(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】流体内の放射性核種を検出および/または測定するためのシンチレーション検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20220523BHJP
G01T 1/167 20060101ALI20220523BHJP
G01T 1/00 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
G01T1/20 A
G01T1/167 A
G01T1/20 B
G01T1/00 A
(21)【出願番号】P 2019525770
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 FR2017053085
(87)【国際公開番号】W WO2018091807
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブデルギ、カリム
(72)【発明者】
【氏名】コンドラソフ、ヴラジミル
(72)【発明者】
【氏名】ブルボット、ジャン=ミシェル
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-072736(JP,A)
【文献】特開昭57-093272(JP,A)
【文献】特開昭57-120876(JP,A)
【文献】特開昭60-015578(JP,A)
【文献】特表平02-502217(JP,A)
【文献】特開平06-066945(JP,A)
【文献】特開2005-016980(JP,A)
【文献】特開2005-091334(JP,A)
【文献】米国特許第03005100(US,A)
【文献】米国特許第04495420(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/167
G01T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体内の放射性核種を測定および/または検出するためのシンチレーション検出器(20)であって、前記検出器は、
前記流体を受け入れるための測定室(21)であって、前記室内での流体の循環を許可するための流体取入口(25)と流体排出口(26)を備えた測定室(21)と、
光電子倍増管(27)と、
一体にグループ化されることでファイバの束(23)を形成する複数のシンチレーティング光ファイバ(22)であって、前記シンチレーティング光ファイバは、前記光電子倍増管に光学的に接続され、前記ファイバの束は、少なくとも部分的に前記測定室内に収容されている、シンチレーティング光ファイバ(22)と、を備え、
前記測定室(21)は、第1のセパレータ(30)と第2のセパレータ(31)を備え、
前記第1のセパレータ(30)と前記第2セパレータ(31)は、前記流体取入口(25)を備えた導入域(40)と、前記流体排出口(26)を備えた抽出域(42)と、前記束のシンチレーティング光ファイバが展開される、前記導入域と前記抽出域の間の測定域(41)とを区切り、
前記第1のセパレータと前記第2のセパレータの各々は、前記測定域(41)内に流体の層流を成立させるように構成された複数の貫通開口(33)を備え
、
前記測定室(21)は、長手方向に沿って延出する側体(36)を備え、
前記第1と第2のセパレータの各々は、長手方向に対して横方向に配置され、前記側体と一体化されたプレート(32)を備え、
前記複数の貫通開口(33)は、前記プレート内に配置され、
前記第1のセパレータ(30)は、前記ファイバの束の通過を可能にするサイズの貫通オリフィス(34)をさらに備える、
シンチレーション検出器。
【請求項2】
前記第1のセパレータ(30)は、前記プレート(32)の面と一体化された管状要素(35)を備え、
前記管状要
素は、前記ファイバの束の通過を可能にするサイズの貫通オリフィス
であって、前記プレート(32)の前記貫通オリフィス(34)と共通となる貫通オリフィスを備え、
前記管状要素は、前記ファイバの束を、前記導入域に流入する流体から隔離するように構成されている、請求項
1に記載の検出器。
【請求項3】
前記ファイバの束は、実質的に前記長手方向に対して平行に配置されている、請求項
1または
2に記載の検出器。
【請求項4】
前記第1と第2のセパレータの前記プレート(32)はディスクであり、
前記第1のセパレータの貫通オリフィス(34)は中央円形孔である、
請求項
3に記載の検出器。
【請求項5】
前記導入域、測定域および抽出域は、前記長手方向に沿って互いに連なり、
前記流体取入口と前記流体排出口は、前記長手方向に対して横方向に配置されている、請求項
1から
4のうちいずれか一項に記載の検出器。
【請求項6】
前記第1のセパレータの複数の貫通開口は、第1のパターンに従って配置され、互いから等距離であり、
前記第2のセパレータの複数の貫通開口は、第2のパターンに従って配置され、互いから等距離であり、
前記第1のパターンと前記第2のパターンは好ましくは同一である、
請求項1から
5のうちいずれか一項に記載の検出器。
【請求項7】
前記第1のセパレータの複数の貫通開口および前記第2のセパレータの複数の貫通開口は、同じ直径を有する円孔である、請求項1から
6のうちいずれか一項に記載の検出器。
【請求項8】
前記第1のセパレータの複数の貫通開口の各々は、前記第2のセパレータの複数の貫通開口の一つと面するように配置されている、請求項1から
7のうちいずれか一項に記載の検出器。
【請求項9】
前記ファイバの束は、前記光電子倍増管に接続された近位部(28)と、遠位部(29)を備え、
前記シンチレーティング光ファイバは、前記近位部において互いに緊密に接して配置されると共に、前記遠位部の少なくとも一部において互いから離隔して配置されている、請求項1から
8のうちいずれか一項に記載の検出器。
【請求項10】
前記ファイバの束の前記遠位部(29)は、前記ファイバを互いから離隔させるように構成された少なくとも1つの要素を備えている、請求項
9に記載の検出器。
【請求項11】
流体の流れ、好ましくは飲料水の流れ内の放射性核種による汚染を検出するための、請求項1から
10のうちいずれか一項に記載のシンチレーション検出器の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、流体の放射能汚染をオンラインで検出し測定する分野である。本発明の分野はより詳細には、流体用管内、特に液体用管内の、特に飲料水用管内のアルファおよび/またはベータ放射線源の存在をオンラインで検出し測定するための、アルファおよび/またはベータタイプの放射能汚染の検出および測定に関する。
【0002】
本発明の適用分野は特に放射線防護と安全性である。
【背景技術】
【0003】
悪意あるテロリストによる、または単に例えば無菌室の空気分配ネットワークや飲料水分配ネットワークなどの流体分配ネットワークの放射能汚染の単に偶発的な作用を防止するために、流体内の放射性元素の存在を可能な限り早期に検出可能なことが重要である。
【0004】
現在、空気中または水中でのガンマ放射線の連続検出が容易に実行されており、既に多くの解決策がある。しかしながら、ベータまたはアルファ放射線を連続的に(すなわち、オンラインで)検出することは、この放射線の空気中での、また水中での一層の低播故に一層困難である。
【0005】
説明のため、それぞれ空気中および水中でのベータ粒子とアルファ粒子の、エネルギーに即した伝播距離を以下に表にした(非特許文献1に掲載の情報)。
【0006】
【0007】
このように、水中での放射線の伝播は、50KeV~2MeVの範囲のエネルギーを有するベータ放射線に関しては43μm~1cmの範囲であり、3MeV~7MeVの範囲のエネルギーを有するアルファ放射線に関しては18μm~62μmの範囲であることが観察され得る。
【0008】
現在、最も広範に使用されている検出システムは、比較的狭い検出面を有する無機シンチレータまたは有機シンチレータ(特にプラスチックシンチレータ)に基づく半導体検出器またはシンチレーション検出器であり、当該検出器は1時間を越える測定時間でのオフライン分析を強いている。このタイプのオフライン分析を実行するための従来の方法は、一組のサンプルを取り上げ、それを次にラボに提出して、そこで液体シンチレーションまたは熱量測定法を介して計数するなどの様々な検査が実行されることからなる。
【0009】
液体内の放射能をオンラインで継続的に検出し測定するためのシステムが特許文献1で知られている。このシステムは、流体、特に水のベータおよびアルファのみならずガンマ汚染の検出および測定を可能にする。
【0010】
従来技術のこのシステムが
図1に示されており、システムは、互いに入れ子式になって、その中で被検流体が循環する測定室4を中心部に形成する中空シリンダー(ガンマ放射線用の1つのシリンダー2と、ベータおよびアルファ放射線用の1つのシリンダー3)の形状の2つのプラスチック製シンチレータからなる検出器1を備えている。被検流体(例えば、水)は測定室の一端部に位置する流体取入口5を通して測定室4に浸透して、測定室の他端部に位置する流体排出口6を通して出る。プラスチックシンチレータシリンダーはそれぞれ、導波管7によって光子検出装置(図示せず)、例えば光電子倍増管に接続されている。
【0011】
図1に示したシステムのベータ粒子とアルファ粒子の検出の有効性は(V
m/V
t)比に直接依存しており、V
mは測定量(すなわち、ベータ粒子とアルファ粒子を検出することが可能な量)であり、V
tは測定室内に収容された流体の総量である。流体内でベータ粒子とアルファ粒子が伝播する距離が比較的低いことを前提として測定量V
mは低い。したがって、検出システムの測定の有効性は検出限界が低いため低くなる。
【0012】
アルファ粒子およびベータ粒子とプラスチックシンチレータの間の相互作用の発生を増加させるために、特許文献1では、システムの測定室を、250μm~500μmの直径を有するプラスチックシンチレータ製のビーズで充填することが提案されている。しかしながら、そのような解決策には、光電子倍増管に直接面したビーズのみに頼るという不都合がある。さらに、流体とビーズの屈折率の差により、光子の光電子倍増管への伝播は乏しい。これらの不都合がすべて、検出有効性の劣化をもたらす(考慮される測定量が低くなる)。
【0013】
さらには、特許文献2では、流体中の低エネルギーの放射線、例えば水中でのトリチウムの自然崩壊によって生じたベータ粒子の検出器が知られている。
図2に示すように、この検出器10は円筒形測定室11を備え、円筒形測定室11は、流体取入口15と流体排出口16を有し、シンチレーティング光ファイバ12の束13が配置され、シンチレーティング光ファイバ12の近位端が、測定室11の外部に配置された光電子倍増管17に接続されている。特許文献2に記載された検出器は、測定量(V
m)を増加させることを可能にし、測定量(V
m)は使用されるファイバの数に直接リンクしている。しかしながら、ファイバへの流体14の到達が乱流を生じさせる。ファイバが常に動いているため、測定ジオメトリは定常的に変動する。これらの変動は計数率の付加的な大きな変動をもたらす。これらの変動は計数率への乗法的雑音として考慮されることができ、フィルタすることが困難であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2008/0260100号明細書
【文献】米国特許第5,793,046号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】インターネットサイトhttp://www.cloudylabs.fr/wp/portee-des-particules に掲載の表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発明者らは、放射性核種による流体の汚染のオンラインでの制御を改善し、流体内の放射性核種の検出の限界を改善するという目的を設定した。発明者らは特に、流体のアルファおよび/またはベータ環境を、タッピングまたはサンプリングせずに連続して測定することが可能なシステムを設計することを追及した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、流体内の放射性核種を測定および/または検出するためのシンチレーション検出器によって達成される。
前記検出器は、
前記流体を受け入れるための測定室であって、前記測定室内の流体の循環を許可するための流体取入口と流体排出口を備えた測定室と、
光電子倍増管と、
グループ化されたファイバ束を形成する複数のシンチレーティング光ファイバであって、前記シンチレーティング光ファイバは光電子倍増管に光学的に接続され、ファイバ束は少なくとも部分的に測定室内に収容されている、シンチレーティング光ファイバと、
を備える。
検出器は、測定室に、流体取入口を備えた導入域と、流体排出口を備えた抽出域と、シンチレーティング光ファイバ束が展開される、導入域と抽出域の間の測定域を区切る第1と第2のセパレータとを備える。
第1と第2のセパレータの各々は、測定域内で流体の層流を成立させるように構成された複数の貫通開口を備える。
【0018】
実際、この特定の構成では、流体が層状の均一且つ非乱流で分析されることを保証することを追及している。流体の層流とは、互いに相克する渦から形成される乱流体制に反して、すべての流体が或る程度同方向に流れて相克する局所差がない流れモードであることを想起されたい。本発明による検出器によって、発明者らは、測定室内で循環する流体(この循環している流体を示すために流体の流れとも呼ばれる)の乱流が存在する間に現れる統計的変動を減少させることによって流体の放射性核種の検出の限界を改善することに成功した。検出器の特定の設計により、流体の流れは測定域、すなわち、シンチレーティング光ファイバが展開される区域内で調整される。乱流を極減することによって、測定ジオメトリがより安定化し、計数率の統計的変動がこうして減少され、その検出限界が一層そのように改善される。
【0019】
好ましくは、第1と第2のセパレータの貫通開口は、測定域内で流体を均一に分散させるように構成される。これは、測定域内の流体の流れを調節して乱流を減少させる効果を有する。この流れの均一な分散は、第1と第2のセパレータの貫通開口の均一な分散ならびに均一な形状とサイズを有することによって得ることができる。
【0020】
この検出器の、限定はしないが好ましいいくつかの態様は以下である:
測定室が長手方向に沿って延在する側体を備え、第1と第2のセパレータそれぞれが、長手方向に対して横方向に配置され側体と一体になった一枚のプレートを備え、プレートに複数の貫通開口が配置されており、
第1のセパレータがさらに、ファイバの束の通過を可能にするサイズの貫通オリフィスを備え、
第1のセパレータがさらにプレートの面と一体化した管状要素を備え、管状要素とプレートが、ファイバの束の通過を可能にするサイズの共通の貫通オリフィスを有し、管状要素はファイバ束を、導入域に流入する流体から隔離するように構成され、
ファイバ束は長手方向に対して実質的に平行に配置され、
第1と第2のセパレータのプレートはディスクであり、第1のセパレータの貫通オリフィスは中央円形孔であり、
導入域、測定域および抽出域は長手方向に沿って互いに連なり、流体取入口と流体排出口は長手方向に対して横方向に配置され、
第1のセパレータの複数の貫通開口の貫通開口は第1のパターンに従って配置されて互いに等距離であり、第2のセパレータの複数の貫通開口の貫通開口は第2のパターンに従って配置されて互いに等距離で配置され、より好ましくは、第1のパターンと第2のパターンは同一であり、
第1のセパレータの複数の貫通開口と第2のセパレータの複数の貫通開口は同じ直径を有する円孔であり、
第1のセパレータの貫通開口はそれぞれ、第2のセパレータの貫通開口のうちそれぞれに面して配置され、
ファイバ束は光電子倍増管に接続された近位部と、遠位部を備え、シンチレーティング光ファイバは近位部内で互いにぴったり付いて配置されて、遠位部の少なくとも1つの部分内で互いに離隔して配置され、
ファイバ束の遠位部はファイバを互いに離隔させるように構成された少なくとも1つの要素を備えている。これは、例えば、ファイバ間に配置された樹脂であってよく、ファイバを切り離して互いから離すことを可能にする。
【0021】
本発明は、流体の流れ、好ましくは飲料水の流れにおける放射性核種による汚染を検出するための、上記に定義したようなシンチレーション検出器の使用にも関する。
【0022】
本発明による検出器は多くの利点を有する。本発明による検出器は特に、検出表面を増加させることによって測定量を容易に増加させることを可能にし、それは、使用されるシンチレーティング光ファイバの数と長さに直接結び付いている。さらに、本発明による検出器は、流体、特に水内のベータおよび/またはアルファ放射線を検出することを可能にする。このため、単一のシースを備え小径である(300μm未満)シンチレーティング光ファイバを使用することが好ましく、シースの厚さは可能な限り薄い。最後に、本発明による検出器は、その製造が高価でないという利点を有する。
【0023】
本発明による検出器は多くの用例を有する。本発明による検出器は、以下の文脈において水分配ネットワーク内のベータおよびアルファ放射能を監視するために実装され得る:
飲料水分配ネットワーク(給水塔、供給ダクト等)を汚染することを目指したテロリスト攻撃
汚染のリスクがある事故中に水のベータおよびアルファ汚染を監査する。
【0024】
本発明の他の特徴と利点は、以下の、添付の図面を参照した補足説明を読めばより良くわかるであろう。
【0025】
勿論、この補足説明は本発明を説明する目的のみのために提供されたものであり、如何なる意味でも本発明への限定を形成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ガンマ、アルファおよびベータタイプの電離放射線を検出することを可能にする、第1の従来技術による検出システムの断面図である。
【
図2】第2の従来技術による検出器の断面図である。
【
図3】本発明によるシンチレーション検出器の第1の実施形態の断面図である。
【
図4】本発明によるシンチレーション検出器の第2の実施形態の断面図である。
【
図5a】特定の実施形態による第1のセパレータの斜視図である。
【
図5b】特定の実施形態による第1のセパレータの底面図である。
【
図5c】特定の実施形態による第1のセパレータの上面図である。
【
図5d】特定の実施形態による第1のセパレータのA-A線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、流体内の放射性核種を測定および/または検出するためのシンチレーション検出器に関し、前記検出器は、特にシンチレーティング光ファイバの束と、光電子倍増管と第1および第2のセパレータを有して、測定域内でシンチレーティング光ファイバ周囲の乱流を減少させることを可能にする。
【0028】
シンチレーティング光ファイバは当業者には良く知られている。光ファイバであるため、シンチレーティング光ファイバは非常に良好な光学ガイドであり、したがって、シンチレーションによって誘起された光子を収集する問題はない。シンチレーティング光ファイバは、シンチレーションを生じさせ、シンチレーションによって誘起された光子を光電子倍増管に駆動することの両方を可能にする。
【0029】
典型的なシンチレーティング光ファイバは、シンチレーティング材料製のコア(一般に中実プラスチックシンチレーティング材料)を備え、コアの周りをコアより低い屈折率を有する材料製の1つまたは数個のシースが包囲していることを想起されたい。シンチレーティング材料はアルファおよび/またはベータタイプの電離放射線を光子に変換することを目指している。好ましくは、シンチレーティング光ファイバはガンマタイプの電離放射線の相互作用を減少させる。このため、ファイバ数を増加させることによって測定量Vmを増加させるために可能な限り小さいコア直径で選択される。
【0030】
本発明の検出器目的として最も適切なシンチレーティング光ファイバは、単一シースを有する検出器であり、このシースは、より好ましくは、可能な限り薄い厚さを有する。水での測定の場合、水の屈折率はシンチレーティング光ファイバのコアの屈折率より小さいため、外部シースがないファイバの使用を考慮することも当然であるが、それは、特にアルファ放射線に関して、検出の有効性を増加させるという利点のためである。
【0031】
シンチレーティング光ファイバの使用は高度に有利である。実際、各シンチレーティング光ファイバは、検出器の表面に結合された測定量を提供する検出器と見なされる。したがって、各ファイバの長さを増加させることによっておよび/または束のファイバの数を増加させることによって測定量を増加させることは容易である。直径がより小さいファイバはより可撓性がある(したがって、所与の空間を占めるためにより容易に変形する)ということに依然として留意し、また、ガンマタイプの電離放射線の相互作用を減少することが望ましい場合、より小さい直径のファイバを備えることが好ましいということに依然として留意しながら、ファイバの直径を増加させることも可能である。好ましくは、300μm未満の直径を有するシンチレーティング光ファイバが使用される。
【0032】
シンチレーティング光ファイバは、測定域に、シンチレーティング光ファイバと、分析対象の流体との間の接触面を最大にするように配置されることが好ましく、それは、測定量Vmを最大化して1に近いVm/Vt比を得るためである。このため、測定域に配置されることになっている束の遠位部に、ファイバを分離した状態で維持するための手段を用いることが有利である。例えば、ファイバの間に樹脂を配置することが可能である。これは、本発明の好ましい構成によって、測定室の側体が長手方向に沿って延在し、ファイバ束のシンチレーティング光ファイバがこの長手方向に対して実質的に平行に延在する理由でもある。
【0033】
アルファおよび/またはベータタイプの電離放射線を測定することが望ましい場合、シンチレーティング光ファイバが測定域において互いに接触しないことが好ましいことを想起されたい。実際、束のファイバがそれらの全長にわたり互いに接触した場合、これは、束がその近位部に有しているのに等しい直径を有する単一のファイバに回帰することになる。しかしながら、シンチレーティング光ファイバの直径が大きくなればなるほど、ガンマ放射線への感度が高くなり、この放射線がアルファおよびベータ放射線より大きい強さを有すると、アルファおよびベータ放射線はガンマ放射線によって遮蔽される。
【0034】
光子検出装置としての光電子倍増管は当業者にはよく知られている。光電子倍増管は、シンチレーションによって誘起された光子を対応する電気信号に変換することを可能にする。より厳密には、光電子倍増管は電気パルスを構築するために光子を電子に変換してそれらを倍増する。これは例えば、浜松(Hamamatsu)製のH10720タイプの光電子倍増管であり得る。光電子倍増管は電子パルスの脱ノイズ化(過度に弱い信号を弁別することを可能にする)を可能にするフィルタリングモジュールと、計数率値を与える計数平滑化モジュール(流体内に存在するベータおよび/またはアルファ粒子の数を測定することを可能にする)に関連付けられ得る。フィルタリングモジュールならびに計数モジュールは、電子処理カードに組み込まれた機能である。これらの2つの機能(フィルタリングと計数)は、このタイプの取得カードに見出される従来型機能である。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態による検出器10の図を示す。
【0036】
検出器20は、流体取入口25と流体排出口26が配設された測定室21と、光電子倍増管27と、シンチレーティング光ファイバ22の束23を備え、束が、光電子倍増管27に接続された近位部28と、測定域41内で展開されることになっている遠位部29を備えている。
【0037】
測定室21は、2つの端部37、38の間に長手方向に沿って延在する側体36(より好ましくはシリンダーである)を備え、束23は測定室に収容され、束は、そのファイバを長手方向に対して実質的に平行に配置させている。光電子倍増管27は側体の一方の端部37に配置されている。
【0038】
図3では、流体の取入口25と排出口26は、測定域41の寸法を最大化するために測定室の側体の2つの端部の近傍に配置されている。取入口25と排出口26はさらに、測定室21の長手方向に対して横方向に配置されている(取入口25と排出口26はさらに、側体の同じ側に配置されているが、2つの向かい合っている側部に配置されていてもよい)。
【0039】
当業者ならば知っているように、側体36は、周囲光によってシンチレーションを発生しないように、また、とりわけ光電子倍増管を飽和させないように、UV放射線不透過の材料で製造されなければならない、および/または暗所に配置されなければならない。
【0040】
本発明において、測定室21の容積は第1のセパレータ30と第2のセパレータ31によっていくつかの区域に分割される。第1のセパレータ30は、導入域40(流体取入口25を含む)と測定域41を分離することを可能にするのに対し、第2のセパレータ31は測定域41を抽出域42(流体排出口26を含む)から分離することを可能にする。
【0041】
図3に示した実施形態において、略円筒形状と円形断面を有する測定室21、第1のセパレータ30および第2のセパレータ31は、この場合は円孔である穿孔などの貫通開口33が穿いたディスクの形状を有するプレート32である。
【0042】
さらに、光電子倍増管27が測定室の端部37に配置され、束23が室の長手方向に対して平行に配置されているため、第1のセパレータ30はさらに、束23の挿入を可能にするサイズのオリフィス34を備えている。好ましくは、このオリフィスは中央にあって円形である。
【0043】
図4に示された好ましい実施形態において、第1のセパレータ30はさらに管状要素35を備え、その一端部はディスク形状のプレート32と一体であり、その他端部が測定室の端壁37のうち1つと突き当て状態となる。こうして管状要素35は、導入域40に入る流れの束23を隔離し、束は、乱流がより少ない測定域41に直接開放する。
【0044】
図4において、第2のセパレータ31は第1のセパレータ30と同一であり、同様に管状要素35を有する。管状要素のオリフィス34が乱流を生成することを防止するために、第2のセパレータの管状要素の端部は測定室の他方の端壁38と突き当たる。第2のセパレータ31に、ディスク形状であり
図3のように穿孔されたプレート32を用いることも可能である点に留意されたい。
【0045】
第1と第2のセパレータの貫通開口33に関して、同じセパレータ内で貫通開口が同一(同じ形状と同じサイズ)であり、均一に配置されていることが好ましい。それらが同一であり、且つ2つのセパレータ上で同じ様式で配置されていることも好ましい。
【0046】
各セパレータに関して、貫通開口33の数、それらの形状、サイズおよび配置は、測定域内に分析対象流体の層流を成立させるような様式で選択される。勿論、貫通開口のサイズは、流体の取入口25と排出口26のサイズよりも小さくなるように選択される。
【0047】
図5a乃至5dは、
図4で使用される第1と第2のセパレータの可能な構成を示す。ディスク形状のプレート32は、59.5mmの直径と、5mmの厚さと20.5mmの直径の中央オリフィス34を有する。管状要素35は、20.5mmの内径と、28mmの外経と、23.5mmの高さの直管である。ディスクには、中央オリフィスの中心軸と同じ中心軸にセンタリングされた10孔の3円で配置された30個の円孔が配設され、孔は5mmの直径を有し、内円43、中間円44および外円45はそれぞれ35mm、43mmおよび50mmの直径を有し、円それぞれの孔は、同じ円内に位置する隣接する孔に対し36°の角度に配置されている。
【0048】
本発明による検出器20は、例えば、2つのダクトの間に配置されて、またはフィルタカートリッジを設置するのに用いられるのと類似した構成に配置されることによって、水分散回路に配置され得る。こうして、これはバイパスを実行する必要なく、分散回路内で循環する水の全ての流れがシンチレーション検出器を通過することを可能にする。
【0049】
本発明を説明するために、第1と第2のセパレータが
図5a乃至5dに示した構成を有する、
図4に示したような検出器を実行した。測定室21は、80mmの内径と、180mmの内高、すなわち、0.90リットルの内容積を有するシリンダーである。流体取入口と排出口は、1.27cm(1/2インチ)の直径を有する。
【0050】
我々の実施形態において、サンゴバン(Saint‐Gobain)製の、参照番号BCF‐10の、以下の特徴を有するシンチレーティング光ファイバが使用された。
コア材料:1.05の密度のポリスチレン
コアの屈折率:1.60
シースの材料:ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)
シースの屈折率:1.49
ピーク放出:432nm
減衰時間:2.7ns
1/e(1mmの直径を有するファイバに関して):2.2m
MeV毎の光子数:約8000
【0051】
基準ファイバBCF‐10は、円形または矩形断面で入手可能であり、直径または側部が0.25mm~5mmの範囲であり得る。シースの厚さは、円形断面のファイバに関して、ファイバの直径の3%を表す。
【0052】
測定量Vmは、以下式に従って、使用されるファイバ(真っ直ぐな円形断面を有する)の数と長さに直接結び付いている。
Vm=π×L×N×r×(r+d)
式中、Lはシンチレーティングファイバの長さであり、Nはシンチレーティングファイバの数であり、rは流体内で考慮される粒子によって伝播される距離であり、dはシンチレーティングファイバの直径である。
【0053】
0.25mmの直径と30cmの長さを有する単一シースを備えた1000本のファイバBCF‐10を使用することが選択され、それらは束を形成するような様式で一体にグループ化される。
【0054】
ここで測定室に導入される流体は水である。
【0055】
エネルギー500keVのベータ粒子を考慮すると、上記の表に示すように距離r=0.2cmがあり、検出容量は4.24リットルである。
【0056】
エネルギー100keVのベータ粒子については、距離r=0.14mmがあり、検出容量は0.051リットルである。
【0057】
結果として、例えば、約0.15リットルである分析対象の水の量に関して上記に規定したような1000本のファイバの束を用いることで、エネルギー500keVのベータ粒子の検出の有効性は100%であり、100keVのベータ粒子に関しては34%である。
【0058】
本発明による検出器は、検出器の測定有効性を依然として保持しながら0.15リットルを超える可変な量の流体で使用することを可能にする。約0.9リットルの測定室容積を有して製造された検出器での我々の実施形態において、500keVのベータ粒子の検出にあたり100%の有効性、また、100keVのベータ粒子に関して34%の有効性を得ることが望まれる場合、光ファイバの数を比例増加させなければならず、すなわち、5829本のファイバを用いなければならない。情報のため、0.9リットルの室容積に1000本のファイバの束を用いることによって、100KeVのベータ粒子の検出に、5.8%に等しい有効性を得た。
【符号の説明】
【0059】
20:シンチレーション検出器
21:測定室
22:シンチレーティング光ファイバ
23:ファイバの束
25:流体取入口
26:流体排出口
27:光電子倍増管
30:第1のセパレータ
31:第2のセパレータ
32:プレート
33:貫通開口
34:貫通オリフィス
35:管状要素
36:側体
40:導入域
41:測定域
42;抽出域