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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】クロロジシラザン
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20220523BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
H01L21/318 B
C23C16/42
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081989
(22)【出願日】2020-05-07
(62)【分割の表示】P 2019515846の分割
【原出願日】2017-09-21
(65)【公開番号】P2020123750
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】62/400,720
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビュン・ケイ・フワン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディー・レッケン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ディー・テルゲンホフ
(72)【発明者】
【氏名】シャオビン・ヅォウ
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0011607(US,A1)
【文献】特開2005-044970(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158848(WO,A1)
【文献】特開2017-112145(JP,A)
【文献】特開平01-188531(JP,A)
【文献】特表2008-507130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素化合物の製造方法であって、第1の堆積方法を用いて、基材の初期表面を、1,1,3,3-テトラクロロジシラザン又は1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザンの蒸気と接触させて、前記基材上に処理された表面を得ることを含む、第1の接触工程と、第2の堆積方法を用いて、前記基材の前記初期表面又は前記処理された表面を、窒素原子(複数可)を含有する前駆体材料の蒸気又はプラズマと接触させて、前記基材の前記初期表面又は前記処理された表面と共に又はその上に形成された窒化ケイ素化合物を含む生成物を得ることを含む第2の接触工程と、を含む、製造方法であって、原子層堆積法を使用する製造方法。
【請求項2】
窒素原子(複数可)を含有する前記前駆体材料が、窒素分子、アンモニア、ヒドラジン、有機ヒドラジン、アジ化水素、一級アミン、又は二級アミンである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記第1の接触工程が、前記第2の接触工程が実行される前に完了され、前記第2の接触工程が、前記基材の処理された表面を前駆体材料の蒸気若しくはプラズマと接触させることを含む、方法。
【請求項4】
前記窒化ケイ素化合物が、基材の前記初期表面上に膜の形状で作製される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生成物の窒化ケイ素化合物を前記生成物の基材から分離して、分離された窒化ケイ素化合物を自立型バルク形態として得る工程を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法であって、第1の堆積方法を用いて、基材の初期表面を、1,1,3,3-テトラクロロジシラザン又は1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザンの蒸気と接触させて、前記基材上に処理された表面を得ることを含む、第1の接触工程と、第2の堆積方法を用いて、前記基材の前記初期表面又は前記処理された表面を、窒素原子(複数可)、酸素原子(複数可)、炭素原子(複数可)、又はこれらの任意の2つ以上の原子の組み合わせを含有する前駆体材料の蒸気又はプラズマと接触させて、前記基材の前記初期表面又は前記処理された表面と共に又はその上に形成されたケイ素-ヘテロ原子化合物を含む生成物を得ることを含む第2の接触工程と、さらに前記生成物のケイ素-ヘテロ原子化合物を前記生成物の基材から分離して、分離されたケイ素-ヘテロ原子化合物を自立型バルク形態として得る工程を含む、原子層堆積法を使用する、ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クロロジシラザン、それらから合成されるケイ素-ヘテロ原子化合物、ケイ素-ヘテロ原子化合物の膜及びケイ素-ヘテロ原子化合物を含有するデバイス、クロロジシラザン、ケイ素-ヘテロ原子化合物、膜、及びデバイスの製造方法、並びにクロロジシラザン、ケイ素-ヘテロ原子化合物、膜、及びデバイスの使用。
【背景技術】
【0002】
ケイ素-ヘテロ原子化合物の膜は、電子デバイス又は微小電気機械システム(MEMS)内の誘電体、バリア、又はストレッサー層として作用し得る。膜は、構成要素の存在下で、1つ以上の好適な前駆体化合物を膜形成方法に供することによって、かかる作用を必要とする電子デバイス又はMEMSの構成要素の表面上に形成されてもよい。前駆体化合物は、その上にケイ素-ヘテロ原子化合物の薄いコンフォーマルコーティングを形成するように、構成要素の表面で気化及び反応するか、又は分解する、小分子、オリゴマー、又は巨大分子である。良好に機能する膜を形成するために、現在の前駆体化合物は、高温(例えば、600°~1,000℃)で加熱する必要があり得る。
【発明の概要】
【0003】
われわれ(本発明者ら)は、現用前駆体化合物における問題を発見した。一部の現用前駆体化合物は、電子デバイス又はMEMSを汚染することになる不純物を含有する。ケイ素-ヘテロ原子化合物の良好な膜を形成するために、一部の現用前駆体化合物を、コーティングされている構成成分の感熱特性(thermally-sensitive features)を低下させる温度で加熱する必要がある。また、膜の一部は、欠陥、例えば、望ましくない厚さは若しくは密度であるか、又は均一性が不十分である場合がある。
【0004】
この問題(複数可)に対する技術的解決策には、1つ以上のクロロジシラザン及びそれらの前駆体化合物としての使用、それらから合成されるケイ素-ヘテロ原子化合物、ケイ素-ヘテロ原子化合物の膜及びケイ素-ヘテロ原子化合物を含有するデバイス、クロロジシラザン、ケイ素-ヘテロ原子化合物、膜、及びデバイスの製造方法、並びにクロロジシラザン、ケイ素-ヘテロ原子化合物、膜、及びデバイスの使用を含む。
【発明を実施するための形態】
【0005】
「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、複数の代表的な非限定の実施形態、及び実施例を開示することにより、例示的な方法で本明細書にて説明されている。いくつかの実施形態では、本発明は、以下の番号付けされた態様のいずれか1つである。
【0006】
態様1.1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザン。すなわち、ClHSiN(H)SiCl
【0007】
態様2.1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンの製造方法であって、1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザンを、トリクロロシラン(HSiCl)と接触させて、1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンを得ることを含む、製造方法。いくつかの実施形態では、本方法は、(i)テトラクロロシラン(SiCl)を、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン((CHSiN(H)Si(CH)と接触させて、1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザン(ClSiN(H)Si(CH)を得ることである先行工程、又は(ii)1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンは、精製を必要としており、本方法は、1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンを精製して、バルク形態の総重量に対して、70~100面積パーセント(ガスクロマトグラフィ)(「面積%(GC)」)の1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンを含有する、そのバルク形態を得ることを更に含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方、を更に含む。あるいは、1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンの製造方法であって、3モル当量のアンモニア(NH)を、1モル当量のトリクロロシラン(HSiCl)及び1モル当量のテトラクロロシラン(SiCl)と接触させて、1モル当量の1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザン及び2モル当量の塩化アンモニウム(NHCl)を得ることを含む、製造方法。
【0008】
態様3.基材の初期表面の処理方法であって、第1の堆積方法を用いて、基材の初期表面を、式(I):XClSiN(H)SiCl(I)(式中、X及びXの各々は、独立して、H又はClである)のクロロジシラザンの蒸気と接触させて、基材上に処理された表面を含む生成物を得ることを含む、第1の接触工程を含む、方法。第1の接触工程の前に、基材の初期表面は、ケイ素-ヘテロ原子化合物を受容する準備ができており、誘電体、バリア、又はストレッサー層を必要とし得る。基材の初期表面は、組成、反応性、又は官能性のうちの少なくとも1つにおいて、基材の処理された表面と異なる。
【0009】
態様4.ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法であって、第1の堆積方法を用いて、基材の初期表面を、式(I):XClSiN(H)SiCl(I)(式中、X及びXの各々は、独立して、H又はClである)のクロロジシラザンの蒸気と接触させて、基材上に処理された表面を得ることを含む、第1の接触工程と、第2の堆積方法を用いて、基材の初期表面又は処理された表面を、窒素原子(複数可)、酸素原子(複数可)、炭素原子(複数可)、又はこれらの任意の2つ以上の原子の組み合わせを含有する前駆体材料の蒸気又はプラズマと接触させて、基材の初期表面又は処理された表面と共に又はその上に形成されたケイ素-ヘテロ原子化合物を含む生成物を得ることを含む第2の接触工程と、を含む、製造方法。式(I)のクロロジシラザンは、分子又は分子の集合である化合物であり、各分子は、独立して、式(I)である。第1の接触工程の前に、基材の初期表面は、ケイ素-ヘテロ原子化合物を受容する準備ができており、誘電体、バリア、又はストレッサー層を必要とし得る。基材の初期表面は、組成、反応性、又は官能性のうちの少なくとも1つにおいて、基材の処理された表面と異なる。第1の堆積方法は、第2の堆積方法と同じであっても異なっていてもよい。第1及び第2の堆積方法の一方又は両方は、膜形成法であってもよい。ケイ素-ヘテロ原子化合物の組成は、基材の処理された表面及び基材の初期表面の組成とは異なる。ケイ素-ヘテロ原子化合物は、膜、微粒子固体、又は基材の初期表面上に設計された構造として作製されてもよい。
【0010】
態様5.式(I)のクロロジシラザンは、1,1,3,3-テトラクロロジシラザン(X=X=H)又は1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザン(X=X=Cl)である、態様3又は4に記載の方法。式(I)のクロロジシラザンのいくつかの態様では、X=X=H、あるいはX=X=Clである。
【0011】
態様6.式(I)のクロロジシラザンは、1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンである、態様3又は4に記載の方法。(X=Cl、X=H)。
【0012】
態様7.窒素原子(複数可)を含有する前駆体材料が、窒素分子、アンモニア、ヒドラジン、有機ヒドラジン、アジ化水素、一級アミン、又は二級アミンであり、酸素原子(複数可)を含有する前駆体材料が、酸素分子、オゾン、水、亜酸化窒素(NO)、又は過酸化水素であり、炭素原子(複数可)を含有する前駆体材料が、メタン、エタン、プロパン、ブタン、クロロメチルシラン、1~5個のSi原子を有するパーメチルシラン、又は1~5個のSi原子を有するメチルヒドリドシランである、態様4~6のいずれか一つに記載の方法。
【0013】
態様8.前駆体材料が、ケイ素原子(複数可)、水素原子(複数可)、塩素原子(複数可)、又はこれらの任意の2つ以上の原子の組み合わせを更に含有する、態様4~6のいずれか一つに記載の方法。
【0014】
態様9.(i)第2の接触工程が、基材の処理された表面を前駆体材料の蒸気若しくはプラズマと接触させることを含むように、第1の接触工程が、第2の接触工程が実行される前に完了する、又は(ii)方法が原子層堆積を含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、態様4~8のいずれか1つに記載の方法。いくつかの態様では、方法は、(i)、あるいは(ii)、あるいは(iii)である。原子層堆積は、プラズマ強化されてもよい。
【0015】
態様10.(i)第2の接触工程が、基材の初期表面を前駆体材料の蒸気若しくはプラズマと接触させることを含むように第1及び第2の接触工程が同時に実行される、又は(ii)方法が化学蒸着を含む、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、態様4~8のいずれか1つに記載の方法。いくつかの態様では、方法は、(i)、あるいは(ii)、あるいは(iii)である。化学蒸着は、プラズマ強化されてもよい。
【0016】
態様11.(i)製造されるケイ素-ヘテロ原子化合物が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、シリコンオキシカーバイド、若しくはシリコンオキシカーボナイトライドである、又は(ii)ケイ素-ヘテロ原子化合物が、基材の初期表面上に膜の形状で作製される、又は(iii)(i)及び(ii)の両方である、態様4~10のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
態様12.生成物のケイ素-ヘテロ原子化合物を生成物の基材から分離して、分離されたケイ素-ヘテロ原子化合物を自立型バルク形態として得る工程を更に含む、態様4~11のいずれか一つに記載の方法。
【0018】
態様13.態様4~12のいずれか1つに記載の方法によって製造されたケイ素-ヘテロ原子化合物。
【0019】
態様14.態様3~12のいずれか1つに記載の方法によって製造された生成物又は態様13に記載のケイ素-ヘテロ原子化合物を含む、製品。製品は、電子デバイス又は微小電気機械システム(MEMS)であってもよく、生成物は電子デバイス又はMEMSの構成要素である。
【0020】
本発明者らは、いくつかの問題に対して技術的解決策を提示する。ある技術的解決策は、ケイ素-ヘテロ原子化合物を形成するための前駆体、1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンである。
【0021】
別の技術的解決策は、基材の表面の処理方法である。基材の表面は、処理を必要とする。
【0022】
別の技術的解決策は、ケイ素-ヘテロ原子化合物の形成方法であり、この新規方法は、式(I)のクロロジシラザンを前駆体として使用することを含む。
【0023】
別の技術的解決策は、堆積温度を600℃未満に下げる方法である。
【0024】
1,1,3,3-テトラクロロジシラザンは、3モル当量のアンモニア(NH)を、2モル当量のトリクロロシラン(HSiCl)と接触させて、1モル当量の1,1,3,3-テトラクロロジシラザン及び2モル当量の塩化アンモニウム(NHCl)を得ることを含む方法によって作製してよい。
【0025】
1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンは、態様2の方法によって作製してよい。
【0026】
1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザンは、2モル当量のテトラクロロシラン(SiCl)を、3モル当量のアンモニア(NH)と接触させて、1モル当量の1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザン及び2モル当量の塩化アンモニウム(NHCl)を得ることを含む方法によって作製してよい。1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザンは、CAS登録番号14657-30-8を有し、MOLBASE.comなどの市販の業者から入手可能である。
【0027】
バルク形態で調製された式(I)のクロロジシラザンは、ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法での使用に十分な純度であり得る。いくつかの実施形態では、調製された式(I)のクロロジシラザンのバルク形態は、精製を必要とし得る。式(I)のクロロジシラザンの合成は、分留又はガスクロマトグラフィなどによって、そのバルク形態を精製することを更に含んでもよい。
【0028】
バルク形態の式(I)のクロロジシラザン及び他の前駆体材料の純度は、29Si-NMR、逆相液体クロマトグラフィによって、又は、より多くは、後述するとおり、ガスクロマトグラフィ(GC)によって測定することができる。例えば、GCによって測定された純度は、60面積%~100面積%以下(GC)、あるいは70面積%~100面積%以下(GC)、あるいは80面積%~100面積%以下(GC)、あるいは90面積%~100面積%以下(GC)、あるいは93面積%~100面積%以下(GC)、あるいは95面積%~100面積%以下(GC)、あるいは97面積%~100面積%以下(GC)、あるいは99.0面積%~100面積%以下(GC)であり得る。各100面積%以下(GC)は、独立して、上記で定義されたとおりであってもよい。
【0029】
ケイ素-ヘテロ原子化合物は、ケイ素と、炭素、窒素及び酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる。ケイ素-ヘテロ原子化合物は、炭化ケイ素(Si及びC原子)、窒化ケイ素(Si及びN原子)、二酸化ケイ素(Si及びO原子)、炭窒化ケイ素(Si、C及びN原子)、シリコンオキシカーバイド(Si、C及びO原子)、シリコンオキシカーボナイトライド(Si、C、N及びO原子)、又は酸窒化ケイ素(Si、N及びO原子)からなり得る。バルク形態のケイ素-ヘテロ原子化合物(2つ以上の分子の集合)は、追加の元素を含まなくてもよく、又は任意に、1つ以上のドーパント及び/又は1つ以上の不純物を更に含有してもよい。ドーパントは、特定の用途におけるバルク材料の特性を向上させるためにバルク形態に一定量で意図的に添加されるSi、C、N、及びO以外の元素である。不純物は、Si、C、N、及びO以外の元素並びにバルク形態を汚染するドーパントであり、不純物元素(複数可)の濃度は低いほどよい。理想的には、ケイ素-ヘテロ原子化合物のバルク形態は、不純物を含まない(すなわち、不純物元素(複数可)の濃度0%)。
【0030】
ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法は、第1及び第2の堆積方法を含む。本明細書で使用され得る堆積方法は、特に限定されず、ケイ素-ヘテロ原子化合物を基材上に堆積させるための前駆体材料操作に関する、周知の堆積技術、堆積装置、及び関連する作動条件のいずれかを含む。ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法における使用に好適な堆積技術、装置、及び関連する作動条件は、当該技術分野において一般的に周知である。堆積方法は、一般に、堆積装置の反応チャンバ内に基板を配置することと、基板を収容している反応チャンバを排気することと、反応チャンバ内で基材を加熱することと、反応チャンバの外側で1つ以上の前駆体を生成することと、前駆体(複数可)を反応チャンバに供給することであって、2つ以上の前駆体が使用されるとき、その供給は順次でも同時でもよい、供給することと、前駆体(複数可)を、加熱された基材の表面上に吸収されるようにすること(そこで前駆体が分解してケイ素-ヘテロ原子化合物を形成し得る)、又は化学的に反応して蒸気形態のケイ素-ヘテロ原子化合物を生成すること(これがその後、加熱された基材の表面上に吸収される)のいずれかと、前駆体の供給を停止することと、基材を冷却することと、基材を反応チャンバから取り除いて生成物を得ることと、を含む。
【0031】
特定の実施形態では、各堆積方法は、独立して、物理蒸着、原子層堆積(ALD)、又は化学蒸着(CVD)を含む。物理蒸着法は、スパッタリングを含んでもよい。好適なスパッタリング方法としては、直流(DC)マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング、及びイオンアシストスパッタリングが挙げられる。典型的には、堆積方法は、ALD又はCVDを含む。
【0032】
好適なALD方法としては、プラズマ強化原子層堆積法(PEALD)、空間原子層堆積法(SALD)、及び熱原子層堆積(TALD)法が挙げられる。PEALD法が採用される場合、プラズマは、上記のプラズマのうちのいずれか1つであってもよい。プラズマは、任意に、窒素分子又はアルゴンガスなどのキャリアガスを更に含有してもよい。プラズマはプラズマ形成ガスから形成され、これは窒素分子と水素分子との混合物を含んでもよい。
【0033】
好適なCVD法としては、単純な熱蒸着、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、電子サイクロトロン共鳴(ECRCVD)、大気圧化学蒸着(APCVD)、低圧化学蒸着(LPCVD)、超高真空化学蒸着(UHVCVD)、エアロゾル支援化学蒸着(AACVD)、直接液体注入化学蒸着(DLICVD)、マイクロ波プラズマ支援化学蒸着(MPCVD)、リモートプラズマ強化化学蒸着(RPECVD)、原子層化学蒸着(ALCVD)、ホットワイヤ化学蒸着(HWCVD)、ハイブリッド物理化学蒸着(HPCVD)、急速熱化学蒸着(RTCVD)、及び気相エピタキシー化学蒸着(VPECVD)、光支援化学蒸着(PACVD)、及びフレーム支援(flame assisted)化学蒸着(FACVD)が挙げられる。
【0034】
CVD法は、流動可能化学蒸着装置、熱化学蒸着装置、プラズマ強化化学蒸着装置、光化学蒸着装置、電子サイクロトロン共鳴装置、誘導結合プラズマ装置、磁場閉じ込めプラズマ装置、低圧化学蒸着装置、又はジェット蒸着装置であるCVD装置を用いて実施してもよい。特定の実施形態では、CVD技術及び装置は、プラズマ強化化学蒸着法、あるいは低圧化学蒸着法を含む。好適なCVD技術及び装置は、循環CVD及び循環CVD装置である。
【0035】
スパッタリング、ALD、又はCVD蒸着装置の反応チャンバは、容積的に囲まれた空間である。反応チャンバは、作動条件を提供し、ケイ素-ヘテロ原子化合物がその上に形成される基材を収容し得る。堆積方法の間に、式(I)のクロロジシラザン、前駆体材料、及び任意の他の堆積材料(例えば、不活性ガス又は反応種)は、反応チャンバ内に供給される。供給は、順次でも同時でもよい。反応チャンバでは、ケイ素-ヘテロ原子化合物の膜を形成するための蒸気、気体、又はプラズマを混合して反応させてもよい。反応は、蒸気状態で適切な膜元素又は分子を形成する。次に、元素又は分子が基材(例えば、半導体ウェハ)上に堆積し、ビルドアップして膜を形成する。他の全ての事項が等しいと、元素又は分子のビルドアップが長いほど、膜厚が大きくなる。
【0036】
ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法及び異なる膜厚を得るための技術、装置、及び作動条件を最適化することができる。最適化は、特定の式(I)のクロロジシラザン及び/又は前駆体材料、並びに本方法で使用される任意の他の材料、製造されたケイ素-ヘテロ原子化合物の特定の組成、ケイ素-ヘテロ原子化合物の所望の純度、基材の幾何学的構成、ケイ素-ヘテロ原子化合物が組み込まれるか又は使用されることを意図するデバイス又は用途、及び経済(コスト)考慮などの考慮に基づいてもよい。更なる考慮事項は、反応チャンバ内の温度及び圧力、式(I)のクロロジシラザンの気相中の濃度、任意の追加の反応ガス濃度(例えば、任意の炭素前駆体材料、窒素前駆体材料、及び/又は酸素前駆体材料のガスの濃度)、全ガス流、基材温度、及び基材の安定性である。酸素前駆体材料、オゾンは、空気中の濃度>0体積/体積%(v/v%)~5v/v%、又は酸素分子中の濃度>0v/v%~14v/v%で送達されてもよい。最適化されるか否かにかかわらず、この作動条件は、反応チャンバ内で、熱分解、酸化、還元、加水分解、アミノ分解(例えば、アミノ化)、炭化、又は式(I)のクロロジシラザン及び任意の他の前駆体材料のうちのいずれか2つ以上の組み合わせなどの化学反応を生じることによって、ケイ素-ヘテロ原子化合物の形成をもたらす。
【0037】
堆積方法は、一般に、式(I)のクロロジシラザン、前駆体材料、及び任意のその他の堆積材料を反応チャンバに供給する前に、反応チャンバの排気、並びに反応チャンバ及びその中に収容されている基材の加熱など、反応チャンバにエネルギーを加えることを必要とする。堆積方法は、1~13,000パスカル(Pa)、あるいは1~1,300Pa、あるいは10~1,300Pa、あるいは130~1,300Paの圧力などの大気圧未満で行われてもよい。堆積方法を実施する温度は、恒温でも動的温度でもよい。従来の堆積方法(式(I)のクロロジシラザンを使用しない)は、一般に、600℃超、例えば600~1000℃など、著しく高い堆積温度を必要とする。しかしながら、式(I)のクロロジシラザンは、堆積方法において、はるかに低温、例えば、100~700℃、あるいは200~700℃、あるいは200~600℃未満、あるいは200~500℃、あるいは200~400℃、あるいは100~300℃で利用され得ると考えられる。
【0038】
ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法のいくつかの実施形態は、亜酸化窒素(NO)を含む反応性環境を更に含んでもよい。これらの実施形態では、方法は一般に、亜酸化窒素の存在下で式(I)のクロロジシラザンを分解することを含む。このような方法は、概して、米国特許第5,310,583号に記載されている。亜酸化窒素は、実施形態によって製造されたケイ素-ヘテロ原子化合物の組成を、亜酸化窒素を含まない方法の実施形態と比較して、変更し得る。
【0039】
ケイ素-ヘテロ原子化合物の製造方法のいくつかの実施形態は、不活性ガスを更に含んでもよく、不活性ガスは、式(I)のクロロジシラザンと組み合わせて、及び/又は上記前駆体材料のいずれか1つと組み合わせて、使用されてもよい。不活性ガスの例は、ヘリウム、アルゴン、及びこれらの混合物である。例えば、ヘリウムが、式(I)のクロロジシラザン、並びに/又は炭素含有前駆体、窒素含有前駆体及び酸素含有前駆体のうちのいずれか1つと組み合わせて、本方法の実施形態で使用されてもよく、その際、形成されるケイ素-ヘテロ原子化合物は、それぞれ、ケイ素炭素化合物、ケイ素窒素化合物、又はケイ素酸素化合物である。
【0040】
基材は、典型的には、ケイ素-ヘテロ原子化合物が合成又は合成後に堆積され得る場所を提供するために、本方法で使用される。基材は、組成又は形状において特に限定されない。特定の実施形態では、基材は、堆積装置の反応チャンバ内の温度及び反応性環境などの作動条件下で十分な熱及び/又は化学的安定性を有する。好適な基材は、ケイ酸塩ガラス、金属、プラスチック、セラミック、又は半導体材料から構成されてもよい。半導体材料は、元素シリコン(例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、又は非晶質シリコン)であってもよい。ケイ素-ヘテロ原子化合物が堆積される基材の表面は、平坦(平面)であってもよく、又は型押しされていてもよい。パターン化された表面は、アスペクト比が1~500、あるいは1~50、あるいは10~50の範囲のフィーチャを有してもよい。堆積方法は、基材の平坦な又は型押しされた表面をコンフォーマルコーティングする膜を形成してもよい。基材の型押しされた表面のパターンは、その上に形成されたケイ素-ヘテロ原子化合物の膜が設計された相補的形状を有するように設計されてもよい。
【0041】
堆積方法は、典型的には、ケイ素-ヘテロ原子化合物を膜として形成する。膜は、1つの寸法において制限され、これはその厚さと呼ばれる場合がある。膜は、非晶質又は結晶性材料でもよい。膜は、結晶性又はエピタキシャルでもよい。ケイ素-ヘテロ原子化合物の膜は、ケイ素炭素膜、ケイ素窒素膜、又はケイ素酸素膜であってもよい。(例えば、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、又はシリコンオキシカーボナイトライド膜、あるいはケイ素窒素膜又はケイ素酸素膜(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素))。方法により形成されたケイ素炭素膜は、Si及びC原子、並びに所望によりN及び/又はO原子を含む。方法により形成されたケイ素窒素膜は、Si及びN原子、並びに所望によりC及び/又はO原子を含む。方法により形成されたケイ素酸素膜は、Si及びO原子、並びに所望によりC及び/又はN原子を含む。いくつかの態様では、膜はシリコンウェハ上に配置される。いくつかの態様では、ケイ素-ヘテロ原子化合物は、窒化ケイ素、あるいは炭化ケイ素、あるいは二酸化ケイ素、あるいは酸窒化ケイ素、あるいは炭窒化ケイ素、あるいはシリコンオキシカーバイド、あるいはシリコンオキシカーボナイトライドである。
【0042】
異なる厚さを有するケイ素-ヘテロ原子化合物の膜は、異なる堆積方法又は作動条件を使用して形成され得る。特定の堆積方法及び作動条件は、膜の構造及び性質に影響を与え得る。一般に、膜構造の配向、膜の合体の方法、膜の均一性、及び膜の結晶/非結晶構造を制御することが可能である。特定の膜の厚さは均一であってもよく、異なる厚さを有する異なる膜を、膜の異なる最終使用目的のために製造してもよい。例えば、ケイ素-ヘテロ原子化合物の膜の実施形態は、数ナノメートルの厚さを有してもよいのに対し、別の実施形態は、数ミクロンの厚さを有してもよく、更に別の実施形態は、より大きい若しくはより薄い厚さ又は中間の厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、膜は、0.01~1,000ナノメートル(nm)、あるいは0.1~100nm、あるいは1~100nmの厚さを有する。
【0043】
形成されると、ケイ素-ヘテロ原子化合物(例えば、その膜)は、そのまま、すなわち、被覆されていない状態で、使用することができる。膜は、基材上に配置されている間に使用されてもよく、又は膜は、使用される前に基材から分離されてもよい。
【0044】
あるいは、ケイ素-ヘテロ原子化合物(例えば、その膜)は、任意選択的に、1つ以上の上塗りによって被覆されてもよい。各上塗りは、独立して、ケイ素-ヘテロ原子化合物又は異なる材料の実施形態から構成されてもよく、かつ独立して、ケイ素-ヘテロ原子化合物を製造する方法によって、又は異なる(非発明的)方法によって、形成されてもよい。非発明的方法は、式(I)のクロロジシラザン以外の前駆体材料を使用してもよい。ケイ素-ヘテロ原子化合物(の膜)を被覆し得る上塗りの例は、SiOコーティング、SiO/変性用セラミック酸化物層、ケイ素含有コーティング、ケイ素炭素含有コーティング、炭化ケイ素含有コーティング、ケイ素窒素含有コーティング、窒化ケイ素含有コーティング、ケイ素窒素炭素含有コーティング、ケイ素酸素窒素含有コーティング、及びダイヤモンドライクカーボンコーティングなどのコーティングである。このような上塗り及び好適な製造方法は、一般に、当該技術分野において公知である。
【0045】
式(I)のクロロジシラザンは2つのSi-N結合を含有することから、いくつかの実施形態では、式(I)のクロロジシラザンを利用して、窒素含有前駆体を使用せずに窒化ケイ素膜を形成してもよい。あるいは、窒素含有前駆体も、所望により、使用してもよい。
【0046】
ケイ素-ヘテロ原子化合物は、電子機器及び光起電デバイス及び用途において有用であり得る。そのような使用としては、膜の形状、複数の粒子、又は設計された構造のケイ素-ヘテロ原子化合物が挙げられ、化合物が基材上に配設されているか又は自立性であるか、及び化合物が被覆されていない状態であるか、又は上記のように上部被覆されているかにはかかわらない。ケイ素-ヘテロ原子化合物は、誘電体、バリア、又はストレッサー材料として使用することができる。ケイ素-ヘテロ原子化合物の窒化ケイ素膜の実施形態は、コンデンサにおける多結晶ケイ素層の間の絶縁層、保護層又は誘電体層として作用し得る。
【0047】
加えて、堆積方法の作動条件は、方法により元素Si膜が形成されるか、又はSiN膜などのケイ素-ヘテロ原子化合物が形成されるかを制御するように調節することができる。更なる態様では、本発明は、ヘテロ原子N、C、及びOを含まない元素ケイ素膜を形成する方法を更に含み、この方法は、態様3の第1の接触工程を含む。
【0048】
この記述は、ある例のいずれか1つの記載された特徴若しくは制限、いずれか1つの記載されたマーカッシュ形式の下位属若しくは種、又はいずれか1つの記載された数の範囲若しくはサブレンジが、特許請求の範囲の依存するものとなり得、特許請求の範囲を補正するための適切な根拠を提供し得るように、意図的に書かれている。
【0049】
本明細書に別途記載がない限り、本明細書で使用される化学技術用語は、IUPAC.Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the「Gold Book」).Compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson.Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997).XML,on-line corrected version:http://goldbook.iupac.org(2006-)created by M.Nic,J.Jirat,B.Kosata;updates compiled by A.Jenkins.ISBN 0-9678550-9-8.doi:10.1351/goldbook、に見出すことができる。Hawley’s CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY,11th edition,N.Irving Sax & Richard J.Lewis,Sr.,1987(Van Nostrand Reinhold)に、IUPACで定義されていない用語が記載されている場合がある。
【0050】
本明細書に別途記載がない限り、本明細書で使用される一般用語の意味は、本明細書で見出すことができる。あるいは、別個の実施形態に優先する。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、1つ以上を指す。化学元素又は原子、化学元素の族は、2013年5月1日付けの元素周期表においてIUPACによって公開されたものを意味するものとする。如何なる比較例も例示的な目的でのみ使用され、先行技術を意味しないものとする。合成生成物は、製造のために使用する特定の反応物質及び合成条件に応じて変動し得る構造を有してもよい。この変動性は無制限ではなく、反応物質の構造及び合成化学並びに条件に従って制限される。「~を非含有」又は「~を欠いている」とは、完全な不存在、あるいは、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えばH-NMR、13C-NMR、又は29Si-NMR)若しくはフーリエ変換赤外(FT-IR)分光法を用いて検出不能であることを意味する。発明、及び発明的/発明のとは、代表的な実施形態又は態様を意味するものとし、全発明を構成するものとして解釈されないものとする。「IUPAC」は、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(IUPAC Secretariat,Research Triangle Park,North Carolina,USA)である。マーカッシュ群は、2つ以上の要素の属を含む。要素A及びBのマーカッシュ群は、「A及びBから選択される要素」、「A及びBからなる群から選択される要素」、又は「要素A又はB」として同等に表現することができる。各要素は独立して下位属又は属の種であってよい。「であって(も)よい、し得る、ことができる、ことがある(may)」は、選択の余地を供与するものであり、必須ではない。「動作可能な(operative)」は、機能的に可能又は有効であることを意味する。「任意選択的な(任意選択的に)」とは、存在しない(又は除外される)か、あるいは存在する(又は含まれる)ことを意味する。特性は、測定のための標準的な試験方法及び条件を使用して測定される。数の範囲は、整数の範囲が小数値を含まないこと以外は、端点、部分範囲、及び整数値及び/又はその中に包含される小数値を含む。ある構成要素(構成成分)を、構成要素の混合物から除去することには、誘導体/生成物を混合物のその他の構成要素から物理的に分離しない限り、その構成要素を選択的に誘導体化して/反応させて誘導体/生成物を形成することは含まれない。「ビヒクル」とは、別の材料のための担体、分散剤、希釈剤、貯蔵媒体、上澄み、又は溶媒として機能する液体を意味し、可溶性であっても、なくてもよい。
【0051】
本明細書の任意の化合物は、天然存在比の形態及び同位体濃縮した形態が含まれる全てのその「同位体形態」を含む。いくつかの態様では、同位体形態は、天然存在比の形態、あるいは同位体濃縮した形態である。同位体濃縮した形態は、同位体濃縮した化合物の検出が、治療又は検出で有用である、医学又は偽造防止用途などの追加の使用を有することができる。
【0052】
いくつかの態様では、本明細書に記載する任意の組成物は、元素周期表の第1族~第18族の任意の1種以上の化学元素を含有してよい。いくつかの態様では、Si、O、H、C、N、及びClを除外しないことを除いて、少なくとも1つのそのような化学元素が特に組成から除外される。いくつかの態様では、特に除外される化学元素は、(i)ランタノイド及びアクチノイドを含む、第2~第13族、及び第18族のいずれか1つの少なくとも1種の化学元素;(ii)ランタノイド及びアクチノイドを含む、元素周期表の第3周期~第6周期のいずれか1つからの、少なくとも1つの化学元素;又は(iii)Si、O、H、C、N、及びClを除外しないことを除いて、(i)及び(ii)の両方であってもよい。
【実施例
【0053】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明され、本発明の実施形態は、この非限定的な実施例の特徴及び限定の任意の組み合わせを含んでもよい。周囲温度は、約23℃であり、特に指示がない限り、全ての百分率は、重量パーセントである。
【0054】
【表1】
【0055】
薄膜特性評価方法:窒化ケイ素の薄膜の厚さ及び屈折率(632.8nmにて)は、分光エリプソメトリを使用して測定した(M-2000DI、J.A.Woollam)。エリプソメトリのデータを375nm~1690nmで収集し、Cauchy又はTauc-Lorentz振動モデルのいずれかを使用して、J.A.Woollamによって提供されたソフトウェアによって分析した。
【0056】
ウェットエッチング速度(WER):PEALD SiNプロセスによって成長させた薄膜のウェットエッチング速度試験を室温で500:1のHF:水溶液を使用して実施した。ウェットエッチング速度を、特定の時間のエッチング前後の厚さの差から算出した。
【0057】
ガスクロマトグラフィ-フレームイオン化検出器(GC-FID)条件:キャピラリーカラムは、長さ30m、内径0.32mmで、厚さ0.25μmの固定相をキャピラリーカラムの内面上のコーティングの形状で含み、固定相は、フェニルメチルシロキサンを含んでいた。キャリアガスには、流速毎分105mLでヘリウムガスを使用する。GC装置はAgilentのモデル7890Aのガスクロマトグラフとする。入口温度は200℃である。GC実験温度プロファイルは、50℃で2分間の均熱処理(保持)、15℃/分の速度で250℃までの昇温、及びその後の250℃で10分間の均熱処理(保持)からなる。
【0058】
GC-MS装置及び条件。試料は、電子衝撃イオン化及び化学イオン化ガスクロマトグラフィ-マススペクトル法(EI GC-MS及びCI GC-MS)によって分析される。Agilent 6890 GCの条件には、30メートル(m)×0.25ミリメートル(mm)×0.50マイクロメートル(μm)の膜構成を有するDB-1カラムを含む。50℃で2分間の均熱処理、250℃まで15℃/分で昇温、及び250℃で10分間の均熱処理のオーブンプログラム。ヘリウムキャリアガスは、70mL/分の定流量、及び50:1のスプリット注入にて流れる。Agilent 5973 MSDの条件には、15~800ダルトンのMSスキャン範囲が含まれ、EIイオン化及びCIイオン化には5%のNHと95%のCHとの特注CIガス混合物を使用する。
【0059】
調製1:1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザンの合成。23.75グラム(g)のヘキサメチルジシラザンを100gの沸騰SiClに5分間かけて添加し、次いで、得られた混合物を5時間還流させて、粗1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザン((CHSiNHSiCl)を得た。30センチメートル(cm)ビグリューカラムを通じて、粗1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザンを分別蒸留して、25.39gの98面積%(GC)純1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザンを得た。
【0060】
実施例1:1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンの合成。熱電対及び還流冷却管を取り付けた100mL三つ口フラスコ中で、調製1の15.03gの精製1,1,1-トリクロロ-3,3,3-トリメチルジシラザンを10.00gのヘキサデカンに溶解した。得られた溶液に27.43gのトリクロロシランを添加して、冷却管上にゴム隔膜を配置した。得られた混合物を約45℃まで加熱して、隔膜を通して過剰な圧力を放出した。次いで更に、混合物を約60℃まで加熱して、そこで1週間混合物を攪拌した。得られた反応混合物を冷却し、粗混合物中に23%収率で1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンを得た。
【0061】
実施例2:1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンの精製。30cmビグリューカラムを通じて、実施例1の1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンを蒸留して、85面積%(GC)の純度を有する2.05g(12.2%収率)の1,1,1,3,3-ペンタクロロジシラザンを得た。
【0062】
実施例3~15:1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザン(HCDZ)を使用した含窒素ガス及びPEALDによる窒化ケイ素膜の形成:複数の水平に配向され、かつ隔置され、350~500℃の設定値まで加熱したシリコンウェハを含むPEALD反応器と、PEALD反応器と流体連通するHCDZを含む小型シリンダとを使用して、ウェハ上に膜を生成した。シリンダは、室温にて維持するか、又は加熱して、その蒸気圧を高めた。PEALD反応器を窒素(N)でパージし、次いで、PEALD SiN膜を以下の手順でHCDZにより成長させた:HCDZドーズ、1秒/Nパージ、30秒/NH+アルゴン、NH+N、フォーミングガス(N中に10%H)+アルゴンなどの含窒素ガスによるプラズマ、15秒/Nパージ、30秒。前述の工程の手順を所望の厚さの窒化ケイ素膜がウェハ上に形成されるまで繰り返した。次いで、この膜をウェットエッチング速度について評価した。膜を生成するために使用されたパラメータ及び各実施例の試験結果を表2にて示す。
【0063】
【表2】
【0064】
実施例16~28:1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロジシラザン(HCDZ)を使用したALD中の酸化剤ガスによる酸化ケイ素膜の形成:複数の水平に配向され、かつ隔置され、350~500℃の設定値まで加熱したシリコンウェハを含むALD反応器と、ALD反応器と流体連通するHCDZを含む小型シリンダとを使用して、ウェハ上に膜を生成した。ALD反応器をアルゴン(Ar)でパージした。次いで、ALD SiO膜を以下の手順を使用してHCDZにより成長させた:HCDZドーズ、3秒/Arパージ、3秒/O(オゾン)/O又はHOなどの酸化剤含有ガス、3秒/Arパージ、3秒。前述の工程の手順を所望の厚さの酸化ケイ素膜がウェハ上に形成されるまで繰り返した。次いで、この膜をウェットエッチング速度について試験した。膜を成長させるためのパラメータ及び膜の試験結果は、以下の表3にある。
【0065】
【表3】
【0066】
以下の特許請求の範囲は、参照により本明細書に組み込まれ、用語「請求項」(単数及び複数)はそれぞれ用語「態様」(単数及び複数)に置き換えられる。本発明の実施形態は、これらの得られた番号付けされた態様も包含する。