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  • 特許-基板キャリア構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】基板キャリア構造体
(51)【国際特許分類】
   C30B 25/12 20060101AFI20220523BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20220523BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20220523BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220523BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C30B25/12
C23C16/458
C23C14/50 Z
H01L21/68 N
H01L21/31 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019547085
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018054988
(87)【国際公開番号】W WO2018158348
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】62/464,551
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514194886
【氏名又は名称】エスジーエル・カーボン・エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シェーン・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・クンツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・アウマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ウェンデル
(72)【発明者】
【氏名】オースティン・モニー
(72)【発明者】
【氏名】トム・ゲッツ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-151344(JP,A)
【文献】特表2007-518249(JP,A)
【文献】特開2003-338462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
C23C 16/00-16/56
C23C 14/00-14/58
H01L 21/683
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板キャリア構造体であって、該基板キャリア構造体の背面が少なくとも一つの溝を備え、前記基板キャリア構造体上の前記少なくとも一つの溝の配置構成が放射状と同心円状の組み合わせであり、放射状の溝は基板キャリア構造体の縁から中心に延伸し、
前記基板キャリア構造体が、炭化珪素でコーティングされたグラファイト製、又は炭化珪素でコーティングされた炭素繊維強化炭素材製である、基板キャリア構造体。
【請求項2】
前記少なくとも一つの溝が、角度が付いた断面形状、矩形の断面形状、又は円形の断面形状を有する、請求項に記載の基板キャリア構造体。
【請求項3】
前記少なくとも一つの溝が、前記基板キャリア構造体の全厚さの1%から90%の範囲内の深さを有する、請求項に記載の基板キャリア構造体。
【請求項4】
前記少なくとも一つの溝の幅対深さの比が10未満である、請求項に記載の基板キャリア構造体。
【請求項5】
前記基板キャリア構造体の前面が少なくとも一つのポケットを更に備える、請求項に記載の基板キャリア構造体。
【請求項6】
前記少なくとも一つのポケットが、平坦な形状、凹状形状、又は凸状形状を有する、請求項に記載の基板キャリア構造体。
【請求項7】
前記少なくとも一つのポケットが、25mmから500mmの直径を有する、請求項に記載の基板キャリア構造体。
【請求項8】
エピタキシャル成長製造プロセス、多結晶成長製造プロセス、又はアモルファス成長製造プロセスのための請求項に記載の基板キャリア構造体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規基板キャリア構造体(基板搬送体)(基板はウェーハであり得る)と、そのナノスケールプロセス(堆積プロセス及び/又は成長プロセス等)における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスの小型化に向かっている業界の傾向と共に、プロセスの一貫性が、最終的な歩留まりに影響する重要な要因となっている。この傾向は、半導体、ソーラー、エピタキシャル成長、LED製造等の業界に見受けられる。ナノスケール構造体を製造するために、これらの業界では、CVD(Chemical Vapor Deposition,化学気相堆積)、VPE(Vapor Phase Epitaxy,気相エピタキシー)、PVD(Physical Vapor Deposition,物理気相堆積)等の複数の堆積法と成長法が用いられている。特に、これらの手法で製造される薄膜は、単結晶相、多結晶相、及び/又はアモルファス相を含む構造を有することができる。各プロセス手法では、基板キャリア構造体が必要とされる。
【0003】
多くの基板キャリア構造体は、ウェーハ基板を物理的に支持して、成長プロセス/堆積プロセス中の熱の散逸及び伝達を与える少なくとも一つのポケットを含むキャリア構造を備える(非特許文献1、非特許文献2)。ポケットの床部の形状が、ウェーハ基板の表面に亘って一貫した熱伝達に寄与し得る。ウェーハの温度は、上記堆積プロセス及び成長プロセスにおいてフィルムの特性に影響する主要因の一つである。特許文献1に記載されている基板キャリア構造体では、キャリア構造体が、キャリア構造体の背面に位置するポケットを備え、そのポケットが二段構造、つまり上段部と下段部とを有している。このような二段構造のポケットを用いることによって、ウェーハ基板の縁における熱伝達が改善されるが、ウェーハ基板の表面に亘る熱伝達は不均一である。
【0004】
熱伝達の均一性は、上記堆積プロセス及び成長プロセスにおけるフィルム特性に影響する。ウェーハ基板の表面に亘って不均一な熱伝達では、堆積フィルムの厚さが不均等になり、堆積層の不順分な歩留まりにつながり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2013/0319319号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】W. S. Rees, CVD of nonmetals, Wiley- VCH, Weinheim, 1996
【文献】A. C. Jones, P. O'Brien, CVD of Compound Semiconductors, VCH, Weinheim, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、ウェーハであり得る基板に対する成長/堆積プロセス中に堆積される層の均一性及び歩留まりを増大させるよう改善された基板キャリア構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、基板キャリア構造体の背面及び/又は前面、好ましくが背面が少なくとも一つの溝を備える、基板キャリア構造体によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】円形の溝のみを有するキャリアの上面図を示す。
図2】放射状の溝のみを有するキャリアの上面図を示す。
図3】放射状の溝及び円形の溝を有するキャリアの上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
基板の表面に亘る熱伝達の均一性に影響する一つの要因は、キャリア構造体全体に対する機械的支持/安定性である。キャリア構造体に少なくとも一つの溝を設けることによって、キャリア構造体の表面に対する機械的支持が与えられ、特に、キャリア構造体の表面に対して垂直なキャリア構造体の変形が防止される。このようなキャリア構造体は、溝を有さない従来技術の基板と比較して薄い形状を有する。溝がキャリア構造体の平坦性の変動を減少させ、そのキャリア構造体の設計は、好ましくは、成長/堆積プロセスに対応して用いられるガス供給システムと加熱素子に適合するようにされ得る。キャリア上の少なくとも一つの溝の配置構成は、放射状や同心円状であり得て、又は放射状と同心円状の組み合わせの配置構成であり得る。本発明において、放射状の溝は基板キャリア構造体の縁から中心に延伸する溝として定義され、同心円状の溝は外周付近を遮らない。同心円状の溝は、基板キャリア構造体の外周付近の高さの振れを防止する。これは、キャリア形状がより均一であって、一つの軸上で他の軸上よりも高くなるサドル(鞍)形状とならないようにすることを円形の溝が保証することを意味する。これは、成長プロセスにおける基板キャリア構造体の使用中に、コーティングされる基板が均等に加熱及びコーティングされて、コーティングされた製品の高い品質をもたらすという更なる利点を有する。溝の数は特に限定されないが、好ましくは、放射状の溝の場合の数は1から18本、好ましくは2から16本、より好ましくは2から14本の範囲内であり、同心円状の溝の数は、好ましくは1から6本の範囲内、より好ましくは2本以上である。放射状の溝と同心円状の溝を組み合わせて用いる場合でも、上記溝の数が有効である。
【0011】
溝の断面設計は、角度を付けた形状(V字形状)、矩形、又は円形であり得る。一つよりも多くの溝が存在する場合、各溝の断面設計は同じとなり得るか、又は上記断面設計のあらゆる組み合わせとなり得る。
【0012】
溝の深さは、基板キャリアの全厚さの90%以下であり、つまり、溝は貫通孔を示さない。基板キャリア構造体の全厚さの90%を超える深さでは、基板キャリア構造体が脆弱になり、基板キャリア構造体の全厚さの1%未満の深さでは、溝の効果が認められなくなり得る。溝の幅対深さの比は10未満である。放射状の溝設計が選択される場合、各溝の長さは好ましくはキャリア構造体の半径よりも短く、典型的には、キャリアの半径の95%未満である。しかしながら、その長さがキャリアの中心を通ることやキャリアの縁に至ることも可能である。
【0013】
溝の断面設計、深さ及びアスペクト比は、使用される堆積及び/又は成長プロセスの条件、つまりそのようなプロセスの結果物である製品の所望の特定に依存することを理解されたい。
【0014】
本発明のキャリア構造体は、キャリア構造体の前面の一部である少なくとも一つのポケットを更に備える。
【0015】
基板の表面に亘る熱伝達の均一性は、基板とキャリアの接触面や、基板とポケットの面との間の間隔によっても影響を受ける。
【0016】
ポケットの床部の形状は、ウェーハ基板の表面に亘って一貫した熱伝達を提供するように設計されることが望ましい。複数のポケットを含む基板キャリア構造体の場合、この均一性は全てのポケットに当てはまらなければならない。所与の基板キャリア構造体のポケットの数にかかわらず、各ポケットの寸法はキャリア全体の形状によって影響を受け、そのキャリア全体の形状は溝によって影響を受ける。この形状は、基板キャリアの円周方向及び直径方向の両方に亘る物理的撓みとして定義される。一貫した基板キャリア構造体の形状/平坦性が与えられないと、最終的にはポケット構造の変動につながり、つまりは基板に対する成長/堆積プロセス中に堆積される層のプロセス均一性及び歩留まりの低さにつながる。
【0017】
ポケットの形状は、平坦、凹状、凸状、又はこれらのあらゆる組み合わせとなり得る。ポケットの平坦性及び形状が均一な温度分布を促進するので、キャリアの均一な形状は、成長プロセス中に基板ウェーハ上に堆積する層の高い均一性に起因して低い廃棄率をもたらす。
【0018】
ポケットの数は、キャリア構造体の寸法と、最終製品の所望の特性とに依存する。有利には、ポケットは、25~500mm、好ましくは45~455mm、より好ましくは45~305mmの直径を有する。
【0019】
キャリアは、グラファイト、炭化珪素、炭化珪素でコーティングされたグラファイト、炭化珪素でコーティングされた炭素繊維強化炭素材(CFRC,carbonfiber reinforced carbon)、これらの任意の混合物から成る群から選択された物質製である。
【0020】
本発明の基板キャリア構造体は、CVD(化学気相堆積)、VPE(気相エピタキシー)、PVD(物理気相堆積)等のエピタキシャル成長、多結晶成長、又はアモルファス成長の製造プロセスにおいて使用可能である。
【0021】
以下、本発明を、純粋に例示目的として、有利な実施形態及び添付図面を参照して説明する。
【0022】
[例]
[例1]
本例では、グラファイトキャリアが、キャリアの中心付近から縁付近まで延伸する少なくとも3本の放射状の溝を含む。放射状の溝は、好ましくは対称に配置されて、キャリアの半径方向に沿った剛性を与え、キャリアを凸状や凹状にしてしまう撓みを軽減する。このキャリアの撓みの変動の軽減は、一貫したポケットの床部の形状をもたらして、目的通りのウェーハからキャリアまでの間隔を与えて、ウェーハ内部の均一性、つまりは歩留まりを向上させる。
【0023】
例えば、12本の放射状の溝を有する150mmサセプタを用いる場合、0.002インチ程度のポケット形状とすることができるが、溝を用いない場合には、略0.004インチ程度のポケット形状とすることしかできない。
【0024】
【表1】
【0025】
[例2]
本例では、グラファイトキャリアが、少なくとも一つの円形の溝、好ましくはキャリアに対して同心円状の三つの円形の溝を含む。この円形の特徴は、外周付近のキャリアの剛性を増大させて、キャリアを湾曲させたり歪ませたりしてしまう撓みを軽減する機能を果たす。これは、均一に平坦なキャリア縁を与え、以下の二つの主な役割を果たす。即ち、ポケットの床部の形状が、キャリア形状に変動がないことに起因して一貫性のあるものとなる。また、キャリアと反応器の構成要素との間の間隔が一貫性のあるものとなる。反応器の構成要素としては、熱源、ガス供給システムや、間隔がその動作にとって重要となる計測機器が挙げられる。キャリアとこれら構成要素との間の間隔の一貫性は、均一な堆積パラメータ又は成長パラメータ(温度、濃度、圧力、流量等)を与える。更に、同心円状の溝は、キャリアのポケットが平坦であって凸状ではなく、基板が均等に加熱及びコーティングされることを保証する。
【0026】
[例3]
本例では、グラファイトキャリアが、少なくとも1本の円形の溝と、少なくとも3本の放射状の溝とを含む。放射状の溝は、キャリア構造体の半径方向に沿った剛性を与え、基板キャリア構造体を凸状や凹状にしてしまう撓みを軽減する。これと同時に、円形の溝が外周付近のキャリアの剛性を増大させて、キャリアを湾曲させたり歪ませたりしてしまう撓みを軽減する機能を果たす。結果として、ポケットの床部の形状が、基板キャリア構造体の形状に変動がないことに起因して一貫性のあるものとなる。この基板キャリア構造値の撓みの変動の減少は、一貫性のあるポケットの床部の形状をもたらす。これは、ウェーハ基板上に均一に堆積/成長した層を更にもたらすが、その理由は、基板キャリア構造体と基板ウェーハとの間の間隔が最適化されて、温度分布が改善されるからである。これは、成長プロセスにおける基板キャリア構造体の使用中に、コーティングされる基板が均等に加熱及びコーティングされて、コーティングされた製品の高い品質をもたらすという更なる利点を有する。また、キャリアと反応器の構成要素との間の間隔が一貫性のあるものとなる。反応器の構成要素としては、熱源、ガス供給システムや、間隔がその動作にとって重要となる計測機器が挙げられる。キャリアとこれら構成要素との間の間隔の一貫性は、均一な堆積パラメータ又は成長パラメータ(温度、濃度、圧力、流量等)を与える。
【符号の説明】
【0027】
1 基板キャリア構造体(基板搬送体)
2 放射状の溝
3 円形の溝
4 基板キャリア構造体の中心
5 基板キャリア構造体の縁
図1
図2
図3