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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】プロテインキナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/12 20060101AFI20220523BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220523BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220523BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220523BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C07D417/12 CSP
A61K31/506
A61K45/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C07D417/14
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019551918
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 US2017065847
(87)【国際公開番号】W WO2018111893
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】62/433,410
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,785
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519209428
【氏名又は名称】プリンストン ドラッグ ディスカバリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホー、カン
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-523216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0076025(US,A1)
【文献】特表2006-503866(JP,A)
【文献】特表2010-502742(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104151321(CN,A)
【文献】国際公開第2008/150446(WO,A1)
【文献】特表2012-529511(JP,A)
【文献】国際公開第2006/099474(WO,A1)
【文献】Drug Metabolism and Disposition,2009年,Vol. 37, No. 6,pp. 1242-1250
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/12
A61K 31/506
A61K 45/00
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 25/00
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 37/06
A61P 43/00
C07D 417/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物であって、
式中、W、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
Yは、C-Hまたは窒素であり;
、R、およびRは、独立して水素:ハロゲン;アルコキシルであって、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ若しくはtert-ブトキシであるアルコキシル;直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル、または -C アルケニルであって、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル、または -C アルケニル;または任意に置換されたヘテロシクロであって、任意の置換基は、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して、水素、直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル、または -C アルケニルであり;
Xは、独立して水素、-(CH-OR(式中、nは、0~4の整数であり、Rは、独立して、水素、直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキルまたはC -C アルケニルである)、または-NR(式中、RおよびRは、独立して、水素、直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル、またはC -C アルケニルである)である、
化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物。
【請求項2】
式III:
【化2】

の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物であって、
式中、W、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
Yは、C-Hまたは窒素であり;
、R、およびRは、独立してH:ハロゲン;アルコキシルであって、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、もしくはtert-ブトキシであるアルコキシル;直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル;または -C アルケニルであって、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル、または -C アルケニル;または任意に置換されたヘテロシクロであって、任意の置換基は、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して水素、直鎖C -C アルキル若しくは分岐鎖C -C アルキル、または -C アルケニルである、
化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物。
【請求項3】
が重水素であり、WおよびWが水素である、請求項1または2に記載の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物。
【請求項4】

【化3】

【化4】

【化5】
、又は
【化6】

、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物である、請求項4に記載の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物。
【請求項5】
、W、およびWがそれぞれ水素である、請求項1または2に記載の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物。
【請求項6】
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】
、又は
【化11】

、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物である、請求項5に記載の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の化合物、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物を含む、医薬組成物
【請求項8】
プロテインキナーゼ媒介疾患または状態に罹患している対象を治療するための請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記プロテインキナーゼ媒介疾患または状態が、自己免疫疾患または癌である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、移植拒絶反応、多発性硬化症(MS)、全身性硬化症(SSc)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、慢性関節リウマチ(RA)、および乾癬のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記癌が、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
【化12】

【化13】


【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】
、又は
【化19】

、および/またはその塩、エナンチオマー若しくはエナンチオマー混合物を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記プロテインキナーゼ媒介疾患または状態が、自己免疫疾患または癌である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、移植拒絶反応、多発性硬化症(MS)、全身性硬化症(SSc)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、慢性関節リウマチ(RA)、および乾癬のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記癌が、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの追加の治療薬と併用して使用される、請求項7~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1つの治療薬が、化学療法薬、生物学的薬物、ステロイド、免疫抑制剤、または非ステロイド系抗炎症剤である、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の重水素化および非重水素化環状化学化合物、ならびにその塩、自己免疫および癌の疾患または状態などのプロテインキナーゼ媒介疾患または状態の治療におけるそのような化合物の使用方法、前記化合物の医薬組成物、ならびに前記化合物と同時投与された治療薬との併用治療に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に提供される情報は、読者の理解を助けることだけを意図している。提供された情報も引用された参考文献も、本発明に対する先行技術であるとは認められない。
【0003】
ヒト疾患の発症の根底にある分子事象の同定は、特定の疾患の予防、管理、および治癒における改善された戦略の設計において大きな課題を提示している(Lahiry P et al.Kinase mutations in human disease:interpreting genotype-phenotype relationships.Nat Rev Genet.2010;11(1):60-74)。
【0004】
ヒト疾患における異常に制御されたプロテインチロシンキナーゼ(PTK)の役割は、熱心な調査の主題である(Lahiry id.)。プロテインキナーゼは、細胞内シグナル伝達の調節因子であり、それらの機能的調節異常は、発癌、自己免疫反応、および他の多くの病態または病状において一般的である(Lahiry id.;Vargas L et al.Inhibitors of BTK and ITK:state of the new drugs for cancer,autoimmunity and inflammatory diseases.Scand J Immunol.2013;78(2):130-9;Nobel ME et al.Protein kinase inhibitors:insights into drug design from structure.Science.2004;303:1800-1805)。ヒトゲノムは、配列および構造において保存されている触媒ドメインを共有するがそれらの触媒作用がどのように調節されるかにおいて顕著に異なる500を超えるプロテインキナーゼをコードする(Manning G et al.The protein kinase complement of the human genome.Science.2002;298:1912-1934;Nobel id.)。プロテインキナーゼは、細胞成長および増殖、細胞分化、細胞発生、細胞分裂、ストレス応答、転写調節、異常な有糸分裂誘発、血管新生、血管発達時の異常な内皮細胞-細胞または細胞-マトリックスの相互作用、炎症、Jun-N末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達、およびいくつかの他の細胞プロセスを含む、生理学的機能の制御または制御に関与する重要なシグナル伝達カスケードを調節する(Manning id)。プロテインキナーゼ阻害剤は、癌細胞において過活性プロテインキナーゼを阻害する有望な薬物として確立されている(Gross S et al.Targeting cancer with kinase inhibitors.J Clin Invest.2015;125(5):1780-1789;Vargas id)。
【0005】
キナーゼの部分的で非限定的なリストには、ABL、ACK、ARG、BLK、BMX、BRK、BTK、CSK、DDR1、DDR2、EGFR、EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN(アイソフォームa)、FYN(アイソフォームb)、HCK、KIT、LCK、LYNa、PDGFRα、PDGFRβ、SRC、SRM、YES、PIK3CA/PIK3R1(Manning id)が含まれる。異常なキナーゼ活性は、良性および悪性の増殖性状態、ならびに免疫系および神経系の不適切な活性化から生じる疾患を含む多くの病態において観察されている。
【0006】
本発明の新規の化合物は、1つ以上のプロテインキナーゼの活性を阻害し、キナーゼ関連疾患または状態を治療するのに有用であると期待される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一般にプロテインキナーゼに対して、特にプロテインキナーゼの阻害剤として活性な新規の重水素化および非重水素化環状化学化合物、ならびにそれらの塩に関する。さらに、治療有効量の新規の重水素化もしくは非重水素化環状化学化合物および/またはそれらの塩をそれを必要とするそのような哺乳動物に投与することによって、プロテインキナーゼ媒介疾患または状態を有する哺乳動物を治療する方法。
【0008】
一態様では、本発明は、式I:
【化1】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し;
式中、
、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
Yは、炭素または窒素であり;
は、
【化2】

であり、
式中、
Qは、Aを環の炭素原子に直接結合する単結合、またはAを環の炭素原子に結合するメチレンもしくはエチレン基であり;
Aは、
【化3】

であり、
式中、
およびYは、独立して炭素または窒素であり;
およびZは、独立して水素、-(CH-ORであり、式中、nは、0~4の整数であり、Rは、水素、低級アルキル、または低級アルケニルであるが、ただし、nが1であり、Rが水素であり、Rが-ピペリジニル基ではない場合を条件とし、かつnが2であり、Rが水素であり、Rが1-ピペラジニル基である場合を条件とし、Wは、重水素および-NRであり、式中、RおよびRは、独立して水素、低級アルキル、または低級アルケニルであり;
およびTは、独立して0~4の整数であるが、ただし、TまたはTが0であり、-(CH)Tまたは-(CH)Tが、単結合であり、TおよびTが同時に0ではない場合を条件とし;
およびRは、独立して水素;ハロゲン;アルコキシル;低級アルキル、または低級アルケニルであり;低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、アルコキシルは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、もしくはtert-ブトキシ;または-NRを含む置換ヘテロシクロであり、式中、RおよびRは、独立して水素、低級アルキル、または低級アルケニルであり;
式中、R、R、およびRの位置は、交換可能である。
【0009】
一態様では、本発明は、式II:
【化4】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し;
式中、W、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
Yは、炭素または窒素であり;
、R、およびRは、独立して水素:ハロゲン;アルコキシル;低級アルキル;または低級アルケニルであり;低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、アルコキシルは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、もしくはtert-ブトキシ、または置換ヘテロシクロであり、置換されていてもよいは、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して、水素、低級アルキル、または低級アルケニルであり;
Xは、独立して水素、-(CH-ORであり、式中、nは、0~4の整数であり、Rは、水素、低級アルキルもしくは低級アルケニル、または-NRである。
【0010】
一態様では、本発明は、式III:
【化5】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し;
式中、W、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
、R、およびRは、独立してH:ハロゲン;アルコキシル;低級アルキル;または低級アルケニルであり;低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、アルコキシルは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、もしくはtert-ブトキシ、または置換ヘテロシクロであり、置換されていてもよいは、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して水素、低級アルキル、または低級アルケニルである。
【0011】
一態様では、本発明は、式IV:
【化6】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し:
式中、Wは、水素または重水素である。
【0012】
一態様では、本発明は、式V:
【化7】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し:
式中、Wは、水素または重水素である。
【0013】
例示的な化合物としては、以下の重水素化および非重水素化環状化学化合物が挙げられる。
【0014】
一態様では、本発明は、化合物I:
【化8】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0015】
一態様では、本発明は、化合物II:
【化9】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0016】
一態様では、本発明は、化合物III:
【化10】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0017】
一態様では、本発明は、化合物IV:
【化11】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0018】
一態様では、本発明は、化合物V:
【化12】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0019】
一態様では、本発明は、化合物VI:
【化13】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0020】
一態様では、本発明は、化合物VII:
【化14】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0021】
一態様では、本発明は、化合物VIII:
【化15】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0022】
一態様では、本発明は、化合物IX:
【化16】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0023】
一態様では、本発明は、化合物X:
【化17】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0024】
一態様では、本発明は、化合物XI:
【化18】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0025】
一態様では、本発明は、化合物XII:
【化19】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0026】
一態様では、本発明は、化合物XIII:
【化20】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0027】
一態様では、本発明は、化合物XIV:
【化21】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0028】
一態様では、本発明は、動物またはヒトの対象におけるプロテインキナーゼ媒介疾患または状態を治療する方法であって、式I、II、III、IV、および/またはVから選択される化合物のうちの1つ以上、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)のうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIの有効量を対象に投与することを伴う、方法を提供する。
【0029】
プロテインキナーゼ媒介疾患または状態は、自己免疫疾患または癌である。 好ましくは、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、移植拒絶反応、多発性硬化症(MS)、全身性硬化症(SSc)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、慢性関節リウマチ(RA)、および乾癬のうちの少なくとも1つであり得る。好ましくは、癌は、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫のうちの少なくとも1つである。
【0030】
一態様では、本発明は、プロテインキナーゼ媒介疾患または状態に罹患している対象を治療する方法であって、少なくとも1つの追加の治療薬を式I、II、III、IV、および/またはVから選択される化合物のうちの1つ以上、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIと併用して、プロテインキナーゼ媒介疾患または状態に罹患している対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0031】
「治療する」または「療法」および同様の用語は、疾患または状態のうちの1つ以上の症状、すなわち適応症を予防、軽減、または改善する、および/または治療されている対象の生存を延長するのに有効な量で化合物を投与することを指す。「プロテインキナーゼ媒介疾患または状態」という用語は、プロテインキナーゼの生物学的機能が疾患もしくは状態の発達、経過、および/または症状に影響を与える疾患もしくは状態を指す。プロテインキナーゼ媒介疾患または状態は、その疾患または状態に対して、プロテインキナーゼ活性の調節がプラスの効果を提供する、すなわち本明細書に記載の化合物を含むプロテインキナーゼ阻害剤での治療が、疾患もしくは状態を有するまたはその危険性がある対象に対する治療上の利益をもたらす疾患または状態を含む。
【0032】
一態様では、本発明は、遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態で、式I、II、III、IV、および/またはVから選択される化合物のうちの1つ以上、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIの治療有効量、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、および/または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明の化合物に関して、化合物または化合物の群には、そうでないことが明確に示されていない限り、そのような化合物の薬学的に許容される塩、プロドラッグ、ならびに全ての立体異性体およびそれらの混合物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ヒト肝臓ミクロソームインキュベーションにおける化合物の代謝安定性を示す図である。代謝安定性は、ヒト肝臓ミクロソーム調製物とのインキュベーションにおける化合物I~XIIIについて決定された。1μM濃度の個々の化合物I~XIIIのインキュベーションを、37℃で10mM MgCl、1mM NADPH、および2mM UDPGAを含有する0.1Mリン酸緩衝液中のヒト肝臓ミクロソーム(0.5mg/mL)を用いて最大1時間行った。特定の時点での濃度は、LC-MS/MSにより決定した。
【0035】
図2】(上パネル)一緒に投与され、それぞれ2.5mg/kgを投薬した化合物IVおよびダサチニブの単回強制経口投薬後のSprague-Dawleyラットにおける化合物IVおよびダサチニブの血漿濃度対時間プロファイルを示す図であり;(下パネル)一緒に投与され、それぞれ一緒に2.5mg/kgを投薬した化合物IIIおよびVの単回強制経口投薬後のSprague-Dawleyラットにおける化合物IIIおよびVの血漿濃度対時間プロファイルを示す図である。
【0036】
図3】(上パネル)一緒に投与され、それぞれ5mg/kgを投薬した化合物XおよびIIIの単回強制経口投薬後のSprague-Dawleyラットにおける化合物XおよびIIIの血漿濃度対時間プロファイルを示す図であり;(下パネル)一緒に投与され、それぞれ一緒に5mg/kgを投薬した化合物XIおよびダサチニブの単回強制経口投薬後のSprague-Dawleyラットにおける化合物XIおよびダサチニブの血漿濃度対時間プロファイルを示す図である。
【0037】
図4】化合物Xおよびダサチニブを単回経口投薬として一緒に投与し、それぞれ5mg/kg(2-in-1投薬、N=3)で投薬したマウスにおける化合物Xおよびダサチニブについての肺組織濃度と血漿濃度対時間との平均比を示す図である。
【0038】
図5】化合物XIおよびダサチニブを単回経口投薬として一緒に投与し、それぞれ5mg/kg(2-in-1投薬、N=3)で投薬したマウスにおける化合物XIおよびダサチニブについての肺組織濃度と血漿濃度対時間との平均比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
本明細書で使用されるとき、他に明確に示されない限り、以下の定義が適用される。
「化学構造」または「化学下部構造」とは、個々に識別可能な分子、分子の一部、例えば置換部分、置換されていてもよいコアなどを構成する任意の定義可能な原子または原子団を意味する。通常、配位子の化学下部構造は、配位子の標的分子への結合において役割を果たすことができ、または配位子の三次元形状、静電荷、および/もしくは立体配座特性に影響を与えることができる。
【0040】
「プロドラッグ」という用語は、インビボ投与時に、1つ以上の工程もしくはプロセスによって代謝されるか、またはそうでなければ生物学的、薬学的、もしくは治療的に活性な形態の化合物に変換される化合物である。プロドラッグを生成するために、薬学的に活性な化合物は、活性な化合物が代謝または加水分解プロセスによって再生されるように修飾される。
【0041】
「結合する」という用語は、標的と潜在的結合化合物との間の相互作用に関して、潜在的結合化合物が一般にタンパク質との会合と比較して統計的に有意な程度で標的と会合することを示す(すなわち、非特異的結合)。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「調節すること」または「調節する」という用語は、生物学的活性、特にプロテインキナーゼなどの特定の生体分子に関連する生物学的活性を変える効果を指す。例えば、特定の生体分子のアゴニストまたはアンタゴニストは、その活性を増加させる(例えば、アゴニスト、活性化剤)、または減少させる(例えば、アンタゴニスト、阻害剤)ことによって、その生体分子、例えば酵素の活性を調節する。この種の活性は、典型的には、活性化剤または阻害剤について、それぞれ最大半値有効濃度(EC50)または最大半値阻害濃度(IC50)で示される。 さらに、阻害活性は、阻害パーセントおよび/またはKiで表すことができる。
【0043】
本発明の化合物に関連して本明細書で使用されるとき、「合成する」および同様の用語は、1つ以上の前駆体材料からの化学合成を意味する。さらに、「アッセイする」とは、実験条件の作成および実験条件の特定の結果に関するデータの収集を意味する。例えば、酵素は、検出可能な基質に作用するそれらの能力に基づいてアッセイすることができる。化合物または配位子は、特定の1つ以上の標的分子に結合するその能力に基づいてアッセイすることができる。
【0044】
「D」、「d」、および「H」は、重水素原子、水素の2倍の質量を有する水素の安定同位体(原子量2.0144)を指す。水素は、同位体の水素(H)、重水素(HまたはD)、およびトリチウム(HまたはT)の混合物として自然に発生する。重水素の天然存在量は、約0.015%である。当業者は、水素原子を有する全ての化学化合物が実際にはHおよびD同位体の混合物として存在し、約0.015%が重水素同位体であることを認識する。その天然存在比の0.015%を超えるように濃縮されている重水素のレベルを有する化合物は、それらの濃縮されていない対応物よりも不自然であると考えられ、その結果として新規であると考えられるべきである。本明細書における構造式および化合物中のDは、0.015%を超える量でのDの組み込みを指す。
【0045】
「低級アルキル」という用語は、当技術分野において認識されており、直鎖アルキル基および分岐鎖アルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その主鎖に約6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖の場合はC-C、分岐鎖の場合はC-C)。
【0046】
「低級アルケニル」という用語は、本明細書でC-Cアルケニルと呼ばれる、2~6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖基などの、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和直鎖または分岐炭化水素を指す。
【0047】
「シクロアルキル」という用語は、アルキル、アルケニル、アルコキシル、置換されてもよいアミノ、ハロゲン、シアノ(-CN)、またはニトロ(-NO)で置換されてもよい、C-Cを含む脂肪族基の3~7員単環式環を指す。
【0048】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、当技術分野において認識されており、それに結合した酸素ラジカルを有する、上で定義したようなアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
【0049】
「ヘテロシクロ」、「ヘテロ環式」、または「ヘテロ環」という用語は、少なくとも1つの炭素原子含有環中に少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、酸素(「O」)、硫黄(「S」)、または窒素(「N」))を有する5~10個の原子を有する非芳香族(すなわち、「ヘテロシクロアルキル」)および芳香族(すなわち、「ヘテロアリール」)環式基を含む完全飽和または不飽和を指す。複素環基の各環は、1、2、3、または4個のヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子の窒素および硫黄は、任意に酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されてもよい。さらに、ヘテロシクロは、任意に、アミノ(-NR)で置換されていてもよく、式中、RおよびRは、独立して水素および/または低級アルキル、ヒドロキシル(-OH)、アルコキシル、低級アルキルもしくは低級アルケニルであり、低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHまたはアルコキシル基で任意に、置換されていてもよい。
【0050】
「ハロゲン」は、クロロ(「Cl」)、フルオロ(「F」)、ブロモ(「Br」)、またはヨード(「I」)を指す。
【0051】
本明細書で提供される化合物は、キラル中心を含有し得ることを理解すべきである。そのようなキラル中心は、(R)もしくは(S)配置のいずれかであり得るか、またはそれらの混合物であり得る。したがって、本明細書で提供される化合物は、エナンチオマー的に純粋であるか、またはラセミ混合物(約50:50のエナンチオマー比)を含むそれらの立体異性体もしくはジアステレオマー混合物であり得る。
【0052】
「薬学的に許容される」という用語は、示される材料が、治療される疾患または状態およびそれぞれの投与経路を考慮して、合理的に慎重な開業医に患者への材料の投与を回避させるような特性を有さないことを意味する。例えば、そのような材料は、例えば注射用に本質的に無菌であることが一般に必要とされる。
【0053】
「薬学的に許容される塩」という用語は、それらが投与される量および濃度において非毒性である塩を指す。そのような塩の調製は、化合物がその生理学的効果を発揮するのを妨げることなく化合物の物理的特性を変えることによって薬理学的使用を容易にすることができる。
【0054】
「薬学的に許容される組成物」という用語は、薬学的に活性な化合物および1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、ならびに/または希釈剤を指す。
【0055】
「治療的に有効」または「有効量」という用語は、単独で、もしくはさらなる用量と一緒に、および/または他の治療薬と組み合わせて、所望の応答を生じる調製物の量である。これは、疾患の進行を停止させること、または疾患もしくは状態の発症を遅らせること、または発症を防ぐことを伴い得るが、それはまた、疾患もしくは状態を一時的に遅くすることだけを意味し得る。
【0056】
「プロテインキナーゼ媒介疾患または状態」という用語は、プロテインキナーゼの生物学的機能が疾患もしくは状態の発達、経過、および/または症状に影響を与える疾患もしくは状態を指す。
【0057】
「変異体」という用語は、野生型タンパク質のアミノ酸配列と比較した場合のタンパク質中の単一または複数のアミノ酸の変化を指す。
【0058】
本明細書の説明および特許請求の範囲を通して、単語「comprise(含む)」ならびに「comprising(含むこと)」および「comprises(含む)」のような単語の変形は、「含むがこれらに限定されない」ことを意味し、例えば他の添加剤、成分、整数、または工程を除外することを意図しない。
【0059】
本発明の化合物
一態様では、本発明は、式I:
【化22】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し;
式中、
、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
Yは、炭素または窒素であり;
は、
【化23】

であり、
式中、
Qは、Aを環の炭素原子に直接結合する単結合、またはAを環の炭素原子に結合するメチレンもしくはエチレン基であり;
Aは、
【化24】

であり、
式中、
およびYは、独立して炭素または窒素であり;ZおよびZは、独立して水素、-(CH-ORであり、式中、nは、0~4の整数であり、Rは、水素、低級アルキル、または低級アルケニルであるが、ただし、nが1であり、Rが水素であり、Rが-ピペリジニル基ではない場合を条件とし、かつnが2であり、Rが水素であり、Rが1-ピペラジニル基である場合を条件とし、Wは、重水素および-NRであり、式中、RおよびRは、独立して水素、低級アルキル、または低級アルケニルであり;TおよびTは、独立して0~4の整数であるが、ただし、TまたはTが0であり、-(CH)Tまたは-(CH)Tが、単結合であり、TおよびTが同時に0ではない場合を条件とし;
およびRは、独立して水素;ハロゲン;アルコキシル;低級アルキル、または低級アルケニルであり、低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、式中、アルコキシルは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、またはtert-ブトキシであり、または置換ヘテロシクロが、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して水素、低級アルキル、または低級アルケニルであり;
式中、R、R、およびRの位置は、交換可能である。
【0060】
好ましくはWは、重水素または水素、より好ましくは水素であり、WおよびWは、水素である。 Yは、好ましくは窒素である。 Rは、好ましくは低級アルキル、より好ましくはメチルである。 Rは、好ましくは低級アルキルまたは水素、より好ましくは水素である。 Rは、好ましくは置換または非置換の飽和5または6員窒素含有ヘテロシクロ環である。 置換または非置換の飽和5員窒素含有ヘテロシクロ環は、置換または非置換のピロリジン-1-イル、好ましくは3-ヒドロキシ-または3-アミノ-ピロリジン-1-イル、より好ましくは3-ヒドロキシピロリジン-1-イルであり得る。
【0061】
一態様では、本発明は、式II:
【化25】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し:
式中、W、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
Yは、炭素または窒素であり;
、R、およびRは、独立して水素:ハロゲン;アルコキシル;低級アルキル;または低級アルケニルであり;低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、アルコキシルは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、もしくはtert-ブトキシ、または置換ヘテロシクロであり、置換されていてもよいは、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して、水素、低級アルキル、または低級アルケニルであり;
Xは、独立して水素、-(CH-ORであり、式中、nは、0~4の整数であり、Rは、水素、低級アルキルもしくは低級アルケニル、または-NRである。
【0062】
好ましくはWは、重水素または水素、より好ましくは水素であり、WおよびWは、水素である。 Yは、好ましくは窒素である。 Rは、好ましくは低級アルキル、より好ましくはメチルである。 Rは、好ましくは低級アルキルまたは水素、より好ましくは水素である。 Rは、好ましくは低級アルキルまたは水素、より好ましくは水素である。 Xは、好ましくは水素、ヒドロキシル、またはアミン、より好ましくはヒドロキシルである。
【0063】
一態様では、本発明は、式III:
【化26】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し:
式中、W、W、およびWは、独立して水素または重水素であり;
、R、およびRは、独立してH:ハロゲン;アルコキシル;低級アルキル;または低級アルケニルであり;低級アルキルまたは低級アルケニルは、-OHおよびアルコキシルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、アルコキシルは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、もしくはtert-ブトキシ、または置換ヘテロシクロであり、置換されていてもよいは、-NRを含み、式中、RおよびRは、独立して水素、低級アルキル、または低級アルケニルである。
【0064】
好ましくはWは、重水素または水素、より好ましくは水素であり、WおよびWは、水素である。 Yは、好ましくは窒素である。 Rは、好ましくは低級アルキル、より好ましくはメチルである。Rは、好ましくは低級アルキルまたは水素、より好ましくは水素である。Rは、好ましくは低級アルキルまたは水素、より好ましくは水素である。
【0065】
一態様では、本発明は、式IV:
【化27】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し:
式中、Wは、水素または重水素である。
【0066】
一態様では、本発明は、式V:
【化28】

を有する化合物、その全ての塩、プロドラッグ、エナンチオマー、およびエナンチオマー混合物を提供し:
式中、Wは、水素または重水素である。
【0067】
例示的な化合物
一態様では、本発明は、化合物I:
【化29】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0068】
一態様では、本発明は、化合物II:
【化30】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0069】
一態様では、本発明は、化合物III:
【化31】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0070】
一態様では、本発明は、化合物IV:
【化32】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0071】
一態様では、本発明は、化合物V:
【化33】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0072】
一態様では、本発明は、化合物VI:
【化34】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0073】
一態様では、本発明は、化合物VII:
【化35】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0074】
一態様では、本発明は、化合物VIII:
【化36】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0075】
一態様では、本発明は、化合物IX:
【化37】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0076】
一態様では、本発明は、化合物X:
【化38】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0077】
一態様では、本発明は、化合物XI:
【化39】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0078】
一態様では、本発明は、化合物XII:
【化40】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0079】
一態様では、本発明は、化合物XIII:
【化41】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
【0080】
一態様では、本発明は、化合物XIV:
【化42】

の構造を有する化合物、その全ての塩、およびプロドラッグを提供する。
プロテインキナーゼ標的および本発明の適応症
【0081】
プロテインキナーゼは、多様な生物学的経路における生化学的シグナルの伝播において重要な役割を果たす。そのように、キナーゼは、小分子治療的介入のための重要な制御点を表す。500を超えるキナーゼが記載されており、特定のキナーゼが広範囲の疾患または状態に関係しているとされている。一態様では、本発明は、限定はしないが、自己免疫疾患、過剰増殖性疾患、癌、心血管疾患、炎症性疾患、神経疾患、およびその他の疾患などの動物またはヒトの対象におけるプロテインキナーゼ媒介疾患または状態(すなわち適応症)を治療する方法を提供する。
【0082】
好ましくは、プロテインキナーゼ媒介疾患または状態は、自己免疫疾患または癌である。より好ましくは、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、移植拒絶反応、多発性硬化症(MS)、全身性硬化症(SSc)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、慢性関節リウマチ(RA)、および乾癬のうちの少なくとも1つであり;癌は、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫のうちの少なくとも1つである。
【0083】
別の態様では、本発明は、式I、II、III、IV、および/またはVを有する1つ以上の化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)のうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIのうちの1つ以上の有効投薬量を投与することによって、ABL、ACK、ARG、BLK、BMX、BRK、BTK、CSK、DDR1、DDR2、EGFR、EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN、HCK、KIT、LCK、LYN、PDGFRα、PDGFRβ、SRC、SRM、YES、PIK3CA/PIK3R1からなる群から選択されるプロテインキナーゼの活性を調節するための方法を提供する。本文書では、キナーゼ命名法で使用される文字の大文字と小文字は、区別なく使用されている。
【0084】
別の態様では、本発明は、動物対象におけるプロテインキナーゼ媒介疾患または状態を治療するための方法を提供し、その方法は、式I、II、III、IV、および/またはVを有する1つ以上の化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIV(化合物I~XIV)のうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、およびXIのうちの1つ以上を含む有効量の組成物を対象に投与することを伴う。
【0085】
一態様では、本発明は、式I、II、III、IV、および/またはVを有する1つ以上の化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)のうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIのうちの1つ以上の有効量を投与することによって、ABL、ACK、ARG、BLK、BMX、BRK、BTK、CSK、DDR1、DDR2、EGFR、EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN(アイソフォームa)、FYN(アイソフォームb)、HCK、KIT、LCK、LYNa、PDGFRα、PDGFRβ、SRC、SRM、YES、PIK3CA/PIK3R1からなる群から選択されるプロテインキナーゼによって媒介される疾患または状態を治療するための方法を提供する。
【0086】
キナーゼ活性についてのいくつかの異なるアッセイが、活性モジュレーターを決定するためのおよび/または特定のキナーゼもしくはキナーゼ群に対するモジュレーターの特異性を決定するための試験に利用することができる。以下の実施例に記載されたアッセイに加えて、当業者は、特定の用途のために利用され得るかまたは改変され得る他のアッセイを知って理解するであろう。
【0087】
ABL、ABL(E255K)、ACK、ARG、BLK、BMX、BRK、BTK、CSK、DDR1、DDR2、EGFR EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN、HCK、KIT、LCK、LYN、PDGFRα、PDGFRβ、SRC、SRM、YES、およびPIK3CA/PIK3R1を含む一連の選択されたプロテインキナーゼ(実施例15参照)の阻害を測定するために一般に使用されるインビトロスクリーニングにおいて、化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、およびXIIIは、とりわけBTK、BMX、ABL、ABL(E255K)、SRC、ACK、ARG、BLK、DDR2、EPHA、FGR、FMS、FRK、FYN、HCK、LCK、LYN、PDGFRα、PDGFRβ、YES、およびPIK3CA/PIK3R1を阻害する強力な活性を示すことが見出された。
【0088】
一連のプロテインキナーゼ(実施例15参照)の上記のインビトロスクリーニングにおいて、化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、およびXIIIは、BTK、BMX、ABL、ABL(E255K)、SRC、ACK、ARG、BLK、DDR2、EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN(アイソフォームa)、HCK、LCK、LYNa、PDGFRα、PDGFRβ、YES、およびPIK3CA/PIK3R1の10nMで50%を超える阻害を示した。
【0089】
生物学的活性のさらなる試験として、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株SU-DHL-4および慢性骨髄性白血病細胞株K-562を使用して本発明の化合物を細胞成長の阻害についてアッセイした(実施例16参照)。この細胞ベースのアッセイでは、化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIVのIC50値は、全て20nM未満であった。
【0090】
化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIVに対するプロテインキナーゼ標的としては、以下:ABL、ACK、ARG、BLK、BMX、BRK、BTK、CSK、DDR1、DDR2、EGFR、EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN、HCK、KIT、LCK、LYN、PDGFRα、PDGFRβ、SRC、SRM、YES、およびPIK3CA/PIK3R1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
Tecファミリーのキナーゼは、Srcファミリーキナーゼ(SFK)後2番目に大きいクラスの細胞質プロテインチロシンキナーゼを形成し、5つの哺乳動物メンバー:Btk、Bmx(X染色体上の骨髄キナーゼ、別名Etk)、Itk(IL-2誘導性T細胞キナーゼ)、Rlk(休止リンパ球キナーゼ、別名Txk)、およびTecからなる(Hartkamp et al.Bruton’s tyrosine kinase in chronic inflammation:from pathophysiology to therapy.Int J Interferon Cytokine Mediat Res.2015;7:27-34)。Tecファミリーのキナーゼの大部分は、主に造血系において発現されるが、TecおよびBmxの両方はまた、それぞれ肝臓および内皮細胞のような間質組織においても発現される。細胞表面受容体の誘発によるTecファミリーキナーゼの活性化は、活性化ホスファチジルイノシトール-3キナーゼによって形成される脂質ホスファチジルイノシトール(3,4,5)P3とPHドメインとの相互作用によって媒介される、原形質膜へのタンパク質の再局在化を必要とする。その後のSFKによるリン酸化およびチロシン223の自己リン酸化は、Tecファミリーのキナーゼの完全な活性化をもたらす。
【0092】
BTKは、男性ではX連鎖無ガンマグロブリン血症、マウスではX連鎖免疫不全症を引き起こすBTK変異を有するTecファミリーのキナーゼの最もよく知られたメンバーである。BTKは、B細胞の発達、活性化、シグナル伝達、および生存の重要な調節因子である(Hartkamp id)。さらに、BTKは、他の多くの造血細胞シグナル伝達経路、例えばマクロファージにおけるトール様受容体(TLR)およびサイトカイン受容体媒介TNF-α産生、肥満細胞におけるIgE受容体(FcepsilonRl)シグナル伝達、B系統リンパ系細胞におけるFas/APO-1アポトーシスシグナル伝達の阻害、およびコラーゲン刺激血小板凝集において重要な役割を果たす。BTKおよび他のTecファミリーキナーゼのメンバーは、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症(MS)、1型糖尿病(T1D)、全身性硬化症(SSc)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、および慢性関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患において重要な役割を果たすことができる。BTK阻害剤であるイブルチニブは、B細胞性悪性腫瘍、特に慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、およびワルデンストロームのマクログロブリン血症(WM)の患者において高い臨床活性を実証した。しかしながら、イブルチニブに対する耐性は、主にBTK変異酵素C481Sの開発により、イブルチニブ治療を受けている患者のサブグループにおいて実証されている(Woyach JA et al.Resistance mechanisms for the Bruton’s tyrosine kinase inhibitor ibrutinib.N Engl J Med.2014;370(24):2286-94)。
【0093】
チロシンキナーゼBMXは、共有のTAK1-TAB複合体を調節することによって、TNFおよび他のメディエーターによって誘発される炎症を調節するようである(Gottar-Guillier M et al.The tyrosine kinase BMX is an essential mediator of inflammatory arthritis in a kinase-independent manner.J Immunology.2011;186(10):6014)。BMXキナーゼは、膠芽腫、前立腺癌、乳癌、および肺癌の病因において役割を果たし得る。BMXはまた、放射線と組み合わせた抗血管療法として、または化学療法剤に対する増感剤としての可能性を示している(Jarboe JS et al.Mini-review:bmx kinase inhibitors for cancer therapy.Recent Pat Anticancer Drug Discov.2013;8(3):228-38)。
【0094】
Srcファミリーキナーゼ(SFK)は、Src、Fyn、Yes、Blk、Yrk、Frk(別名Rak)、Fgr、Hck、Lck、Srm、およびLynを含む11個の非受容体チロシンキナーゼからなる(Sen B,Johnson FM.Regulation of SRC family kinases in human cancers.J Signal Transduct.2011:ID865819)。Srcは、ケラチノサイトに見られるのに対して、Blk、Fgr、Hck、Lck、およびLynは、主に造血細胞に見られる。Frkは、主に膀胱、乳房、脳、結腸、およびリンパ系細胞に発生する。Srcファミリーキナーゼは、多くの細胞型において増殖および遊走反応に関与している。
【0095】
Srcは、細胞シグナル伝達において多数の役割を果たす非受容体プロテインチロシンキナーゼである。Srcは、細胞接着、成長、運動、および分化を含む多くの機能の制御に関与している。Srcは、多くの細胞型において広く発現されており、細胞内に異なる位置を有することができる。多数のヒト悪性腫瘍がSRCの発現および活性の増加を示しており、これはSRCが発癌に密接に関与している可能性があることを示唆している。SRC阻害剤ボスチニブは、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)の治療に使用されており、サラカチニブは、アルツハイマー病および統合失調症の治療の可能性が検討されている。
【0096】
ABLは、細胞分化、細胞分裂、細胞接着、およびストレス応答の過程に関係している細胞質および核プロテインチロシンキナーゼである(Hantschel O.Structure,regulation,signaling,and targeting of abl kinases in cancer.Genes Cancer.2012;3:436-46)。ABL変異は、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および急性骨髄性白血病(AML)などの癌に関連している。イマチニブ、ダサチニブ、およびニロチニブなどのいくつかのABL阻害剤が、CML、ALL、およびAMLの治療に使用されてきた。BCR-ABLの強力な阻害剤であるダサチニブは、慢性期に新たに診断されたフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)慢性骨髄性白血病(CML)、イマチニブを含む以前の療法に対する抵抗性または不耐性を有する慢性、加速、または骨髄性もしくはリンパ性芽球期のPh+CML、および以前の療法に対する抵抗性または不耐性を有するフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)の治療に使用される。しかしながら、ダサチニブは、胸水および肺高血圧症などの重度の呼吸毒性と関連しており、これは肺組織におけるダサチニブ蓄積の結果であり得る(Quintas-Cardama A,et al.Pleural effusion in patients with chronic myelogenous leukemia treated with dasatinib after imatinib failure.J Clin Oncol.2007;25(25):3908-14;Guignabert C,et al.Dasatinib induces lung vascular toxicity and predisposes to pulmonary hypertension.J Clin Invest.2016;126(9):3207-18)。
【0097】
LCKは、染色体Ip34.3によってコードされる57.9kDaの膜関連非受容体チロシンキナーゼである。タンパク質構造は、SH3およびSH2ドメインを含む。LCK阻害剤は、急性リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ腫、リンパ球減少症、腎臓癌、結腸癌、重症複合型免疫不全、多発性硬化症、炎症性腸、およびI型糖尿病の治療に有用であり得る。
【0098】
Frkは、染色体6q21-q22.3によってコードされる58.5kDaのチロシンキナーゼである。構造は、SH2、SH3、およびチロシンキナーゼドメインを含む。Frkの阻害は、I型糖尿病におけるβ細胞破壊を抑制する手段を提供する可能性がある。Frk阻害剤は、急性骨髄性白血病およびI型糖尿病の治療に有用であり得る。
【0099】
Fynは、染色体6q21によってコードされる60.6kDaの非受容体チロシンキナーゼである。Fynは、プロテインキナーゼCおよびカルシウム調節のレベルで、FynおよびLyn経路の相乗的合流における肥満細胞脱顆粒の調節に関与している。Fyn阻害剤は、アルツハイマー病、統合失調症の治療、ならびに例えば黒色腫および扁平上皮癌における転移の予防に有用であり得る。
【0100】
HCKは、染色体20ql 1.21によってコードされる59.5kDaのチロシンキナーゼである。タンパク質構造は、SH3、SH2、および二部キナーゼドメインを含む。HCK阻害剤は、慢性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病の治療に有用であり得る。
【0101】
Kitは、染色体4ql2によってコードされる109.9kDaの膜貫通チロシンキナーゼである。Kitは、メラニン形成細胞、肥満細胞、生殖細胞、および造血細胞の発生に重要な役割を果たしている。Kitの異常な発現および/または活性化は、種々の病理学的状態に関係している。Kit阻害剤は、肥満細胞腫瘍、小細胞肺癌、精巣癌、消化管間質腫瘍(GIST)、膠芽腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、女性生殖管の癌腫、神経外胚葉性肉腫、結腸直腸癌、上皮内癌などの悪性腫瘍、神経線維腫症、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肥満細胞症、黒色腫、およびイヌ肥満細胞腫に関連するシュワン細胞新生物、ならびに喘息、慢性関節リウマチ、アレルギー性鼻炎、多発性硬化症、炎症性腸症候群、移植拒絶反応、および好酸球増加症を含む炎症性疾患を治療するのに有用であり得る。
【0102】
LCKは、染色体Ip34.3によってコードされる57.9kDaの膜関連非受容体チロシンキナーゼである。タンパク質構造は、SH3およびSH2ドメインを含む。LCK阻害剤は、急性リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ腫、リンパ球減少症、腎臓癌、結腸癌、重症複合型免疫不全、多発性硬化症、炎症性腸、およびI型糖尿病の治療に有用であり得る。
【0103】
血小板由来成長因子受容体(PDGF-R)は、血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーのメンバーのための細胞表面チロシンキナーゼ受容体である。PDGFサブユニット-Aおよび-Bは、細胞増殖、細胞分化、細胞成長および発生、ならびに癌を含む多くの疾患を調節する重要な因子である。PDGF-Rには、アルファおよびベータの2つの形態があり、それぞれ異なる遺伝子によってコードされている。PDGFRαは、染色体4ql2によってコードされる122.7kDaの膜貫通チロシンキナーゼである(記号:PDGFRA)。PDGFRβは、染色体5q31-q32によってコードされる124.0kDaの膜貫通チロシンキナーゼである(記号:PDGFRB)。PDGFR阻害剤は、特発性好酸球増加症候群、慢性好酸球性白血病、神経膠腫、胃腸間質腫瘍(GIST)、若年性骨髄単球性白血病、転移性髄芽腫、アテローム発生、および再狭窄などの様々な疾患の治療に有用であり得る。
【0104】
Yesは、染色体18pl 1.31-pl 1.21によってコードされる60.8kDaのチロシンキナーゼである(記号:YESl)。Yesの構造は、SH3およびSH2ドメインとそれに続くTKドメインとを含む。YES癌遺伝子は、Yamaguchi肉腫ウイルス遺伝子と相同性があり、Yesのアミノ酸配列は、RoussarcomaウイルスのSRC遺伝子産物のそれと高度の相同性を示す。Yesキナーゼは、ニューロン、精子、血小板、および上皮細胞を含む複数の哺乳動物細胞型において高度に発現されている。標的キナーゼYesは、食道扁平上皮癌を含む様々な癌において増幅され過剰発現される。Yes阻害剤は、食道扁平上皮癌を含む癌の治療に有用であり得る。
【0105】
一態様では、式I、II、III、IV、およびVの化合物、好ましくはそれらの塩、プロドラッグ、および/または異性体を含む、化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIV(化合物I~XIV)は、特に疾患または状態が自己免疫疾患または癌である場合、キナーゼ媒介疾患または状態の治療のための医薬の調製に使用することができる。
【0106】
投与される式I、II、III、IV、およびVの化合物、それらの塩、プロドラッグ、および/または異性体を含む、化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIV(化合物I~XIV)の量は、化合物のIC50;化合物の生物学的半減期;対象の年齢、大きさ、体重;および対象に関連した状態などの要因を考慮に入れた標準的な手順によって決定することができる。一般に、臨床試行における日常的な実験は、各治療薬および各投与プロトコルに対する最適な治療効果の特定の範囲を決定し、特定の患者への投与は、患者の状態および初回投与に対する反応性に応じて有効かつ安全な範囲内に調節される。しかしながら、最終的な投与プロトコルは、患者の年齢、性別、状態、および体格などの要因を考慮して、担当医の判断に従って調節される。一般に、活性化合物の用量は、1日当たり約0.01mg/kg~1日当たり約1000mg/kgの範囲であり得る。本明細書に記載の化合物は、単回または複数回用量で投与することができる。
【0107】
前臨床薬物動態
インビトロ代謝安定性:ヒト肝臓ミクロソームにおけるインビトロ代謝安定性研究を化合物I~XIIIおよびダサチニブについて実施した(実験条件については実施例17参照)。この研究からの結果を図1および表1に示す。
【0108】
化合物I、IV、V、VI、VII、VIII、X、XI、XII、およびXIIIは、ダサチニブと比較して有意に高い安定性を示した。化合物I、IV、V、VI、VII、VIII、X、XI、XII、およびXIIIについてのインビトロt1/2は、ダサチニブについての16分と比較して全て>59分であった。化合物I、IV、V、VI、VII、VIII、X、XI、XII、およびXIIIに関する代謝安定性のこの有意な増加は、予想外であった。より長いインビトロ代謝安定性半減期(t1/2)は、ダサチンb(dasatinb)と比較してこれらの化合物についてのより長いインビボヒト血漿t1/2の指標である。したがって、これらの化合物は、ダサチニブと比較してより好ましい薬物動態プロファイル、特により長いt1/2、より長い作用期間、より少ない初回通過効果、およびより高い経口バイオアベイラビリティを有すると予想される。化合物I、IV、V、VI、VII、VIII、X、XI、XII、およびXIIIの固有クリアランスは、ダスタチニブの88μL/分/mgと比較して24μL/分/mg未満であった。
【0109】
驚くべきことに、化合物III、ダサチニブの重水素標識類似体は、ダサチニブと同様の代謝安定性を有することが見出された(図1、表1)。2-クロロ-6-メチルフェニル環の4位でのヒドロキシル化が酸化的代謝の経路であるヒト肝ミクロソームにおけるダサチニブの報告されたインビトロ代謝を考えると、これは予想外の発見であった(Christopher LJ et al.Biotransformation of [14C]dasatinib:in vitro studies in rat,monkey,and human and disposition after administration to rats and monkey.Drug Metab.Dispos.2007;36(7):1341-1356)。
【0110】
化合物I、IV、V、VI、VII、VIII、X、XI、XII、およびXIIIは、ダサチニブと比較してヒト肝臓ミクロソームにおいて予想外に有意に増加した代謝安定性を示し、重水素置換は、ダサチニブと比較してさらなる予想外の結果をもたらした。
【表1】

*化合物I~XIII(1μM)を、10mM MgCl、1mM NADPH、および2mM UDPGAを含有する0.1Mリン酸緩衝液中のヒト肝臓ミクロソーム(0.5mg/mL)と37℃で60分まで様々な時点でインキュベートした。様々な時点での残りの試験化合物の濃度をLC-MS/MSによって決定した。
【0111】
インビボ薬物動態学:化合物III、IV、V、X、XI、およびダサチニブのインビボ薬物動態学的プロファイルを、2-in-1投薬の技術を使用して経口および静脈内投与後にSprague Dawleyラットにおいて調査した(実験条件については実施例18参照)。化合物IVをダサチニブと共に投薬し、化合物Vを化合物IIIと共に投薬し、化合物Xをダサチニブと共に投薬し、化合物XIを化合物IIIと共に投薬した。結果を図2および3ならびに表2および3に示す。
【表2】


Cmax-経口投薬後の血漿中最大濃度;Tmax-経口投薬後の最大血漿濃度までの時間;AUClast-最後の検出可能な濃度までの血漿濃度対時間曲線下の面積;AUCinf-時間無限大に外挿した血漿濃度対時間曲線下の面積;t1/2-血漿濃度半減期;CL-血漿クリアランス;V-配給量;F(%)-正規化されたAUCinf(経口)対AUCinf(静脈内)用量によって決定される経口バイオアベイラビリティパーセント。
【表3】

Cmax-経口投薬後の血漿中最大濃度;Tmax-経口投薬後の最大血漿濃度までの時間;AUClast-最後の検出可能な濃度までの血漿濃度対時間曲線下の面積;AUCinf-時間無限大に外挿した血漿濃度対時間曲線下の面積;t1/2-血漿濃度半減期;CL-血漿クリアランス;V-配給量;F(%)-正規化されたAUCinf(経口)対AUCinf(静脈内)用量によって決定される経口バイオアベイラビリティパーセント。
【0112】
経口投与後、化合物IV、V、X、およびXIは、Cmaxが15±5および7±7ng/mLであるダサチニブ、ならびにCmaxが9±6および11±11ng/mLであるダサチニブの重水素類似体、化合物IIIと比較して、それぞれ驚くほど有意に高い82±13、35±19、93±101、および102±86ng/mLのCmax値を示した。化合物IV、V、X、およびXIの経口バイオアベイラビリティは、3.9±1および9.8±3.6パーセントバイオアベイラビリティ(F)のダサチニブの経口バイオアベイラビリティ、経口バイオアベイラビリティが6±0.9および7.2±4.2パーセントの化合物IIIと比較して、18.9±6.7、11.1±4.3、18.9±2、および24±33.1パーセントバイオアベイラビリティであった。この研究の結果は、化合物IV、V、X、およびXIが、ダサチニブおよび化合物IIIよりも驚くほどはるかに低い静脈内血漿クリアランスを有することを示している。このデータは、化合物IV、V、X、およびXIがダサチニブまたは化合物IIIのいずれよりも有意により安定であり、有意に低い固有クリアランス値を有することを示したインビトロ代謝安定性データと一致する。
【0113】
さらに、化合物IV、V、X、およびXIは、ダサチニブおよび化合物IIIよりも驚くほど有意に低い静脈内分布量の値を有することが見出され、これらの化合物がダサチニブおよび化合物IIIと比較して組織に広く分布していないことを示唆する。さらに、これは、これらの化合物が薬物誘発臓器毒性に関してダサチニブよりも低い可能性を有することを示唆している。
【0114】
これらの結果は、化合物IV、V、X、およびXIを生成するためのピリミジン-4-イル基への化学置換が、ダサチニブと比較してこれらの新規の化合物の薬物動態プロファイルに予想外かつ有意な変化をもたらすことを示している。
【0115】
インビボ組織分布:強制経口によって投薬された化合物X、XI、およびダサチニブについて、肺組織対血漿中の親化合物濃度の比を決定するためにマウスで研究を実施した(実験条件については実施例19参照)。結果を図4および5に示す。
【0116】
試験した全ての時点において、化合物XおよびXIは、ダサチニブと比較した場合、それらの血漿濃度と比較して肺組織中の親化合物濃度レベルの比が有意に低いことを示した(図4および5)。これらの結果は、化合物XおよびXIがダサチニブよりも肺組織中に分布が少ないことを示している。
【0117】
ダサチニブは、胸水および肺高血圧症などの深刻な呼吸器毒性と関連しており、これらは肺組織におけるダサチニブの蓄積に起因している(Quintas-Cardama A et al.Pleural effusion in patients with chronic myelogenous leukemia treated with dasatinib after imatinib failure.J Clin Oncol 2007;25(25):3908-14;Wang X et al.Differential effects of dosing regimen on the safety and efficacy of dasatinib:retrospective exposure-response analysis of a Phase III study.Clin Pharmacol,2013;5:85-97;Guignabert C et al.Dasatinib induces lung vascular toxicity and predisposes to pulmonary hypertension.J Clin Invest 2016;126(9):3207-18;Iurlo A,et al.Pleural effusion and molecular response in dasatinib-treated chronic myeloid leukemia patients in a real-life Italian multicenter series.Ann Hematol.2017;Oct 2.Doi:10.1007/soo277-017-3144-1)。
【0118】
したがって、血漿から肺組織への化合物XおよびXIの予想外に有意に低い分布は、これらの化合物が肺組織に蓄積する可能性が低いこと、したがってダサチニブと比較して薬物誘発性肺毒性の可能性が低いことを示唆する。
【0119】
併用療法
一態様では、投与される組成物は、式I、II、III、IV、および/またはVのうちの1つ以上の化合物、好ましくは、それらの塩、プロドラッグ、および/または異性体を含む、化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)のうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIのうちの1つ以上を含む、本発明の複数の化合物、ならびに同じ疾患または状態に対して他の治療的に有効な薬物を含み得る複数の異なる薬理学的に活性な化合物を含み得、化合物は、疾患の徴候に対して相加的または相乗的な効果を有する。
【0120】
1つの好ましい態様では、本発明は、動物またはヒトの対象におけるキナーゼ機能障害媒介疾患または状態を治療するための方法であって、同じ疾患または状態を治療するための1つ以上の他の療法と併用して、式I、II、III、IV、および/またはVを有する1つ以上の化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)のうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIのうちの1つ以上、それらの塩、プロドラッグ、および/または異性体の有効量を対象に投与することを伴う、方法を提供する。他の療法は、(外科手術などの)医療処置、治療薬、および/または放射線を含み得る。治療薬としては、化学療法剤、生物製剤、および免疫療法剤が挙げられる。併用療法は、本明細書に記載の化合物のうちの1つ以上と1つ以上の他の治療薬との異なる時点での投与または同時投与を含み得る。いくつかの実施形態では、投薬量は、本発明の化合物または組み合わせて使用される他の治療薬のうちの1つ以上に対して変更されてもよく、そのような変更は、化合物または単独で使用される療法に対する投薬量の減少である。
【0121】
併用での使用は、他の療法または薬物が、1、2、3、もしくは4~24時間以内などの短期間内、またはそのような1~2日、2~4日、4~7日、もしくは1~4週間の長期間内の異なる時間に投与され得る他の医療処置、治療薬、および療法との使用を含むことが理解される。本発明の化合物の使用は、医療処置の前後に、短期間または長期間内に化合物が投与される、外科手術などの医療処置と併用して、対象に対して1回またはまれに実行することができる。
【0122】
投与
方法および化合物は、典型的には、キナーゼ媒介疾患または状態を有するヒト対象のための治療において使用される。しかしながら、それらはまた、他の動物対象における類似または同一の徴候を治療するためにも使用され得る。これに関連して、「対象」および「動物対象」などの用語は、ヒトおよびヒト以外の脊椎動物、すなわち、ヒト以外の霊長類、変種、および市販の動物、例えばウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、げっ歯類、ならびにペット、例えば、イヌおよびネコなどの哺乳動物を指す。
【0123】
式I、II、III、IV、およびVの化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV、より好ましくは化合物IV、V、X、およびXIは、場合によっては塩を形成してもよく、それらも本発明の範囲内である。本明細書で用いられるとき、「塩」という用語は、無機および/または有機の酸ならびに塩基と形成された酸性および/または塩基性の塩を意味する。
【0124】
例示的な酸付加塩としては、アセタート(例えば、酢酸またはトリハロ酢酸、例えばトリフルオロ酢酸で形成されたもの)、アジパート、アルギナート、アスコルバート、アスパルタート、ベンゾアート、シトラート、カンホラート、カンファースルホナート、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコナート、ドデシルサルファート、エタンスルホナート、フマラート、グルコヘプタノアート、グリセロホスファート、ヘミサルファート、ヘプタノアート、ヘキサノアート、ヒドロクロライド、ヒドロブロマイド、2-ヒドロキシエタンスルホナート、ラクタート、マレアート、メタンスルホナート、ニコチナート、ニトラート、オキサラート、ペクチナート、ホスファート、ピクラート、サリチラート、プロピオナート、タルトラート、チオシアナート、トルエンスルホナートなどが挙げられる。
【0125】
例示的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム、リチウム、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびに有機塩基との塩(例えば有機アミン)などが挙げられる。
【0126】
化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIV(化合物I~XIV)を含む式I、II、III、IV、およびVの化合物、それらの塩、プロドラッグ、および/または異性体は、静脈内、筋肉内、皮下、経口、経皮、経粘膜、直腸内、または吸入によって投与することができる。静脈内投与の場合、用量は、ボーラスまたは注入として投与し得る。
【0127】
経口使用のための医薬組成物は、例えば、式I、II、III、IV、および/またはVのうちの1つ以上の化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、および/またはXIVのうちの1つ以上、より好ましくは化合物IV、V、X、および/またはXIのうちの1つ以上、それらの塩、プロドラッグ、および/または異性体を固体賦形剤と併用して、任意に得られた混合物を粉砕し、必要に応じて、好適な補助剤を添加した後に顆粒混合物を加工して錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得られ得る。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース製剤、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、および/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)である。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸などの崩壊剤、またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩を添加してもよい。
【0128】
注射のためには、式I、II、III、IV、およびVの化合物、好ましくは化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIV、より好ましくは化合物IV、V、X、およびXI、それらの塩、プロドラッグ、および/または異性体は、滅菌液体溶液、好ましくは生理食塩水、ハンクス液、またはリンゲル液などの物理的に適合する緩衝液または溶液中に処方される。さらに、化合物は、固体形態で処方され、使用直前に再溶解または懸濁されてもよい。凍結乾燥形態も生成することができる。
【0129】
本明細書に記載の化合物の投与は、化学療法または放射線と同時にまたは連続して起こり得る。医学的な疾患または状態を治療するための他の治療薬または薬物の投与は、異なる投与経路または同じ投与経路によるものであり得ることが理解される。
【0130】
別の態様では、任意の投与経路に対する併用療法の使用は、任意の製剤で一緒に同じ投与経路によって送出されるか、または1時間、2時間、3時間、最大24時間内に別々の製剤で一緒に投与されるか、または異なる投与経路によって送出される、本発明の化合物および1つ以上の他の薬物治療薬の送出を含む。
【0131】
本発明はまた、(a)本明細書に開示されている本発明の化合物である、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の第1の薬物、および(b)少なくとも1つの助剤を含む薬剤の組み合わせ、例えばキットを提供する。キットは、投与説明書を含み得る。
【0132】
一般的な合成方法
本発明はまた、本発明の新規な重水素濃縮化合物および非濃縮化合物を調製するためのプロセスも含む。記載された反応において、それらが最終生成物において望まれる場合、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオ、またはカルボキシ基を保護し、それらの反応への望ましくない関与を回避することが必要であり得る。従来の保護基を標準的な慣例に従って使用することができ、例えば、TW Greene and PGM Wutsin Protective Groups in Organic Chemistry,John Wiley and Sons,1991を参照のこと。
【0133】
例示的化合物を含む式I、II、III、IV、およびVの化合物は、一般に、当業者には理解されるように、以下のスキーム1(および他の適用可能なスキーム)の試薬に適切な修飾を行うことによって合成することができる。非重水素化中間体は、一般に市販されており、したがって適切な市販の中間体を使用して、例えば化合物7(例えばスキーム8~14の化合物7Hを参照)で合成を開始することができることに留意されたい。
【0134】
化合物Iは、スキーム1に示す方法で合成することができる。
【化43】
【0135】
化学プロセスの初期工程は、4-ブロモ-2-クロロ-6-メチルアニリン(1)をアリルブロマイドと反応させて中間体2を形成することを伴う。約-70℃の窒素ガス下で乾燥テトラヒドロフラン中の中間体2に、n-ブチルリチウム(1モルの中間体2に対して約1.5モルのn-ブチルリチウム)を滴下する。約40分後、中間リチウム錯体をd-メタノール(CHOD;99%重水素、#550574;ロット#MKBW0355V、Aldrich,St Louis,MO)でクエンチして、4位に重水素を選択的に組み込み、中間体3を得る。アリル保護基を標準的手順により除去してアニリン中間体4を得る。中間体4を塩化3-エトキシアクリロイルと反応させてアクリルアミド中間体5を形成し、次いでこれをN-ブロモスクシンイミドおよびチオ尿素で処理してチアゾール中間体6を形成する。チアゾール中間体6を塩基性水素化ナトリウムで処理し、続いて4,6-ジクロロ-2-メチルピリミジンを添加して、2-[(6-クロロ-2-メチルピリミジン-4-イル)アミノ]-N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)チアゾール-5-カルボキサミド(中間体7)を形成する。中間体7をピペリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物I(8)を形成する。
【0136】
化合物IIは、スキーム2に示す方法で合成することができる。
【化44】
【0137】
化合物IIの合成において、この方法の最初の6工程は、中間体7を生成するための化合物Iの合成において使用されたものと同一である。合成の最後の工程は、4-ヒドロキシピペリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンを使用して中間体7と反応させて所望の生成物化合物IIを形成する。
【0138】
化合物IIIは、スキーム3に示す方法で合成することができる。
【化45】
【0139】
化合物IIIの合成において、この方法の最初の6工程は、中間体7を生成するための化合物Iの合成において使用されたものと同一である。合成の最後の工程は、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン(Sigma-Aldrich;St Louis,MO)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミンを使用して中間体7と反応させて所望の付加生成物化合物IIIを形成する。
【0140】
化合物IVは、スキーム4に示す方法で合成することができる。
【化46】
【0141】
化合物IVの合成において、この方法の最初の6工程は、中間体7を生成するための化合物Iの合成において使用されたものと同一である。中間体7を(S)-3-ヒドロキシピロリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物IVを形成する。
【0142】
化合物Vは、スキーム5に示す方法で合成することができる。
【化47】
【0143】
化合物Vの合成において、この方法の最初の6工程は、中間体7を生成するための化合物Iの合成において使用されたものと同一である。中間体7を(R)-3-ヒドロキシピロリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物Vを形成する。
【0144】
化合物VIは、スキーム6に示す方法で合成することができる。
【化48】
【0145】
化合物VIの合成において、この方法の最初の6工程は、中間体7を生成するための化合物Iの合成において使用されたものと同一である。中間体7をジオキサン中でtert-ブチル(S)-ピロリジン-3-イルカルバマートおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて化合物300-98を形成する。化合物300-98を脱保護して生成物化合物VIを得る。
【0146】
化合物VIIは、スキーム7に示す方法で合成することができる。
【化49】
【0147】
化合物VIIの合成において、この方法の最初の6工程は、中間体7を生成するための化合物Iの合成において使用されたものと同一である。中間体7をジオキサン中でtert-ブチル(R)-ピロリジン-3-イルカルバマートおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて化合物300-100を形成する。化合物300-100を脱保護して生成物化合物VIIを得る。
【0148】
化合物VIIIは、スキーム8に示す方法で合成することができる。
【化50】
【0149】
化合物VIIIの合成において、市販の中間体7H(Combi-Blocks,Inc.,San Diego,CA)をジオキサン中でピペリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物VIIIを形成する。
【0150】
化合物IXは、スキーム9に示す方法で合成することができる。
【化51】
【0151】
化合物IXの合成において、市販の中間体7Hをジオキサン中の4-ヒドロキシピペリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物IXを形成する。
【0152】
化合物Xは、スキーム10に示す方法で合成することができる。
【化52】
【0153】
化合物Xの合成において、市販の中間体7Hをジオキサン中の(S)-ピロリジン-3-オールヒドロクロライドおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物Xを形成する。
【0154】
化合物XIは、スキーム11に示す方法で合成することができる。
【化53】
【0155】
化合物Xの合成において、市販の中間体7Hをジオキサン中の(R)-ピロリジン-3-オールヒドロクロライドおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて所望の生成物化合物XIを形成する。
【0156】
化合物XIIは、スキーム12に示す方法で合成することができる。
【化54】
【0157】
化合物XIIの合成において、市販の中間体7Hをジオキサン中のtert-ブチル(S)-ピロリジン-3-イルカルバマートおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて中間体300-92を形成する。中間体300-92を脱保護して化合物XIIを生成する。
【0158】
化合物XIIIは、スキーム13に示す方法で合成することができる。
【化55】
【0159】
化合物XIIIの合成において、市販の中間体7Hをジオキサン中のtert-ブチル(R)-ピロリジン-3-イルカルバミン酸およびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて中間体300-92を形成する。中間体300-92を脱保護して化合物XIIを生成する。
【0160】
化合物XIVは、スキーム14に示す方法で合成することができる。
【化56】
【0161】
化合物XIVの合成において、市販の中間体7Hをジメチルスルホキシド(DMSO)中でピロリジンおよびN,N-ジイソプロピルエチルアミンと反応させて化合物XIVを形成する。
【0162】

以下に本発明に関する実施例を説明する。より多くの場合において、代替の技術が使用され得る。実施例は、例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定または限定するものではない。いくつかの例では、質量分析の結果は、ブロモまたはクロロ置換基を有する化合物など、化合物が分子中の原子の同位体分布に起因して2以上の値を有し得ることを示した。
例1
N-(2-クロロ-4-ジュウテリオ-6-メチル-フェニル)-2-[[2-メチル-6-(1-ピペリジル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物I)の合成
【0163】
N,N-ジアリル-4-ブロモ-2-クロロ-6-メチルアニリン(2)の調製:250mLのフラスコに、0℃で4-ブロモ-2-クロロ-6-メチルアニリン(3g、13.61mmol)、ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)、および炭酸ナトリウム(6.37g、60.09mmol、4.4当量)を添加した。撹拌しながら、アリルブロマイド(9.4mL、108.62mmol、8当量)を0~5℃の窒素下で滴下した。添加後、混合物を室温で20分間撹拌し、TLC分析が出発物質の存在を示さなかったときに120℃の窒素下で3時間加熱した。次いで混合物を室温に冷却し、冷水に注ぎ入れ、続いて酢酸エチル(EtOAc)(2×150mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(3×100mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム、NaSO)、減圧下で濃縮して黒褐色の液体残渣を得、これをカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ)により精製して、淡褐色液体として化合物2(3.9g、95%)を得た。
【0164】
N,N-ジアリル-2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルアニリン(3)の調製:-70℃の窒素下でテトラヒドロフラン(THF)(40mL)中の化合物2(2g、6.65mmol)の溶液へn-ブチルリチウム2.5M溶液(4ml、10mmol)を滴下した。添加後、混合物を-70℃で40分間撹拌し、次いで重水素化メタノール(MeOD)(2mL、49.2mmol、99%重水素、#550574;ロット#MKBW0355V、Aldrich,St Louis,MO)を滴下することによってクエンチした。 。次いで、薄層クロマトグラフ(TLC)分析(ヘキサンのみ)が反応が完了したことを示したときに、反応混合物を40分かけて-70℃から-20℃まで撹拌した。混合物を冷水(100mL)に注ぎ入れ、続いてEtOAc(2×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ、次いでEtOAc:ヘキサン;1:20)で精製して、化合物3(1.38g、93%)を淡黄色の液体として得た。H核磁気共鳴(NMR)(CDCl3):7.20(s、1H)、7.09(s、1H)、5.95(m、2H)、5.21~5.20(m、4H)、3.79(d、4H)、2.41(s、3H)。H NMRは、化合物3の4位にプロトンシグナルがないことを示した。
【0165】
2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルアニリン(4)の調製:DCM(130mL)中のアニリン3(3g、13.31mmol)の撹拌溶液に、N,N-ジメチルバルビツール酸(8.3g、53.16mmol、4当量)およびPd(PPh(0.5g、0.43mmol、0.032当量)を添加した。混合物を窒素下で4時間加熱還流した。TLC分析(EtOAc:ヘキサン;1:9)は、反応が完了したことを示した。混合物を室温に冷却した後、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc(120mL)に溶解し、有機層を10%重炭酸ナトリウム(NaHCO)溶液(4×60mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc:ヘキサン;1:9)で精製して、所望のアニリン4(1.67g、88%)を薄茶色の液体として得た。
【0166】
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-3-エトキシアクリルアミド(5)の調製:0~5℃の化合物4(460mg、3.23mmol)、ピリジン(0.4mL、4.95mmol、1.5当量)、およびTHF(25mL)の混合物に、塩化3-エトキシアクリロイル(666mg、4.95mmol、1.5当量)を滴下した。添加後、混合物を室温の窒素下で一晩撹拌した。TLC分析(EtOAc:ヘキサン;1:2)は、出発物質がないことを示した。EtOAc(80mL)および水(80mL)を混合物に添加し、有機層を分離し、1N塩酸(HCl)溶液、水、および5%NaHCO溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮して、化合物5を白色固体として得、これを精製することなく次の工程に使用した。
【0167】
2-アミノ-N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)チアゾール-5-カルボキサミド(6)の調製:アクリルアミド5(900mg、3.74mmol)、1,4-ジオキサン(7mL)、および水(7mL)の混合物に、0℃でN-ブロモスクシンイミド(730mg、4.10mmol、1.1当量)を添加した。スラリーを室温で3時間撹拌した。チオ尿素(285mg、3.75mmol、1当量)を添加し、混合物を80℃に加熱した。3時間後、混合物を室温に冷却し、続いて濃水酸化アンモニウム溶液(1mL)を添加した。撹拌後、EtOAc(80mL)および水(80mL)を混合物に添加した。有機層を分離し、水層をEtOAc(80mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EtOAc-ヘキサン、1:4~1:2)にかけて、化合物6(0.82g、82%)を薄茶色の固体として得た。液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)分析は、269.14(M+H)にプロトン化された親イオンを示した。
【0168】
2-[(6-クロロ-2-メチルピリミジン-4-イル)アミノ]-N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)チアゾール-5-カルボキサミド(7)の調製:0℃の水素化ナトリウム(60%、67mg、1.67mmol)とTHF(15mL)との混合物に、化合物6(150mg、0.56mmol)を少しずつ添加した。混合物を0℃で30分間撹拌し、4,6-ジクロロ-2-メチルピリミジン(109mg、0.67mmol、1.2当量)の溶液を滴下した。得られた混合物を室温で3時間撹拌したところLC-MS分析が出発物質がないことを示した。混合物を濃縮して粗化合物7を得、これを精製することなく次の工程に使用した。
【0169】
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(ピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(8、化合物I)の調製:ジオキサン(10mL)中の粗化合物7(約0.56mmol)の混合物に、室温でピペリジン(143mg、1.68mmol、3当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(217mg、1.68mmol、3当量)を添加した。混合物を85~90℃の窒素下で20時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を濃縮乾固し、20%HPLCグレードの水を含有する50mLのアセトニトリルに懸濁した。次いで、混合物を4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットをアセトニトリルに再懸濁し、4000rpmで15分間再度遠心分離した。最終ペレットを窒素下で乾燥させ、目的化合物I(化合物8)の灰白色の固体として回収した(12mg)。最終生成物の純度は、液体クロマトグラフ紫外質量分析(LC-UV-MS)により95%超であると決定された。LC-MS:444.14(M+H);H NMR(DMSO-d):11.52(s、1H、NH)、9.82(s、1H、NH)、8.18(s、1H)、7.39(s、1H)、7.21(s、1H)、6.00(s、1H)、3.55(m、4H)、3.22(s、3H)、2.43(s、3H)、1.65(m、6H)。H NMRは、化合物Iの4位にプロトンシグナルがないことを示した。
例2
N-(2-クロロ-4-ジュウテリオ-6-メチル-フェニル)-2-[[6-(4-ヒドロキシ-1-ピペリジル)-2-メチル-ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物II)の調製
【0170】
スキーム2に示す合成手順によって、2-[(6-クロロ-2-メチルピリミジン-4-イル)アミノ]-N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)チアゾール-5-カルボキサミド(7)から出発して、化合物IIを合成した。
【0171】
2-[(6-クロロ-2-メチルピリミジン-4-イル)アミノ]-N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6メチルフェニル)チアゾール-5-カルボキサミド(7)は、実施例1に記載の4-ブロモ-2-クロロ-6-メチルアニリンから出発して6工程で調製した。
【0172】
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物II)の調製:ジオキサン(10mL)中の粗化合物7(約0.56mmol)の混合物に、室温で4-ヒドロキシピペリジン(170mg、1.68mmol、3当量)およびDIEA(217mg、1.68mmol、3当量)を添加した。混合物を85~90℃の窒素下で20時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を濃縮乾固し、続いて50mLのアセトニトリルに懸濁した。混合物を4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットをメタノールに溶解し、カラムクロマトグラフィー(メタノール塩化メチレン、1:9)で精製した。化合物IIのみを含有するカラムクロマトグラフ画分を合わせて窒素流下で乾燥させ、目的化合物II(17mg)の灰白色の固体として回収した。最終生成物の純度は、LC-UV-MSにより95%以上であると決定された。LC-MS:460.14(M+H);H NMR(DMSO-d):11.42(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(s、1H)、7.24(s、1H)、6.05(s、1H)、4.78(s、1H)、3.95(m、2H)、3.75(m、1H)、3.22(s、3H)、3.18(m、2H)、2.43(s、3H)、1.85(m、2H)、1.35(m、2H)。H NMRは、化合物IIの4位にプロトンシグナルがないことを示した。
例3
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物III)の調製
【0173】
粗化合物7(約0.56mmol)およびジオキサン(10mL)の混合物に、室温で4-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン(219mg、1.68mmol、3当量)およびDIEA(217mg、1.68mmol、3当量)を添加した。次いで、混合物を85~90℃の窒素下で20時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固し、20%HPLCグレードの水を含有する50mLのアセトニトリルに懸濁した。次いで、混合物を4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットをアセトニトリルに再懸濁して、4000rpmで15分間再度遠心分離した。最終ペレットを窒素下で乾燥し、灰白色の固体として、目的化合物IIIの灰白色の固体(約40mg)として回収した。LC-MS:489.16(M+H);H NMR(DMSO-d):11.42(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.20(s、1H)、7.40(s、1H)、7.24(s、1H)、6.05(s、1H)、4.42(m、1H)、3.35(m、2H)、2.48(m、8H)、2.40(s、3H)、2.15(m、2H)。
例4
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物IV)の調製
【0174】
粗化合物7(約0.56mmol)およびジオキサン(10mL)の混合物に、室温で(S)-ピロリジン-3-オールヒドロクロライド(208mg、1.68mmol、3当量)およびDIEA(400mg、3.1mmol、5.5当量)を添加した。次いで、混合物を85~90℃の窒素下で6時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固し、得られた残渣をアセトニトリル50mLに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。次いで、ペレットを冷却した80%アセトニトリルに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを冷却した80%アセトニトリルに再懸濁し、15分間4000rpmで遠心分離した。上清を合わせて濃縮乾固させて、目的化合物IV(約60mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:446(M+H);H NMR(DMSO-d):11.40(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(s、1H)、7.24(s、1H)、5.80(s、1H)、4.98(s、1H)、4.35(s、1H)、2.53(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例5
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物V)の調製
【0175】
粗化合物7(約0.56mmol)およびジオキサン(10mL)の混合物に、室温で(R)-ピロリジン-3-オールヒドロクロライド(208mg、1.68mmol、3当量)およびDIEA(400mg、3.1mmol、5.5当量)を添加した。次いで、混合物を85~90℃の窒素下で6時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固し、得られた残渣をアセトニトリル50mLに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。次いで、ペレットを冷却した80%アセトニトリルに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを冷却した80%アセトニトリルに再懸濁し、15分間4000rpmで遠心分離した。上清を合わせて濃縮乾固させて、目的化合物V(約103mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:446(M+H);H NMR(DMSO-d):11.40(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(s、1H)、7.24(s、1H)、5.80(s、1H)、4.98(s、1H)、4.35(s、1H)、2.53(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例6
N-(2-クロロ-4-デュテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物VI、300-101)の調製
【0176】
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物VII、300-101)の調製。300-97(200mg、0.51mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温でtert-ブチル(S)-ピロリジン-3-イルカルバマート(186mg、1mmol、2当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、2当量)を添加した。次いで、混合物を90~91℃の窒素下で12時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮し、メタノール(4mL)を添加した後、混合物を再濃縮して中間体300-100を灰色固体として得た。LC-MS:545.12(M+H)。
【0177】
粗試料(300-100)にDCM(4mL)を添加した。混合物を5℃に冷却し、次いでTFA-DCMの混合物(1:1、5mL)を滴下した。添加後、混合物を室温で3時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をメタノール(4mL)と混合し、続いてトリエチルアミン(2mL)を添加し、しばらく撹拌した。混合物を濃縮乾固し、次いで50mLの蒸留水に懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを50mLの蒸留水で再懸濁し、次いで15分間4000rpmで遠心分離した。ペレットを100mLの80%アセトニトリルでさらに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。上清を蒸発乾固させて、目的化合物VI(300-101)(約108mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:445(M+H);H NMR(DMSO-d):9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.30(s、1H)、7.19(s、1H)、5.80(s、1H)、3.60-3.35(m、2H)、2.43(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例7
N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物VII、300-99)の調製
【0178】
2-[(6-クロロ-2-メチルピリミジン-4-イル)アミノ]-N-(2-クロロ-4-ジュウテロ-6-メチルフェニル)チアゾール-5-カルボキサミド(300-97)の調製。出発物質300-77-2(200mg、0.74mmol)、4,6-ジクロロ-2-メチルピリミジン(147mg、0.90mmol、1.2当量)、およびTHF(4mL)の撹拌混合物に、0~5℃でナトリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(2M、1.31mL、2.62mmol、3.5当量)を滴下した。添加後、混合物を室温で1.5時間撹拌し、0~5℃に再冷却した。2N HCl溶液(1mL)を滴下した。混合物を15分間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をEtOAc-ヘキサン(1:1)と混合し、5分間撹拌した。固体を濾過し、EtOA-ヘキサン(1:1)で洗浄し、乾燥させて黄色の固体(210mg)を得、これを精製することなく次の工程に使用した。LC-MS:395.03(M+H)。
【0179】
N-(2-クロロ-4-デュテロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物VI、300-99)の調製。300-97(200mg、0.51mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温でtert-ブチル(R)-ピロリジン-3-イルカルバマート(186mg、1mmol、2当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、2当量)を添加した。次いで、混合物を90~91℃の窒素下で12時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。メタノール(4mL)を添加後、混合物を再濃縮して中間体300-98を灰色固体として得た。LC-MS:545.12(M+H)。
【0180】
粗試料(300-98)にジクロロメタン(DCM)(4mL)を添加した。混合物を5℃に冷却し、次いでトリフルオロ酢酸(TFA)-DCM(1:1、5mL)の混合物を滴下した。添加後、混合物を室温で3時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をメタノール(4mL)と混合し、続いてトリエチルアミン(2mL)を添加して撹拌した。混合物を濃縮乾固し、次いで50mLの蒸留水に懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを50mLの蒸留水で再懸濁し、次いで15分間4000rpmで遠心分離した。ペレットを100mLの80%アセトニトリルでさらに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。上清を蒸発乾固させて、目的化合物VII(300-99)を灰白色の固体(約105mg)として得た。LC-MS:445(M+H);H NMR(DMSO-d):9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.30(s、1H)、7.19(s、1H)、5.80(s、1H)、3.60-3.35(m、2H)、2.43(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例8
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(ピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物VIII、H-20)の調製
【0181】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(ピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物VIII、H-20)の調製。出発物質7H(150mg、0.38mmol)、ジオキサン(8mL)の混合物に、室温でピペリジン(97mg、1.14mmol、3当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、3当量)を添加した。混合物を90~91℃の窒素下で15時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を濃縮乾固し、20%HPLCグレードの水を含有する50mLのアセトニトリルに懸濁した。次いで、混合物を4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットをアセトニトリルに再懸濁して、4000rpmで15分間再度遠心分離した。最終ペレットを窒素下で乾燥させて、目的化合物VIII(H-20)(約129mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:443.14(M+H);H NMR(DMSO-d):11.52(s、1H.NH)、9.82(s、1H、NH)、8.18(s、1H)、7.39(m、1H)、7.21(m、2H)、6.00(s、1H)、3.55(m、4H)、3.22(s、3H)、2.43(s、3H)、1.65(m、6H)。
例9
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物IX、H-21)の調製
【0182】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(H-21)の調製。出発物質7H(150mg、0.38mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温で4-ヒドロキシピペリジン(115mg、1.14mmol、3当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、3当量)を添加した。次いで、混合物を90~92℃の窒素下で10時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を濃縮乾固し、20%HPLCグレードの水を含有する50mLのアセトニトリルに懸濁した。次いで、混合物を4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットをアセトニトリルに再懸濁して、4000rpmで15分間再度遠心分離した。最終ペレットを窒素下で乾燥させて、目的化合物IX(H-21)(130mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:459.14(M+H);H NMR(DMSO-d):11.42(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(m、1H)、7.24(m、2H)、6.05(s、1H)、4.78(s、1H)、3.95(m、2H)、3.75(m、1H)、3.22(s、3H)、3.18(m、2H)、2.43(s、3H)、1.85(m、2H)、1.35(m、2H)。
例10
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物X、H-31、300-89)の調製
【0183】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物XI、H-31、300-89)の調製。出発物質7H(150mg、0.38mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温で(S)-ピロリジン-3-オールヒドロクロライド(141mg、1.14mmol、3当量)およびDIEA(245mg、1.90mmol、5当量)を添加した。次いで、混合物を90~92℃の窒素下で12時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固し、得られた残渣をアセトニトリル50mLに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。次いで、ペレットを冷却した80%アセトニトリルに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを冷却した80%アセトニトリルに再懸濁し、15分間4000rpmで遠心分離した。上清を合わせて濃縮乾固させて、目的化合物X(H-31)(105mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:445(M+H);H NMR(DMSO-d):11.40(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(m、1H)、7.24(m、2H)、5.80(s、1H)、4.98(s、1H)、4.35(s、1H)、2.53(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例11
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物XI、H-30、300-87)の調製
【0184】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物X、H-30、300-87)の調製。出発物質7H(150mg、0.38mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温で(R)-ピロリジン-3-オール(100mg、1.1mmol、3当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、3当量)を添加した。次いで、混合物を90~92℃の窒素下で12時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物は、透明な溶液ではなかった。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固し、得られた残渣をアセトニトリル50mLに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。次いで、ペレットを冷却した80%アセトニトリルに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを冷却した80%アセトニトリルに再懸濁し、15分間4000rpmで遠心分離した。上清を合わせて濃縮乾固させて、目的化合物XI(H-30)(約75mg)を灰白色の固体として得た。LC-MS:445(M+H);H NMR(DMSO-d):11.40(s、1H.NH)、9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(m、1H)、7.24(m、2H)、5.80(s、1H)、4.98(s、1H)、4.35(s、1H)、2.53(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例12
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物XII、H-41、300-93)の調製
【0185】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((S)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(H-41、300-93)の調製。出発物質7H(150mg、0.38mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温でtert-ブチル(S)-ピロリジン-3-イルカルバマート(142mg、0.76mmol、2当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、3当量)を添加した。次いで、混合物を90~91℃の窒素下で10時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。メタノール(4mL)を添加後、混合物を再濃縮して中間体300-92を灰色固体として得た。LC-MS:544.12(M+H)。
【0186】
粗試料(300-92)にDCM(4mL)を添加した。混合物を5℃に冷却し、次いでTFA-DCMの混合物(1:1、5mL)を滴下した。添加後、混合物を室温で3時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をメタノール(4mL)と混合し、続いてTEA(2mL)を添加し、しばらく撹拌した。混合物を濃縮乾固し、次いで50mLの蒸留水に懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを50mLの蒸留水で再懸濁し、次いで15分間4000rpmで遠心分離した。ペレットを100mLの80%アセトニトリルでさらに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。上清を蒸発乾固させて、目的化合物XII(H-41)を灰白色の固体(約88mg)として得た。LC-MS:444(M+H);H NMR(DMSO-d):9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(m、1H)、7.24(m、2H)、5.80(s、1H)、3.60-3.35(m、2H)、2.53(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例13
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物XIII、H-40、300-91)の調製
【0187】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-((R)-3-アミノピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物XII、H-40、300-91)の調製。出発物質7H(150mg、0.38mmol)およびジオキサン(8mL)の混合物に、室温でtert-ブチル(R)-ピロリジン-3-イルカルバマート(142mg、0.76mmol、2当量)およびDIEA(147mg、1.14mmol、3当量)を添加した。次いで、混合物を90~91℃の窒素下で12時間撹拌した。LC-MS分析は、生成物ピークを示した。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。メタノール(4mL)を添加後、混合物を再濃縮して中間体300-90を灰色固体として得た。LC-MS:544.12(M+H)。
【0188】
粗試料(300-90)にDCM(4mL)を添加した。混合物を5℃に冷却し、次いでTFA-DCMの混合物(1:1、5mL)を滴下した。添加後、混合物を室温で3時間撹拌し、減圧下で濃縮した。残渣をメタノール(4mL)と混合し、続いてトリメチルアミン(TEA)(2mL)を添加し、しばらく撹拌した。混合物を濃縮乾固し、次いで50mLの蒸留水に懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを50mLの蒸留水で再懸濁し、次いで15分間4000rpmで遠心分離した。ペレットを100mLの80%アセトニトリルでさらに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。上清を蒸発乾固させて、目的化合物XIII(H-40)を灰白色の固体として得た(約96mg)。LC-MS:444(M+H);H NMR(DMSO-d):9.83(s、1H、NH)、8.19(s、1H)、7.40(m、1H)、7.24(m、2H)、5.80(s、1H)、3.60-3.35(m、2H)、2.53(s、3H)、2.20(s、2H)、2.12(s、2H)、1.85(m、2H)。
例14
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(化合物XIV、H-50)の調製
【0189】
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-[[2-メチル-6-(ピロリジン-1-イル)ピリミジン-4-イル]アミノ]チアゾール-5-カルボキサミド(H-50)の調製:出発物質7H(300mg、0.76mmol)およびDMSO(10mL)の混合物に、室温でピロリジン(162mg、2.28mmol、3当量)およびDIEA(294mg、2.28mmol、3当量)およびDMAP(3mg)を添加した。次いで、混合物を窒素下で110℃に加熱し、110℃で15時間撹拌した。LC-MS分析は、完全な反応を示した。混合物を濃縮乾固し、次いで50mLの蒸留水に懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。ペレットを50mLの蒸留水で再懸濁し、次いで15分間4000rpmで遠心分離した。ペレットを100mLの80%アセトニトリルでさらに懸濁し、4000rpmで15分間遠心分離した。上清を蒸発乾固させて、目的化合物XIV(H-50)を灰白色の固体(約314mg)として得た。LC-MS:429(M+H);H NMR(DMSO-d):11.52(s、1H.NH)、9.82(s、1H、NH)、8.18(s、1H)、7.39(m、1H)、7.21(m、2H)、5.79(s、1H)、3.35(m、4H)、2.39(s、3H)、2.23(s、3H)、1.90(m、4H)。
【0190】
例15
プロテインキナーゼ阻害研究
Carna Biosciences,Inc(Natick、MA)によるオフチップモビリティシフトアッセイ(MSA)をキナーゼ活性および阻害の測定に使用した。
1)5μLの4倍化合物溶液、5μLの4倍基質/ATP/金属溶液、および10μLの2倍キナーゼ溶液を、アッセイ緩衝液(20mM HEPES、0.01%Triton X-100、2mM DTT、pH7.5)を用いて調製し、混合して、室温で1または5時間(キナーゼに応じて)ポリプロピレン384ウェルマイクロプレートのウェル中でインキュベートした。
2)70μLの反応停止緩衝液(QuickScout Screening Assist MSA;Carna Biosciences)をウェルに添加した。
3)反応混合物をLabChipシステム(Perkin Elmer)に適用し、生成物および基質ペプチドピークを分離し定量した。
4)キナーゼ反応は、生成物(P)および基質(S)ペプチドのピーク高さから計算された生成物比(P/(P+S))によって評価された。
5)Carna Biosciences,Inc(BMA 3F,1-5-5 Minatojima-Minamimachi,Chuo-ku, Kobe 650-0047,Japan;www.carnabio.com)のアッセイプロトコルに従って反応条件を追跡した。
6)データ分析:反応対照(完全反応混合物)の読み出し値を0%阻害として設定し、バックグラウンド(酵素(-))の読み出し値を100%阻害として設定し、次いで各試験溶液の阻害率を計算した。
【0191】
化合物Iは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:ABL、ABL(E255K)、ACK、ARG、BLK、BMX、BTK、DDR2、EPHA1、FGR、FMS、FRK、FYN(アイソフォームa)、HCK、LCK、LYNa、PDGFRα、PDGFRβ、SRC、YES。化合物Iは、それぞれ約0.2、0.5、および1.4nMのIC50で、組換えBTK、ACK、およびPDGFRα活性の濃度依存的阻害を示した。化合物Iは、組換えPIK3CA/PIK3R1活性を約12nMのIC50で阻害した。
【0192】
化合物Iは、以下の組換えキナーゼに対して10nMで>50%の阻害を示した:YES、FRK、SRC、LYNa、FMS、BMX、ABL、FYN(アイソフォームb)、FGR、HCK、FYN(アイソフォームa)、LCK、DDR2、ARG、ABL(E255K)、BTK、EPHA1、BLK、ACK、SRM、PDGFRβ、PIK3CA/PIK3R1、PDGFRα、CSK、KIT(D816V)、KIT(D816Y)、BRK。
【0193】
化合物Iは、以下の組換えキナーゼに対して10nMで<50%の阻害を示した:PDGFRα(V561D)、DDR1、KIT、KIT(V560G)、HER4、KIT(D816E)、EGFR(L858R)、KIT(V654A)、PDGFRα(D842V)、EGFR、EGFR(L861Q)、EGFR(d746-750)、JAK1、RET、RET(S891A)、FGFR3、ALK、WNK3、RET(Y791F)、BRAF(V600E)、RAF1、ROCK1、AurA、MAP2K2、RET(M918T)、KDR、FGFR2、Erk1、EGFR(T790M)、RET(G691S)、PDGFRα(T674I)、p38α、HER2、JAK3、MAP2K1、p38β、EGFR(T790M/L858R)、FLT1、BRAF、KIT(T670I)、MET、skMLCK、MNK1、MST1、PKD1、JAK2、YES(T348I)、FGFR1、EGFR(d746-750/T790M)。
【0194】
化合物IIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、FRK、FYN(アイソフォームa)、FYN(アイソフォームb)、TEC、BMX、LYNb、ABL、FGR、FMS、BLK、EPHA1、ABL(E255K)。化合物IIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで<50%の阻害を示した:PDGFRβ、PDGFRα、PIK3CA/PIK3R1、KIT、KIT(V560G)、EGFR、HER2、YES(T348I)、ITK、p38α、ABL(T315I)、RAF1、p38β、BRAF。化合物IIは、<1nMのIC50で、組換えBTK活性の濃度依存的阻害を示した。
【0195】
化合物IIは、以下の組換えキナーゼに対して10nMで>50%の阻害を示した:BTK、PDGFRβ、KIT(V560G)、PDGFRα、KIT。化合物IIは、以下の組換えキナーゼに対して10nMで<50%の阻害を示した:PIK3CA/PIK3R1、EGFR、p38α、RAF1、HER2、p38β、BRAF。
【0196】
化合物IIは、以下の組換えキナーゼに対して100nMで>50%の阻害を示した:PDGFRα、KIT(V560G)、KIT、PDGFRβ、EGFR。化合物IIは、以下の組換えキナーゼに対して100nMで<50%の阻害を示した:p38α、RAF1、PIK3CA/PIK3R1、HER2、p38β、BRAF。
【0197】
化合物IVは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0198】
化合物Vは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0199】
化合物VIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0200】
化合物VIIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0201】
化合物VIIIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0202】
化合物IXは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0203】
化合物Xは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。化合物Xは、組換えABL、ABL(E255K)、BTK、およびBTK(C481S)活性の濃度依存性阻害をそれぞれ<1nMのIC50値で示した。
【0204】
化合物XIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。化合物XIは、組換えABL、ABL(E255K)、BTK、およびBTK(C481S)活性の濃度依存的阻害をそれぞれ1nM未満のIC50値で示した。
【0205】
化合物XIIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0206】
化合物XIIIは、以下の組換えキナーゼに対して1nMで>50%の阻害を示した:SRC、YES、LCK、HCK、BTK、LYNa、TEC、BMX、ABL、ABL(E255K)。
【0207】
例16
細胞阻害アッセイ
SU-DHL-4(ATCC(登録商標)CRL-2957(商標))、K-562(ATCC(登録商標)CCL-243(商標))、およびMino(ATCC(登録商標)CRL-3000(商標))の細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC,Manassas,VA)から購入した。SU-DHL-4細胞およびMino細胞は、T-75フラスコに10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco,Life Technologies)(完全培地)を補充したATCC処方RPMI-1640培地(ATCC)中、飽和湿度の5%CO下の37℃で増殖した。K-562細胞は、T-75フラスコに10%FBS(Gibco,Life Technologies)(完全培地)を補充したATCC調合イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中、飽和湿度の5%CO下の37℃で増殖した。細胞が約1×10細胞/mLの濃度まで増殖したら、それらを各細胞株について対応する完全培地で2.5-5×10細胞/mLに希釈した。細胞懸濁液のアリコート200μLを様々な濃度の試験化合物1μLを予め添加した96ウェルプレートのウェルに添加し、プレートを飽和湿度の5%CO下の37℃で48時間インキュベートした。細胞培養の最後に、PrestoBlue(登録商標)Cell Viability試薬(ThermoFisher Scientific)のアリコート10μLをウェルに添加し、プレートを37℃で約60分間インキュベートした。570および600nmにおける吸収をSpectraMaxMicroplateリーダー(Molecular Devices)を用いて測定した。570nmにおける吸光度を600nmにおける吸光度に対して正規化した。570nmでの正規化吸光度を、メジアン効果プロット法に従ってIC50計算に使用した(TC Chou.Theoretical basis,experimental design,and computerized simulation of synergism and antagonism in drug combination studies.Pharmacol Rev.2006;58:621-681)。
【0208】
化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIVは、それぞれ、<15nMのIC50値でSU-DHL-4の成長の濃度依存的阻害を示した。
【0209】
化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIVは、それぞれ、<2nMのIC50値でK562細胞の成長の濃度依存的阻害を示した。
【0210】
化合物I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、およびXIVは、それぞれ、<50nMのIC50値でMinoの成長の濃度依存的阻害を示した。
【0211】
例17
代謝安定性
肝臓ミクロソームにおける代謝安定性:試験化合物およびダサチニブを、10mM MgCl、1mM NADPH、および2mM UDPGAを含有する0.1Mリン酸緩衝液中、37℃で0~60分の範囲の時点で、ヒト肝臓ミクロソーム(0.5mg/mL)(Corning Inc.,Tewksbury、MA)中で1μMの濃度でインキュベートした(図1参照)。ダサチニブ(HY10181/CS0100、302962-49-8、バッチ番号:13044)は、MedChemExpress USA(Monmouth Junction,NJ)から購入した。様々な時点でのインキュベーション反応を、100nMのレセルピンを含有する2倍容量のアセトニトリルを添加することによってクエンチした。クエンチしたインキュベーション試料を4000RPMで10分間遠心分離し、上清をLC/MS/MS分析のために注入した。LC/MS/MS分析は、Shimadzu Prominence UFLCXR 20シリーズ(CBM-20A制御装置、2つのLC-20ADXR溶媒送出ユニット、SIL-20AC HTオートサンプラー、CTO-20Aカラムオーブン、およびSPD-20A UV検出器を含む)と一体となったAB Sciex 4000 QトラップLC/MS/MSシステムで行った。2つの溶媒系:0.1%ギ酸を含有する水中2mM酢酸アンモニウム(A)およびメタノール(B)で溶出するPhenomenex Columbusカラム(C18、4μm、50×2mm)で試料を25%Bで始まる直線勾配で分離した。LC/MS/MSデータを取得するために、ポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化を使用した。インビトロt1/2および内在性クリアランスは、以前に報告された方法を使用して計算した(Obatch S.Prediction of human clearance of twenty-nine drugs from hepatic microsomal intrinsic clearance data:An examination of in vitro half-life approach and nonspecific binding to microsomes.Drug Metab Dispos.1999;27(11):1350-9)。
【0212】
例18
薬物動態
薬物動態:化合物IVおよびダサチニブ(2-in-1)の両方を、静脈内投与用に2.5%DMSO、20%プロピレングリコール300、および8%デキストロース溶液(50%)を含有する水中に0.2mg/mL(各化合物)の濃度で、ならびに経口投与用に5%DMSO、20%プロピレングリコール300、および10%デキストロース溶液(50%)を含有する水中0.25mg/mL(各化合物)の濃度で溶解した。化合物Vおよび化合物III(2-in-1)の両方を、静脈内投与用に2.5%DMSO、20%プロピレングリコール300、および8%デキストロース溶液(50%)を含有する水中に0.2mg/mL(各化合物)の濃度で、ならびに経口投与用に5%DMSO、20%プロピレングリコール300、および10%デキストロース溶液(50%)を含有する水中0.25mg/mL(各化合物)の濃度で溶解した。化合物Xおよびダサチニブ(2-in-1)を両方とも、静脈内投与用に2.5%DMSO、30%プロピレングリコール300、および10%デキストロース溶液(50%)を含有する水中に0.2mg/mL(各化合物)の濃度で、ならびに経口投与用に5%DMSO、50%プロピレングリコール300、および10%Solutol(登録商標)HS 15(Sigma-Aldrich)を含有する水中0.5mg/mL(各化合物)の濃度で溶解した。化合物XIおよび化合物III(2-in-1)の両方を、静脈内投与用に2.5%DMSO、30%プロピレングリコール300、および10%デキストロース溶液(50%)を含有する水中に0.2mg/mL(各化合物)の濃度で、ならびに経口投与用に5%DMSO、50%プロピレングリコール、および10%Solutol(登録商標)HS 15を含有する水中0.5mg/mL(各化合物)の濃度で溶解した。
【0213】
Sprague-Dawleyラット(体重約275~300g、N=3)に上記投薬溶液を5mL/kgで静脈内投薬し、10mL/kgで経口投薬した。血液試料を、抗凝固剤としてEDTAを含有するチューブに、投与後0、0.25(静脈内のみ)、0.5、1、2、4、8、10、および24時間で収集し、血漿試料を遠心分離によって調製した。血漿試料を、内部標準として100nMのレセルピンを含有する3倍容量のアセトニトリルと混合し、4000RPMで15分間遠心分離した。Shimadzu Prominence UFLCXR 20シリーズ(CBM-20A制御装置、2つのLC-20ADXR溶媒送出ユニット、SIL-20AC HTオートサンプラー、CTO-20Aカラムオーブン、およびSPD-20A UV検出器を含む)と一体となったAB Sciex 4000 QトラップLC/MS/MSシステムで行われるLC/MS/MS分析に上清を注入した。 2つの溶媒系:0.1%ギ酸を含有する水中2mM酢酸アンモニウム(A)およびメタノール(B)で溶出するPhenomenex Columbusカラム(C18、4μm、50×2mm)で試料を25%Bで始まる直線勾配で分離した。LC/MS/MSデータを取得するために、ポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化を使用した。化合物III、IV、V、X、XI、およびダサチニブの血漿濃度をそれぞれ標準曲線を使用して定量した。
【0214】
例19
組織分布
肺組織および血漿濃度比:化合物Xおよびダサチニブ(2-in-1)の両方を5%DMSO、および50%プロピレングリコール300、および9%Solutol(登録商標)HS 15を含有する水中に0.5mg/mL(各化合物)の濃度で溶解した。化合物XIおよびダサチニブ(2-in-1)の両方を5%DMSO、20%プロピレングリコール300を含有する水中に0.5mg/mL(各化合物)の濃度で溶解した。
CD-1マウス(約体重30g、N=3)を10mL/kgで強制経口により投薬した。化合物Xの投与後1、2、4、10時間、化合物XIの投薬前、投薬後1、2、3、8、10、および24時間後に抗凝固剤としてEDTAを含有する試験管に血液試料を収集した。血漿試料は、遠心分離によって調製した。肺試料も上記の各時点で収集した。肺試料を4×蒸留水(v/w)中でホモジナイズした。血漿試料および均質化された肺組織試料を、内部標準として100nMのレセルピンを含有する3倍容量のアセトニトリルと混合し、4000RPMで15分間遠心分離した。Shimadzu Prominence UFLCXR 20シリーズ(CBM-20A制御装置、2つのLC-20ADXR溶媒送出ユニット、SIL-20AC HTオートサンプラー、CTO-20Aカラムオーブン、およびSPD-20A UV検出器を含む)と一体となったAB Sciex 4000 QトラップLC/MS/MSシステムで行われるLC/MS/MS分析に上清を注入した。2つの溶媒系:0.1%ギ酸を含有する水中2mM酢酸アンモニウム(A)およびメタノール(B)で溶出するPhenomenex Columbusカラム(C18、4μm、50×2mm)で試料を25%で始まる直線勾配で分離した。LC/MS/MSデータを取得するために、ポジティブモードでのエレクトロスプレーイオン化を使用した。化合物X、XI、およびダサチニブの血漿および組織濃度は、それぞれ標準曲線を使用して決定した。
【0215】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、例示目的のみのためであり、それを考慮した様々な修正または変更が当業者に示唆され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきである。本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5