(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】ガス適用の真空の生成・増幅器およびブレーキ倍力効果生成方法
(51)【国際特許分類】
F04F 5/20 20060101AFI20220523BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
F04F5/20 A
F02M35/10 301M
(21)【出願番号】P 2019545319
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(86)【国際出願番号】 US2018018966
(87)【国際公開番号】W WO2018156590
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-18
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516300944
【氏名又は名称】ディエルエイチ・ボウルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】dlhBOWLES Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】シュリダル・ゴパラン
(72)【発明者】
【氏名】コリー・ザメンスキー
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171925(JP,A)
【文献】特開2005-048773(JP,A)
【文献】米国特許第09097149(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 5/20
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気器アセンブリであって、
複管腔を画定し、流路を画定する増幅器部材を含み、
前記流路は、
スロートにつながる収束部を含み、
前記収束部は前記スロートに向かって正弦波形の断面形状を有し、
前記流路はまた、
前記スロートに隣接する段差部と、
前記段差部に隣接する直線部と、
前記直線部に隣接する拡張部と、
真空出力を提供するために前記複管腔を画定する前記増幅器部材の横壁から延びる真空出力ポートと、を含み、
前記真空出力ポートは前記スロートの後ろで前記直線部の始まりに位置する、吸気器アセンブリ。
【請求項2】
前記スロートが最小内腔直径Dを有する、請求項1に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項3】
前記段差
部が前記スロートの直後にある、請求項2に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項4】
前記段差
部が、1.1Dから1.5Dの範囲の内腔直径を有する、請求項3に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項5】
前記流路が流れの主軸に沿っている、請求項2に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項6】
前記収束部の前記正弦波形の断面形状が前記流れの主軸に沿って約1Dから約4Dの範囲の長さに延びる、請求項5に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項7】
前記直線部が前記流れの主軸に沿って約3Dから約8Dの範囲の長さに延びる、請求項5に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項8】
前記直線部が円筒形の内壁を画定する、請求項1に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項9】
前記拡張部が前記直線部に対して傾斜角度を有して形成される内壁を画定し、前記傾斜角度は約3°から約8°の範囲内である、請求項1に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項10】
前記拡張部
が流れの主軸に沿って約12Dから約15Dの範囲の長さに延びる、請求項2に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項11】
前記真空出力ポートが、長軸から概して直角な方向に延び、穴部および傾斜部を含み、前記穴部は前記直線部と直接連通する、請求項1に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項12】
圧力エネルギーを運動エネルギーに変換することに、および収束する長さが1D-4Dと短いため摩擦損失を最低限に抑えることに前記正弦波形が特に効果的である、請求項2に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項13】
より高い増幅又は増大比を生成するために、前記段差
部は横向きに放射する直径1.1Dから1.5Dの環状の壁のセグメントを画定し、前記スロートは遠位側で前記段差
部で終わり、前記直線部の始まりを画定する、請求項2に記載の吸気器アセンブリ。
【請求項14】
吸気器システムであって、
チューブ部を通して真空溜めに連結するように構成された複数ポートハウジングと連通し、複管腔を画定する増幅器部材を含み、
前記複管腔を画定する前記増幅器部材は、流路を画定し、
前記流路は、
スロートにつながる収束部を含み、
前記収束部は前記スロートに向かって正弦波形の断面形状を有し、
前記流路はまた、
前記スロートに隣接する段差部と、
前記段差部に隣接する直線部と、
前記直線部に隣接する拡張部と、
増幅された真空出力を提供するために前記複管腔を画定する増幅器部材の横壁から延びる真空出力ポートと、を含み、
前記真空出力ポートは前記スロートの後ろに位置し、
増幅された真空圧力は、少なくとも1つの逆止弁アセンブリへの前記真空出力ポートを介して前記複数ポートハウジングのチューブ状部材に連通する、吸気器システム。
【請求項15】
前記チューブ状部材は対向する両端部まで連続して開いた管腔を含む、請求項14に記載の吸気器システム。
【請求項16】
前記対向する両端部は真空チューブとの接続に適合したタケノコ接手を含む、請求項15に記載の吸気器システム。
【請求項17】
前記直線部は前記スロートに隣接する近位端、および前記拡張部に隣接する遠位端を含み、前記真空出力ポートは前記直線部の前記近位端に隣接して位置する、請求項14に記載の吸気器システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、その開示内容全てが本願に参照され援用される“VACUUM GENERATOR/AMPLIFIER FOR GAS APPLICATIONS AND BRAKE BOOSTER GENERATION METHOD”と題された、2017年2月21日付けで出願された米国特許仮出願第62/461633号公報に基づき優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本願発明は自動車のブレーキ倍力装置(brake booster)、および関連した真空入力の感知に応答して真空出力を伝達又は増幅するための制御入力伝達システムに関し、より広くはガスの吸込みおよび混合装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車向けに、真空補助によるブレーキ倍力装置は通常エンジンの吸気マニフォルドに連結され、出力(output)はブレーキ倍力装置の真空溜めに連結する。したがって、ブレーキ倍力装置システムの出力は、部分的に真空レベルとエンジンの吸気マニフォルドで発生する流れの関数である。旧型で排気量が大きいエンジンは、吸気マニフォルドを通して現代の小型で低燃費のエンジンよりもずっと大量の空気を吸い上げていた。先行技術のブレーキ倍力装置システムは、Klostermanらの米国特許第5291916号(およびRE37090)に示されるようなマルチポート構造を通常有し、Brostの米国特許第3889710号で示されるタイプのエラストマー逆止弁を1つまたはそれ以上含む。
【0004】
その結果、先行技術の真空システムは効果がうすれてきている。なぜならば、これらの小型エンジンは吸気マニフォルドにおいて生成される真空のレベルが低いためブレーキ倍力装置システムが使える真空が弱く、真空による補助が低減されるからである。その結果、現代のエンジンはより小さい真空しか生成しないことにより、古い型の自動車のブレーキ倍力装置のいくつかは時代遅れとなっている。また、流量の低下は寄生流動損失などの別の問題も起こしている。
【0005】
したがって、先行技術の弱点を解消する増幅された真空増進(vacuum boost)信号を生むためのより効果的なシステム及び方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、流路を画定し複管腔(multi-lumen)を画定する増幅器部材を含む吸気器(aspirator)アセンブリを説明する。増幅器部材はスロート(throat)につながる収束部を含み、収束部はスロートに向かって正弦波形の断面形状を有する。段差部がスロートに隣接する。直線部が段差部に隣接する。拡張部(diverging portion)が直線部に隣接する。真空出力を提供するために真空出力ポートが複管腔を画定する増幅器部材の横壁から延び、真空出力ポートはスロートのうしろで直線部の始まりに位置する。
【0007】
スロートは最小内腔直径、寸法D、を有してもよい。スロートの直後に段差が設けられてもよい。段差は1.1Dから1.5Dの範囲の内腔直径を有してもよい。流路は流れの主軸に沿って並んでもよく、収束部の正弦波形断面形状部は流れの主軸に沿って約1Dから約4Dの範囲の長さに延びてもよい。直線部は流れの主軸に沿って約3Dから約8Dの範囲の長さに延びてもよい。直線部は円筒形の内壁を画定してもよい。拡張部は直線部に対して傾斜を有する内壁を画定してもよく、傾斜角度は約3°から約8°の範囲内である。拡張部は流れの主軸に沿って約12Dから約15Dの範囲の長さに延びてもよい。真空出力ポートは長軸から概して直角に延びてもよく、穴部および傾斜部を有し、穴部は直線部と直接連通する。圧力エネルギーを運動エネルギーに変換するにあたり、摩擦損失を最低限に抑えるために1Dから4Dという短い収束長さを使うとき、正弦波形は特に効果的であり得る。より高い増幅又は増大比を生成するために、段差は横向きに放射する直径1.1Dから1.5Dの環状の壁を画定してもよく、段差の遠位でスロートが終わり直線部の始まりが画定される。
【0008】
別の実施形態において、チューブ部を通して真空溜めと連結するように構成される複数ポートのハウジングと連通する、複管腔を画定する増幅器部材を含む吸気器システムが提供される。複管腔を画定する増幅器部材はスロートにつながる収束部を含む流路を画定してもよく、収束部はスロートにつながる正弦波形の断面形状を有してもよい。段差部がスロートに隣接する。直線部が段差部に隣接する。拡張部が直線部に隣接する。増幅された真空出力を提供するために真空出力ポートが複管腔を画定する増幅器部材の横壁から延び、真空出力ポートはスロートのうしろに位置し、増幅された真空圧力は少なくとも1つの逆止弁アセンブリへの真空出力ポートを介して複数ポートハウジングのチューブ状部材に連通してもよい。
【0009】
チューブ状部材は対向する両端部まで連続して開いた管腔を含んでもよい。対向する両端部は真空チューブとの接続に適合したタケノコ接手(barb connector)を含んてもよい。直線部はスロートに隣接する近位端、および拡張部に隣接する遠位端を含んでもよく、真空出力ポートは直線部の近位端に隣接して位置してもよい。
【0010】
別の実施形態において、複管腔を画定し、流れの主軸に沿ってスロートにつながる収束部を含む流路を画定する増幅器部材を含む吸気器アセンブリが提供される。スロートは、最小内腔寸法Dを含む。段差部がスロートに隣接してもよい。直線部は段差部に隣接してもよく、直線部はスロートに隣接する近位端、および反対側の遠位端を含んでもよい。拡張部は直線部の遠位端に隣接してもよい。増幅された真空出力を提供するために真空出力ポートが複管腔を画定する増幅器部材の横壁から延びてもよく、真空出力ポートはスロートのうしろに位置する。真空出力ポートは、直線部の近位端に隣接してもよい。収束部はスロートにつながる正弦波形の断面形状を有してもよく、収束部の正弦波形の断面形状は流れの主軸に沿って約1Dから約4Dの範囲の長さに延びてもよい。より高い増幅又は増大比を生成するために、段差は横向きに放射する直径1.1Dから1.5Dの環状の壁を画定してもよく、スロートは段差で終わり、直線部の始まりを画定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のしくみは下記の図とともに詳細な説明を参照すればよく理解できるであろう。添付の図面は明細書の一部を形成し、図中の全ての記載は本開示の一部として扱われるべきである。同様に、これらの図中の部品の相対的な位置、ならびにそれらの機能、形状、寸法、見栄えも、あたかも詳細に記述されているかのように本願開示の情報の一端を示し得る。
【0012】
【
図1A】
図1Aは、本願開示に係る真空生成器の一実施形態の断面図である。
【
図1B】
図1Bは、本願開示に係る真空生成器の一実施形態の断面図である。
【
図2】
図2は、Klostermanらの米国特許第5291916号(およびRE37090)などの先行技術ブレーキ倍力複数ポートアセンブリで使用され得る従来のベンチュリ構造の断面を図示する。
【
図3】
図3は、本願開示に係る
図1の真空生成器の分析テスト手順の模式図である。
【
図4】
図4は、
図1の真空生成器アセンブリ対従来のベンチュリ構造の比較結果を示す真空出力のグラフである。
【
図5】
図5は、
図1の真空生成器アセンブリ対従来のベンチュリ構造の比較結果を示す入口流量のグラフである。
【
図6】
図6は、
図1の真空生成器アセンブリ対従来のベンチュリ構造の比較結果を示す真空出力増幅のグラフである。
【
図7】
図7は、
図1の真空生成器アセンブリ対従来のベンチュリ構造の比較結果を示す真空出力のグラフである。
【
図8】
図8は、
図1の真空生成器アセンブリ対従来のベンチュリ構造の比較結果を示す入口流量のグラフである。
【
図9】
図9は、本願開示に係る真空生成器アセンブリの一実施形態の側面図である。
【
図11】
図11は、本出願の真空生成器アセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明の例示的実施形態がここで詳細に説明され、その例が添付の図面に示される。他の実施形態が利用可能であり、本願開示の各スコープから逸脱することなく構造的及び機能的な変更が可能であることは明らかである。さらに、本願開示のスコープから逸脱することなく様々な実施形態の特徴の組み合わせ又は変更が可能である。したがって、下記の説明は例示のみの目的で示されており、本願開示の構想及びスコープから逸脱することなく可能である例示の実施形態からの様々な代替案及び変更案を制限するものではない。
【0014】
ここで使用されるにあたり、「例」及び「例示」の単語は例又は図示を意味する。「例」及び「例示」の単語は、態様又は実施形態が重要や最善であることを意味しない。「又は」の単語は文脈から否定されない限り排他的ではなく包括的な意味である。例えば、「AがB又はCを採用する」という表現は全ての組み合わせを含む(例えば、AがBを採用する、AがCを採用する、又は、AがBとCとの両方を採用する)。付け加えると、不定冠詞は、文脈から否定されない限り概して「1つ又はそれ以上」の意味を意図する。
【0015】
類似した部品符号が図面にわたって使用される。したがって、全ての図でアセンブリの部品が同じであったとしても特定の図においては選択された部品のみが示される。同様に発明の特定の態様がこれらの図で示されるが、下記に説明されるとおり他の態様及び配置が可能である。
【0016】
与えられる図面で開示される真空増幅器システムおよび方法が提供される。本願発明の真空生成器アセンブリの詳細な説明を始めると、
図1および
図9-11は真空生成器アセンブリの特定の実施形態例を示す。
図2は、ベンチュリアセンブリの従来技術版を示す。
図3-8は本出願の真空生成器アセンブリと
図2の従来型ベンチュリアセンブリの比較結果を出力と流量のグラフの形で示す。
【0017】
真空増幅器アセンブリは、内燃エンジンでエンジンブロックと吸気ポートの間の空気流ラインにおいてキャブレターや燃料インジェクションポートなどで使用され得る。通常の内燃エンジンの空気流システムは、部分的な真空を生じさせ、キャブレターや燃料インジェクターの吸気ポートで空気を吸引し、適切な燃料燃焼を補助するという原理で動作する。真空効果は、車両の真空補助サブシステム、特にブレーキ、自動変速機、および空調器を補助するために便利であることが分かっている。逆止弁を付加するとベンチュリ管空気道と、それが作用するサブシステムとの間の連結が提供され、サブシステムからの背圧が内部の空気流を乱すことを防ぐ。
【0018】
本願発明の吸気器アセンブリ又は真空増幅アセンブリ100および方法は、
図1Aに示されるように複管腔を画定する増幅器部材120内に画定される改良版ベンチュリ構造を含む。複管腔を画定する増幅器部材120は、モールド成形されたプラスチック又はポリマー又はその他の固体材料によって作られてもよく、内部に流路110を画定する。増幅器部材120は、スロート140(最小内部直径「D」の内腔セグメント)につながる収束部122、次に拡張部128を終端とする直線部126によって画定される改良版ベンチュリ構造を含む。真空圧力を伝えるための真空出力ポート130はスロート140の後ろで直線部126の始まりに位置してもよい。ここで図示される例示的な実施形態は、スロート140(最小内部直径「D」の内腔セグメント)とつながり流体連通する収束部分又は収束部122を有し、次に拡張部128を終端とする直線部126を有する。「真空出力」のポート130は、スロート140の後ろに位置して直線部126の近位端に隣接する横壁セグメント124で画定される。収束部122は環状の正弦波形の収束形状の正弦波形で、流路110又はスロート140の最小内部直径につながる壁142を含む。正弦波形の壁142は傾斜した曲面を含み、従来のベンチュリ管に使われるテーパや直線状の傾斜とは異なる。
【0019】
ここ(
図1A、1B、および9-11)で説明される実施形態によれば、4対1という驚くべき真空増幅又は増大比が得られる。さらに、図示された形状がエンジンの出力損失を低減させる最適レベルの真空出力を低い流量においてポート130で提供することが認められた。これらの結果は複管腔を画定する増幅器部材120内に画定された流路形状の特徴の効果であり得る。
【0020】
特に、流路110の形状は正弦波形の収束壁142、段差132、および直線部126を含み、これらの形状は収束部122の下流の入口144と真空増幅システム100の拡張部128との間に位置する。
図2はブレーキ倍力装置用従来型ベンチュリ構造の従来技術の実施形態を示すが、これらの形状の組み合わせが示されていないのは明らかである。
【0021】
収束部122の壁の正弦波形は、概して環状であり、スロート140で収束する空洞を画定してもよい。正弦波形の収束形状はスロート140の直径に相対的に約1Dから約4Dの長さ(流れの主軸160に沿って)の正弦波形形状の収束壁を有してもよい。収束壁142の形状が直線的ではなく正弦波形であることにより、収束する圧力エネルギーが運動エネルギーにより効率良く変換されると同時に、収束セグメントの軸方向長さが1D-4Dと短いため摩擦損失が最低限に抑えられることが発見された。試作開発段階で、収束部122の正弦波形は圧力エネルギーを運動エネルギーに効果的に変換し、中の流体の摩擦損失を最低限にすることが発見された。これらの摩擦損失は収束部が流れの主軸160に沿う短い長さを持つ環状の正弦波形壁142を有するとき発生する。一実施形態によれば、正弦波形壁142は約1Dから約4Dの軸方向長さを含む。
【0022】
段差132は、スロート140のすぐ上流側に位置してもよく、流路110内において突然広くなる空洞を形成する。段差132は、スロート140よりも少しだけ大きい寸法を有する環状の壁セグメントを画定してもよい。段差132は、
図1Aおよび1Bに示されるとおりスロートの直後にある環状の円筒形状を含んでもよい。特に、段差132は、約1.1Dから約1.5Dの直径を有してもよく、この寸法範囲は、スロート140の寸法を基準とした相対的寸法である。段差132の相対的寸法が、流路110内に環状の非連続部を提供し、これが段差や環状の非連続部がない従来のベンチュリ管よりも高い真空増幅を生成することが分かっている。真空増幅は上記の範囲の環状の非連続を有する試作器において最高となり、それより大きい段差寸法では真空増幅が下がり始めることが分かっている。
【0023】
流体(例えば、液体、空気、又はその両方の混合)が流れの主軸160に沿って入口144に入ると、正弦波形の収束壁142に沿ってスロート140まで滑らかに移動する。流体は内部直径Dを有するスロート140を、低下した密度で通過する。次に流体は段差部132に入り、軌道(trajectory)又は膨張角度(
図1Bの破線150を参照)に沿って、直線部126の内部壁に当接するまで膨張する。望ましい軌道は流路110に沿った段差132又は環状の非連続によって起こされてもよく、段差132はスロート140よりも少し大きい寸法を有する。次に、流体の流れはポート130において望ましい真空増幅が得られるように直線部126を通って通過することが望ましい。真空出力ポート130は、流れの主軸から概して直角な方向に延びてもよく穴部152および傾斜部154を含み、穴部は直線部126と直接連通する。一実施形態によれば穴部152は、スロート140よりも概して小さい寸法を有してもよい。
【0024】
次に段差132は、遠位で直線部126を画定する、又はそれにつながる。直線部126は円筒形状を含んでもよく、流路110の流れの主軸160に沿って延びてもよい。直線部はスロート140に隣接する近位端およびそれに対向し拡張部128に隣接する遠位端を含んでもよい。直線部126は流れの主軸160に沿って約3D-8Dの範囲の長さを含んでもよく、長さはスロート140の寸法に関連してもよいが、それだけではなく段差132の寸法にも依存してもよい。直線部126の次に拡張部128がある。
【0025】
拡張部128は直線部126に対して傾斜角度136で形成される内部壁を画定してもよく、この傾斜角度は流れの主軸160に対して約3°から約8°の範囲内である。拡張部128は流れの主軸160に沿って約12Dから約15Dの範囲の長さに延びてもよい。
【0026】
比較してみると、本願実施形態は正弦波形であるが、従来のベンチュリ管形状(
図2に示される従来技術)は対照的に直線プロフィールの収束ノズルを含む。さらに、スロートの後ろに段差部がなく、拡張部が最小直径部(スロート)に直結している。また、
図2の従来のベンチュリ構造は収束部と拡張部との間に直線部を含まない。
【0027】
説明された吸気器アセンブリは、
図2に示される従来のベンチュリ構造と比較された。テスト手順は
図3に模式的に示され、出願人の吸気器アセンブリ(「ディーエルエイチボウルズのサンプル」と呼ぶ)および従来のベンチュリアセンブリ(
図2、「競合サンプル」と呼ぶ)との両方の出口に真空源が適用され、入力真空が真空ゲージで計測される。この真空ゲージの次には気体の流量を毎分のリットル数(slpm:standard liter per minute)の単位で計測するデジタル流量計が付けられる。デジタル流量計は真空源に連結され、実験者によって制御される。また、もう一つの真空ゲージが出口ポートに取り付けられる。テストが実施され、ベンチュリ管を通って計測される流量(slpm)を含むデータが集められ、入力真空レベルが1inHgから18inHgの範囲である真空出力(inHg)が記録された。入力真空に対する出力真空の比が増幅、増進、又は増大比である。このテストはベンチマークとして使われ、本願発明の真空増幅器システム100及び方法と、先行技術の方法(又は、
図2の既存の構造)が比較された。
【0028】
従来の実施形態と比較した吸気器アセンブリ100の利点は、
図4および
図5に示される実験結果のプロットから容易に読み取れる。複管腔を画定する増幅器部材120の利点は低い真空レベル(10inHg以下)の領域で見られ、増幅器部材120が従来技術の従来の構造の性能をしのぐ(例えば従来技術より40%-90%優れている)。
図6は、真空入力の関数としての真空増幅(真空入力に対する真空出力の比)を示す。低い真空レベルにおいて、増幅器部材120は真空入力の最高3.5倍まで増幅するが、競合サンプルは真空入力の約2倍が限界である(
図6)。真空入力が15inHgを超えると増幅器部材120と従来構造は互いに似た性能を示す。
【0029】
図7および8は大流量の競合サンプル対増幅器部材120の例を示し、真空出力(
図7)および入口流量(
図8)を比較する。この例において、競合サンプルは大きいスロートを有し、その結果入口流量は大きい。
図8から、競合サンプルは、類似した真空出力値(例えば
図7)を達成するためには増幅器部材120よりも2.5倍近くのマニフォルドを源とする流量が必要であることは明らかである。逆に、
図4、5、および6から明らかなように、似た流量であれば増幅器部材120は競合サンプルよりも最高90%まで高い性能を示す。
【0030】
図9、10、および11は、複管腔を画定する増幅器部材120をチューブ部を通して真空溜めに連結するように構成された複数ポートシステムハウジングに組み込んだ吸気器システム100の実施形態を示す。
図9および11は、
図10の図で示される増幅器部材120を含んだ吸気器アセンブリ又は複数ポートブレーキ倍力システムハウジングの2つの対向する側面図を示す。流体流れの方向は
図9および11の矢印によって示される。
図9-11に示される実施形態において、真空源(図示なし)は入力ポート220で接続され、複管腔を画定する増幅器部材120の対向する側(普通の又は増幅されていない真空)はポート230に接続される。増幅された真空圧力は真空出力ポート130を介して逆止弁アセンブリ200を通り、対向する端部250、260まで連続して開いた管腔242を含み、真空溜め又はその他とのチューブ接続に適合したタケノコ接手を備えたチューブ状部材240に連通する。したがって、下側の両方のポート250、260は本願発明のシステムおよび方法により生成される増幅された真空用である。
【0031】
本願開示の実施形態は添付の図面で示され、上記の詳細な説明により説明されているが、本開示は開示された実施形態のみに限定されるものではなく、ここで説明される本開示は下記の請求項のスコープから逸脱することなく無数の置き換え、修正、交換が可能であることは明らかである。下記の請求項は、請求項又はそれに同等なもののスコープ内であり得る全ての修正及び変更を含むことを意図している。
【0032】
したがって、本明細書は、添付の請求項の構想及びスコープ内のそのような変更、修正、及び変化全てを含むことを意図している。さらに、詳細な説明又は請求項で使用される範囲において、「含む」という用語は包括的であることを意図している。