(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】流体移送手段
(51)【国際特許分類】
F04D 3/02 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
F04D3/02 A
(21)【出願番号】P 2019116486
(22)【出願日】2019-06-24
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105752621(CN,A)
【文献】実開昭60-016415(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第10260893(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位部材(1)が積層されて固定されると共に、この積層体(2)の回転/回動駆動機構を有し
、前記複数の単位部材(1)は周期的な位相のずれを有して積層されるようにし、前記回転/回動駆動機構は軸部(3)を有し、前記軸部(3)と単位部材(1)とは対応する嵌合部を有するようにし、前記嵌合部は対応する凹部(4)と凸部(5)により形成されるようにし、2種類の単位部材(1A、B)を形成し、単位部材(1A)は、上部に凹部(4)を有する貫通孔が穿設され、単位部材(1B)は、上部から左回転120°の位置に凹部(4)を有する貫通孔が穿設され、単位部材(1B)を裏返すと、上部から右回転120°の位置に凹部(4)を有する貫通孔が位置することとなり、軸部(3)には90°位相で前記凹部(4)に嵌合する凸部(5)を形成したことを特徴とする流体移送手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スパイラルポンプ、スクリューポンプ、スラリーポンプその他の各種流体移送手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体移送手段としてスクリューポンプに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、スクリューポンプは、回転するスクリューで揚水する開放形のポンプであり、例えば雨水ポンプ場、下水処理場の中のポンプ設備などにおける揚水機として用いられる。
この従来提案によると、スクリュー軸をその軸芯回りに回転させながら、且つスクリュー軸の長手方向に対して平行に切断機を走行させながら、スクリュー羽根の少なくとも先端部を切断除去し、その後、切断部に溶接された羽根新規部をその外径寸法が所定の寸法となるように切断加工することにより、スクリュー羽根の軸芯および回転バランスを維持しやすい、というものである。
しかし、使用時に水圧で溶接部が破損することがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来より破損し難い流体移送手段を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の流体移送手段は、複数の単位部材が積層されて固定されると共に、この積層体の回転/回動駆動機構を有するようにしたことを特徴とする。
この流体移送手段は、複数の単位部材が積層されて固定されるようにしたので、固定された積層体により流体移送羽根を形成することが出来る。
そして、この積層体の回転/回動駆動機構を有するようにしたので、固定された積層体たる流体移送羽根を回転駆動させたり回動駆動することにより流体を移送することが出来る。
ここで、前記流体の内容として、排水その他の液体、パウダー、ペレット、砂/土、粒状/粉状その他の固体、液体に粒状/粉状の物質が含有されるスラリー、流動状の汚泥、風、酸素ガス、オゾンガス等の気体などを例示することが出来る。
【0006】
前記流体移送手段の用途として、スラリー移送ポンプ構成機構、ルーツ・ブロワー構成機構、ファン構成機構、送風機構成機構、サーキュレーター構成機構、循環ポンプ構成機構、水揚げポンプ構成機構、真空ポンプ構成機構、熱風移送構成機構、ガス溶解構成機構、土壌の掘削機構(アースオーガー)、エアーのバブリング構成機構、流体の対流構成機構、デカンタ型脱水機構(流体移送手段を円錐状に形成)、デカンタ型遠心分離機構などを例示できる。
前記流体移送手段の形状として、スクリュー型ポンプ、スパイラル式ポンプなどを例示できる。
前記流体移送手段の駆動の態様としては、回転又は/及び回動であって、正回転のみならず逆回転もするものを含む。
前記流体移送手段の移送の態様として、水平方向の移送、斜め方向の移送、垂直方向の移送などを例示することが出来る。
前記単位部材の材質として、鉄、ステンレス(sus)、アルミニウム、チタン、真鍮、炭化ケイ素(Si-C)、窒化ケイ素(Si-N)、ムライト、シリカ、アルミナ、塩化ビニル、PPその他のプラスチックなどを例示することが出来る。
【0007】
(2)前記複数の単位部材は周期的な位相のずれを有して積層されるようにしてもよい。
このように構成し、複数の単位部材は周期的な位相のずれを有して積層されるようにすると、略スクリュー状、略スパイラル状などの適宜の形状の羽根部を形成することが出来る。
【0008】
(3)前記複数の単位部材が積層され両端から固定されるようにしてもよい。
このように構成し、複数の単位部材が積層され両端から固定されるようにすると、簡易な構造で流体移送羽根を形成することが出来る。例えば、両端から螺子で締め込んで相互間の摩擦力により固定するようにすることが出来る。
【0009】
(4)前記回転/回動駆動機構は軸部を有し、前記軸部と単位部材とは対応する嵌合部を有するようにしてもよい。
このように構成し、回転・回動駆動機構は軸部を有し軸部と単位部材とは対応する嵌合部を有するようにすると、軸心の軸部とこれに嵌合する周囲の単位部材により流体移送羽根を形成することが出来る。
【0010】
(5)前記嵌合部は対応する凹部と凸部により形成されるようにしてもよい。
このように構成し、嵌合部は対応する凹部と凸部により形成されるようにすると、単純な形状により嵌合部を構成することが出来る。
【0011】
(6)前記周期的な位相のずれを有して積層される単位部材は同一部材を反転して積層できる構造にするようにしてもよい。
このように構成し、周期的な位相のずれを有して積層される単位部材は同一部材を反転して積層できるようにすると、成型する単位部材の種類を低減することが出来る。
【0012】
(7)前記単位部材の外端を流線型にするようにしてもよい。
このように構成し、単位部材の外端を流線型にすると、回転する羽根部に対する外筒の内壁との相互作用を滑らかなものとすることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
スクリュー軸とスクリュー羽根とを溶接して成るスクリューポンプ(溶接部が破損し易い)などではなく、固定された積層体たる流体移送羽根を回転駆動させたり回動駆動することにより流体を移送することができるので、従来より破損し難い流体移送手段を提供することが出来る。
2種類の単位部材(1A、B)を形成し、単位部材(1A)は、上部に凹部(4)を有する貫通孔が穿設され、単位部材(1B)は、上部から左回転120°の位置に凹部(4)を有する貫通孔が穿設され、単位部材(1B)を裏返すと、上部から右回転120°の位置に凹部(4)を有する貫通孔が位置することとなり、軸部(3)には90°位相で前記凹部(4)に嵌合する凸部(5)を形成したこととし、周期的な位相のずれ(30°)を有して積層される単位部材1A、Bのうち、単位部材1Bは同一部材を反転して積層できるようにしたので、成型する単位部材1の種類を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施形態1の流体移送手段の構造を説明する図面代用写真。
【
図2】この発明の実施形態1の流体移送手段の概念を説明する図面代用写真。
【
図3】この発明の実施形態2の流体移送手段の単位部材の構造を説明する平面図。
【
図4】この発明の実施形態2の流体移送手段の軸部の構造を説明する断面図。
【
図5】この発明の実施形態2の流体移送手段の単位部材と軸部の嵌合の仕方の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔実施形態1〕
図1に示すように、この実施形態の流体移送手段は、複数の単位部材1が積層されて固定されると共に、この積層体2の回転/回動駆動機構(図示せず)を有するようにした。単位部材1の構造、積層の仕方の概念を
図2に示す。前記回転/回動駆動機構として、モータを用いた。
具体的には、前記回転/回動駆動機構は軸部3を有し、前記軸部3と単位部材1とは対応する嵌合部を有するようにした。前記嵌合部は対応する凹部4と凸部5により形成されるようにした(実施形態2の
図3~5を参照)。
前記複数の単位部材1は周期的な位相のずれを有して積層されるようにした。位相のずれは30°ピッチとし、厚み3mmの単位部材1を12枚並べると1周(36mm)して戻ってくるようにした。
前記単位部材1の材質として、耐熱性、耐薬品性が高い炭化ケイ素(Si-C)で成型した。前記単位部材1の外端を流線型にした。
【0016】
前記流体移送手段の移送の態様として、水平方向の移送、斜め方向の移送、垂直方向の移送などをするようにした。前記流体移送手段の駆動の態様として、回転や回動であって正回転や逆回転をするようにした。すなわち、使用中に排水中の活性炭がスクリュー羽根に噛んで回転が停止した時、逆回転して噛んだ活性炭を外した後、再度正回転するようにした。
この流体移送手段の形状としては、スクリュー(羽根)型ポンプ、スパイラル(略螺旋状)式ポンプであり、スクリューポンプ、スパイラルポンプとも言える。前記流体の内容として、水(排水、水)に粒状や粉状の活性炭が含有されるスラリーを移送した。すなわち、この流体移送手段の用途として、スラリー移送ポンプ構成機構とするようにした。
【0017】
次に、この実施形態の流体移送手段の使用状態を説明する。
この流体移送手段は、複数の単位部材1が積層されて固定されるようにしたので、固定された積層体2により流体移送羽根を形成することが出来た。
そして、この積層体2の回転/回動駆動機構を有するようにしたので、固定された積層体2たる流体移送羽根を回転駆動させたり回動駆動することにより流体を移送することが出来た。
したがって、スクリュー軸とスクリュー羽根とを溶接して成るスクリューポンプ(溶接部が破損し易い)などではなく、固定された積層体2たる流体移送羽根を回転駆動させたり回動駆動することにより流体を移送することができるので、従来より破損し難いという利点を有する。
【0018】
また、複数の単位部材1は周期的な位相のずれを有して積層されるようにしたので、略スクリュー状、略スパイラル状などの形状の羽根部を形成することが出来た。さらに、回転・回動駆動機構は軸部3を有し軸部3と単位部材1とは対応する嵌合部を有するようにしたので、軸心の軸部3とこれに嵌合する周囲の単位部材1により流体移送羽根を形成することが出来た。
そのうえ、嵌合部は対応する凹部4と凸部5により形成されるようにしたので、単純な形状により嵌合部を構成することが出来た。また、単位部材1の外端を流線型にしたので、回転する羽根部に対する外筒の内壁との相互作用を滑らかなものとすることが出来た。
【0019】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2を前記実施形態との相違について説明する。
図3~5に示すように、この実施形態では、周期的な位相のずれを有して積層される単位部材1は同一部材を反転して積層できる構造にするようにした。
図3に示すように、2種類の単位部材1(羽根)A、Bを形成した。図示左側の単位部材1(羽根)Aは、上部に凹部4を有する貫通孔が穿設されている。図示中央の単位部材1(羽根)Bは、上部から左回転120°の位置に凹部4を有する貫通孔が穿設されている。図示中央の単位部材1(羽根)Bを裏返すと、上部から右回転120°の位置に凹部4を有する貫通孔が位置することとなる(図示右側)。
一方、
図4に示すように、φ20mm軸部3(シャフト)には90°位相で前記凹部4に嵌合する凸部5を形成した。
そして、
図5に示すように、軸部3(シャフト)に対し2種類の単位部材1(羽根)A、Bを、単位部材1(羽根)A→単位部材1(羽根)B→単位部材1(羽根)Bの裏、単位部材1(羽根)A→単位部材1(羽根)B→単位部材1(羽根)Bの裏の30°位相として順番の嵌合していった。これにより、単位部材1(羽根)は30°位相×12羽根で360°の円となるようにし、円となった12枚でスパイラルの形状となるようにした。
このように、周期的な位相のずれ(30°)を有して積層される単位部材1(羽根)A、Bのうち、単位部材1(羽根)Bは同一部材を反転して積層できるようにしたので、成型する単位部材1の種類を低減することが出来た。
【0020】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3を上記実施形態との相違について説明する。
この実施形態では、前記複数の単位部材1が積層され両端から螺子5で締め込んで固定されるようにした(
図2の概念図を参照)。
このように、複数の単位部材1が積層され両端から固定されるようにしたので、簡易な構造で流体移送羽根を形成することが出来た。具体的には、両端から螺子5で締め込んで相互間の摩擦力により固定することが出来た。
【0021】
(実施例)
実施形態1に示した態様(ピッチ等の細部は異なる)で、複数の単位部材を積層したスパイラル羽根(積層体)を外筒内に収容し、これをモータ駆動する流体移送手段(スパイラルポンプ)を形成して、流体としてスラリーを移送した。
具体的には、厚み3mmの単位部材について、位相のずれを60°ピッチとし、この単位部材を6枚並べると1周(18mm)して戻ってくるスパイラル羽根を構成し、これを16段連接することにより全長288mmの積層体を形成した。スパイラル羽根の外周はφ66.5mm、外筒の内径はφ67.5mmで、相互間のクリアランスを0.5mmとした。
一方、回転/回動駆動機構として、東芝インダクション・モータ(三相、2P)を使用した。また、流体として、水100Lに対し活性炭30kgを混ぜたスラリーを用意した。そして、34,00rpm/60Hz、2.2kWでモータを駆動することにより、前記スラリーを14L/分(840L/時)で移送することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0022】
従来より破損し難いことによって、種々の流体移送手段の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 単位部材
2 積層体
3 軸部
4 凹部
5 凸部