形成される
請求項1~6何れか一項に記載の排気補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場等の作業環境では、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)等から有害物質を含んだ排気が排出される場合がある。一般に、排気の排出源の上方には、排気フードが設けられ、排気フードで排気を補足させることで、周囲に有害物質を拡散させないようにしている。
【0003】
しかし、排気の温度が低い場合には、熱上昇気流の効果が小さいため、横からの乱れ気流の影響を受けると補足効率が低下する。他方、補足効率を高めるためには、排気フードを排出源に近づけ、または、排気フードの下にビニールカーテンを垂らすことが有効であるが、障害物の存在や作業性の低下等の理由により、それらの対策ができない場合がある。
【0004】
このような問題を解決する手段としては、排気の排出源の周囲近傍の一箇所から空気を上方に噴出し、この空気に排気を誘引させて、排気を誘導する排気補助装置が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再表2004-072558号公報
【文献】特開2013-002696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような装置では、噴出した空気が拡散してしまい、排気を所望の方向に誘導することが難しい場合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決して、所望の方向に排気を容易に誘導できる排気補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、排気を誘導するための排気補助装置であって、筒部と、前記筒部の外壁と内壁との間に形成された閉空間と、前記筒部の外壁に形成され、前記閉空間に空気を導入する空気導入口と、前記筒部の内壁に周方向に沿って形成され、前記閉空間から排出された空気を前記内壁に沿って前記筒部の一端に向けて噴出する空気噴出口と、前記筒部の他端を閉塞する閉塞部と、を備えたことを特徴とする排気補助装置が提供される。
【0009】
また、前記筒部の一端に対向する位置に設けられ、誘導された前記排気を吸い込む吸込部を更に備えたことが好ましい。
【0010】
また、前記筒部よりも径方向の内側の位置に設けられ、前記排気に含まれる特定成分を捕集する捕集部を更に備えたことが好ましい。
【0011】
また、前記閉塞部には、開口部が形成され、前記開口部には、前記筒部の他端側から一端側に延びる排気管が嵌合され、前記排気管の出口は、前記排気の排出源を構成することが好ましい。
【0012】
また、前記排気管の出口は、前記筒部の一端よりも軸方向の外側に位置されることが好ましい。
【0013】
また、前記空気噴出口は、前記筒部の内壁に周方向の全周に亘って形成されることが好ましい。
【0014】
また、前記筒部は、円筒状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望の方向に排気を容易に誘導できる排気補助装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図2】第2実施形態に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図3】第1変形例に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図4】第2変形例に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図5】第3変形例に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図6】第4変形例に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図7】第5変形例に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
図8】第6変形例に係る排気補助装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。なお、図中に示す上下左右の各方向は、説明の便宜上定められたものに過ぎないものとする。
【0018】
(1)第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る排気補助装置100を示す概略断面図である。図中において、点線矢印Aは、空気の流れを示し、一点鎖線Cは、後述する筒部10の中心軸を示し、符号Gは、排気を示す。また、符号1は、排気Gの排出源としての揮発性有機化合物(VOC)を示す。
【0019】
排気補助装置100は、排気Gを誘導するための装置であり、上下方向に延びる筒部10と、筒部10の外壁11と内壁12との間に形成された閉空間20と、筒部10の外壁11に形成され、閉空間20に空気を導入する空気導入口30と、を備える。
【0020】
また、排気補助装置100は、筒部10の内壁12に周方向に沿って形成され、閉空間20から排出された空気Aを内壁12に沿って筒部10の一端(上端)10aに向けて噴出する空気噴出口40と、筒部10の他端(下端)10bを閉塞する閉塞部50と、を備える。
【0021】
また、第1実施形態に係る排気補助装置100は、主に工場等の屋内で使用されるものであり、誘導された排気Gを吸い込む吸込部60を更に備える。
【0022】
VOC1には、トルエン等が用いられる。VOC1は、シャーレ2に入れられた状態で、筒部10の径方向の内側の位置に配置される。排気Gは、VOC1が揮発して排出(発生)されたガスであり、有害物質を含んでいる。
【0023】
筒部10は、円筒状に形成される。また、筒部10は、金属材料からなり、軸方向の長さが内径よりも短くなるように形成される。但し、筒部10の材質、形状及び大きさは、任意であって良い。例えば、筒部10の材質は、樹脂材料であっても良く、また、筒部10の形状は、四角形の角筒状であっても良い。
【0024】
第1実施形態の筒部10は、いわゆる円筒状の吹出ノズルを構成するものであり、外壁11と、内壁12と、閉空間20と、閉空間20に連通する空気導入口30及び空気噴出口40と、を有する。
【0025】
外壁11及び内壁12は、それぞれ中心軸Cに沿って上下方向に延びる。また、外壁11及び内壁12は、上端及び下端の位置で互いに接続され、閉空間20を画成する。
【0026】
閉空間20は、筒部10の周方向の全周に亘って形成され、筒部10の内部を流れる空気Aの流路となる。
【0027】
空気導入口30は、左側の外壁11に形成される。空気導入口30には、給気管31を通じて送風ファン32から空気Aが送られる。
【0028】
具体的には、空気導入口30は、外壁11から径方向の外側に突出する管状に形成され、給気管31の出口31outに接続される。送風ファン32は、筒状のケーシング33内に同軸状に配置される。ケーシング33の出口33outは、給気管31の入口31inに接続される。一方、ケーシング33の入口(不図示)は、大気開放される。
【0029】
空気噴出口40は、内壁12に周方向の全周に亘って形成される。また、空気噴出口40は、上方に指向されたノズル状に形成される。
【0030】
具体的には、空気噴出口40は、内壁12に周方向の全周に亘って形成されたスリット41及びガイド部42を有する。スリット41は、内壁12の下端部を径方向に貫通して形成される。ガイド部42は、スリット41よりも下側の内壁12aの上端部から、径方向の内側の斜め上方に突出し、更に、上方に曲げられ、スリット41よりも上側の内壁12bに沿って、筒部10の上下方向の中間部分の高さ位置まで延在する。
【0031】
スリット41から排出された空気Aは、ガイド部42に沿って上方に流れ、スリット41よりも上側の内壁12bとガイド部42との隙間から噴出される。但し、空気噴出口40は、内壁12に沿って筒部10の上端10aに向けて空気Aを噴出できれば、任意の形状であって良い。
【0032】
閉塞部50には、平板状の蓋部材が用いられる。閉塞部50は、金属材料で円盤状に形成され、筒部10の下端10bに下方から気密に覆うように接続される。但し、閉塞部50は、任意の形状及び材質であって良く、例えば、樹脂材料でシート状に形成されても良い。また、例えば、筒部10を床や作業台に設置して使用する場合には、床や作業台の上面部を閉塞部50としても良い。
【0033】
一方、筒部10の上端10aには、VOC1が入れられたシャーレ2を支持する支持部51が設けられる。
【0034】
支持部51は、金属材料で格子状または網状に形成され、空気A及び排気Gを通過させるように構成される。但し、支持部51は、任意の材質及び形状であって良く、また、作業者(不図示)がシャーレ2を把持する場合等、不要であれば省略されても良い。
【0035】
吸込部60は、筒部10の上端10aに対向する位置、すなわち、筒部10の上方に設けられる。吸込部60は、排気Gを補足する排気フード61と、排気フード61に接続された排気ダクト62と、排気ダクト62に接続された排気ファン(不図示)と、を有する。
【0036】
排気フード61は、下方に向かって開口され、且つ、筒部10と同軸状に配置される。排気ダクト62は、排気フード61の上部に接続される。排気ファンは、排気フード61から排気Gを吸い込んで排気ダクト62の下流側に送るように構成される。
【0037】
第1実施形態では、筒部10において、空気導入口30を通じて閉空間20に導入された空気Aが、空気噴出口40から内壁12に沿って噴出され、排気フード61に向かって上方に流れる。
【0038】
VOC1から排出された排気Gは、空気噴出口40から噴出された空気Aに誘引されて上方に流れた後、空気Aと共に排気フード61で補足されて、排気ダクト62に吸い込まれる。
【0039】
よって、第1実施形態に係る排気補助装置100では、吸込部60の排気フード61に向けて排気Gを誘導できる。
【0040】
他方、トルエン等のVOC1から排出された排気Gは、温度が低く、熱上昇気流の効果が小さいため、横からの乱れ気流の影響を受け易い。しかし、排気補助装置100であれば、排気Gを上方に誘導できるので、このような乱れ気流の影響下でも、排気フード61で排気Gを補足できる。
【0041】
ところで、図示しないが、排気補助装置としては、排気の排出源の周囲近傍の一箇所から上方に空気を噴出し、この空気に排気を誘引させることで、排気フードに向けて排気を誘導する装置が知られている(特許文献1を参照)。
【0042】
しかしながら、この装置では、噴出された空気が上方に向かうにつれて拡散してしまい、排気フードに向けて排気を誘導することが難しい場合がある。特に、トルエン等から排出された排気は、自重が軽いので、噴出された空気によって排気が吹き飛ばされる可能性がある。その結果、排気が拡散してしまい、排気フードで補足し切れない可能性がある。
【0043】
これに対して、第1実施形態に係る排気補助装置100では、筒部10の内壁12に周方向に沿って形成された空気噴出口40から、内壁12に沿って空気Aが上方に噴出される。このとき、筒部10の径方向の内側の位置では、筒部10の下端10bが閉塞されることで、空気噴出口40の周辺に負圧が生じる。
【0044】
この負圧により、空気噴出口40から噴出された空気Aの一部は、空気噴出口40を基点に渦を巻いて流れる。すなわち、噴出された空気Aの一部は、筒部10の径方向における中心位置に向かって収束しながら、閉塞部50に向かって下方に流れた後、空気噴出口40に向かって上方に折り返される。
【0045】
一方、空気噴出口40から噴出されて上方に流れる空気Aは、渦を巻いて流れる空気Aに誘引されることで、筒部10の径方向における中心位置に向かって収束しながら上方に流れる。また、このとき、筒部10よりも径方向の外側の空気Aも、この上方に流れる空気Aに誘引されることで、筒部10の径方向における中心位置に向かって収束しながら上方に流れる。
【0046】
これにより、空気噴出口40から噴出された空気Aは、上方に向かうにつれて拡散するのを抑制できる。
【0047】
また、VOC1から排出された排気Gは、上記の渦を巻いて流れる空気Aに誘引されることで、下方に流れた後に上方に折り返される。そして、上方に折り返された排気Gは、上記の収束しながら上方に流れる空気Aに誘引されることで、筒部10の径方向における中心位置を通って上方に誘導される。そのため、自重が軽い排気Gであっても、上方に噴出する空気Aによって吹き飛ばされて拡散されるのを抑制できる。
【0048】
よって、第1実施形態であれば、所望の方向、すなわち吸込部60の排気フード61に向けて、排気Gを容易に誘導できる。
【0049】
また、第1実施形態の空気噴出口40は、筒部10の内壁12に周方向の全周に亘って形成される。また、第1実施形態の筒部10は、円筒状に形成される。そのため、空気噴出口40から噴出された空気Aを、筒部10の径方向における中心位置に向かって均一に収束できる。その結果、空気Aの乱流を抑制して、排気Gを誘導し易くできる。
【0050】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る排気補助装置200を示す概略断面図である。下記の説明では、第1実施形態と同一の構成要素に同じ符号を用い、また、第1実施形態と対応する構成要素に記号「’」等を付した符号を用い、それらの詳細な説明は省略する。
【0051】
第2実施形態に係る排気補助装置200では、閉塞部50’に開口部52が形成され、開口部52には、筒部10の下端10b側から上端10a側に延びる排気管70が嵌合される。
【0052】
また、第2実施形態に係る排気補助装置200は、主に排気Gの大気への拡散効果を高めるために、屋外に設置された排気管70に使用されるものであり、第1実施形態で述べた支持部51及び吸込部60は省略される。なお、その他の部分は、第1実施形態と同様の構成である。
【0053】
開口部52は、第2実施形態の閉塞部50’の径方向に中央部分に形成される。排気管70は、筒部10と同軸状に配置される。また、排気管70の上端には、排気Gの排出源を構成する出口71が形成される。
【0054】
排気管70の出口71は、筒部10の上端10aよりも軸方向の外側(すなわち上方)に位置される。一方、排気管70の入口(不図示)は、筒部10の下端10bよりも軸方向の外側(すなわち下方)に位置される。
【0055】
第2実施形態の閉塞部50’及び排気管70は、筒部10の内壁12及びガイド部42と共に、上側が開口された空間Sを画成する。
【0056】
第2実施形態では、排気管70の出口71から排出された排気Gは、大気に放出される。ここで、図示しないが、仮に、排気管70に対して、第2実施形態に係る排気補助装置200を設けない場合には、排気管70の出口71から排出された排気Gが、排気管70の外周面に沿って下降する可能性がある。
【0057】
特に、温度が低く、熱上昇気流の効果が小さい排気Gや、排気管70の出口71からの排出速度が遅い排気Gは、排気管70の外周面に沿って下降し易い。この場合、排気Gが大気に拡散されず、排気Gに含まれる有害物質が排気管70の下方で作業する作業者に向かって流れる虞がある。
【0058】
これに対して、第2実施形態に係る排気補助装置200では、空気噴出口40の周辺に生じた負圧により、空気噴出口40から噴出された空気Aの一部が、空間Sにおいて、空気噴出口40を基点に渦を巻いて流れる。すなわち、噴出された空気Aの一部は、排気管70の外周面に沿って下方に流れた後、空気噴出口40に向かって上方に折り返される。
【0059】
また、第2実施形態では、空気噴出口40から噴出されて上方に流れる空気Aは、渦を巻いて流れる空気Aに誘引されることで、筒部10の径方向における中心位置に向かって収束しながら上方に流れる。
【0060】
排気管70の出口71から排出された排気Gは、収束しながら上方に流れる空気Aに誘引されることで、筒部10の径方向における中心位置を通って上方に誘導される。その結果、排気管70の出口71から排気Gを上昇させて、排気Gの大気への拡散効果を高めることができる。
【0061】
従って、排気Gは、熱上昇気流の効果が小さく、また、排気管70の出口71からの排出速度が遅い場合であっても、排気管70の外周面に沿って下降するのを抑制できる。また、これにより、排気管70の下方で作業する作業者に向かって排気Gに含まれる有害物質が流れるのを抑制できる。
【0062】
よって、第2実施形態であれば、所望の方向、すなわち排気管70の出口71から上方に向けて、排気Gを容易に誘導できる。
【0063】
他方、上述した各実施形態は、以下のような変形例またはその組み合わせとすることができる。
【0064】
(第1変形例)
図3に示すように、第1変形例に係る排気補助装置300は、第1実施形態で述べた排気補助装置100に対して、捕集部としてのフィルタ部80を追加したものである。
【0065】
フィルタ部80は、筒部10よりも径方向の内側の位置に設けられ、排気Gに含まれる特定成分(粒子状物質及びガス状物質)を捕集する。
【0066】
具体的には、フィルタ部80は、上方から順に配置された、第1電荷発生部材80a、フィルタ80b、及び第2電荷発生部材80cを含む。第1及び第2電荷発生部材80a,80cは、導電性の金属材料で格子状または網状に形成され、空気A及び排気Gを通過させるように構成される。また、フィルタ80bは、不織布で形成され、空気A及び排気Gを通過させると共に、排気Gに含まれる粒子状物質及びガス状物質を付着させて捕集するように構成される。
【0067】
第1及び第2電荷発生部材80a,80c及びフィルタ80bは、円盤状に形成され、ガイド部42の内周面に取り付けられる。なお、第1及び第2電荷発生部材80a,80c及びフィルタ80bは、任意の材質、形状及び位置であって良く、例えば、ガイド部42よりも上方に位置する筒部10の内壁12に取り付けられても良い。また、例えば、フィルタ80bは、第2電荷発生部材80cの下方に配置されても良い。
【0068】
第1電荷発生部材80aは、正または負の電荷を発生させて、排気Gに含まれる粒子状物質を正または負に帯電させるように構成される。第2電荷発生部材80cは、第1電荷発生部材80aとは逆の極性の電荷を発生させて、排気Gに含まれる粒子状物質を引き寄せるように構成される。例えば、第1及び第2電荷発生部材80a,80cは、互いに逆の極性の電圧を印加する電源(不図示)に接続されており、また、互いに絶縁されている。但し、第1及び第2電荷発生部材80a,80cは、電源に接続される代わりに、正の電荷を発生させるナイロンや、負の電荷を発生させるテフロン(登録商標)等をコーティングしたものであっても良い。
【0069】
第1変形例では、筒部10よりも径方向の内側の位置において、排気Gが下方に流れて上方に折り返される際に、排気Gに含まれるガス状物質をフィルタ80bに付着させて捕集できる。また、その際、第1電荷発生部材80aで発生した電荷により、排気Gに含まれる粒子状物質が帯電される。そして、その帯電された粒子状物質を、第2電荷発生部材80cで発生した電荷に引き寄せることで、フィルタ80bに付着させて捕集できる。なお、フィルタ部80は、フィルタ80bのみで構成されても良い。
【0070】
(第2変形例)
図4に示すように、第2変形例に係る排気補助装置400は、第1実施形態で述べた排気補助装置100に対して、捕集部としての吸着部材81を追加したものである。
【0071】
吸着部材81は、筒部10よりも径方向の内側の位置に設けられ、排気Gに含まれる特定成分(粒子状物質、ガス状物質)を捕集する。
【0072】
第2変形例の吸着部材81は、消臭材(消臭ビーズ)等であり、閉塞部50の上面に敷設される。
【0073】
第2変形例では、筒部10よりも径方向の内側の位置において、排気Gが下方に流れて上方に折り返される際に、排気Gが吸着部材81に接触(慣性衝突)する。これにより、排気Gに含まれる粒子状物質やガス状物質(臭気等)を吸着部材81に吸着させて捕集できる。
【0074】
(第3変形例)
図5に示すように、第3変形例に係る排気補助装置500は、第1実施形態で述べた排気補助装置100に対して、捕集部としてのエリミネータ82を追加したものである。
【0075】
エリミネータ82は、筒部10よりも径方向の内側の位置に設けられ、排気Gに含まれる特定成分(粒子状物質、ガス状物質)を捕集する。
【0076】
エリミネータ82は、断面L字状に折り曲げられた複数の金属板82aを積層して構成される。金属板82a同士の間には、空気A及び排気Gを通過させる隙間が形成される。また、第3変形例のエリミネータ82は、筒状に形成され、筒部10と同軸状に配置される。
【0077】
第3変形例の閉塞部50’’は、桶状に形成され、水を溜めるように構成される。また、図示しないが、第3変形例では、閉塞部50’’に溜められた水を上方に向けて噴霧する噴霧器と、閉塞部50’’に溜められた水を外部に排出する排出口と、が設けられる。
【0078】
第3変形例では、筒部10よりも径方向の内側の位置において、排気Gが下方に流れて上方に折り返される際に、噴霧器から噴霧された水分が排気Gに加えられ、その排気Gがエリミネータ82を通過する。これにより、排気Gに含まれる粒子状物質や水溶性のガス状物質をエリミネータ82に付着させて捕集できる。また、エリミネータ82に付着した粒子状物質等は、第3変形例の閉塞部50’’に落下して溜められ、排出口から排出できる。
【0079】
(第4変形例)
図6に示すように、第4変形例に係る排気補助装置600は、第1実施形態で述べた排気補助装置100に対して、閉塞部50の径方向の中央部分から上方に延びる筒状部材53を追加したものである。
【0080】
筒状部材53は、円筒状に形成され、筒部10と同軸状に配置される。筒状部材53の上端は、筒部10の上端10aよりも軸方向の外側(すなわち上方)に位置される。また、第4変形例の支持部51’は、筒状部材53の上端に設けられる。但し、筒状部材53の形状は、任意であって良く、例えば、四角形の角筒状であっても良い。また、支持部51’は、省略されても良い。
【0081】
第4変形例の閉塞部50 及び筒状部材53は、筒部10の内壁12及びガイド部42と共に、上側が開口された空間S’を画成する。
【0082】
第4変形例では、空気噴出口40から噴出された空気Aの一部は、筒状部材53の外周面に沿って下方に流れた後、空気噴出口40に向かって上方に折り返される。
【0083】
また、VOC1から排出された排気Gは、このように渦を巻いて流れる空気Aに誘引されることで、下方に流れた後に上方に折り返される。そして、上方に折り返された排気Gは、収束しながら上方に流れる空気Aに誘引されることで、筒部10の径方向における中心位置を通って上方に誘導される。よって、第4変形例でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0084】
(第5変形例)
図7に示すように、第5変形例に係る排気補助装置700では、第1実施形態で述べた排気補助装置100に対して、周方向の一部(図示例では、右側)の空気噴出口40を閉塞したものである。すなわち、第5変形例では、スリット41よりも上側の内壁12bからガイド部42の内周面にかけて、空気噴出口40を上方から覆うカバー部材90(例えば、粘着テープ)が設けられる。
【0085】
第5変形例であれば、筒部10よりも右側に位置する作業者(不図示)は、右側の空気噴出口40から空気Aを噴出されることなく、筒部10よりも径方向の内側に手を入れて作業できる。
【0086】
また、第5変形例では、左側の空気噴出口40から噴出された空気Aの一部は、左側の空気噴出口40を基点に渦を巻いて流れることで、筒部10よりも右側の位置から空気Aを誘引する。これにより、作業者に向かって排気Gが流れるのを抑制できる。
【0087】
(第6変形例)
排気Gの排出源は、筒部10よりも径方向の外側に配置されても良い。具体的には、図8に示すように、第6変形例の排気補助装置800は、第5変形例で述べた排気補助装置700に対して、VOC1が入れられたシャーレ2を筒部10よりも右側に配置させたものである。なお、第6変形例では、図7に示した支持部51を設ける必要がないので、シャーレ2は、例えば作業者の手Hで支持されている。
【0088】
第6変形例では、第5変形例でも述べたように、左側の空気噴出口40から噴出された空気Aの一部が、左側の空気噴出口40を基点に渦を巻いて流れることで、筒部10よりも右側の位置から空気Aを誘引する。これにより、空気Aは、筒部10よりも径方向の外側の位置から内側の位置に流れ込み、閉塞部50に向かって下方に流れた後、左側の空気噴出口40に向かって上方に折り返される。そして、上方に折り返された空気Aは、筒部10の径方向における中心位置に向かって収束しながら上方に流れる。
【0089】
また、第6変形例では、VOC1から排出された排気Gは、このように流れる空気Aに誘引されることで、筒部10よりも径方向の外側の位置から内側の位置に向かって吸い込まれた後、下方から上方に折り返され、更に、筒部10の径方向における中心位置を通って上方に誘導される。
【0090】
(第7変形例)
図示しないが、排気の排出源は、任意の種類であって良い。例えば、排気の排出源は、トルエン等のVOCを発生させる印刷機のコーター機、オイルミストを発生させる調理器具、煙を発生させるタバコ、水素やアンモニアを発生させる燃料電池の製造装置、メタンや硫化水素を発生させるメタン発酵装置、硫化水素を発生させる排水槽、ホルムアルデヒドを発生させる病理検査機器であっても良い。
【0091】
(第8変形例)
図示しないが、排気補助装置は、上方以外の方向(例えば、左方向)に排気を誘導するように構成されても良い。例えば、第8変形例では、筒部は、左右方向に延びて配置され、空気噴出口は、筒部の一端(左端)に向けて空気を噴出し、また、閉塞部は、筒部の他端(右端)を閉塞する。
【符号の説明】
【0092】
1 VOC(排出源)
10 筒部
20 閉空間
30 空気導入口
40 空気噴出口
50 閉塞部
60 吸込部
100 排気補助装置
A 空気
G 排気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8