(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】可変速伝達装置およびこれを用いたシステム
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20220523BHJP
F16H 37/02 20060101ALI20220523BHJP
F16D 35/00 20060101ALI20220523BHJP
F16H 15/40 20060101ALI20220523BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20220523BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F16H49/00 Z
F16H37/02 A
F16D35/00 601L
F16H15/40
H02K7/116
H02K7/10 A
(21)【出願番号】P 2019500510
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 EP2017067132
(87)【国際公開番号】W WO2018007605
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】102016000071646
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ボッカダモ,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ミラーニ,ジュリアーノ
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-235558(JP,A)
【文献】特開平08-149790(JP,A)
【文献】特開2003-156072(JP,A)
【文献】特開平07-208575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
F16H 37/02
F16D 35/00
F16H 15/40
H02K 7/116
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定速ドライバ(3)と、
前記定速ドライバ(3)によって駆動されて回転するように構成された回転負荷(5)と、
前記
回転負荷(5)の回転速度を制御可能に変化させるコントローラ(12)と、
前記定速ドライバ(3)と前記
回転負荷(5)との間に配置された可変速伝達装置(11)と
を備えており、
前記可変速伝達装置(11)は、
第1の入力シャフト(23)と
、出力シャフト(27)と
、前記第1の入力シャフト(23)に駆動可能に接続されたリングギア(31)と、前記出力シャフト(27)に駆動可能に接続されたサンギア(39)と、前記リングギア(31)と前記サンギア(39)とに歯合する複数の遊星ギア(35、35A,35B)と、第2の入力シャフト(25)と一体的に形成され、前記複数の遊星ギア(35、35A,35B)を支持する遊星キャリア(33)と、を有し、前記リングギア(31)と、前記サンギア(39)と、前記遊星キャリア(33)とが同軸である速度加算ギア機構(21)
と、
前記定速ドライバ(3)に機械的に結合し、前記速度加算ギア機構(21)の前記第2の入力シャフト(25)の速度を変更するように構成された連続可変伝達デバイス(43;143;243;343)と、を備え、
前記出力シャフト(27)は、前記回転負荷(5)に駆動可能に結合し、
前記第1の入力シャフト(23)は、前記定速ドライバ(3)に駆動可能に結合し、前記出力シャフト(27)の速度は、前記第1の入力シャフト(23)および前記第2の入力シャフト(25)の速度の関数であり
、
前記連続可変伝達デバイス(43;143;243;343)は、前記定速ドライバ(3)の回転速度を一定にしたままで前記出力シャフト(27)に駆動可能に結合した前記
回転負荷
(5)の回転速度を変更できるように、前記コントローラ(12)に機能的に結合している、システム(1)。
【請求項2】
前記連続可変伝達デバイス(43;143;243;343)は、駆動部材(61;161;245;347)および被駆動部材(63;163;247;345)を備え、前記駆動部材
(61;161;245;347)は、前記定速ドライバ(3)に機械的に結合し、前記被駆動部材
(63;163;247;345)は、前記速度加算ギア機構(21)の前記第2の入力シャフト(25)に機械的に結合している、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記被駆動部材
(63;163;247;345)は、前記駆動部材
(61;161;245;347)に実質的に同軸に配置されている、請求項2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記駆動部材(61;161;245;347)および前記被駆動部材(63;163;247;345)は、両者の間で可変のトルクを伝達するように構成され、前記第2の入力シャフト(25)の速度は、前記駆動部材
(61;161;245;347)と前記被駆動部材
(63;163;247;345)との間の伝達トルクを調整することによって変更される、請求項2または3に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記連続可変伝達デバイス(43;343)は、磁気継手を備える、請求項1乃至4のいずれか1
項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記連続可変伝達デバイス(243)は、流体粘性ドライバを備える、請求項1乃至4のいずれか1
項に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記連続可変伝達デバイス(143)は、前記定速ドライバ(3)に駆動可能に結合した入力トラクションリング(161)と、前記速度加算ギア機構(21)の前記第2の入力シャフト(25)に駆動可能に結合した出力トラクションリング(163)と、前記入力トラクションリングおよび前記出力トラクションリングに摩擦を伴って接触した複数のトラクションプラネット(165)とを備え、各々の
前記トラクションプラネット
(165)は、各々の
前記トラクションプラネット
(165)に傾けることができる回転軸をもたらすように動作可能に構成された遊星軸上に取り付けられている、請求項1乃至4のいずれか1
項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記リングギア(31)が内歯ギアである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記速度加算ギア機構(21)が複合遊星機構を有し、前記リングギア(31)が外歯ギアであり、前記複数の遊星ギア(35、35A,35B)は、第1の遊星ギア(35A)と第2の遊星ギア(35B)の対を少なくとも1つ有し、当該第1の遊星ギア(35A)と第2の遊星ギア(35B)の対は前記遊星キャリア(33)に対して共通の軸(37)で支持され、前記第1の遊星ギア(35A)が前記リングギア(31)と歯合し、前記第2の遊星ギア(35B)が前記サンギア(39)と歯合する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記連続可変伝達デバイス(343)と前記速度加算ギア機構(21)とが同軸に配置されている、請求項9に記載のシステム(1)。
【請求項11】
前記連続可変伝達デバイス
(43;143;243;343)を、駆動シャフト(13)と前記速度加算ギア機構(21)の前記第2の入力シャフト(25)との間に配置された複数のギアまたは歯車(51、52、53;45;41)によって形成された固定比のギア列に組み合わせることができる、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項12】
可変速の回転負荷(5)を動作させるための方法であって、
定速ドライバ(3)に駆動可能に結合された第1の入力シャフト(23)と、回転負荷(5)に駆動可能に結合された出力シャフト(27)と、前記第1の入力シャフト(23)に駆動可能に接続されたリングギア(31)と、前記出力シャフト(27)に駆動可能に接続されたサンギア(39)と、前記リングギア(31)と前記サンギア(39)とに歯合する複数の遊星ギア(35、35A,35B)と、第2の入力シャフト(25)と一体であり、前記複数の遊星ギア(35、35A,35B)を支持する遊星キャリア(33)と、を有し、前記出力シャフト(27)の速度は前記第1の入力シャフト(23)および前記第2の入力シャフト(25)の速度の関数であり、前記リングギア(31)と、前記サンギア(39)と、および前記遊星キャリア(33)とが同軸に配置されている速度加算ギア機構(21)を介して、前記回転負荷(5)を、
前記定速ドライバ(3)によっ
て駆動するステップと、
前記定速ドライバ(3)からの動力の一部を、前記定速ドライバ
(3)および前記速度加算ギア機構
(21)の前記第2の入力シャフト
(25)に機械的に結合した連続可変伝達デバイス(43;143;243;343)を介して伝達することによって、前記回転負荷(5)の速度を変化させるステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記連続可変伝達デバイス(43;143;243;343)は、磁気継手、流体粘性ドライバ、ならびに入力トラクションリングと、出力トラクションリングと、前記入力トラクションリングおよび前記出力トラクションリングに摩擦を伴って接触した両者の間の複数のトラクションプラネットとの組み合わせ
、のうちの1つを備える、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記連続可変伝達デバイス
(43;143;243;343)は、駆動部材(61;161;245;347)および被駆動部材(63;163;247;345)を備え、前記駆動部材
(61;161;245;347)は、前記定速ドライバ(3)に機械的に結合し、前記被駆動部材
(63;163;247;345)は、前記速度加算ギア機構(21)の前記第2の入力シャフト(25)に機械的に結合し、前記回転負荷(5)の速度を変化させるステップは、前記駆動部材
(61;161;245;347)と前記被駆動部材
(63;163;247;345)との間の伝達トルクを変化させることによって前記第2の入力シャフト
(25)の速度を調整するステップを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記リングギア(31)が内歯ギアである、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記速度加算ギア機構(21)が複合遊星機構を有し、前記リングギア(31)が外歯ギアであり、前記複数の遊星ギア(35、35A,35B)は、第1の遊星ギア(35A)と第2の遊星ギア(35B)の対を少なくとも1つ有し、当該第1の遊星ギア(35A)と第2の遊星ギア(35B)の対は前記遊星キャリア(33)に対して共通の軸(37)で支持され、前記第1の遊星ギア(35A)が前記前記リングギア(31)と歯合し、前記第2の遊星ギア(35B)が前記サンギア(39)と歯合する、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記速度加算ギア機構(21)と前記連続可変伝達デバイス(343)とが同軸に配置されている、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、被駆動機械とドライバとを備えるシステムに関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、定速のドライバが例えば圧縮機または圧縮機列などの可変速の回転機械を駆動して回転させるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの工業用途において、電気モータなどの一定の回転速度で回転するドライバを使用して回転負荷を駆動する必要性が存在する。いくつかの状況において、回転負荷は、圧縮機などのターボ機械である。大型の軸流または遠心圧縮機が、典型的には、パイプラインにおいて、パイプラインを通って輸送されるガスを加圧するために使用される。大型の遠心または軸流圧縮機は、天然ガスを液化させるために、いわゆるLNG用途にも使用される。圧縮機は、そのような設備において、天然ガスを冷却する密閉サイクルに用いられる冷媒流体を処理するために使用される。
【0003】
いくつかの用途においては、回転負荷の回転速度を変化させる必要があり、回転速度は、例えば定格回転速度の約70%~約105%の間で変更され得る。電気モータは、配電網と電気モータとの間に可変周波数ドライバを介在させることによって、可変の速度で回転させることが可能である。可変周波数ドライバは、電気モータが必要とするきわめて大きな電力を変換しなければならないため、複雑、高価、かつ厄介な構成要素である。大型の圧縮機を駆動するための電気モータの典型的な用途は、1~数十MWの電力を必要とする可能性がある。
【0004】
したがって、ドライバによって駆動される可変速の負荷の回転速度の調節について、より好都合なやり方を可能にするシステムが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、先行技術の上記の欠点に対処するために、好ましくは実質的に一定の回転速度で回転するように構成された定速ドライバと、おそらくは可変の速度でドライバによって駆動されて回転するように構成された回転負荷と、負荷の回転速度を制御可能に変更するコントローラと、定速ドライバと負荷との間に配置された可変速伝達装置とを備えるシステムが開示される。本明細書に開示される実施形態によれば、可変速伝達装置は、第1の入力シャフトと、第2の入力シャフトと、出力シャフトとを有する速度加算ギア機構を備えることができる。いくつかの実施形態において、出力シャフトは、回転負荷に駆動可能に結合する。第1の入力シャフトを、定速ドライバに駆動可能に結合させることができる。出力シャフトの速度は、第1の入力シャフトおよび第2の入力シャフトの速度の関数である。連続可変伝達デバイスを、定速ドライバ、したがって速度加算ギア機構の第1の入力シャフト、ならびに速度加算ギア機構の第2の入力シャフトに、機械的に結合させることができる。連続可変伝達デバイスは、第2の入力シャフトの速度を変更するように構成される。定速ドライバからの動力の大部分は、連続可変伝達デバイスを通過することなく、速度加算ギア機構の第1の入力シャフトから出力シャフトへと、速度加算ギア機構を通って伝達される。典型的には50%未満であり、好ましくは30%未満であり、より好ましくは20%未満である定速ドライバからの動力の一部分だけが、連続可変伝達デバイスを通過し、速度加算ギア機構の第2の入力シャフトを介して速度を増し、あるいは減らすように、連続可変伝達デバイスによって調節される。連続可変伝達デバイスは、定速ドライバの回転速度、したがって速度加算ギア機構の第1の入力シャフトの回転速度が、一定のままであっても、速度加算ギア機構の出力シャフトの回転速度、したがってこの出力シャフトに駆動可能に結合した負荷の速度を、調節することができるように、コントローラに機能的に接続される。
【0007】
速度加算ギア機構の第1の入力シャフトを、定速ドライバに直接的または間接的に結合させることができ、すなわち両者の間にギアボックスまたは任意の他の機械的な装置を配置しなくても、配置してもよい。したがって、速度加算ギア機構の第1の入力シャフトは、定速ドライバと同じ回転速度で回転することができ、あるいは異なる速度で回転することができる。同様に、速度加算ギア機構の出力シャフトを、負荷に直接結合させることができ、あるいは出力シャフトと負荷との間にギアボックスを設けてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、負荷は、例えば遠心、軸流、または混合圧縮機、あるいは任意の他の被駆動ターボ機械、またはレシプロ圧縮機、あるいは他の回転負荷など、1つの回転機械を含むことができる。他の実施形態において、負荷は、2つ以上の回転機械を含むことができる。後者は、同じ回転速度または異なる回転速度で回転する必要があるかもしれない。必要であれば、異なる回転速度をもたらすために、順に配置された回転被駆動機械の間にギアボックスを配置することができる。
【0009】
典型的な実施形態において、連続可変伝達デバイスは、駆動(mover)部材および被駆動部材を備える。駆動部材を、定速ドライバに結合させることができる。被駆動部材を、駆動部材と実質的に同軸に配置することができる。被駆動部材を、速度加算ギア機構の第2の入力シャフトに結合させることができる。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、連続可変伝達デバイスは、磁気継手を備える。磁気継手を、導電性部材と協働する円形に並べられた磁石で構成することができ、磁石と導電性部材とがお互いに対して回転するとき、渦電流が発生する。渦電流が、磁石によって生成された磁場と協働することで、磁石装置から導電性部材へと、あるいはその反対に、トルクが伝達される。
【0011】
磁気継手は、永久磁石、電磁石、または両方を使用することができる。磁気継手を介して伝達される動力の量を、例えば電磁石が使用される場合に、磁場の強度を制御することによって変更、すなわち調整することができる。他の実施形態においては、磁気継手を介して伝達される動力を、磁石と導電性部材との間の距離を調整することによって変更することができる。
【0012】
他の実施形態において、連続可変伝達デバイスは、流体粘性(hydro viscous)ドライバを備える。流体粘性ドライバは、駆動部材および被駆動部材を備える。駆動部材は、少なくとも1つの駆動ディスクを備え、被駆動部材は、少なくとも1つの被駆動ディスクを備える。2つのディスクは互いに対向し、間にギャップを形成する。他の実施形態において、駆動部材は複数の駆動ディスクを備え、被駆動部材は複数の被駆動ディスクを備える。各々の駆動ディスクは、各々の被駆動ディスクが続けて配置された2つの駆動ディスクの間に配置され、逆も同様であるように、被駆動ディスクと対をなす。被駆動ディスクと対向するそれぞれの駆動ディスクとの各々の対の間に、ギャップが形成される。ギャップは、粘性摩擦によって駆動ディスクから被駆動ディスクへとトルクを伝達する粘性液体で満たされる。各々の対の被駆動ディスクと駆動ディスクとの間のギャップの幅を、駆動部材から被駆動部材へと伝達されるトルクを調整するために調整することができる。
【0013】
さらなる実施形態において、連続可変伝達デバイスは、定速ドライバに駆動可能に結合した入力トラクションリングと、速度加算ギア機構の第2の入力シャフトに駆動可能に結合した出力トラクションリングと、入力トラクションリングおよび出力トラクションリングに摩擦を伴って接触した複数のトラクションプラネットとを含む。各々のトラクションプラネットは、各々のトラクションプラネットに傾けることができる回転軸を提供するように動作可能に構成された遊星軸に取り付けられる。連続可変伝達デバイスを介して伝達されるトルクは、トラクションプラネットの傾けることができる軸の角度位置を調整することによって変更される。
【0014】
速度加算ギア機構は、遊星ギア列を備えることができる。ここで最も広い意味で理解されるように、遊星ギア列は、少なくとも2つの互いに噛み合うギアからなる機構であり、これらのギアのうちの少なくとも1つが、これらの少なくとも2つの互いに噛み合うギアのうちの他方のギアの回転軸の周囲を回転する回転部材上に無為に支持されている。本明細書に開示される構成において、遊星ギア列は、少なくとも2つの自由度と、少なくとも3つの噛み合うギアとを有し、そのうちの少なくとも1つ(遊星ギア)が、遊星ギア列を形成する噛み合うギアのうちの別の1つの不動の回転軸の周囲を回転する部材(遊星キャリア)上に無為に支持される。
【0015】
連続可変伝達デバイスは、駆動シャフトと速度加算ギア機構の第2の入力シャフトとの間に配置された複数のギアまたは歯車によって形成された固定の伝達比のギア列を備えることができ、あるいはそのようなギア列と組み合わせられてよい。
【0016】
さらに、本開示は、可変速の回転負荷を動作させるための方法であって、
・回転負荷を、定速ドライバによって、第1の入力シャフトと、第2の入力シャフトと、出力シャフトとを備えており、第1の入力シャフトは定速ドライバに駆動可能に結合し、出力シャフトは負荷に駆動可能に結合している速度加算ギア機構を介して、駆動するステップと、
・ドライバからの動力の一部を、ドライバおよび速度加算ギア機構の第2の入力シャフトに機械的に結合した連続可変伝達デバイスを介して伝達することによって、回転負荷の速度を変化させるステップと
を含む方法に関する。
【0017】
本明細書に開示される機構は、主たる定速ドライバが電気モータであるシステムにおいてとくに有用かつ好都合であるが、ガスタービンまたは蒸気タービンなどの他の主たる定速ドライバを代わりに使用することも可能である。本明細書に記載のシステムは、主たる定速ドライバが固定または一定の速度の主たる機械であるすべての状況に適する。このシステムは、一定の速度で回転するように制約されたドライバ(可変周波数ドライバまたは他の周波数変換装置を持たない電気モータなど)だけでなく、例えば効率を最大化するために一定の速度で動作させることが好ましいドライバなど、主たる定速ドライバが実質的に一定の回転速度で回転するように構成されている場合に、常に有用である。
【0018】
特徴および実施形態が、本明細書において以下で開示され、本明細書の一体の一部分を形成する添付の特許請求の範囲にさらに記載される。以上の簡単な説明は、以下の詳細な説明をよりよく理解できるようにするため、および本発明の技術的貢献をよりよく理解できるようにするために、本発明の種々の実施形態の特徴を記載している。当然ながら、以下で説明され、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の他の特徴も存在する。この点で、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の種々の実施形態が、それらの応用において、以下の説明において述べられ、あるいは図面に示される構成の詳細および構成要素の配置に限定されないことを、理解すべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施および実行することが可能である。また、本明細書において用いられる表現および用語が、説明を目的とするものであり、限定とみなされてはならないことを、理解すべきである。
【0019】
したがって、本開示の根底にある考え方を、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、および/またはシステムを設計するための基礎として容易に利用できることを、当業者であれば理解できるであろう。したがって、特許請求の範囲を、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて、そのような等価な構成を含むと考えることが重要である。
【0020】
開示される本発明の実施形態およびそれらに付随する多くの利点のさらに完全な認識が、それらが以下の詳細な説明を参照し、添付の図面と併せて検討することによってよりよく理解されるときに、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示によるシステムの第1の実施形態を概略的に示している。
【
図2】本開示によるシステムの第2の実施形態を概略的に示している。
【
図3】
図1および
図2のシステムのための可変速伝達装置の一実施形態について、
図4の線III-IIIによる断面図を示している。
【
図4】
図3の線III-IIIによる可変速伝達装置の断面図を示している。
【
図5】
図3および
図4の可変速伝達装置の概略図を示している。
【
図6】説明用の速度およびトルク線図を示している。
【
図7】説明用の速度およびトルク線図を示している。
【
図8】
図1および
図2のシステムのための可変速伝達装置のさらなる実施形態の断面図を示している。
【
図9】
図1および
図2のシステムのための可変速伝達装置のまたさらなる実施形態の断面図を示している。
【
図10】
図1および
図2のシステムのための可変速伝達装置のまたさらなる実施形態の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
典型的な実施形態についての以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。別々の図面における同じ参照番号は、同一または類似の要素を表す。さらに、図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれていない。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0023】
本明細書の全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、または「いくつかの実施形態」への言及は、或る実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体のさまざまな場所において「一実施形態において」、「実施形態において」、または「いくつかの実施形態において」という表現が現れたとき、それは必ずしも同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切なやり方で組み合わせられてよい。
【0024】
ここで
図1を参照すると、一実施形態において、システム1は、ドライバ3と回転負荷5とを備える。
図1の典型的な実施形態において、回転負荷5は、2つの回転機械5Aおよび5Bを備える。回転機械5A、5Bの一方または両方は、例えば、遠心圧縮機もしくは軸流圧縮機、またはレシプロ圧縮機、あるいはこれらの組み合わせなど、圧縮機を備えることができる。以下の説明においては、例として、回転機械5A、5Bの両方が圧縮機であると仮定する。
図1において、2つの圧縮機5A、5Bは、単一のシャフト7に機械的に結合し、したがって同じ速度で回転する。他の実施形態においては、例えば、2つの圧縮機5A、5Bが異なる回転速度で回転できるように、2つの圧縮機5A、5Bの間にギアボックスを配置することができる。
【0025】
図1の実施形態において、ドライバ3は、配電網9によって電力が供給される電気モータを含むことができる。ドライバ3は、可変周波数ドライバを省くことができるように、定速ドライバであってよく、固定の回転速度、すなわち一定の回転速度で、回転することができる。
【0026】
負荷5の回転速度を変更するために、可変速伝達装置11が、ドライバ3と負荷5との間の軸線に沿って配置されている。可変速伝達装置11を、コントローラ12に機能可能に接続することができ、コントローラ12は、負荷5または一部分が負荷5によって形成されるプロセスと、さらにやり取りすることができる。コントローラ12を、可変速伝達装置11の出力を負荷5に駆動可能に接続するシャフト7の回転速度を、ドライバ3を可変速伝達装置11の入力へと駆動可能に接続するシャフト13の固定の回転速度に対して変更するように構成することができる。
【0027】
図2が、本開示によるシステムのさらなる実施形態を示している。同じ参照番号は、
図1に示した構成要素、要素、または部分と同じ構成要素、要素、または部分を示しており、再度の説明は省略する。
図1のシステムと
図2のシステムとの間の主な違いは、可変速伝達装置11の出力シャフト8と、負荷5へと運動を伝達するシャフト7との間に配置されたギアボックス15である。ギアボックス15を、例えば、ドライバ3の出力シャフト13と負荷5との間の必要な速度伝達比を、可変速伝達装置11だけでは達成できない場合に、使用することができる。
【0028】
ここで、
図1および
図2を引き続き参照しつつ、
図3を参照して、可変速伝達装置11について可能な実施形態を説明する。可変速伝達装置11は、第1の入力シャフト23と、第2の入力シャフト25と、出力シャフト27とを備える速度加算ギア機構21を備える。出力シャフト27は、シャフト7(または、
図2の実施形態におけるシャフト8)に機械的に接続され、あるいはシャフト7(または、
図2の実施形態におけるシャフト8)の一部を形成することができる。入力シャフト23は、シャフト13に機械的に接続され、あるいはシャフト13の一部を形成することができる。
【0029】
図3の実施形態において、速度加算ギア機構21は、遊星ギア列である。遊星ギア列21は、リングギア31と、複数の遊星ギア35を支持する遊星キャリア33とを備える。各々の遊星ギア35は、ピン37によって遊星キャリア33上に無為(idly)に取り付けられている。遊星ギア列21は、出力シャフト27にキー止めされて出力シャフト27と共に回転するサンギア39をさらに備える。
【0030】
図3の実施形態において、リングギア31は、内歯ギアであり、遊星ギア35は、内歯のリングギア31と噛み合っている。遊星ギア35は、サンギア39にさらに噛み合っている。リングギア31は、リングギア31、サンギア39、および遊星キャリア33が同軸となるように、第1の入力シャフト23にキー止めされ、リングギア31およびサンギア39の軸を中心にして第1の入力シャフト23と一緒に回転する。
【0031】
遊星キャリア33は、ギア41と一緒に回転し、ギア41は、遊星キャリア33と一体に形成されてよい。ギア41は、連続可変伝達デバイス43から運動を受け取る。
図3の実施形態において、連続可変伝達デバイス43は、連続可変伝達デバイス43の出力シャフト47にキー止めされたピニオン45を介して、ギア41に機械的に結合する。
【0032】
連続可変伝達デバイス43は、例えば可変速伝達装置11の入力シャフト23を介してドライバ3から動力を受け取る入力シャフト49をさらに備える。いくつかの実施形態においては、
図3に示されるように、ギア列51、53を、可変速伝達装置11の入力シャフト23と連続可変伝達デバイス43の入力シャフト49との間に配置することができる。ギア列51,53を、シャフト23および49との間に所望の変速比をもたらすように設計することができる。
図3の典型的な実施形態において、ギア列は、回転の方向を反対にするために、ギア51および53の間に配置されたアイドルギア52をさらに含む。図示されていない他の実施形態においては、アイドルギア52を省略することができる。いくつかの実施形態においては、アイドルギアを、ピニオン45とギア41との間に配置することができる。
【0033】
このようにして、遊星ギア列21は、2自由度を有し、入力される動力をドライバ3から直接受け取り、さらには連続可変伝達デバイス43を介して受け取る。連続可変伝達デバイス43を含む伝達ラインに沿って配置されたギア53,52,51,45,41を含むギア列は、そこに配置されたギアまたは歯車の数に応じて、正または負のいずれかであってよい総伝達比を定める。
【0034】
公知のとおり、遊星ギア列の最初のギアと最後のギアとの間の速度比τ0は、ウィリス(Willis)の式
【0035】
【数1】
によって与えられ、ここで、
Ω
nは、遊星ギア列の最後のギア(
図3および
図4の実施形態においては、サンギア39)の回転速度であり、
Ω
pは、遊星キャリア(
図3および
図4の33)の回転速度であり、
Ω
1は、遊星ギア列の最初のギア(
図3および
図4の実施形態においては、リングギア31)の回転速度である。
【0036】
ウィリスの式によって示されるように、第1の入力シャフト23と出力シャフト27との間の伝達比を、遊星キャリア33の回転速度を調節することによって調整することができる。遊星キャリア33の回転速度は、連続可変伝達デバイス43の出力シャフト47の回転速度を制御することによって制御可能である。
【0037】
負荷5の定格速度付近の速度変動の範囲は、通常は小さい。遊星ギア列21を、遊星キャリア33の静止状態(すなわち、Ωp=0)において負荷5を所与の予め設定された回転速度で駆動するために適した速度伝達比をもたらすように設計することができる。この状態は、負荷5の所与の回転速度に対応することができる。
【0038】
ドライバ3が不変の一定な回転速度に保たれているときに、負荷の回転速度の変化を、速度加算ギア機構21によって連続可変伝達デバイス43を介して得ることができる。連続可変伝達デバイス43の出力シャフト47の回転速度の調整は、コントローラ12の制御下で、負荷5の要求回転速度の関数として得られる。
【0039】
図3および
図4の実施形態において、連続可変伝達デバイス43は、磁気ディスク61と強磁性ディスク63とを備える磁気結合デバイスである。いくつかの実施形態において、磁気ディスク61は、
図3Aに最もよく示されているように、複数の永久磁石64,65を備えることができる。各々の永久磁石64,65のN極およびS極は、ディスクの軸に平行に整列している。磁石64,65は、N極を対向する強磁性ディスク63に向けている各々の永久磁石64が、S極を対向する強磁性ディスク63に向けている2つの永久磁石65の間に配置されるように、交互に配置される。強磁性ディスク63は、軟鉄ヨーク67と、例えば銅、アルミニウム、または任意の他の導電性材料で製作され、磁気ディスク61に面する軟鉄ヨーク67の表面に配置された導電性部材69とを備える。図示の実施形態において、導電性部材69は、リングの形態であり、したがって以下では導電性リング69とも呼ばれる。軟鉄ヨーク67および永久磁石65は、導電性リング69を内部に位置させた磁気回路を形成する。
【0040】
以下で説明されるように、別の実施形態を参照すると、磁石、導電性部材、および強磁性部材の配置は、別の配置でもよい。例えば、強磁性部材(すなわち、強磁性軟鉄ヨーク67)および導電性部材は、交互の極性にて円形に配置された磁石によって取り囲まれてよいスリーブまたは円筒を形成することができる。
【0041】
磁気ディスク61が駆動されて回転すると、磁石64,65によって生成された可動磁場が、導電性リング69に渦電流を発生させる。渦電流は磁場と相互作用し、磁気ディスク61と強磁性ディスク63との間でトルクが伝達される。後者が、磁気ディスク61の速度よりも低い速度で回転し始める。磁気ディスク61と強磁性ディスク63との間に滑り速度が生じ、磁場と渦電流とが相互作用を続け両者の間にトルクを発生させる。
【0042】
連続可変伝達デバイス43を通って伝えられるトルクおよび滑り速度は、互いにおおむね線形な関係にあり、両者の間の関係は、磁石64,65と導電性リング69との間の空隙に依存する。空隙を変更することにより、連続可変伝達デバイス43の出力速度が、速度加算ギア機構21を介して出力シャフト27の所望の回転速度を得るために必要な値に設定されるように、滑り速度を調整することができる。
【0043】
図示されていない他の実施形態においては、永久磁石64,65の代わりに、電磁石を使用することができる。この場合、電磁石の可変の磁化を、磁石と導電性リング69との間の空隙の調整に代え、あるいは組み合わせて、制御パラメータとして使用することができる。
【0044】
次に、
図3、
図3A、および
図3Bをさらに参照して、可変速伝達装置11の動作の例(ただし、これに限られるわけではない)を、
図5~
図7を参照して説明する。
図5は、上述した可変速伝達装置11の機能の仕組みを示している。53~41と標記されたブロックは、ギア41,45,51,52,53によって形成されるギア列を機能的に表している。ギア列は、磁気伝達装置と組み合わせられた単一の機能ブロックとして表されている。ギア列は、固定の伝達比τ
mを有する。この典型的な実施形態(ただし、これに限られるわけではない)において、ギア列の伝達比は、τ
m=-0.09に設定される。一例として、ウィリスの式の伝達比τ
0は、τ
0=-6.2である。上述したように、これは、遊星キャリア33が静止しているときの遊星ギア列のシャフト27および23の間の伝達比である。ドライバ3、したがって入力シャフト23の固定の回転速度を、1800rpmであると仮定する。
図6および
図7の図は、以下の曲線を示している。
【0045】
C1:圧縮機トルク、すなわち出力シャフト27に加えられるトルク。
【0046】
C2:磁気結合トルク、すなわち磁気継手43を通るトルク。
【0047】
C3:遊星キャリア33の角速度。
【0048】
C4:磁気継手43の滑り速度、すなわちディスク61および63の角速度の差。
【0049】
図6および
図7の図の横軸には、負荷5の角速度がプロットされている。
図6および
図7の図は、負荷5の回転速度が変化するときの可変速伝達装置11の主なパラメータの挙動を示している。
【0050】
図8は、
図8において143と標記された別の連続可変伝達デバイスを使用する可変速伝達装置11のさらなる実施形態を示している。同じ参照番号は、
図3および
図4に示した構成要素と同一または同等の構成要素を示しており、再度の説明は省略する。とくに、速度加算ギア機構21は、
図3および
図4のとおりに設計されている。
【0051】
図8の実施形態において、連続可変伝達デバイス143は、第1の入力トラクションリング161と、第2の出力トラクションリング163とを備える。第1のトラクションリング161が、入力シャフト49に拘束され、入力シャフト49と共に回転する一方で、第2のトラクションリング163は、出力シャフト47に拘束され、出力シャフト47と共に回転する。トラクションリング161,163およびシャフト47,49は、同軸である。トラクションリング161,163の間には、例えば球の形態の1組のトラクションプラネット165が、トラクションリング161,163の軸の周囲に周状に配置されている。各々のトラクションプラネット165は、両方のトラクションリング161,163に摩擦を伴って接触している。トルクが、トラクションプラネット165を介して摩擦によって第1のトラクションリング161から第2のトラクションリング163へと伝達される。
【0052】
各々のトラクションプラネット165は、回転軸上に無為に取り付けられ、この回転軸は、各々のトラクションプラネット165の回転軸をトラクションリングの軸およびトラクションプラネットの回転軸を含むそれぞれの平面において同時に傾けるように設計されたキャリアによって、両端部167、169において支持されている。回転軸を傾けることによって、各々のトラクションプラネット165の第1および第2のトラクションリング161,163との接触点の間の距離が変化し、したがって第1のトラクションリング161と第2のトラクションリング163との間の変速比が変化する。
【0053】
上記で簡単に説明した連続可変伝達デバイスに関するさらなる詳細を、例えば欧州特許第2620672号において見つけることができ、その内容は本明細書に援用される。
【0054】
図8の可変速伝達装置11の動作は、
図3および
図4の実施形態の動作と同様である。トラクションプラネット165の回転軸の角度位置を変更することによって、遊星キャリア33に伝達されるトルクが変化し、速度加算ギア機構21の伝達比が必要に応じて調整され、ドライバ3が一定の速度で回転しているにもかかわらず、負荷5の回転速度を変更することができる。
【0055】
図9が、
図1および
図2のシステムに適した可変速伝達装置11のさらなる実施形態を示している。同じ参照番号は、
図3および
図4に示した構成要素と同一または同等の構成要素を示しており、再度の説明は省略する。とくに、速度加算ギア機構21は、
図3および
図4のとおりに設計されている。
図3および
図4の磁気装置43に代えて、別の連続可変伝達デバイスが使用される。
図9の連続可変伝達デバイスは、243と標記されている。
【0056】
連続可変伝達デバイス243は、シャフト49に取り付けられてシャフト49と共に回転する摩擦ディスク245と、シャフト47に取り付けられてシャフト47と共に回転する摩擦ディスク247とを備える流体粘性ドライバである。いくつかの実施形態において、複数の摩擦ディスク247および複数の摩擦ディスク245は、一方が他方の間に挟まれるように配置され、したがって各々の摩擦ディスク247が2つの隣接する摩擦ディスク245の間に位置し、逆もまた同様である。対をなす摩擦ディスク245,247の間に、ディスク間の直接の機械的接触を回避しつつ、摩擦ディスク間の摩擦によって運動を伝達する粘性液体がもたらされる。摩擦ディスク245と摩擦ディスク247との間のギャップを調整することで、シャフト49およびディスク245からディスク247およびシャフト47へと伝達されるトルクを変化させることができる。
【0057】
連続可変伝達デバイス243を介して伝達されるトルクを調節することにより、遊星キャリア33の速度、したがってシャフト23とシャフト27との間の伝達比を、変更することができる。
【0058】
図10が、
図1および
図2のシステムにおける使用に適したさらなる可変速伝達装置11の断面図を示している。可変速伝達装置11は、シャフト13に結合し、あるいはシャフト13の一部を形成する第1の入力シャフト23と、シャフト7(または、シャフト8)に結合し、あるいはシャフト7(または、シャフト8)の一部を形成する出力シャフト27とを有する速度加算ギア機構21をやはり備える。
図10の実施形態において、速度加算ギア機構21は、複合遊星ギア列である。遊星ギア列21は、入力シャフト23にキー止めされたリングギア31と、遊星ギア35A、35Bの対を支持する遊星キャリア33とを備え、すなわち、いわゆる複合遊星機構を備える。遊星ギア35A、35Bの対の各々は、シャフト37によって遊星キャリア33上に無為に支持される。各々の遊星ギア対の第1の遊星ギア35Aは、リングギア31に噛み合っている。各々の遊星ギア対の第2の遊星ギア35Bは、出力シャフト27にキーで止められたサンギア39に噛み合っている。
【0059】
可変速伝達装置11は、
図10の実施形態においては
図3~
図7の連続可変伝達デバイス43と同じ原理で動作する磁気デバイスである連続可変伝達デバイス343をさらに備える。
【0060】
図10の実施形態において、連続可変伝達デバイス343は、速度加算ギア機構21と同軸である。
図3~
図5と同様に、連続可変伝達デバイス343は、1組の円形に配置された磁石を備え、これらの磁石が、これらの磁石と同軸であり、これらの磁石と軟鉄ヨークまたは別の同様の強磁性部材とを含む磁気回路内に配置された導電性部材と協働する。
図10の実施形態において、磁石は、345で概略的に示されており、導電性部材は、347で示されている。軟鉄ヨーク(または、任意の他の強磁性部材)は、349で示されている。この典型的な実施形態において、磁石345および導電性部材347は、一方が他方の内側に配置される。磁石345は、
図3、
図3A、
図3B、および
図4の連続可変伝達デバイス43に関連して開示したように、交互の極性にて円形に配置された1組の磁石を備える。
図10の実施形態において、円形に配置された磁石の交互の磁極は、導電性部材347に半径方向において面するように配置される。
【0061】
例えば銅スリーブなどの導電性部材347、および強磁性ヨーク349は、シャフト23にキー止めされ、同じ回転速度でシャフト23と共に回転する。磁石345は、速度加算ギア機構21の第2の入力シャフト25と一体のスリーブ346に取り付けられている。第2の入力シャフト25は、遊星キャリア33と一体であり、遊星キャリア33と共に回転する。
【0062】
導電性部材347と磁石345との間の滑り速度が、導電性部材347内に渦電流を生じさせ、渦電流が磁場と相互作用して、シャフト23からシャフト25を介して遊星キャリア33へと伝達されるトルクを発生させる。
【0063】
同じトルクを、磁石345と導電性部材347との間の相互作用を調整して、これらの間の滑りを変化させることによって、異なる速度で連続可変伝達デバイス343を介して伝達することができる。滑りの変化の結果として、遊星キャリア33の回転速度も変化し、結果として遊星ギア列21の伝達比が変更される。永久磁石345が使用される場合、磁石345に対する導電性部材347の軸方向位置を変更することによって、磁石345と導電性部材347との間の相互作用を変更することができる。
【0064】
他の実施形態において、磁石345は、永久磁石の代わりに、電磁石であってよい。そのような場合、伝達比を、磁石と導電性部材347との間の相互の軸方向位置の操作に代え、あるいは加えて、電磁石の磁化を操作することによって調整することができる。
【0065】
図10においては、磁石が遊星キャリア33と一緒に回転するように取り付けられ、強磁性ヨーク349および導電性スリーブ347は、シャフト23にキー止めされ、シャフト23と一緒に回転するが、磁石345がシャフト23に一緒に回転するように取り付けられ、導電性スリーブ347および関連の強磁性ヨーク349が遊星キャリア33上に一体に取り付けられて遊星キャリア33と一緒に回転する反対の構成も、排除されるものではない。
【0066】
図10の遊星ギア列21を、
図8に示したようなトラクションリングおよびトラクションプラネットに基づく連続可変伝達デバイスや、
図9に示したような流体粘性駆動装置に基づく連続可変伝達デバイスとの組み合わせにて使用することも可能である。
【0067】
図10の構成は、
図3~
図9の実施形態と比べ、速度加算ギア機構21と連続可変伝達デバイスとが同軸に配置されているという利点を有する。ギアの数が少なくなり、したがって全体的な効率が改善される。
【0068】
図3~
図10に示した速度加算ギア機構21は、サンギア39が出力シャフト27にキー止めされ、すなわち速度加算ギア機構21の出力がサンギア39である一方で、第1の入力シャフトが、リングギア31に駆動可能に結合したシャフト23であり、第2の入力シャフトが、連続可変伝達デバイス43に駆動可能に結合した遊星キャリア33であるように、構成されている。これは、速度加算ギア機構21について可能な唯一の構成ではない。当業者にとって公知のとおり、遊星ギア列を、いくつかの異なるやり方で構成することができ、その種々の回転部材を、さまざまなやり方で入力部材または出力部材として使用することができる。
【0069】
例えば、遊星キャリア33を入力シャフト23にキー止めすることができ、連続可変伝達デバイス43の出力シャフト47をリングギア31に駆動可能に結合させることができる。この場合、速度加算ギア機構21の伝達比は、リングギア31に作用する可変速伝達装置によって調整されると考えられる。
【0070】
一般に、速度加算ギア機構21は、2自由度を有する遊星ギア列、すなわち2つの入力シャフトおよび1つの出力シャフトを有し、出力シャフトは負荷5に駆動可能に結合し、第1の入力シャフトはドライバ3に駆動可能に結合し、第2の入力シャフトは連続可変伝達デバイスに駆動可能に結合した遊星ギア列を備えることができる。
【0071】
本明細書に記載の主題について開示される実施形態を、いくつかの典型的な実施形態に関して、具体的かつ詳細に、図面に示し、充分に上述したが、本明細書において説明した新規な教示、原理、および考え方、ならびに添付の特許請求の範囲に記載される主題の利点から実質的に離れることなく、多数の変更、変化、および省略が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、開示される技術革新の適切な範囲は、すべてのそのような変更、変化、および省略を含むように、添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ定められるべきである。加えて、プロセスまたは方法のあらゆるステップの順序または並びは、代案の実施形態に従って変更または並べ替えが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 システム
3 ドライバ
5 回転負荷
5A 回転機械、圧縮機
5B 回転機械、圧縮機
7 シャフト
8 出力シャフト
9 配電網
11 可変速伝達装置
12 コントローラ
13 出力シャフト
15 ギアボックス
21 速度加算ギア機構、遊星ギア列
23 第1の入力シャフト
25 第2の入力シャフト
27 出力シャフト
31 リングギア
33 遊星キャリア
35 遊星ギア
35A 第1の遊星ギア
35B 第2の遊星ギア
37 ピン、シャフト
39 サンギア
41 ギア
43 連続可変伝達デバイス、磁気装置、磁気継手
45 ピニオン、ギア
47 出力シャフト
49 入力シャフト
51 ギア列、ギア
52 アイドルギア
53 ギア列、ギア
61 磁気ディスク
63 強磁性ディスク
64 永久磁石
65 永久磁石
67 強磁性軟鉄ヨーク
69 導電性部材、導電性リング
143 連続可変伝達デバイス
161 入力トラクションリング
163 出力トラクションリング
165 トラクションプラネット
167 端部
169 端部
243 連続可変伝達デバイス
245 摩擦ディスク
247 摩擦ディスク
343 連続可変伝達デバイス
345 永久磁石
346 スリーブ
347 導電性スリーブ、導電性部材
349 強磁性ヨーク