(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】着用物品の伸縮積層体の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20220523BHJP
【FI】
A61F13/15 311Z
A61F13/15 340
A61F13/15 355B
A61F13/15 393
(21)【出願番号】P 2019526782
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2018022518
(87)【国際公開番号】W WO2019003908
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017127603
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】腰島 美和
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078363(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用物品の伸縮積層体の製造装置であって、
第1および第2シート1,2の間に弾性部材Fが挟まれた状態となるように、前記一対のシート1,2および前記弾性部材Fを搬送するアンビルロール50と、
前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに融着すると共に前記一対のシートで前記弾性部材Fを保持させる融着装置70とを備え、
前記アンビルロール50の外周面51には、前記一対のシート1,2が前記互いに接合された第1接合部31を生成するための第1突部52Hが前記アンビルロール50の幅方向Sに沿って、かつ、幅方向Sに互いに離間した状態で複数配置され、
前記各第1突部52Hは、前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する搬送溝Gを定義すると共に包含し、
前記搬送溝Gを含む前記複数の前記第1突部52Hのうち、前記幅方向Sに互いに隣り合う1つの第1突部52Hと別の第1突部52Hとの間に前記一対のシート1,2を受け止める少なくとも1つの受止部52Lが配置された、製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記受止部52Lが前記1つの第1突部52Hと前記別の第1突部52Hとの間に少なくとも2つ設けられ、
前記少なくとも2つの受止部52Lの間に、前記一対のシート1,2が互いに接合された第2接合部32を生成するための第2突部52Sが設けられている、製造装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、
前記受止部52Lの高さは前記第1突部52Hの高さに比べ51~300μm低いことを特徴とする、製造装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記アンビルロール50の外周面51には、前記アンビルロール50の前記幅方向Sに沿って延びる複数本の突条52が前記アンビルロール50の前記周方向Rに互いに離間して設けられ、
前記複数本の突条52のうち互いに隣り合う突条52は前記幅方向Sに延びる凹溝59を定義し、
前記各突条52には前記搬送溝Gを各々包含する前記複数の第1突部52Hが前記幅方向Sに間欠的に設けられ、
このように、前記突条52および前記凹溝59が形成されていることで、
前記第1突部52Hが前記
アンビルロール50の前記周方向Rおよび前記幅方向Sにマトリクス状に設けられ、
前記搬送溝Gが前記
アンビルロール50の前記周方向Rおよび前記幅方向Sにマトリクス状に設けられている、製造装置。
【請求項5】
着用物品の伸縮積層体10の製造方法であって、
前記伸縮
積層体10は第1および第2シート1,2の間に互いに離間した複数本の弾性部材Fが挟まれ、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfおよび前記伸縮方向Dfに交差する方向Dpについて各々複数列の第1接合部31において前記第1および第2シート1,2が互いに接合され、
前記製造方法は以下の工程を備える
前記第1シート1をアンビルロール50上に導入する工程、
前記アンビルロール50上の前記第1シート1上に前記弾性部材Fを導入すると共に前記アンビルロール50の複数の
搬送溝Gの各搬送溝Gに前記弾性部材Fの各々が入り込むように前記弾性部材Fを導入する工程、
前記第1シート1が前記アンビルロール50の径方向に収縮するのを抑制するために、前記搬送溝Gを包含する1つの第1突部52Hと別の第1突部52Hとの間の受止部52Lにおいて前記第1シート1を受け止めながら、前記第1シート1および前記弾性部材Fを搬送する工程、
前記アンビルロール50上において、前記第1シート1と第2シート2との間で前記弾性部材Fを挟むように前記第2シート2を前記第1シート1上に導入する工程、並びに、
前記受止部52Lにおいて前記第1シート1と第2シート2とが融着されることなく、第1シート1と前記第2シート2とを前記アンビルロール50の前記第1突部52H上で融着して前記第1接合部31を形成する工程。
【請求項6】
請求項3の製造装置を用いた着用物品の伸縮積層体10の製造方法であって、
前記伸縮積層体10は前記第1および第2シート1,2の間に互いに離間した複数本の前記弾性部材Fが挟まれ、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfおよび前記伸縮方向Dfに交差する方向Dpについて各々複数列の前記第1接合部31において前記第1および第2シート1,2が互いに接合され、
前記製造方法は以下の工程を備える
前記第1シート1を前記アンビルロール50上に導入する工程、
前記アンビルロール50上の前記第1シート1上に前記弾性部材Fを導入すると共に前記アンビルロール50の複数の前記搬送溝Gの各搬送溝Gに前記弾性部材Fの各々が入り込むように前記弾性部材Fを導入する工程、
前記第1シート1が前記アンビルロール50の径方向に収縮するのを抑制するために、前記搬送溝Gを包含する前記1つの第1突部52Hと前記別の第1突部52Hとの間の前記受止部52Lにおいて前記第1シート1を受け止めながら、前記第1シート1および前記弾性部材Fを搬送する工程、
前記アンビルロール50上において、前記第1シート1と前記第2シート2との間で前記弾性部材Fを挟むように前記第2シート2を前記第1シート1上に導入する工程、並びに、
前記受止部52Lにおいて前記第1シート1と前記第2シート2とが融着されることなく、前記第1シート1と前記第2シート2とを前記アンビルロール50の前記第1突部52H上で融着して前記第1接合部31を形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着用物品の伸縮積層体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の先行技術では、2枚のシート間に複数本の弾性部材を配置し、弾性部材の伸縮方向及びその交差方向の両方向に間欠的に、2枚のシートが互いに接合されて、伸縮積層体が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP2005-212405 A(フロントページ)
【発明の概要】
【0004】
両シートは、突部を有するアンビルロールとこれに対向するソニックホーン等(加熱・加圧手段)との間に両シートを通過させることで接合される。接合時の圧力を軽減するため、弾性部材は突部に設けた搬送溝内に収容されている。
上記接合用の突部は、伸張時の弾性部材を搬送溝内に収容できるように、例えば、100μm以上の高さで形成される。
【0005】
しかし、アンビルロールに巻回されたシートは、搬送の張力で前記アンビルロールの径方向に縮まろうとして、前記アンビルロールの軸方向に不用意に変位する場合がある。シートの変位により、弾性部材がシートと共に変位すると、弾性部材が前記搬送溝から外れ、接合時の押圧力で弾性部材が破断してしまうおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、軸方向に間欠的に突部を備えたアンビルロール上において両シートを互いに接合する場合に、弾性部材が搬送溝から外れて切断されることを抑制しながら、着用物品の伸縮積層体を製造する方法と装置を提供することである。
【0007】
本発明装置は、第1および第2シート1,2の間に弾性部材Fがサンドイッチされた状態となるように、前記一対のシート1,2および前記弾性部材Fを搬送するアンビルロール50と、
前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに融着すると共に前記一対のシートで前記弾性部材Fを保持させる融着装置70とを備え、
前記アンビルロール50の外周面51には、前記一対のシート1,2が前記互いに接合された第1接合部31を生成するための第1突部52Hが前記アンビルロール50の幅方向Sに沿って、かつ、幅方向Sに互いに離間した状態で複数配置され、
前記各第1突部52Hは、前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する搬送溝Gを定義すると共に包含し、
前記搬送溝Gを含む前記複数の前記第1突部52Hのうち、前記幅方向Sに互いに隣り合う1つの第1突部52Hと別の第1突部52Hとの間に前記一対のシート1,2を受け止める少なくとも1つの受止部52Lが配置されている。
【0008】
本発明の伸縮積層体の製造方法において、前記伸縮シート10は第1および第2シート1,2の間に互いに離間した複数本の弾性部材Fがサンドイッチされ、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfおよび前記伸縮方向Dfに交差する方向Dpについて各々複数列の第1接合部31において前記第1および第2シート1,2が互いに接合され、
前記製造方法は以下の工程を備える。すなわち、本方法は
前記第1シート1をアンビルロール50上に導入する工程、
前記アンビルロール50上の前記第1シート1上に前記弾性部材Fを導入すると共に前記アンビルロール50の複数の前記搬送溝Gの各搬送溝Gに前記弾性部材Fの各々が入り込むように前記弾性部材Fを導入する工程、
前記第1シート1が前記アンビルロール50の径方向に収縮するのを抑制するために、前記搬送溝Gを包含する1つの第1突部52Hと別の第1突部52Hとの間の受止部52Lにおいて前記第1シート1を受け止めながら、前記第1シート1および前記弾性部材Fを搬送する工程、
前記アンビルロール50上において、前記第1シート1と第2シート2との間で前記弾性部材Fを挟むように前記第2シート2を前記第1シート1上に導入する工程、並びに、
前記受止部52Lにおいて前記第1シート1と第2シート2とが融着されることなく、第1シート1と前記第2シート2とを前記アンビルロール50の前記第1突部52H上で融着して前記第1接合部31を形成する工程を備える。
【0009】
本発明において、第1突部52Hに包含される搬送溝Gは、1つの第1突部52Hに対し少なくとも1本の搬送溝Gが前記1つの第1突部52Hの突出表面を前記幅方向Sに分けるように設けられている。すなわち、前記各搬送溝Gは例えばV字状やU字状のノッチであり、前記第1突部52Hの前記幅方向Sの中央において前記第1突部52Hに形成されたノッチの表面で定義される。
前記搬送溝Gの深さは前記一対のシート1,2と両者の間の前記弾性部材Fとが互いに融着される程度の深さであってもよいし、互いに融着されない程度の深さであってもよい。前記搬送溝Gにおいて前記一対のシート1,2と前記弾性部材Fとが互いに融着される場合、前記搬送溝Gの底面は前記第1突部52Hで定義される。すなわち、この場合、前記搬送溝Gは前記幅方向Sの両側および下側において前記第1突部52Hに囲まれている。
なお、前記搬送溝Gは1つの第1突部52Hに対し複数設けられてもよい。
【0010】
本発明によれば、各弾性部材の前記幅方向(前記交差する方向)の少なくとも両側の一対の接合部において、一対のシートが融着構造により互いに接合される。すなわち、各搬送溝Gの少なくとも両側の一対の第1突部52Hにおいて一対のシートが融着構造により互いに接合され、一対のシート間に弾性部材Fが挟まれた伸縮積層体が生成される。
アンビルロール上において、シートが接合用の突部間の受止部に受け止められる。そのため、シートおよび弾性部材Fがアンビルロールの軸方向(幅方向)に変位することが抑制される。この結果、弾性部材が搬送溝から外れることが抑制され、接合時に弾性部材の破断が防止されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明が適用される着用物品の一例を展開して示す平面図である。
【
図2】
図2Aは実施例1にかかるA部(伸縮積層体)の拡大平面図、
図2Bは同実施例1の伸縮積層体の拡大断面図である。
【
図3】
図3(a)は弾性ストランドの断面図、
図3(b)は融着前の状態を示す一対のシートの断面図である。
【
図4】
図4Aは本発明の製造装置を示すレイアウト図、
図4BはB部を拡大した概念図、
図4CはC部を拡大した側面図である。
【
図5】
図5はアンビルロールを導入装置側から見た概略斜視図である。
【
図6】
図6はアンビルロールを下方から見た概略斜視図である。
【
図7】
図7はアンビルロールの一部を切り出して示す拡大した斜視図である。
【
図9】
図9はアンビルロールの突条の部位で断面したホーンおよびアンビルロールの拡大断面図である。
【
図10】
図10(a)および(b)は、それぞれ、突条の他の例を示す斜視図、
図10(c)は突条の更に他の例を示す平面図、
図10(d)は
図10(c)のd-d線断面図である。
【0012】
図3において不織布シートの部位はグレーで示した。
図2Aにおいて接合部には斜線を付した。
図8Aにおいて第1および第2突部の突出表面には斜線を付した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい発明装置においては、前記受止部52Lが前記1つの第1突部52Hと前記別の第1突部52Hとの間に少なくとも2つ設けられ、
前記少なくとも2つの受止部52Lの間に、前記一対のシート1,2が互いに接合された第2接合部32を生成するための第2突部52Sが設けられている。
【0014】
好ましくは、前記受止部52Lの高さは前記第1突部52Hの高さに比べ51~300μm低いことを特徴とする。
受止部52Lの高さが第1突部52Hに比べ低すぎると、第1シートを受止部52Lで受け止めるまでに第1シートが弾性部材Fと共にアンビルロール50の径方向に縮まろうとし、アンビルロール50の軸方向に弾性部材Fが変位し易くなる。
一方、受止部52Lの高さが第1突部52Hと同程度まで近づくと、シートの厚さや種類にもよるが、受止部52Lにおいて一対のシートが互いに融着し易くなり、互いに接合されてしまう。
【0015】
かかる観点から、受止部52Lの高さは第1突部52Hの高さに比べ60~300μm低いのが好ましく、70~300μm低いのがより好ましく、70~250μm低いのが更に好ましく、70~200μm低いのが最も好ましいだろう。
【0016】
但し、一対のシートの種類や厚さによっては、前記高さの差は20~300μm程度であってもよいだろう。
【0017】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0018】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【実施例】
【0019】
伸縮積層体の実施例の説明に先立って、伸縮積層体が用いられた使い捨て着用物品の構造の一例が説明される。
【0020】
着用物品を展開して示す
図1において、着用物品90は吸収性本体92および前後の一対の胴回り部材91,91を備える。吸収性本体92は一対の胴回り部材91,91に架設され股部92aを形成する。
【0021】
本着用物品90は、前記股部92aが前記胴回り方向Xに平行な仮想のライン(line)において2つに折られた状態で着用される。これにより、前記一対の胴回り部材91,91の胴回り方向Xの端部同士が互いに重なる。
【0022】
前記前後の各胴回り部材91は、
図2Aおよび
図2Bに明示する伸縮積層体10を包含する。前記伸縮積層体10は、それぞれ、弾性部材F、第1および第2シート1,2が互いに積層されたシート状の部材である。
【0023】
前記第1シート1および第2シート2は、通気性を有する不織布で構成されている。前記弾性部材Fは、前記第1シート1と第2シート2との間に挟まれており、前記胴回り方向Xに伸縮する。
【0024】
前記着用物品90(
図1)の伸縮積層体10は着用者の肌に接する肌面11(
図2B)と、その反対側の非肌面12とを有する。
【0025】
つぎに、前記伸縮積層体10の一例が説明される。
まず、弾性部材Fが伸張した状態について説明する。
【0026】
図2Bのように、前記一対のシート1,2は第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する。複数本の前記各弾性部材Fは前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、
図2Aの破線で示すように互いに離間して配置されている。
【0027】
図2Aおよび
図2Bのように、前記一対のシート1,2同士は複数の接合部3において、接着剤を介することなく、互いに融着により接合されている。本例の場合、固定部3fにおいて前記一対のシート1,2が前記弾性部材Fに融着されている(融着構造)ことで、前記各弾性部材Fは前記固定部3fにおいて前記一対のシート1,2に固定されている。
【0028】
前記各接合部3は
図2Bの前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が互いに融着されていることで構成されている。前記接合部3は
図2Aの前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する(例えば直交する)方向Dpに延び、前記伸縮方向Dfに互いに離間している。
【0029】
図2Aにおいて、前記各接合部3は複数の一対の第1接合部31、第2接合部32および固定部3fを有する。第1接合部31と第2接合部32との間には一対のシート1,2が互いに非接合の非接合部33が設けられている。
【0030】
弾性部材Fは、線状または索状であってもよい。例えば、
図3(a)に示すように、弾性部材Fは、複数の糸ゴム(繊維状弾性体)F1が束状に集合したマルチストランドであってもよい。糸ゴムF1の材質としては、例えば、ポリウレタンが挙げられる。
【0031】
前記弾性部材Fの収縮力により
図4Bに示すように、前記伸縮積層体10は前記弾性部材Fが収縮した状態で、多数の襞Pを形成する。以下、弾性部材Fの収縮した状態の伸縮積層体10について説明する。
【0032】
前記シート1,2は、例えば多数の熱可塑性の繊維が積層された熱可塑性の不織布であってもよい。
図4Bの襞Pは、
図2Aの前記弾性部材Fが収縮している状態において、前記一対のシート1,2が
図4Bのように方向Dpに突出して形成されている。
【0033】
図2Aにおいて、前記第1および第2接合部31,32には斜線が施されている。前記一対の第1接合部31は前記各弾性部材Fの、前記交差する方向Dpの両側に配置されている。
【0034】
前記第2接合部32は、前記各弾性部材Fのうち互いに隣り合う弾性部材Fの間において、かつ、一対の第1接合部31とこれと前記交差する方向Dpに隣り合う別の一対の第1接合部31との間に配置されている。本例では、一対の第1接合部31と別の一対の第1接合部31との間に1つの第2接合部32が設けられている。
【0035】
前記第2接合部32における前記一対のシート1,2同士の接合強度は、前記第1接合部31における前記一対のシート1,2同士の接合強度よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0036】
図2Aにおいて、一対の第1接合部31の間においてブランクで示す固定部3fは、前記第1接合部31よりも接合力が弱くてもよいし強くてもよい。また、固定部3fは前記第2接合部32よりも接合力が弱くてもよいし強くてもよい。弾性部材Fをシート1,2に固定できればよいからである。
【0037】
図2Aの前記固定部3fにおいて、各シート1,2は弾性部材Fに融着されていてもよいし、不織布の繊維の一部または全部が弾性部材Fに絡み付いたような状態で固定されていてもよい。
【0038】
図1の胴回り部材91,91の両端部またはその近傍において、前記弾性部材Fが
図2Bの一対のシート1,2の間に固定される場合、
図2Aの前記固定部3fを必要としない。
【0039】
図2Aにおいて、前記各接合部31,32は交差する方向Dpに断続的に設けられている。したがって、互いに隣り合う各接合部31,32間には、第1および第2シート1,2が互いに接合されていない非接合部33が断続的に設けられている。
【0040】
つぎに、前記伸縮積層体10の製造装置の一例が説明される。
図4Aの製造装置はアンビルロール50、導入装置60および融着装置70などを備える。
【0041】
前記導入装置60はアンビルロール50に弾性部材Fを案内しながら導入する。また、前記アンビルロール50には前記弾性部材Fよりも上流において第1シート1が導入され、前記弾性部材Fよりも下流において第2シート2が導入される。前記アンビルロール50は一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および弾性部材Fを搬送する。
【0042】
前記融着装置70は前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに融着すると共に前記一対のシート1,2を前記弾性部材Fに融着して前記一対のシート1,2で弾性部材Fを保持させる。本例の場合、融着装置70は前記融着を超音波エネルギーで行う超音波溶着装置である。
【0043】
前記融着装置70は、
図2Bの前記伸縮積層体10における前記2枚の不織布シート1,2の複数の接合部3(
図2A)において振動エネルギーを与えて、前記2枚の不織布シート1,2および弾性部材Fを融着する。
【0044】
より具体的には、
図5の前記アンビルロール50は多数の突条52を外周面51に有する。突条52はアンビルロール50の幅方向Sに延びる。すなわち、突条52はアンビルロール50の軸方向に平行な母線に沿って延びる。
【0045】
図7において、前記複数本の突条52は前記アンビルロール50の前記周方向Rに互いに離間して設けられ、前記複数本の突条52のうち互いに隣り合う突条52は前記幅方向Sに延びる凹溝59を定義する。前記各突条52には前記搬送溝Gを各々包含する前記複数の第1突部52Hが前記幅方向Sに間欠的に設けられている。
【0046】
このように、前記突条52および前記凹溝59が形成されていることで、前記第1突部52Hが前記ロール50の前記周方向Rおよび前記幅方向Sにマトリクス状に設けられ、前記搬送溝Gが前記ロール50の前記周方向Rおよび前記幅方向Sにマトリクス状に設けられている。
【0047】
図4Aの前記融着装置70はホーン71を有する。ホーン71は超音波エネルギーが付与されるもので、前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して
図4Cの突条52に対向する。
【0048】
図4Cにおいて、前記シート1,2の流れ方向に沿った前記ホーン71の幅W1は前記突条52の幅W2よりも大きくてもよい。また、ホーン71に対し、一時的に又は常時、複数本の突条52が同時に対向するように設定されてもよい。
【0049】
図5および
図6に示すように、前記アンビルロール50は複数本の搬送溝Gを有する。各搬送溝Gは前記複数の突条52の各突条52に形成されたV字状ないしU字状のノッチで構成され、前記各突条52を横断するように前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する。前記搬送溝Gはアンビルロール50の径方向の中心に向かって凹んでいる。
【0050】
図9に示すように、前記搬送溝Gの大きさは、弾性部材Fの一部が溝内に収容され、残部が溝からハミ出るように設定されてもよい。搬送溝Gの断面積は自然長の弾性部材Fの断面積よりも小さくてもよい。
【0051】
なお、
図5~
図8Cにおいて、シート1,2は図示されていないが、
図9に模式的に示すように、シート1,2は弾性部材Fを挟むように配置される。
【0052】
図4Aの導入装置60は、第1ロール(規定ロール)61および第2ロール(案内ロール)62を備える。
図5の前記第1および第2ロール61,62は、各々、第1および第2案内溝G1、G2を複数本有していてもよい。各第1案内溝G1は、前記弾性部材Fが巻かれ前記各弾性部材Fを案内する。
図6の前記第2案内溝G2は前記第1ロール61の前記各第1案内溝G1から導出された前記各弾性部材Fが巻かれ、この弾性部材Fを前記アンビルロール50の前記各搬送溝Gに案内する。
【0053】
前記第1および第2ロール61,62はフリーローラであってもよいし、前記アンビルロール50に同期して回転駆動されてもよい。また、第1および第2ロールを設けなくてもよい。
【0054】
図7に明示するように、前記各突条52は、複数の前記搬送溝G、受止部52Lおよび突部52H,52Sを有する。すなわち、前記各突条52は前記第1接合部31を生成するための複数の第1突部52Hと、前記第2接合部32を生成するための複数の第2突部52Sと非接合部33を形成するための受止部52Lとを包含する。なお、構造を理解し易くするために、
図7、
図8B、
図8Cおよび
図9において、各突部52L,52Hの高さや搬送溝Gの深さは誇張して図示されている。
【0055】
図7において、前記第1および第2突部52H,52Sおよび受止部52Lは前記アンビルロール50の幅方向Sに沿って間欠的に、つまり、幅方向Sに離間した状態で設けられている。
【0056】
図8Bの前記受止部52Lの高さ(凹溝59の表面からの高さ)H1は第1および第2突部52H,52Sの最も高い高さH2よりも低い。前記受止部52Lの高さH1は前記突部52Hの高さ(凹溝59の表面からの高さ)H2に比べ、例えば70~200μm低い。
図8Bにおいて、前記搬送溝Gは前記第1突部52Hに形成されたノッチで定義されている。前記第1突部52Hのノッチの最下面は、破線で示す前記凹溝59の底面よりも前記ロール50の径方向に突出した高さに設定されている。前記受止部52Lの表面は前記ノッチの前記最下面よりも前記径方向に突出した高さで、かつ、前記第1突部52Hの突出表面よりも前記径方向に退避した高さに設定されている。
【0057】
前記搬送溝Gは第1突部52Hの前記幅方向Sの両側の(一対の)部位および前記搬送溝Gの下方の第1突部52Hの部位で定義されている。すなわち、前記両側の第1突部52Hの部位および下方の第1突部52Hの部位は、搬送溝Gの底面を定義する。例えば、
図8Bに示すように、第1突部52Hの一部がV字状に削り取られて、前記幅方向Sの両側および下側において前記第1突部52Hに囲まれるように搬送溝Gが形成されている。
【0058】
図7に示すように、前記一対の第1突部52Hは前記アンビルロール50の幅方向Sおよび周方向Rの各々に複数組配置されている。前記幅方向Sに互いに隣り合う前記一対の第1突部52Hと別の一対の第1突部52Hとの間に前記一対のシート1,2を受け止める少なくとも1つの前記受止部52Lが配置されている。
【0059】
本例の場合、前記受止部52Lが前記一対の第1突部52Hと前記別の第1突部52Hとの間に2つ設けられている。前記2つの受止部52Lの間に、前記一対のシート1,2を互いに接合する第2接合部32(
図2A)を生成するための第2突部52Sが設けられている。
【0060】
つぎに、前記製造装置を用いた前記伸縮積層体10の製造方法の一例が説明される。
【0061】
図4Aに示すように、アンビルロール50の上流部分に第1シート1が導入される。前記第1シート1が導入されたアンビルロール50の第1シート1上には導入装置60から複数の弾性部材Fが導入される。各弾性部材Fは
図4Cの各搬送溝Gに第1シート(
図4A)と共に入り込んだ状態で導入される。
【0062】
前記第1シート1が前記アンビルロール50の径方向に収縮するのを抑制するために、
図9のように、前記一対の第1接合部31,31を生成する一対の第1突部52Hと別の一対の第1突部52Hとの間の受止部52Lにおいて、二点鎖線で示すように、前記第1シート1を受け止めながら、前記第1シート1および前記弾性部材Fが搬送される。
【0063】
一方、
図4Cの前記ホーン71に対面するアンビルロール50の部位には、
図4Aの第2シート2が導入される。すなわち、前記アンビルロール50上において、前記第1シート1と第2シート2との間で前記弾性部材Fを挟むように前記第2シート2が前記第1シート1上に導入される。
【0064】
前記第1シート1、弾性部材Fおよび第2シート2がホーン71と突条52との間を通過する際に、前記ホーン71がアンビルロール50に向かう方向に超音波振動する。これにより、
図2Aの前記第1接合部31および第2接合部32においてシート1,2同士が互いに融着されると共に、固定部3fにおいてシート1,2が弾性部材Fに融着される。こうして、伸縮積層体10が生成される。
【0065】
ここで、
図7および
図8Bの前記受止部52Lにおいて前記第1シート1と第2シート2とが融着されることなく、第1シート1と前記第2シート2とが前記アンビルロール50の各突部52H,52S上で融着されて前記接合部3が形成される。
【0066】
図9に拡大して示すように、一対のシート1,2は、前記突条52の第1突部52Hまたは第2突部52Sとホーン71との間を紙面に直交する方向に通過する。
【0067】
図9の各突部52H,52Sにおいては、ホーン71が第2シート2に大きい圧力で接する。したがって、各突部52H,52Sは一対のシート1,2が強固に超音波溶着された
図2Aの第1および第2接合部31,32を弾性部材Fの伸縮方向Dfに断続的に生成する。
【0068】
一方、
図9において、受止部52Lにおいては、ホーン71と第2シート2との間には接触圧力が殆ど生じない。したがって、受止部52Lでは超音波溶着が実行されない。
【0069】
また、
図9の二点鎖線で例示するように、受止部52Lにおいて第1および第2シート1,2がアンビルロール50の径方向に縮まろうとすると、受止部52Lの表面で第1シート1が受け止められる。そのため、各シート1,2が幅方向Sに位置ズレしにくい。その結果、弾性部材Fが搬送溝Gからはみ出すことなく(大きい圧力の加わる第1突部52Hの突出表面とホーン71との間にはみ出すことなく)、したがって、弾性部材Fが切断されることなく、シート同士を融着することができる。
【0070】
図10は変形例を示す。
図10(a)のように、受止部52Lの形状は方形以外の円形等であってもよい。また、受止部52Lは各第1突部52Hよりも周方向に突出していてもよいし周方向に短くてもよい。
【0071】
図10(b)のように、受止部52Lは第1突部52Hに連続していてもよく、あるいは、断続的に形成されていてもよい。
【0072】
図10(c)および(d)の実施例のように、伸縮積層体10の弾性部材Fに対し、第1突部52Hと受止部52Lとの間の突条52の表面52fと第1突部52Hとが蛇行(ジグザグ状に連続)していてもよい。この場合、受止部52Lの幅は一定でなくてもよい。この場合、搬送溝Gは弾性部材Fの延びる方向に間欠的に第1突部52Hに設けられている。すなわち、第1突部52Hと弾性部材Fとが交わる部位においてのみ弾性部材Fの延びる方向に沿って搬送溝Gが設けられている。なお、
図10(d)において弾性部材Fは二点鎖線で描かれている。
【0073】
ところで、受止部52Lは、アンビルロール50の外周面とおよび同じ高さであってもよい。また、弾性部材のズレに対する効果は期待できないが、接合用の突部の周方向の間欠部分に受止部52Lが形成されていてもよい。
【0074】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、導入用のロールは必ずしも設ける必要はない。また、融着は超音波ではなく、熱シールであってもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明はオムツ型およびパンツ型の使い捨て着用物品に好適に用いることのできる伸縮積層体の製造に適用し得る。
【符号の説明】
【0076】
1,2:一対のシート 10:伸縮積層体 1f,2f:第1面
3:接合部 3f:固定部 31:第1接合部 32:第2接合部 33:非接合部
50:アンビルロール 51:外周面
52:突条 52H:第1突部 52S:第2突部 52L:受止部 59:凹溝
60:導入装置 61:第1ロール(規定ロール) 62:第2ロール(案内ロール)
70:融着装置 71:ホーン
Df:伸縮方向 Dp:交差する方向 F:弾性部材
G:搬送溝 G1:第1案内溝 G2:第2案内溝
H1,H2:高さ S:幅方向(軸方向)
P:襞 W1~W2:幅